| タイトル: | 特許公報(B2)_エリスリトール産生微生物及びその製造方法 |
| 出願番号: | 1998541475 |
| 年次: | 2008 |
| IPC分類: | C12N 1/14,C12P 7/18,C12N 15/01,C12N 1/16,C07C 31/20,C12R 1/645 |
長 洋 山岸 兼治 三川 隆 JP 4033914 特許公報(B2) 20071102 1998541475 19980402 エリスリトール産生微生物及びその製造方法 三菱化学株式会社 000005968 川口 嘉之 100100549 松倉 秀実 100090516 遠山 勉 100089244 長 洋 山岸 兼治 三川 隆 JP 1997083726 19970402 20080116 C12N 1/14 20060101AFI20071220BHJP C12P 7/18 20060101ALI20071220BHJP C12N 15/01 20060101ALI20071220BHJP C12N 1/16 20060101ALN20071220BHJP C07C 31/20 20060101ALN20071220BHJP C12R 1/645 20060101ALN20071220BHJP JPC12N1/14 AC12N1/14 BC12P7/18C12N15/00 XC12N1/16 AC07C31/20 ZC12N1/14 AC12R1:645 C12N 1/00 - 7/08 BIOSIS/WPI(DIALOG) 特開平06−141850(JP,A) 特開昭63−196298(JP,A) 特開昭60−110298(JP,A) Biotechnology Letters,1993,Vol.15,No.4,p.383-388 7 FERM BP-6170 FERM BP-6171 FERM BP-6172 FERM BP-6173 FERM BP-6174 FERM BP-6175 FERM BP-6307 FERM BP-6308 FERM BP-6309 JP1998001534 19980402 WO1998044089 19981008 24 20041207 六笠 紀子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明はエリスリトール産生微生物の製造方法、該方法により得られる微生物、及び該微生物を用いるエリスリトールの製造方法に関する。【0002】【従来の技術】エリスリトールの製造方法としては、トリゴノプシス属(Trigonopsis)、キャンジダ属(Candida)の酵母をグリセロールを炭素源とする培地に培養して製造する方法(特公昭47−41549号公報)、キャンジダ属(Candida)、トルロプシス属(Torulopsis)、ハンゼヌラ属(Hansenula)の酵母を炭化水素等を炭素源とする培地で培養して製造する方法(特公昭51−21072号公報)等が知られている。しかしながら、これらの方法は、炭素源として使用される原料が実際の工業的生産において適当でないため、未だ工業化されていない。【0003】オーレオバシディウム属の微生物(Aureobasidium sp. SN-G42(FERM P-8940)等)をグルコースなどの糖質を炭素源とする培地に培養して製造する方法(米国特許第4939091号及び第5036011号公報等)も知られている。【0004】また、モニリエラ・トメントサ・バール・ポリニス(Moniliella tomentosa var. pollinis)をグルコースなどの糖質を炭素源とする培地に培養して製造する方法(特開昭60−110295号公報等)も知られている。この方法は安価で安全な原料であるグルコースを使用し、かつ生産性も高いという点で優れているが、培養中の発泡が著しく、通常使用されている消泡剤では役にたたないため、高価なキサダンガムなどを多量に添加する必要があり工業的においては必ずしも有利な方法とはいえない。【0005】また、エリスリトールを高生産するモニリエラ属、トリコスポラノイデス属に属する菌株も培養中に発泡が激しく、通常使用されている消泡剤では役にたたないことが分かった。微生物による発酵生産においては発泡を抑えることは、吹きこぼれによる生産性の低下、発酵槽内の雑菌汚染の確率の増大、吹きこぼれた培養液による生産設備の汚染等を阻止するということであり、実生産においては発泡を抑えることは必要不可欠なことである。【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明は、安価で安全な原料である発酵性糖質から高い生産性を示すモニリエラ属とその近縁に属するトリコスポラノイデス(Trichosporonoides)属の欠点である好気的な培養中に起こる激しい発泡を解決し、安価で効率的なエリスリトールの製造方法の提供を目的としてなされたものである。【0007】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成すべく、先ずエリスリトール産生能を有する微生物の改良について鋭意検討を行った。その結果、エリスリトールを産生する能力を有する酵母状糸状菌の培養物より菌体凝集塊を除いた後、培養物中に残存する菌体を採取すれば、好気的培養中に実質的な泡を形成しないエリスリトール産生微生物が効率的に得られることを見出した。更に本発明者らは、これらエリスリトール産生微生物は、水と水不溶性溶媒で分配した時に水層に20%以上残る物性を有しており、該微生物を用いれば、培養中の激しい発泡の問題が解決できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものである。【0008】すなわち本発明により、(1)エリスリトール産生能を有する微生物を液体培地で培養し、培養物より微生物凝集塊を除去した後、培養物中に残存する微生物から好気的培養中に実質的な泡を形成しない微生物を採取することを特徴とする、好気的培養中に実質的な泡を形成しないエリスリトール産生微生物の製造方法が提供される。【0009】この発明の好ましい態様によれば、(2)微生物を液体培地で培養し、培養物より微生物凝集塊を除去する行程を繰り返し行う上記(1)に記載の方法、(3)変異処理を行った微生物を液体培地で培養する上記(1)又は(2)に記載の方法が提供される。【0010】この発明の更に好ましい態様によれば、(4)液体培地で培養する微生物が、酵母状糸状菌である上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の方法、(5)酵母状糸状菌が、モニリエラ(Moniliella)属に属する微生物である上記(4)に記載の方法、(6)モニリエラ(Moniliella)属に属する微生物が、モニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)及びモニリエラ・スアヴェオレンス・バール・ニグラ(Moniliella suaveolens var. nigra)よりなる群から選ばれる微生物である上記(5)に記載の方法、(7)モニリエラ(Moniliella)属に属する微生物が、モニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)CBS461.67、モニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)MCI3554、モニリエラ・スアヴェオレンス・バール・ニグラ(Moniliella suaveolens var. nigra)CBS223.32、モニリエラ・スアヴェオレンス・バール・ニグラ(Moniliella suaveolens var. nigra)CBS382.36及びモニリエラ・スアヴェオレンス・バール・ニグラ(Moniliella suaveolens var. nigra)CBS223.79よりなる群から選ばれる微生物である上記(5)に記載の方法が提供される。【0011】また、(8)酵母状糸状菌が、トリコスポロノイデス(Trichosporonoides)属に属する微生物である上記(4)に記載の方法、(9)トリコスポロノイデス(Trichosporonoides)属に属する微生物が、トリコスポロノイデス・オエドセファリス(Trichosporonoides oedocephalis)、トリコスポロノイデス・メガチリエンシス(Trichosporonoides megachillensis)、トリコスポロノイデス・マディダ(Trichosporonoides madida)、トリコスポロノイデス・ニグレッセンス(Trichosporonoides nigrescens)及びトリコスポロノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)よりなる群から選ばれる微生物である上記(8)に記載の方法、(10)トリコスポロノイデス(Trichosporonoides)属に属する微生物が、トリコスポラノイデス・オエドファリス(Trichosporonoides oedocephalis)CBS649.66、トリコスポラノイデス・オエドファリス(Trichosporonoides oedocephalis)CBS568.85、トリコスポラノイデス・メガチリエンシス(Trichosporonoides megachillensis)CBS567.85、トリコスポロノイデス・メガチリエンシス(Trichosporonoides megachillensis)ATCC76718、トリコスポロノイデス・マディダ(Trichosporonoides madida)CBS240.79、トリコスポラノイデス・ニグレッセンス(Trichosporonoides nigrescens)CBS268.81、トリコスポラノイデス・ニグレッセンス(Trichosporonoides nigrescens)CBS269.81、トリコスポロノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)CBS241.79、トリコスポロノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)CBS242.79A及びトリコスポロノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)CBS242.79Bよりなる群から選ばれる上記(8)に記載の方法が提供される。