生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_モノホスホリルリピドAの水性免疫アジュバント組成物
出願番号:1998542001
年次:2012
IPC分類:A61K 39/39,A61P 31/00


特許情報キャッシュ

クレーン アール.トーマス JP 5019494 特許公報(B2) 20120622 1998542001 19980401 モノホスホリルリピドAの水性免疫アジュバント組成物 コリクサ コーポレーション 清水 初志 クレーン アール.トーマス US 08/831,073 19970401 20120905 A61K 39/39 20060101AFI20120816BHJP A61P 31/00 20060101ALI20120816BHJP JPA61K39/39A61P31/00 A61K9/00-9/72 A61K39/00-39/44 A61K41/00-47/48 CAPLUS(STN) MEDLINE(STN) BIOSIS(STN) WPIDS(STN) EMBASE(STN) 特表平8−508722(JP,A) 特開平7−126185(JP,A) 特表平7−500813(JP,A) J.IMMUNOL.METHODS,1996,VOL.191,P.1−10 20 US1998006528 19980401 WO1998043670 19981008 2001526640 20011218 16 20050216 2009009316 20090430 今村 玲英子 岩下 直人 渕野 留香 関連出願の相互参照本出願は、1997年4月1日に提出した同時係属出願第08/831,073号の一部継続出願である。発明の背景化合物モノホスホリルリピドA(MLA)および3-O脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MLA)は、細菌のリポ多糖(LPS)のリピドA成分の弱毒化誘導体である。LPSおよびリピドAは、この化合物を投与された患者に液性抗体応答および細胞性免疫応答を誘導する強力な免疫刺激剤である。しかし、リピドAおよびLPSは、発熱性および局所的なシュワルツマン(Shwarzman)反応などの毒性の副作用を示すこともある。MLAおよび3D-MLAは、LPSの毒性を弱毒化するように修飾されているリピドA様分子である。リピドAのように、MLAおよび3D-MLA分子は、長鎖脂肪酸が結合する糖骨格を有する。この骨格は、グリコシド結合で結合された2つの六炭糖環を含む。MLAおよび3D-MLAは4位がリン酸化されている。5〜8つの長鎖脂肪酸(炭素数12〜14)が糖骨格に結合して、MLAおよび3D-MLAを容易には水に溶解しない強い疎水性分子にしている。弱毒化リピドA誘導体(ALD)であるMLAおよび3D-MLAは、感染性疾患の予防用ワクチン並びに癌性腫瘍および慢性感染症の治療のための治療用ワクチンしての免疫アジュバントとして使用される。ほとんどのワクチンに含まれる抗原調剤は水溶性タンパク質の複雑な混合物であることが多く、水に不溶性のアジュバントを水性ワクチン中で製剤化することを困難にしている。従って、まずMLAおよび3D-MLAを溶媒と混合してから、それらを抗原調剤に添加しなければならない。しかし、溶媒の存在はワクチンの製剤化をさらに複雑にすることがあり、ワクチンの成分の有効性を低下させる場合もある。さらに、溶媒は粘膜表面を刺激したり、注射部位に炎症を生じることがある。妨害作用のある共溶媒を含有しないMLAまたは3D-MLAの単純な製剤により、ワクチン組成物のアジュバントおよび抗原の双方から最大の恩恵が得られると思われる。本発明はこの要件を満たしている。発明の概要本発明は、弱毒化リピドA誘導体(ALD)と界面活性剤との水性製剤と、それを調製するための方法とに関係する。本発明に係る有用な弱毒化リピドA誘導体は、モノホスホリルリピドA(MLA)および3-O脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MLA)を含む。MLAの水性製剤(MLA/AF)または3D-MLAの水性製剤(3D-MLA/AF)は、ワクチン調製のために望ましくない溶媒または共溶媒系を使用する必要がない。