タイトル: | 特許公報(B2)_酵母エキスの製造方法 |
出願番号: | 1998543745 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A23L 1/28,A61K 8/99,A61Q 19/00 |
加戸 久生 柴田 巧 小林 富二男 JP 3935510 特許公報(B2) 20070330 1998543745 19980416 酵母エキスの製造方法 サッポロビール株式会社 矢野 裕也 加戸 久生 柴田 巧 小林 富二男 JP 1997113648 19970416 20070627 A23L 1/28 20060101AFI20070607BHJP A61K 8/99 20060101ALI20070607BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20070607BHJP JPA23L1/28 AA61K8/99A61Q19/00 A23L 1/28 特開平06−070716(JP,A) 特開昭63−102650(JP,A) 特開昭57−026585(JP,A) 特開昭62−040261(JP,A) 特開平02−219560(JP,A) 特開平05−201872(JP,A) 国際公開第95/016431(WO,A1) 特開平04−248968(JP,A) 9 JP1998001741 19980416 WO1998046089 19981022 11 20050413 光本 美奈子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、酵母エキスの製造方法に関し、詳しくは酵母エキスに特有の黄色ないしは茶褐色の色および必要に応じてさらに酵母臭と言われる特徴的な臭いを積極的に除く工程を組み入れた酵母エキスの製造方法並びに該酵母エキスを配合した化粧品に関する。【0002】【従来の技術】酵母エキスは、天然素材からなる調味料として広く用いられており、その特長は安全性が高く、化学合成した調味料にはない独特のうま味,こく味等の複雑な味質を有していることである。さらに、酵母エキスが有用なアミノ酸,核酸等を豊富に含んでいることを生かして、近年は化粧品素材,健康食品素材としても注目されている。しかし、酵母エキスには特有の黄色ないし茶褐色の色および酵母臭と言われる特徴的な臭いが存在し、これらが酵母エキスの応用範囲あるいは使用量を大きく制限する要因となっている。【0003】したがって、かかる着色あるいは臭いを除去することを目的として、従来より様々な提案がなされている。例えば、疎水性樹脂による脱臭(特願平4−131064号公報等)、酵素処理による脱臭、酸,アルカリ等の化学的処理による方法(特開昭51−11188号公報等)、あるいは酵母エキス製造用酵母の選抜(特開昭49−66861号公報)が挙げられる。しかし、これらの方法は工程が頻雑な割に、得られる効果が少ない等の欠点があり、あまり実施されていないのが現状である。【0004】酵母エキスが着色する要因は、酵母エキス製造工程中において、糖質とアミノ酸とが加熱処理によってアミノカルボニル反応を起こし、茶褐色を呈する物質が生成することである。特に、酵母エキスを原料として用いている調味料,化粧品においては、その製造過程で加熱処理を行っており、原料の段階ではほぼ無色であったものも、製造方法の途中で着色してしまう危険性がある。【0005】【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明では常法によって得られる酵母の水あるいは熱水抽出液を加熱処理することにより、予め酵母エキスに着色物質を生成させた後、該着色物質を分離・除去することによって、酵母エキスに特有の着色を著しく低減することができることを見出し、本発明を完成するに至った。【0006】本発明の目的は、酵母エキスに特有の着色や臭いを改善し、しかもアミノ酸等の有用成分は従来と変わらない酵母エキスの製造方法を提供すると共に、該酵母エキスを従来酵母エキスの利用が困難であった分野に積極的に利用することである。【0007】【課題を解決するための手段】本発明は第1に、常法により得られた酵母の水あるいは熱水抽出液を加熱することにより着色成分を生成させる工程と、該加熱工程により着色された抽出液の着色成分を除去するためにイオン交換樹脂と接触させる吸着工程より構成されることを特徴とする酵母エキスの製造方法である。