| タイトル: | 特許公報(B2)_クロマトグラフ質量分析装置 |
| 出願番号: | 1999021278 |
| 年次: | 2008 |
| IPC分類: | G01N 27/62,G01N 30/72,G01N 30/86 |
湯口 浩志 JP 4151144 特許公報(B2) 20080711 1999021278 19990129 クロマトグラフ質量分析装置 株式会社島津製作所 000001993 小林 良平 100095670 湯口 浩志 JP 1998234559 19980820 20080917 G01N 27/62 20060101AFI20080828BHJP G01N 30/72 20060101ALI20080828BHJP G01N 30/86 20060101ALI20080828BHJP JPG01N27/62 CG01N27/62 XG01N30/72 AG01N30/72 CG01N30/86 LG01N30/86 H G01N27/62-27/70 G01N30/72 G01N30/86 特開平10−19849(JP,A) 特開平10−185873(JP,A) 特開平10−132786(JP,A) 特開平7−128317(JP,A) 特開平5−164752(JP,A) 特開昭63−135854(JP,A) 特開昭60−11165(JP,A) 特開昭62−172261(JP,A) 特開昭61−260149(JP,A) 2 2000131284 20000512 10 20050401 島田 英昭 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)や液体クロマトグラフ質量分析装置(LC/MS)などのクロマトグラフ質量分析装置に関する。【0002】【従来の技術】GC/MSは、クロマトグラフカラムで試料成分を時間的に分離し、分離された各成分をそれぞれイオン化して質量数に応じて分離して検出する構成を有している。質量数を横軸に、検出したイオン強度を縦軸にとることによりマススペクトルが作成され、或る質量数に着目して時間(つまり試料成分の分離方向)を横軸に、イオン強度を縦軸にとることによりマスクロマトグラムが作成され、更には質量数を問わずに、時間を横軸に、イオン強度を縦軸にとることによりトータルイオンクロマトグラム(TIC)が作成される。なお、以下の説明では特に明記しない限り、クロマトグラムとはトータルイオンクロマトグラムのことを指すものとする。【0003】GC/MSでは、カラムに導入された分析対象の試料成分の分子から生成したイオンのみを検出することが好ましいが、実際には、様々な原因によりマススペクトルには不所望のピークが現れる。これらはバックグラウンドノイズと総称されており、このようなノイズを目的試料成分によるピークであると誤って認識してしまうと定性分析や定量分析に支障をきたすため、信号処理によってこうしたバックグラウンドノイズを除去することが行われている。【0004】【発明が解決しようとする課題】従来のバックグラウンドノイズ除去の手法は次の通りである。通常、カラム入口に試料を注入した後、最も早くカラム出口に到達するのは溶媒であって、目的成分はそれから遅れて到達する。そこで、目的成分がカラムから溶出する前又は後(つまりクロマトグラム上でほぼベースラインとなっているとき)に取得されるマススペクトルデータをメモリに格納し、これをバックグラウンドノイズであるとして、目的成分が溶出する期間に順次取得されるマススペクトルデータから一様に減算している。【0005】しかしながら、このような方法では、例えば以前に測定した試料成分がカラムに残存していて、次の測定時に溶媒中に溶け出して目的成分のピーク近傍に重なって溶出した場合、或いは、試料溶液中の溶媒自体に不純物が混合しており、その不純物によるピークが目的成分のピーク近傍に重なって溶出した場合に、そのような不所望のピークを除去することはできず、定性分析や定量分析の支障になることがある。【0006】本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、バックグラウンドノイズをより的確に排除して正確なクロマトグラムを得ることができるクロマトグラフ質量分析装置を提供することにある。