生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_培養細胞凍結用マルチウェルプレート
出願番号:1999007576
年次:2004
IPC分類:7,C12M3/00,C12M1/20


特許情報キャッシュ

河村 健司 JP 3587438 特許公報(B2) 20040820 1999007576 19990114 培養細胞凍結用マルチウェルプレート 住友ベークライト株式会社 000002141 河村 健司 20041110 7 C12M3/00 C12M1/20 JP C12M3/00 A C12M1/20 7 C12M 3/00 C12M 1/20 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG) 特表平06−501431(JP,A) 特表平06−500727(JP,A) 特開平07−051049(JP,A) 特開平06−277037(JP,A) 1 2001252068 20010918 7 20011226 田中 晴絵 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、臨床検査や創薬、バイオテクノロジーの分野で主に利用される、培養細胞を用いたアッセイシステムに使用する凍結培養細胞において、培養基質上に培養された形態的特徴を維持したまま細胞を凍結し、長期保存可能になっている状態の動物細胞を凍結解凍し細胞を用いた測定系に使用する細胞培養用マルチウェルプレートに関するものである。【0002】【従来の技術】近年、臨床検査や創薬、バイオテクノロジーの分野において、培養細胞を利用した細胞障害性や毒性に関するテストが多く実施されている。こうしたテストに用いられる細胞は、動物の組織から直接採取された初代細胞や、市販されている経代が可能な株細胞などが用いられる。特に経代が可能な株細胞はその細胞の特性を維持したままの凍結保存が可能であり、多数の種類があるので良く使用されている。こうした培養細胞を用いた細胞障害性や毒性に関するテストは、多数の検体を一度に処理できるウェルを多数持つマルチウェルプレート、特に96ウェルのマルチウェルプレート(図1)を培養容器として実施される場合が多い。【0003】一般的には、試験に用いる細胞を培養用シャーレや培養用フラスコなどの培養容器上で多量に培養した後、試験用の96ウェルのマルチウェルプレートに細胞数を調製して播種し直し、細胞がマルチウェルプレートに接着、伸展して通常の培養形態を取ってから実際のテストに用いられる。培養細胞を用いたテストでは、細胞を必要量まで増殖させることに時間がかかり必要なときにすぐにテストが出来ない、また、いつでもテストを出来るようにするには常に多量の細胞を培養し維持してなければならない、といった問題点がある。まず第一の問題点のすぐにテストが出来ないという点は、素早く結果を出さなければならない臨床検査や創薬において重要な問題である。また、第二の問題点であるすぐにテストするために多量の細胞を維持しておくことは、常に細胞を培養するという時間と培養のための試薬類の無駄を抱えることになる。【0004】通常、培養動物細胞は液体窒素中で凍結保存されており、必要に応じて解凍、培養して使用されるが、凍結保存には凍結用ガラスやプラスチックチューブが用いられ、その中で細胞は単細胞で溶液中に分散された状態で凍結されている。これは、こうした球状に分散した状態で細胞を保存することが最も安定に細胞を保存する方法だからである。しかし、この方法では、凍結細胞を溶解した後、細胞が必要量になるまで培養し続けなければいけない。【0005】こうした培養の手間と時間を省略すべく特開平5−77389号公報において、培養動物細胞を培養基質に培養された状態で凍結する方法が示されている。培養基質上で細胞を培養し、その形態を保ったままで凍結する方法である。特開平5−77389号公報においては実施例として35mmのプラスチック製培養皿を用いて培養細胞の凍結を実施しており、良好な結果を得たとしている。しかし、多くの場合、解凍後、細胞は生きてはいるものの、シャーレやプレートから一部剥がれたりしており、すべての細胞が凍結前の接着した状態を保つのは難しい状況である。特に、この技術は細胞を培養することが目的でなく、その培養細胞を用いてアッセイする系で使用するため、生存している細胞はすべて同じ状態でなければならない。従って、細胞の剥がれを防止する方法を講じなければならない。【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明は、マルチウェルプレート上で培養した細胞を凍結し、解凍時にマルチウェルプレート内でのウェル毎の生存細胞の接着性を高め、解凍後は細胞培養用または実験用マルチウェルプレートとして活用することを目的とし、種々の検討を加えた結果、本発明に至った。