本発明は、マウスに抗原を投与したとき、その抗原に対するマウスの細胞性および液性免疫応答を増強する、ALDと界面活性剤との安定な水性組成物を提供する。驚くべきことに、本発明の水性組成物は、鼻腔内に投与したとき、免疫動物において高濃度の血清および粘膜分泌IgAを誘発する。本発明に係る水性組成物の態様は、界面活性剤に対するモル比が約4:1のMLAまたは3D-MLAを含み、粒子サイズは約50〜70nmである。1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)は好ましい界面活性剤である。水性組成物を調製する方法が開示されている。一態様において、ALDと界面活性剤とを溶解し、エタノール中で均一に混合する。次いで、エタノールを留去して、フィルムを得る。水をフィルムに添加する。ALDおよび界面活性剤を超音波処理によって水に懸濁する。透明になるまで懸濁液を超音波処理する。抗原を含有する本発明に係る組成物を投与された動物は、その抗原に対して液性および細胞性免疫応答の増強を示す。これらの応答を増強するための組成物を使用する方法も開示されており、請求の範囲が主張されている。【図面の簡単な説明】図1a〜dは、3-O脱アシル化モノホスホリルリピドA-水性組成物(3D-MLA/AF)中の破傷風トキソイド(TT)抗原★または塩類溶液中の破傷風トキソイド◇を投与したマウスの抗体価を示す。図1aは、破傷風トキソイド抗原を投与したマウスの総IgG抗体価を示す。図1bは、破傷風トキソイド抗原を投与したマウスのIgG2a抗体価を示す。図1cは、破傷風トキソイド抗原を投与したマウスのIgG2b抗体価を示し、図1dは、マウスのIgG1抗体価を示す。図2は、精製タンパク質誘導体で免疫したマウスのT-細胞増殖応答を示す。3D-MLA/AF中の破傷風トキソイド★および通常の対照◇を投与したマウスの、最初のワクチン接種から14日めの増殖応答を示す。発明の詳細な説明本発明は、弱毒化リピドA誘導体(ALD)の水性アジュバント製剤に関係する。ALDと界面活性剤とを約4:1のモル比で水に懸濁し、超音波処理して、粒子サイズ約50〜70nmの懸濁液を得る。本発明により、弱毒化リピドA誘導体を水性組成物に製剤化して、強力なアジュバントを得ることができる。弱毒化リピドA誘導体は、リピドAの有利な免疫刺激特性を示すが、リピドAの不利な副作用のより少ないリピドA様化合物である。例えば、モノホスホリルリピドA(MLA)および3-O脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MLA)は、強力な免疫刺激剤であるが、驚くべきことにリピドAより毒性の少ないALDである。MLAおよび3D-MLAは共に本発明の組成物中に使用することができ、公知であるため、本明細書において詳細に説明する必要がない。例えば、1984年3月13日に付与され、リビイムノケムリサーチ社(Ribi ImmunoChem Research, Inc.)に譲渡され、モノホスホリルリピドAおよびその製造方法を開示している米国特許第4,436,727号を参照のこと。マイヤーズ(Myers)らに付与され、やはりリビイムノケムリサーチ社(Ribi ImmunoChem Research, Inc.)に譲渡された、米国特許第4,912,094号および再審査証明第B1 4,912,094号は、3-O脱アシル化モノホスホリルリピドAおよびそれを製造するための方法を具体化している。MLAおよび3D-MLAに関するこれらの特許の各々の開示内容は、参照として本明細書に組み入れられる。参照特許として組み入れられている先行特許は詳述しないが、本明細書に使用するモノホスホリルリピドA(MLA)は、強力であるが毒性の高い免疫系調節剤である、腸内細菌リポ多糖(LPS)の一成分であるリピドAから誘導される。エドガーリビ(Edgar Ribi)らは、当初、精製無毒化内毒素と呼ばれたモノホスホリルリピドA(MLA)の産生を達成した。MLAは、グラム陰性菌の七炭糖欠損変異株から得た内毒素抽出物(LPSまたはリピドA)を中程度の強度の鉱物酸溶液(例えば、0.1N HCl)中で約30分間還流することによって産生される。このような処理により、還元末端グルコサミンの1位のリン酸塩部分がなくなる。同時に、この処理中にコアとなる炭水化物が非還元グルコサミンの6位から除去される。