タイトル: | 特許公報(B2)_L型カルシウムチャンネルエンハンサーとしてのアプリジン |
出願番号: | 1998548441 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | A61K 38/00,A61P 9/04,A61K 35/56 |
クラム,ウイリアム・ジエイ フエアクロース,グリン・テイ JP 4327260 特許公報(B2) 20090619 1998548441 19980506 L型カルシウムチャンネルエンハンサーとしてのアプリジン フアルマ・マル・エセ・ア クラム,ウイリアム・ジエイ 川口 義雄 伏見 直哉 田中 夏夫 クラム,ウイリアム・ジエイ フエアクロース,グリン・テイ US 60/045,803 19970507 20090909 A61K 38/00 20060101AFI20090820BHJP A61P 9/04 20060101ALI20090820BHJP A61K 35/56 20060101ALN20090820BHJP JPA61K37/02A61P9/04A61K35/56 A61K 38/00 A61P 9/04 CA/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) 特表平05−502441(JP,A) Catterall ,W.A. et al., Trends in Pharmacological Sciences, 1992年, Vol.13, pp.256-262 11 US1998009238 19980506 WO1998050048 19981112 2001526657 20011218 9 20050426 安居 拓哉 発明の背景うっ血性心不全(CHF)は、あらゆる入院成人患者において見られる主要な症状の1つである。米国においては、200〜300万人の成人がCHFを有すると推定され、毎年約50万人が新たに診断されている。今日では65歳以上の全成人のうちの約11%がCHFを有している。CHFは管理介護(managed care)される病気の中では最も費用がかかる病気であり、CHFに関わる年間歳出は100億ドルを超える。利用可能な治療法によって、いくらかの患者ではかなりの改善が見られるものの、罹病率および死亡率は相変わらず高い。5年後死亡率は多くのガンを上回り、2年後死亡率ではこの病気と診断された患者の50%が死亡することからも、CHFは明らかに重要な健康上の問題である。CHFに対する治療の最終目的は心筋ポンプの効率を上げることにある。これは現在、心臓の働きを低下させること(ACE阻害剤、血管拡張薬、利尿薬、およびβアドレナリン作用性遮断薬)、および/または、心筋の収縮性を高めること(ジゴキシンおよびホスホジエステラーゼ阻害剤)によって達成されている。残念ながら、現行の心不全に対する筋変力性治療には、以下のような大きな制約が伴う。すなわち、ジゴキシンおよびホスホジエステラーゼ阻害剤には致命的な毒性が伴い、β遮断薬は心不全が進行するにつれ変力化合物としての効力が低下する。心不全において起こる細胞変化のいくつかを表1にまとめる。変力治療に対する1つの有望な方法は、心臓のイオンチャンネルの調節である。表1に示すように、カルシウムチャンネルの密度は、欠陥を有したヒトの心臓において変化していないことから、このカルシウムチャンネル密度は変力治療のためのもっともらしいターゲットとなる。カルシウムイオン(Ca2+)はこれらのチャンネルを通って心筋細胞に流入し、興奮収縮および心室からの血液の送出を起こす。細胞外カルシウムの調節は、いくつかの心臓血管障害の治療において決定的な役割を果たす。カルシウムイオンを調節するために使用される最も一般的な物質は、カルシウムアンタゴニストまたはカルシウムチャンネル遮断薬である。本質的にこれらの化合物はカルシウムイオンの細胞への流入を「遅らせる」ことにより、心筋の力または収縮性を低下させ、その結果、血圧を低下させる。さらに加えて、これらの物質は冠状動脈の異常な血管収縮によって引き起こされたアンギナ(狭心症)の治療およびアンギナに関連する古典的な努力においても用いられている。カルシウムイオンを調節する物質のより小さなクラスは、カルシウムアゴニストまたはカルシウムチャンネルエンハンサーである。