本発明は第2に、常法により得られた酵母の水あるいは熱水抽出液を加熱することにより着色成分を生成させる工程と、該加熱工程により生じた固形物及び前記抽出液中の高分子成分を除去するための濾過工程と、該濾過工程を経た抽出液中の着色成分を除去するためにイオン交換樹脂と接触させる吸着工程より構成されることを特徴とする酵母エキスの製造方法である。本発明は第3に、常法により得られた酵母の水あるいは熱水抽出液を加熱することにより着色成分を生成させる工程と、着色された酵母抽出液を水と混合可能な有機溶媒と接触させて、該抽出液中の高分子成分及び固形物を沈澱させ除去する接触工程と、該接触工程を経た前記抽出液をイオン交換樹脂と接触させて該抽出液中の着色成分を除去するための吸着工程より構成されることを特徴とする酵母エキスの製造方法である。本発明は第4に、上記本発明の方法によって製造された酵母エキスである。また、第5の本発明は、上記本発明の酵母エキスを配合したことを特徴とする化粧品である。【0008】【発明の実施の形態】本発明の方法に用いられる原料の酵母抽出液は常法により得られるものであればよく、その製法は問わない。すなわち、自己消化法、タンパク質分解酵素,核酸分解酵素等の酵素を用いる酵素分解法、酸やアルカリによる分解等の化学的処理により製造する方法等のいずれの方法によって製造されたものであっても本発明の原料として用いることができる。【0009】また、上記抽出液の製造に用いる酵母についても特に制限はなく、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に代表される醸造用酵母、パン酵母は勿論のこと、トルラ属酵母等の通常酵母エキスの製造に用いられているどのような酵母も利用することができる。【0010】さらに、酵母は酵母エキスの製造のために新たに培養された酵母ばかりでなく、ビール,清酒等の醸造後の酵母であっても差し支えない。なお、ビール醸造に利用された酵母の場合、ホップ由来の苦味、渋味等を有しているので、水洗その他の脱苦味等の処理をした後、酵母エキスの製造に用いることが望ましい。また、生の酵母ばかりでなく、ドラム乾燥,噴霧乾燥等により製造された乾燥酵母も原料として用いることができる。【0011】次に、上記酵母の水あるいは熱水抽出液を用いる本発明の方法について詳しく説明する。【0012】加熱工程は、該酵母抽出液を着色するための工程であり、通常は高温で短時間処理する。すなわち、酵母抽出液を60〜150℃、好ましくは100〜150℃で20秒〜30分間、好ましくは1〜10分間加熱処理を行う。これにより、アミノカルボニル反応等によって着色性物質を生成させると共に、酵母抽出液の殺菌をも同時に行うことができる。【0013】加熱工程の後、着色された酵母抽出液をイオン交換樹脂と接触させて該酵母抽出液中の着色成分を除去するための吸着工程を実施するに先立ち、加熱工程で生じた固形物を除去するための工程を採用することができる。すなわち、上記反応によって生成する固形物は主にタンパク質の熱凝固物等であるが、これらは抽出液中に残存する高分子物質と共にエタノール,メタノール等のアルコール類あるいはアセトン等の水と混合可能な有機溶媒と接触させて沈澱させる操作によって除去することができる。その他、限外濾過や低阻止逆浸透膜等の膜処理を行うことにより除去することができる。この予備的工程を採用すると、次工程で用いるイオン交換樹脂との接触工程で目詰り等のトラブルを防ぐことができ、しかも酵母エキスに必要なアミノ酸等を吸着するおそれのないイオン交換能があまり強くないものを使用できるので好都合である。【0014】さらに、加熱工程前に酵母抽出液の濃縮工程と固液分離工程を設けて原料の酵母抽出液から着色要因物質、低溶解物質、不純物等を予め除去しておけば、同様の効果が期待できる。【0015】着色された酵母抽出液をイオン交換樹脂と接触させて該酵母抽出液中の着色成分を除去するための吸着工程は、イオン交換基を有する樹脂と接触させることにより、該酵母抽出液中に存在(予備的除去工程を実施した場合は残存)する着色物質を吸着させて除く工程である。【0016】この工程に用いることができるイオン交換樹脂としては、酵母エキス中の有用な成分であるアミノ酸類を吸着しないものを選択すべきであり、さらに酵母抽出液の脱臭及び苦味成分を除去するために、疎水性担体を用いることがより一層好ましい。