得られた産物(MLA)は、発熱性、局所的シュワルツマン(Shwarzman)反応性、およびニワトリ胚の50%致死用量アッセイ(CELD50)で評価した毒性などの、内毒素出発材料に通常関連する内毒素活性の著しい弱毒化値を示す。しかし、予測できなかったことに、免疫調節剤としてのリピドAおよびLPSの機能も保持している。本発明を実施する際に使用することができる別の弱毒化リピドA誘導体は、3-O脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MLA)と呼ばれる。3D-MLAは米国特許第4,912,094号、再審査証明第B1 4,912,094号(’094特許)に記載され、公知であり、他の基に不利な影響を与えない条件下において、3位の還元末端グルコサミンにエステル結合しているβ-ヒドロキシミリスチン酸(β-hydroxymyristic)アシル残基がMLA分子から選択的に除去されるという点において、MLAと異なる。3-O脱アシル化モノホスホリルリピドAは、モンタナ59840、ハミルトンのリビイムノケムリサーチ社(Ribi ImmunoChem Research, Inc., Hamilton, Montana 59840)から購入できる。MLA分子および3D-MLA分子は、脂肪酸鎖長が異なる多数の脂肪酸置換パターン、すなわちヘプタアシル、ヘキサアシル、ペンタアシル等の複合物または混合物である。従って、MLAおよび3D-MLAのこれら種々の形態は本発明に含まれる。さらに、合成または半合成手段によって製造される複数の形態の化合物の混合物および個々の化合物が本発明に含まれる。--094特許に例示されているリピドAの骨格は、S.ミネソタ(S.minnesota)R 595由来のヘプタアシルリピドAを3-脱アシル化することによって得られる産物に対応する。他の脂肪酸置換パターンが、本発明の開示に含まれる;本質的な特徴は、材料が3-O-脱アシル化されているということである。本発明に使用する修飾3D-MLAは、リピドA骨格の3位の脂肪酸だけが除去される条件下において、MLAをアルカリ加水分解することによって調製される。3位のβ-ヒドロキシミリスチン酸脂肪酸は、アルカリ媒体(media)中では異常に不安定である。リピドAを完全に3-脱アシル化するためには、きわめて穏やかなアルカリ処理が必要である。リピドAの他のエステル結合は、加水分解が起きる前に幾分強い条件を必要とし、その結果分子の他の部分に大きな影響を与えることなく、これらの材料の3位を選択的に脱アシル化することができる。エステル結合したβ-ヒドロキシミリスチン酸脂肪酸の3位がアルカリ媒体に異常な感受性を示す理由は、現時点では不明である。アルカリ加水分解手順は公知であるが、β-ヒドロキシミリスチン酸の3位のエステル結合以外をさらに加水分解しない条件を選択することが重要である。一般に、加水分解は水性媒体または有機媒体中で実施することができる。後者の場合には、溶媒にはメタノール(アルコール)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、クロロホルム、ジクロロメタン等およびそれらの混合物が含まれる。水および記載した有機溶媒の1種以上を組み合わせたものも使用することができる。アルカリ性塩基は、種々の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩およびアミンの中から選択することができる。例示としての塩基には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の無機塩基が含まれ、アルキルアミンなどの有機塩基には、ジエチルアミン、トリエチルアミン等が含まれるが、これらに限定されない。水性媒体では、pHは一般に約10〜14であり、約12〜約13.5のpHが好ましい範囲である。加水分解反応は一般に、約20℃〜約80℃、好ましくは約50℃〜60℃の温度において約10〜約30分間実施する。例えば、加水分解はトリエチルアミンの3%水溶液中で、室温(22〜25℃)において48時間実施することができる。加水分解の温度および時間を選択する際の要件は、脱アシル化が3位のβ-ヒドロキシミリスチン酸だけを除去するように生じるということである。