生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_急性腎不全治療用HGF
出願番号:1998540353
年次:2012
IPC分類:A61K 38/22,A61P 13/12


特許情報キャッシュ

森 育枝 永野 智一 JP 4865936 特許公報(B2) 20111118 1998540353 19980312 急性腎不全治療用HGF 中村 敏一 591115073 岩谷 龍 100077012 森 育枝 永野 智一 JP 1997082235 19970315 20120201 A61K 38/22 20060101AFI20120112BHJP A61P 13/12 20060101ALI20120112BHJP JPA61K37/24A61P13/12 A61K38/00-58 JSTPlus/JMEDPlus(JDream2) PubMed CiNii 医学中央雑誌WEB American Journal of Physiology, Vol.265, p.F61−F69 (1993年) Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, Vol.91, p.4357−4361 (1994年5月) 藤田学園医学会誌 (1996年2月16日) 第19巻 第2号 p.287−291 日本泌尿器科学会雜誌(1995年3月20日) 第86巻 第3号 p.613 日本腎臓学会誌 (1994年11月20日) 第36巻 学術総会特集号 p.234 4 JP1998001081 19980312 WO1998041227 19980924 2001516358 20010925 9 20050309 2010003132 20100212 内田 淳子 内藤 伸一 田名部 拓也 発明の背景急性腎不全とは急速な腎機能低下によって高窒素血症、電解質異常、尿毒症症状などを認められる状態を言う。腎機能低下の原因により、腎前性、腎性、及び腎後性の急性腎不全に分類される。腎性急性腎不全は、1)血管炎、糸球体病変、2)急性間質性腎炎、3)尿細管閉塞、及び4)狭義の急性腎不全に分類される。狭義の急性腎不全は、急性尿細管壊死によるものを言う。尿細管壊死による急性腎不全の原因としては、1)虚血性、2)腎毒性物質、及び3)筋融解物質(例えばミオグロビンなど)が挙げられる。虚血性の急性腎不全は、手術などによる出血、ショック、外傷、火傷などが原因となる。虚血性の急性腎不全の動物モデルとしては腎動脈結紮が行われる。腎虚血ラットモデルでは、血中BUN(血清尿素窒素)や血清クレアチニンが上昇し、虚血後、6〜12時間後に肝実質細胞増殖因子(HGF)のmRNAが誘導され、その結果、腎・血漿中のHGF活性が上昇することが確認されている(American Journal of Physiology, 1993; 265; 61-69)。急性腎不全は、抗生物質、抗腫瘍薬、造影剤などの腎毒性物質によっても起こる。腎毒性物質による急性腎不全の動物モデルは、塩化水銀、シスプラチン、造影剤などをラットに投与することにより作製される。塩化水銀投与ラットにおいては、BUN・クレアチニンの上昇や、HGFmRNAの発現誘導・HGF活性上昇が、虚血モデルと同様に確認されている(Nephron 1996; 73; 735)。これらの事実から、腎障害からの修復因子として、HGFが発現していると考えられている。また、虚血性及び腎毒性物質(塩化水銀、シスプラチン)による腎不全障害動物モデルにおいて、HGF投与による腎機能回復効果が報告されている(American Journal of Physiology, 1994; 266; 129-134、Proc. Natl. Acad. Sci. 1994; 91; 4357-4361)。いずれの障害モデルにおいても、BUN・クレアチニン値の障害による上昇が、HGFの投与により速やかに抑えられた。これらの事実から、HGFが、障害を受けた尿細管細胞の増殖促進をするrenotropic factorとして作用していると考えられている。外傷、圧迫(例えば座滅症候群)、火傷、感染、薬物(例えばアルコール、バルビツール誘導体など)中毒、筋代謝疾患、筋の過剰使用、低リン血症、蛇毒などにより、筋融解物質(例えばミオグロビン、リン、カリウム、尿酸など)が放出された場合、これが尿細管細胞に毒性をもたらす。その結果、尿細管細胞の壊死が起こり、それにより生じる細胞の残骸やヒアリン円柱により尿細管の閉塞が起こる。