【0007】【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、細胞を培養した状態で培養器ごと凍結させ、必要時に解凍して培養するためのマルチウェルプレートであって、多数の細胞を培養するための区画からなり、解凍時の解凍時間を短縮するためにウェルの肉厚を0.5mm以下にしたもので、解凍時に細胞を培養器表面に保持するためにその培養面に細胞接着因子を塗布することを特徴とする培養細胞凍結用マルチウェルプレートである。【0008】【発明の実施の形態】凍結させた培養細胞の解凍後の生存率を高めるためには解凍に要する時間を短縮することが重要であることが必要である。その場合、多量の熱量を加えれば解凍時間が短縮されることは明らかである。しかし、本来の目的である解凍後の細胞を培養して使用するためには、細胞が正常な状態で生存していることが重要なポイントとなり、細胞の正常性を保つためには、細胞の由来動物の体温(ヒトの場合37℃)を越えて加熱することが出来ない。これを越えて加熱すると蛋白質の変成や、ストレス蛋白質の発現が生じ細胞が正常な状態でなくなり、時には細胞死が生じるといった事態になる。従って、加温する環境温度は37℃前後でなくてはならない。【0009】通常、細胞培養用マルチウェルプレートは、顕微鏡下での観察が可能なようにポリスチレン等の透明樹脂で成形され、通常、1.5〜2.5mmの厚みを有している。この培養容器を用いた凍結培養容器を37℃インキュベーターに入れただけでは、肉厚があるため、解凍に時間がかかり、そのため、解凍後の細胞の生存率が低くなり、細胞が使用に耐えない状態となる。特にこの傾向はマルチウェルプレートの中央部でウェルが多数集まっている部分で顕著に現れる。【0010】上記の問題を解決する一つの方法として、マルチウェルプレートを形成する樹脂を一般的に使用されるポリスチレンから熱伝導率の良いプラスチック樹脂に変えることと、マルチウェルプレートの肉厚を薄くすることが考えられる。熱伝導率の良い樹脂では、マルチウェルプレート内部への熱伝導が可能となり少しでも早く内部の凍結部位に熱が伝わることとなる。さらに肉厚を薄くする事によってマルチウェルプレート自体を暖めるために使われる熱量を少なくし、少しでも早く多く、マルチウェルプレート内部の凍結物に熱を伝えようとするものである。【0011】こうして熱伝導を高め、素早い解凍を行っても、先述したように、解凍後、細胞は生きてはいるものの、シャーレやプレートから剥がれて培養液中に浮いたり、接着細胞がシート上になりそのシートの一部が剥がれて丸まったりしており、こうした細胞の剥がれを防止するためには細胞の基材への接着性を高めることである。培養において細胞の接着を高める方法は種々あるが、最も確実で簡便なのは、培養器の細胞接着領域(図2)、具体的にはウェルの底面部に細胞接着因子を塗布または固定化する方法である。細胞接着因子は、生体内で実際に細胞が存在しているときに、その足場として存在する蛋白質、ペプチドのことで、細胞との親和性、接着性の高さは生体内での細胞の安定性で証明されている。【0012】細胞接着因子をプラスチック製品の表面に塗布または固定化する方法は、単純に容器に目的とする細胞接着因子溶液を入れ物理的な吸着により容器表面に細胞接着因子を吸着させる方法、容器表面にプラズマ放電や化学薬品の処理により水酸基やアミノ基、カルボキシル基等の官能基を導入し細胞接着因子の持つ反応性の官能基群と化学的に結合させ表面に細胞接着因子を固定化する方法などがある。【0013】細胞接着因子を培養器に塗布するには、単純に成形した成型物に細胞接着因子を含む溶液を分注して1時間から1晩放置して物理吸着させることも可能であるが、より吸着量を高めるには、プレートの培養表面を、コロナ放電処理、プラズマ処理、又は酸化処理等を施すことで細胞接着因子の吸着量や吸着の強度を変えることができる。【0014】化学結合で樹脂表面に細胞接着因子を固定化するためには、培養器の培養領域に反応性の官能基を導入する必要がある。こうした官能基を導入する方法としては、酸素、一酸化炭素、窒素、アンモニアを用いたプラズマ放電処理が簡単で汎用性、生産性の点で優れている。また、表面プラズマ重合等で官能基を多数持つポリマー(アクリル酸等)を重合させ、それを利用することも可能である。培養器側の官能基と細胞接着因子を化学結合させるための方法としては、グルタルアルデヒド等の化学架橋剤を用いる方法と、一方の官能基を活性化させてもう一方の官能基と反応させる方法がある。一例を挙げると、プレート表面に一酸化炭素プラズマ処理によりカルボキシル基を導入し、水溶性カルボジイミド(WSC)で活性化させたのち、直ちに細胞接着因子を含む水溶液を入れ、細胞接着因子のアミノ基とのあいだでアミド結合を起こさせる。【0015】簡便さでは物理吸着法であるが、細胞接着因子の確実な保持や、分子量の小さな細胞接着因子には化学結合法が適している。本発明においてはどちらをの方法も使用することができる。細胞接着因子には、コラーゲンI型やコラーゲンIV型に代表されるコラーゲン類、細胞接着因子として広く認められているファイブロネクチン、入手しやすく取り扱いも簡単なゼラチン、神経細胞の培養に適しているポリ−L−リジン、生体内でコラーゲンIV型と一緒に基底膜を形成しているラミニン等、多種存在し、必要に応じてどれを用いても良い。