【0012】本発明の別の態様(第2の態様)により、(11)エリスリトール産生能を有する微生物であって、水と水不溶性溶媒で分配した時に水層に20%以上残る物性を有する微生物及び/又は疎水度が80以下である微生物を採取し、該微生物から更に好気的培養中に実質的な泡を形成しない微生物を採取することを特徴とするエリスリトール産生微生物の製造方法が提供される。【0013】この発明の好ましい態様によれば、(12)エリスリトール産生能を有する微生物を液体培地で培養し、培養物より微生物凝集塊を除去する行程を組み合わせて行う上記(11)に記載の方法、(13)微生物を液体培地で培養し、培養物より微生物凝集塊を除去する行程を繰り返し行う上記(12)に記載の方法、(14)変異処理を行った微生物を液体培地で培養する上記(12)又は(13)に記載の方法が提供される。【0014】この発明の更に好ましい態様によれば、(15)液体培地で培養する微生物が、酵母状糸状菌である上記(11)乃至(14)のいずれかに記載の方法、(16)酵母状糸状菌が、モニリエラ(Moniliella)属に属する微生物である上記(15)に記載の方法、(17)モニリエラ(Moniliella)属に属する微生物が、モニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)及びモニリエラ・スアヴェオレンス・バール・ニグラ(Moniliella suaveolens var. nigra)よりなる群から選ばれる微生物である上記(16)に記載の方法、(18)モニリエラ(Moniliella)属に属する微生物が、モニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)CBS461.67、モニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)MCI3554、モニリエラ・スアヴェオレンス・バール・ニグラ(Moniliella suaveolens var. nigra)CBS223.32、モニリエラ・スアヴェオレンス・バール・ニグラ(Moniliella suaveolens var. nigra)CBS382.36及びモニリエラ・スアヴェオレンス・バール・ニグラ(Moniliella suaveolens var. nigra)CBS223.79よりなる群から選ばれる微生物である上記(16)に記載の方法が提供される。【0015】また、(19)酵母状糸状菌が、トリコスポロノイデス(Trichosporonoides)属に属する微生物である上記(15)に記載の方法、(20)トリコスポロノイデス(Trichosporonoides)属に属する微生物が、トリコスポロノイデス・オエドセファリス(Trichosporonoides oedocephalis)、トリコスポロノイデス・メガチリエンシス(Trichosporonoides megachillensis)、トリコスポロノイデス・マディダ(Trichosporonoides madida)、トリコスポロノイデス・ニグレッセンス(Trichosporonoides nigrescens)及びトリコスポロノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)よりなる群から選ばれる微生物である上記(19)に記載の方法、(21)トリコスポロノイデス(Trichosporonoides)属に属する微生物が、トリコスポラノイデス・オエドファリス(Trichosporonoides oedocephalis)CBS649.66、トリコスポラノイデス・オエドファリス(Trichosporonoides oedocephalis)CBS568.85、トリコスポラノイデス・メガチリエンシス(Trichosporonoides megachillensis)CBS567.85、トリコスポロノイデス・メガチリエンシス(Trichosporonoides megachillensis)ATCC76718、トリコスポロノイデス・マディダ(Trichosporonoides madida)CBS240.79、トリコスポラノイデス・ニグレッセンス(Trichosporonoides nigrescens)CBS268.81、トリコスポラノイデス・ニグレッセンス(Trichosporonoides nigrescens)CBS269.81、トリコスポロノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)CBS241.79、トリコスポロノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)CBS242.79A及びトリコスポロノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)CBS242.79Bよりなる群から選ばれる上記(19)に記載の方法が提供される。【0016】本発明の別の態様(第3の態様)により、(22)上記(1)乃至(10)のいずれかに記載の方法により得られる、好気的培養中に実質的な泡を形成しないエリスリトール産生微生物が提供される。【0017】この発明の好ましい態様によれば、(23)上記(7)に記載の方法により得られる、モニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)CBS461.67の変異株MCI3371(FERM BP-6173)、モニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)MCI3554の変異株MCI3555(FERM BP-6171)、モニリエラ・スアヴェオレンス・バール・ニグラ(Moniliella suaveolens var. nigra)CBS223.32の変異株MCI3598、モニリエラ・スアヴェオレンス・バール・ニグラ(Moniliella suaveolens var. nigra)CBS382.36の変異株MCI3599及びモニリエラ・スアヴェオレンス・バール・ニグラ(Moniliella suaveolens var. nigra)CBS223.79の変異株MCI3600よりなる群から選ばれる、好気的培養中に実質的な泡を形成しないエリスリトール産生微生物が提供される。【0018】また、(24)上記(10)に記載の方法により得られる、トリコスポラノイデス・オエドファリス(Trichosporonoides oedocephalis)CBS649.66の変異株MCI3439(FERM BP-6308)、トリコスポラノイデス・オエドファリス(Trichosporonoides oedocephalis)CBS568.85の変異株MCI3440(FERM BP-6175)、トリコスポラノイデス・メガチリエンシス(Trichosporonoides megachillensis)CBS567.85の変異株MCI3369(FERM BP-6172)、トリコスポロノイデス・メガチリエンシス(Trichosporonoides megachillensis)ATCC76718の変異株MCI3604、トリコスポロノイデス・マディダ(Trichosporonoides madida)CBS240.79の変異株MCI3441(FERM BP-6309)、トリコスポラノイデス・ニグレッセンスCBS268.81の変異株MCI3437(FERM BP-6174)、トリコスポラノイデス・ニグレッセンス(Trichosporonoides nigrescens)CBS269.81の変異株MCI3438(FERM BP-6307)、トリコスポロノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)CBS241.79の変異株MCI3601、トリコスポロノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)CBS242.79Aの変異株MCI3602及びトリコスポロノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)CBS242.79Bの変異株MCI3603よりなる群から選ばれる、好気的培養中に実質的な泡を形成しないエリスリトール産生微生物が提供される。【0019】本発明の別の態様(第4の態様)により、(25)上記(11)乃至(21)のいずれかに記載の方法により得られる好気的培養中に実質的な泡を形成しないエリスリトール産生微生物が提供される。【0020】本発明の別の態様(第5の態様)により、(26)上記(22)乃至(26)のいずれかに記載のエリスリトール産生微生物又はその変異株を、培地で培養し、培養物よりエリスリトールを採取することを特徴とするエリスリトールの製造方法が提供される。【0021】本発明の別の態様(第6の態様)により、(27)モリニエラ(Moniliella)属に属するエリスリトール産生能を有する微生物であって、好気的培養中に実質的な泡を形成しないエリスリトール産生微生物が提供される。【0022】本発明の別の態様(第7の態様)により、(28)モリニエラ(Moniliella)属に属するエリスリトール産生能を有する微生物であって、水と水不溶性溶媒で分配した時に水層に20%以上残る物性及び/又は疎水度が80以下である物性を有し、好気的培養中に実質的な泡を形成しないエリスリトール産生微生物が提供される。