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タイトル:特許公報(B2)_カフェイン酸フェネチル・エステル(CAPE)、CAPEの誘導体、カプサイシン(8―メチル―N―バニリル―6―ノネンアミド)及び樹脂分泌毒素による核転写ファクターNF―κBの抑制
出願番号:1998512880
年次:2007
IPC分類:A61K 31/165,A61K 31/216,A61P 9/10,A61P 29/00,A61P 35/00,A61P 37/06,A61P 43/00,C12N 5/06


特許情報キャッシュ

アガルワル,バーラート ビィ. グランベルゲール,デザイダー JP 3987120 特許公報(B2) 20070720 1998512880 19970904 カフェイン酸フェネチル・エステル(CAPE)、CAPEの誘導体、カプサイシン(8―メチル―N―バニリル―6―ノネンアミド)及び樹脂分泌毒素による核転写ファクターNF―κBの抑制 リサーチ ディベロップメント ファンデーション 五十嵐 和壽 アガルワル,バーラート ビィ. グランベルゲール,デザイダー US 60/024,602 19960905 20071003 A61K 31/165 20060101AFI20070913BHJP A61K 31/216 20060101ALI20070913BHJP A61P 9/10 20060101ALI20070913BHJP A61P 29/00 20060101ALI20070913BHJP A61P 35/00 20060101ALI20070913BHJP A61P 37/06 20060101ALI20070913BHJP A61P 43/00 20060101ALI20070913BHJP C12N 5/06 20060101ALI20070913BHJP JPA61K31/165A61K31/216A61P9/10A61P29/00A61P35/00A61P37/06A61P43/00 111C12N5/00 E C12N 5/00 A61K 31/00 CA(STN) REGISTRY(STN) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.93, pp.9090-9095 (August 1996) 7 US1997015551 19970904 WO1998009620 19980312 2001523085 20011120 19 20040824 田村 明照 発明の背景発明の分野本発明は一般的には核転写ファクターNF−κBの抑制剤と、ヒトにおける病態状態の措置におけるこれら抑制剤の使用に関するものである。具体的には、本発明はカフェイン酸フェネチル・エステル(CAPE);CAPEの5,6−ジヒドロキシ、二環式誘導体;CAPEの2,5−ジヒドロキシ誘導体;カプサイシン(8−メチル−N−バニリル−6−ノネンアミド);及び樹脂分泌毒素、及び、毒によるショック、急性炎症状態、急性位相反応(phase response)、アテモーム性動脈硬化症、及び癌などの病態状態の措置におけるこれら抑制剤の使用方法に関するものである。関連技術の説明核転写ファクターNF−κBはB細胞に固有の蛋白質であり、免疫グロブリン軽鎖κ座エンハンサ領域内の特殊なDNA配列に結合する。ハエから哺乳動物までの種々の生物で、転写ファクターNF−κBファミリーの仲間が確認されている(Nolanら、Curr. Opin. Genet. Dev, 2:211−20(1992);Liouら、Curr. Opin. Genet. Dev. 5:477−87(1993);及びBaeuerle及びHenkel, Annu. Rev. Immunol. 12:141−79(1994)参照)。この転写ファクター・ファミリーの仲間は35〜61%の範囲で相互に類似しており、約300個のアミノ酸によるRel相同領域を有している。哺乳動物においては、最も広く分布したκB結合ファクターはp50及びp65(Rel−A)蛋白質で構成されたヘテロダイマである。この転写ファクターは種々の反応で中心的な役割を果し、遺伝子表現を急速に誘発することにより、宿主防衛を果たす。特に、それは種々の炎症性サイトカイン類、主要組織互換性複合遺伝子、及び腫瘍転移に関与する粘着分子の表現を制御する。NF−κB及びその従属遺伝子の制御不良は毒性/腐敗性ショック、移植vs宿主反応、急性炎症状態、急性位相反応、ウイルス増殖、放射線損傷、アテローム性動脈硬化症、及び癌を含む種々の病態状態に関連している(Baeuerle及びHenkel, Annu. Rev. Immunol. 12:141−79(1994);及びSiebenlistら、Annu. Rev. Cell. Biol. 10:405−55(1994)参照)。他の転写ファクターと違って、NF−κB蛋白質はIκBaと呼ばれる抑制性サブユニットによって不活性状態の細胞質内に保持される。IκBのホスホリル化とその後の劣化はNF−κBの核への転写を可能にする。この活性化は炎症性サイトカイン類(例えば、腫瘍壊死ファクター(TNF、リンフォトキシン(LT)、及びインターロイキン(IL)−1など)、ミトゲン、バクテリア生産物、蛋白質合成抑制剤、酸化ストレス(H2O2)、紫外線、及びフォルボル・エステルなどの多くの作用因子によって誘発される。NF−κBの活性化を下方調節することができる作用因子はこれらの病態状態の治療的措置のために用いることができる。本発明はいくつかのそうした作用因子に関するものである。ひとつの作用因子はカフェイン酸(3,4−ジヒドロキシ・シナモン酸)フェネチル・エステル(CAPE)、蜜蜂の巣からのプロポリスの活性成分であるフラボノイドの構造的関連物である。それは抗ウイルス性、抗炎症性、及び免疫調節性を有しており、種々のタイプの転写細胞の成長を抑制することが示されている(Grunbergerら、Experientia 44:230−32(1988);Burkeら、J. Med. Chem. 38:4171−78(1995);Suら、Cancer Res. 54:1865−70(1994);Suら、Mol. Carcinog. 4:231−42(1991);Hlandonら、Arzneim-Forshc/Drug Res. 30:1847−48(1980);及びGuarini, L. ら、Cell Mol. Biol. 38:513−27(1992)参照)。形質変換された細胞においては、CAPEはレドックス状態を変え、アポプトシスを誘発する。さらに、CAPEは脂質の過酸化を抑制し、抗毒性作用を示し、そして、オロイチン・デカルボキシナーゼ、蛋白質チロシン・キナーゼ、及びリポキシジェナーゼ活性を抑制することが報告されている。CAPEはまたフォルボル・エステル誘発H2O2生産と腫瘍促進も抑止することができることも報告されている(Bhimaniら、Cancer Res. 53:4528−33(1993)及びFrenkelら、Cancer Res. 53:1255−61(1993)参照)。