生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_△9−デサチュラーゼ遺伝子
出願番号:1998537518
年次:2007
IPC分類:C12N 15/09,C12N 1/15


特許情報キャッシュ

清水 昌 小林 達彦 JP 3980074 特許公報(B2) 20070706 1998537518 19980227 △9−デサチュラーゼ遺伝子 サントリー株式会社 社本 一夫 今井 庄亮 増井 忠弐 栗田 忠彦 小林 泰 清水 昌 小林 達彦 JP 1997044303 19970227 20070919 C12N 15/09 20060101AFI20070830BHJP C12N 1/15 20060101ALI20070830BHJP JPC12N15/00 AC12N1/15 C12N 15/00 JSTPlus(JDream2) BIOSIS/WPI(DIALOG) GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq 欧州特許出願公開第561569(EP,A2) Yeast, 1996年, Vol.12, pp.723-730 Lipids, 1995年, Vol.30, No.10, pp.899-906 J. Biol. Chem., 1990年, Vol.265, No.33, pp.20144-20149 Lipids, 1991年, Vol.26, No.7, pp.512-516 14 JP1998000819 19980227 WO1998038314 19980903 22 20050217 引地 進 [技術分野]本発明は、脂肪酸Δ9位を不飽和化する活性を有するΔ9−デサチュラーゼをコードする遺伝子に関し、更に詳細には、本発明はアラキドン酸をはじめ有用な高度不飽和脂肪酸を菌体内に著量蓄積することが知られているモルティエレラ属モルティエレラ亜属に属する微生物のΔ9−デサチュラーゼをコードする遺伝子、及びその遺伝子を用いるΔ9−デサチュラーゼの製造方法並びにその遺伝子を含む発現ベクター、その発現ベクターによって形質転換された形質転換体、及びそれらの利用に関する。[背景技術]不飽和脂肪酸は、動物、植物、微生物によって合成されるが、高等動物以外では、飽和脂肪酸のパルミチン酸及びステアリン酸が、酸素添加酵素による不飽和化によりシス−Δ9をもつモノ不飽和酸となり、その後に炭素鎖延長と不飽和化を繰り返して生成される。このような不飽和化反応はいずれも、一原子酸素添加反応による好気的不飽和化であって、パルミチン酸、ステアリン酸のような飽和脂肪酸は、酸素原子とNAD(P)Hの存在下で不飽和化されてモノエン酸となる。本明細書では、脂肪酸のΔ9位を不飽和化する活性を有するタンパク質のことを、Δ9−デサチュラーゼ(Δ9−不飽和化酵素)と称する。また、Δ9とは、脂肪酸の二重結合の位置を、その末端カルボキシル基の炭素原子から二重結合のある炭素原子までの炭素数をΔ(デルタ)とともに表記するという規則に従った表記であり、末端カルボキシル基の炭素原子から数えて9番目と10番目の炭素原子の間が二重結合となっていることを表わしている。なお、二重結合の位置をω(オメガ)に続いて記載する場合があるが、これは脂肪酸のメチル基末端の炭素原子から二重結合のある炭素原子までの炭素数を示している。このようにして生合成される不飽和脂肪酸の中でもアラキドン酸(以下、「ARA」と表記することもある)、ジホモ−γ−リノレン酸(以下、「DGLA」と表記することもある)、エイコサペンタエン酸(以下、「EPA」と表記することもある)は種々の生理作用をもつ生理活性物質(プロスタグランジンおよびトロンボキサン)の前駆体であり、例えばEPAは血栓防止作用あるいは脂質低下作用に基づいて健康食品や医薬品として市販されている。また近年、ARA及びドコヘキサエン酸(以下、「DHA」と表記することもある)は母乳中に含まれており、乳児の発育に役立つとの報告がある(“Advances in Polyunsaturated Fatty Acid Research”Elsevier Science Publishers, 1993, pp.261-264)。