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タイトル:特許公報(B2)_腸内細菌におけるチトクロムP450の発現
出願番号:1998505755
年次:2008
IPC分類:C12N 1/21,C12N 9/02,C12N 15/09


特許情報キャッシュ

ウルフ,チャールズ,ローランド フリードバーグ,トーマス,ハーバート プリッチャード,マイケル,パトリック JP 4117852 特許公報(B2) 20080502 1998505755 19970717 腸内細菌におけるチトクロムP450の発現 ビーティージー・インターナショナル・リミテッド 500431508 園田 吉隆 100109726 小林 義教 100101199 ウルフ,チャールズ,ローランド フリードバーグ,トーマス,ハーバート プリッチャード,マイケル,パトリック GB 9615032.1 19960717 20080716 C12N 1/21 20060101AFI20080626BHJP C12N 9/02 20060101ALI20080626BHJP C12N 15/09 20060101ALI20080626BHJP JPC12N1/21C12N9/02C12N15/00 A C12N 1/21 C12N 9/02 C12N 15/09 BIOSIS/WPI(DIALOG) PubMed Science Direct JSTPlus(JDream2) Arch.Biochem.Biophys., 1996年, Vol.327, No.2, p.254-259 31 GB1997001917 19970717 WO1998002554 19980122 2001522221 20011113 44 20040510 田中 公子 本発明は、細菌におけるチトクロムP450の発現に関する。特に、本発明は、細菌、特に腸内細菌における真核生物の活性なチトクロムP450酵素系の発現に関する。背景及び先行技術チトクロムP450モノオキシゲナーゼ(P450類)は、広範囲の化合物の代謝を触媒するヘムタンパク質の上科を形成する。これは、酸素分子の一つの原子の基質内への挿入を通じて親油性化学物質の酸化を触媒する(PorterとCoon(1991)J. Biol. Chem. 261, 13469-13472)。哺乳動物のP450類は、ステロイド類、治療薬及び発ガン物質を含む、内因性及び外因性化合物の代謝を触媒する(Guengerich(1987)″Enzymology of rat liver cytochromes P450″, F.P.Guengerich編,CRC Press, Boca Raton FL, Vol. 1, pp 1-54; GuengerichとShimada(1991)Chem. Res. Toxicol.4, 391-407; Gonzalez(1992)Trends in Pharmacol. Sci. 12, 346-352)。異なった哺乳動物のP450類は独特であるが重複する基質特異性を示し、強い位置及びステレオ選択性を示す(Crespiほか(1993)Toxicology 82, 89-104)。哺乳動物のP450類は、その主要な機能に基づき2つの主要なクラスに小分類することができる。すなわち、ステロイド類と胆汁酸の代謝に主に関与するものと、生体異物を主に代謝するものとに分類される。異物代謝P450類は、典型的には例えば肝細胞のようなある種の哺乳動物細胞の小胞体中に見出され、ミクロソームP450類と称される。後者のグループのP450類により代謝される化合物には、例えばシクロスポリン、ニフェジピン及びデブリソキンのような治療薬並びに例えば多環式芳香族炭化水素類、ニトロサミン及びアリールアミン類のような発ガン物質が含まれる。ミクロソームP450類が触媒的に活性であるには、NADPH-チトクロムP450オキシドレダクターゼ(P450レダクターゼ;EC1.6.2.4)のFMN及びFAD補欠分子族を経由してNADPHから送られる電子の供与が必要となる(Smithほか(1994)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 8710-8714)。P450類の一次構造を比較すると、これらは構造的に相互に関連しており、共通の祖先から由来している可能性が高いことが分かる。その一次構造に基づき、P450類は例えばCYP1、CYP2等々のようなファミリーに分類される(Nelsonほか(1996)Pharmacogenetics 6, 1-42)。治療化合物と発ガン物質の代謝において哺乳動物のP450類が重要であることから、異種性の系において哺乳動物のP450類を発現させる試みがなされてきた。例えば、Doehmerほか((1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85, 5769-5773)、Aoyamaほか((1990)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 4790-4793)及びCrespiほか((1991)Carcinogenesis 12, 355-359)により記載されているように異種的にP450類を発現させるために哺乳動物の細胞が用いられている。酵母細胞もまた例えばRenaudほか((1993)Toxicology 82, 39-52)とBlighほか((1992)Gene 11O, 33-39)により、P450類の異種的な発現のために用いられている。更に最近では哺乳動物のP450類が大腸菌において発現されている。Gillamほか((1993)Arch. Biochem. Biophys. 305, 123-131)には、修飾されたヒトチトクロムP450 3A4の大腸菌における発現と該酵素の精製と再構成が記載されている。Barnesほか((1991)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88, 5597-5601)には、大腸菌における組換えチトクロムP450 17α-水酸化酵素の発現と酵素活性が記載されている。Larsonほか((1991)J. Biol. Chem. 266, 7321-7324)には、疎水性のNH2-末端セグメントを欠くチトクロムP450 IIE1の発現が触媒活性を保持することが記載されている。Shimadaほか((1994)Carcinogenesis 15, 2523-2529)には、大腸菌において発現されたヒトチトクロムP450酵素によるプロ発ガン物質の活性化が記載されている。Shetほか((1993)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 11748-11752)には、NADPH-P450レダクターゼを含む精製された組換え融合タンパク質の酵素学的性質が記載されている。Shetほか((1995)Arch. Biochem. Biophys. 318, 314-321)には、ヒトP450 3A4のヘム領域とラットチトクロムP450レダクターゼのフラビン領域を含む組換え融合タンパク質の幾つかの性質が記載されている。