この開示に示されている別のこうした下方調節剤はカプサイシンである。カプサイシンは分子量が305.42のホモバニリン酸誘導体(8−メチル−N−バニリル−ノネンアミド)である。それはとうがらし属のレッド・ペッパーの活性成分であり、群発性頭痛、帯状、及び血管運動性鼻炎の局所的治療のためにヒトにおいて用いられてきている(Holzer. P., Pharmacol. Rev. 43:143(1994)、Sicuteriら、Med. Sci. Res. 16:1079(1988);Watsonら、Pain 33:333(1988);Marabiniら、Regul. Pept. 22:1(1988)参照)。イン・ビトロでカプサイシンは細胞成長、コラーゲナーゼ合成、そしてリューマチ性関節炎滑液細胞からのプロスタグランジン分泌を規制する(Matucci-Cerinicら、Ann. Rheum. Dis. 49;598(1990)参照)。カプサイシンはまた、リンパ球増殖、抗体生産、及び好中球走化性を規制するその能力が示しているように免疫調節性であることが示されている(Nilssonら、J. Immunopharmac. 10:747(1988);Nilssonら、J. Immunopharmac, 13:21(1991);及びEglezosら、J. Neuroimmunol. 26:131(1990)参照)。これらの作用は関節炎の治療のためのカプサイシンの使用において重要な役割を果す。加えて、カプサイシンはミトコンドリアの膨張を誘発し、NADHオキシダーゼを抑制し、形質変換細胞のアポプトシスを誘発し、アデニル化シスラーゼを刺激し、蛋白質キナーゼCを活性化し、過酸化陰イオンの発生を抑制し、細胞のレドックス状態を変性させる。カプサイシンの種々の作用は樹脂分泌毒素も持っているバニロイド受容体と称される特殊な細胞性受容体によって媒介される。カプサイシンと同様、樹脂分泌毒素もとうだいぐさ属の植物から誘導されたアルカロイドである。樹脂分泌性毒素はカプサイシンの構造的類似体である(図1参照)。樹脂分泌毒素は別の結合箇所と相互作用して蛋白質キナーゼCを活性化されるホルボル・エステル類(ホルボル・ミリステート・アセテート)とも構造的に類似している(Szallasiら、Neurosci. 30:515(1989);及びSzallasi及びBlumberg, Neurosci. 30:515(1989)参照)。樹脂分泌性毒素とは違って、カプサイシンはホルボル・ミリステート・アセテートとは類似性を持っていないが、樹脂分泌性毒素と同様に蛋白質キナーゼCを活性化させるので、後者の活性は樹脂分泌性毒素上のホルボル・エステル上の分子集団によるものではないらしい。樹脂分泌性毒素はカプサイシンの作用の多くを模倣することが示されている。従って、カフェイン酸フェネチル・エステル(CAPE);CAPEの2,5−ヒドロキシ誘導体;CAPEの5,6−ジヒドロキシ、二環式誘導体、カプサイシン(8−メチル−N−バニリル−6−ノネンアミド)、及び樹脂分泌性毒素による可能転写ファクターNF−κBの抑制はこれまでの技術では知られていない。NF−κBの抑制は炎症性サイトカイン類、ミトゲン類、酸化性ストレス、ホルボル・エステル及びその他の作用因子によるNF−κBの活性化から起きる種々の病態状態の措置における重要なステップである。本発明はそうした病態状態を措置するために長年のニーズと期待を満たすものである。発明の要約本発明のひとつの目的は種々の抑制剤を用いてNF−κBの活性化を抑制するための方法を提供することである。本発明のひとつの実施の形態においては、抑制剤カフェイン酸フェニチル・エステル(CAPE)が提供される。本発明の別の実施の形態においては、NF−κBの抑制剤、カフェイン酸フェネチル・エステル(CAPE)の2,5−ジヒロドキシ誘導体が提供される。本発明のさらに別の実施の形態においては、NF−κBの抑制剤である、カフェイン酸フェネチル・エステル(CAPE)の二環式、5,6−ジヒロドキシ誘導体が提供される。本発明のさらに別の実施の形態においては、抑制剤カプサイシン(8−メチル−N−バニリル−6−ノネンアミド)が提供される。本発明のさらに別の実施の形態においては、NF−κBの抑制剤として樹脂分泌性毒素が提供される。本発明の別の目的はカフェイン酸フェネチル・エステル(CAPE)、CAPEの5,6−二環式ジヒドロキシ誘導体、CAPEの2,5−ジヒドロキシ誘導体、カプサイシン(8−メチル−N−バニリル−6−ノネンアミド)、あるいは樹脂分泌性毒素を措置されるべき個人に投与するステップを含む、個体内でのNF−κBの活性化によって惹起される病態状態を措置するための方法を提供することである。本発明のこの側面での種々の実施の形態は、カフェイン酸フェネチル・エステル(CAPE)、CAPEの5,6−二環式ジヒドロキシ誘導体、CAPEの2,5−ジヒドロキシ誘導体、カプサイシン(8−メチル−N−バニリル−6−ノネンアミド)、あるいは樹脂分泌性毒素を措置されるべき個人に投与するステップを含む、毒性/腐敗性ショック、移植vs宿主反応、急性炎症性状態、急性移相反応、ウイルス性感染症、放射線障害過敏症、アテローム性動脈硬化症、及び癌などの病態状態を措置するための方法の提供を含んでいる。本発明のその他の、そしてさらなる側面、特徴、及び利点は本発明の現段階での好ましい実施の形態に関する以下の説明を参照することでさらに明らかになるであろう。これらの実施の形態は開示の目的のために提供されるものである。図面の説明図1.CAPEによるTNF−依存NF−κBの抑止の容量応答及び動力学を示す。1A:U937細胞(2×106/ml)を図に示す濃度で37℃の温度下で2時間予備培養して、その後で0.1nM TNFによって15分間培養した。1B上側パネル:NF−κB活性化のスーパーシフト及び特殊性分析の目的で、未措置及びTNF(0.1nM)処置細胞から核抽出物を作成して、抗体で30分間培養して、その後、NF−κBに関する評価を行った。1B下側パネル:25μg/ml CAPEで37℃の温度で時間を変えて培養し、その後、0.1nM TNFを使った場合と使わない場合の両方の条件で37℃の温度で15分間NF−κB活性に関するテストを行った。(−)はCAPEがTNF添加前に存在していたこと、(0)はTNFとの共培養、そして(+)はCAPEがTNF後に添加されたことをそれぞれ示している。措置後に、核抽出物を作成してNF−κBに関する評価を行った。それぞれの単位はそれぞれの帯内に存在する放射活性の相対的量を示している。図2.ホルボル・ミリステート・アセテート、セラミド、オカダ酸、及びH2O2に媒介されたNF−κBの活性化に対するCAPEの影響が示されている。U937細胞(2×106/ml)をCAPE(25μg/ml)で37℃の温度で120分間培養して、その後、ホルボル・ミリステート・アセテート(100ng/mlで60分間)、あるいはH2O2(0.5mMで30分間)、あるいはセラミド−C8(10μMで30分間)あるいはオカダ酸(500nMで30分間)のいずれかで、37℃の温度下で措置して、それからNF−κB活性化に関するテストを行った。