タイトル: | 特許公報(B2)_ブロメラインの成分 |
出願番号: | 1998537423 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C12N 9/50,A61K 38/46,A61P 33/00,A61P 35/00,A61P 37/06,A61P 37/08 |
トレーシー リーハン ミノット クリスチャン エングワーダ ケイト ピーク JP 4673454 特許公報(B2) 20110128 1998537423 19980225 ブロメラインの成分 サランティス プロプライエタリィ リミテッド 恩田 博宣 恩田 誠 本田 淳 池上 美穂 トレーシー リーハン ミノット クリスチャン エングワーダ ケイト ピーク GB 9703827.7 19970225 GB 9703850.9 19970225 GB 9704252.7 19970228 GB 9706119.6 19970325 20110420 C12N 9/50 20060101AFI20110331BHJP A61K 38/46 20060101ALI20110331BHJP A61P 33/00 20060101ALI20110331BHJP A61P 35/00 20060101ALI20110331BHJP A61P 37/06 20060101ALI20110331BHJP A61P 37/08 20060101ALI20110331BHJP JPC12N9/50A61K37/54A61P33/00A61P35/00A61P37/06A61P37/08 C12N 9/00 - 9/99 CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) 特開平02−016977(JP,A) 国際公開第96/000082(WO,A1) Biochem.J., 1994, Vol. 301, p. 727-735 Archives of biochemistry and biophysics, 1988, Vol. 267, No. 1, p. 262-270 Journal of Protein Chemistry, 1995, Vol. 14, No. 1, p. 41-52 21 GB1998000590 19980225 WO1998038291 19980903 2002512509 20020423 25 20050224 千葉 直紀 本発明はブロメラインの成分に関する。特に、本発明は医薬、特に抗癌剤及び免疫抑制剤におけるこのブロメライン成分の使用に関する。ステム・ブロメライン(ブロメライン)は植物ブロメリアセーの組織に見出されるタンパク分解酵素に対する集合的名称である。それは、パイナップル植物(アナナス・コモスス)の茎から誘導される種々の部分の混合物である。ブロメラインは少なくとも5個のタンパク分解酵素を含んでいることが知られているが、酸性ホスファターゼやペルオキシダーゼなどの非−タンパク分解酵素をも含んでいる。それはアミラーゼやセルラーゼ活性をも含んでいる。さらに、種々の他の成分が存在する。ブロメラインは炎症を含む種々の状態の治療、特に下痢の治療に、従来から使用されてきた。感染性下痢の治療におけるブロメラインの使用はWO−A−9301800号に記述されており、ここでは、ブロメラインがタンパク分解により病原体に対する小腸の受容体を破壊することにより作用すると示唆されている。そして、WO−A−8801506号にも記述されており、これはブロメラインが小腸受容体から病原体を分離することを教示する。タウシックら、Planta Medica, 1985, 538-539及びマウラーら、Planta Medica, 1988, 377-381は両者とも、ブロメラインが腫瘍の成長を阻止するのに有用でありうることを示唆する。米国特許5,223,406号、DE−A−4302060号及びJP−A−59225122号も癌の治療におけるブロメラインの使用を開示する。米国特許第5,223,406号はブロメラインが腫瘍壊死因子(TNF)を誘導することができることを教示するが、DE−A−4302060号はブロメラインが腫瘍表面タンパク質CD44の構造的修飾により転移を防止することができることを教示する。WO−A−9400147号では、タンパク分解酵素、特にブロメラインが分泌を阻害することができることを証明する種々の実験が記述された。この出願はブロメラインが毒物結合活性を減少させることができ、そして熱不安定性毒素(LT)やコレラ毒素(CT)などの毒素さらには熱安定性毒素(ST)などの毒素の分泌効果を阻害することができることをも開示する。これは、STがLTやCTとは極めて異なる作用様式を持つという事実にもかかわらずである。これらの観察はブロメライン混合物である、ステムブロメラインプロテアーゼの一つの成分が環状ヌクレオチド経路を調節することができるようにみえるという事実により説明された。そしてこれはWO−A−9500169号によりさらに論じられた。さらに、ブロメラインはカルシウム依存経路により惹起される分泌を阻害することも証明された。本発明者らはブロメラインの種々の生物学的効果、特に細胞内シグナル伝達の十分に立証されたモデル、すなわちT細胞受容体(TCR)/CD3シグナル発信及びIL−2生産におけるその効果を研究してきた。近年における重要な進歩により、TCR結合の後に起こる生化学的事象の理解がもたらされた(カントレルによる総説、Annu. Rev. Immunol. 14, 259-274(1996))。従って、TCRシグナル発信は生物学的活性化合物の効果の解明のための優れたモデルを提供する。効果的なT細胞活性化は二つのシグナルを必要とする。第1のシグナルは、抗原提示細胞(APC)上で発現する主要組織適合遺伝子複合体(MHC)により提示される抗原ペプチドとの結合の後にTCR/CD3複合体により形成される(カントレル、1996)。第2の共刺激性のシグナルは、T細胞上のCD28受容体のAPC上のリガンドのB7ファミリーとの連結により形成される。受容体で開始されたシグナルを核に伝達する際に関与するシグナル発信経路における重要な要素はマイトジェン−活性化タンパク質キナーゼ(MAPk)のファミリーである。これらのキナーゼの中で最も良く研究されたものは、細胞外のシグナル−調節タンパク質キナーゼ(ERK)−1及びERK−2(それぞれ、p44MAPk及びp42MAPkとも呼ばれる)である。ERKは、チロシン残基とトレオニン残基がリン酸化されると活性化されるセリン/トレオニンキナーゼである。イン・ビトロでは、この活性化は、何れかの残基が脱リン酸化されると、逆転される。MAPkファミリーの比較的新しく発見されたメンバーは、c−Jun・NH2−末端キナーゼ(JNK)である。これは46kDa及び55kDaの形で存在し、これも活性化にリン酸化を必要とする。ERK活性化はp56Lck及びTCR/CD3複合体のp21Rasへの結合、それに続くRaf−1/MEK1/ERKキナーゼカスケードの活性化に依存する。JNK活性化もp21Ras並びにPAK/MEKK/SEK/JNKキナーゼカスケードを誘導する(Rac1又はCdc42などの)GTP(グアノシン−三−リン酸)−結合タンパク質を活性化するCD28共刺激性受容体により形成されるシグナルを必要とする。活性化されたERKはElk−1をリン酸化し、今度はこれがJNKによるc−junのリン酸化の後にc−fos活性の誘導を媒介する。活性化されたc−fos及びc−junは結合してIL−2合成に必要なAP−1タンパク質を形成する。上の事象は図1に要約してある。タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)の阻害剤は、T細胞活性化やIL−2生産を含む、TCR刺激と関連する多くの事象を阻害するから、上述のシグナル発信事象はすべて、チロシンのリン酸化を必要とする。