JenkinsとWaterman((1994)J. Biol. Chem. 269, 27401-27408)には、大腸菌由来のNADPH-フラボドキシンレダクターゼとフラボドキシンがウシチトクロムP450 c17水酸化酵素活性を支援することが記載されている。Fisherほか((1992)FASEB J. 6, 759-764)には、ヒトP450 1A2の大腸菌における発現が記載されている。Fisherほか((1992)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 10817-10821)には、哺乳動物のチトクロムP450とNADPH-P450レダクターゼフラボタンパク質の領域を含む融合タンパク質の大腸菌における発現が記載されている。ChunとChiang((1991)J. Biol. Chem. 266, 19186-19191)には、コレステロール 7α-水酸化酵素チトクロムP450の大腸菌における発現が記載されている。Richardsonほか((1995)Arch. Biochem. Biophys. 323, 87-96)には、2C亜科のヒト及びウサギチトクロムP450の大腸菌における発現が記載されている。Gillamほか((1995)Arch. Biochem. Biophys. 319, 540-550)には、チトクロムP450 2D6の大腸菌における発現が記載されている。DongとPorter((1996)Arch. Biochem. Biophys. 327, 254-259)には、ompAシグナルペプチドへのN末端融合を含むP450レダクターゼが、P450の第2コドン(セリン)がアラニンに置換され、P450につき他の変更はなされていないヒトP450 2E1と共に大腸菌において同時発現される研究が記載されている。インビボにおいて、細胞全体の活性は証明されなかった。国際公開WO94/01568には、P45017α-水酸化酵素の大腸菌における発現とP450レダクターゼ酵素領域へのその融合及び融合タンパク質の大腸菌における発現が記載されている。ウシP45017α−水酸化酵素由来の9個のN末端アミノ酸を含むP450酵素ハイブリッドもまた開示されている。米国特許第5240831号には、チトクロムP450レダクターゼの同時発現又は混合を必要としないで生物学的に活性な形でのP45017α-水酸化酵素の大腸菌における発現が記載されている。Gillamほか((1995)Arch. Biochem. Biophys. 317, 374-384)には、チトクロムP450 3A5の大腸菌における発現が記載されている。Gillamほか((1994)Arch. Biochem. Biophys. 312, 59-66)には、修飾されたヒトチトクロムP450 2E1の大腸菌における発現が記載されている。Shetほか((1994)Arch. Biochem. Biophys. 311, 402-417)には、ウシP450 17AとラットNADPH-P450レダクターゼの領域を含む組換え融合タンパク質の大腸菌における発現が記載されている。Josephyほか((1995)Cancer Res. 55, 799-802)には、ネズミチフス菌において発現された組換えヒトチトクロムP450 1A2による芳香族アミン類の生物活性化が記載されている。有効な真核生物、特に哺乳動物のP450モノオキシゲナーゼ酵素系を細菌において発現させるための広範な努力にも拘わらず、細胞全体において化合物を代謝し得る系は今日まで考案されていない。これは、酵素活性に対してP450レダクターゼを必要とする異物代謝P450類の場合は特にしかりである。より詳細には、チトクロムP450とチトクロムP450レダクターゼが同一の菌細胞において別々に発現されたときに機能チトクロムP450レダクターゼ系を形成する菌細胞系は過去には考案されていない。同様に、高レベルの真核生物異物代謝P450を発現する細菌を生産する努力が鋭意なされてきたにも拘わらず、満足できる系はこれまで考案されていない。本発明の一つの目的は、無処置の菌細胞において機能的な形でP450類を発現する優れた系を提供することである。本発明の更なる目的は、P450レダクターゼと共であってもなくともP450類を発現する改良系を提供することである。機能P450酵素系を細胞全体において発現する細菌系は「バイオリアクター」として有用であるか、薬物試験又は発ガン物質試験系において、またはバイオセンサーとして、あるいは環境のレメディエーション又はホルモンの生産等において用途が見出される。細菌における真核生物P450類の高レベルの発現は構造研究用のP450源を提供する。発明の概要本発明の第1の観点では、機能性チトクロムP450モノオキシゲナーゼ系を含む菌細胞であって、該細胞がチトクロムP450を発現し得る遺伝子作成物と上記チトクロムP450とは別個にチトクロムP450レダクターゼを発現し得る遺伝子作成物を含み、チトクロムP450のN末端とチトクロムP450レダクターゼのN末端が上記細胞内における上記チトクロムP450と上記チトクロムP450レダクターゼの機能性カップリングを可能にするようにそれぞれ適合された菌細胞が提供される。好ましくは、菌細胞は、少なくとも50pmol/min/mgタンパク、より好ましくは少なくとも250pmol/min/mgタンパク、更により好ましくは少なくとも500pmol/min/mgタンパクの比活性を有するチトクロムP450モノオキシゲナーゼを発現する。これらの量はチトクロムP450モノオキシゲナーゼ系に対する好適で効果的な基質を使用して測定される。好ましくは、上記好適な比活性は細胞全体のものであるが、該活性は例えば膜画分のような細胞の画分に見出されるものでもよい。しかして、機能性チトクロムP450モノオキシゲナーゼ系を含む菌細胞であって、チトクロムP450を発現する遺伝子作成物と上記チトクロムP450とは別個にチトクロムP450レダクターゼを発現する遺伝子作成物を含み、上記チトクロムP450と上記チトクロムP450レダクターゼが上記細胞内において機能的にカップリングする菌細胞が提供される。「チトクロムP450」には、ヘムのFe(II)のCO付加物の形成により還元CO差スペクトルにおいて450nm±5nmの領域に吸収極大を示すあらゆるヘム含有ポリペプチドが含まれる。如何なるチトクロムP450についても本発明を実施することができると考えられる。チトクロムP450は、好適には、真核生物のチトクロムP450である。より好ましくは、チトクロムP450は哺乳動物チトクロムP450であり、更により好ましくはチトクロムP450はヒトのチトクロムP450である。非常に多くの真核生物のチトクロムP450のcDNA、特に哺乳動物のチトクロムP450のcDNAを含む非常に多数のチトクロムP450のcDNA又は遺伝子がクローン化されている。例えば、出典明示によりここに取込まれるNelsonほか((1996)Pharmacogenetics 6, 1-42)には、既知のチトクロムP450のcDNAと遺伝子が列挙され、配列相同性とある程度は染色体局在化に基づいて遺伝子ファミリー及びサブファミリーに分類されている。チトクロムP450の配列の詳細はまたワールドワイドウェブサイトhttp://drnelson.utmem.edu./homepage.htmlで入手できる。