【0023】本発明の別の態様(第8の態様)により、(29)モニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)及びモニリエラ・スアヴェオレンス・バール・ニグラ(Moniliella suaveolens var. nigra)よりなる群から選ばれる微生物の変異株であって、エリスリトール産生能を有し、好気的培養中に実質的な泡を形成しないエリスリトール産生微生物が提供される。【0024】本発明の別の態様(第9の態様)により、(30)モニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)CBS461.67、モニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)MCI3554、モニリエラ・スアヴェオレンス・バール・ニグラ(Moniliella suaveolens var. nigra)CBS223.32、モニリエラ・スアヴェオレンス・バール・ニグラ(Moniliella suaveolens var. nigra)CBS382.36及びモニリエラ・スアヴェオレンス・バール・ニグラ(Moniliella suaveolens var. nigra)CBS223.79よりなる群から選ばれる微生物の変異株であって、エリスリトール産生能を有し、好気的培養中に実質的な泡を形成しないエリスリトール産生微生物が提供される。【0025】本発明の別の態様(第10の態様)により、(31)モニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)CBS461.67の変異株MCI3371(FERM BP-6173)、モニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)MCI3554の変異株MCI3555(FERM BP-6171)、モニリエラ・スアヴェオレンス・バール・ニグラCBS223.32の変異株MCI3598、モニリエラ・スアヴェオレンス・バール・ニグラ(Moniliella suaveolens var. nigra)CBS382.36の変異株MCI3599及びモニリエラ・スアヴェオレンス・バール・ニグラ(Moniliella suaveolens var. nigra)CBS223.79の変異株MCI3600よりなる群から選ばれる、エリスリトール産生能を有し、好気的培養中に実質的な泡を形成しないエリスリトール産生微生物が提供される。【0026】本発明の別の態様(第11の態様)により、(32)トリコスポロノイデス(Trichosporonoides)属に属するエリスリトール産生能を有する微生物であって、好気的培養中に実質的な泡を形成しないエリスリトール産生微生物が提供される。【0027】本発明の別の態様(第12の態様)により、(33)トリコスポロノイデス(Trichosporonoides)属に属するエリスリトール産生能を有する微生物であって、水と水不溶性溶媒で分配した時に水層に20%以上残る物性及び/又は疎水度が80以下である物性を有し、好気的培養中に実質的な泡を形成しないエリスリトール産生微生物が提供される。【0028】本発明の別の態様(第13の態様)により、(34)トリコスポロノイデス・オエドセファリス(Trichosporonoides oedocephalis)、トリコスポロノイデス・メガチリエンシス(Trichosporonoides megachillensis)、トリコスポロノイデス・マディダ(Trichosporonoides madida)、トリコスポロノイデス・ニグレッセンス(Trichosporonoides nigrescens)及びトリコスポロノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)よりなる群から選ばれる微生物の変異株であって、エリスリトール産生能を有し、好気的培養中に実質的な泡を形成しないエリスリトール産生微生物が提供される。【0029】本発明の別の態様(第14の態様)により、(35)トリコスポラノイデス・オエドファリス(Trichosporonoides oedocephalis)CBS649.66、トリコスポラノイデス・オエドファリス(Trichosporonoides oedocephalis)CBS568.85、トリコスポラノイデス・メガチリエンシス(Trichosporonoides megachillensis)CBS567.85、トリコスポロノイデス・メガチリエンシス(Trichosporonoides megachillensis)ATCC76718、トリコスポロノイデス・マディダ(Trichosporonoides madida)CBS240.79、トリコスポラノイデス・ニグレッセンス(Trichosporonoides nigrescens)CBS268.81、トリコスポラノイデス・ニグレッセンス(Trichosporonoides nigrescens)CBS269.81、トリコスポロノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)CBS241.79、トリコスポロノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)CBS242.79A及びトリコスポロノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)CBS242.79Bよりなる群から選ばれる微生物の変異株であって、エリスリトール産生能を有し、好気的培養中に実質的な泡を形成しないエリスリトール産生微生物が提供される。【0030】本発明の別の態様(第15の態様)により(36)トリコスポラノイデス・オエドファリス(Trichosporonoides oedocephalis)CBS649.66の変異株MCI3439(FERM BP-6308)、トリコスポラノイデス・オエドファリス(Trichosporonoides oedocephalis)CBS568.85の変異株MCI3440(FERM BP-6175)、トリコスポラノイデス・メガチリエンシス(Trichosporonoides megachillensis)CBS567.85の変異株MCI3369(FERM BP-6172)、トリコスポロノイデス・メガチリエンシス(Trichosporonoides megachillensis)ATCC76718の変異株MCI3604、トリコスポロノイデス・マディダ(Trichosporonoides madida)CBS240.79の変異株MCI3441(FERM BP-6309)、トリコスポラノイデス・ニグレッセンスCBS268.81の変異株MCI3437(FERM BP-6174)、トリコスポラノイデス・ニグレッセンス(Trichosporonoides nigrescens)CBS269.81の変異株MCI3438(FERM BP-6307)、トリコスポロノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)CBS241.79の変異株MCI3601、トリコスポロノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)CBS242.79Aの変異株MCI3602及びトリコスポロノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)CBS242.79Bの変異株MCI3603よりなる群から選ばれる、エリスリトール産生能を有し、好気的培養中に実質的な泡を形成しないエリスリトール産生微生物が提供される。【0031】【発明の実施の形態】以下、本発明について更に詳細に説明する。本明細書において、「実質的な泡」とは、微生物の培養の際に用いられる市販されている消泡剤では消泡できない高密度で安定的な泡を意味する。また、「好気的培養中に実質的な泡を形成しない微生物」とは、通気、撹拌、振盪等を伴う好気的培養中に微生物に起因する発泡を起こさず、培地成分等に起因する発泡が通常の消泡剤の添加で抑制可能な微生物を意味する。【0032】本発明のエリスリトール産生微生物の製造方法において、親株として用いる「エリスリトール産生能を有する微生物」としては、主炭素源として用いるグルコース、フルクトース等の発酵性糖質からエリスリトールを産生する能力を有する微生物であれば如何なるものであっても良いが、通常、酵母状糸状菌が用いられ、具体的にはモニリエラ(Moniliella)属に属する微生物及びトリコスポロノイデス(Trichosporonoides)属に属する微生物が好ましい微生物として挙げられる。【0033】モニリエラ属に属する微生物としては、例えば、モニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)、モニリエラ・スアヴェオレンス・バール・ニグラ(Moniliella suaveolens var. nigra)等を挙げることができる。【0034】これらの中で好ましい菌株としては、モニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)CBS461.67、モニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)MCI3554(FERM BP-6170)、モニリエラ・スアヴェオレンス・バール・ニグラ(Moniliella suaveolens var. nigra)CBS223.32、モニリエラ・スアヴェオレンス・バール・ニグラ(Moniliella suaveolens var. nigra)CBS382.36、モニリエラ・スアヴェオレンス・バール・ニグラ(Moniliella suaveolens var. nigra)CBS223.79、等を挙げることができる。