ホルボル・ミリステート・アセテートで媒介された活性化に関して行われた電気泳動移動性シフト・アッセイは他のものとは切り離して行われた。図3.NF−κBのDNAへの結合に対するCAPEの影響が示されている。3Aの場合、TNF活性化U937細胞から調製された核抽出物を37℃の温度で、図示されている濃度のCAPEで30分間培養して、その後、NF−κB活性化に関する分析を行った。3Bの場合、未措置細胞からの細胞質抽出物を図示されている濃度のCAPEが存在している場合と存在してない場合の両方の条件下でデオキシコレートで措置して、NF−κB活性化に関する分析を行った。図4.AP−I,Oct−I,及びTFII D転写ファクターに対するCAPEの影響を示す。細胞を25μg/mlのCAPEで2時間、37℃の温度下で措置して、核抽出物を作成して、電気泳動移動度シフト・アッセイに用いた。図5.IκBaのTNFに媒介された劣化と細胞質及び核内のp65のレベルに対するCAPEの影響を示す。CAPE(25μg/ml)を用いた場合と用いない場合の両方の条件で2時間予備処理したU937細胞(2×106/ml)をTNFを用いた場合と用いない場合の両方の条件で時間を変えて培養し、その後、IκBa(上側パネル)に対する評価を行った。p65に関しては(下側パネル)、CAPE(25μg/ml)を用いて、あるいは用いないで37℃の温度で2時間予備処理した細胞をTNF(0.1nM)を用いて、あるいは用いないで15分間培養して、核及び細胞質抽出物を作成し、ウェスタン・ブロット分析でp65に関する分析を行った。図6.CAPEが誘発したNF−κBの活性化に対するDTT,BME及びDMPの影響を示す。U937細胞(2×106/ml)をDTT(100μM)、BME(142μM)、あるいはDMP(100μM)で、CAPE(25μg/ml)の存在している場合と存在していない両方の条件で2時間培養して、TNF(0.1nM)を用いて15分間活性化させ、その後、NF−κB活性化に関する評価を行った。図7:CAPEの種々の類似体の構造(7A)と、TNF誘発NF−κB活性化に対するそれらの影響(7B)を示す。U937細胞(2×106/ml)をCAPEの種々の類似体(25μg/ml)を用いて37℃の温度で2時間培養して、TNF(0.1nM)を用いて(上側パネル)、あるいは用いないで(下側パネル)、15分間活性化させ、そしてNF−κB活性化に対する評価を行った。CはTNFで措置しただけの場合、そしてPは親化合物CAPEで措置してからTNFで措置した場合を示す。それぞれの単位は存在している放射活性の相対量を示す。図8.カプサイシン、樹脂分泌性毒素、及びホルボル・ミリステート・アセテートの化学構造の類似性を示している。図9.TNF依存NF−κBの抑制に対するカプサイシンの用量応答及び動力学を示す電気泳動移動度シフト・アッセイの結果を示す。9A:ML−1a細胞(2×106/ml)を種々の濃度のカプサイシンを用いて37℃の温度で2時間予備培養してから、0.1nM TNFを用いて、あるいは用いないで15分間培養した。9B:細胞(2×106/ml)を300μMカプサイシンを用いて37℃の温度で予備培養して、その後、種々の濃度でのTNFを用いて37℃で15分間培養して、NF−κB活性化に関するテストを行った。9C:ML−1a細胞(2×106/ml)を300μMカプサイシンを用いて37℃の温度で時間を変えて予備培養してから、0.1nM TNFを用いて37℃で15分間培養してNF−κB活性化に関するテストを行った。(−)はTNF添加前にカプサイシンが存在した時間を示し、(0)はTNFでの共培養を示し、そして(+)はTNF後にカプサイシンが加えられた時間を示す。これらの措置後、核抽出物を示し、NF−κBに関する評価を行った。図10.樹脂分泌性毒素によるTNF依存NF−κB活性化抑制の用量応答を示す。細胞(2×106/ml)を図示されているような異なった濃度で2時間、37℃の温度で予備培養して、0.1nMのTNFを用いて37℃で30分間活性化させてから、NF−κBに関するテストを行った。これらの措置の後、核抽出物を作成して、NF−κBに関する評価を行った。UTは未処理細胞を示す。図11.NF−κB活性化に対するカプサイシンの影響のスーパーシフト・アッセイと特殊性。パネル(A)の場合、未措置、あるいはTNFで措置した(0.1nM)細胞(2×106/ml)から核抽出物を作成して、抗体と共に30分間培養して、NF−κBに関する評価を行った。パネル(B)の場合、細胞をいろいろな濃度のカプサイシンで2時間、そしてTNFで15分間措置し、細胞質抽出物を作成し、これらの抽出物を8%デオキシコレートで措置して、電気泳動移動度シフト・アッセイで評価を行った。パネル(C)の場合、TNFで措置した細胞からの核抽出物を種々の濃度のカプサイシンで15分間培養して、電気泳動移動度シフト・アッセイでNF−κBに関する分析を行った。図12.NF−κBの種々のアクチベータ(ホルボル・ミリステート・アセテート及びオカダ酸)に対するカプサイシンの影響を示す。パネル12Aの場合、ML−1a細胞(2×106/ml)をカプサイシンで37℃の温度で2時間予備培養してから、ホルボル・ミリステート・アセテート(25ng/ml)かオカダ酸(500nM)あるいはTNF(0.1nM)のいずれかで30分間措置してから、NF−κB活性化に関するテストを行った。100倍過剰な冷たい、あるいは突然変異させたオリゴヌクレオチドを用いて結合の特殊性を調べた。Mut.プローブと表示したラベルの場合、突然変異プローブはラベルされ、結合テストに用いられた。パネル12Bでは、U937又はHela細胞(2×106/ml)を図示された濃度のカプサイシンを用いて37℃の温度で2時間予備培養してから、TNF(0.1nM)で15分間培養し、その後、NF−κBに関するテストを行った。図13.TNF誘発IκB劣化とp65のレベルに対するカプサイシンの影響を示す。13A:37℃の温度で300uMカプサイシンで2時間予備処理した場合と、しない場合の両方のML−1a(2×106/ml)細胞ををTNF(0.1nM)を用いて時間を変えて培養し、その後ウエスタン・ブロット分析でシトソリック画分内でIκBに関する評価を行った。SとNは遅い、及び通常移動帯を示している。13B:細胞をカプサイシンを用いて時間を越えて措置してから、シトソリック画分内でIκBあるいはp65に関する評価を行った。13C:カプサイシンで2時間予備処理したML−1a(2×106/ml)細胞をTNF(0.1nM)で30分間培養してから、核抽出物及び細胞質抽出物をウエスタン・ブロット分析でp65に関して評価した。13D:細胞を種々の濃度のカプサイシンで2時間予備処理してから、TNF(0.1nM)を用いて、あるいは用いないで15分間処理して、その後シトソリック画分をp50又はc−Relに関してウエスタン・ブロット分析で評価を行った。