これらのチトクロムP450のcDNAと遺伝子は、従来から周知のクローニング法を使用して即座に得ることができ、その方法の幾つかは以下と例えばSambrookほか((1989)Molecular Cloning, a laboratory manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring House, New York)に記載されている。チトクロムP450はチトクロムP450のCYP1、CYP2、CYP3又はCYP4ファミリーの何れかのメンバーであれば特に好適である。チトクロムP450モノオキシゲナーゼ系は生体異物を代謝するものであれば尚更好ましい。チトクロムP450ファミリーCYP1、CYP2及びCYP3の少なくとも幾つかのメンバーは例えば治療薬のような生体異物化合物の代謝に関与している。チトクロムP450のCYP1ファミリーのメンバーは、例えばカフェイン、ベンズフェタミン、フェナセチン、テオフィリン、アセトアミノフェン、アンチピリン、2-ヒドロキシエストラジオール、イミプラミン、タモキシフェン及びゾキサゾラミンの代謝に関与する。チトクロムCYP2ファミリーのメンバーは、例えばテストステロン、アフラトキシン、ベンズフェタミン、シクロホスファミド、ヘキソバルビタール、6-アミノクリセン、レチノール、トルブタミド(メチル)、フェニトイン、S-ワルファリン、ティエニル酸、ジアゼパム、プロパナロール、アミトリプチリン、ブフラロール、ブプラノロール、クロザピン、コデイン、デブリソキン、デシプラミン、デキストロモルファン、エチルモルヒネ、フレカイニド、ハロペリドール、リドカイン、ノルトリプチリン、プロパノロール、スパルテイン、タキソール、テトラヒドロカナビノール、プロゲステロン及びメフェニトインの代謝に関与する。チトクロムCYP3ファミリーのメンバーは、例えばロバスタチン、ニフェジピン、タキソール、テニポシド、テストステロン、ベラパミル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ベンズフェタミン、コルチソル、シクロスポリンA及びG、ジアゼパム、ジヒドロエルゴタミン、エストラジオール、エチニルエストラジオール、イミプラミン及びリドカインの代謝に関与する。より好ましくは、チトクロムP450はP450類のCYP3A4、CYP2D6、CYP2A6、CYP2E1、CYP2D9及びCYP2C9の何れかである。簡便には、チトクロムP450は、そのN末端の適合化は別にして、天然のチトクロムP450と同じポリペプチド配列から本質的になる。しかしながら、「チトクロムP450」という用語は、天然チトクロムP450に対する修飾、例えば天然チトクロムP450に存在しうる任意の疎水性N末端部分の長さ又は他の性質を変更する修飾又は天然チトクロムP450と比較してチトクロムP450の基質特異性を変更する修飾、例えば単一又は多点突然変異又は欠失のような修飾を特に含む。「チトクロムP450レダクターゼ」には、NADPHからチトクロムP450に電子を移動させることができるあらゆるNADPH-チトクロムP450オキシドレダクターゼが含まれる。哺乳動物のチトクロムP450レダクターゼはFMH及びFAD補欠分子族を一つずつ含む。チトクロムP450レダクターゼは、菌細胞中に発現されたチトクロムP450と同じ種から由来するのが好ましい。チトクロムP450レダクターゼは、哺乳動物のチトクロムP450レダクターゼであれば特に好ましい。ラット又はヒトのチトクロムP450レダクターゼが特に好ましい。ヒトのチトクロムP450レダクターゼcDNAは、Smithほか((1994)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 8710-8714)に記載されている。ラットのチトクロムP450レダクターゼcDNAは、Porterほか((1990)Biochemistry 29, 9814-9818)に記載されている。チトクロムP450レダクターゼのcDNAと遺伝子は従来から公知のクローニング法を用いて即座に得ることができ、その方法の幾つかは以下に記載する。簡便には、チトクロムP450レダクターゼは、そのN末端の適合化は別にして、天然チトクロムP450レダクターゼと同じポリペプチド配列から本質的になる。しかしながら、「チトクロムP450レダクターゼ」という用語には、天然チトクロムP450に対する修飾、例えば補助因子結合を変更する単一又は多点突然変異又は欠失を特に含む。チトクロムP450がヒトのチトクロムP450である場合、チトクロムP450レダクターゼはヒトのチトクロムP450レダクターゼであるのが好ましい。「機能性チトクロムP450モノオキシゲナーゼ系」とは、チトクロムP450とチトクロムP450レダクターゼが菌細胞においてひとたび発現されれば、十分な補助因子、例えばNADPH及び酸素が存在すると仮定して、上記チトクロムP450と上記チトクロムP450レダクターゼが存在するために、該細胞がチトクロムP450モノオキシゲナーゼ系の基質を生成物に転換することができることを意味する。「細胞内における上記チトクロムP450と上記チトクロムP450レダクターゼの機能性カップリング」とは、チトクロムP450レダクターゼが、直接的であれ間接的であれ、触媒作用中にチトクロムP450に電子を供与することができるように、チトクロムP450とチトクロムP450レダクターゼが細胞内において隣接させられることを意味する。チトクロムP450のN末端又はチトクロムP450レダクターゼのN末端の適合化は、単に、細胞内における上記チトクロムP450と上記チトクロムP450レダクターゼの機能発現とカップリングを可能にするものである。適合化はチトクロムP450とチトクロムP450レダクターゼの隣接化を助けるものとすることができる。「細胞内」には、特に、機能性カップリングが、細胞膜周辺腔を含む細胞の任意の膜又は区画もしくは周辺質に伴う任意の膜内又はこれに関連して生じることが含まれる。チトクロムP450を最適に発現する菌細胞の培養のチトクロムP450量は、少なくとも100nmol/l培養(細胞全体)、好ましくは少なくとも150nmol/l培養(細胞全体)、より好ましくは少なくとも約250nmol/l培養(細胞全体)、更により好ましくは約500nmol/l培養(細胞全体)、最も好ましくは約1000nmol/lであることが好ましい。典型的には、チトクロムP450量は約200nmol/l培養(細胞全体)である。上記チトクロムP450と上記チトクロムP450レダクターゼの機能性カップリングを可能にするチトクロムP450とチトクロムP450レダクターゼの各N末端の適合化を以下に議論する。必須ではないが、チトクロムP450又はチトクロムP450レダクターゼがそれ自身のN末端配列を保持し、例えば以下に議論するシグナルペプチドのような更なる部分がチトクロムP450又はチトクロムP450レダクターゼ又は双方のN末端に付加されることが好ましい。如何なる好気性又は通性の嫌気性菌細胞も適切であると考えられるけれども、菌細胞はグラム陰性であるのが好ましく、また菌細胞は腸内細菌科の細菌、例えば大腸菌の細胞であるのが好ましい。大腸菌に最も密接に関連する腸内細菌は、サルモネラ属と赤痢菌属由来のものであり、やや密接に関連するものはエンテロバクター属、セラチア属、プロテウス属及びエルウィニア(Erwinia)属である。