さらに、胎児の身長や脳の発育における重要性が報告されている(Proc. Natl. Acad. Sci. USA,90, 1073-1077(1993), Lancet, 344, 1319-1322(1994))。そこで、母乳と調製粉乳の脂肪酸組成の大きな違いであるARA及びDHAを調製粉乳に添加しようとする動きがある。近年、調製粉乳にDHAを添加する目的で魚油が使用されている。しかしながら、魚油は構成脂肪酸として多種類の脂肪酸を含む混合グリセリドであって、各成分を単離することは困難であるため、例えば魚油添加調製粉乳ではDHAと共にEPAが多量に存在し、EPAの作用により、リノール酸からARAへの変換が抑制され、生体内のARAが減少してしまうという問題が指摘されている。このような問題を解決するため、最近はクロレラ、藻類、かび(糸状菌)、バクテリア等の微生物を利用して不要な脂肪酸を含まず、目的とする不飽和脂肪酸を多量に生産する方法が注目されている。[発明の開示]本発明者等は、糸状菌であるモルティエレラ属のモルティエレラ亜属に属するモルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)が、菌体内に著量の油脂を蓄積し、特にARAの生産性が非常に高いことに着目し、これらの糸状菌では、様々なデサチュラーゼが存在し、しかもその活性が非常に高いと考え、モルティエレラ・アルピナからΔ9−デサチュラーゼをコードする遺伝子をクローニングし、これを不飽和脂肪酸生産能を有する微生物に導入して、微生物による不飽和脂肪酸の生産性向上に利用することを検討した。【図面の簡単な説明】図1は、本発明のモルティエレラ・アルピナ1S−4由来のΔ9−デサチュラーゼをコードするcDNAである。図2は、図1の続きである。図3は、本発明のモルティエレラ・アルピナ1S−4由来のΔ9−デサチュラーゼをコードするcDNAから推定されたアミノ酸配列である。図4は、本発明のモルティエレラ・アルピナ1S−4由来のΔ9−デサチュラーゼをコードするcDNAと、それから推定されるアミノ酸配列との対応を示す。図5は、本発明のモルティエレラ・アルピナ1S−4由来のΔ9−デサチュラーゼをコードするゲノムDNAである。図6は、図5の続きである。図7は、図6の続きである。図8は、本発明のモルティエレラ・アルピナ1S−4由来のΔ9−デサチュラーゼをコードするゲノムDNAと、それによってコードされるアミノ酸配列との対応を示す。図9は、図8の続きである。図10は、実施例3において発現ベクターを構築するために使用されたベクターpTAex3の制限酵素地図を示す。本発明においては、配列表の配列番号1及び2のプライマーから作成したプローブを用いてモルティエレラ・アルピナ(遺伝子源微生物)からΔ9−デサチュラーゼをコードするゲノム遺伝子及びcDNAのクローニングを行うことに成功した。本発明の遺伝子を不飽和脂肪酸生産能を有する細胞に導入することにより、パルミチン酸やステアリン酸から、不飽和脂肪酸の出発物質であるパルミトレイン酸やオレイン酸への変換が強化され、不飽和脂肪酸の生産性を向上させることが期待できる。特に本発明の遺伝子を電子伝達系の酵素や他のデサチュラーゼをコードする遺伝子と組み合わせて導入することによって、不飽和脂肪酸の生産性をさらに向上させることが期待できる。本発明の遺伝子は、遺伝子組換え技術により適当な発現ベクターを構築し、これによって不飽和脂肪酸生産能を有する宿主細胞を形質転換し、培養することにより、目的とするΔ9−不飽和脂肪酸を産生させることができる。このような宿主細胞としては、不飽和脂肪酸を生産する能力を有しておれば特に限定されないが、大腸菌、枯草菌などのバクテリア、サッカロマイセスなどの担子菌、アスペルギルスなどの糸状菌などが挙げられる。さらに、これらの宿主細胞は不飽和脂肪酸を効率良く生産するように形質転換されていても良い。また、大豆、ひまわり、アブラナ、ごま等の不飽和脂肪酸を生産する高等植物に常法により本発明の遺伝子を導入することにより、目的とするΔ9−不飽和脂肪酸を産生させることもできる。本発明は、Δ9−デサチュラーゼをコードする、モルティエレラ属モルティエレラ亜属に属する微生物由来の遺伝子を提供する。