実際には、特に望ましい加水分解法は、リピドAまたはモノホスホリルリピドAをクロロホルム:メタノール=2:1(v/v)に溶解する段階と、この溶液にpH10.5の0.5M Na2CO3からなる緩衝水溶液を飽和させる段階と、次いで溶媒を45〜50℃において、真空下またはアスピレーター(約100mmHg)でフラッシュ留去する段階とを含むことが見出されている。得られた材料は、3位が選択的に脱アシル化されている。この方法は、上記の無機塩基のいずれを用いて実施してもよい。有機溶液を緩衝水溶液で飽和する前に、テトラブチル臭化アンモニウムなどの相転移触媒(phase transfer catalyst)の添加が望ましい場合もある。本発明の組成物を調製する際には、一般に、各々溶媒に溶解されている、弱毒化リピドA誘導体(ALD)を界面活性剤と合わせる。溶媒を留去すると、フィルムが得られる。水をフィルムに添加して、得られた懸濁液を透明になるまで加熱しながら超音波処理する。最終懸濁液は、約40〜150nm、好ましくは約50〜約70nmの粒子サイズを有する。ALDおよび界面活性剤は、約1部〜約5部の界面活性剤に対して約10部のALDというモル比で合わせる。好ましくは、成分は1部の界面活性剤に対して約4部のALDというモル比で合わせる。本発明に係る有用な界面活性剤は、胆汁酸塩、天然リン脂質およびスフィンゴ脂質を含むが、これらに限定されない。グリコデオキシコール酸塩およびデオキシコール酸塩などの胆汁酸塩は、本発明に係る組成物の界面活性剤として有用である。他の好適な界面活性剤は、スフィンゴミエリンおよびスフィンゴシンなどのスフィンゴ脂質、並びに卵ホスファチジルコリン、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、L-α-ホスファチジルエタノールアミンおよび1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンなどのリン脂質、またはこれらの混合物を含む。好ましい態様において、リン脂質1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)が界面活性剤である。DPPCはヒトに使用することが認められており、製剤を鼻腔内に投与するとき、特に効果的である。ALDおよび界面活性剤を溶解し、溶媒に完全に混合する。本発明に係る有用な水性溶媒または有機溶媒は、クロロホルム、アルコール(例えば、エタノール)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)等およびこれらの混合物を含む。溶媒をALDおよび界面活性剤の混合物から留去し、フィルムを得る。水をフィルムに添加し、得られた懸濁液を透明になるまで加熱しながら、超音波処理する。水浴型超音波装置中で懸濁液を超音波処理することが好ましい。水浴温度は約40℃〜80℃、好ましくは約60℃であってもよい。懸濁液は透明になるまで、5分〜約1時間超音波処理することができる。超音波処理時間は、懸濁液の容量および濃度に応じて変化するが、当業者は容易に決定することができる。最終懸濁液は約40〜150nm、好ましくは約50〜70nmの粒子サイズを有する。本発明の有効量の組成物を抗原と共に温血動物に投与して、その抗原に対する動物の免疫応答を増強する。本発明の組成物は、抗原に対する動物の液性免疫応答だけでなく細胞性免疫応答も増強する。望ましい応答を誘発するために投与する抗原の量は当業者によって容易に決められ、投与する抗原の種類、投与経路および投与計画によって変化する。例えば、0.1μgの破傷風トキソイドを本発明に係る組成物と共に、21日間隔をおいた2回の免疫化においてマウスに皮下投与すると、その抗原に対する液性免疫応答を誘発する。鼻腔内に投与すると、本発明の組成物および抗原は、細胞傷害性T-リンパ球の産生を刺激する。B型肝炎表面抗原(2.5μg)を本発明に係る組成物と共に0日めおよび21日めに鼻腔内に投与すると、免疫化動物において細胞傷害性T-リンパ球の産生を刺激した。さらに、本発明の組成物は、鼻腔内に投与したとき、免疫化動物においてIgA応答を誘発する際に特に効果的である。0.5〜12.5μgの破傷風トキソイドの3-O脱アシル化モノホスホリルリピドA水性製剤(3D-MLA/AF)を投与したマウスは、その抗原に対するIgA抗体価の上昇を示した。本発明の組成物の有効量は、免疫応答を刺激または増強する量である。