またミオグロビンは腎の血流を低下させるという報告もされている。以上の機序により、横紋筋融解症による腎不全が発症すると考えられている(Common Disease Series 17:腎不全、p57−61、南江堂、1991)。横紋筋融解症の臨床的特徴としては、1)クレアチンリン酸キナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、アルドラーゼ、グルタミン酸−オキサロ酢酸トランスアミナーゼといった筋由来の酵素の上昇、2)99mTC-pyrophosphateの障害筋への取り込みの増加、3)ミオグロビンの存在、4)血清尿素窒素/血清クレアチニン比が10〜20以下、5)高尿酸血症、6)高リン酸血症、低カルシウム、高カリウムなどが挙げられる。横紋筋融解症に対する現在の治療法は、補液交換療法、利尿薬の投与、筋膜解放術、血漿交換療法、抗血小板療法などが行われているが、重症あるいは予後不良の症例に関してはこれらの治療は不十分であり、横紋筋融解症による急性腎不全の発症を予防あるいは治療する方法及び薬剤はない。また、溶血性尿毒症症候群(Hemolytic Uremic Syndrome: HUS)は、血小板減少、細血管性溶血性貧血及び急性腎不全の症状を特徴とするが、HUSの予防・治療のための薬剤及び治療法は知られていない。HUSの原因としては感染(例えばO-157)、遺伝性の発症、薬剤(例えばシクロスポリン)、妊娠、臓器移植、SLE、高血圧、異型輸血などがある。これらの原因により溶血が起こり、ヘモグロビンなどの物質が放出され、溶血性尿毒症症候群がおこる。グリセロール誘発動物モデルは急性腎不全の病態モデルとして知られており、確立されている。グリセロールが動物の筋肉に投与されると、グリセロールの高浸透圧により、筋肉細胞及び筋肉内血管で溶血が起こる。すなわち、ミオグロビン、ヘモグロビン、カリウム、その他の筋融解物質が血中に出て腎細胞を障害する。これに脱水が加わると、筋融解物質の毒性が増強される。つまり、著しい腎血流量の低下及び虚血が起こり、糸球体ろ過量が乏尿から無尿となるのである。またグリセロールを注射された筋肉部には体液の貯留が起こるため、全身循環、血流量及び心拍出量は低下する(腎疾患モデル 腎と透析 Vol. 31,(1991)臨時増刊号 395-399)。グリセロールを実験動物に投与する以前に、実験動物を絶水状態にすると筋融解物質の影響が大きくなり、横紋筋融解症モデルを作製することができる。発明の簡単な説明本発明は、治療上有効量のHGFからなる、横紋筋融解症による急性腎不全の治療剤を提供する。本発明は、治療上有効量のHGFを患者、特にヒト患者に投与することからなる、横紋筋融解症による急性腎不全の治療方法を提供する。また、本発明は、治療上有効量のHGFからなる、ミオグロビン尿症の治療剤を提供する。更に、本発明は、治療上有効量のHGFを患者に投与することからなる、外傷、圧迫(例えば、座滅症候群)、火傷、感染、薬物(例えば、アルコール、バルビツール誘導体)中毒、筋代謝疾患、筋の過剰使用、低リン血症、蛇毒などにより放出された筋融解物質に起因する横紋筋融解症による急性腎不全の治療方法を提供する。また、本発明は、治療上有効量のHGFからなる、外傷、圧迫(例えば、座滅症候群)、火傷、感染、薬物(例えば、アルコール、バルビツール誘導体)中毒、筋代謝疾患、筋の過剰使用、低リン血症、蛇毒などにより放出された筋融解物質に起因する横紋筋融解症による急性腎不全の治療剤を提供する。本発明は、治療上有効量のHGF及び医薬として許容される担体からなる、溶血性尿毒症症候群の治療剤を提供する。本発明は、治療上有効量のHGFを患者に投与することからなる、溶血性尿毒症症候群の治療方法を提供する。本発明は、治療上有効量のHGF及び医薬として許容される担体からなる、感染(O-157)、遺伝性の発症、薬剤(シクロスポリン)投与、妊娠、臓器移植、SLE、高血圧、異型輸血などによる溶血性尿毒症症候群の治療剤を提供する。本発明は、治療上有効量のHGFを患者に投与することからなる、感染(例えばO-157)、遺伝性の発症、薬剤(例えばシクロスポリン)投与、妊娠、臓器移植、SLE、高血圧、異型輸血などによる溶血性尿毒症症候群の治療方法を提供する。【図面の簡単な説明】図1は、対照群とHGF投与群の生存率を示す図である。図2は、グリセロール投与後1、3、6日の血清・尿生化学値及び腎機能検査値を示す図である。