【0007】【課題を解決するための手段】 上記課題を解決するために成された本発明に係る第1のクロマトグラフ質量分析装置は、 a)目的試料の測定に先立って、試料成分を含まない前記目的試料の導入時と同一の溶媒のみを導入して所定の測定条件下でクロマトグラフ質量分析を行うことにより得られたデータをノイズデータとして記憶しておく記憶手段と、 b)前記目的試料を導入して前記所定の測定条件下でクロマトグラフ質量分析を行うことにより得られたデータに対し、同一保持時間及び同一質量数におけるノイズデータを前記記憶手段から読み出して減算する演算手段と、 c)該演算手段により減算処理されたデータを基にマススペクトル又はクロマトグラムを作成するデータ処理手段と、 を備えることを特徴としている。【0008】また、本発明に係る第2のクロマトグラム質量分析装置は、上記第1のクロマトグラフ質量分析装置において、前記演算手段は、b1)ノイズデータを基に作成されるクロマトグラムにおいて或る1つのピークを見つけて基準ピークとするピーク抽出手段と、b2)目的試料の分析データを基に作成されるクロマトグラムにおいて前記基準ピークの保持時間近傍のピークである比較対象ピークを検出するピーク検出手段と、b3)基準ピークと比較対象ピークとの強度差又は強度比に応じて前記ノイズデータを修正する修正手段と、を含むことを特徴としている。【0009】【発明の実施の形態】この発明に係る第1のクロマトグラフ質量分析装置では、目的試料の測定に先立って、その目的試料の導入時と同一の溶媒を用い同一の測定条件でもって、少なくとも目的成分の溶出が終了すると想定されるまでの時間に亘って分析が実行される。そして、その結果得られたデータを保持時間及び質量数に対応付けて記憶手段に記憶させておく。このような予備測定によって得られるデータは、カラム内壁に付着している残留成分や溶媒に混入している不純物などによるピークを含むバックグラウンドノイズに関するデータである。【0010】引き続いて目的試料がクロマトグラフ部に導入され、上記測定条件でもって分析が実行される。或る保持時間において質量分析部からデータが得られると、演算手段は、そのデータと保持時間及び質量数が同一であるノイズデータを記憶手段から読み出し、前者から後者を減算する。これにより、データ処理手段は、バックグラウンドノイズの影響を除去したマススペクトルやマスクロマトグラムを作成することができる。【0011】なお、演算手段は、目的試料の分析途中で新しいデータが取得される毎に上記減算処理を行う(つまりリアルタイム処理する)ようにしてもよいし、或いは一旦全てのデータを取得し終わった後に減算処理を行う(つまりバッチ処理する)ようにしてもよい。【0012】予備測定に引き続いて複数回の目的試料(同一試料又は異なる試料)の分析を行う場合には、カラム内壁に付着している残留成分は分析を繰り返すに伴い次第に減少することが多い。その場合、バックグラウンドノイズは次第に減少する筈であるから、上述のような減算処理に際してはこのようなことを考慮した演算を実行することが望ましい。【0013】本発明に係る第2のクロマトグラフ質量分析装置では、予備測定の結果として取得されたクロマトグラム上に現れる1つのピークに対応する不純物成分をバックグラウンドノイズの影響度合を推定する基準として利用している。すなわち、ピーク検出手段は、分析対象のクロマトグラムにおいて上記基準ピークと同一成分に対するピーク(比較対象ピーク)を見つけ、修正手段は、基準ピークの強度に対する比較対象ピークの強度の減少度合を強度差又は強度比として求め、それに応じてノイズデータを修正する。そして、このように修正されたノイズデータを用いて上述のような減算処理を行う。この構成によれば、目的試料の分析の際に不純物成分が予備測定時よりも減少している場合には、各ノイズデータが例えば強度比に応じて縮小され、その縮小されたノイズデータが目的試料の分析データから差し引かれる。したがって、カラム内の残留成分の減少がノイズ除去に反映されるため、より正確なノイズ除去が達成される。なお、基準ピークとしては、ノイズデータを基に作成されるクロマトグラムの中で強度が最大となるピークを用いるとよい。