例えば、本発明に係る組成物の有効量は、体重70kgの一般的な成人患者に対する投与に基づいて、1〜約250μgの弱毒化リピドA誘導体、好ましくは約25〜約50μgを含有することができる。以下の実施例は本発明の組成物と方法とをさらに例示するために示されており、本発明の組成物および方法を限定しない。本明細書に示すマウスモデルは温血動物の代表であり、ヒトを含む他の温血動物の事象に適当に関連づけられることが理解されるべきである。全ての割合は特に記載しない限り、重量によるものであり、全ての溶媒混合比率は特に記載しない限り、容量によるものである。実施例1-弱毒化リピドA誘導体の水性製剤の調製1000μg/mlの3D-MLA(リビイムノケムリサーチ社(Ribi ImmunoChem Research, Inc.)、モンタナ59840、ハミルトン)、サルモネラ ミネソタ(Salmonella minnesota)R 595由来のリピドAの弱毒化体、および118μg/mlの1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)とを注射用水中に含む、本発明に係る3-O脱アシル化モノホスホリルリピドAの水性製剤(3D-MLA/AF)を以下のように調製した:4mg/mlの濃度のDPPCのエタノール溶液を調製し、透明になるまで攪拌した。このDPPC溶液の2.7mlの分取液を、100mgの凍結乾燥3D-MLAを入れたバイアルに添加し、3D-MLAを浸すまでゆっくり回した。フィルターを通した窒素気流をゆっくりバイアルに吹き付けることによりエタノールを除去した。注射用の水(91.7ml)をバイアルに添加し、次いで栓をし、密封して、ラボライン(Labline)9303水浴型超音波装置中で懸濁させた。懸濁液は透明になるまで、60℃において10分間超音波処理した。得られた水性製剤は、マルベルンインストロメンツ(Malvern Instruments)社製のPSC100スペクトロメーター(Spectrometer)によって測定したとき、70nmの粒子を含有し、0.2μmのフィルターを通してフィルター滅菌した。実施例2-抗体応答の刺激本発明の水性製剤中の破傷風トキソイド(TT)で免疫したマウスは、破傷風トキソイド特異抗体を産生した。免疫後のマウス血清中のTT-特異的総IgG抗体価およびIgGイソタイプ(2a、2b、1)抗体価を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって測定した。0.1μgの破傷風トキソイド(TT)および50μgの3D-MLA/AFを含有するワクチンまたは0.1μgのTTを塩類溶液中に含有するワクチンを1用量投与して、雌ICRマウスを免疫した。3D-MLA/AFは、実施例1と同様に調製した。ワクチンは、0日めおよび21日めに皮下注射によって投与した。2回目の免疫から14日後に血清を採取し、標準的なELISA技法によってアッセイして破傷風トキソイド特異抗体IgG1、IgG2aおよびIgG2bイソタイプ並びに総IgGの相対量を報告した。図1は、3D-MLA/AFによって産生された破傷風トキソイド特異抗体価を示す。破傷風トキソイド抗原とともに投与すると、3D-MLA/AFは免疫動物においてIgG抗体の産生を刺激し、特にIgG2aの産生を活発に刺激する。実施例3-細胞増殖の刺激本発明のアジュバント組成物および精製タンパク質誘導体(PPD)(ツベルクリン)で免疫することによって初回抗原刺激したマウスは、脾臓細胞をその抗原で処理したとき、インビトロにおいて増殖応答を示した。50μgのPPDおよび50μgの3D-MLA/AFを含有するワクチンを1用量、皮下注射することによって雌BALB/cマウスを免疫した。3D-MLA/AFは、実施例1と同様に調製した。免疫から14日後に脾臓細胞を採取し、増殖アッセイのリンパ球源として使用した。脾臓細胞は、0.1、1または10μgのPPD/mlを入れた培地中106細胞/mlの濃度で、マイクロタイターウェル中で96時間培養した。インキュベーションの最後の24時間に、トリチウム標識したチミジンを培養液に添加した。ガラス繊維フィルター上に細胞を採取し、トリチウムの取り込み量を求めた。刺激指数は、PPDで刺激した細胞の計数値/分(CPM)を、培地だけで培養した細胞のCPMで割ることによって求めた。