発明の詳細な説明本発明で使用される肝実質細胞増殖因子(HGF)は既に市販されており、また以下の方法で製造することができる。HGFの調製方法は、当業者によく知られている。例えば、ラット、ウシ、ウマ、ヒツジなどの哺乳動物の肝臓、脾臓、肺臓、骨髄、脳、腎臓、胎盤などの臓器、血小板、白血球などの血液細胞や血漿、血清などから抽出、精製して得ることができる(FEBS Letters,224,312,1987,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86,5844,1989)。また、HGFを産生する初代培養細胞や株化細胞を培養し、培養物(培養上清、培養細胞など)からの抽出物を精製してHGFを得ることもできる。あるいは遺伝子工学的手法によりHGFをコードする遺伝子を適切なベクターに組込み、これを適当な宿主に挿入して形質転換し、この形質転換体の培養上清を精製することによりHGFを得ることができる(例えば、Nature,342,440,1989,特開平5-111383号公報、特開平3-255096号公報、Biochem.Biophys.Res.Commun.,163,967,1989など参照)。上記の宿主細胞は特に限定されず、従来から遺伝子工学的手法で用いられている各種の宿主細胞、例えば大腸菌、枯草菌、酵母、糸状菌、植物又は動物細胞などを用いることができる。より具体的にはHGFを生体組織から製造する方法としては、例えばラットに四塩化炭素を腹腔内投与し、肝炎状態にしたラットの肝臓を摘出して粉砕し、S-セファロース、ヘパリンセファロースなどのゲルカラムクロマトグラフィー、HPLCなどの通常の蛋白質精製法にて精製する方法が挙げられる。また、遺伝子組換え法を用い、HGFのアミノ酸をコードする遺伝子で、動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、マウスC127細胞、サルCOS細胞、Sf細胞などを形質転換し、その培養上清を精製することによりHGFを得ることができる。HGFは、ヒトHGF及び動物HGFを含み、好ましくはヒトHGF、より好ましくはヒト組換えHGFである(特開平5―111383号公報)。かくして得られたHGFは、HGFと実質的に同効である限り、そのアミノ酸配列の一部が欠失又は他のアミノ酸により置換されていたり、他のアミノ酸配列が一部挿入されたり、N末端又はC末端に1又は2以上のアミノ酸が結合していたり、あるいは糖鎖が同様に欠失又は置換されていてもよい。本発明の治療剤は種々の製剤形態(例えば、液剤、固形剤、カプセル剤、デポット製剤など)をとりうる。HGFのみ又はそれと適当な担体と共に注射剤、又は適当な担体と共に経口剤とされる。当該注射剤は当業者にとって慣用の方法により調製することができ、例えば、HGFを適当な溶剤(例えば、滅菌された水、緩衝液、生理食塩水など)に溶解した後、濾過して滅菌し、次いで無菌的な容器に充填することにより調製することができる。注射剤中のHGF含量としては、0.0002-0.2(w/w%)程度、好ましくは0.001-0.1(w/w%)程度に調整される。製剤は製剤上の常套手段に準じて調製することができる。HGFの含量は、製剤形態、疾患、患者の症状などにより適宜変更することができる。更に、HGFは、慣用の坐薬基剤、例えば、カカオ脂、水溶性基剤(例えば、グリセロゼラチン、マクロゴールなど)、他のグリセリド類などを含有する坐薬、保持性浣腸液などの直腸用製剤とすることもできる。またHGFは吸入剤として投与することもできる。吸入剤として投与する場合、HGFは、二酸化炭素、適切なガスなどの適当な噴射剤を使用した、加圧された容器又は噴射器からなるエアゾルスプレーの形態とされる。HGFは、当業者にとって周知の慣用の徐放性製剤として投与することもできる。徐放性製剤の例としては、微小球体(例えば、ノナ粒子、マイクロ粒子、マイクロカプセル、ビーズ、リポソーム、複エマルジョンなど)などを挙げることができる。製剤化に際して、好ましくは安定化剤が添加され、安定化剤としては、例えば、アルブミン、グロブリン、ゼラチン、マンニトール、グルコース、デキストラン、エチレングリコールなどが挙げられる。さらに、本発明の製剤は製剤化に必要な添加物、例えば、賦形剤、溶解補助剤、酸化防止剤、無痛化剤、等張化剤などを含んでいてもよい。液状製剤とした場合には凍結保存、又は凍結乾燥などにより水分を除去して保存することができる。凍結乾燥製剤は、用時に注射用精製水などを加え、再溶解する。