【0035】トリコスポロノイデス属に属する微生物としては、例えば、トリコスポロノイデス・オエドセファリス(Trichosporonoides oedocephalis)、トリコスポロノイデス・メガチリエンシス(Trichosporonoides megachillensis)、トリコスポロノイデス・マディダ(Trichosporonoides madida)、トリコスポロノイデス・ニグレッセンス(Trichosporonoides nigrescens)、トリコスポロノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)等を挙げることができる。【0036】これらの中で好ましい菌株としては、例えば、トリコスポラノイデス・オエドファリス(Trichosporonoides oedocephalis)CBS649.66、トリコスポラノイデス・オエドファリス(Trichosporonoides oedocephalis)CBS568.85、トリコスポラノイデス・メガチリエンシス(Trichosporonoides megachillensis)CBS567.85、トリコスポロノイデス・メガチリエンシス(Trichosporonoides megachillensis)ATCC76718、トリコスポロノイデス・マディダ(Trichosporonoides madida)、CBS240.79、トリコスポラノイデス・ニグレッセンス(Trichosporonoides nigrescens)CBS268.81、トリコスポラノイデス・ニグレッセンス(Trichosporonoides nigrescens)CBS269.81、トリコスポロノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)CBS241.79、トリコスポロノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)CBS242.79A、トリコスポロノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)CBS242.79B等を挙げることができる。【0037】これらの菌株は、いずれも国際寄託機関であるオランダ国のCentraal Bureau voor Schimmelcultures(CBS)、アメリカ合衆国のAmerican Type Culture Collection(ATCC)に国際寄託されている菌株であり、当業者に容易に入手可能なものである。また、モニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)MCI3554(FERM BP-6170)は、1997年11月19日より、日本国の工業技術院生命工学工業技術研究所(日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号、郵便番号305)に、FERM BP-6170の受託番号でブタペスト条約に基づき国際寄託されている。【0038】本発明のエリスリトール産生微生物の製造方法において、上記微生物は液体培地で培養され、培養物より微生物凝集塊を除去した後、培養物中に残存する微生物から好気的培養中に実質的な泡を形成しない微生物が採取される。【0039】培養は、後述する本発明の微生物によるエリスリトールの製造方法で用いる培地と同様の組成を有する液体培地を用い、好ましくは、通気、撹拌、振盪等の好気的条件で行われる。培地のpHは、通常pH3〜7、好ましくはpH3〜4.5、培養温度は25℃〜37℃、好ましくは27℃〜35℃の範囲内が適当である。培養時間は、通常は1〜7日間、好ましくは2〜5日間が適当である。【0040】培養物からの微生物凝集塊の除去は、マイクロマニュピレーター等を用いて凝集していない菌体を分離する方法、ペーパーフィルター等により凝集塊を濾過する方法、菌体懸濁液に通気し菌体凝集塊を泡として除去する方法等により行うことができる。【0041】上記微生物の培養及び微生物凝集塊除去の行程は、一回でも良いが、この行程を繰り返し行うのが好ましい。この行程を繰り返すことにより、好気的培養中に実質的な泡を形成しない微生物を効率よく採取することができる。繰り返しの回数は、好ましくは5〜15回が適当である。【0042】また、エリスリトール産生能を有する微生物を変異処理し、該微生物を用いて、上記培養及び凝集塊除去の行程を行えば、更に効率的に好気的培養中に実質的な泡を形成しない微生物を採取することができる。変異処理の方法としては、それ自体既知の通常用いられる、紫外線照射、X線照射、放射線照射、N−メチル−N’−ニトロ−ニトロソグアニジン(NTG)等の変異誘起剤処理、遺伝子組換え、細胞融合等の人為的変異処理等を挙げることが出来る。【0043】上記した微生物生物凝集塊を除去した培養物中に残存する微生物から好気的培養中に実質的な泡を形成しない微生物を採取するには、例えば、凝集塊を除去した培養物を液体培地と同様の組成の寒天培地に接種し、コロニーを分離する。次に、分離したコロニーを、それぞれバッフル付き三角フラスコを用いて液体培地で好気的に培養し、泡の形成が少ない株を選抜すれば良い。【0044】上記のようにして得られる好気的培養中に実質的な泡を形成しない微生物をさらに変異処理し、再度、培養及び微生物凝集塊除去の行程および/またはコロニーの分離、選抜工程を行ってもよい。【0045】かくして得られる本発明の微生物としては、前記した微生物を親株として、上記の方法により得られる好気的培養中に実質的な泡の形成がなく、エリスリトール産生能を有するものであれば如何なる微生物でも本発の範囲に含まれる。具体的には、酵母状糸状菌、例えば、モニリエラ(Moniliella)属に属する微生物又はトリコスポロノイデス(Trichosporonoides)属に属する微生物で上記特徴を有するものが挙げられる。更に具体的には、次の菌株を特に好ましいものとして挙げることができる。【0046】(1)モニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)CBS461.67の変異株MCI3371(FERM BP-6173)(2)モニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)MCI3554の変異株MCI3555(FERM BP-6171)(3)モニリエラ・スアヴェオレンス・バール・ニグラ(Moniliella suaveolens var. nigra)CBS223.32の変異株MCI3598(4)モニリエラ・スアヴェオレンス・バール・ニグラ(Moniliella suaveolens var. nigra)CBS382.36の変異株MCI3599(5)モニリエラ・スアヴェオレンス・バール・ニグラ(Moniliella suaveolens var. nigra)CBS223.79の変異株MCI3600(6)トリコスポラノイデス・オエドファリス(Trichosporonoides oedocephalis)CBS649.66の変異株MCI3499(FERM BP-6308)(7)トリコスポラノイデス・オエドファリス(Trichosporonoides oedocephalis)CBS568.85の変異株MCI3440(FERM BP-6175)(8)トリコスポラノイデス・メガチリエンシス(Trichosporonoides megachillensis)CBS567.85の変異株MCI3369(FERM BP-6172)(9)トリコスポロノイデス・メガチリエンシス(Trichosporonoides megachillensis)ATCC76718の変異株MCI3604(10)トリコスポロノイデス・マディダ(Trichosporonoides madida)CBS240.79の変異株MCI3441(FERM BP-6309)(11)トリコスポラノイデス・ニグレッセンスCBS268.81の変異株MCI3437(FERM BP-6174)(12)トリコスポラノイデス・ニグレッセンス(Trichosporonoides nigrescens)CBS269.81の変異株MCI3438(FERM BP-6307)(13)トリコスポロノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)CBS241.79の変異株MCI3601(14)トリコスポロノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)CBS242.79の変異株MCI3602(15)トリコスポロノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)CBS242.79Bの変異株MCI3603【0047】上記菌株の中で、(1)MCI3371株(FERM BP-6173)、(2)MCI3555株(FERM BP-6171)、(6)MCI3439株(FERM BP-6308)、(7)MCI3440株(FERM BP-6175)、(8)MCI3369株(FERM BP-6172)、(10)MCI3441株(FERM BP-6309)、(11)MCI3437株(FERM BP-6174)、(12)MCI3438株(FERM BP-6307)は、日本国の工業技術院生命工学工業技術研究所(日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号、郵便番号305)に、カッコ内の受託番号(「FERM BP-」が冠せられている)で各々ブタペスト条約に基づき国際寄託されている。MCI3371株(FERM BP-6173)及びMCI3369株(FERM BP-6172)は1996年11月28日に、各々FERM P-15967及びFERM P-15969の受託番号で寄託され、1997年11月19日にブタペスト条約に基づく国際寄託に移管されている。MCI3440株(FERM BP-6175)及びMCI3437株(FERM BP-6174)は1997年3月28日に、各々FERM P-16167およびFERM P-16164の受託番号で寄託され、1997年11月19日にブタペスト条約に基づく国際寄託に移管されている。