WO−A−9600082号で、本発明者らはブロメラインが、チロシンのリン酸化そしてTCR経由で刺激された又はホルボールエステルとカルシウムイオノホアとの組合せで刺激されたT細胞中のERK−2の活性化を阻害することができることを明らかにした。本発明者らは、今度は、ERK活性の減少と共に、ブロメラインはホルボールエステルとカルシウムイオノホアで刺激されたT細胞中でのIL−2、IL−4及びIFN−γmRNAの蓄積を減少させるが、TCR経由で刺激された細胞中でのサイトカインmRNAの蓄積には影響しないことを発見した。このデータはT細胞中でサイトカイン生産に関与するTCR−活性化、ERK−依存性の経路の存在を示唆する。先行技術から、ブロメラインは種々の異なる生理学的効果を有する混合物であることは明らかである。ブロメライン混合物の成分の全てが特性決定された訳ではなく、従って、本発明者らがその活性を記述してきたステムブロメラインプロテアーゼを除き、どの成分がブロメラインの種々の異なる効果のどれに対して責任があるのかは明らかでない。これは、勿論、ブロメライン混合物を薬物として投与すべきときの主要な不利益である。何故なら、ブロメラインの一つの成分は望ましい効果を与える一方、ブロメライン混合物の他のある成分の作用から生ずる望ましくない副作用が十分にありうるからである。従って、もし特定の医薬としての活性を生ずるブロメラインの個々の成分が単離され、副作用の可能性を減少させるように、別々に投与されるならば、有益である。本発明者らは今やERK活性化を阻害し、従ってMAPキナーゼ経路を阻止するその能力に責任のある粗ブロメラインの活性画分を同定した。1個のタンパク質ではないが、この画分は二、三の成分しか含んでおらず、従って、患者に投与されるときの副作用の可能性は粗ブロメラインと比較したとき大きく減少する。本発明のその画分は、本発明者らはCCSと呼んだが、一般に行われている方法により、例えばクロマトグラフィーにより、ブロメライン混合物から単離することができる。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)はこの目的に適しており、ブロメラインタンパク質の特に良好な分離は、S−セファロースなどのカラム充填剤を用いるファスト・プロテイン・リキッド・クロマトグラフィー(FPLCTM)により達成することができる。実施例でより詳細に記述するように、300mlを越える酢酸バッファー中の0〜0.8M塩化ナトリウムの直線勾配を用いるS−セファロース上のクロマトグラフィーで、本発明のタンパク質はカラムから溶出した最後の2本ピークであった。本発明の第1の側面では、SDS−PAGEで測定したとき約15.07kDa、25.85kDa及び27.45kDaの分子量を持つタンパク質を含み、10.4及び10.45の等電点を持ち、そして下記の方法、すなわちi. pH5.0で酢酸バッファーにブロメラインを溶解し、ii. S−セファロース上、300mlを越える酢酸バッファー中の0〜0.8M塩化ナトリウムの直線勾配で溶出するファスト・フロー高速液体クロマトグラフィーによりブロメラインの成分を分離し、iii. カラムから溶出する最後の2本ピークに対応する画分を集め、そしてiv. (iii)で集められた画分からタンパク質を単離する方法、により取得できるブロメラインの成分が提供される。CCSと名付けられたこの画分は潜在的に有用な幾つかの諸活性を持つことが見出された。まず、本発明者らは、それがERK−2リン酸化を阻止し、従ってMAPキナーゼカスケードを阻止することを見出した。さらに、それはIL−2生産及びCD4+T細胞増殖を阻止した。しかしながら、CCSは脾臓細胞の増殖には影響を与えなかった。このことはそれが選択的作用様式を持つことを示唆する。CCSは卵巣、肺、結腸、メラノーマ及び乳房の腫瘍を含むヒト腫瘍細胞系の成長を差別して阻止した。異なる細胞系に対するCCSの差別的活性は、CCSが選択的作用様式を持つこと及びそれが抗癌剤として作用することもできることをさらに示唆する。選択的システインプロテアーゼ阻害剤であるE−64はCCSの効果を阻止し得るから、ERK−2に対するCCSの阻害効果はそのタンパク分解活性に依存する。WO−A−9724138号では、本発明者らは、一般にプロテアーゼはMAPキナーゼ活性化を減少させることができると述べたが、トリプシンがT細胞シグナル発信を阻止せず、そして実際、他の研究ではMAPkの活性化を増強することが示された(ベルハムら、1996、Biochem. J., 320, 939-946)ことから、本発明者らは今回、これはそうではないことを見出した。血液凝固カスケードに関与するプロテアーゼであるトロンビンはMAPキナーゼ活性化を増強することも示された(ブーレット−クラビアリら、1993、Biochem. J., 289, 209-214)。本発明者らは今回、粗ブロメライン混合物の中に含まれる他のプロテアーゼがMAPキナーゼ経路の活性化を阻止しないことをも示した。T細胞におけるMAPキナーゼ経路に対するCCSの効果が細胞表面における特異的タンパク分解効果により媒介される可能性がある。ブロメラインがCD45RAイソ型を切断しそしてヒトPBMCから他の表面分子を選択的に除去することが知られている。ブロメラインはT細胞表面からCD4を部分的に除去もする。CD45とCD4はTCRに媒介されるT細胞活性化において絶対的な刺激的役割を果しているから、CCSはこれらの分子に影響することによりTCRシグナル発信を妨害することができる。CD45とCD4の重要性はTCR開始シグナル伝達については良く認識されているが、ホルボールエステル及びカルシウムイオノホアの使用によるT細胞の活性化に対してはその要求はバイパスすることが可能である。ホルボールエステルとイオノホアの組合せの使用により、チロシンキナーゼ阻害剤の使用によるTCR刺激に抵抗性があるとされ、又はCD45又はp56Lckを欠如しているT細胞に正常な機能が回復する。しかしながら、本研究では、本発明者らは、T細胞をPMA+イオノホアで処理するとき、予めCCSで前処理したT細胞には正常な機能の回復はみられないことを示した。ERK−2に対するCCSの阻害効果は、こうして、T細胞上のCD45又はCD4に対する効果を経由して媒介されるものとは考えられない。CCSはこれまで未同定の表面分子に影響を与え、そしてこれが今度はMAPキナーゼ経路に影響を与える可能性がある。サイトカイン生産に対するCCSの阻害効果は、こうして、T細胞上のCD45又はCD4に対するその効果を経由して媒介されるとは考えられない。CCSは脾臓細胞又はGA15細胞の生存性に影響しなかったから、T細胞シグナル伝達に対するCCSの阻害効果はその化合物の毒性のためではなかった。細胞の生存性は48時間よりも長い期間CCSの存在下に培養することにより有意な影響を受けなかった。粗ブロメラインからのCCS画分はMAPキナーゼ経路の活性化を阻止しそしてT細胞の活性化を阻止することを本発明者らは示したから、CCSはT細胞により媒介される疾病の治療に有用でありうる。IL−2生産及びT細胞活性化に対するその重要性に加えて、MAPキナーゼ経路は表皮成長因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PGDF)及びインスリン様成長因子(IGF)などの成長因子の生産にも重要である。従って、CCSはこれら及び他の成長因子の生産やIL−4、IFN−γ、GM−GSF及び他の多くのものなどの他のサイトカインの生産を阻止する。また、上に簡単に述べたように、CCSは癌の治療にも有用である。こうして、CCSはi. T細胞の活性化、ii. MAPキナーゼ経路の活性化、又はiii. 成長因子又はサイトカインの生産、により媒介される疾病又は状態の治療又は予防のための方法に有用であり、又は癌の治療又は予防に有用である。