また、1種類だけでなく、2種類、3種類と細胞接着因子を混合して使用することもできる。これらの細胞接着因子は細胞により接着挙動が異なるため、本来ならば、培養するそれぞれの細胞に適した細胞接着因子を探して用いることが最も良い方法である。しかし現実問題として個々の細胞に適した細胞接着因子を検索することは、それだけでかなりの労力を割くこととなる。従って、既に公知となっている細胞と細胞接着因子の組み合わせ(例えばポリ−L−リジンと神経細胞)以外では、コラーゲンI型コートが好適に用いられている。【0016】【実施例】(実施例)透明塩ビシートをマルチウェルプレート状に加工したものを、紫外線滅菌し、ウェル底面に0.2μmの孔径のメンブレンフィルターで濾過滅菌した塩酸酸性コラーゲンI型溶液0.03%溶液を1時間入れ、コラーゲンを塗布した。ヒト肝細胞癌由来株細胞のHepG2細胞を、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に10%のウシ胎児血清を加えた培養液で1X105細胞/mLに懸濁し、プレートの各ウェルの100μLづつ分注した。(最終細胞濃度1X104細胞/ウェル)細胞播種後プレートは、37℃、炭酸ガス濃度5%の炭酸ガス培養器中で一晩培養した。【0017】光学顕微鏡による形態観察で、細胞がプレートに接着しているのを確認した後、培養液を、細胞凍結保存用培地に交換し、−20℃の冷凍庫で培養細胞ごと凍結させた。凍結後は−80℃の冷凍庫中で保存。−80℃の冷凍庫保存3日目に、凍結したプレートを冷凍庫より取り出し、37℃のインキュベーター中で、既に37℃に加温してあるプレート加温用のアルミブロックの上で加温処理し、凍結を解凍した。解凍後そのままま状態でプレート内に存在する細胞数を計測した。さらに、プレート内をPBS200μLで3回洗浄し、生きている細胞でも剥がれた細胞や、剥がれ掛けている細胞を除去した後、プレートの培養面に接着して残っている細胞数を求めた。【0018】(比較例)透明塩ビシートをマルチウェルプレート状に加工したものを、紫外線滅菌した。ヒト肝細胞癌由来株細胞のHepG2細胞を、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に10%のウシ胎児血清を加えた培養液で1X105細胞/mLに懸濁し、プレートの各ウェルの100μLづつ分注した。(最終細胞濃度1X104細胞/ウェル)細胞播種後プレートは、37℃、炭酸ガス濃度5%の炭酸ガス培養器中で一晩培養した。【0019】光学顕微鏡による形態観察で、細胞がプレートに接着しているのを確認した後、培養液を、細胞凍結保存用培地に交換し、−20℃の冷凍庫で培養細胞ごと凍結させた。凍結後は−80℃の冷凍庫中で保存。−80℃の冷凍庫保存3日目に、凍結したプレートを冷凍庫より取り出し、37℃のインキュベーター中で加温処理し、凍結を解凍した。解凍後そのままま状態でプレート内に存在する細胞数を計測した。さらに、プレート内をPBS200μLで3回洗浄し、生きている細胞でも剥がれた細胞や、剥がれ掛けている細胞を除去した後、プレートの培養面に接着して残っている細胞数を求めた。【0020】【0021】上記のように、実施例1、2において凍結状態の解凍時間には影響がないが、細胞生存率で数%であるが、表面にコラーゲンを塗布したほうが、細胞生存率が高くり、それ以上に、剥がれた細胞、剥がれ掛けている細胞を除いて接着細胞だけで生存率を計算するとコラーゲン塗布の方が細胞生存率の落ち込みが8%、コラーゲン塗布のない方が、18%と大きな差がみられた。【0022】【発明の効果】本発明の培養面に細胞接着因子を塗布した培養細胞凍結用マルチウェルプレートで細胞を培養することにより、細胞を培養状態で凍結させられ、細胞が必要な時に凍結融解させた際に剥がれる細胞が少なく、細胞を用いた実験が安定に行えるので、細胞が増えるのを待ったり、細胞を常に培養しておく必要が無く、時間的、経済的な無駄を減らすことが出来る。【図面の簡単な説明】【図1】細胞培養用のマルチウェルプレートの1例の斜視図【図2】細胞培養用マルチウェルプレートのウェル断面図【符号の説明】11 細胞培養用マルチウェルプレート12 ウェル13 マルチウェルプレート用プレート蓋14 ウェル内細胞培養領域 多数の細胞を培養するための区画からなる培養細胞凍結用マルチウェルプレートで細胞を培養し、培養した状態で培養器ごと凍結させ、加温して解凍する培養細胞の解凍方法であって、該マルチウェルプレートがプラスチック樹脂からなり、細胞培養部の樹脂の肉厚が0.5mm以下であり、解凍時に細胞を培養器表面に保持するためにその培養面にコラーゲン、ラミニン、又はフィブロネクチンからなる細胞外マトリックス、又はポリ−L−リジンのポリペプチドである細胞接着因子を塗布、または化学結合により保持することを特徴とする培養細胞の解凍方法。


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