これらの化合物は細胞壁を通ってカルシウムイオンが移動するのを促進することにより、収縮性を高める。そのような化合物は、うっ血性心不全などの心出力低下障害の治療においても有用であると考えられる。また一方でそれらの化合物は、カルシウムチャンネルの薬理学的研究における道具としても用いることができる。カルシウムチャンネルエンハンサーを使用するにあたって遭遇する典型的な問題は、これらが血圧を上昇させることである。驚くべきことに、アプリジン(Aplidine)は非常に効果的なカルシウムチャンネルエンハンサーであるにも拘らず、血圧には何の影響も及ぼさないことがこれまでに分かってきた。発明の概要本発明は、以下の構造を有するアプリジン(デヒドロジデムニンB)として知られる化合物に対して発見された新しい用途に関する。アプリジンはヒトの心臓における強力なL型カルシウムチャンネルエンハンサーであることが発見された。この効力のために、アプリジンは心房細動の治療に有用であるだけでなく、うっ血性心不全の治療にも非常に有用である。同様に、アプリジンの合成誘導体および類似体もまたこの有用性を有すると考えられる。アプリジンは、心臓の収縮性を増大させる、心拍数を低下させる、血管抵抗を低下させる、圧−心拍数積(酸素消費量指標として)を低下させる、またはクラスIIIの抗不整脈活性を生じるなどの、有益な心臓血管作用を示すと考えられる。このような薬理学的特性を有するために、アプリジンはうっ血性心不全などの心血管疾患において有用である。また本発明は、治療の必要な哺乳動物におけるうっ血性心不全の治療方法も開示しており、該方法においては前記哺乳動物に有効量のアプリジンを投与する。さらに、うっ血性心不全の治療に用いられる薬剤であって、有効量のアプリジン、またはその製薬上許容される塩を、1またはそれ以上の製薬上許容される担体、希釈剤、または賦形剤と混合して成る薬剤が提供される。所望により、アプリジンと共に他の活性成分、たとえばβアドレナリン性受容体アゴニスト、ホスホジエステラーゼ阻害剤などを投与してもよい。当業者によって認識されるように、アプリジンは1またはそれ以上の不斉炭素原子を含み得る。本発明は何ら特定の異性体に限定されることなく、すべての個々の異性体ならびに異性体混合物およびラセミ体を包含する。【図面の簡単な説明】図1Aおよび1Bは、mg/mlのアプリジン(1A)およびジデムニンB(DB、1B)とヒト心房カルシウム電流(ICa)との相互作用を示すものであり、該心房カルシウム電流(ICa)は、細胞サイズの指標としてのピコファラデー(pF)に対する電流のピコアンペア(pA)の比として測定した。細胞は休止状態よりも大きいため、大きな電流が発生する可能性があるので、数値は標準化して表してある。図2は、ヒト心房ICaに対するアプリジンおよびジデムニンB(DB)の作用を比較した複合用量応答曲線である。図示されるように、ジデムニンB(DB)が一切効果を有しないのに対し、アプリジンは高い効果を有し、電流値を大きく増大させる。発明の詳細な説明アプリジンは、アプリジウム(Aplidium)属[マンジュウボヤ属]の被嚢動物から単離することができ、より詳細にはアプリジウム・アルビカンス(Aplidium albicans)種から単離することができる。アプリジウム・アルビカンス種は、イベリア地中海沿岸ならびにバレアレス諸島において見られる。またこの種は、グレートブリテン島、イギリス海峡、ならびにアフリカ沿岸およびポルトガルでも発見されており、岩屑、珊瑚礁、および岩陰の藻類に群生することを好むようである。それらはより受光性の高い生育環境においても見ることができる。被嚢動物のコロニーは一般的に平坦かつ葉状である(直径2.5cm)。コロニーはゼリー状であり、全体に砂で覆われているため砂色を有している。個虫は体長は10mmで白っぽい色をしており、入水管は6つの突起を有し、3つの出水孔舌状突起を有しており、これらがこの種の特徴となっている。一般には10〜11列の鰓孔が存在する。胃には6本の目立った縦褶を有する。生殖腺はこの科に特有のものであって、後腹部内に消化管の下方の1個またはそれ以上の卵巣、および1または2列から成る複数の精巣を有する。幼生は1〜9個が出水腔内で哺育され、これらの幼生は前部に3つの吸入孔(cupping−glass)と数個の小嚢構造を有している。典型的な手法においては、単離方法は一般に均質化した被嚢動物のアルコール抽出と、アプリジンの選択的精製とを含む。