この遺伝子はmRNAからのcDNA、ゲノムDNA、化学合成DNAのいずれであってもよい。また、Δ9−デサチュラーゼ活性を保持しかつΔ9−デサチュラーゼのアミノ酸配列の1又は2以上のアミノ酸を欠失し、置換し、又は他のアミノ酸を1又は2以上を付加した修飾ポリペプチドをコードする遺伝子も本発明に含まれる。本発明は、更にΔ9−デサチュラーゼをコードする遺伝子を用いた組換えDNA手法により、完全長Δ9−デサチュラーゼ、及びΔ9−デサチュラーゼ活性を保持しかつΔ9−デサチュラーゼのアミノ酸配列の1又は2以上のアミノ酸を欠失し、置換し、又は他のアミノ酸を1又は2以上を付加した修飾ポリペプチドの生産方法を提供する。本発明のΔ9−デサチュラーゼ遺伝子は次の方法でクローニングできる。(遺伝子源)本発明においては遺伝子源として使用できる微生物は、モルティエレラ属モルティエレラ亜属であれば、特に種や株を限定するものではなく、例えば、モルティエレラ(Mortierella)属に属するアルピナ(alpina)、バイニエリ(bainieri)、エロンガタ(elongata)、エキシグア(exigua)、ミネッティシマ(minutissima)、バーティシラタ(verticillata)、フィグロフィラ(hygrophila)、ポリセファラ(polycephala)種等を挙げることができ、またモルティエレラ・アルピナ種に属する菌株を下記の寄託番号により、所定の寄託機関から入手できる。モルティエレラ・アルピナ(ATCC8979、ATCC16266、ATCC32221、ATCC32222、ATCC32223、ATCC36965、ATCC42430、CBS219.35、CBS224.37、CBS250.53、CBS343.66、CBS527.72、CBS529.72、CBS608.70、CBS754.68、IFO8568、IFO32281等)。本発明では、不飽和脂肪酸生産能を有する生物を形質転換することにより、Δ9−デサチュラーゼ活性が強化された生物を人為的に創製することができる。不飽和脂肪酸生産能を有する生物としては、オメガ3系不飽和脂肪酸生産能を有する微生物やオメガ6系不飽和脂肪酸生産能を有する微生物等を挙げることができ、例えばオメガ3系不飽和脂肪酸生産能を有する微生物としては海洋性クロレラ、微細紅藻、微細藻類が挙げられ、例えば有色藻門に属するクリプセコディミウム(Crypthecodimium)属、イソクリシス(Isochrysis)属、ナノクロロプシス(Nannochloropsis)属、カエトセロス(Chaetoceros)属、ファエオダクチルム(Phaeodactylum)属、アンフィディニウム(Amphidinium)属、ゴニアウラクス(Gonyaulax)属、ペリディミウム(Peridimium)属、クロオモナス(Chroomonas)属、クリプトモナス(Cryptomonas)属、ヘミセルミス(Hemiselmis)属、キロモナス(Chilomonas)属、緑藻門に属するクロレラ(Chlorella)属、さらにヒスチオブランクス(Histiobranchus)属及びコリファエノイデス(Coryphaenoides)属に属する微生物を挙げることができる。クリプセコディミウム属では例えば、クリプセコディミウム・コーニー(Crypthecodimium cohnii)ATCC30021を挙げることができる。この菌株はアメリカン タイプ カルチャー コレクションから何らの制限もなく入手することができる。さらに、エイコサペンタエン酸の含有率の高い油脂を生産するサバの腸内から単離された海洋細菌(Shewanella属、例えばShewanella putrefaciens)を挙げることができる。