大腸菌とネズミチフス菌が本発明に対して最も好適な菌宿主細胞である。大腸菌株K12が最も好ましい。大腸菌K12は非病原性である標準的実験用菌株であるからである。ある種のチトクロムP450基質は、チトクロムP450モノオキシゲナーゼ系により作用せしめられるために菌細胞中に浸透することができるが、本発明の菌細胞は、基質への浸透性が増大したもの、もしくは菌細胞を適切な培地に配したときに基質により浸透するようになるものであるのが好ましい。加えて、あるいは代わりに、菌細胞が、基質の膜浸透を容易にするように膜の性質を変化させたものか、性質を変化させることができる膜であれば、より好ましい。例えば、大腸菌のtolC突然変異体は、野生型大腸菌よりもより浸透性の膜を有しており(Chatterjee(1955)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92, 8950-8954)、ネズミチフス菌株のTA系列は深部ラフ型変異により浸透性が増大していて、変異原性試験に頻繁に用いられている(例えば、Simulaほか(1993)Carcinogenesis 14, 1371-1376を参照)。ネズミチフス菌TA97、98、100及び102並びにTA1535及びTA1538は医薬産業において薬物安全性評価の際の変異原性試験に用いられている。これらと他の適切な菌株を用いる本発明は、これらがヒト化変異原性系を提供し代謝活性化系としてげっ歯類肝臓抽出物(げっ歯類肝臓由来のS9画分)に依存しないので、これらの手順を改善する可能性がある。本発明に基づく系は、代謝活性化系と変異原性の標的、すなわちDNAが同じ細胞内にあり、標準的なエイムス試験におけるように物理的に分離した実体ではないという利点も有する。このことは、短命な代謝物がより良く検出され、反応性代謝物がそのDNA標的まで到達するのを膜障壁が妨げないという利点を有している。このことと本発明の他の観点は、以下に更に詳細に議論する。細胞は、適当な環境中に配することによりより浸透性にできるものがまた好ましい。適切な多くの緩衝液系があるが、発現段階に続いて菌細胞、特に大腸菌細胞がトリス-スクロース-EDTAすなわちTSE中に再懸濁されるのが好ましい。TSEは50mMのトリスアセテート(pH7.6)、0.25Mのスクロース、0.25mMのEDTAである。これにより、細胞の浸透性を幾つかの方法で増大させることができる。第1に、最初に二倍に強めた緩衝液中に細胞を再懸濁させ、ついで等しい容量の水で速やかに希釈する。これは、瞬間的に外膜を破壊することにより、周辺質タンパクを放出させるという効果を有する。第2に、EDTAは浸透性に直接影響を及ぼすことが知られており、細胞をある種の疎水性薬剤に対してより敏感にすることができる。第3に、緩衝液中のトリスは、外膜におけるリポ多糖の構造に影響を与えることができ、再び浸透性を変える。大腸菌とネズミチフス菌の外膜の浸透性を増加させるための更に詳細な方法は、NikaidoとVaara((1987)pp.7-22″Escherichia coli and Salmonella typhimurium. Cellular and Molecular Biology″Vol, 1, F.C. Neidhardt編,Am. Soc. Microbiol., Washington DC)に与えられている。有利には、特に菌細胞がバイオリアクターに用いられるとき、細胞は溶剤耐性を有する。溶剤耐性の大腸菌細胞は、例えばFerranteほか((1995)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92, 7617-7621)により従来から知られている。チトクロムP450レダクターゼは菌細胞の細胞区画又は膜にチトクロムP450レダクターゼを方向付けるN末端部分を含むのが好ましい。特に、上記N末端部分がチトクロムP450レダクターゼを膜に方向付けるのが好ましい。チトクロムP450とチトクロムP450レダクターゼは菌細胞中の膜と結合するのが好ましい。特に、チトクロムP450とチトクロムP450レダクターゼは、細菌の内膜(特に大腸菌とネズミチフス菌の場合)に、その活性部位を細胞質に位置させて結合しているのが好ましい。一つの好適な実施態様では、N末端部分は細菌タンパクのN末端部分から由来したあるいは該部分に基づくもので、上記細菌タンパクが細胞膜周辺腔に方向付けされているもの、あるいは菌細胞から分泌されることになるものである。例えば、ompA、pelB、malE又はphoA遺伝子によりコード化されている大腸菌タンパクはそのような細菌タンパクである。N末端部分の存在により、チトクロムP450又はチトクロムP450レダクターゼの正しい折畳みが助けられるのが望ましい。細菌タンパクを通常周辺質中に方向付ける細菌のリーダー配列又はシグナルペプチドは、これまでは、結果として生じる融合タンパク質を周辺質の酸化環境に搬出する目的で、二三の哺乳動物タンパク質のN末端に融合されている。従って、そのような細菌のリーダー配列又はシグナルペプチドは、例えば免疫グロブリン又はその断片のような哺乳動物の分泌タンパク質の発現において使用されている。これに対して、哺乳動物の異物代謝チトクロムP450類は、天然の小胞体中に見出される場合、通常は還元環境にさらされる。従って、特に好適な実施態様は、N末端部分がompA、pelB、malE又はphoAシグナルペプチド又はリーダー配列あるいはその機能的に等価な変異体の何れかを含有するものである。「その機能的に等価な変異体」には、天然の上記細菌タンパク中に存在しているならば、天然のシグナルペプチドと同じ細胞位置に上記タンパク質を方向付けるあらゆるペプチド配列が含まれる。チトクロムP450とチトクロムP450レダクターゼのそれぞれのN末端部分がシグナルペプチド又はシグナルペプチド様N末端部分であれば好ましい。特に、N末端部分が、一般的分泌経路に対してompAリーダーと競合するか、シグナル認識粒子とトリガー因子を含むシグナル認識機構に対してompAと競合するものが好ましい。一般的分泌経路とその成分は、出典明示によりここに取込まれるPugsley((1993)Microbiol. Rev 57, 50-108)に記載され、シグナル認識粒子とトリガー因子は、出典明示によりここに取込まれるValentほか((1995)EMBO J. 14, 5494-5505)に記載されている。ompAシグナルペプチドと推定シグナルペプチドの間の競合アッセイは、PugsleyとValentほかの教示を用いる従来公知の方法を使用して実施することができる。pelBリーダー配列は、MKYLLPTAAAGLLLLAAQPAMA(配列番号1)なるアミノ酸配列からなる。ompAリーダー配列は、MKKTAIAIAVALAGFATVAQA(配列番号2)なるアミノ酸配列からなる。シグナルペプチドは、ある種の認識できる共通の特徴を有しており、これは、Heijne((1986)Nucl Acids Res 14, 4683-4690)、Gierasch((1989)Biochemistry 28, 923-930)及び″Escherichia coli and Salmonella typhimurium Cellular and Molecular Biology″(Vol. 1, F.C. Neidhardt編,Am. Soc. Microbiol, Washington DC)の周辺質とタンパク質分泌に関するOliverの章(1987, pp56-69)に詳細が記されている。