得られたデータを図2に示す。実施例4-細胞障害性T-リンパ球応答の刺激本発明の水性アジュバント組成物およびタンパク質抗原の投与後の細胞傷害性T-リンパ球応答の誘発を、細胞傷害性アッセイによって検出した。C57/BL/6マウスの群に、25μgの卵白アルブミン(OVA)を3D-MLA/AF中で製剤化したものを皮下投与(鼠径部領域)により初回抗原刺激して免疫した。3D-MLA/AFは、実施例1と同様に調製した。注射容量は200μlであった。21日後に、実験群あたり3匹のマウスを犠牲にし、脾臓を摘出して単一の細胞懸濁液としてプールし、計数した。実験群の脾臓細胞(3〜4mlの培地中75×106細胞)を、25cm2のT-フラスコに入れた。次に、1.0mlの照射後(20,000rads)の5×106/mlのE.G7(OVA)細胞をフラスコに添加した。容量を10mlにした。T-フラスコを37℃、5%CO2に設定したインキュベーション装置に4日間直立して放置することによって培養液を維持した。4日めに、フラスコから生存細胞を回収し、1回洗浄し、5.0mlに再度懸濁してから計数した。回収したエフェクター細胞を5×106生細胞/mlに調整し、希釈剤として100μl/ウェルの培地を使用して、96ウェルの丸底プレート(Corning 25850)中で100μlの容量を3組ずつ連続希釈した。次に、1×105細胞/mlの51Cr-標識(以下を参照のこと)した標的100μlの容量[E.G7(OVA)-卵白アルブミン遺伝子をトランスフェクションしたEL-4細胞系統]をウェルに添加した。自然放出(spontaneous release(SR))ウェルは100μlの標的および100μlの培地を含有した。最大放出(maximal release(MR))ウェルは100μlの標的および100μlの界面活性剤(2% Tween 20)を含有した。エフェクター/標的(E/T)比は50:1、25:1、12.5:1、6.25:1であった。プレートを400×gで遠心分離し、37℃、5%CO2で4時間インキュベーションした。インキュベーション後、スカトロン上清回収システム(Skatron Supernatant Collection System)を使用してウェルの上清を回収した。特異的溶菌率=100×[(放出の指数−SR)/(MR-SR)]標的細胞であるE.G7(OVA)は、以下のように51Cr(クロム酸ナトリウム)で標識した。5×106標的細胞と250μCi51Crとを15mlコニカル管中で混合して、総容量を1.0mlとした。細胞懸濁液を、15分ごとにやさしく混合しながら、37℃の水浴で90分間インキュベーションした。インキュベーション後、標識された細胞を、15mlの容量の培地をデカンテーションして遠心分離をかけることによって3回洗浄した。3回めの遠心分離後、細胞を10mlの新鮮な培地に再懸濁し、30分間室温で放置し、次いで遠心分離した。最後に、細胞を培地に再懸濁させて、1×105細胞/mlとした。細胞傷害性アッセイの結果を表1に示す。実施例5-水性ALD製剤の鼻腔内投与による抗体応答の刺激3D-MLA/AFに破傷風トキソイド(TT)を含有させたものを鼻腔内に投与したマウスは、血清および糞抽出物中に検出可能なIgA抗体価を産生した。さらに、本発明の水性製剤およびTTの鼻腔内投与は高抗体価を有するIgGイソタイプであるIgG2aおよびIgG2bを産生した。ICRマウス群に、0.5、2.5、10または12.5μgの破傷風トキソイドをリン酸緩衝塩類溶液(PBS)に含有させたもの、または25μgの3D-MLA/AFと混合したものを鼻腔内に投与した。3D-MLA/AFは実施例1と同様に調製した。マウスは0日めに初回抗原投与し、10日めに採血し(d10P1°)、14日めに追加抗原投与し、24日めに採血し(d10P2°)、28日めに追加抗原投与し、38日めに採血した(d10P3°)。IgGおよびIgA特異的な抗破傷風トキソイド抗体のELISAを、各採血のプールした血清について実施した。糞抽出物は22日めに調査した(d7P2°)。免疫したマウスの血清および糞抽出物のIgGおよびIgA抗体価を、表2〜5に示す。実施例6-水性ALD製剤の鼻腔内投与によるB型肝炎表面抗原に対する免疫応答の刺激B型肝炎表面抗原(HBSAG)を本発明の組成物に混合したものを鼻腔内に投与したマウスは、その抗原に対する血清IgGおよびIgA抗体価を産生した。