アプリジンは全合成によって、あるいはジデムニンAからの半合成によって調製することもできる。いずれの場合も、これらに続いて、ペプチド化学における保護および活性化の標準的処理により調製される。たとえば以下のような処理である。ピルビン酸 + L−Pro ――――――> 側鎖側鎖 + ジデムニンA ――――――> アプリジンしたがって、たとえばPro−OBzlのDMF溶液を、ピルビン酸およびHOBtと混合し、これにDCCのCH2Cl2溶液を添加する。反応生成物は精製することができ、ピルビル−Pro−OBzlに対応する化学的および物理的特性を示す。この生成物のCH2Cl2溶液に、EDCを加え、次にジデムニンAを加える。蒸発残留物を精製すると、天然のアプリジンと同様の化学的、物理的、分光学的および生物学的特性を有するアプリジンが得られる。アプリジン(あらゆる異性体の混合物を含む)は、カルシウムチャンネルアゴニストとして機能して、心臓の収縮性を高める。当業者であれば、個々の鏡像異性体が、ここに開示されたものよりも良好なカルシウムアゴニスト活性を示すこと、たとえば心臓の収縮性や血管緊張を高めることができることを理解するであろう。これらの薬理学的活性は、以下のin vitro(試験管内)モデルにおいて試験した。ヒト心筋細胞の分離ヒト心房筋細胞は、外科手術の際に心肺バイパスを受ける患者の心臓から得られたヒト右心耳の標本より得た。組織試料は直ちに下記に組成を示すpH7.4に滴定された心臓麻痺溶液に浸漬し、0〜4℃において100%O2によってバブリングした。上記心臓麻痺溶液は、50mmol/l KH2PO4、8mmol/l MgSO4、10mmol/l NaHO3、5mmol/l アデノシン、25mmol/l タウリン、140mmol/l グルコース、および100mmol/l マンニトールを含む。次に標本を0.5〜1mm角に細かく切刻み、超低密度カルシウム洗浄溶液を含む50ml円錐チューブに移した。上記超低密度カルシウム洗浄溶液は、137mmol/l NaCl、5mmol/l KH2PO4、1mmol/l MgSO4、10mmol/l タウリン、10mmol/l グルコース、5mmol/l HEPES、および100μmol/l(μM) EGTAを含み、pH=7.4(22〜24℃)である。次に、組織を100%O2で5分間連続的にバブリングすることにより、穏やかに攪拌した。次に、下記の溶液5ml中で組織をインキュベートし、さらに100%O2によるバブリングを続けた。上記溶液は、137mmol/l NaCl、5mmol/l KH2PO4、10mmol/l タウリン、10mmol/l グルコース、5mmol/l HEPESを含み、さらにこれらに0.1%ウシアルブミン、2.2mg/mlコラゲナーゼV型および1.0mg/mlプロテアーゼXXIV型(Sigma Chemical社)を補充したものであり、pH=7.4(37℃)である。40分後に上清を除去し、廃棄した。細胞塊(chunk)は、上記と同一のイオン組成を有するが、コラゲナーゼのみと100μmol/l CaCl2とを補充した溶液内でインキュベートした。培養液の顕微鏡観察を5〜10分おきに行い、単離された細胞の数と質を調べた。収量が最大に達したとみられる時点で、細胞懸濁液を2分間の遠心分離にかけ、結果として得られたペレットを改良クラフトブルーエ(Kraftbruhe)溶液に再懸濁した。この溶液は、25mmol/l KCl、10mmol/l KH2PO4、25mmol/l タウリン、0.5mmol/l EGTA、22mmol/l グルコース、55mmol/l グルタミン酸、および0.1%ウシアルブミンを含み、pH=7.3(22〜24℃)である。細胞は単離後8時間以内に使用した。正常な形態的特徴(桿状で、はっきりとした横紋が見られ、表面に異常がない)を有する細胞のみを使用した。電気生理学イオン電流はパッチクランプ技術の全細胞変異体を用いて測定した。ピペット電極は、水平ピペット引抜器(horizontal pipette puller)を用いてホウケイ酸ガラスから新たに製造し、ピペットチップは、ミクロ加熱炉(microforge)を用いて加熱研磨した。大部分の実験において、ピペットはチップの開口が1〜2μmになるように、また内部溶液を充填したときのチップ抵抗が1〜2MΩになるように引抜いた。