【0014】また、分析対象のクロマトグラムにおいて基準ピークと目的成分のピークとが重なってしまう場合に、誤ってバックグラウンドノイズの影響が大きいと判断しないようしておくことが望ましい。そこで、前記修正手段は、比較対象ピークの強度が基準ピークの強度を越えている場合には、その強度は基準ピークの強度と同一であると看做して処理を行うようにするとよい。【0015】【発明の効果】本発明のクロマトグラフ質量分析装置によれば、試料液中に試料成分が含まれていないということ以外、全く同一測定条件でもってバックグラウンドノイズが実測され、その保持時間及び質量数が対応するデータ毎にバックグラウンドノイズ分が差し引かれて、そのデータを基にマススペクトルやクロマトグラムが作成される。このため、カラム内の残留成分や溶媒に含まれる不純物などの影響を排除したマススペクトルやクロマトグラムを作成することができ、定性分析や定量分析の精度も高まる。【0016】【実施例】本発明に係るクロマトグラフ質量分析装置の一実施例であるGC/MSを図1〜図4を参照して説明する。【0017】図1は、このGC/MSの全体構成図である。GC部1において、カラムオーブン4に内装されているカラム3の入口端には試料気化室2を中心とする試料注入部が設けられており、試料気化室2に注入された試料液は瞬時の間に気化しキャリアガスに乗ってカラム3内に導入される。気化試料がカラム3を通過する間に、該試料に含まれる各種成分は時間方向に分離されてカラム3出口端に到達する。通過の遅い成分の速度を速めるために、カラムオーブン4は所定の昇温プログラムに従ってカラム3を加熱する。【0018】MS部5では、真空排気される分析室6内部に、イオン源7、イオンレンズ8、四重極フィルタ9、検出器10などが配設されている。上記カラム3の出口端はイオン源7に接続されており、カラム3から順次流出する成分分子はイオン源7にて電子との衝突や化学反応などによってイオン化される。発生したイオンはイオン源7から飛び出し、イオンレンズ8により収束されると共に適度に加速され、四重極フィルタ9の長手方向の空間に導入される。【0019】四重極フィルタ9には直流電圧と高周波電圧とを重畳した電圧が印加され、その印加電圧に応じた質量数(質量m/電荷z)を有するイオンのみが選択的に通過して検出器10に到達する。四重極フィルタ9を通過するイオンの質量数は上記印加電圧に依存しているから、この印加電圧を走査することにより所定の質量範囲のイオン強度信号を検出器10において得ることができる。【0020】検出器10の出力はパーソナルコンピュータを中心に構成されるデータ処理装置11に入力されている。データ処理装置11には、外部記憶装置12、操作部13、表示部14が接続されている。データ処理装置11は、検出器10から取られた信号を外部記憶装置12に蓄積するとともに、この信号を基に演算処理を実行しその結果を表示部14に出力する。例えば、或る時点で上述のように質量走査を行った際のイオン強度を縦軸に、質量数を横軸にとることによりマススペクトルを作成する。所定時間間隔で繰り返し質量走査を行うと、カラム3から順次流出する各種成分に対応する多数のマススペクトルを取得することができる。【0021】このようなマススペクトルを取得した後、或る質量数に着目して時間軸方向にイオン強度を展開して描出することによりマスクロマトグラムを得ることができる。また、マススペクトルを取得する毎にそのイオン強度の合計を算出し時間軸方向に展開して描出することによりトータルイオンクロマトグラムを得ることができる。更に、データ処理装置11はこのようなクロマトグラムから目的成分を見つけ出し該成分の定量計算を行う。【0022】上述のように検出器10で得られる信号には種々のバックグラウンドノイズが含まれる。そこで、データ処理装置11では検出信号に対してバックグラウンドノイズ除去処理を施した後に上述のような各種グラフの作成処理を実行する。【0023】図2は、バックグラウンドノイズ除去処理に関する要部の構成図である。データ処理装置11には、検出器10から入力されるアナログ検出信号Sdをデジタルデータに変換するA/D変換部20、外部記憶装置12との間のデータの入出力を制御する入出力制御部21、減算処理を実行する減算処理部22、マススペクトル、マスクロマトグラム、トータルイオンクロマトグラムなどを作成すると共に各種解析処理を実行するデータ解析部23などが含まれている。