HGFの効果的な投与量及び投与スケジュールは経験的に決定することができ、当該決定は当業者にとって自明である。製剤の投与経路は製剤形態により設定することができ、例えば注射剤においては静脈内、動脈内、皮下、筋肉内などに投与することができる。その投与量は、患者の症状、年齢、体重などにより適宜調整されるが、0.1μg〜10mg/kg・体重の範囲から選択され、好ましい範囲は1μg〜400μg/kgである。HGF製剤は1日1回又は数回(2又は3回)に分けて投与することができる。また、HGFはデポット(depot)製剤とすることもできる。このような持続性製剤は、移植(例えば、皮下、筋肉内)又は筋肉内注射により投与される。しかして、例えば、HGFは適当なポリマー又は親油性物質(例えば、許容される油のエマルジョン)、イオン交換樹脂を用いて、又は徐溶性塩などのような徐溶性誘導体として製剤化される。デポット製剤の効果的な投与量及び投与スケジュールは経験的に決定することができ、当該決定は当業者にとって自明である。デポット製剤の投与経路は製剤形態により設定することができる。デポット製剤の好ましい投与方法は少なくとも1週間に1回、好ましくは少なくとも1ヶ月に1回とされる。本発明の一つの目的は、HGFを含有し、横紋筋融解症又はミオグロビン尿症による急性腎不全治療用の包装製品、キット又は製品を提供する。包装製品は、横紋筋融解症又はミオグロビン尿症による急性腎不全を治療する上で有効量のHGFを含有する容器、及び当該容器に添付された、HGFが横紋筋融解症又はミオグロビン尿症による急性腎不全を治療するために使用されることを示す説明書からなることができる。例えば、HGFは無菌バイアルに充填され、次いで箱のような容器に収容される。本発明に基づき薬剤を投与するための説明書は、バイアル及び/又は箱のラベルとして、また包装の挿入物として箱に収納される。実施例以下の実施例は本発明を説明するためのもので、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例1材料動物7週齢の雄性Wistar系ラットを日本SLCより購入し、3日間の予備飼育ののち、7.5週齢(体重約200g)で実験に用いた。急性腎不全モデル作製50%グリセロールを生理食塩水で調製し、投与前15時間絶水状態にしたラットに、エーテル麻酔下で筋肉内投与(10ml/kg)した。グリセロール投与8時間後以降は自由飲水に処した。投与薬物組換え型ヒト肝実質細胞増殖因子(hHGF)をHGF溶解液で125μg/mlに希釈して用いた。一回の投与当たり2ml/kg(250μg/kg)の薬物を尾静脈内に投与した。HGF溶解液は、0.3MNaCl、0.01%Tween80を含む10mMクエン酸ナトリウム水溶液である。投与ラットは、対照群とhHGF投与群の二群に分けた。一群に、グリセロール投与1時間前及び1、3、5、8、24、36時間後にhHGF溶液を投与した。対照群には、グリセロール投与後1及び3時間後に1mlの生理食塩水を、また5及び8時間後に水を投与した。症状観察グリセロール投与後14日間にわたり、ラットの生存率を観察した。結果グリセロールの投与によって、ラットは著しい急性腎不全に陥り、グリセロール投与2日後の血清BUN及び血清クレアチニン値は大きく上昇していた(血清クレアチニン値:対照群=5.1±1.2mg/dl、HGF投与群=4.2±0.8mg/dl)。生存率を図1に示す。グリセロール投与3日後以降、対照群のラットに死亡が観察され、その後9日後までに13匹中9匹が死亡した。死亡直後の個体を剖検した結果では、腎臓の外見が著しく変化し、腎皮質部分の尿細管の壊死が観察された。HGF投与群では、実験期間中に死亡例は見られなかった。グリセロール投与後14日の時点における生存率をカイ2乗検定を用いて検定したところ、対照群に対してHGF投与群の生存率が有意に(P<0.01)高かった。実施例2材料実験動物7週齢の雄性Wistar系ラットを日本SLCより購入し、3日間の予備飼育ののち、7.5週齢(体重約200g)で実験に用いた。急性腎不全モデル作製50%グリセロールを生理食塩水で調製し、投与前15時間絶水状態にしたラットに、エーテル麻酔下で筋肉内投与(10ml/kg)した。グリセロール投与8時間後以降は自由飲水に処した。投与薬物組換え型ヒト肝実質細胞増殖因子(hHGF)を生理食塩水で125μg/mlに希釈して用いた。一回の投与当たり2ml/kg(250μg/kg)の薬物を尾静脈内に投与した。