分泌型IgAは膣洗浄液中に検出され、細胞傷害性T-リンパ球応答の誘導は細胞傷害性アッセイによって検出された。Balb/Cマウス群を、2.5μgのHBsAgおよび10μgの3D-MLA/AFを20μlの容量にしたものを鼻腔内に初回免疫した(1°)。3D-MLA/AFは、実施例1と同様に調製した。21日後、マウスに7.5μgのHBsAgおよび10μgの3D-MLA/AFを20μlにしたものにより、鼻腔内に2回目の免疫した。3回目の免疫(3°)は、2回目の免疫と同じ組成物により、2回目の免疫の28日後に投与した。アッセイを実施して、2回目の免疫後16日目(d16,2°後)および3回目の免疫後8日目(d8,3°後)に細胞傷害性T-リンパ球活性を検出した。血清および粘膜抗体価を、2回目の免疫後22日目(d22,2°後)および3回目の免疫後21日目(d21,3°後)に評価した。全てのアッセイは当技術分野において標準的で、これまでの実施例2および4に記載されている方法によって実施した。この実験の結果を表6〜8に示す。Balb/Cマウス群を、2.5μgのHBsAgおよび10μgの3D-MLA/AFにより鼻腔内に免疫し、21日後に7.5μgのHBsAgおよび10μgの3D-MLA/AFにより鼻腔内に追加免疫した。追加免疫後10日めに膣試料を採取した。本発明の組成物中にHBsAGを混合したものの鼻腔内投与は、その抗原に対する液性および細胞性免疫応答を共に刺激した。3D-MLA/AF中に製剤化した抗原による鼻腔内免疫化は、細胞傷害性T-リンパ球応答、並びに抗原特異的な液性免疫応答および粘膜免疫応答を誘発した。実施例7-水性ALD製剤の鼻腔内投与によるインフルエンザに対する予防免疫応答の形成本発明の組成物中に製剤化した赤血球凝集素抗原を含有するFLUSHIELDインフルエンザワクチンにより鼻腔内に免疫したマウスは、IgGおよびIgAを産生し、膣洗浄液から回収された。免疫したマウスは、またその後のインフルエンザ抗原投与から100%予防された。ICRマウスを、0.3μgの赤血球凝集素抗原(HA)および10μgの3D-MLA/AFを含有するFLUSHIELDインフルエンザワクチン(Wyeth-Lederle)を用いて21日間隔で3回鼻腔内に免疫した。3D-MLA/AFは実施例1と同様に調製した。最後の免疫後14日めに、膣洗浄液を回収した。最後の免疫後35日めに、10 LD50(50%致死量)の感染性インフルエンザA/HK/68をマウスに抗原投与し、死亡率をモニターした。実施例8-モノホスホリルリピドAの組成物モノホスホリルリピドA(MLA)は、本発明の水性組成物に製剤化して、実施例1〜7と同じ質および量を投与し、同様の結果を生じ得る。上述の実施例は、本発明を単に例示するものであることが理解される。使用した組成物および/または方法にある種の修飾を加えても、本発明の目的を達成することができる。このような修飾は、本発明の請求の範囲内と考えられる。 水中にアジュバントを一つ含み、さらに界面活性剤を一つ含むアジュバント組成物であって、アジュバントが、モノホスホリルリピドA(MLA)または3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MLA)から選択される弱毒化リピドA誘導体からなり、水は共溶媒を含まず、界面活性剤が1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンであり、モノホスホリルリピドA(MLA)または3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MLA)の界面活性剤に対するモル比が10:1〜2:1であることを特徴とするアジュバント組成物。 弱毒化リピドA誘導体がモノホスホリルリピドA(MLA)である、請求項1に記載の組成物。 弱毒化リピドA誘導体が3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MLA)である、請求項1に記載の組成物。 弱毒化リピドA誘導体の界面活性剤に対するモル比が4:1である、請求項1〜3に記載の組成物。 