第1に、可変長のN末端の正味の正荷電領域(n領域)がある。これには10±3のアミノ酸の疎水性コア(h領域)が続き、これはロイシン、アラニン、メチオニン、バリン、イソロイシン、フェニルアラニン及びトリプトファン残基に富む。最後に、典型的には5−7のアミノ酸のc領域があり、これはh領域のものより一般に僅かに極性が強い。このc領域における最も重要なアミノ酸はシグナル切断部位に対して3位と1位にあるもの(「-3、-1ルール」)であり、これらの位置に存在しうる可能なアミノ酸には厳しい制約があるようである:すなわち、短い側鎖のものだけが許容される。従って、アラニン、グリシン、ロイシン、セリン、スレオニン及びバリンのみが3位に見出され(アラニンが強く好まれる)、アラニン、グリシン、セリン及びスレオニンが1位に見出される(アラニンがまた最も強く好まれる)。証拠は、このシグナルプロセシング領域におけるβターン形成がシグナル切断が生じるために重要であることを示唆している(例えば、Barkocy-Gallagherほか(1994)J Biol Chem 269, 13609-13613及びDuffaudとInouye(1988)J Biol Chem 263, 10224-10228を参照)。シグナルペプチド切断が生じるのが好ましい。従って、シグナルペプチド、すなわち発現されるタンパク質の直ぐ下流の適切なアミノ酸配列が含まれていると、これが尚「切断部位」の一部を形成するので、好ましい。例えば、+1位のプロリンはシグナル除去を阻害する(Barkocy-Gallagherほか(1992)J. Biol. Chem. 267, 1231-1238)。例としてompAを用いると、完全な切断を確実にするには、それが望ましいならば、作成物において成熟ompAタンパクの、ompAリーダーの直ぐ後とP450又はレダクターゼ配列の直ぐ前の最初の二三のアミノ酸が含まれる。シグナルペプチド切断は、特定のシグナルペプチダーゼ酵素、例えばシグナルペプチダーゼIにより引き起こされる。好適な実施態様では、シグナルペプチダーゼIは菌細胞(例えば大腸菌)において過剰生産され、望まれるならばシグナルペプチドの切断を助ける(Dijlほか(1991)Mol. Gen. Genet. 227, 40-48を参照)。成熟ompAタンパクの最初の二つのアミノ酸(すなわち、AlaPro)がompAシグナルペプチドの直ぐ下流でP450のN末端の前に挿入されるのが特に好ましい。シグナルペプチド切断の確率を増大させる他の好適な可能性はシグナルペプチドとP450との間に短いリンカー配列を導入することであり、あるいは異なる株における発現により、例えばDH5αにおける発現と比較して、シグナルペプチドの切断が増加したり減少したりする。従って、N末端部分は、その天然のポリペプチド中に存在するとき、膜挿入と細胞膜周辺腔中への細胞質膜を通過しての天然のポリペプチドの搬出を媒介する機能を有するシグナルペプチドであることが好ましいことが分る。リーダー配列又はシグナルペプチドの配列は通常は40までのアミノ酸残基である。リーダーはその機能的性質を変更しないで修飾することができると考えられる。本発明の更なる実施態様では、チトクロムP450が菌細胞の細胞区画又は膜にチトクロムP450を方向付けるN末端部分を含むのが好適である。特に、上記N末端部分がチトクロムP450を膜に方向付けるのが好ましい。この実施態様の好適なN末端部分はチトクロムP450レダクターゼの好適なN末端部分と同じである。チトクロムP450のN末端部分は、ompA、pelB、malE又はphoAシグナルペプチド又はリーダー配列あるいはその機能的に等価な変異体の何れかを含むのが特に好ましい。ompAシグナルペプチドが特に好ましい。更なる特に好適な実施態様では、チトクロムP450のN末端部分とチトクロムP450レダクターゼのN末端部分のそれぞれが、上記チトクロムP450又はチトクロムP450レダクターゼを同じ細胞区画又は膜に方向付ける。これは、細胞内における上記チトクロムp450と上記チトクロムP450レダクターゼの機能性カップリングを増大させあるいは改善するので、特に有利である。チトクロムP450とチトクロムP450レダクターゼが、細菌の細胞質NADPHプールへのアクセスが得られる内膜の細胞質側に方向付けられるのが特に好ましい。更に好ましくは、チトクロムP450のN末端部分はチトクロムP450レダクターゼのN末端部分と実質的に同じである。更なる実施態様では、チトクロムP450は、上記菌細胞中における上記チトクロムP450の翻訳性を増大させるか折畳みを修正するように適合化されたN末端部分を含む。好ましくは、チトクロムP450は、その天然配列と比較して、そのN末端において修飾される。「翻訳性」とは、与えられたRNA分子をポリペプチドに翻訳することができる効率を意味する。翻訳性を改善する最適化CYP3A4配列の幾つかの特徴がある。これらの特徴は次のものを含む:1. 大腸菌に好適に適合するように変えられた第2コドン(しばしばアラニンをコードしているGCT)。これは、Loomanほか((1987)EMBO J 6, 2489-2492)により証明されている。2. 開始コドンの廻りのmRNA2次構造に対する潜在性を最小化するために、(可能な場合には)A及びT残基に富むようにされたコドン4と5。リボソーム結合部位と開始コドンの廻りのmRNA構造の最小化は、「翻訳性」に大きな影響を有し得る(例えばWangほか(1995)Protein Expr Purif 6, 284-290を参照)。リーダー配列の使用に関し、主な利点は、それらが細菌遺伝子から由来しているので、その性質上、細菌の発現に対して既に「最適化」されていることである。これはしばしば例えば上述の二つの特徴を有しており、双方のpelBとompAリーダーは第2コドンとしてAAA(Lys)を含み、このコドンは「翻訳性」についてLoomanほかの文献では最良の性能の第2コドンであった。加えて、これらは、リボソーム結合部位と開始コドンの廻りの2次構造を減少させた(例えば、ompA遺伝子構造についてMovvaほか(1980)J Mol Biol 143, 317-328を参照)。N末端シグナルペプチド融合を用いる更なる利点は、P450またはレダクターゼのcDNAにおける希なコドンのあらゆる影響を最小化することに関する。例えば、AGA/AGGコドンは大腸菌において最も希に用いられるものであり(ChenとInoue(1990)Nucl Acids Res 18, 1465-1473)、対応する荷電tRNA分子の限られた利用性の結果、翻訳を遅延させる。しかし、そのような希なコドンのマイナスの効果は開始コドンからの距離が増加するにつれて減少する(ChenとInoue、上掲)。P450(又はレダクターゼ)のN末端に「最適化」された細菌リーダー配列(典型的には20−25のアミノ酸長さ)を付加することにより、P450のcDNAの5’末端に近い任意の希なコドンが、開始コドンから更に遠くに離れるように移動され、従って影響は更に少ない。