図14.CAT遺伝子に結合したIκBaプロモータの活性に対するカプサイシンの影響を示す。細胞をpIκBCAT及びpmutIκBCATで感染させて、300μMのカプサイシンで2時間処理して、0.1nM TNFに1時間露出させ、CAT活性に関する評価を行った。結果は未処理の比較対象と比較して数倍の活性を示した。添付図面は、本発明の上に述べたような特徴、利点、及び目的がより明確になる、詳細に理解されるようにここに開示するものである。これらの図面は明細書の一部を形成する。なお、添付図面は本発明の好ましい実施の形態を示すものであって、本発明の範囲の限定は意図していない。発明の詳細な説明本発明の範囲と精神を逸脱しないでここに述べられている発明に対して種々の置換や修正が可能であることは当業者には明らかであろう。ここで用いられている『核ファクターNF−κB』あるいは“NF−κB”という用語は免疫グロブリン軽鎖κ鎖エンハンサー配座内で特定のDNA配列(5−GGGGACTTTCC−3)に結合するB細胞に固有の蛋白質を意味し、哺乳動物においてはp50及びp65(Rel−A)蛋白質で構成されるヘテロダイマである。NF−κBは遺伝子表現の急速な誘発を通じて宿主防衛に導く種々の反応において中心的な役割を果たし、種々の炎症性サイトカイン、種々の組織互換性複合遺伝子、及び腫瘍転移に関与する粘着分子の表現を制御する。ここで用いられている『CAPE』という用語はカフェイン酸(3,4−ジヒドロキシシンナミン酸)フェネチル・エステルを意味する。ここで用いられている『CAPEの5,6−ジヒドロキシ、二環式誘導体』という用語は図7A化合物no. 6に示されているCAPE類似体分子を意味する。ここで用いられている『CAPEの2,5−ジヒドロキシ誘導体』という用語は図7A化合物no. 1に示されているCAPE類似分子を意味している。ここで用いられている『カプサイシン』という用語は分子量が305.42のホモバニル酸誘導体、8−メチル−N−バニリル−6−ノネンアミドを意味する。ここで用いられている『樹脂分泌性毒素』という用語は図8Bに示すカプサイシンの構造的類似体を意味する。ここで用いられている『病態状態』という用語は疾病に関連した、あるいはそれによって惹起される状態を意味する。そうした状態には、毒性あるいは腐敗性ショック、移植vs宿主反応、急性炎症性状態、急性位相応答、ウイルス増殖、放射線障害、アテノーム性動脈硬化症、及び癌を含む。ここで用いられている『治療的に有効な量』という用語は生理学的に有意で個人の健康を改善する薬剤の量を意味する。その存在が受容するヒトの生理に変化をもたらす場合に、その薬剤は『生理学的に有意』である。例えば、ひとつの病態状態において、その状態を取り除くか、あるいはその一層の進行を停止させる薬剤の投与は生理学的に有意であると共に治療的に有効であると考えられる。ここで用いられる『CAT』という用語はクロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼを意味する。本発明は種々の抑制剤を用いてのNF−κBの活性化の抑止する方法に関連している。さらに、NF−κBの活性化によって引き起こされる個人の病態状態を措置する方法の提示も考えられる。治療的な応用のために、分子薬学の分野の当業者は、それ程の経験がなくても、本発明によるNF−κB活性化の新しい抑制剤の適切な容量とその投与の経路を決めることができるであろう。以下の実施例は本発明の種々の実施の形態を示すために開示されるもので、いかなる意味でも本発明の限定は意図していない。実施例1材料:ペニシリン、ストレプトマイシン、PRMI1640培地、及び仔ウシ胎児血清をGIBCO(Grand Island, NY)から入手した。ホルボル・エステルと仔ウシ血清アルブミンはSigma Chemical社(St. Louis, MO)から入手した。比活性が5×107単位/mg程度まで精製されたバクテリア誘導遺伝子組換えヒトTNFはGenentech社(South San Francisco, CA)によって提供されたものである。IκBに対する抗体、サイクリンD1、及びNF−κBサブユニットp50及びp60とAP−I及びOct−Iコンセンサス配列を有する二本鎖オリゴヌクレオチドはSanta Cruz Biotechnology社(Santa Cruz, CA)から入手した。セラミド(C8)はCalbiochem(San Diego, CA)から入手した。トリス・グリシン、NaCl,SDS、樹脂分泌性毒素、ホルボル・ミリステート・アセテート、クロラムフェニコール、及び仔ウシ血清アルブミンはSigma Chemical社(St. Louis, MO)から入手した。比活性がmモルあたり7000Ciの32Pでラベルしたγ−ATPはICN(Costa Mesa, Ca)から入手した。オカダ酸(OA)はLC Laboratories(Woburn, MA)から、カプサイシンはTocris Cookson社(St. Louis, MO)から、アセチル補酵素AはPharmacia Biotech(Alameda, CA)から、そして三重水素化補酵素AはAmersham Life Sciences社(Arlington Heights, IL)からそれぞれ入手した。GIBCO−BRLカルシウム・ホスフェート転写システム−キット(Cat. #18306−019)はLife Technologies社(Madison, WI)から入手した。CAPEとその類似体:構造と活性の関係について調べるために、CAPEのいくつかの類似体をGrunbergerら、Experientia 44:230:32(1988)及びBurkeら、J. Med. Chem. 38:4171−78(1995)に述べられている方法に従って合成された。これらの類似体には環置換基、エステル基、回転的に制約された変種及び飽和アミド類似体などであった。CAPEとその類似体の保存は50%エタノール内で1〜5mg/mlで行われ、その希釈は細胞培養培地で行われた。細胞株:CAPEを調べるために、ヒト組織細胞株U937細胞をグルタミン(2mM)、ジェンタミシン(50mg/ml)、及び仔ウシ胎児血清(FBS)(10%)で補強したRPMI1640培地で通常の方法で成長させた。これらの細胞を10mlの培養液を含んだT25フラスコ(Falcon3013, Becton Dickinson Labware, Lincoln Park. NJ)内に1×105細胞/mlの密度で入れて、空気95%、CO2 5%の雰囲気内で37℃の温度下で成長させた。細胞培養は3〜4日毎に分割した。GenProbe社(San Diego, CA)から購入したDNAに基づくアッセイ・キットを用いてマイコプラズマ汚染についてテストした。カプサイシン及び樹脂分泌性毒素での調査を、Ken Takeda(昭和大学、日本)から提供していただいたML−1a、ヒト骨髄芽腫性白血病細胞株と、ATCCから入手したU937及びHeLa細胞株を用いて行った。