またオメガ6系不飽和脂肪酸生産能を有する微生物としては、γ−リノレン酸生産能を有する微生物やアラキドン酸生産能を有する微生物が挙げられ、アラキドン酸生産能を有する微生物としては、例えばモルティエレラ(Mortierella)属モルティエレラ亜属に属するアルピナ(alpina)、バイニエリ(bainieri)、エロンガタ(elongata)、エキシグア(exigua)、ミネッティシマ(minutissima)、バーティシラタ(verticillata)、フィグロフィラ(hygrophila)、ポリセファラ(polycephala)種、及びコニディオボラス(Conidiobolus)属、フィチウム(Phythium)属、フィトフトラ(Phytophthora)属、ペニシリューム(Penicillium)属、クロドスポリューム(Cladosporium)属、ムコール(Mucor)属、フザリューム(Fusarium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ロードトルラ(Rhodotorula)属、エントモフトラ(Entomophthora)属、エキノスポランジウム(Echinosporangium)属、サプロレグニア(Saprolegnia)属に属する微生物を挙げることができ、γ−リノレン酸生産能を有する微生物としては、モルティエレラ属モルティエレラ亜属に属するイサベリナ(isabellina)、ビナセア(vinacea)、ラマニアナ(ramaniana)、ラマニアナ・アンダリスポラ(ramaniana anglispora)、ナナ(nana)種、アビシディア(Absidia)属、ムコール属、リゾプス(Rizopus)属、シンセファラストラム(Syncephalastrum)属、コアネフォラ(Choanephora)属に属する微生物を挙げることができる。モルティエレラ属モルティエレラ亜属では例えば、モルティエレラ・エロンガタ(Mortierella elengata)IFO8570、モルティエレラ・エキシグア(Mortierella exigua)IFO8571、モルティエレラ・フィグロフィラ(Mortierella hygrophila)IFO5941、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)ATCC8979、ATCC16266、ATCC32221、ATCC32222、ATCC32223、ATCC36965、ATCC42430、CBS219.35、CBS224.37、CBS250.53、CBS343.66、CBS527.72、CBS529.72、CBS608.70、CBS754.68、IFO8568、IFO32281等を挙げることができ、これらの菌株はいずれも、財団法人発酵研究所からなんら制限なく入手することができる。また、本発明らが土壌から分離した菌株モルティエレラ・エロンガタSAM0219(微工研菌寄第8703号)(微工研条寄第1239号、FERM BP−1239)を使用することもできる。(Δ9−デサチュラーゼゲノムDNAのクローニング)▲1▼ モルティエレラ属モルティエレラ亜属に属する微生物のゲノムDNA抽出及びコスミドライブラリーの作製培養、集菌したモルティエレラ属モルティエレラ亜属に属する微生物の菌体を破砕し、常法により染色体DNAを遠心分離し、沈殿し、RNAを分解除去し、除タンパク操作を行って、DNA成分を精製する。これらの操作については、「植物バイオテクノロジー実験マニュアル:農村文化社、第252頁」を参照されたい。市販のコスミドベクターキットを用い、その指示書にしたがって上記ゲノムDNAをインサートDNAとしてコスミドベクターに挿入する。得られた組換えべクターを、市販のパッケージングキットの細菌抽出液を用いてパッケージングし、宿主細菌に感染させ、増殖させてコスミドライブラリーを作製する。▲2▼プローブの作製現在、知られているΔ9−デサチュラーゼのうち、推定されるアミノ酸配列がお互いに比較的高い相同性を示すラット及び酵母のΔ9−デサチュラーゼcDNAの配列を基にセンスプライマーとアンチセンスプライマーを作製し、このプライマーを用い、モルティエレラ属モルティエレラ亜属に属する微生物のゲノムDNAを鋳型としてPCRを行う。その結果、得られる増幅DNA断片をシークエンスし、アミノ酸配列に変換して他生物由来のΔ9−デサチュラーゼとの相同性および上記内部ペプチドの部分アミノ酸配列と相同な配列を含むことを確認し、アイソトープで標識化しプローブとしてその後の実験に使用する。▲3▼コスミドライブラリーからのクローニングコスミドライブラリーに対し、上記のプローブを用いてコロニーハイブリダイゼーションを行う。