本発明の第2の側面では、従って、SDS−PAGEで測定したとき、約15.07kDa、25.85kDa及び27.45kDaの分子量を持つタンパク質を含み、10.4及び10.45の等電点を持ちそして下記の方法、すなわちi. pH5.0の酢酸バッファーにブロメラインを溶解し、ii. 300ml以上の酢酸バッファー中0〜0.8M塩化ナトリウムの直線勾配で溶出するS−セファロース上のファスト・フロー高速液体クロマトグラフィーによりブロメラインの成分を分離し、iii. そのカラムから溶出する最後の2本ピークに対応する画分を集め、そしてiv. (iii)で集めた画分からタンパク質を単離する方法、により取得できるブロメラインの成分が医薬品、特にi. T細胞の活性化、ii. MAPキナーゼ経路の活性化、又はiii. 成長因子又はサイトカインの生産、により媒介される疾病及び状態の治療又は予防に使用するため、又は癌の治療又は予防に使用するために提供される。ブロメラインのCCS画分のさらなる分析に基づいて、本発明者らは、それが二つ以上の成分を含むことを見出した。この画分中のタンパク質の配列決定から、それがシステインプロテアーゼであるアナナイン(ananain)とコモサイン(comosain)から成りさらに種々の他の成分を含むことが明らかになった。こうして、アナナインとコモサインの両方又はこの二つの混合物がブロメラインのCCS画分の活性に責任があるようである。従って、本発明のさらなる側面では、i. T細胞の活性化、ii. MAPキナーゼ経路の活性化、又はiii. 成長因子又はサイトカインの生産により媒介される疾病又は状態の治療又は予防、又は癌の治療又は予防のための薬品の製造における、アナナイン、コモサイン、アナナインとコモサインの混合物又はブロメラインのCCS画分の使用が提供される。本発明者らの先の出願WO−A−9600082では、本発明者らは粗ブロメラインによるMAPキナーゼカスケードの阻害を論じた。しかしながら、あの時点では、本発明者らは、それがステムブロメラインのプロテアーゼであるかも知れないと推測したものの、粗ブロメライン混合物のどの成分がこの活性に責任があるのかを決定することはできなかった。本発明者らは、今や、環状ヌクレオチド経路の阻止に加えて、ステムブロメラインプロテアーゼがMAPキナーゼ経路に対してもある活性を確かに持つことを発見した。しかしながら、それはMAPキナーゼカスケードの阻止において本発明のブロメラインのCCS画分よりも遙かに小さな効果である。実際、本発明者らは今や、ブロメラインのCCS画分は、ステムブロメラインプロテアーゼがMAPキナーゼ活性化を阻止するよりも10乗(order)の大きさの範囲でより活性が強いことを見出した。IL−2を生産しそしてT細胞のクローン増大を駆動するためのT細胞におけるMAPキナーゼ経路の活性化は免疫応答の本質的部分である。このプロセスの非存在は、T細胞欠陥を生ずるエイズ又は遺伝的突然変異を患う人々で観察されうるように、致命的結果を招来することができる。しかしながら、T細胞の活性化は悪い結果を招くこともできる。例えば、もし自己反応性のT細胞が活性化されると、自己免疫疾患が生じ得る。従って、CCSは、リューマチ性関節炎、1型糖尿病、多発性硬化症、クローン病及び狼瘡などの自己免疫疾患の治療に有用である可能性が高い。また、移植された組織に特異的なT細胞の活性化は移植拒否に至ることができ、従って、CCSはこれを予防するのに有用でもあり得る。アレルゲン特異的T細胞の活性化はアレルギー反応を惹起することができる。炎症性サイトカイン類及びヒスタミンなどの他の細胞生産物は、アレルゲンと接触した後細胞から放出される。ヒスタミンや炎症性サイトカインの放出はMAPキナーゼ経路を含み、こうしてCCSによるMAPキナーゼ経路の阻止はアレルギーの有効な治療である可能性が高い。さらに、CCSは中毒性ショック及び細菌の内毒素の過剰生産により媒介される他の疾患の予防に有用である可能性が高い。中毒性ショックはグラム陰性細菌によるリポ多糖類(LPS)の生産により媒介される。LPSは、マクロファージにおけるMAPキナーゼ経路の活性化を経てTNF−α及びインターロイキン−1の生産の引金を引く。これらのサイトカインの分泌は免疫系(T細胞を含む)の他の細胞からのサイトカイン生産のカスケードを誘い出し、これが白血球増多症、ショック、血管内凝固及び死をもたらす。CCSのさらなる使用は、プログラムされた細胞死(アポプトシス)の予防においてである。これは、細胞がそれ自身のDNAを破壊するように刺激されそして死ぬ特殊な事象である。それは、(多過ぎる細胞の蓄積を防止するための)多くの免疫応答における本質的な事象であるが、しかしHIV感染や多過ぎる細胞が死に、感染と闘うには不十分な細胞しか残されていないような加齢などの場合には、免疫抑制的結果を持つことができる(ペランドンズら、1993、J. Immunol., 151, 3521-3529)。アプトプシスの開始は、MAPキナーゼ経路の活性化を含む、特定の細胞のシグナル発信事象に依存するから、CCSはアポプトシスを阻止する効果を持つ可能性が高い。慢性疾患の間におけるT細胞の連続的活性化は、結核様ライ、住血吸虫症及び内蔵リーシュマニア症などの慢性肉芽腫症などのある種の慢性寄生体感染に見出すことができるような、病理学的結果をもたらすこともできる。さらに、寄生体や病原体の侵入、及び細胞内でのその後の生存は、これらの生物が宿主細胞のシグナル発信経路を利用するか否かに依存している(ブリスカら、1993、Cell, 73, 903-920)。例えば、サルモネラはMAPキナーゼをリン酸化することが証明され、これが細菌をマクロファージによるエンドサイトーシスさせることになる(ガランら、1992、Nature, 357, 588-589)。次いで、この細菌が増殖しそしてその細胞を破壊する。CCSは宿主のシグナル発信経路を修飾することが示されたから、そして特にMAPキナーゼを阻害することが示されたから、別の潜在的適用は寄生体又は病原体による侵入及び細胞内でのそれらの生存を防止することである。CCSは癌の治療に有用でもある。実際、本発明者らは、CCSがイン・ビトロでヒトの腫瘍成長を阻止することができることを示した。CCSの作用の抗−腫瘍メカニズムは解明されていないが、ERK−2経路の活性化の阻止の結果であるように思われる。前にも述べたように、MAPキナーゼの活性化は、重要なオンコジーンであるp21Ras及びRaf−1に依存している。p21Ras及びRaf−1タンパク質はその細胞表面上の成長因子受容体からのシグナルをMAPキナーゼへ中継し、細胞の増殖又は分化を刺激するのを助ける。オンコジーン(又は突然変異体)であるp21Ras又はRaf−1遺伝子は、外的に供給される成長因子からの独立性を獲得した欠陥タンパク質を生産し、そして同時に、外部の成長阻害シグナルにもはや応答しない。突然変異体のp21Ras又はRaf−1タンパク質はこうして、永続的に高活性であり続け、そしてそれらの拘束から開放された触媒活性が細胞成長の制御に対し悪影響を及ぼすのである。従って、オンコジーンp21Ras又はRaf−1遺伝子は、細胞の増殖及び分化に対する正常な制御を破壊することにより癌及び腫瘍の形成を促進する。ヒト癌の約30%がp21Ras遺伝子に突然変異を有する。p21Ras及びRaf−1により伝達されたシグナルがMAPキナーゼを経て阻止することができるとすれば、CCSは癌及び腫瘍の成長を阻止すると期待されるであろう。従って、本発明のタンパク質画分は、卵巣、結腸、乳房又は肺の癌及びメラノーマなどの固体癌や非固体腫瘍及び白血病を含む多くの異なるタイプの癌を治療するのに有用であろう。本発明のブロメライン画分は、通常、患者に投与される前に製剤化される。従って、本発明のさらなる側面では、ブロメラインのCCS画分を、薬学的に又は獣医学的に許容され得る賦形剤と共に含んで成る薬学的又は獣医学的組成物が提供される。このCCS画分は経腸的投与、例えば、経口投与、経鼻投与、バッカル投与、局所的投与もしくは肛門投与又は、例えば、静脈内、皮下、筋肉内又は腹腔内経路による非経口投与を含む種々の経路により投与することができる。多くの場合、経口投与は、しばしば患者が最も受け入れ易い経路であるので、好ましい。タンパク質の投与量が多く要求される場合に、この経口ルートは特に有用である。