また、イオン交換樹脂は、支持体に設けて用いることが好ましく、この場合の支持体としては疎水基を有する合成樹脂や活性炭などのように、酵母抽出液に存在する特有の臭い成分を除去することができるものが好適である。【0017】酵母抽出液をイオン交換樹脂で処理する条件としては、該樹脂と酵母抽出液が可能な限り長時間接触する条件が好ましい。ほぼ無色として許容できる範囲の酵母エキスを得るためには、通液速度を空間線速度(SV)として2.0以下とし、通液量は樹脂体積の10倍以下とすることが望ましい。【0018】このようにして得られた着色および臭いの低減された酵母エキスは、そのまま又は適度な濃度に濃縮して製品とすることができる。また、保存時の雑菌による汚染を防ぐため、適当な防腐剤を目的に応じて加えることも可能である。【0019】さらには、酵母エキスを噴霧乾燥,凍結乾燥等により乾燥することによって、保存性を高めることができる。しかし、濃縮や乾燥の工程において高温に晒されると、再度着色の恐れがあるため、温度条件を適切に選定すべきである。【0020】本発明によって得られた酵母エキスは、必要成分であるアミノ酸類は未処理のものと比較して殆ど減少していないにもかかわらず、固形分濃度10%の場合、外観上無色又は微黄色を呈し、臭いも殆どない。このように、着色や臭いが認められないため、この酵母エキスを調味料として用いた場合、他の素材と混合しやすく、従来品では着色や臭いのために、他の素材との調和が困難であった和風調味料としても用いることができる。また、化粧品素材としてクリーム,乳液等の他、化粧水等の白色系あるいは透明な液剤への添加も可能である。この他にも健康飲料,健康食品素材,入浴剤としても利用することができる。【0021】上記したように、本発明により得られる酵母エキスは、従来用いられていた酵母エキスの用途以外の新しい用途への利用が可能であり、酵母エキスそのものの利用範囲を拡大することが期待される。【0022】【実施例】次に、本発明を実施例によって詳しく説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。【0023】実施例1(1)加熱工程ビール醸造に使用した後の泥状のビール酵母を遠心分離(回転数3000rpm,10分間)してビール分を除去した後、酵母濃度が40%となるように加水したものを原料として用いた。この原料150Lを用い、55℃で48時間自己消化を行った後、遠心分離(回転数3000rpm,10分間)により固形物を除去し、液体部分95Lを得た。続いて、これをロータリーエバポレーターを用いて20Lまで濃縮した後、120℃で30秒間の加熱処理をした。【0024】(2)濾過工程上記(1)によって得た着色酵母抽出液を予め100メッシュのふるいに通して大きな固形物を除去した後、加水しながら食塩阻止率10%の低阻止逆浸透膜を用いて酵母抽出液中の高分子物質を除去し、固形分10%の茶褐色の酵母エキス50Lを得た。【0025】(3)吸着工程上記(2)で得た該酵母抽出液のうち5Lを、活性炭を支持体としたイオン交換樹脂を充填したカラムに通液し、2時間で溶出させる吸着工程を行った。このときの空間線速度は1.0、樹脂体積は2.5L、通液倍率は2.0とした。さらに、同じ流速で水を1時間通液して微黄色で無臭の酵母エキス(固形分7%)7.5Lを得た。吸着工程前後の酵母エキスについて、液量,固形分,色度,総アミノ酸,臭いを比較した。なお、色度は光度420nmにおける吸光度、総アミノ酸は無水物中の%で表した。結果を第1表に示す。なお、吸着工程後の酵母エキスの糖類含量は0.0%であった。【0026】【0027】この結果、固形分および総アミノ酸については、吸着工程前後で差があまりなかった。しかし、色度と臭いについては、吸着工程前後で明確な差が認められ、本発明により得られる酵母エキスの方が優れていることがわかった。【0028】実施例2実施例1(3)の吸着工程において、空間線速度を2.0、通液倍率を4.0として実施したこと以外は、すべて実施例1と同様に行った。これにより、微黄色で僅かに酵母臭のする酵母エキス(固形分7.1%)約25Lを得た。この酵母エキスの色度,糖類,総アミノ酸を測定した結果を第2表に示す。【0029】実施例3実施例1と同様に、ビール醸造に使用した後の泥状のビール酵母を遠心分離(回転数3000rpm,10分間)してビール分を除去した後、酵母濃度が40%となるように加水したものを原料として用いた。