実験は、細胞内灌流の開始後イオン電流値およびキネティクスが安定したところで開始した(典型的には膜パッチの破裂後5分以内)。目的のイオン電流を他の混入電流から薬理学的に単離するために、異なる組成を有する内部および外部溶液を使用した。ICa測定用溶液カルシウム(Ca)電流は、以下の組成を有する外部溶液を用いて測定した。1.8mM CaCl2、137mM NaCl、20mM CsCl、4mM KCl、1mM MgCl2、10mM HEPES、10mM デキストロース。この溶液はNaOHによってpH=7.4に調整した。標準内部溶液は以下の組成を有し、NaOHによってpH=7.4に調整した。標準内部溶液の組成は、120mM CsCl、20mM TEA−Cl、5mM NaCl、1mM CaCl2、10mM EGTA、10mM HEPES、5mM MgATP、0.2mM Na−GTPであり、CsOHによってpH=7.2に調節した。実験は電流停止を最小限に抑えるために室温(22℃)で行った。電流の停止を避けるために、細胞を様々な濃度の薬剤に暴露し、薬剤に暴露しなかった細胞に対する群との比較を行った。アプリジンおよびジデムニンBの試験結果を本明細書に添付の図1A、1Bおよび図2に示した。図示されるように、アプリジンはジデムニンB(DB)よりもはるかに優れており、強力なL型カルシウムチャンネルエンハンサーである。アプリジンは、経口、舌下、皮下、筋内、静脈内、経皮、および直腸経路といった数々の経路のいずれによっても投与することができる。この化合物は通常は薬剤組成物の形態で用いられる。そのような組成物は製薬技術分野において周知の方法によって調製され、約1重量%〜約95重量%のアプリジンを含んで成る。そのような薬剤組成物は、少なくとも活性成分としてのアプリジンと、製薬上許容される担体とを含んで成る。そのような薬剤組成物を製造する場合、活性成分は通常担体と混合されるか、担体によって希釈されるか、あるいは、カプセル、小袋、紙または他の容器のいずれの形態であってもよい担体に封入される。担体が希釈剤として機能する場合、該担体は活性成分に対するビヒクル、賦形剤または媒体として機能する、固体、半固体または液体の材料とすることができる。したがって、組成物は錠剤、丸剤、粉剤、菓子状剤、小袋剤、カシュ剤、エリキシル剤、乳剤、水剤、シロップ剤、懸濁剤、エアロゾル剤(固体としてまたは液体媒質中)、たとえば10重量%までの活性化合物を含有する軟膏剤、ソフトおよびハードゼラチンカプセル剤、坐剤、無菌注射可能な液剤、および無菌包装された粉剤の形態をとることができる。適切な担体、賦形剤、および希釈剤のいくつかの例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、ケイ酸カルシウム、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、トラガカント、ゼラチン、シロップ、メチルセルロース、メチル−およびプロピル−ヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、水、および鉱油が含まれる。製剤は潤滑剤、湿潤剤、乳化および懸濁剤、防腐剤、甘味料、あるいは香料をさらに含んでいてもよい。当該技術分野における周知の方法を用いることにより、患者への投与後の活性成分の急速放出、持続性放出、または遅延放出を達成するように、この組成物を製剤化することができる。経口投与については、アプリジンを担体および希釈剤と混合して、錠剤に成形するか、あるいはゼラチンカプセル内に封入することができる。あるいはこの混合物を液体、たとえば10%グルコース水溶液、等張塩溶液、滅菌水などの液体に溶解し、静脈内にまたは注射によって投与することもできる。そのような溶液は、所望により凍結乾燥して無菌アンプルに保存することもできる。この無菌アンプルに滅菌水を付加すると物質が元に戻り、該物質を筋内注射に用いることができる。組成物は単位用量の形で製剤化することが望ましく、各用量は、有効量の1またはそれ以上の式Iで表される化合物、典型的には約1mg〜約500mg、より一般的には約5mg〜約300mgの活性成分を含むものである。「単位用量の形態」という用語は、ヒト被験者および他の哺乳動物に対する単位投与量として適切な物理的に単離された単位を指し、各単位は所望の治療効果を発揮するように計算された所定量の活性物質を、必要な製薬担体とともに含んでいる。