経口投与が選ばれるとき、胃を通過するときの残存を助けるため、腸溶被覆製剤でCCS画分を製剤化することが望ましい。また、別の経口的に投与可能な投与剤形、例えばシロップ、エリキシル又は硬又は柔ゼラチンカプセル、腸溶被覆された硬又は柔ゼラチンカプセル、を使用することができる。しかしながら、ある状況の下では、非経口的経路を使用するのがさらに便利である。非経口投与では、このタンパク質は蒸留水又は別の薬学的に許容され得る溶媒又は懸濁剤の中で製剤化してもよい。患者に投与されるべきCCS画分の適当な投与量は臨床医が定めることができる。しかしながら、基準として、適当な投与量はkg体重当たり約0.5〜20mgである。多くの場合、この投与量はkg体重当たり約1〜15mgであることが期待され、そしてkg体重当たり1〜10mgであることが好ましい。従って、約70kgの体重のヒトについては、典型的な投与量は約70〜700mgとなるであろう。本発明を下記の実施例及び図を参照してさらに記述する。図1は、IL−2生産に至るT細胞活性化と関連するシグナル伝達事象の図式的表示である。図2は、SP・セファロース高性能媒体上でのカチオン交換クロマトグラフィーの後の粗ブロメラインの紫外溶出プロフィルである。図3は、SP・セファロース高性能媒体上でのカチオン交換クロマトグラフィーの後の粗ブロメライン画分のタンパク分解活性及びタンパク含量を示すプロットである。図4は、SP・セファロース高性能クロマトグラフィーのプールした画分の、4〜20%T勾配ゲル上で行われたSDS−PAGEであって、レーン1〜4及びレーン6〜9はそれぞれタンパク質CCT、CCV、CCX及びCCZ及びCCY、CCW、CCU及びCCSを含み、そしてレーン5及びレーン10は分子量マーカーを含む。図5は、pH3〜11の勾配ゲル上で行われたプールした画分の等電点電気泳動であって、レーン1、11、及び12は高IEFマーカーを示し、、レーン2及び13は粗ブロメラインを示し、そしてレーン3〜10はそれぞれタンパク質CCT、CCV、CCX、CCZ、CCY、CCW、CCU及びCCSを示す。図6は、抗ホスホチロシンmAbを用いるウエスタンブロットであって、CCSがp42kDa(ERK−2)タンパク質のチロシンリン酸化を減少させることを証明する。Th0細胞をブロメライン画分(50μg/ml)で30分間処理し、洗浄し、ついでPMA(20ng/ml)とイオノホア(1μM)の組合せで5分間刺激した。刺激しなかった細胞を対照として用いた。次いで、細胞を溶解し、ポストヌクレア上清をSDS−PAGE及びウエスタンブロッティングに付した。この図では、黒記号はPMAとイオノホアの組合せでリン酸化されたタンパク質を示す。白抜き記号はCCS処理によって減少したERK−2タンパク質を示す。図7は、抗ホスホチロシンmAbをもちいたウエスタンブロットであって、CCSがタンパク質基質のチロシンリン酸化を増加させることを証明する。Th0細胞をCCS、粗ブロメライン(Brom)、ステムブロメラインプロテアーゼ(SBP)又はCCT画分(50μg/ml)で30分間処理し、洗浄し、そして次いでPMA(20ng/ml)及びイオノホア(1μM)の組合せで5分間刺激した。刺激しなかった細胞は対照(Cont)として使用した。次に、細胞を溶解し、そしてポストヌクレア上清をSDS−PAGE及びウエスタンブロットに付した。この図では、黒記号はCCSによってリン酸化されたが他の処理ではリン酸化されなかったタンパク質を示す。白抜き記号はCCS及び粗ブロメライン処理によって減少したリンタンパク質を示す。図8は、抗ホスホチロシンmAbを用いたウエスタンブロットであって、ERK−2に対するCCSの阻害効果が、そのタンパク分解活性に依存し、そして投与量依存的に起こることを示す。Th0細胞をCCS(0〜25μg/ml)又は選ばれたプロテアーゼ阻害剤であるE64とインキュベートされたCCSで30分間処理した。次いで、細胞を洗浄し、次にPMA(20ng/ml)及びイオノホア(1μM)の組合せで5分間刺激した。次に、細胞を溶解し、ポストヌクレア上清をSDS−PAGE及びウエスタンブロットに付した。この図では、黒記号はCCSによりリン酸化されたタンパク質を示す。白抜き記号は活性なCCSにより阻害されたが、不活性なCCSでは阻害されなかったERK−2リンタンパク質を示す。図9は、CCSによって阻害された42kDaリンタンパク質がERK−2であることを確認するイムノブロットである。Th0細胞をCCS(50μg/ml)で30分間処理し又は処理せず、ついで洗浄し、そてPMA(20ng/ml)とイオノホア(1μM)の組合せで5分間刺激した。細胞溶解物を抗ERK−2mAbでイムノブロットを行った。図10は抗ホスホチロシンmAbを用いたウエスタンブロットであって、架橋した抗CD3εmAbが複数タンパク質のチロシンリン酸化を誘導することを示す。Th0細胞を架橋した抗CD3εmAbで0〜20分間刺激した。ついで、細胞を溶解しそしてポストヌクレア上清をSDS−PAGE及びウエスタンブロットに付した。黒記号は抗CD3εmAbに誘導されたチロシンリン酸化タンパク質を示す。図11は、抗ホスホチロシンmAbを用いたウエスタンブロットであって、CCSがTCRにより刺激されたT細胞でのチロシンリン酸化を阻害することを証明する。Th0細胞をCCS(0〜5μg/ml)で30分間処理し、洗浄し、ついで、架橋した抗CD3εmAbで5分間刺激した。ついで細胞を溶解しポストヌクレア上清をSDS−PAGE及びウエスタンブロットに付した。この図では、記号は抗CD3εmAbで誘導したERK−2のチロシンリン酸化であって、CCSにより減少したものを示す。図12は、抗Raf−1mAbを用いたウエスタンブロットであって、CCSがRaf−1の移動度シフトを阻害することを示す。Th0細胞をCCS(0〜50μg/ml)で30分間処理し、洗浄し、ついで(A)PMAとイオノホアとの組合せでか又は(B)ついで架橋した抗CD3εmAbで5分間刺激した。ついで細胞を溶解し、ポストヌクレア上清をSDS−PAGE及びウエスタンブロットに付した。図13は、CCSが、精製したCD4+T細胞のIL−2の生産及び増殖を減少させることを示す一対のプロットである。T細胞をCCS(50μg/ml)で処理し、洗浄し、ついで培地単独か又は固定化した抗CD3εmAb及び抗CD28mAbを含む培地かで培養した。(A)IL−2生産は実施例5に記述したCTL−L検定法により測定した。(B)増殖は3H−チミジンの取り込みにより測定した。mAb(刺激剤)の非存在下に培養したCD4+T細胞は検出可能なIL−2を生産せずそして増殖もしなかった。図14は、CCSが脾臓細胞によるIL−2生産を減少させるが脾臓細胞の増殖を阻害しないことを示す一対のプロットである。脾臓細胞をCCS((50μg/ml)で処理し、洗浄し、ついで培地単独か又は固定化した抗CD3εmAbを含む培地かで培養した。(A)IL−2生産は、実施例5に記述したようなCTL−L検定法で測定した。(B)増殖は3H−チミジンの取り込みにより測定した。mAb(刺激剤)の非存在下に培養した脾臓細胞は検出可能なIL−2を生産せず、増殖もしなかった。図15は、CCSがイン・ビトロで腫瘍細胞の成長を阻害することを示すプロットである。癌細胞系をCCS(50、10、2.5、1及び0.25μg/ml)で処理し、又は対照として水で処理した。96時間処理した後、腫瘍細胞の成長に対するCCSの効果を評価した。カラムはCCSの50%阻害濃度(IC50μg/ml)(腫瘍細胞の成長の50%を阻害するために必要なCCSの量)を表す。実施例1−ブロメラインタンパク質の精製a. 材料試薬. ブロメライン(E.C.3.4.22.4; タンパク分解活性,1,541nM/分/mg)はソルベイ・インク(ドイツ)から入手した。ファスト・フロー・S・セファロース、ファルマライト3−10TM、アンホリン9−11TM、レディミックスIEFTM(アクリルアミド、ビスアクリルアミド)及びIEFTMマーカーはファルマシア・バイオテクから入手した。プレカスト4−20%アクリルアミドゲル及び広域分子量マーカーはバイオ−ラド・ラボラトリーズから入手した。