従って、「翻訳性」を次の一又は複数の手段により改良するのが好ましい:1. P450又はレダクターゼのcDNAから希なコドン(上掲のChenとInoue参照)、例えばAGG/AGA(アルギニン)、CUA(ロイシン)、AUA(イソロイシン)、CCC(プロリン)、及びGGA/GGG(グリシン))を除去、特に開始コドンから25−30コドン未満のものを除去すること。2. 上記の代わりに、あるいは上記と共に、希なtRNAシンターゼをコードしている遺伝子、例えばAGG/AGAに対するdnaY遺伝子を導入すること。3. 大腸菌の好適性を反映させるためにDNA配列について他の変更を行うこと、例えばコドン対の非ランダム的利用(GutmanとHatfield(1989)Proc Natl Acad Sci USA 86, 3699-3703)。4. 二次構造の潜在性を最小化しリボソーム結合部位と開始コドンの間の距離を最適化するために発現ベクター内におけるプロモーター/リボソーム結合部位を変化させること(上掲のWangほか(1995)参照)。チトクロムP450が米国特許第5240831号に従って、あるいはGillamほか((1995)Arch. Biochem. Biophys. 317, 374-384)の一般的な方法によって、修飾されたN末端を有するのがまた好適であり、これら双方の文献を出典明示によりここに取込む。本発明の菌細胞はチトクロムP450を発現し得る遺伝子作成物とチトクロムP450レダクターゼを発現し得る遺伝子作成物を含有する。簡便には、細胞は、チトクロムP450とチトクロムP450レダクターゼの双方を発現し得る一つの遺伝子作成物を含むことができ、あるいはチトクロムP450及びチトクロムP450レダクターゼを別の遺伝子作成物から発現させることができる。遺伝子作成物はDNA又はRNAであり得る。DNAが好ましい。遺伝子作成物は、典型的には例えばプラスミド又はバクテリオファージゲノムのような染色体外遺伝因子であるが、「遺伝子作成物」という用語は、特に遺伝子作成物が細菌の染色体の一部であり得ることを含む。例えば、遺伝子作成物は細菌染色体を溶原化したバクテリオファージの一部であり得る。遺伝子作成物は菌細胞におけるチトクロムP450又はチトクロムP450レダクターゼの発現に必要である遺伝因子を含む。菌細胞における転写と翻訳に必要な因子には、プロモーター、リボソーム結合部位、チトクロムP450又はチトクロムP450レダクターゼの翻訳領域が含まれる。プロモーターについては、選択された菌細胞において機能性がある実質的に全てのプロモーターを用いることができると考えられる。しかし、好適なプロモーターには、lac、lacUV5、tac、trc、λPL、T7、lpp、lpp-lac又はT3プロモーターが含まれる。もちろん、λPL、T7及びT3プロモーターはバクテリオファージ由来のものであり、大腸菌のような細菌において機能性を有することが知られている。調節可能なプロモーター、例えばlacプロモーターの使用が好ましい。例えばT7プロモーターのような強いプロモーターは用いないのが好ましい。細菌の発現をなすのに適切なリボソーム結合部位を、真核生物のチトクロムP450領域含有遺伝子中に含有せしめることがしばしば望まれる。しばしば、リボソーム結合部位とプロモーターは、所望の因子を含有し、その二つの末端に有用な制限酵素認識部位を有する近接した予め製作されたDNAセグメントとして定義される「カセット」として導入することができ、簡単な遺伝子操作により所望のチトクロムP450遺伝子又はcDNAあるいはチトクロムP450レダクターゼ内の適切な点に即座に挿入される。最も簡便には、相同系由来のプロモーターとリボソーム結合部位、例えばlacプロモーターとその随伴RBSを単に用いることが望ましい。しかし、一般には、任意の有効な細菌リボソーム結合部位を用いることが提案され、大腸菌、λ、T7又はT3由来のRBSが好ましい。更により好ましいリボソーム結合部位は、T7遺伝子10、又は大腸菌lacA、lacZ、trpA、trpB、trpC、trpD、trpE、trpL、trpR又はtrpS遺伝子由来のものである。特に好適なリボソーム結合部位とスペーサー領域は、5’-AGGAGGTCAT-3’(配列番号3)を含み、ここで下線部分はリボソーム結合部位であり、隣接するCAT配列はスペーサー領域である。(スペーサー領域はリボソーム部位とATG開始コドンの間の配列である。)典型的には、DNAをRNAに転写する酵素である、細菌RNAポリメラーゼの機能を終結させる機能を果たす適当な細菌の転写ターミネーターを、本発明に従って調製される遺伝子中に含有させることが望ましい。機能性細菌転写ターミネーターに対する要求はかなり単純であり、GCに富む二分子対称領域が先行する一連のT残基により通常は特徴付けられる。より好ましいターミネーターはTRP遺伝子からのもの、リボソームターミネーター、rrnB又はT7ファージからのターミネーター配列である。実際、T7ターミネーター配列は、メッセージ分解を明らかに遅延させるmRNAの3’末端にステムループ構造を持つRNアーゼIII切断部位を含む。遺伝子作成物は菌細胞中において増殖することができ、未来の世代に安定して伝達される。相補的な付着末端を介してベクターにDNAを作用可能に連結する様々な方法が開発されている。例えば、相補的なホモポリマー路を、ベクターDNAに挿入されるDNAセグメントに付加することができる。ベクターとDNAセグメントはついで相補的ホモポリマー尾端間に水素結合により結合されて組換えDNA分子が形成される。一又は複数の制限部位を含む合成リンカーは、DNAセグメントをベクターに結合させる代替方法を提供する。以前に記載されたようにエンドヌクレアーゼ制限消化により産生されたDNAセグメントは、バクテリオファージT4DNAポリメラーゼ又は大腸菌DNAポリメラーゼI、つまりその3’-5’-ヌクレオチド鎖末端切断(exonucleolytic)活性で一本鎖突出3’末端を除去し、その重合活性で陥凹3’末端を満たす酵素で処理する。従って、これらの活性の組合せは、平滑末端DNAセグメントを産生する。ついで平滑末端セグメントは、例えばバクテリオファージT4DNAリガーゼのような平滑末端DNA分子の連結を触媒することができる酵素の存在下で過剰モルのリンカー分子と共にインキュベートされる。しかして、反応産物はその末端にポリマーリンカー配列を担持するDNAセグメントである。ついでこれらのDNAセグメントは適切な制限酵素で切断され、該DNAセグメントのものと適合性のある末端をつくる酵素で切断された発現ベクターに連結される。様々な制限酵素部位を含む合成リンカーは、インターナショナル・バイオテクノロジー・インク(New Haven, CN, USA)を含む多数の供給源から市販されている。本発明のポリペプチドをコードしているDNAを修飾する望ましい方法は、Saikiほか((1988)Science 239, 487-491)により開示されているようなポリメラーゼ連鎖反応を用いるものである。この方法では、酵素的に増幅されるDNAには、それ自身が増幅DNA内に組入れられた2つの特異的なオリゴヌクレオチドプライマーが隣接する。