アプリジンは広範囲の投与量にわたって有効であることが期待される。たとえば、アプリジンの有効量は通常、1日あたり約0.005mg〜約50mg/kg体重の範囲に収まる。成人の治療においては、約0.001mg〜約20mg/kgの範囲を1日量として、1回または分割して投与することが好ましい。しかしながら、実際に投与される化合物の量は、治療すべき状態、投与すべき化合物の選択、年齢、体重および患者個人の反応を含む関連状況、患者の症状の重さ、および選択された投与経路を考慮に入れて、医師によって決定されるものであり、したがって上記の投与量の範囲は本発明の範囲を何ら限定するためのものでないことが理解されよう。以下の実施例を参照して本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本発明の理解を助けるためのものであって、本発明を限定するものとして解釈されるものではない。ここに報告したすべてのパーセントは、特に指示のない限り、重量パーセントである。すべての温度は摂氏温度で表されている。実施例1天然アプリジンの抽出と単離白色単生被嚢動物をバレアレス諸島のイビザ島付近(スペイン)で採集した。この被嚢動物は、バルセロナ(スペイン)にあるバルセロナ大学のザビエル・テュロン(Xavier Turon)博士によって、アプリジウム・アルビカンス(Aplidium albicans)であると同定された。試料は、Centre d’Etudes Avancats,Blanes(Germona、スペイン)に保存されている。凍結した被嚢動物をメタノールで抽出した。残留物を溶媒分画して3つの活性画分を得た。これらの画分はTLC(薄層クロマトグラフィー)における類似性に従って組み合わせた。粗活性画分を分割し、活性をメタノール層に濃縮した。メタノール層をシリカゲル重力カラム(クロロホルムおよびクロロホルム−メタノール混合物)のクロマトグラフィーにかけたところ、1つの活性画分が得られた。この活性画分を逆相高速液体クロマトグラフィー(RPC18HPLC)によりさらに精製したところ、2つのピーク(IおよびII)が得られた。TLCによる分析の結果、各HPLC画分内に2つの同一のスポットが認められた。それぞれの画分を再度導入したところ、IおよびIIと同一の保持時間の2つのピークが得られた。IおよびIIの同時導入により、各画分内に2つの同一のピーク(配座異性体の可能性がある)が存在することが確認され、これによりIからIIへの、あるいはIIからIへの迅速な相互転換が示唆される。実施例2ジデムニンAからのアプリジンの半合成アプリジンを得ることもでき、その構造は、天然のジデムニンAに適当な側鎖を結合させることによって調製された半合成試料との比較により確認した。半合成試料に対して得られたデータは、天然のアプリジンに対するデータと完全に一致していた。2.1 ピルビル−Pro−OBzlの合成Pro−OBzlの塩酸塩(10.2g,42mmol)を乾燥DMF(30ml)に溶解し、0℃において、NMM(N−メチルモルホリン,4.7ml,42mmol)によって中和し、この溶液を、ピルビン酸(8.8g,100mmol)およびHOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール,16.8g,110mmol)のCH2Cl2−DMF(90ml,8:1)溶液と混合した。DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド,22.6g,110mmol)のCH2Cl2(35ml)溶液を、0℃において攪拌しながら上記溶液に添加した。反応混合液を0℃で2時間攪拌し、室温で一晩放置した。DCCIをろ取し、CH2Cl2(20ml)で洗浄した。ろ液を蒸発乾燥させ、その残留物をEtOAc中に取りこみ、5% クエン酸、水、5% NaHCO3、最後に水の順で連続的に洗浄し、中性pHにした。有機層は乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。ヘキサン−EtOAc(2:1)を用いて残留物のSiO2クロマトグラフィーを行い、表題の化合物(11g,95%)を得た。