得られるポジティブクローンのコスミドを例えばアルカリ法で調製し、適当な制限酵素でサザンハイブリダイゼーションを行い、ポジティブバンドとして得られるDNA断片をシークエンスして目的ゲノムDNAをクローニングする。(Δ9−デサチュラーゼcDNAのクローニング)▲1▼ mRNAの調製及びcDNAライブラリーの作製培養し、集菌したモルティエレラ属モルティエレラ亜属に属する微生物の菌体を破砕し、AGPC法に従って全RNAを抽出し、ここから適当な方法、例えばオリゴdTセルロースカラムを用いてmRNAを精製する。得られるmRNAを鋳型としてcDNAを合成し、これを市販のファージベクターに挿入し、さらに常法によりパッケージングする。▲2▼ Δ9−デサチュラーゼcDNAのクローニング宿主細菌に上記パッケージングしたcDNAライブラリーを感染させ、プラークハイブリダイゼーションによりポジティブプラークを得る。得られるクローンをシークエンスし、アミノ酸配列に変換し検討することにより、モルティエレラ属モルティエレラ亜属に属する微生物のΔ9−デサチュラーゼ遺伝子全長がクローニングされることが確認できる。▲3▼ Δ9−デサチュラーゼの発現続いて、クローニングしたΔ9−デサチュラーゼcDNAを用いて、Δ9−デサチュラーゼの発現を行う。このΔ9−デサチュラーゼの発現は、適当なプラスミドにΔ9−デサチュラーゼcDNAを挿入し、大腸菌を宿主として形質転換し、これを培養する公知の組換えDNAの手法によって実施できる。例えば、T7プロモータをもつpETシステムに目的cDNAを挿入し、この発現用プラスミドで大腸菌BL21(DE3)株を形質転換する。次いで、形質転換された大腸菌を適当な培地で培養し、集菌し、菌体を破砕し、Δ9−デサチュラーゼタンパクを分離、精製する。また、クローニングしたΔ9−デサチュラーゼcDNAを用いて、糸状菌、例えば、麹菌アスペルギルス・オリゼー用のベクター系を用いて糸状菌に属する微生物における発現に適した発現ベクターを構築する。この発現ベクターを常法により糸状菌、例えばアスペルギルス・オリゼーに形質転換し、ステアリン酸からオレイン酸への変換効率の高いクローンを選抜し、形質転換された糸状菌を得る。この形質転換された菌を培養し、総脂質を抽出して分析したところ、野生型の菌を同様に培養処理した場合と比較して、目的とする不飽和脂肪酸の比率が高いことが確認された。これは、形質転換された菌体内で、導入されたΔ9−デサチュラーゼ遺伝子が発現していることを示している。本発明を以下の実施例により、更に詳細に説明する。[実施例1] ゲノムDNAのクローニング(1) モルティエレラ・アルピナ1S-4のゲノムDNA抽出法(植物バイオテクノロジー実験マニュアル;農村文化社p252参照)対数増殖期後期の菌体を減圧ろ過で集菌した。菌体を液体窒素中で凍結した後、ホモジェナイザー(ワーリングブレンダー)で破砕した。次いで得られた菌体破砕物を乳鉢に移し液体窒素を加えながらすり潰した。70℃に保温し2%ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)液で懸濁し、65℃で3〜4時間インキュベートした。遠心分離した上清に対しフェノール、フエノール・クロロホルム、クロロホルム処理を順次行った。等容のイソプロパノールでDNAを沈殿させ、70%エタノールで洗浄し、風乾後、TE(10mMトリス-HCl(pH8.0)+1mM EDTA(pH8.0))に溶解した。この溶液をリボヌクレアーゼA及びリボヌクレアーゼT1で処理してRNAを分解し、続いてフェノール、フェノール・クロロホルム、クロロホルム処理で除タンパク操作を行った。等容のイソプロパノールでDNAを沈殿させ、70%エタノールで洗浄し、風乾後、TEに溶解しゲノムDNA標品を得た。(2) コスミドライブラリー作製法コスミドはSTRATAGENE社のSUPERCOS 1 COSMID VECTOR KITを用いた。コスミドライブラリー作製法はそのプロトコールに従った。コスミドをXbaIで制限酵素処理し、CIP(TAKARA)で脱リン酸化し、BamHIで制限酵素処理することでコスミドアームを調製した。インサートDNAは制限酵素Sau3AIで部分消化することで得た。