外部記憶装置12には、バックグラウンドノイズを表すノイズデータを格納しておくためのノイズデータ記憶部24と、バックグラウンドノイズ除去処理がなされた後のデータが格納されるスペクトルデータ記憶部25とが含まれている。【0024】以下、バックグラウンドノイズ除去処理動作を中心に本実施例のGC/MSの動作を図3及び図4を参照しながら説明する。【0025】まず、目的とする試料の測定に先立って、バックグラウンドノイズデータをノイズデータ記憶部24に蓄積する。そのためには、目的試料導入時に使用されるものと同一の溶媒を同一測定条件でもって分析する。すなわち、一定流量のキャリアガスを試料気化室2を介してカラム3に流しておき、所定のタイミングで溶媒のみから成る試料液を試料気化室2に注入する。一般に、気化した溶媒はカラム3中を迅速に通過しカラム3出口端に至るが、該溶媒中に不純物が混入していると、その不純物はカラム3を通過する際にカラム3内壁での吸着及び離脱を生じ、更には、複数の成分を含んでいる場合には時間的に分離されて、溶媒より遅れてカラム3出口端に到達する。また、カラム3内壁にそれ以前に分析した試料成分が残留している場合には、溶媒が通過する際にこの試料成分は揮発してカラム3出口方向へ運ばれる。【0026】カラム3から流出するガスはMS部5へ導入され、所定時間間隔で所定質量範囲に亘る質量走査が繰り返し行われる。これらのパラメータは予め使用者が設定することができるようになっており、例えば0.5秒間隔で0.1秒の走査時間の質量走査を行うものとすることができる。1回の質量走査の期間中、検出器10で得られた検出信号SdはA/D変換部20で所定時間間隔でもってサンプリングされてデジタルデータに変換され、入出力制御部21を介してノイズデータ記憶部24に順次記憶される。このときノイズデータSnは、その質量走査時の保持時間(試料注入時点からの経過時間)及び質量数に関連付けて、つまりこれらのパラメータでもってアクセスできるようにノイズデータ記憶部24に格納されてゆく。なお、ノイズデータ記憶部24へノイズデータを書き込むと同時に該データをデータ解析部23へと送り、バックグラウンドノイズのマススペクトルやクロマトグラムを作成して表示部14の画面上に表示するようにしてもよい。【0027】例えばバックグラウンドノイズのクロマトグラムを作成して描出すると、図3(a)に示すように、最も早く現れる溶媒によるピーク以外に不所望の各種成分によるピークが出現する。また、そのピークの発生している保持時間におけるマススペクトルを作成すると、図3(b)に示すようになる。このようなノイズデータは全てノイズデータ記憶部24に格納されているから、測定終了後であっても必要に応じて読み出してきてマススペクトルやクロマトグラムを描出することができる。【0028】前述のような予備測定が終了すると、次に目的試料の測定が予備測定と同一の測定条件の下で実行される。このとき、目的の試料成分はカラム3中を通過する間に時間方向に分離されるが、それ以外にも溶媒に混入している不所望の成分も上記測定時と同様に分離される。また、カラム3内壁の残留成分は、通常、上述の1回の測定では完全に流出しないから、この測定時にも同じように溶媒に揮散してカラム3出口へ運ばれる。従って、カラム3から流出するガス中には試料成分と不所望の成分とを共に含んでいる。【0029】このようなガスがMS部5に導入されて上述のような質量走査が行われたとき、検出器10で得られた検出信号SdはA/D変換部20でデジタルデータに変換されて減算処理部22へと順次入力される。また、このとき取得されたデータと同一の保持時間に対応するノイズデータSnがノイズデータ記憶部24から読み出され減算処理部22へと入力される。減算処理部22は、取得されたデータから同一質量数に対するノイズデータSnを減算し、その減算結果をスペクトルデータSuとしてスペクトルデータ記憶部25へ格納する。もし、減算結果がマイナスとなる場合にはそのときのスペクトルデータSuは0とする。