これらの細胞をグルタミン(2mM)、ゲンタミシン(50mg/ml)、及び仔ウシ胎児血清(FBS)(10%)で補強したRPMI1640培養液内で通常の方法で成長させた。これらの細胞を10mlの培養液を含んT25フラスコ(Falcon3013, Becton Dickinson Labware, Lincoln Park, NJ)内に1×105細胞/mlの密度で入れて、空気95%及びCO2 5%の雰囲気内で37℃の温度で成長させた。細胞培養体は3日毎、又は4日毎に分割した。DNA構成物:IκBaプラスミド、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子に結合された0.2kb上流フラグメントを含むpIκBCAT、及びこれも0.2kbフラグメントを含んでいるがCATに結合された突然変異されたNF−κBサイトを有するプラスミドpmut IκBCATはM. D. Anderson Cancer Center, Houston, TXのPaul Chicagoによって提供していただいた。これらのプラスミドの特徴付けはSchreiberら、Nucleic Acids Res. 17:6419(1989)で詳細に述べられている。実施例2電気泳動移動度シフト・アッセイ:これらのアッセイはChaturvediら、J. Biol. Chem. 269:14575−83(1994)、及びSchreiberら、Nucleic Acids Res. 17:6419(1989)に詳細に述べられている方法に従って行った。簡単に言うと、2×106個の細胞を冷たいホスフェート緩衝食塩水(PBS)で洗浄して、リシス緩衝液(10m MHEPES pH7.9, 10mM KCl,0.1mM EDTA,0.1mM EGTA,1mM DTT,0.5mM PMSF,2.0mg/mlリューペプチン、2.0mg/mlアプロチニン、及び0.5mg/mlベンザミジン)内に懸濁させた。これらの細胞は氷上で15分間膨張させ、その後、12.5mlの10%NP−40を加えた。このチューブを10秒間活発に回転させて、ホモジェネートを30秒間遠心分離にかけた。この核ペレットを25μl氷冷核抽出(20mM HEPES pH7.9, 0.4M NaCl,1mM EDTA,1mM EGTA,1mM DTT,1mM PMSF,2.0mg/mlリューペプシン、2.0mg/mlアプロチニン、及び0.5mg/mlベンズアミジン)内に再懸濁させてから、断続的にかき混ぜながら30分間培養した。サンプルは4℃で5分間遠心分離にかけてから、その上澄液(核抽出物)をすぐ使用するか、あるいは−70℃で保存した。Bradford, M, M., Anal. Biochem. 72:248−254(1976)に述べられた方法で蛋白質含有量を調べた。核抽出物4mgを16fモルの32P末端ラベルしたHIV−LTRからの45−mer二本鎖NF−κBオリゴヌクレオチド:5′−TTGTTACAAGGGACTTTCCGCTGGGGACTTTCCAGGGAGGCGTGG−3′(Nabel, G.及びBaltimore, D., Nature 326:711−13(1987))で15分間、37℃の温度で培養して電気泳動移動度シフト・アッセイを行った。この培養混合物は結合緩衝液(25mM HEPES pH7.9, 0.5mM EDTA,0.5mM DTT,1% NP−40, 5%グリセロル、及び50mM NaCl)内に2〜3mgのポリ−(dI−dC)を含んでいた。形成されたこのDNA−蛋白質複合体を50mM Tris, 200mMグリシン pH8.5、及び1mM EDTAを含む緩衝液を用いて4.5%天然ポリアクリルアミド・ゲル上で遊離オリゴヌクレオチドから分離して、その後そのゲルを乾燥させた。二本鎖突然変異オリゴヌクレオチド:5′−TTGTTACAACTCACTTTCCGCTGCTCACTTTCCAGGGAGGCGTGG−3′を用いて、NF−κBのそのDNAに対する結合の特殊性を調べた。その結合の特殊性はラベルされていないオリゴヌクレオチドとの競合でも調べられた。スーパーシフト・アッセイを行うために、TNFで措置した細胞から分離した核抽出物をNF−κBのp50又はp65サブユニットのいずれかに対する抗体で室温で30分間培養してから、その複合体を電気泳動移動度シフト・アッセイ(Singh, S.及びAggarwal, B. B. J. Biol. Chem. 270:10631−39(1995))の方法で分析した。サイクリンD1に対する抗体もネガティブ・コントロールとして含まれていた。AP−I,TFII D及びOct−Iに関するで電気泳動移動度シフト・アッセイは、32P末端−ラベル二本鎖オリゴヌクレオチドを用いて、NF−κBに関して述べたのと同様の手順で行われた。結合の特殊性はSingh, S及びAggawal, B. B. J. Biol. Chem. 270:10631−39(1995)で述べられている手順に従って、過剰のラベルしていないオリゴヌクレオチドを競合に用いることによって通常の手順で測定した。放射性帯の視覚化と定量は“Image-quant”ソフトウエアを用いてホスホリマージャー(Molecular Dynamics, Sunnyvale, CA)によって行った。実施例3IκBa及びp65に関するウエスタン・ブロッティング:NF−κB活性化反応後、ポスト核抽出物をIκBa用に10% SDS−ポリアクリルアミド・ゲルに溶解した。p65レベルを判定するために、核及びポスト核(細胞質性)抽出物を8% SDS−ポリアクリルアミド・ゲルに溶解した。その後、蛋白質をインモビロンPメンブレインに電子移動してIκBa又はp65に対するウサギ・ポリクローナル抗体でプローブして、化学蛍光(ECL−Amersham;30)で検出した。実施例4転写ファクターNF−κBの活性化に対するCAPEの影響:種々の刺激によるU937細胞のNF−κBに対する反応は良く特徴づけられているので(Reddyら、J. Biol. Chem. 269:25369−72(1994)参照)、U937細胞をこれらの研究に用いた。これらの実験でCAPE及びその類似体のあらゆる濃度で98%以上の細胞成長可能性が示された。U937細胞は種々の濃度のCAPEで2時間予備培養してから、TNF(0.1nM)で37℃の温度下で15分間措置し、その後、NF−κB活性化について調べた。その結果(図1A)は、CAPEが用量に依存した形でNF−κBのTNF依存活性化を抑止し、最大の効果は25μg/mlで起きたことを示している。未処理の細胞、あるいは伝播体(エタノール)だけ、あるいはCAPEだけで措置した細胞ではNF−κBの活性化は観察されなかった。TNFで処理した細胞での電気泳動移動度シフト・アッセイで観察された遅延帯が実際にNF−κBであることを示すために、核抽出物をp50(NF−κB1)又はp65(Rel A)サブユニットに対する抗体でそれぞれ別個に培養して、その後、電気泳動移動度シフト・アッセイを行った。