他のすべての試薬類は分析グレードであり、シグマ・ケミカル・コウ.か又はブリティッシュ・ドラッグ・ハウスから入手した。b. プロテイナーゼ検定ブロメラインのタンパク分解活性は、合成基質Z−Arg−Arg−pNAを用いるイン・ハウス・ミクロタイター・プレートに基づく検定法を使用して測定した。この検定法はフィリッポバらのAnal. Biochem., 143, 293-297(1984)に記述されたものに基づいていた。この基質はナッパーらのBiochem. J., 301, 727-735(1994)に記述されたZ−Arg−Arg−pNAであった。c. タンパク質検定タンパク質は、ローリーら(J. Biol. Chem.(1951)193, 265-275)の改良法であるバイオ・ラドが供給するキットを用いて測定した。試料は0.9%食塩水か又は20mM酢酸バッファーpH5.0中で調製されたウシ血清アルブミン標準(0〜1.5mg/ml)を適当なものとして、それと比較した。d. ブロメラインの調製以下の工程は全て周囲温度(20〜25℃)で行った。ブロメラインの溶液(30mg/ml)は450mgの粉末を0.1mMのEDTAナトリウム塩を含む20mM酢酸バッファー(pH5.0)の15mlに溶解することにより調製した。この溶液を10×1.5mlミクロ遠心分離チューブ中に分配し、13,000×gで10分間遠心分離して不溶性物質を除去した。澄明な上清をプールし、クロマトグラフィー用に使用した。e. ファスト・フロー・S−セファロース高速クロマトグラフィーファスト・フロー・S−セファロースカラムは25mlの培体をXK16/20TMカラム(ファルマシア・バイオテク)中に充填し、FPLCTMシステム上で0.1mMのEDTAを含む20mM酢酸バッファー(pH5.0)で3ml/分で平衡化することにより調製した。5mlのブロメライン溶液をそのカラムに注入した。結合しないタンパク質を集め、そしてそのカラムを100mlの酢酸バッファーで洗浄した。そのカラムに結合したタンパク質は300mlを越える酢酸バッファー中0〜0.8MのNaClの直線勾配を用いて溶出した。その勾配を通して5mlの画分を集めた。図2はこの手順から得られる粗ブロメラインの典型的なU.V.クロマトグラムを示す。次に、この画分は、上記のようにタンパク質及びタンパク分解活性について分析した。図3は合成ペプチドZ−Arg−Arg−pNAに対するタンパク分解活性及び個々の画分のタンパク質含量を示す。このタンパク質含量プロフィルは、予想された通り、U.V.のそれと全くの鏡像である。しかし、その主要タンパク分解活性はブロメライン・プロテアーゼ(SBP)のそれに対応する二つの主要ピークに限定される。小さな活性がそのクロマトグラムの他の領域にも観察される。これはアナナイン及びコモサインを含む、遅く溶出するCCS画分などのSBPとは異なる他のプロテアーゼに対応しうる。U.V.プロフィルから確認された主要ピークは続く反復実施で集め、そして表1に示すように名づけた。プールした画分は物理化学的特性決定のために使用した。プールした画分を限外濾過で濃縮し、そしてPD10カラムを用いて等張食塩水(0.9%w/vNaCl)にバッファー交換を行った。そのタンパク質含量及びZ−Arg−Arg−pNA活性は生物学的テストの前に計算した。これらは表2に示してある。プールした画分は下記のように、分析のために処理した。f. プールした画分の処理プールした画分のタンパク分解活性及びタンパク質含量を測定し、そしてその濃度を、10kDaの名目分子量カット−オフの限外濾過膜を含むフィルトロンTM攪拌セルを用いて、タンパク質の1.4mg/mlか又はタンパク分解活性の105ナノモル/分/mlかにほぼ調整した。ついで、この画分をPD10TMカラム(ファルマシア・バイオテク)を用いて等張食塩水(0.9%w/vNaCl)にバッファー交換を行い、無菌濾過(0.2μm)を行い、そしてタンパク質含量又はタンパク分解活性を調整した。試料を次に−80℃で凍結し、下記のイン・ビトロ研究に使用した。g. ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動(SDS−PAGE)プールしたFPLCTM試料は、予め作成した4〜20%T勾配ゲル上でドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動(SDS−PAGE)により分析した。100μlに等容量の20%w/vトリクロロ酢酸(TCA)を混合する酸沈澱により電気泳動用の試料を調製した。沈澱したタンパク質を13,000×gで10分間遠心分離することにより集め、上清は捨てた。このペレットを0.5mlのジエチルエーテルで2回洗浄し、そして周囲温度の空気で乾燥した。次いで、このペレットを300μlのSDS−PAGE試料バッファー(10%v/vグリセロール、2%w/vドデシル硫酸ナトリウム及び40mMジチオトレイトールを含む62.5mMのトリス−塩酸pH6.8)中に溶解し、そして水浴中95℃で加熱した。SDS−PAGE試料バッファー中に1:20で希釈したSDS−PAGE広範囲分子量標準を同様に処理し、そして試料と共に使用した。ゲルは、バイオ−ラドのプロトコールに従って、ミニ・プロテアンIITM電気泳動システム上で240Vで使用し、色素先端がゲルの末端に到達するまで(30〜45分)行った。電気泳動の後、分離したタンパク質を、1.5%v/vリン酸、11.25%w/v硫酸アンモニウム及び25%v/vメタノールを含む0.075%w/vコロイダル・ブリリアント・ブルーG−250の溶液中で軌道攪拌しながら一晩染色した。クリアな背景を得るため、25%v/vメタノール及び10%v/v酢酸の溶液中でゲルを脱染色した。結果画分の純度は、図4中のSDS−PAGEにより示す。カラムの素通り(CCT)を除き、プールした画分は全て、存在する主要なタンパク質がほぼ25〜28kDaの間の分子量を持つものであることを示した。これは、他の著者(ローアンら、Methods in Enzymology,(1994), 244, 555-568)によりブロメラインから単離されたシステインプロテイナーゼの分子量に相当する。画分CCX、CCZ、CCY及びCCWの純度は高いように思われる。より低い分子量の小さな成分が幾つかの画分、特にCCT、CCV、CCX及びCCSで観察することができる。プールした画分CCU及びCCSは25−28kDaに2重のバンドを含む。画分CCX、CCZ、CCY及びCCWのより高いゲル負荷を行うと、これらの画分にも二重のバンドが存在することが分かる。成分及びSDS−PAGEにより測定したプール画分の計算されたそれらの分子量の概要は表3に示してある。プールした画分CCX、CCZ、CCY+CCW及びCCU中のタンパク質をSDS−PAGE後にウエスタンブロットによりニトロセルロース上に移し、そして精製したステムブロメラインプロテアーゼ(SBP)に対して作成されたウサギ抗血清を用いてプローブした(結果は示していない)。これらのプールした画分の全てのタンパク質バンドはその血清中の抗体により認識された。このことは、免疫学的に類似のタンパク質、多分システインプロテイナーゼ・ファミリーの酵素に属するものであることを示す。h. 等電点電気泳動プールした画分(0.5〜1.0mg/ml)を脱イオン水で1:3に希釈し、そしてpH3〜11の勾配ゲル上で泳動させた。ゲルは、レディ・ミックスIEFTMを用いて、10%v/vグリセロール、5.0%ファルマライト3−10TM及び2.5%アンホリン9−11TMを含む5.5%T、3%Cポリアクリルアミドゲルを作成した。簡単に述べると、10μlの試料と高等電点マーカーを700Vで予めフォーカシングした後のゲルの上に載せた。試料のエントリは500Vで10分間、フォーカシングは2500Vで1.5時間、そしてバンドシャープニングは3000Vで10分間であった。電気泳動の後、タンパク質を20%w/vTCA溶液で30分間固定し、TCAを除去するため脱色液中で30分間洗浄し、そしてSDS−PAGEについて述べたように(上を参照)、ブリリアント・ブルーG−250で染色した。