【0030】例えば目的試料の分析の際に得られたデータを基にクロマトグラムを作成した場合に図3(c)に示すようになるものとし、図3(b)と同一保持時間のマススペクトルが図3(d)に示すようになるものとする。なお、このようなクロマトグラムやマススペクトルは実際に表示部14の画面上に描出する必要はない。【0031】上述のようなバックグラウンドノイズ除去処理によれば、各保持時間毎及び各質量数毎にスペクトルデータはバックグラウンドノイズデータが差し引かれたものとなるから、スペクトルデータSuを基に作成されるマススペクトルは図4(a)に示すように、図3(d)のマススペクトルから図3(b)のマススペクトルを差し引いた形状となる。そして、このようなスペクトルデータを基に作成されるクロマトグラムは、図4(b)に示すように図3(c)のクロマトグラムから図3(a)のクロマトグラムを差し引いた形状となり、上述のような要因による不所望のピークは排除される。【0032】なお、上記実施例では検出器10で取得されたデータをそのままノイズデータとして蓄積していたが、所定の処理を施した後に蓄積するようにしてもよい。例えば、短時間に複数回の質量走査を行い、それによって得られた各質量数に対するデータをそれぞれ平均(又はそれに相当する処理)してスペクトルデータを求めるような場合には、そのような平均処理後のデータをノイズデータとして蓄積してもよい。このようにすれば、蓄積しておくべきデータ量を削減することができるとともに、突発的に生じたノイズの影響を軽減できる。【0033】次に、本発明の他の実施例によるGC/MSを説明する。図5は、この実施例によるバックグラウンドノイズ除去処理に関する要部の構成図である。この実施例によるGC/MSでは、上記実施例のようにリアルタイムでバックグラウンドノイズ除去処理を実行することはできないので、分析対象である1乃至複数の目的試料の測定により取得したスペクトルデータ(ノイズ除去処理がなされていないデータ)を格納しておくスペクトルデータ記憶部25と、ノイズ除去処理がなされたスペクトルデータを格納する修正スペクトルデータ記憶部26とを外部記憶装置12に備えている。【0034】図6はこの実施例におけるバックグラウンドノイズ除去処理のフローチャート、図7はバックグラウンドノイズ除去処理の動作説明図である。以下、上記実施例における処理と相違する点を中心に、本実施例のバックグラウンドノイズ除去処理の動作を述べる。【0035】上記実施例と同様に、目的とする試料の測定に先立って、目的試料導入時に使用されるものと同一の溶媒が同一測定条件でもって分析され、その結果であるバックグラウンドノイズデータがノイズデータ記憶部24に蓄積される。その後、1乃至複数の目的試料の測定が予備測定と同一の測定条件の下で実行され、一旦スペクトルデータ記憶部25に蓄積される。【0036】バックグラウンドノイズ除去処理が開始されると、データ解析部23は、ノイズデータ記憶部24から順次ノイズデータSnを読み出して図7(a)に示したようなクロマトグラムを作成する。そして、このクロマトグラムにおいてピーク検出を行い、溶媒のピークを除き、強度が最大となるピークを見つけ、そのピークの保持時間taと強度Iaとを取得して記憶しておく(ステップS1)。【0037】次に、データ解析部23は、分析対象のスペクトルデータSuをスペクトルデータ記憶部25から順次読み出し、図7(b)に示したようなクロマトグラムを作成する。そして、このクロマトグラムにおいて、上記保持時間taに対して所定時間幅±Δtをもって設定された時間範囲に存在する唯一のピークを見つけ、そのピークの強度Ibを取得する(ステップS2)。このピークは目的試料に含まれる目的成分ではなく、残留成分による不所望のピークであると看做される。【0038】次いで、データ解析部23は、ピーク強度Ibと先のピーク強度Iaとの強度比Rを計算する(ステップS3)。このようなピークが残留成分によるものである場合、分析が進むに従い残留成分は徐々に溶媒に溶け出してその濃度は減少するから、ピークの強度は減少してゆくことが多い。したがって、通常、予備測定の直後に実行された測定では強度比Rは1に近く、時間的に後の測定になるほど強度比Rは0に近くなる筈である。しかしながら、万が一、ここで選択したピークが目的成分のピークに重なってしまった場合、強度Ibが強度Iaよりも大きくなる可能性もある。