MCI3555株(FERM BP-6171)は、1997年11月19日より国際寄託されている。MCI3439株(FERM BP-6308)、MCI3441株(FERM BP-6309)およびMCI3438株(FERM BP-6307)は1997年3月28日に、各々FERM P-16166、FERM P-16168およびFERM P-16165の受託番号で寄託され、1998年3月26日にブタペスト条約に基づく国際寄託に移管されている。【0048】上記した本発明により提供されるエリスリトール産生微生物は、好ましくは水と水不溶性溶媒で分配した時に水層に20%以上残る物性を有する微生物及び/又は疎水度が80以下である微生物である。【0049】かくして本発明の別の態様により、エリスリトール産生能を有する微生物であって、水と水不溶性溶媒で分配した時に水層に20%以上残る物性を有する微生物及び/又は疎水度が80以下である微生物を採取し、該微生物から更に好気的培養中に実質的な泡を形成しない微生物を採取することを特徴とするエリスリトール産生微生物の製造方法が提供される。上記微生物の疎水度は通常80以下であるが、好ましくは70以下である。【0050】後記実施例4〜18及び比較例1〜15に示すように、好気的培養中に実質的な泡を形成しない微生物は、その疎水度がいずれも80以下であり、好気的培養中に実質的な泡を形成しないことと疎水度とは関連性があると考えられる。したがって、好気的培養中に実質的な泡を形成しない微生物の選択と、疎水度が80以下である微生物の選択は、いずれか一方を行ってもよいし、両方行ってもよい。また、両方の選択を行う場合は、どちらを先に行ってもよい。【0051】本発明の方法においては、エリスリトール産生能を有する微生物を、例えば、前記した寒天培地に接種後、培養してコロニーを分離し、各コロニーから得られる微生物の一部を物性の測定に供すればよい。【0052】この発明で用いる水不溶性溶媒としては、例えばトルエン、ベンゼン、酢酸エチル、クロロホルム、シクロヘキサン、ヘキサノール、オクタノール、プロパノールが挙げられ、好ましくはトルエン、ベンゼン、オクタノールが挙げられ、特に好ましくはトルエンが挙げられる。【0053】水と水不溶性溶媒での微生物の分配は、それ自体既知の通常用いられる方法により、例えば、微生物の水懸濁液を調製し、それに適量の上記水不溶性溶媒を加えて攪拌し、水層及び/又は溶媒層の微生物量を測定することにより算出できる。【0054】微生物の疎水度は、下記式:疎水度=100×(1−R/I)(式中、Rは水不溶性溶媒処理後の水層の吸光度を表し、Iは水不溶性溶媒処理前の吸光度を表す。)で定義される値である。【0055】上記式における水層の吸光度は、微生物の水懸濁液を調製して吸光度(例えば660nmで)を分光光度計により測定し、該懸濁液に水不溶性溶媒を加えて攪拌し、水層と水不溶性溶媒層とを分離させた後水層の吸光度を同じ波長で測定することにより求められる。微生物の水懸濁液は、吸光度が測定できる微生物量が存在すれば特に制限されないが、通常、吸光度0.1〜1.0、好ましくは0.3〜0.6に調製するのが適当である。加える水不溶性溶媒の量は特に制限されないが、微生物の水懸濁液と等量加えるのが好ましい。微生物懸濁液と水不溶性溶媒との攪拌は、試験管ミキサー等を用いて行えば良い。また、微生物は、水懸濁液を調製する前に、必要に応じて洗浄操作を行うのが好ましい。また、好気的培養中に実質的な泡を形成しない微生物の採取は、前記した方法で行えば良い。尚、本発明において、吸光度は、濁度で置き換えることができる。【0056】上記物性値による微生物の選別は、前記したエリスリトール産生能を有する微生物を液体培地で培養し、培養物より微生物凝集塊を除去する行程を組み合わせて行うこともできる。即ち、該行程を、上記物性値による微生物の選別の前又は後に組み合わせて行えば良い。また、液体培地での微生物の培養は、前記の通り変異処理を行った後に行うこともできる。【0057】かくして本発明の方法により、前記したエリスリトール産生能を有し、好気的培養中に実質的な泡を形成しないエリスリトール産生微生物が提供される。【0058】次に、本発明により提供されるエリスリトール産生微生物の帰属を明確にするために、本発明者らにより行われた微生物の同定結果(菌学的性質)を示す。【0059】MCI3369株(FERM BP-6172)の同定MCI3369株は、PDA(potato dextrose agar)上、24℃培養ではじめ白色、後にオリーブがかった灰色、2週間以上の古い培養ではオリーブ褐色に変色する。菌の生育は速く、酵母様の出芽により増殖する。酵母様の細胞は、はじめ無色、後にはオリーブがかった褐色を呈する。栄養菌糸はよく発達し、隔壁を有し分枝する、幅2〜3.8μm、はじめ無色、後に若干厚膜化し褐色に変色する。気中菌糸の発達は旺盛で、気中菌糸の側面より出芽型分生子を形成する。栄養菌糸、気中菌糸は断片状に切れて分節型の分生子となる。分節型分生子は円筒形〜樽形(3.6〜25μm×2.2〜4.3μm)、はじめ無色で、後に淡褐色になる。出芽型分生子は単一または3〜4個の連鎖となる。分生子は細長い楕円形、大きさは3.4〜7.5μm×1.9〜4.1μm(平均6.5±1.2μm×3.8±0.6μm)、はじめ無色、後にオリーブがかった褐色を呈する。【0060】本菌株(MCI3369)の形態学的性状は、親株であるトリコスポロノイデス・メガチリエンシス(Trichosporonoides megachiliensis)CBS567.85の基準株の特徴によく一致した。従って、本菌株はトリコスポロノイデス・メガチリエンシス(Trichosporonoides megachiliensis)と同定した。【0061】MCI3371株(FERM BP-6173)の同定MCI3371株は、PDA(potato dextrose agar)上、24℃培養で始め白色〜黄味白色、培養一週間後にはにぶい黄色となり、さらに古い培養では黒褐色に変色する。菌の生育は速く、酵母様の出芽により増殖する。出芽細胞は、はじめ薄膜でオリーブがかった褐色を呈し、後に厚膜化して着色する。酵母様の出芽と同時に栄養菌糸が伸長する。栄養菌糸は隔壁を有し、分枝する。幅2〜4.5μm、はじめ無色、後に褐色になる。菌糸は断片状に切れて分節型の分生子となるか、または菌糸の側面あるいは先端部より出芽型の分生子を形成する。分節型分生子は円筒形〜樽形(6〜35μm×2.5〜5.0μm)、はじめ無色で、後に褐色になる。出芽型分生子は単一または2〜3個の連鎖となって形成される、卵形〜楕円形、あるいは亜球形で、大きさは4.7〜9.4μm×3.1〜5.6μm(平均6.8±1.3μm×4.5±0.6μm)、はじめ無色で、後にオリーブがかった褐色となる。【0062】本菌株(MCI3371)は、分節型分生子と出芽型分生子の二形性を有する、2)出芽型分生子は求頂的に形成され同調的に形成されない等の特徴を有する。これらの特徴に基づいてDe Hoog & Hermanides-Nijhof(1977)のモノグラフに従って属の検索を行ったところ、本菌株はモニリエラ(Moniliella)属に帰属することが判明した。De Hoog(1979)の“The Black yeasts, II:Moniliella and Allied Genera”Studies in Mycology No.19,1〜90によれば、モニリエラ(Moniliella)属にはモニリエラ・スアベオレンス・バー・スアベオレンス(Moniliella suaveolens var. suaveolens)、モニリエラ・スアベオレンス・バー・ニゲル(Moniliella suaveolens var. niger)、モニリエラ・アセトアブテンス(Moniliella acetoabutens)及びモニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)の3種2変種が知られている。これらの種や変種は主として出芽型分生子あるいは分節型分生子の形態学的特徴によって区別されている。本菌株の形態学的性状を精査した結果、本菌はモニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)の記載によく合致した。従って本菌株はモニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)と同定した。【0063】MCI3437株(FERM BP-6174)の同定MCI3437株は、トリコスポロノイデス・ニグレッセンス(Trichosporonoides nigrescens)CBS268.81に由来する変異株で、LCA(三浦培地)上、24℃培養で初め白色〜黄味白色、培養1週間後に黄褐色、2週間以上の古い培養では暗い黄茶色に変色する。菌の生育は中程度であり、酵母様の出芽により増殖する。出芽細胞は、初め薄膜でオリーブがかった褐色を呈し、後に厚膜化して、黒褐色に着色し、多極出芽により増殖する。1回から3〜4回出芽して増殖する。酵母様の出芽と同時に基底菌糸が伸長する。基底菌糸は、隔壁を有し、分枝し、幅は2〜4.5μm、初め無色で、後に褐色になる。菌糸は断片状に切れて分節型の分生子になるか、あるいは菌糸の側面あるいは先端部より出芽型の分生子を形成する。分節型分生子は円筒形〜樽型、長さは変化に富む、幅は2.5〜5.0μm、初め無色で、後に褐色になる。出芽型分生子は、基底菌糸の側面及び先端に形成し、単一あるいは2、3の連鎖となって形成され、亜球形〜楕円形(4.3〜9.2x3.8〜6.5μm)、褐色で、厚膜化するが、37℃では生育しない。【0064】本菌株(MCI3437)は、1)分節型分生子と出芽型分生子の二形性を有する、2)出芽型分生子は求頂的に形成され、同調的な形成をしない等の特徴を有する。これらの特徴に基づいて、Trichosporonoides nigrescensの親株と対比すると共に、G. S. de Hoog(1979)のモノグラフ及びA. D. Hocking & J. I. Pitt(1981)の原記載に従って属及び種の検索を行ったところ、本生産菌の性状はTrichosporonoides nigrescensの親株によく合致した。