結果図5は、CCXを除き、全ての画分が9.3pIマーカーを越えてフォーカスする塩基性タンパク質を含んでいたことを示す。局在化された電荷とクロマトグラフィー用培体の官能基との相互作用がCCXでのpI3.8と3.85のタンパク質が何故pH5.0でカチオン交換樹脂上に吸着されたかを説明するかも知れない。CCZはpI9.7の1本のバンドとして現れたが、一方プールした画分CCY、CCW、及びCCUはpH9.5〜9.8の範囲に等電点を持つ複数のバンドを含んでいた。この不均一性の少なくとも一部は共通のステムブロメラインタンパク質骨格の炭水化物部分における変動により説明することができる。その値はブロメラインに対するpI9.45〜9.55という文献(ローアンら、Methods in Enzymology,(1994), 244, 555-568)に報告されたものと一致している。プールした画分CCSは10.25よりも大きなpIの二つの塩基性タンパク質を含んでいる。外挿による推定は10.4及び10.45のpIを与える。これらはアナナイン及びコモサインに相当し、そして10よりも大きなpIの他の推定値(ローアンら、上記)と一致する。プールした画分のそれぞれにおけるタンパク質のpIは表4にまとめてある。実施例2−ブロメライン成分のNH2末端アミノ酸分析別の実験では、ブロメラインのプールした画分をSDS−PAGEにかけ、そしてPVDF膜上に上記のようにプロットした。この膜を40%v/vメタノールに溶解した0.025%w/vクーマシーブルーR−250で10分間染色し、その後50%v/vメタノール中で脱色した。この膜を室温で空気乾燥し、染色したタンパク質のNH2−末端アミノ酸配列決定を行った。簡単にのべると、そのタンパク質バンドをその膜から切断し、シーケンサーの上部カートリッジ内に置いた。ブロメライン成分のNH2−末端アミノ酸分析は、オン−ライン・フェニルチオヒダントイン・アミノ酸アナライザーを具備した気相シーケンサー(アプライド・バイオシステムズ)を用いるエドマン分解により測定された。表5は、CCZ、CCX、ステムブロメラインプロテアーゼ、アナナイン及びコモサインの最初の21個のNH2−末端アミノ酸を示す。全てのタンパク質は配列相同性を共有する。アナナインとコモサインは、ステムブロメラインプロテアーゼと比較すると、20アミノ酸のうちの2個だけ異なる。CCZは、ステムブロメラインプロテアーゼと比較すると、21アミノ酸のうち8個だけ異なる。CCZはアナナイン及びコモサインと20アミノ酸のうち6個だけ異なる。コモサインはアナナインとは2アミノ酸だけ異なる。これらのタンパク質は構造的に関連していることは明らかであるが、それらは全て別物であり、相互に相違を示す。これらのプロテイナーゼはそれらのプロテイナーゼ基質特異性及びそれらの生物学的活性も異なっている。実施例3−画分CCSはp42kDaリンタンパク質のチロシンリン酸化を且害する。a. 材料抗体 抗CD3ε−鎖mAb(145−2C11)及び抗CD28mAb(PV−1)はファーミンゲン(サンジエゴ、CA)から購入し、そしてヤギ抗ハムスターIgG・Abはシグマ(ドーセット、UK)から購入した。マウス抗ホスホチロシンmAb(4G10)、マウス抗MAPk・R2(ERK−2)mAb及びマウス抗Raf−1mAbはUBI(レイクプラシド、NY)から購入した。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)に結合したヤギ抗マウス及びヤギ抗ウサギIgG抗体はバイオ−ラド(ヘメル ヘムステッド、ハートフォードシャー、UK)から購入した。チロシンリン酸化p44及びp42MAPkを認識するウサギポリクローナル・ホスホ−特異的MAPk・IgGはニューイングランド・バイオラボズ(ヒチン、ハートフォードシャー、UK)から購入した。試薬 ホルボ−ル12ミリステート13アセテート(PMA)及びカルシウムイオノホアA23187はシグマから購入した。ブロメライン(E.C 3.4.22.4、タンパク分解活性、1.541nM/分/mg)はソルベイ・インク(ドイツ)から入手した。E−64(L−トランスエポキシスクシニルロイシルアミド−(4−グアニジノ)ブタン、選択的システインプロテアーゼ阻害剤はシグマから入手した。細胞 T細胞ハイブリドーマGA15はビー.フォックス(イムロジック・ファーマシューティカル・コーポレーション、ボストン、MA)から恵与された。GEA15は胸腺腫BW5147をI−Abと会合してKLHに特異的なTh2クローンF4と融合させることにより形成され、そして先に記述された(フォックス、1993、Int. Immunol., 5, 323-330)ように維持された。GA15は、架橋した抗CD3εmAbで刺激した後にIL−2、IL−4及びIFN−γを生産するから、Th0細胞の表現型を示す(フォックス、1993)。b. T細胞の刺激。 RPMI1640に懸濁した細胞(2×107)を食塩水(0.9%(w/v))で希釈したCCS(1〜50μg/ml)で37℃で30分間処理した。モック処理細胞は等容量の食塩水(希釈液)で処理した。CCSの高濃度(50又は100μg/ml)では、粗ブロメラインで研究したときに既に注目したように、細胞の凝集が起こった。処理後、細胞の凝集物を新鮮なRPMIで3回細胞を洗浄することにより穏和に分散させ、次いで新鮮なRPMI中に再懸濁した。細胞は、TCRに架橋したmAb(抗CD3ε)を用いて細胞表面経由で、又はPMA(20ng/ml)とイオノホア(1μM)の組合せを用いて直接的に、図の説明及びテキストに記載した回数で刺激した。TCR経由の刺激は、まずT細胞を抗CD3εmAb(20μg/ml)と氷上で30分間インキュベートすることにより行った。ついで、過剰のmAbを4℃で1回の洗浄により除去し、そして抗CD3εmAbをヤギ抗ハムスターIgG(20μg/ml)と37℃で架橋した。刺激は溶解氷冷したバッファー(25mMトリス,pH7.4、75mMのNaCl、2mMのEDTA、0.5%のトリトンX−100、2mMのオルトバナジン酸ナトリウム、10mMのフッ化ナトリウム、10mMのピロリン酸ナトリウム、74μg/mlのロイペプチン、740μMのPMSF及び74μg/mlのアプロチニン)を添加し、4℃で30分間連続的に攪拌することにより終結させた。溶解液は澄明にし(14,000×g、10分間)、そしてポストヌクレア上清に等容量の2×SDS−PAGE試料バッファー(50mMトリス,pH7、700mMの2−ME、50%(v/v)グリセロール、2%(w/v)SDS、0.01%(w/v)ブロモフェノールブルー)を添加した。タンパク質を100℃で5分間可溶化しそして1×106細胞当量を含む試料をSDS−PAGEにより分離した。c. イムノブロッティング.分離したタンパク質をニトロセルロース膜(バイオ−ラド)に移し、ついで、それをトリス緩衝化食塩水(170mMのNaCl及び50mMのトリス,pH7.4、TBS)中の5%(w/v)ウシ血清アルブミン(シグマ、フラクションV、BSA)、0.1%ノニデットP−40TMでブロックした。イムノブロットを図の説明に記した適当な抗体と共にインキュベートした。主な抗体はTBS中の0.5%(w/v)BSA、0.1%(v/v)トゥイーン−20からなる抗体希釈バッファーで4℃で2時間希釈し、その後抗体希釈バッファーで希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼに結合した適当な二次抗体で4℃で1時間検出した。各インキュベーション工程の後、膜はTBS中の0.1%のトゥイーン−20で十分に洗浄した。免疫反応性はECL化学発光検出システム(アマシャム・コープ.、アーリントンハイツ、IL)を用いて測定した。d. CCSのタンパク分解活性の阻害. CCSのタンパク分解活性を失活させるため、特異的システインプロテアーゼ阻害剤であるE−64を使用した。