上記特異的プライマーは従来から知られている方法を用いて発現ベクター中へのクローニングに使用することができる制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含むことができる。好適には、ベクターは、原核生物における増殖のための、例えばColEloriのような原核生物レプリコンを含む。ベクターは、また、それと共に形質転換された大腸菌のような宿主菌細胞において遺伝子の発現(転写と翻訳)を方向付け得る、例えば原核生物プロモーターのような適切なプロモーターを含むことができる。プロモーターは、RNAポリメラーゼの結合と転写を生じせしめるDNA配列により形成された発現調節領域である。代表的細菌宿主と適合性のあるプロモーター配列は、典型的には本発明のDNAセグメントの挿入に好都合な制限部位を含むプラスミドベクター中に提供される。典型的な原核生物のベクタープラスミドは、バイオラッド・ラボラトリーズ(Richmond, CA, USA)から入手できるpUC18、pUC19、pBR322及びpBR329と、ファーマシア(Piscataway, NJ, USA)から入手できるpTrc99AとpKK223-3である。本発明のDNA作成物での適当な細胞宿主の形質転換は、典型的には用いられるベクターに依存する周知の方法により達成される。宿主菌細胞の形質転換に関しては、例えば、Cohenほか((1972)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69, 2110)及びSambrookほか((1989)Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)を参照のこと。細胞を形質転換するには電気穿孔法もまた有用であり、菌細胞の形質転換について従来から良く知られている。例えば、多くの細菌種が、出典明示によりここに取込まれるLuchanskyほか((1988)Mol. Microbiol. 2, 637-646)に記載されている方法により形質転換され得る。最大数の形質転換体が25μFDで1cm当り6250Vを用いて2.5X PEB中に懸濁されたDNA-細胞混合物のエレクトロポレーションにより一貫して回収される。形質転換が成功した細胞、すなわち上記チトクロムP450又はチトクロムP450レダクターゼを発現し得るDNA作成物を含む細胞は良く知られた技術により同定することができる。例えば、本発明の発現作成物の導入により得られた細胞を育成してチトクロムP450又はチトクロムP450レダクターゼを生産することができる。Southern((1975)J. Mol. Biol. 98, 503)又はBerentほか((1985)Biotech. 3, 208)により記載されているような方法を使用して、細胞を収集し、溶解し、そのDNA内容物についてDNAの存在を検査する。あるいは、上清中のタンパク質の有無は以下に記載する抗体を用いて検出することができる。形質転換の成功は、組換えDNAの存在を直接的に検定することに加えて、組換えDNAがタンパク質の発現を方向付け得るときには、良く知られた免疫学的方法により確認することができる。例えば、発現ベクターでの形質転換が成功した細胞は適切な抗原性を示すタンパク質を産生する。形質転換されていると推量される細胞の試料を収集し、適当な抗体を用いてタンパク質を検定する。従って、本発明は、形質転換された宿主細胞自体に加えて、栄養培地中での、その細胞の培養、好ましくはモノクローナル(クローン的に均質)培養、又はモノクローナル培養由来の培養をまた考慮する。更なる好適な実施態様では、菌細胞はチトクロムP450又はチトクロムP450レダクターゼの正しい折畳みを助けるポリペプチド補助因子を発現し得る遺伝子作成物を更に含有する。そのようなポリペプチド補助因子の存在は、ポリペプチド補助因子の不存在下では、チトクロムP450又はチトクロムP450レダクターゼが非機能性封入体を形成しうる強いプロモーターからチトクロムP450又はチトクロムP450レダクターゼを発現するときに特に好適である。好適には、ポリペプチド補助因子は、例えばGroELS複合体、SecB、SecD、SecF、DnaJ/DnaK/GrpE複合体、ペプチジルプロピル-シス、トランス異性化酵素、遺伝子dsbA、dsbB、dsbC及びdsbDによりコード化されているプロテインジスルフィドイソメラーゼ様タンパク質、clpBによりコード化されている周辺質シャペロン又はチオレドキシンのようなシャペロン分子である。大腸菌において発現される外来タンパク質の溶解度は細菌チオレドキシンの同時生産により増加する(Yasukawaほか(1995)J. Biol. chem. 270, 25328-25331;出典明示によりここに取込む)。また、次の系又は宿主又は発現系を用いるのが有用である。1. 発現されたタンパク質(類)の分解を低減することができる大腸菌のプロテアーゼ欠乏株(例えばompT-、lon-、degP-)の使用。分泌された組換えタンパク質のタンパク分解性に影響を及ぼすあらゆる既知の座位が欠乏した一群の大腸菌株は、MeermanとGeorgion((1994)Biotechnology 12, 1107-1110)に記載されている。2. 何れも発現を向上させる、例えばユビキチン(Bakerほか(1994)J. Biol. Chem. 269, 25381-25386)、チオレドキシン(例えばインビトロゲンのpTrxFusベクター)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(例えばファーマシアのpGEXベクター)又はプロテインA(例えばファーマシアのpRIT2Tベクター)との融合タンパクとしてのP450及び/又はレダクターゼの発現。更にまた好適な実施態様では、菌細胞は、チトクロムP450とチトクロムP450レダクターゼの間の電子の伝達を助けるポリペプチド補助因子を発現し得る遺伝子作成物を更に含有する。好ましくは、上記補助因子はチトクロムb5又はチトクロムP450レダクターゼのFMN領域である。電子の伝達を助ける他の補助因子には、アドレノドキシン/アドレノドキシンレダクターゼ及びNADHチトクロムb5レダクターゼ(チトクロムb5と共に)が含まれる。本発明においてはNADPHよりもむしろ、NADHから電子を取る補助因子を用いるか、あるいは特に細胞全体の代謝を取扱うときは(「バイオリアクター」)、双方の補助因子を一緒に用いることが特に有益であると信じられる。これは、大腸菌における(NADP+NADPH)に対する(NAD+NADH)の細胞内比率が約4:1であるためである。従って、還元等価物がNADPHよりもNADHであるならば、P450還元(従って酵素活性)に対して遥かに大なる可能性がある。この点に関して、本発明は、細胞全体における酵素活性を増大させる手段として、細胞質プールにおけるNADH及び/又はNADPHの増大に至らせる付加又は修飾を含む。これは、細胞外媒質(取込み機構が存在するもの、例えばニコチンアミド)に対する前駆物質の付加、あるいはNADPHを破壊する酵素の阻害を含む。チトクロムP450レダクターゼのFMN領域は、Smithほか((1994)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 8710-8714)に記載されているように発現させることができ、チトクロムb5はHolmansほか((1994)Arch. Biochem. Biophys. 