この実験からの結果(図1B、上側パネル)はNF−κBのいずれかのサブユニットに対する抗体がその帯を分子量をより高い領域に移動させたことを示しており、これはTFNで活性化された複合体がp50及びp65サブユニットで構成されていたことを示唆している。サイクリンDに対する非固有抗体はNF−κBの移動性には影響を及ぼさなかった。加えて、TNFで措置した細胞で電気泳動移動度シフト・アッセイによって観察されたこの遅延帯は、ラベルしていないオリゴヌクレオチド(100倍過剰)を用いた場合には消失したが、突然変異されたオリゴヌクレオチドを用いた場合(図1B、上側パネル)を用いた場合には消失しなかった。抑制の動力学を調べるためにこれらの細胞を、TNFを加える前、TNFの添加と同時、及びTNFの添加後5及び19分後にCAPEで120, 90, 60及び30分間培養した。そしてこれらの細胞をTNFで15分間処理した。TNF応答はこれらの細胞をCAPEで処理した場合だけ抑制された(図1B、下側パネル)。TNFとCAPEでの共処理を行った場合、効果は認められなかった。実施例5CAPEはホルボル・エステル・セラミド、オカダ酸及び過酸化水素によって誘発されるNF−κB活性化も阻止する:NF−κBの活性化はホルボル・エステル(ホルボル・ミリステート・アセテート)、セラミド、オカダ酸、及び過酸化水素によっても誘発される(Meyerら、EMBO J. 12:2005−15(1993)参照)。しかしながら、これらの作用因子で誘発されるNF−κB活性化につながる開始信号形質導入経路が異なっている。これらの作用因子による転写ファクターの活性化に対するCAPEの影響は従ってひとつの判断基準である。図2に示す結果は、CAPEが完全に4つの作用因子すべてによって誘発されるNF−κBの活性化を阻止したことを示しており、これはCAPEがこれらの作用因子すべてがNF−κB活性化に導く信号導入経路に収束することを示唆している。実施例6CAPEはNF−κBのDNA結合を固有に抑止するが、他の転写ファクターは抑止しない:セリン・プロテアーゼ抑制剤であるTPCKと蛋白質チロシン・キナーゼ抑制剤であるヘルビミシンは両方とも、それらがNF−κBのDNAに対する結合に干渉することによってNF−κBの活性化を阻止することが示されている(Fincoら、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 91:11884−88(1994);及びNahon, T. M.及びO'Neill, L. A. J., J. Biol. Chem. 270:28577−64(1995)参照)。NF−κBのDNAに対する結合に対するCAPEの影響を調べるために、TNFで予備的に活性化した細胞からの核抽出物を種々の濃度のCAPEで培養した。電気泳動移動度シフト・アッセイ(図3、上側パネル)はCAPEがDNAへのNF−κBの結合を阻止することを示している。IκBaもデオキシコレートなどの洗剤で一定の処理を行うことによってNF−κBから分離され得るので、デオキシコレートによって処理された細胞質抽出物がCAPEで処理した場合と、しない場合のDNAに結合する能力は調べられた。この場合も、CAPEはNF−κB蛋白質のDNAに対する結合を阻止した(図3、下側パネル)。AP−1,TFII及びOct−1などの他の転写ファクターの結合を抑止するCAPEの能力についてもテストを行った。NF−κB結合に対するCAPEの影響は、それが他の転写ファクターのDNA結合能力を抑制しなかったことからも明白である(図4)。実施例7CAPEはTNFに依存したIκBaのホスホリル化及び劣化を抑止しない:NF−κBの核に対する移動はIκBaのホスホリル化と蛋白質分解性劣化によって促進される(Thanos, D及びManiatis, T., Cell 80:529−32(1995)参照)。CAPEの抑制作用がIκBaの劣化に対する作用によるのかどうかを調べるために、IκBa蛋白質の細胞質レベルをウエスタン・ブロット分析で検査した。図5、上側パネルに示してあるように、CAPEで細胞を処理してもIκBaの細胞質ウールには影響が認められないが、TNFで処理すると5分間以内でIκBa帯が減少し、15分後には完全に消失し、30分後までにはその帯が再び現れた。CAPEの存在はIκBaのTNFによって誘発される劣化の速度には影響を及ぼさないが、それはその再合成を遅らせた。IκBaの再合成はNF−κB活性に依存しているから、この遅延はフィードバック規制によるのかもしれない。NF−κBの活性化はNF−κBのp65サブユニットの核転座を必要とするから、p65蛋白質の細胞質及び各プールをウエスタン・ブロット分析で調べた。図5下側のパネルに示してあるように、そうした措置のいずれもp65の細胞質プールに有意の影響は及ぼさなかったが、TNFによって誘発されるp65の核内での出現はCAPEによって阻止された。TNFで措置された細胞内のp65の対応する細胞質プールの減少は有意ではなかったが、それはおそらく活性化されても、わずかp26の25%だけが核に転座されるからであろう。実施例8還元剤はCAPEの影響を逆転させる:ペルバナデートの生物学的影響が示されている。TPCKとペルビミシンのNF−κB活性化の抑制に対する生物学的影響が還元剤によって逆転されることが示されている。従って、DTT,2,3−ジメルカプトプロパノール(DMP)及びベータメルカプトエタノール(BME)がCAPEの影響を逆転させる影響について調べた。細胞をDTT,DMP,BMEがそれぞれ存在している場合と存在していない場合の両方の条件でCAPEで処理して、TNFによってNF−κB活性化について調べた。図6に示されているように、それら還元剤自体によってはいずれの場合もNF−κBのTFN依存活性化に対して有意な影響を及ぼさなかったが、すべての還元剤はCAPEによって誘発された抑止を完全に逆転した。これらの結果はTNF依存のNF−κB活性化におけるスルフィドリル基の中心的な役割を示唆している。実施例9CAPEに関する構造/活性関係調査:NF−κB活性化の抑制におけるCAPEの役割をさらに解明するために、4つの異なったタイプの修正部分を有するCAPEの類似物を用いた。これらの類似物には環置換基(化合物1,2,3)、エステル基(化合物4)、回転的に制約を受けた変種(化合物5と6)、及び飽和アミド類似物(化合物7と8)が含まれ、すべて図7Aに示してある。これらの類似物は前にヒトHIVインテグラーゼ及び細胞成長を抑止するそれらの能力に関連して特徴づけが行われている(Burkeら、J. Med. Chem. 38:4171−78(1995)参照)。これらすべての化合物はNF−κB活性化の抑止において活性を示したが、それらの抑制能力には著しい差が認められた(図7B)。ヒドロキシル基を3,4−ジヒドロキシ・パターンから2,5−ジヒドロキシ・パターン(化合物1)に置き換えるとCAPEのヒドロキシ基二つのメチル・エーテル類(化合物2)で置き換えた場合の結果より抑制能力の増大が認められた。