コスミドアームと部分消化インサートDNAをライゲーションし、次のパッケージング操作へ進んだ。パッケージングはSTRATAGENE社のGIGAPACK II PACKAGING EXTRACTを用いた。宿主大腸菌はXL1-Blue MRを用いた。(3) プローブの作製現在、知られているΔ9−デサチュラーゼの内、推定されるアミノ酸配列がお互いに比較的高い相同性を示すラットの肝臓と酵母のΔ9−デサチュラーゼcDNAの配列を基にセンスプライマーとアンチセンスプライマーを作製し、モルティエレラ・アルピナ1S-4のゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。その結果増幅した約560bpのDNA断片をクローン化し塩基配列を決定したところ、その推定されるアミノ酸配列は酵母のΔ9−デサチュラーゼと約48%の高い相同性を示した。よって、本断片をα−32P-dCTPで標識しプローブとして、モルティエレラ・アルピナ1S-4のΔ9−デサチュラーゼゲノム遺伝子とcDNAのクローニングに使用した。作製した合成オリゴヌクレオチドプライマーは次の通りであった。(4) モルティエレラ・アルピナ1S-4のΔ9−デサチュラーゼゲノム遺伝子のクローニングコスミドライブラリーに対して、先のプローブを用いたコロニーハイブリダイゼーションを行った結果、数個の陽性クローンが得られた。その内の一つの陽性クローンのコスミドをアルカリ法で調製し、サザンハイブリダイゼーションを行った。ポジティブバンドとして得られた約3.5kbのSacI断片の塩基配列を決定したところ、Δ9−デサチュラーゼ遺伝子全体を含んでいることが判明した。[実施例2] cDNAのクローニング(1) mRNAの調製菌体は対数増殖期前期に集菌し、直ちに液体窒素で凍結後破砕し、AGPC法に従って全RNAを抽出した。得られた全RNAをオリゴdT-セルロースカラムにアプライすることでmRNAを精製した(mRNA精製キット:Pharmacia Biotech社)。(2) cDNAライブラリーの作製得られたmRNAを鋳型としてcDNAラピッドアダプターライゲーションモジュール(rapid adaptor ligation module)(アマシャム社)を用いてcDNAを合成した。次に、このcDNAをcDNAラピッドクローニングモジュール-λgt10(rapid cloning module-λgt10)(アマシャム社)を用いてλgt10に連結した。このλgt10-cDNAライブラリーをλDNAインビトロパッキングモジュール(λDNA in vitro packaging module)(アマシャム社)を用いてパッケージングした。(3) モルティエレラ・アルピナ1S-4のΔ9−デサチュラーゼ cDNAのクローニングcDNAライブラリーに対して、先のプローブを用いたプラークハイブリダイゼーションを行った結果、数個の陽性プラークが得られた。その内の一つの陽性プラークを用いてλファージを調製し、pBluescript IIにサブクローニングし塩基配列を決定した。(4) モルティエレラ・アルピナ1S-4のΔ9−デサチュラーゼ遺伝子の解析モルティエレラ・アルピナ1S-4のΔ9−デサチュラーゼcDNAの塩基配列により本Δ9−デサチュラーゼは446個のアミノ酸から成り、分子量50,780であると推定された。本Δ9−デサチュラーゼは酵母のΔ9−デサチュラーゼに対して、402個のアミノ酸にわたって44.5%と高い相同性を示した。また、ゲノム遺伝子の塩基配列から本Δ9−デサチュラーゼはただ一つのイントロンを含むことが判明した。(5) Δ9−デサチュラーゼの発現得られたΔ9−デサチュラーゼcDNAで大腸菌を形質転換し、Δ9−デサチュラーゼの発現を確認した。[実施例3]発現ベクターの構築(1)ベクターの構築と麹菌への形質転換ベクターpTAex3と麹菌宿主アスペルギルス・オリゼーM-2-3(Asperigillus oryzae-M-2-3(argB-,w))からなる宿主ベクター系を用いた。下記の二種の合成オリゴヌクレオチドプライマーとモルティエレラ・アルピナ 1S-4(Mortierella alpina 1S-4)のΔ9−デサチュラーゼのcDNAを用いてPCRを行い、得られた増幅DNA断片をTAクローニングベクターpCR2.1(Invitrogen社)に挿入し、塩基配列を確認した。