この原料100Lを用いて、自己消化を55℃で48時間行った後、遠心分離(回転数3000rpm,10分間)により固形物を除去し、液体部分95Lを得た。次いで、この液体部分をロータリーエバポレーターを用いて20Lまで濃縮した。得られた濃縮液に同量のエタノールを徐々に添加したのち静置し、沈殿物を除いて上澄液を得た。該上澄液からエタノールをロータリーエバポレーターを用いて除去した後、固形分10%となるように加水した。このうち5Lの酵母抽出液を、実施例1(3)と同様の条件で吸着工程を行った。その結果、微黄色で無臭の酵母エキス(固形分6.9%)7.5Lを得た。その他の条件は、すべて実施例1と同様に行った。この酵母エキスの色度,糖類,総アミノ酸を第2表に示す。【0030】実施例4実施例1において、低阻止逆浸透膜の代わりに、分画分子量1万のクロスフロータイプの平膜の限外濾過膜を用いて、加水しながら濾過し固形分10%の茶褐色の酵母抽出液45Lを得た。このうち5Lの酵母抽出液について、実施例1(3)と同じ条件で吸着工程を行った。その結果、微黄色で無臭の酵母エキス(固形分7%)7.5Lを得た。その他の条件は、すべて実施例1と同様に行った。この酵母エキスにていて、色度,糖類,総アミノ酸を測定した結果を第2表に示す。【0031】実施例5乾燥酵母1kgを水10Lに懸濁し、塩酸でpH5に調整した後、タンパク質分解酵素および高分子核酸分解酵素を添加し、52℃で16時間保持した後、内容物を抽出した。次いで、内容物を遠心分離(回転数3000rpm,10分間)して固形物を除き、抽出液6Lを得た。この抽出液から低阻止逆浸透膜を用いて高分子物質を除去し、さらに水で洗浄して固形分10%の茶褐色の酵母抽出液9Lを得た。この酵母抽出液のうち5Lについて、実施例1(3)と同様に吸着工程を行い、微黄色で無臭の酵母エキス(固形分7.5%)7.5Lを得た。この酵母エキスの色度,糖類,総アミノ酸を測定した結果を第2表に示す。【0032】【0033】実施例6実施例1で調製した酵母エキスについて、保湿作用(水分蒸発量の測定,角質層水負荷試験)を検討した。【0034】(1)水分蒸発量の測定実施例1で調製した酵母エキス5mlをビーカーに入れ、25℃で相対湿度80%の条件で4日間保存した。次いで、シリカゲルデシケーター(25℃)に移動させ、定期的に残存水分量を測定し、水分蒸発量を求めた。なお、対照として、保湿剤である5%グリセリン水溶液について、同様に試験を行った。結果を第1図に示す。図中、−■−は酵母エキス、−●−はグリセリン水溶液を表している。第1図から明らかなように、本発明により製造された酵母エキスの水分残存率は、乾燥条件に移した5日目からは対照よりも水分残存率が高く、対照のグリセリン水溶液と同等以上の保湿効果を有していることが明らかとなった。【0035】(2)角質層水負荷試験本発明の方法により得た酵母エキスの5%懸濁液を調製し、これを被験者(5名)の前腕屈側に3ml塗布した。被験部位が乾いた後、精製水を1滴のせて10秒後に除去した。その直後から30秒ごとに2分間にわたり、高周波伝導度測定装置(島津製作所社製)を用いて伝導度(水分量)を測定した。対照として、5%グリセリン水溶液および5%1,3−ブチレングリコール水溶液についても、同様に試験を行った。伝導度の経時的な変化を、第2図に示す。図中、−◆−は塗布前、−■−は酵母エキス、−▲−はグリセリン水溶液、−×−は1,3−ブチレングリコール水溶液を表している。第2図から明らかなように、本発明の酵母エキスを塗布した場合、塗布前および対照と比較して、水分保持能が高いことが確認された。以上のことから、本発明の酵母エキスは、一般的に保湿剤として化粧品に配合されている多価アルコールと同等以上の保湿作用を有していることが明らかとなった。【0036】実施例7実施例1の酵母エキスについて、チロシナーゼ阻害活性を測定することによって、色素沈着阻害能を検討した。まず、L−チロシンを基質として含む、第3表に示した反応系1〜3を調製した。続いて、該反応系を25℃で10分間処理した後、波長475nmにおける吸光度を測定し、酵素阻害率を算出した。酵素阻害率と酵母エキスの添加量の関係を、第3図に示す。図中、−■−は酵母エキス、−●−はプラセンタエキスを表している。なお、対照として、酵母エキスの代わりに市販のプラセンタエキスを用いて同様に試験を行った。第3図から明らかなように、酵母エキスを含有する化粧品は、プラセンタエキスとほぼ同等のチロシナーゼ阻害活性を示した。