そこで、強度比Rが1以上であるか否かを判定し(ステップS4)、Rが1以上である場合にはRを1に設定する(ステップS5)。すなわち、強度比Rは必ず1以下の値になるようにする。【0039】このようにして強度比Rが決まったならば、減算処理部22は、スペクトルデータSuから、同一質量数及び同一保持時間に対応するノイズデータSnに強度比Rを乗じた値を減算し、修正スペクトルデータSu’として修正スペクトルデータ記憶部26へ格納する(ステップS6)。もし、減算結果がマイナスとなる場合にはそのときの修正スペクトルデータSu’は0とすればよい。データ解析部23は、この修正スペクトルデータSu’を用いてマススペクトルやクロマトグラムを作成し、表示部14に描出する(ステップS7)。【0040】このようなバックグラウンドノイズ除去処理によれば、そのノイズの主たる原因であるカラム中の残留成分が複数回の測定の過程で溶出して減少しているにも拘わらず、その影響が大きいものと推定して過剰な減算を行ってしまうことがなくなる。したがって、より正確にバックグラウンドノイズのみが除去される。【0041】なお、上記説明では、予備測定によるクロマトグラム上で強度が最大となるピークを利用していたが、これは強度が減少した場合でも検出が容易であるからであって、必ずしも最大ピークである必要はない。例えば、図6に示すフローチャート中のステップS4において強度比Rが1以上である場合には、上述の如く目的試料に含まれる成分によるピークが重なっている可能性が高いから、このようなピークを用いてステップS4以降の処理を行うと正確性を欠く恐れがある。そこで、このような場合には、再びステップS1へ戻り、予備測定によるクロマトグラム上で強度が2番目に大きな次のピークを抽出し、そのピークを用いてステップS2以降の処理を実行するようにしてもよい。【0042】なお、上記実施例は一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜変更や修正を行なえることは明らかである。【図面の簡単な説明】【図1】 本発明の一実施例であるGC/MSの全体構成図。【図2】 本実施例におけるバックグラウンドノイズ除去処理に関する要部の構成図。【図3】 本実施例におけるバックグラウンドノイズ除去処理の動作説明図。【図4】 本実施例におけるバックグラウンドノイズ除去処理の動作説明図。【図5】 本発明の他の実施例であるGC/MSにおけるバックグラウンドノイズ除去処理に関する要部の構成図。【図6】 他の実施例におけるバックグラウンドノイズ除去処理のフローチャート。【図7】 他の実施例におけるバックグラウンドノイズ除去処理の動作説明図。【符号の説明】1…ガスクロマトグラフ(GC)部2…試料気化室3…カラム6…質量分析(MS)部10…検出器11…データ処理装置12…外部記憶装置20…A/D変換部21…入出力制御部22…減算処理部23…データ解析部24…ノイズデータ記憶部25…スペクトルデータ記憶部26…修正スペクトルデータ記憶部 a)目的試料の測定に先立って、試料成分を含まない前記目的試料の導入時と同一の溶媒のみを導入して所定の測定条件下でクロマトグラフ質量分析を行うことにより得られたデータをノイズデータとして記憶しておく記憶手段と、 b)前記目的試料を導入して前記所定の測定条件下でクロマトグラフ質量分析を行うことにより得られたデータに対し、同一保持時間及び同一質量数におけるノイズデータを前記記憶手段から読み出して減算する演算手段と、 c)該演算手段により減算処理されたデータを基にマススペクトル又はクロマトグラムを作成するデータ処理手段と、 を備えることを特徴とするクロマトグラフ質量分析装置。 前記演算手段は、 b1)ノイズデータを基に作成されるクロマトグラムにおいて或る1つのピークを見つけて基準ピークとするピーク抽出手段と、 b2)目的試料の分析データを基に作成されるクロマトグラムにおいて前記基準ピークの保持時間近傍のピークである比較対象ピークを検出するピーク検出手段と、 b3)基準ピークと比較対象ピークとの強度差又は強度比に応じて前記ノイズデータを修正する修正手段と、 を含むことを特徴とする請求項1に記載のクロマトグラフ質量分析装置。