しかしながら、第三のヒドロキシル基を与えて2,3,4−トリヒドロキシ誘導体(化合物3)を発生させると、その能力は失われ、このことはヒドロキシル基の数と置換が抑制の程度の重要な決定因子であることを示している。エステル類似物のグループの場合、その分子(3,4−ジヒドロキシシンモン酸)のカフェイン酸部分は一定であったが、フェニルエチル側鎖が変化した。アルキル・スペーサ(化合物4)の長さの増大は抑制の大幅な喪失をもたらした。回転的に制約された変種においては、ヒドロキシ置換基の置換において違っているCAPEの2つのアイソマーの二環式類似体を用いた。これら二つの類似体の抑制能力において重大な変化が認められた。アイソマー5はまったく影響を及ぼさなかったが、アイソマー6は結合を完全に消失させ、このこともヒドロキシル基がNF−κB活性化の抑止に重要な役割を果たしていることを示唆している。飽和アミド類似体においては、側鎖結合とエステル酸素の重要性について調べた。(フェニルエチル)アミン環に三つの追加ヒドロキシルを有する類似体と、追加ヒドロキシル基を欠いた逆アミド類似体(化合物8)はCAPEより活性化が低かった。従って、CAPEの構造的類似体はCAPEより高い場合(例えば、化合物6)、CAPEと同じ活性を示す場合(例えば、化合物1)、あるいはCAPEより活性が低い場合(例えば化合物2,3,4,5,7及び8)がある。実施例10一過性トランスフェクション及びCATアッセイ:HeLa細胞をpIκBCAT及びpmut IκBCATによってメーカー(GIBCO−BRL)によって供給された指示に従ってカルシウム・ホスフェート法によって20時間、一時的にトランスフェクトした。トランスフェクション後、培養液(MEM)を取り替え、細胞を37℃で24時間培養して、その後、カプサイシン(300uM)で2時間処理してから、0.1mM TNFで1時間刺激を与えた。その後、細胞をホスフェート緩衝食塩水で洗浄して、これまでに述べられている(Sambrook J., E. E. Fritsch,及びT. Maniatis.(編集)、Molecular cloning:A laboratory manual, 2d.Ed.Cold Spring Harbor Press, New York)方法に従って調べた。実施例11カプサイシンはNF−κBのTNFに依存した活性化を抑止する:カプサイシンとホルボル・エステルと構造的に類似しているその類似樹脂分泌性毒素の影響を、NF−κB活性化を規制するその能力に関して調べた。実験で用いられた最大の培養時間と化合物の最大濃度でも細胞の成長可能性、あるいはTNF受容体に最低限の影響しか及ぼさなかった。100μM, 200μM, 300μMのカプサイシンに2時間細胞を露出させた後、トリパン・ブルー排出で調べた細胞の成長可能性はそれぞれ99%、98%、95%であった。ML−1a細胞をいろいろの濃度(最大300μM)のカプサイシンで2時間予備的に処理し、TNFを用いて、あるいは用いないで37℃の温度で15分間培養してから、電気泳動移動度シフト・アッセイでNF−κB活性化について調べた(図9A)。これらの結果は、カプサイシン自体はNF−κBを活性化させなかったこと、そして200〜300μMカプサイシンはTNFによって誘発される活性化のほとんどを抑制したことを示している。TNFによるNF−κBの活性化は、ラベルしていないオリゴを加えるとその帯が消失し、突然変異された結合サイトを有するオリゴを加えた場合には消失しなかったので(図13A参照)、まったく個別的なものである。これまでの研究は、TNFの濃度が高い(10nM)とより執拗で急速な(5分間以内での)NF−κBの活性化を誘発することを示している(Chaturvediら、J. Biol. Chem, 269:14575、83)(1994)参照)。カプサイシンもTNFに対する活発な反応を抑制するかどうかを調べるために、カプサイシンで予備処理した細胞をTNFの濃度を上げて(最大10μM)15分間刺激を与え、その後、NF−κBについて調べた(図9B)。10nM TNFによるNF−κBの活性化は非常に強力であるが、カプサイシンは0.01nM濃度の場合と同様に効果的にそれを抑制した。これらの結果は、カプサイシンがNF−κB活性化の強力な抑制剤であることを示している。この抑制の動力学をさらに詳しく調べるために、これらの細胞をカプサイシンと共に120, 60, 30及び10分間予備培養してから、TNFに露出させた。カプサイシンはTNFと同時(0分)、及び10分後に加えた。すべての場合に、TNFは30分間存在した。図9Cに示すように、カプサイシンとTNFを共に用いた細胞の共培養ではNF−κBの活性化は阻止されなかった、TNFに対するこの反応の最大の抑止は、細胞がカプサイシンで120分間予備培養し場合だけに認められた。実施例12樹脂分泌性毒素もNF−κB活性化を阻止する:樹脂分泌性毒素はカプサイシンの構造的類似体である、両方とも共通の受容体を有している(Holzer, H., Pharmacol. Rev. 43:143(1994);及びSzallasi, A.,及びBlumberg, P., Brain Res. 524:106(1990)参照)。従ってTNF媒介NF−κB活性化を抑止する樹脂分泌性毒素の能力を調べた。カプサイシンの場合と同様、樹脂分泌性毒素自体による細胞の処理はNF−κBを活性化しなかったが、それは用量−応答形態でNF−κBのTNF媒介活性化を完全に抑止した(図10)。40μMの樹脂分泌性毒素でTNF応答が最大に抑止されるので、樹脂分泌性毒素はカプサイシンより8倍強力であることが示唆されている。実施例13カプサイシンによって抑止された活性化NF−κBはp50とp65で構成されている:Rel/NF−κB蛋白質の種々の組み合わせはDNA内の個別配列に結合する活性NF−κBヘテロダイマーを構成することができる。TNFで処理した細胞内での電気泳動移動度シフト・アッセイによって視覚化された遅延帯が実際にNF−κBであることを示すために、TNFによって活性化された細胞からの核抽出物をp50(NF−κB1)あるいはp65(Rel A)サブユニットに対する抗体と共に培養して、電気泳動移動度シフト・アッセイを行った。NF−κBのいずれのサブユニットに対する抗体もその帯をより高い分子量領域に移動させた(図11A)が、これはTNFによって活性化された複合体がp50とp65サブユニットの両方で構成されていることを示唆している。抗p65によって認められた部分的なシフトはそれらの抗体の性質、あるいは用いられた条件による可能性がある。比較対象として、無関係の抗体(NS)を用いたが、NF−κB帯には影響を示さなかった。セリン・プロテアーゼ抑制因子であるPTCKと蛋白質チロシン・キナーゼ抑制因子であるヘルビミシンAの両方ともNF−κBサブユニットの化学的修正によってNF−κB活性化を下方調節し、それによってDNAに対するNF−κBの結合を阻止する。