【0037】【0038】実施例8実施例1で調製した酵母エキス20mlを、密閉したガラス容器に入れ、50℃で3ヶ月間(暗所)保存した。次に、該酵母エキスの保存後の着色の変化を、波長420nmにおける吸光度を測定し、これにより安定性を評価した。保存期間中の吸光度の変化を第4図に示す。第4図から明らかなように、3ヶ月後においても吸光度には殆ど変化が認められず、本発明の酵母エキスは長期間の保存においても安定した品質を保っていた。【0039】製造例1実施例1で製造した酵母エキスを用いて、第4表に示す処方の化粧水を常法により調製した。【0040】【0041】実施例9製造例1で調製した化粧水について、女性パネル16名(年齢20〜39才)に使用して貰い、使用感をアンケート形式で質問した。なお、対照として製造例1において酵母エキスを含まない化粧水(第4表中の精製水の配合量が90.0%)を同様に製造し、使用した。使用感についての質問は、「におい」、「しっとり感」、「べたつかない」および「総合評価」の4項目について行い、「製造例1の化粧水がよい」、「対照の化粧水がよい」、「変わらない」のいずれかの回答を求め、それぞれの人数により評価した。結果を第5表に示す。【0042】【0043】この結果、製造例1の化粧品、すなわち本発明の酵母エキスを使用した化粧品と対照とを比較すると、「におい」や「しっとり感」についてはほぼ同等の評価が得られ、使用後の「べたつき」の少なさでは、本発明の酵母エキスを加えた化粧水の方が評価が良く、さらに総合評価においても圧倒的に本発明の酵母エキスを加えた化粧水は高い評価を得た。また、本発明の酵母エキスの配合量による作用効果の変化についても官能検査を実施した。その結果、酵母エキスを0.5%(精製水の配合量は89.5%)配合することにより、16名のパネラー中3名が「しっとり感」の面で、酵母エキスの配合量が0.5%に満たないものとの差を感じ、配合量を1.0%にした場合では、10名が「しっとり感」があり、「べたつかない」と評価した。一方、酵母エキスの配合量が10%を超えたものについて、10名が「べたつき感」が感じられると回答した。【0044】【発明の効果】本発明によれば、常法により得られた酵母抽出液から簡便な方法でアミノ酸等の有用な成分の含量を殆ど減少させることなく、着色および特有の臭いを除去することができる。得られた酵母エキスは他の素材と混合して用いることができるため、調味料の他に化粧品、健康食品などの様々な分野での利用が可能で、酵母エキスの利用範囲の拡大が期待される。 常法により得られた酵母の水あるいは熱水抽出液を加熱することにより着色成分を生成させる工程と、該加熱工程により着色された酵母抽出液の着色成分を除去するためにイオン交換樹脂と接触させる吸着工程より構成されることを特徴とする酵母エキスの製造方法。 常法により得られた酵母の水あるいは熱水抽出液を加熱することにより着色成分を生成させる工程と、該加熱工程により生じた固形物及び前記抽出液中の高分子成分を除去するための濾過工程と、該濾過工程を経た抽出液中の着色成分を除去するためにイオン交換樹脂と接触させる吸着工程より構成されることを特徴とする酵母エキスの製造方法。 固形物及び高分子成分を除去するための濾過手段が、限外濾過である請求項2記載の酵母エキスの製造方法。 固形物及び高分子成分を除去するための濾過手段が、低阻止逆浸透膜を用いる濾過である請求項2記載の酵母エキスの製造方法。 常法により得られた酵母の水あるいは熱水抽出液を加熱することにより着色成分を生成させる工程と、着色された酵母抽出液を水と混合可能な有機溶媒と接触させて、該抽出液中の高分子成分及び固形物を沈澱させ除去する接触工程と、該接触工程を経た前記抽出液をイオン交換樹脂と接触させて該抽出液中の着色成分を除去するための吸着工程より構成されることを特徴とする酵母エキスの製造方法。 吸着工程で使用されるイオン交換樹脂が、臭い吸着機能を有する素材で形成された支持体にイオン交換基を導入したものである請求項1〜5のいずれかに記載の酵母エキスの製造方法。 加熱工程の前に、酵母の水あるいは熱水抽出液の濃縮工程と濃縮された酵母抽出液の固液分離を行う分離工程とを設けて、酵母抽出液の固形分濃度を40%以上とする請求項1〜6のいずれかに記載の酵母エキスの製造方法。 請求項1〜7のいずれかに記載された方法で製造された酵母エキス。 請求項8に記載の酵母エキスを配合したことを特徴とする化粧品。