投与実験は、対照群10匹、hHGF投与群10匹の二群をもうけた。一群に、グリセロール投与1時間前及び1、3、5、8、24、36時間後にhHGF溶液を投与した。対照群には、グリセロール投与後1及び3時間後に1mlの生理食塩水を、また5及び8時間後に水を投与した。血清及び尿生化学値の測定グリセロール投与1、3、6日後に、エーテル麻酔下において、尾動脈より採血し血清を得た。超微量多目的生化学自動分析装置 CHEM 1を用いて血清尿素窒素(BUN)、血清クレアチニン(Cre)量を測定した。また、代謝ケージを用いて、グリセロール投与1、3、6日後の12時間蓄尿を採取した。尿量を測定したのち、超微量多目的生化学自動分析装置 CHEM 1を用いて、尿中クレアチニン量を測定した。以上の項目から、内因性Creクリアランス値を以下の換算式より算出した。内因性Creクリアランス=[尿Cre値(mg/dl)x12時間蓄尿量(ml)]/[血清Cre値(mg/dl)x蓄尿時間(720min)]症状観察グリセロール投与後15日間にわたり、ラットの生死を観測した。統計処理グリセロール投与後15日の時点における両群の生存率をカイ2乗検定を用いて検定した。グリセロール投与後1日及び3日の両群の血清生化学値を、t検定あるいはWelchの検定により検定した。結果生存率グリセロール投与3日後以降、対照群のラットに死亡が観察され、9日後までに10匹中7匹が死亡した。HGF投与群では、実験期間中、10匹中2匹の死亡が観察されたが、HGF投与群の生存率は対照群のそれに比して有意に高かった(P<0.05)。血清・尿生化学値及び腎機能検査値血清・尿生化学値及び腎機能検査値を図2に示す。対照群では、グリセロールの投与により、1日後から血清BUN、Cre値の著明な上昇がみられ、以後6日後にかけてBUN、Cre値は悪化した。内因性Creクリアランスは0.1以下と低いレベルを維持しており、重度の腎不全症状を示した。これに対して、HGF投与群では、グリセロール投与3日後において、血清BUN値の減少が観察され、急性腎不全の抑制(P<0.05)を伴っていた。また、同時に内因性Creクリアランスも有意に(P<0.05)改善された。実施例3材料動物7週齢の雄性Wistar系ラットを日本SLCより購入し、3日間の予備飼育ののち、7.5週齢(体重約200g)で実験に用いた。急性腎不全モデル50%グリセロールを生理食塩水で調製し、投与前15時間絶水状態にしたラットに、エーテル麻酔下で筋肉内投与(10ml/kg)した。グリセロール投与8時間後以降は自由飲水に処した。投与薬物組換え型ヒト肝実質細胞増殖因子(hHGF)をHGF溶解液で125μg/mlに希釈して用いた。一回の投与当たり2ml/kg(250μg/kg)の薬物を尾静脈内に投与した。投与実験は、対照群8匹、hHGF投与群8匹の二群をもうけた。一群に、グリセロール投与1時間前及び1、3、5、8、24、36時間後にhHGF溶液を投与した。対照群には、グリセロール投与後1及び3時間後に1mlの生理食塩水を、また5及び8時間後に水を投与した。腎組織の解析グリセロール投与3日後にラットをと殺し、腎臓を切り出してリン酸緩衝ホルマリン液に固定し、パラフィン包埋から腎組織切片を作製し、PAS染色に供した。各個体につき一枚ずつ、腎皮質部分の光顕像を撮影し、腎皮質尿細管細胞の壊死の程度を、軽度・中度・重度にわけてスコアづけした。対照群・HGF投与群間のスコアの差は、カイ二乗検定を用いて有意差検定した。結果腎尿細管細胞の組織障害下記表1に、両群の腎組織障害のスコアを示す。HGF投与群では、対照群に比して有意に障害度が抑制されていた。 治療上有効量のHGF及び医薬として許容される担体からなる、横紋筋融解症による急性腎不全の治療剤。 治療上有効量のHGF及び医薬として許容される担体からなる、外傷、圧迫、座滅症候群、火傷、感染、薬物中毒、筋代謝疾患、筋の過剰使用、低リン血症又は蛇毒により放出された筋融解物質に起因する横紋筋融解症による急性腎不全の治療剤。 治療上有効量のHGF及び医薬として許容される担体からなる、横紋筋融解症による腎皮質尿細管細胞の壊死抑制剤。 治療上有効量のHGF及び医薬として許容される担体からなる、外傷、圧迫、座滅症候群、火傷、感染、薬物中毒、筋代謝疾患、筋の過剰使用、低リン血症又は蛇毒により放出された筋融解物質に起因する横紋筋融解症による腎皮質尿細管細胞の壊死抑制剤。


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