従って本菌株はT. nigrescensと同定した。【0065】MCI3438株(FERM BP-6307)の同定MCI3438株は、トリコスポロノイデス・ニグレッセンス(Trichosporonoides nigrescens)CBS269.81に由来する変異株で、LCA(三浦培地)上、24℃培養で初め白色〜黄味白色、培養1週間後に黄褐色となり、2週間以上の古い培養では暗い黄茶色に変色する。菌の生育は中程度で、酵母様の出芽により増殖する。出芽細胞は、初め薄膜でオリーブがかった褐色を呈し、後に厚膜化して、黒褐色に着色し、多極出芽する。1回から3〜4回出芽して増殖する。酵母様の出芽と同時に基底菌糸が伸長する。基底菌糸は、隔壁を有し、分枝し、幅は2〜4.5μm、初め無色で、後に褐色になる。菌糸は断片状に切れて分節型の分生子になる、あるいは菌糸の側面あるいは先端部より出芽型の分生子を形成する。分節型分生子は円筒形〜樽型、長さは変化に富む、幅は2.5〜5.0μm、初め無色で、後に褐色になる。出芽型分生子は、基底菌糸の側面及び先端に形成し、単一あるいは2、3の連鎖となって形成され、亜球形〜楕円形(3.4〜9.8x3.8〜6.3μm)、初め無色で、後に褐色となり、厚膜化するが、37℃では生育しない。【0066】本菌株(MCI3438)は、1)分節型分生子と出芽型分生子の二形性を有する、2)出芽型分生子は求頂的に形成され、同調的な形成をしない等の特徴を有する。これらの特徴に基づいて、Trichosporonoides nigrescensの親株と対比すると共に、G. S. de Hoog(1979)Pitt(1981)の原記載に従って属及び種の検索を行ったところ、本生産菌の性状はTrichosporonoides nigrescensの親株によく合致した。従って本菌株はT. nigrescensと同定した。【0067】MCI3439株(FERM BP-6308)の同定MCI3439株は、トリコスポロノイデス・オエドセファリス(Trichosporonoides oedocephalis)CBS649.66に由来する変異株で、LCA(三浦培地)上、24℃培養で初め白色〜黄味白色、培養1週間後に茶色、2週間以上の古い培養では暗い黄茶色に変色する。菌の生育は速い、酵母様の出芽により増殖する。出芽細胞は無色で、多極出芽より増殖する。1回から3〜4回出芽して増殖する。酵母様の出芽と同時に基底菌糸及び気中菌糸が伸長する。基底菌糸と気中菌糸は隔壁を有し、分枝し、幅は2〜4.5μm、無色である。菌糸は、断片状に切れて分節型の分生子になるか、あるいは菌糸の側面あるいは先端部より出芽型の分生子を形成する。また基底菌糸より分生子柄が発達し、先端が膨潤して頂嚢となる。頂嚢は直径8.8〜12.5μm、頂嚢より同調的に出芽型分生子が形成される。分節型分生子は円筒形〜樽型、長さは変化に富み、幅は2.8〜5.0μm、初め無色。出芽型分生子は、基底菌糸の側面及び先端に形成され、単一あるいは2、3の連鎖となって形成され、楕円形(4.4〜6.3x2.2〜3.8μm)で、無色である。頂嚢に形成される分生子は、亜球形〜球形(4.0〜6.3μm)で、赤褐色であり、37℃で生育する。【0068】本菌株(MCI3439)は、1)分節型分生子と出芽型分生子の二形性を有する、2)出芽型分生子は基底菌糸及び気中菌糸上に求頂的に生じる、あるいは頂嚢から同調的に生じる等の特徴を有する。これらの特徴に基づいて、Trichosporonoides oedocephalisの親株と対比すると共に、G. S. de Hoog(1979)のモノグラフ及びR. H. Haskins &J. F. T. Spencer(1966)の原記載に従って属及び種の検索を行ったところ、本生産菌の性状はTrichosporonoides oedocephalisの親株によく合致した。従って本菌株はT. oedocephalisと同定した。【0069】MCI3440株(FERM BP-6175)の同定MCI3440株は、トリコスポロノイデス・オエドセファリス(Trichosporonoides oedocephalis)CBS568.85に由来する変異株で、LCA(三浦培地)上、24℃培養で初め白色〜黄味白色、培養1週間後に茶色、2週間以上の古い培養では暗い黄茶色に変色する。菌の生育は速く、酵母様の出芽により増殖する。出芽細胞は無色で、多極出芽により増殖する。1回から3〜4回出芽して増殖する。酵母様の出芽と同時に基底菌糸及び気中菌糸が伸長する。基底菌糸と気中菌糸は隔壁を有し、分枝し、幅は2〜4.5μm、無色である。菌糸は、断片状に切れて分節型の分生子になるか、あるいは菌糸の側面あるいは先端部より出芽型の分生子を形成する。LCA(三浦培地)及びPDA(potato dextrose agar)上で頂嚢は形成されない。分節型分生子は、円筒形〜樽型、長さは変化に富み、幅は2.8〜5.0μm、無色である。出芽型分生子は、基底菌糸の側面及び先端に形成する、単一あるいは2、3の連鎖となって形成される、楕円形(4.7〜8.1x2.5〜3.4μm)で、無色であり、37℃で生育する。【0070】本菌株(MCI3440)は、1)分節型分生子と出芽型分生子の二形性を有する、2)出芽型分生子は基底菌糸及び気中菌糸上に求頂的に生じる等の特徴を有する。Oedocephalis-typeの頂嚢を形成しない性状を有す。Haskins & Spencer(1966)の原記載によれば、Trichosporonoides oedocephalisは主として頂嚢を持つことによって、他の種(T. spathulata、T. nigrescens、T. madida及びT. megachiliensis)から識別されている。本変異株は、この点がT. oedocephalisと異なっている。しかし、T. oedocephalisの親株と対比すると共に、G. S. de Hoog(1979)のモノグラフ及びR. H. Haskins &J. F. T. Spencer(1966)の原記載に従って属及び種の検索を行ったところ、Oedocephalis-typeの頂嚢を欠損している以外の形態学的性状はT. oedocephalisの親株によく合致した。従って本菌株は暫定的にT. oedocephalisと同定した。【0071】MCI3441株(FERM BP-6309)の同定MCI3441株は、トリコスポロノイデス・マディダ(Trichosporonoides madida)CBS240.79に由来する変異株で、LCA(三浦培地)上、24℃培養で初め白色〜黄味白色、培養2週間以上の古い培養では茶色に変色する。菌の生育は中程度、酵母様の出芽により増殖する。出芽細胞は無色で、多極出芽により増殖する。1回から3〜4回出芽して増殖する。酵母様の出芽と同時に基底菌糸が伸長し、菌糸の発達は貧弱である。基底菌糸は、隔壁を有し、分枝し、幅は2〜3.5μmで、無色である。菌糸は断片状に切れて分節型の分生子になるか、あるいは菌糸の側面あるいは先端部より出芽型の分生子を形成する。分節型分生子は円筒形〜樽型、長さは変化に富み、幅は2.5〜40μm、無色である。出芽型分生子は基底菌糸の側面及び先端に形成する、単一あるいは2、3の連鎖となって形成され、亜球形〜楕円形(3.1〜7.8x2.8〜4.4μm)、無色であり、37℃で生育する。【0072】本菌株(MCI3441)は、1)分節型分生子と出芽型分生子の二形性を有する、2)出芽型分生子は求頂的に形成され、同調的な形成をしない等の特徴を有する。これらの特徴に基づいて、Trichosporonoides madidaの親株と対比すると共に、G. S. de Hoog(1979)のモノグラフに従って属及び種の検索を行ったところ、本菌株の性状はTrichosporonoides madidaの親株によく合致した。従って本菌株はT. madidaと同定した。【0073】MCI3554株(FERM BP-6170)の同定本菌株は、本発明者らにより土壌中の枯茎から分離された微生物であり、本発明のMCI3555株(FERM BP-6171)の親株である。【0074】1)形態学的特徴:コロニーはPDA(potato dextrose agar)上、24℃培養で初め白色〜黄味白色、培養1週間後に黄褐色、2週間以上の古い培養では暗い黄茶色に変色する。菌の生育は中程度、酵母様の出芽により増殖する。出芽細胞は、初め無色、後にやや厚膜化して、淡褐色を呈し、楕円形、卵形あるいは亜球形(3.8〜6.3×3.0〜5.0μm)である。1回から3〜4回出芽して増殖し、多極出芽する。酵母様の出芽と同時に基底菌糸と気中菌糸が伸長する。基底菌糸および気中菌糸は、幅2.2〜3.5μm、隔壁を有し、分枝し、初め無色で、後に褐色になる。菌糸は、断片状に切れて分節型の分生子になり、菌糸の側面あるいは先端部より出芽型の分生子を形成する。分節型分生子は円筒形〜樽型、長さは変化に富み(9.4〜18.8μm×3.1〜4.1μm)、初め無色で、後に褐色になる。出芽型分生子は、基底菌糸の側面および先端に、単一あるいは2、3個の連鎖となって形成され、亜球形〜楕円形(5.9〜10.9×3.8〜5.9μm)で、初め無色、後に褐色となり、やや厚膜化する。【0075】2)生理学的特徴:生育温度:9℃〜37℃(PDA上、10日間培養)最適生育温度:27℃〜30℃生育pH:4〜9(LCA液体培地上、10日間培養)最適生育pH:5〜6炭素源の利用(下記表1に示す。)糖からの発酵性(下記表2に示す。)窒素源の利用(下記表3に示す。)【0076】3)分類学的考察本菌株(MCI3554)は、1)酵母様の出芽型細胞を有する、2)分節型分生子と出芽型分生子の二形性を有する、3)出芽型分生子は求頂的に形成され、同調的に形成されない等の特徴を有する。