このブラスミドをEco RIで処理して得たDNA断片をpTAex 3(図11)のEco RIサイトに挿入することで発現ベクターを構築した。(2)野性株と形質転換体の作製アスペルギルス・オリゼー M-2-3(Asperigillus oryzae-M-2-3)にpTAex 3のみを形質転換した株を以下、野性株とした。20ml容三角フラスコ中、グルコースあるいはマルトース2%、ポリペプトン1%、イーストエキストラクト0.5%、pH5.8の培地4ml中で、30℃、3日間、120rpmで培養した。菌体をガラスフィルター(3G1)でろ過して集め、滅菌水で洗浄した。菌体をスパーテルで押して脱水し、次いで50ml容プラスチックチューブにとり、0.45μmのフィルターでろ過したプロトプラスト化溶液(5mg/ml Novazym 234、5mg/ml Cellulase Onozuka R-10、0.8M NaCl、10mM Phosphate buffer、pH6.0)10mlを加えて懸濁した。30℃でゆっくり振還しながら約2時間反応させた後、ガラスフィルター(3G2)でろ過し、低速遠心(2,000rpm、5分)でプロトプラストを回収した。0.8M NaClで2回洗浄し、遠心によりプロトプラストを得た。プロトプラストを2x108cells/ml濃度になるようにSol I(0.8M NaCl、10mMTris−HCl、pH8.0)に懸濁した後、0.2倍量のSolII(40%(w/v)PEG 4,000、50mM CaCl2、50mM Tris-HCl、pH8.0)を加えて混合した。0.2mlのプロトプラスト液をブラスチックチューブに分注し、(1)で作成した発現ベクターの溶液(最大20μl、DNA量としては20μg)を加えて混合後、氷中で30分間放置した。次に、1mlのSolIIを加えて混合後、室温で20分間放置した。続いて10mlのSolIを加えて混合後、低速遠心(2,000rpm、5分)でプロトプラストを沈殿させた。上清を除き、0.2mlのSolIを加え、プロトプラストを均一に懸濁し、最少培地(Glucose2%、NaNO3 0.2%、KH2PO4 0.1%、KCl 0.05%、MgSO4・7H2O、0.05%、FeSO4・7H2O 0.01%)の中央にのせた後、45℃程度に暖めておいた軟寒天培地を5ml注ぎ、プロトプラストを手早く均一になるように重層した。出現したコロニーに対して、常法にしたがって、Δ9−デサチュラーゼ遺伝子をプローブとしてコロニーハイブリダイゼーションを行い、数個のクローンを得た。数個の得られたクローンのうち、ステアリン酸からオレイン酸への変換効率の最も高いクローンES-12株を得た。本酵素遺伝子をプローブとしたES-12株のゲノミックサザンハイプリダイゼーションを行ったところ、ポジティブバンドが得られた。pTAex 3には炭素源がマルトースの時に麹菌内で誘導発現されるプロモーターが存在するために、マルトースを炭素源とした。(3)脂肪酸組成の比較グルコースあるいはマルトース2%、ポリペプトン1%、イーストエキストラクト0.5%、pH5.8の培地中で30℃、3日間、120rpmで培養した後、常法により乾燥菌体から総脂質を抽出し、メチル化後、ガスクロマトグラフィーで分析した。ES-12株は野性株と比較してパルミトレイン酸とオレイン酸の割合が高く、リノール酸とα-リノレン酸が低かった。さらに、ES-12株においてグルコースよりもマルトースの方がパルミチン酸からパルミトレイン酸、ステアリン酸からオレイン酸への不飽和化反応が速やかに進行していると考えられた。マルトースが炭素源であるとき、野性株ではオレイン酸対ステアリン酸の比は6.9であるのに対して、ES-12株では48であり野性株の7倍であった(下記の表1参照)。(4)TLCによる各脂質画分の分析300ml容三角フラスコ中、マルトース2%、ポリペプトン1%、イーストエキストラクト0.5%、pH5.8の培地60ml中で、30℃、3日間、120rpmで培養した。集菌した菌体から、クロロホルム・メタノール法により総脂質を抽出した。