3μMジチオトレイトール中に希釈したCCS(25μg/ml)、100μMのE−64、60mMの酢酸ナトリウム(pH5)を30℃で10分間インキュベートした。次いで、失活したCCSを食塩水中4℃で一晩透析した。粗ブロメラインを用いた初期の研究により、これらの条件は、Z−Arg−Arg−pNA基質(上を参照)で検定したとき、タンパク分解活性の99.5%の失活を誘導するのに十分であることが示されている。T細胞をE−64で失活させたCCS(25μg/ml)で処理しそしてPMAプラスイオノホアで刺激した無処理のCCS及びモック処理T細胞と比較した。結果a. 画分CCSはp42kDaリンタンパク質のチロシンリン酸化を阻害する本発明者らはブロメラインが、PMA+イオノホアカルシウムの組合せでT細胞を刺激した後ERK−2のチロシンリン酸化を阻止することを先に示した(WO−A−96/00082)。T細胞のホルボールエステルとイオノホアによる刺激はIL−2分泌、IL−2受容体の発現、及びT細胞の増殖などのTCR刺激の多くの特徴を再現するように相乗的に働く(トルネーら、1985、Nature, 313, 318-320、レイターら、1992、EMBO, 11, 4549-4556)。ホルボールエステルは抗原受容体引金を模倣することができ、そしてTCR誘導タンパク質チロシンキナーゼをバイパスしてPKC及びp21Rasに対する直接のアゴニスト作用によりERK−2を活性化する。カルシウムイオノホアであるA23187はCa2+の細胞内放出の増加を誘導し、従って、イノシトール1,4,5−トリスホスフェート(IP3)の作用を模倣する。ホルボールエステル及びイオノホアは、しかしながら、TCRにより制御されないPKC経路(イズキールドら、1992、Mol. Cell. Biol., 12, 3305-3312)を刺激する。これはT細胞の機能を調節するT細胞内の別の細胞内経路を示唆する。従って、本発明者らはブロメラインのどの画分がTCRに無関係な経路を経るT細胞システム発信を阻止することができるかを、PMA及びイオノホア誘導チロシンリン酸化に対するその効果を検討することにより研究した。イオノホアとPMAの組合せでT細胞を刺激すると、約100kDa、85kDa、42kDa及び38kDaのタンパク質を含む幾つかのタンパク質のチロシンリン酸化が誘導された。CCS(50μg/ml)の前処理はp42kDaタンパク質のチロシンリン酸化を減少させ、そして他の基質のどれのリン酸化も有意に阻害しなかった(図6)。二つの実験で、CCSは、約36kDa、38kDa、85kDa、94kDa及び102kDaタンパク質のチロシンリン酸化を増加させたが、他の画分は増加させなかった(図7及び図8)。42kDaリンタンパク質のチロシンリン酸化を阻止するCCSの能力は投与量依存性であり(図8)そしてE−64がp42kDaリン酸化に対するCCSの阻害効果を完全に打ち消した(図8)から、この能力はそのタンパク分解活性に依存するものであった。T細胞のE−64処理はPMA及びイオノホアに誘導されるT細胞システム発信に影響を与えなかった。CCSはERK−2チロシンリン酸化を阻害する。本発明者らはCCSにより阻害された42kDaリンタンパク質がMAPk・ERK−2ではないかと疑った。そこで、本発明者らは、Tyr204でのリン酸化により触媒的に活性化されるとERK−1及びERK−2のみを特異的に検出する、特異的な抗ERK−2mAb及び抗ホスホMAPk抗体を用いてイムノブロット分析を行った。PMA+イオノホアで刺激したCCS処理細胞のイムノブロットにより、p42kDaリンタンパク質が実際にERK−2であったことが確認された(図9)。CCSはERKのTCR誘導チロシンリン酸化を減少させる。本発明者らは次にTCRにより媒介されるシグナル伝達に対するCCSの効果を架橋抗CD3εmAbで刺激したGA15の基質チロシンリン酸化を評価することにより研究した。特異的抗ホスホチロシンmAbを用いるGA15溶解物のイムノブロットにより、約120kDa、100kDa、85kDa、76kDa、70kDa、42kDa及び40kDaのタンパク質を含む多数のタンパク質のチロシンリン酸化を増加させることが明らかにされた。これはTCR連結の後の他のT細胞系で観察されたリンタンパク質と一致した(ジュンら、1990、J. Immunol., 144, 1591-1599及びProc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, 7722-7726、カントレルによる総説、1996、Annu. Rev. Immunol., 14, 259-274)(図10)。チロシンリン酸化タンパク質は刺激後2〜5分間で容易に検出されそして少なくとも10分間はリン酸化された状態に留まった(図10)。抗CD3εmAb単独で又は架橋Abで刺激されたGA15細胞はどの細胞基質のチロシンリン酸化をも誘導しなかった(データは示していない)。再び、GA15の30分間のCCS前処理は、投与量に依存して、ERK−2のTCRに誘導されるタンパク質のチロシンリン酸化の減少を惹起した(図11)。CCSは、他のTCR誘導リンタンパク質のチロシンリン酸化に顕著な影響を与えなかった。このことはCCSが選択的な作用様式を持っていることを示唆する。実施例4−CCSはRaf−1の移動度シフトを遅らせるRaf−1はERK−2を活性化するMEK−1の直ぐ上流のアクチベーターである。Raf−1の活性化は特定のセリン残基及びトレオニン残基のリン酸化を必要とする(アブルチら、1994、TIBS, 19, 279-283)。MAPキナーゼカスケードにおけるERK−2から上流の他の基質にCCSが影響を与えるか否かを研究するため、本発明者らはRaf−1に対するCCSの影響を研究した。T細胞をCCS(0〜50μg/ml)で処理し、ついで抗CD3εmAbか又はPMA+イオノホアの組合せかで前に述べたように刺激した。結果はCCSがRaf−1の移動度シフトを阻止することを示す。このことはCCSがそのタンパク質リン酸化を、従って活性化を阻止することを示す。このデータから、CCSがMAPキナーゼカスケードに対し効果を持つこと(図12)そしてCCSのこの効果はERK−2に対する直接的なものではなく、MAPkカスケード中の上流の基質に対するものであることが確認される。実施例5−IL−2生産及びT細胞増殖に対するCCSの効果a. 材料細胞 脾臓細胞は、先にWO−A−96/00082号に記述したように、雌BALB/cマウス(6〜8週齢)から単離した。高度に精製されたCD4+T細胞は磁気活性化細胞ソーティング(MACS)を用いて脾臓細胞から単離した。b. インターロイキン2生産。 PRMIで希釈したT細胞をCCS(50μg/ml)又は食塩水で37℃で30分間処理し、新鮮なRPMIで洗浄し、ついで培養培地に再懸濁した。T細胞は、固定化抗CD3ε(4μg/ml)及び可溶性抗CD28(10μg/ml)により、サイトカインmRNAを生産するように刺激した。PBSで希釈した抗CD3εmAbを、4℃で16時間インキュベートすることにより、24ウエルの平底ミクロ培養プレート(コーニング、コーニング、NY)に固定した。ついで、ウエルをPBSで3回洗浄した後、加湿5%CO2中で37℃で24時間インキュベートした脾臓細胞か又は精製CD4+T細胞(2.5〜5×106細胞/ウエル)の培養物を3連で添加した。培養上清中のIL−2のレベルはCTL−Lバイオアッセイ(ギリスら、1978、J. Immunol., 120, 2027-2032)を用いて測定した。c. T細胞増殖。 T細胞はCCS(50μg/ml)で30分間処理し、RPMI中で洗浄し、ついで固定化抗CD3εmAb単独で又は抗CD3εmAbプラス抗CD28mAbの組合せで刺激した。次に、細胞を、96ウエル平底プレート(ヌンク)中、ウエル当たり105細胞で、36時間培養した。培養は、グラスファイバーフィルター上で収穫する12時間前に、0.5μCiの〔3H〕TdRでパルスした。