これらの特徴に基づいて、G. S. de Hoog(1979),”The Black Yeasts, II: Moniliella and Allied Genera, Studies in Mycology No.19, p1-36”のモノグラフの検索表およびG. S. de Hoog & E. Gueho(1984), Deoxyribonucleic acid base composition and taxonomy of Moniliella and allied genera, Antonie van Leeuwenhook, 135-141のMoniliella属に属する種の記載に従って、属及び種の検索をしたところ、本生産菌の性状はMoniliella pollinisの記載によく合致した。さらにMoniliella pollinisのタイプstrain(CBS 461.67)の性状と対比したところ、本生産菌の性状はタイプstrainの性状にもよく合致した。従って本菌株はMoniliella pollinisと同定した。【0077】MCI3555株(FERM BP-6171)の同定1)形態学的特徴:本菌株(MCI3555)は、モニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)MCI3554に由来する変異株で、コロニーはPDA(potato dextrose agar)上、24℃培養で初め白色〜黄味白色、培養1週間後に黄褐色、2週間以上の古い培養では暗い黄茶色に変色する。菌の生育は中程度、酵母様の出芽により増殖する。出芽細胞は初め、無色、後にやや厚膜化して、淡褐色を呈する、楕円形、卵形あるいは亜球形(4.0〜7.8×3.5〜6.2μm)である。1回から3〜4回出芽して増殖し、多極出芽する。酵母様の出芽と同時に基底菌糸と気中菌糸が伸長する。基底菌糸及び気中菌糸は幅1.3〜4.1μm、隔壁を有し、分枝する、初め無色、後に褐色になる。菌糸は、断片状に切れて分節型の分生子になり、菌糸の側面あるいは先端部より出芽型の分生子を形成する。分節型分生子は円筒形〜樽型、長さは変化に富み(13.4〜32.8μm×2.5〜4.1μm)、初め無色、後に褐色になる。出芽型分生子は基底菌糸の側面および先端に、単一あるいは2、3個の連鎖となって形成され、亜球形〜楕円形(5.0〜9.4×4.4〜6.3μm)で、初め無色、後に褐色となり、やや厚膜化する。【0078】2)生理学的特徴:生育温度:9℃〜37℃(PDA上、10日間培養)最適生育温度:27℃〜30℃生育pH:4〜9(LCA液体培地上、10日間培養)最適生育pH:5〜6炭素源の利用(下記表1に示す。)糖からの発酵性(下記表2に示す。)窒素源の利用(下記表3に示す。)【0079】3)分類学的考察本菌株(MCI3555)は、1)酵母状の出芽型細胞を有する、2)分節型分生子と出芽型分生子の二形成を有する、3)出芽型分生子は求頂的に形成され、同調的に形成されない等の特徴を有する。これらの特徴に基づいて、G. S. de Hoog(1979),”The Black Yeasts, II: Moniliella and Allied Genera, Studies in Mycology No.19, p1-36”のモノグラフの検索表及びG. S. de Hoog & E. Gueho(1984), Deoxyribonucleic acid base composition and taxonomy of Moniliella and allied genera, Antonie van Leeuwenhook, 135-141のMoniliella属に属する種の記載に従って、属および種の検索をしたところ、本生産菌の性状はMoniliella pollinisの記載によく合致した。さらにMoniliella pollinisのタイプstrain(CBS 461.67)の性状と対比したところ、本生産菌の性状はタイプstrainの性状にもよく合致した。従って本菌株はMoniliella pollinisと同定した。【0080】【表1−1】【0081】【表1−2】【0082】【表2】【0083】【表3】【0084】かくして得られるエリスリトール産生微生物を用いて、本発明の別の態様であるエリスリトールの製造方法が提供される。【0085】この発明においては、上記エリスリトール産生微生物又はその変異株を、発酵性糖質を主炭素源とする培地で培養し、培養物よりエリスリトールが採取される。【0086】エリスリトール産生微生物としては、前記したものが用いられ、この発明で用いる好ましい微生物としては、同じく前記した好ましい菌株が挙げられる。これらの菌株は、さらにエリスリトールの生産能等の諸性質を改良した変異株であっても良い。これらの変異株は、それ自体既知の通常用いられる手段により育種することができる。【0087】本発明に用いる培地は、炭素源、窒素源、必要に応じて無機塩、発育素等を水に溶解させた液体培地である。【0088】上記微生物の培養に使用される主炭素源としては、グルコース、フルクトース、グリセロール等の発酵性糖質が利用される。これらの主炭素源は、単独でも組み合わせても使用できる。使用濃度は特に限定されないが、エリスリトールの生産を阻害しない範囲で可能な限り高くするほうが有利である。好ましい濃度は20%〜60%(W/V)の範囲である。また、培養中に主炭素源を分割添加してもよい。これらの主炭素源から、本発明で用いる微生物によりエリスリトールが産生される。【0089】微生物の培養に使用される窒素源としてはアンモニア塩、尿素、ペプトン、微生物エキス、コーンステープリカー等の各種の有機、無機の窒素化合物が用いられる。無機塩としては各種リン酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カリウム、マンガン、鉄、亜鉛等の金属塩が用いられる。また、発育素としてビタミン、ヌクレオチド、アミノ酸等の微生物の生育を促進する因子を必要に応じて添加することができる。また、本発明で用いる微生物は、培養中に実質的な泡を形成しないが、培養中の培地成分による発泡を抑える為に市販の消泡剤を適量添加しておくことが好ましい。【0090】培養に際しては、斜面培養から菌体を直接主培地に接種しても構わないが、液体培地で1日〜4日の培養で得られる前培養物を主培地に接種するのが好ましい。【0091】培養初期のpHは、通常pH3〜7、好ましくはpH3〜4.5である。培養温度は25℃〜37℃、好ましくは27℃〜35℃の範囲内が適当である。また、培養は通気、撹拌、振盪等の好気的条件で行うのが好ましい。培養時間は、主炭素源が消費されるまで行うのが好ましく、通常は3日〜8日間行われる。かくして産生される培養液中のエリスリトール生成量は、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等のそれ自体既知の通常用いられる方法で測定できる。上記の培養条件は、使用する微生物によって異なることが予想されるが、使用する微生物について条件を段階的に変化させて予備実験を行うことにより、好ましい条件を見出すことができる。【0092】培養液中に蓄積したエリスリトールは、常法に従って、培養物より分離・精製される。具体的には、遠心分離、濾過等により固形物を除去した後、活性炭、イオン交換樹脂により脱色、脱塩し、その溶液から結晶化することによりエリスリトールを分離・精製することができる。【0093】【実施例】以下に実施例により本発明を更に具体的に述べるが、本発明は以下に記載する実施例に限定されるものではない。【0094】実施例1モニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)CBS461.67を、酵母エキス1.5%、グルコース30%の培地で培養し、菌体を集め、生理食塩水にて2度洗浄し、ついでNTG1mg/mlを含む生理食塩水にて30℃にて60分間変異処理を行った。その後菌体を集め、培地に懸濁し、30℃にて振盪培養して変異を安定化させた。ついでその一部を培地に接種し2日間培養した後、菌体凝集塊を除き、残った菌体懸濁液を濃縮後培地に接種した。この操作を7回繰り返した後、この菌体を同一組成の寒天培地に広げコロニーを形成させた。各コロニーから得られた菌体をバッフル付き三角フラスコで振盪培養し、その中から泡のでない菌株を選択し、MCI3371株(FERM BP-6173)を得た。【0095】同様にして、モニリエラ・スアヴェオェンス・バール・ニグラ(Moniliella suaveolens var. nigra)CBS223.79からMCI3600株、トリコスポラノイデス・オエドファリス(Trichosporonoides oedocephalis)CBS568.85からMCI3440株(FERM BP-6175)を得た。【0096】実施例2トリコスポラノイデス・メガチリエンシス(Trichosporonoides megachillensis)CBS567.85を、酵母エキス1.5%、グルコース30%の培地で培養し、菌を集め生理食塩水にて2度洗浄し、ついで紫外線照射にて60分間変異処理を行った。その後菌体を集め、同一培地に懸濁し、30℃で振盪培養して変異を安定化させた。ついでその一部を同一培地に接種し2日間培養した後、菌体凝集塊を除き、残った菌体懸濁液を濃縮後培地に接種した。この操作を3回繰り返した後、この菌体を同一組成の寒天培地に広げコロニーを形成させた。各コロニーから得られた菌体をバッフル付き三角フラスコで振盪培養し、その中から泡のでない菌株を選択しMCI3369株(FERM BP-6172)を得た。