TLC分析法(TLCプレート)により中性脂質画分、トリアシルグリセリ.ド(TG)、遊離脂肪酸(FA)、ジアシルグリセリド(DG)、リン脂質(PL)と、極性脂質画分、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルアミン(PA)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)を分画した。各画分をメチル化し、脂肪酸組成をガスクロマトグラフィーにより分析した。ES-12株は野性株よりTGの割合が高く、PEの割合が低かった。各画分における脂肪酸組成に関してはES-12株は野性株よりパルミトレイン酸とオレイン酸の割合が高く、リノール酸の割合が低かった(下記の表2参照)。[産業上の利用可能性]本発明により、ARAを菌体内に著量蓄積するモルティエレラ属モルティエレラ亜属に属する微生物由来のΔ9−デサチュラーゼをコードするゲノムDNAおよびcDNAが与えられる。この遺伝子のクローニングにより、Δ9−デサチュラーゼタンパクを遺伝子工学的に生産できる。また、この遺伝子を用いて微生物細胞及び植物細胞等を形質転換することにより、これら形質転換細胞における不飽和脂肪酸の生産性の向上が期待できる。[配列表]配列番号:1配列の長さ:27配列の型:核酸トポロジー:直鎖状配列の種類:PCR用プライマーDNA配列:配列番号:2配列の長さ:26配列の型:核酸トポロジー:直鎖状配列の種類:PCR用プライマーDNA配列:配列番号:3配列の長さ:1744配列の型:核酸トポロジー:直鎖状配列の種類:cDNA配列:配列番号:4配列の長さ:445配列の型:アミノ酸トポロジー:直鎖状配列の種類:ポリペプチド配列:配列番号:5配列の長さ:3511配列の型:核酸トポロジー:直鎖状配列の種類:genomicDNA配列:配列番号:6配列の長さ:27配列の型:核酸トポロジー:直鎖状配列の種類:PCR用センスプライマーDNA配列:配列番号:7配列の長さ:27配列の型:核酸トポロジー:直鎖状配列の種類:PCR用アンチセンスプライマーDNA配列: 配列番号:4のアミノ酸配列からなるポリペプチド、又はΔ9−デサチュラーゼの活性を保持しかつ配列番号:4のアミノ酸配列の1又は数個のアミノ酸を欠失し、置換し、又は他のアミノ酸を1又は数個付加した修飾ポリペプチドをコードする単離または精製されたDNA。 配列番号:4のアミノ酸配列をコードする単離または精製されたDNA。 配列番号:3のDNA配列、又はそのDNA配列の1又は数個のヌクレオチドを欠失し、置換し、又は他のヌクレオチドを1又は数個を付加した修飾DNA配列であり、かつその配列によってコードされるポリペプチドがΔ9−デサチュラーゼ活性を持つDNA配列からなる単離または精製されたDNA。 配列番号:3に記載の配列からなる単離または精製されたDNA。 配列番号:5のDNA配列、又はそのDNA配列の1又は数個のヌクレオチドを欠失し、置換し、又は他のヌクレオチドを1又は数個を付加した修飾DNA今配列であり、かつその配列によってコードされるポリペプチドがΔ9−デサチュラーゼ活性を持つことを特徴とするDNA配列からなる単離または精製されたDNA。 配列番号5:のヌクレオチド配列からなる単離または精製されたDNA。 請求項1〜6のいずれか1項に記載のDNAを含む組換え発現ベクター。 前記組換え発現ベクターが糸状菌に属する微生物を宿主とする発現に適したことを特徴とする請求項7記載のベクター。 前記微生物がアスペルギルス属に属する糸状菌である、請求項8記載のベクター。 前記微生物がアスペルギルス・オリゼーである請求項9記載のベクター。 請求項1〜6のいずれか1項に記載のDNAを含む組換え発現ベクターによって形質転換された微生物。 前記形質転換された微生物が、糸状菌に属する微生物であることを特徴とする請求項11記載の形質転換された微生物。 前記形質転換された微生物がアスペルギルス属に属する糸状菌であることを特徴とする請求項12記載の形質転換された微生物。 前記微生物がアスペルギルス・オリゼーである請求項13記載の形質転換された微生物。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る