カプサイシンがNF−κB蛋白質を直接修正するのかどうかを調べるために、DNAをデオキシコレートで措置したカプサイシン露出細胞からの細胞質抽出物(図11B)かTNF処理後にカプサイシンに露出した核抽出物(図11C)のいずれかで培養して、電気泳動移動度シフト・アッセイを行った。デオキシコレートでの処理はIκBサブユニットを切り離して、DNAへの結合のためにNF−κBを放出することが示された。図11Bと11Cの結果はカプサイシンがNF−κBのDNAに結合する能力を修正しなかったことを示している。従って、カプサイシンはTPCKやヘルビシンAのメカニズムとは違ったメカニズムを通じてNF−κBを抑止する。実施例14カプサイシンは他の作用因子によって誘発されるNF−κBの活性化を阻止する:NF−κBの活性化はTNF、ホルボル・ミリステート・アセテート及びオカダ酸を含む他の広範な作用因子によっても誘発される。しかしながら、NF−κBの活性化につながる経路がこれらすべての作用因子に対して同一であるかどうかは不明であった。従って、種々の作用因子によるNF−κBの活性化に対するカプサイシンの影響を調べた。TNFの場合と同様、カプサイシンはホルボル・ミリステート・アセテートによって誘発されるNF−κBの活性化を完全に阻止したが、オカダ酸を媒介とする活性化は部分的に抑止されただけだった(図12A)。実施例15カプサイシンによって惹起されるNF−κB活性化の抑止は細胞タイプに固有のものではない:ML−1a細胞の他に、他の骨髄腫(U−937)及び表皮(HeLa)細胞におけるTNFに媒介されるNF−κB活性化を調べた。図12Bに示されているこれらの実験の結果は、カプサイシンがこれらの細胞タイプの両方におけるTNFに誘発されるNF−κB活性化を抑制したことを示している。ほとんど完全な抑制は200μMカプサイシンで認められ、従って、カプサイシンによるこの影響が細胞固有ではないことを示している。実施例16カプサイシンはIκBaのTNF依存劣化を抑止する:細胞に刺激を与えると、IκBaはホスホリル化し、蛋白質分解による劣化を受け、NF−κBがその核に転座を可能にすることが示された。カプサイシンによる抑制作用はIκB劣化の阻止が原因であるかどうかを判定することが本発明の目的であった。IκB蛋白質の細胞質レベルをウエスタン・ブロット分析で調べた。図13Aに示されている結果は、細胞をTNFで処理すると5分以内にIκBaのゆっくり移動する帯が出現し、15分まででIκBaが完全に消失することが示された(上側パネル)。しかしながら、カプサイシンで細胞を処理すると、TNDに媒介されるゆっくりと移動する帯の出現とIκBaの劣化の両方がなくなった。ゆっくり移動する帯の出現はセリン32及び36でのIκBaのホスホリル化によって誘発されることが示されている(Fincoら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 91:11884−88(1994)参照)。カプサイシンで時間を変えて処理した細胞の細胞質におけるp65とIκBaのレベルを調べた(図13B)。細胞質性のIκBa(上側パネル)とp65(下側パネル)のレベルはカプサイシンで処理した細胞では変わらなかった。しかしながら、p65とカプサイシンだけ、TNF及びカプサイシンの両方、及びTNFだけで処理した細胞の細胞質と核内でのp65のレベルを調べると、TNFがp65蛋白質の核への移動を誘発したことが分かった。カプサイシン自体はこうした移動を誘発しなかったが、それはTNFによって誘発された移動を阻止した。これらの結果は、カプサイシンがp65のレベルには影響を及ぼさないが、TNFに依存する核への転座は阻止することを示唆している。p65に加えて、Rel系の蛋白質の他のメンバーの細胞質プールに対するカプサイシンの影響も調べた。図13Dに示されている結果はカプサイシン自体もTNFと組み合わせた場合の両方ともp50やc−Rel蛋白質のいずれのレベルにも影響を及ぼさなかったことを示している。実施例17カプサイシンはIκBa−CAT遺伝子表現を抑制する:IκBa遺伝子のプロモータはNF−κB結合サイトを有しており、NF−κBが活性化すると規制されて、数分以内に急速な遺伝子表現を誘発するので、CAT遺伝子に結合したTNF誘発IκBaプロモータに対するカプサイシンの効果を判定するために、一過性表現アッセイを行った。予想されたように、TNFで刺激すると、CAT活性にほぼ4倍の増加が見られた(図14)。しかしながら、TNFによって強化されたCAT活性は、pIκBCATでトランスフェクトした細胞をTNF処理の前に2時間カプサイシンで予備培養した場合には大幅に低下した。突然変異されたNF−κB結合サイトを含むIκBプロモータ、pmut IκBCATによるトランスフェクションはTNFによるCATの誘発をもたらさなかった。これらの結果は、カプサイシンがNF−κBアクチベータによって誘発される遺伝子表現も抑制することができることを示している。本明細書で取り上げられているすべての特許や刊行物は本発明が関連する技術分野の当業者のレベルに対応するものである。さらに、これらの特許と刊行物はそれらへの言及によって、各個別の刊行物が具体的、個別的に引例で本明細書に取り込まれるのと同じ程度に組み込まれる。当業者であれば、本発明が上に述べられた目的を実行し、その課題と利点、及びそれらと本質的に付随した目的、課題及び利点を達成するのに適合していることは容易に理解できるであろう。これらの実施例は、ここに述べられている方法、手順、措置、分子、及び具体的な化合物と共に現段階での代表的な実施の形態をしめすものであって、例示的なものであって、本発明の範囲の限定を意図するものではない。特許請求の範囲によって限定される本発明の精神の範囲内に含まれる本発明の修正や他の使用法は、当業者には容易に想起されるであろう。 治療的に有効な量の8−メチル−N−バニリル−6−ノネンアミド(カプサイシン)を含む、個人での核ファクターNF−κBの活性化によって惹起される病理状態を処理するための薬剤。 NF−κBの活性化が腫瘍壊死因子によって誘発される請求項1の薬剤。 NF−κBの活性化がホルボル・ミリステート・アセテートによって誘発される請求項1の薬剤。 NF−κBの活性化がオカダ酸によって誘発される請求項1の薬剤。 病理状態が毒性ショック、腐敗性ショック、急性位相反応、ウイルス性感染症、放射線感作性、アテローム性動脈硬化症、癌、急性炎症状態、及び移植vs宿主反応のいずれかである請求項1の薬剤。 治療的に有効な量の下記化学式に示す樹脂分泌性毒素を含む、個人での核ファクターNF−κBの活性化によって惹起される病理状態を処理するための薬剤。 病理状態が毒性ショック、腐敗性ショック、急性位相反応、ウイルス性感染症、放射線感作性、アテローム性動脈硬化症、癌、急性炎症状態、及び移植vs宿主反応のいずれかである請求項6の薬剤。


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