【0097】同様にして、トリコスポラノイデス・メガチリエンシス(Trichosporonoides megachillensis)ATCC76718、トリコスポラノイデス・オエドファリス(Trichosporonoides oedocephalis)CBS649.66、トリコスポラノイデス・ニグレッセンス(Trichosporonoides nigrescens)CBS268.81、トリコスポラノイデス・ニグレッセンス(Trichosporonoides nigrescens)CBS269.81、トリコスポラノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)CBS241.79、トリコスポラノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)CBS242.79A、トリコスポラノイデス・スパスラータ(Trichosporonoides spathulata)CBS241.79B、モニリエラ・スアヴェオェンス・バール・ニグラ(Moniliella suaveolens var. nigra)CBS223.32、モニリエラ・スアヴェオェンス・バール・ニグラ(Moniliella suaveolens var. nigra)CBS382.36、モニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)MCI3554(FERM BP-6170)から、それぞれMCI3604株、MCI3439株(FERM BP-6308)、MCI3437株(FERM BP-6174)、MCI3438株(FERM BP-6307)、MCI3601株、MCI3602株、MCI3603株、MCI3598株、MCI3599株、MCI3555株(FERM BP-6171)を得た。【0098】実施例3トリコスポラノイデス・マディダ(Trichosporonoides madida)CBS240.79を、酵母エキス1.5%、グルコース30%の培地で培養し、菌体凝集塊を除き、残った菌体懸濁液を濃縮後同一培地に接種し再培養した。この操作を5回繰り返した後、この菌体を同一組成の寒天培地に広げコロニーを形成させた。各コロニーから得られた菌体をバッフル付き三角フラスコで振か盪培養し、その中から泡のでない菌株を選択し、MCI3441株(FERM BP-6309)を得た。【0099】実施例4〜18グルコース30%(W/V)及び酵母エキス1%を含む培地5mlを、綿栓した直径21mmの試験管に入れ120℃で20分間滅菌した。この培地にMCI3437株(FERM BP-6174)、MCI3438株(FERM BP-6307)、MCI3439株(FERM BP-6308)、MCI3440株(FERM BP-6175)、MCI3369株(FERM BP-6179)、MCI3441株(FERM BP-6309)、MCI3371株(FERM BP-6173)、MCI3555株(FERM BP-6171)、MCI3598株、MCI3599株、MCI3600株、MCI3601株、MCI3602株、MCI3603株、MCI3604株をそれぞれ植菌し、30℃で3日間振盪培養した。その培養液1mlを同一培地20mlを含む200mlのバッフル付き三角スラスコに植菌し、30℃で4日間振盪培養した。培養終了後、培養液中のエリスリトールの濃度を高速液体クロマトグラフィーで測定した。【0100】また、試験管で培養した菌体を用いて、菌体の疎水度をIimuraら(Y. Iimura, S. Hara and K. Otsuka, Agric. Biol. Chem., 44(6),1215-1222, 1980)の方法に従って測定した。すなわち、菌体を蒸留水で2回洗浄後、吸光度(A660)が0.6となるように菌体を水で懸濁し、等量のトルエンを加えて撹拌し、30分静置後、水層の吸光度(A660)を測定し、下記の計算式から菌体の疎水度(HD値)を算出した。【0101】HD値=100×(1−R/I)I:トルエン処理前の吸光度(A660値)R:トルエン処理後の水層の吸光度(A660値)【0102】その結果、各菌株においては培養中に実質的な発泡が認められなかった。また、各菌株におけるエリスリトールの生産量と疎水度は表4に示す通りであった。【0103】【表4】【0104】比較例1〜15それぞれ実施例4〜18と同様の方法で、変異株を得る前の親株をそのまま用いてエリスリトールを生産した。その結果、各菌株とも培養中は激しく発泡した。また、エリスリトールの生産量と疎水度は表5に示す通りであった。【0105】【表5】【0106】実施例19グルコース30%(W/V)、酵母エキス(アサヒビール社製)1%を含む液体培地100mlを綿栓した500mlの三角フラスコに入れ、120℃、20分間滅菌したものに、常法により斜面培養したMCI3369株(FERM BP-6172)を1白金耳植菌し、35℃で3日間振盪培養した。グルコース40%(W/V)、酵母エキス(アサヒビール社製)1.5%、消泡剤CA330(日本油脂製)500ppm含む液体培地3Lを入れた5リットル容発酵槽に、上記培養物を100ml植菌し、温度35℃、通気量0.5vvm、回転数700rpmの条件で4日間培養した。培養液中のエリスリトール濃度を高速液体クロマトグラフィーで測定した結果、180.9g/Lのエリスリトールが蓄積していた。また、培養中には発泡は認められなかった。【0107】実施例20グルコース30%(W/V)、酵母エキス(アサヒビール社製)1%を含む液体培地100mlを綿栓した500mlの三角フラスコに入れ、120℃、20分間滅菌したものに、常法により斜面培養したMCI3371株(FERM BP-6173)を1白金耳植菌し、35℃で3日間振盪培養した。グルコース40%(W/V)、酵母エキス(アサヒビール社製)1.5%、消泡剤CA330(日本油脂製)500ppm含む液体培地3Lを入れた5リットル容発酵槽に、上記培養物を100ml植菌し、温度35℃、通気量0.5vvm、回転数700rpmの条件で4日間培養した。培養液中のエリスリトール濃度を高速液体クロマトグラフィーで測定した結果、175.1g/Lのエリスリトールが蓄積していた。また、培養中には発泡は認められなかった。【0108】実施例21グルコース30%(W/V)、酵母エキス(アサヒビール社製)1%を含む液体培地100mlを綿栓した500mlの三角フラスコに入れ、120℃、20分間滅菌したものに、常法により斜面培養したMCI3440株(FERM BP-6175)を1白金耳植菌し、35℃で3日間振盪培養した。グルコース40%(W/V)、酵母エキス(アサヒビール社製)1.5%、消泡剤CA330(日本油脂製)500ppm含む液体培地3Lを入れた5リットル容発酵槽に、上記培養物を100ml植菌し、温度35℃、通気量0.5vvm、回転数700rpmの条件で4日間培養した。培養液中のエリスリトール濃度を高速液体クロマトグラフィーで測定した結果、140.1g/Lのエリスリトールが蓄積していた。また、培養中に発泡は認められなかった。【0109】実施例22グルコース30%(W/V)、酵母エキス(アサヒビール社製)1%を含む液体培地100mlを綿栓した500mlの三角フラスコに入れ、120℃、20分間滅菌したものに、常法により斜面培養したMCI3437株(FERM BP-6174)を1白金耳植菌し、35℃で3日間振盪培養した。グルコース40%(W/V)、酵母エキス(アサヒビール社製)1.5%、消泡剤CA330(日本油脂製)500ppm含む液体培地3Lを入れた5リットル容発酵槽に、上記培養物を100ml植菌し、温度35℃、通気量0.5vvm、回転数700rpmの条件で4日間培養した。培養液中のエリスリトール濃度を高速液体クロマトグラフィーで測定した結果、152.1g/Lのエリスリトールが蓄積していた。また、培養中に発泡は認められなかった。【0110】比較例16グルコース30%(W/V)、酵母エキス(アサヒビール社製)1%を含む液体培地100mlを綿栓した500mlの三角フラスコに入れ、120℃、20分間滅菌したものに、常法により斜面培養したCBS461.67株を1白金耳植菌し、35℃で3日間振盪培養した。グルコース40%(W/V)、酵母エキス(アサヒビール社製)1.5%、消泡剤CA330(日本油脂製)500ppm含む液体培地3Lを入れた5リットル容発酵槽に、上記培養物を100ml植菌し、温度35℃、通気量0.5vvm、回転数700rpmの条件で培養した。培養開始後2日目に激しい発泡が見られ、消泡剤の添加では発泡を抑えきることができなかった。【0111】【産業上の利用の可能性】本発明の製造方法により、好気的培養中に実質的な泡を形成しないエリスリトール産生微生物が効率的に製造できる。また、本発明により、エリスリトール製造時の激しい発泡が解決され、グルコース等の安価で且つ容易に供給しうる原料から、高収率で安価にエリスリトールを製造することができる。 モニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)MCI3554(FERM BP-6170)に変異処理を行った微生物を液体培地で培養し、培養物より微生物凝集塊を除去した後、培養物中に残存する微生物から好気的培養中に実質的な泡を形成しない微生物を採取することを特徴とする、好気的培養中に実質的な泡を形成しないエリスリトール産生微生物の製造方法。 変異処理を行った微生物を液体培地で培養し、培養物より微生物凝集塊を除去する行程を繰り返し行う請求項1に記載の方法。 請求項1または2に記載の方法により得られる、好気的培養中に実質的な泡を形成しないエリスリトール産生微生物。 請求項1に記載の方法により得られる、モニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)MCI3554の変異株MCI3555(FERM BP-6171)である、好気的培養中に実質的な泡を形成しないエリスリトール産生微生物。 請求項3または4に記載のエリスリトール産生微生物又はその変異株を、培地で培養し、培養物よりエリスリトールを採取することを特徴とするエリスリトールの製造方法。 モニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)MCI3554(FERM BP-6170)の変異株であって、エリスリトール産生能を有し、好気的培養中に実質的な泡を形成しないエリスリトール産生微生物。 モニリエラ・ポリニス(Moniliella pollinis)MCI3554の変異株MCI3555(FERM BP-6171)である、好気的培養中に実質的な泡を形成しないエリスリトール産生微生物。