結果a. CCSはCD4+T細胞のIL−2生産及び増殖を阻害するp21Ras、Raf−1、MEK−1及びERKの活性化はT細胞におけるIL−2転写の誘導のために必須である(イズキールドら、1993、J. Exp. Med., 178, 1199)。IL−2はT細胞の増殖を誘導する主要なオートクリン(自己分泌性)T細胞成長因子である。従って、ここに明らかにしたERK活性化の欠如はIL−2生産及びT細胞増殖を阻害すると予想することができる。従って、本発明者らはCCSがT細胞シグナル発信の機能的結果、すなわちマウス脾臓細胞及び高度に精製されたCD4+T細胞におけるIL−2生産及び増殖を達成できるかどうかを研究した。精製されたCD4+T細胞のCCS(50μg/ml)処理は、ERK経路が抗CD3εmAbで刺激されたとき、IL−2生産及び増殖の両方を減少させた(図13a及び13b)。CCSは脾臓細胞によるIL−2生産をも阻止した。しかしながら、それは脾臓細胞の増殖には影響を与えなかった(図14a及び14b)。このことはこれまで未同定のCCS中の成分が脾臓細胞培養の附属の細胞集団、例えばB細胞やマクロファージなどに作用していたことを示唆する。ブロメラインはB細胞に対する作用を介してT細胞への共刺激性のシグナルを増加させることができる。附属細胞に対するCCSの推定的効果に関係なく、データは、CCSが精製CD4+T細胞のIL−2生産及び増殖を阻止することを明瞭に示しており、このことはCCSがT細胞の活性化を阻止することを示唆する。IL−2生産及び増殖は、組織培養培地単独で培養された細胞ではサイトカインは検出されなかったから、抗TCR抗体による細胞刺激に依存していた(図13及び図14)。実施例6−イン・ビトロでのヒト腫瘍細胞の成長に対するCCSの効果a. 材料細胞 腫瘍細胞系はエル.ケランド(インスティチュート・オブ・キャンサー・リサーチ、サットン、UK)から提供された。それは次のものであった。卵巣(SKOV−3、CH−1、A2780)、結腸(HT29、BE、LOVO)、乳房(MCF−7、MDA231、MDA361)、肺(A549、CORL23、MOR)及びメラノーマ(G361、BOO8、SKMe124)。b. ヒト腫瘍細胞系の成長阻害。研究は、エル.ケランド(インスティチュート・オブ・キャンサー・リサーチ、サットン、UK)により行われた。細胞系をトリプシン処理し、個々の生存細胞を、4×103細胞/ウエルの密度で160μlの成長培地を含む96ウエルミクロタイタープレート中に蒔いた。一晩接着させた後、次に40μlの成長培地中のCCSを最終濃度が50、10、2.5、1及び0.25μg/mlとなるように、4連のウエルに添加した。8個のウエルを対照、無処理のウエルとして使用した。CCSは細胞に添加する直前に無菌水で希釈した。細胞へのCCSの接触は96時間であった。そこで、各ウエルの細胞数を、先に記述された(ケランドら、1993、Cancer Res., 53, 2581-2586)ように1%酢酸中の0.4%スルホロ−ダミンBで染色することにより測定した。ついで、50%阻害濃度(IC50値、μg/ml)を濃度対対照(%)吸光度(540nmでの読み)のプロットから計算した。結果a. CCSはイン・ビトロでヒト腫瘍の成長を阻害する。 p21Ras及びRaf−1は重要なオンコジーンであり、突然変異すると、制御できない細胞成長及び増殖を惹き起こし、癌をもたらす。本発明者らはCCSがp21Ras/Raf−1/MEK1/ERKキナーゼシグナル発信カスケードの効果を阻止することを示したから、CCSが腫瘍の成長を阻止することができるか否かを研究した。ヒト腫瘍細胞のCCS処理は幾つかの異なる卵巣、肺、結腸、乳房及びメラノーマ腫瘍細胞系の成長をイン・ビトロで減少させる結果を生じた(図15)。CCSははすべての細胞系に等しく影響することはなかった。このことはCCSが選択的作用を有していることを示唆する。配列表配列番号:1配列の長さ:21配列の型:アミノ酸トポロジー:直鎖状配列の種類:ペプチドフラグメント型:N末端フラグメント配列配列番号:2配列の長さ:18配列の型:アミノ酸トポロジー:直鎖状配列の種類:ペプチドフラグメント型:N末端フラグメント配列配列番号:3配列の長さ:21配列の型:アミノ酸トポロジー:直鎖状配列の種類:ペプチド配列配列番号:4配列の長さ:20配列の型:アミノ酸トポロジー:直鎖状配列の種類:ペプチドフラグメント型:N末端フラグメント配列配列番号:5配列の長さ:20配列の型:アミノ酸トポロジー:直鎖状配列の種類:ペプチドフラグメント型:N末端フラグメント配列 SDS−PAGEで測定したとき約15.07kDa、25.85kDa及び27.45kDaの分子量を持つタンパク質を含み、そして下記の方法、すなわちi. pH5.0の酢酸バッファー中にブロメラインを溶解し、ii. S−セファロース上300mlを越える酢酸バッファー中の0〜0.8M塩化ナトリウムの直線勾配で溶出するファスト・フロー高速液体クロマト グラフィーによりブロメラインの成分を分離し、iii. カラムから溶出する最後の二重ピークに対応する画分を集める方法、により得ることができるブロメラインの成分。 医薬に使用するための、特に、i. T細胞の活性化、ii. MAPキナーゼ経路の活性化、又はiii. 成長因子又はサイトカインの生産、により媒介される疾病又は状態の治療又は予防に、又は癌の治療又は予防に使用するための、請求項1記載のブロメラインの成分。 細胞の成長及び増殖を制御している経路を調節するための、請求項1又は請求項2記載のブロメラインの成分。 細胞による成長因子又はサイトカインの生産を阻害するための、請求項1又は請求項2記載のブロメラインの成分。 MAPキナーゼ経路の活性化を阻害するための、請求項1又は請求項2記載のブロメラインの成分。 T細胞の活性化を阻害するための、請求項1又は請求項2記載のブロメラインの成分。 免疫抑制剤として使用するための、請求項1又は請求項2記載のブロメラインの成分。 成長因子及びサイトカインの生産を阻止するため、又は自己免疫疾患、宿主による移植拒否、アレルギー反応、毒物ショック、アポプトシス、寄生体又は病原体の感染又は癌を治療又は予防するための、請求項1又は請求項2記載のブロメラインの成分。 細胞の成長及び増殖を制御する細胞内シグナル発信経路を調節するための薬剤の調製における、請求項1又は請求項2記載のブロメラインの成分の使用。 細胞による成長因子及びサイトカインの生産を阻害するための薬剤の調製における、請求項1又は請求項2記載のブロメラインの成分の使用。 MAPキナーゼ経路の活性化を減少又は防止するための薬剤の調製における、請求項1又は請求項2記載のブロメラインの成分の使用。 免疫抑制剤の調製における、請求項1又は請求項2記載のブロメラインの成分の使用。 炎症性疾患又は炎症性症状を治療又は予防するための薬剤の調製における、請求項1又は請求項2記載のブロメラインの成分の使用。 i. T細胞の活性化、ii. MAPキナーゼ経路の活性化、又はiii.成長因子又はサイトカインの生産、により媒介される疾患又は状態の治療又は予防のため、又は癌の治療又は予防のための薬剤の調製における、請求項1又は請求項2に記載のブロメラインの成分の使用。 成長因子及び他のサイトカインの生産を阻止するための又は自己免疫疾患、宿主による移植拒否、アレルギー反応、毒物ショック、アポプトシス、寄生体又は病原体の感染又は癌の治療又は予防のための薬剤の調製における、請求項1又は請求項2記載のブロメラインの成分の使用。 薬学的に又は獣医学的に許容され得る賦形剤と共に請求項1又は請求項2に記載のブロメラインの成分を含んで成る薬学用又は獣医用の組成物。 経腸投与に適する、請求項16記載の薬学用又は獣医用の組成物。 該経腸投与が経口投与、経鼻投与、バッカル投与、局所投与又は肛門投与である、請求項17記載の薬学用又は獣医用の組成物。 非経口投与に適する、請求項16記載の薬学用又は獣医用の組成物。 該非経口投与が静脈内、皮下、筋肉内又は腹腔内ルートによる投与である、請求項19記載の薬学用又は獣医用の組成物。 経口投与に適しかつ腸溶被覆製剤である、請求項16記載の薬学用又は獣医用の組成物。