モノホスホリルリピドA(MLA)または3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MLA)と界面活性剤の透明な水性懸濁液である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。 懸濁液が、50nm〜70nmのサイズの粒子を有する、請求項5の組成物。 モノホスホリルリピドA(MLA)または3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MLA)、界面活性剤、及び水からなる請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。 モノホスホリルリピドA(MLA)または3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MLA)と界面活性剤を合わせ、モノホスホリルリピドA(MLA)または3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MLA)及び界面活性剤を溶媒に溶解させ完全に混合し、溶媒を留去させ、水を加えてモノホスホリルリピドA(MLA)または3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MLA)及び界面活性剤を再懸濁させ、懸濁液を透明になるまで加熱しながら超音波処理することにより得られうる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。 溶媒中にアジュバントを含むワクチンであって、アジュバントがモノホスホリルリピドA(MLA)または3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MLA)からなり、溶媒が共溶媒を含まない水である請求項1〜8のいずれか一項記載の組成物を含む、ワクチン。 請求項1〜9のいずれか一項記載の組成物及び抗原からなる、請求項9に記載のワクチン。 a)界面活性剤を溶媒に溶解する段階であり、ここで界面活性剤が1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンである段階;b)溶解した該界面活性剤とモノホスホリルリピドA(MLA)または3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MLA)から選択される弱毒化リピドA誘導体とを混合する段階;c)得られた混合物から該溶媒を留去する段階、d)留去した該混合物に水を添加して、弱毒化リピドA誘導体:界面活性剤のモル比が10:1〜2:1である、水中に弱毒化リピドA誘導体を含む懸濁液を得る段階;およびe)該懸濁液を透明になるまで加熱しながら超音波処理する段階を含む、水性アジュバント組成物を製造する方法。 弱毒化リピドA誘導体の界面活性剤に対するモル比が実質的に4:1である、請求項11に記載の方法。 最終生成物がモノホスホリルリピドA(MLA)または3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MLA)及び界面活性剤の透明な水性懸濁液である、請求項11または12に記載の方法。 溶媒がクロロホルム、アルコール、ジメチルスルホキシド、およびジメチルホルムアミド及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項11〜13に記載の方法。 懸濁液が60℃〜80℃、例えば60℃まで加熱される、請求項11〜14に記載の方法。 懸濁液が5分〜60分、例えば10分超音波処理される、請求項11〜15に記載の方法。 請求項11〜16に記載の方法の、ワクチンの準備における使用。 請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物の、免疫反応を誘発し得るたんぱく質抗原に対する温血動物の免疫応答または血清及び粘膜分泌IgA応答を増強するための薬剤の製造のための使用。 透明で、共溶媒を含まない、水性液体である薬剤の製造のための、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物の使用。 薬剤がワクチンである、請求項19に記載の使用。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る