[α]D25=-78.57(c 0.14,CHCl3);Rf=0.63(19:1,CHCl3/MeOH);分析値、C15H18NO4に対する計算値(M+H): 276.1235;実測値: 276.1235(M+H,HRFABMS)2.2 ピルビル−プロリンの合成上記で合成された保護されたジペプチド(11.0g,40mmol)をEtOAc(75ml)に溶解し、水素存在下にPd/C上で2時間攪拌した。その後、触媒をろ過により除去し、ろ液を蒸発乾燥させた。残留物をEtOAc−ヘキサンから結晶化し、以下のような脱保護されたペプチド(6.9g,93%)を得た。[α]D25=-103.99(c 0.124,CHCl3);Rf=0.4163(19:1:0.5,CHCl3/MeOH/AcOH);分析値、C8H12NO4に対する計算値(M+H): 186.0766;実測値:186.0765(M+H,HRFABMS)2.3 アプリジンの合成EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド,4.27g,22.3mmol)を、10℃において攪拌しながら、Pyrvu−Pro(8.2g,44.5mmol)の乾燥CH2Cl2(40ml)溶液に添加した。混合液を10℃で2時間攪拌した後、0℃まで冷却した。ジデムニンA(1.4g,1.48mmol)のCH2Cl2−DMF(10ml,4:1)溶液を添加し、その透明の溶液を0℃で2時間攪拌した後、冷蔵庫内に一晩放置した。DMAP(4−ジメチルアミノピリジン,25mg)を反応混合液に添加し、これを再度冷蔵庫内に48時間放置した。溶媒を蒸発させて乾燥状態にし、残留物をEtOAcに取り、5%NaHCO3および水で洗浄してpHを中性にした。有機層は乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。こうして得られた残留物をCHCl3−MeOH(19:1)を用いて、シリカゲルクロマトグラフィーにかけ、以下のようなアプリジン(1.4g,84%,TLC上に2スポット)を得た。[α]D25=-95.384(c 0.06,MeOH);Rf=0.51および0.44(19:1,CHCl3/MeOH);分析値、C57H88N7O15に対する計算値(M+H): 1110.6338;実測値:1110.6355(M+H,HRFABMS)同系列の反応を僅かに変更を加えて行うことができる。特にEDCの代わりにDDCを用いることができるが、この場合収率が僅かに低下する。以上のように、本発明の好適な実施形態を含めて、本発明を詳細に説明してきた。しかしながら、当業者であれば、本発明の開示を考慮して以下の請求項に記載される本発明の範囲と精神の範囲内で本発明に対して変更および/または改良を施すであろうことが認識される。 哺乳類患者において強心効果を与えるための薬剤の製造における、有効量の化合物アプリジンまたはその製薬上許容される塩と、製薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤との使用。 前記薬剤が非経口投与用に製剤化されることを特徴とする請求項1に記載の使用。 前記薬剤が静脈内投与用に製剤化されることを特徴とする請求項1に記載の使用。 前記薬剤が腹腔内投与用に製剤化されることを特徴とする請求項1に記載の使用。 前記薬剤が筋肉内投与用に製剤化されることを特徴とする請求項1に記載の使用。 前記薬剤が皮下投与用に製剤化されることを特徴とする請求項1に記載の使用。 前記薬剤が経皮投与用に製剤化されることを特徴とする請求項1に記載の使用。 前記薬剤が経口投与用に製剤化されることを特徴とする請求項1に記載の使用。 哺乳類患者におけるうっ血性心不全の治療のための薬剤の製造における、有効量の化合物アプリジンまたはその製薬上許容される塩と、製薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤との使用。 哺乳類患者において心不全を患った患者の心不全からの生存を引延ばすための薬剤の製造における、有効量の化合物アプリジンまたはその製薬上許容される塩と、製薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤との使用。 前記薬剤が栄養製品をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の使用。