312, 554-565)に記載されているように発現させることができる。チトクロムP450がCYP3A4、CYP3A5、CYP3A7、CYP2E1及びCYP1A1の何れかである場合、電子の伝達を助けるポリペプチド補助因子が含まれるのが好ましい。チトクロムb5がCYP3A4、CYP3A5、CYP3A7又はCYP2E1の何れかと同時発現されるのが特に好ましい。また、FMN領域がCYP1A1と同時発現されるのが、特に好ましい。ある場合において、上記補助因子は菌細胞の細胞区画又は膜に補助因子を方向付けるN末端部分を含むことができると予想されるが、菌細胞において発現される場合、チトクロムb5又はチトクロムP450レダクターゼのFMN領域にそのような修飾を行わないのが好ましい。更なる実施態様は、チトクロムP450モノオキシゲナーゼ系により触媒される反応の生成物を代謝し得る任意の酵素を発現し得る遺伝子作成物を更に含有する本発明の菌細胞からなる。真核生物、特に哺乳動物の細胞又は動物、特に哺乳動物からの器官による化合物の代謝を模倣しようとするには、本発明の菌細胞において、真核細胞又は動物においてチトクロムP450モノオキシゲナーゼ系の産物を更に代謝し得る一又は複数の更なるポリペプチドを発現することが望ましい。これは、本発明の菌細胞が変異原性試験のためあるいは薬物代謝モデルとして使用される場合に特に有益である。簡便には、酵素は、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、エポキシドヒドラーゼ又はUDP-グルクロノシルトランスフェラーゼの何れかである。他の酵素には、スルホトランスフェラーゼ、N-アセチルトランスフェラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、γ-グルタミルトランスペプチダーゼ、システイン抱合β-リアーゼ、メチルトランスフェラーゼ、チオールトランスフェラーゼ、DT-ジアフォラーゼ、キノンレダクターゼ又はグリオキサラーゼが含まれる。幾つかの遺伝子作成物、例えばチトクロムP450とチトクロムP450レダクターゼ、そして時にはチトクロムb5又はチトクロムP450レダクターゼのFMN領域あるいは更なる酵素を発現する作成物は同じ菌細胞中に存在し得るので、その染色体中に取込まれる一つ又は複数の遺伝子作成物を有する菌株が提供されるのが好都合であり、これらの菌株を更なる遺伝因子の導入に対する「マスター」株として用いることができることが理解される。例えば、細菌「マスター」株が細菌染色体中に組込まれたチトクロムP450レダクターゼ遺伝子作成物を含有するのが特に好ましい。また、細菌「マスター」株は、細菌染色体からチトクロムP450レダクターゼとチトクロムb5の双方を発現する遺伝子作成物又は作成物類を含有するのが好ましい。これらの「マスター」株はついでチトクロムP450を発現し得る遺伝子作成物で形質転換される。本発明の更なる観点では、本発明の第1の観点の細胞を培養する方法が提供される。任意の適切な培地を使用することができる。栄養分に富むブロス、例えばテリフィックブロスを用いるのが好ましい。また、培地はヘム合成を助ける化合物を含んでいるのが好ましい。δ-アミノレブリン酸(ALA)が特に好ましい。菌細胞が二つ又はそれ以上の遺伝子作成物を含む本発明の全ての形態において、それら遺伝子作成物は同じ菌細胞において相互に適合性があると認識される。一般に、染色体に組込まれる遺伝子作成物は相互に適合性があり、2つの遺伝子作成物は、一方が染色体に組込まれ、他方がプラスミドのような自己レプリコンであるとき通常互いに適合性がある。一般に、本発明の遺伝子作成物を構成する同じ細胞を持たない2つ又はそれ以上の異なるプラスミドがあるとき、それらが適合性のあるプラスミド、例えば異なる複製起点を有するプラスミドであるのが望ましい。異なるプラスミドが、菌細胞が培地で育成させられるときに該異なるプラスミドの全てを選択できるように、異なる抗生物質耐性遺伝子をコード化するのがまた望ましい。本発明の第2の観点では、チトクロムP450の基質を製品に転換する方法であって、本発明の第1の観点に係る菌細胞と上記基質を混合することを含み、上記細胞が上記基質を転換することができる機能性チトクロムP450モノオキシゲナーゼ系を含む方法が提供される。本発明の第3の観点では、チトクロムP450の基質を製品に転換するための本発明の第1の観点に係る菌細胞の用途が提供される。本発明の菌細胞、特に機能性チトクロムP450モノオキシゲナーゼ系を発現する本発明の第1の観点の細胞は、多くの技術分野において用途が見出せる。次は、本発明の菌細胞が用いられる幾つかの特定の用途であるが、例えば、チトクロムP450基質を生成物に転換することが望まれる場合のように、他にも多くの用途があることが思料される。a)薬物開発と薬物試験安全な新薬を市場にもたらすことは費用がかかり、複雑でありかつ時間がかかる。薬物動態学的パラメータ、薬物/薬物相互作用及び毒性に関する市場製品の効果と安全性は、薬物開発に用いられるモデルに大きく依存する。リード化合物の欠点が開発の最も早期の段階で予測できるならば薬物開発において大きな進歩が達成できる。ヒトに対する動物モデルからの薬物毒性学的データの外挿には深刻な問題がある。これらはしばしば、大抵の治療薬の薬理学的かつ毒性学的性質を決定する薬物代謝酵素の触媒特性の種による顕著な差のためである。本発明の一部を構成し機能性P450モノオキシゲナーゼ系を発現する菌細胞、特に大腸菌とネズミチフス菌細胞は、ヒトの薬物代謝を模倣する理想的なモデルであり、酵母及び哺乳動物細胞に基づくモデルよりも取扱いが容易である。これらの細胞は、最適化された薬物代謝特性に関して薬物の高処理スクリーニング系を可能にする。この問題は、数百の化合物の薬物代謝特性の評価を短時間で行うことが必要となるコンビナトリアル化学ライブラリーの出現で特に重要となる。この実施態様では、菌細胞がここに記載した他の薬物代謝酵素もまた発現するのが有用である。b)バイオリアクター本発明の菌細胞は、P450類により触媒される酸化反応の高い基質、位置及びステレオ選択性のために、ファイン又はバルク化学薬品の合成及び化学反応中間物の合成に有用である。この実施態様では、適切な基質特異性を有するチトクロムP450を発現する本発明の菌細胞が選ばれることは明らかである。多くのチトクロムP450類の基質特異性は従来から知られており、従って適切なチトクロムP450が即座に選択できる。しかし、多くのチトクロムP450遺伝子が見出されるので、本発明においてそれらを用いることができ、実際新規なチトクロムP450を発現する本発明の菌細胞をその基質特異性を決定するために使用することができる。あるチトクロムP450類はアルカンをアルコールに、又は芳香族化合物をフェノール化合物に転換することができるので、本発明の菌細胞はそのようなアルコールとフェノール化合物が必要とされるバルク化学工業において有用であると認められる。しかし、チトクロムP450類により触媒される反応の多くは、複合構造の選択的酸化(ヒドロキシル化を含む)がしばしば必要となるファイン化学工業及び医薬産業において本発明の細胞が有用なものとなる。本発明の細胞はステロイドホルモン類とその類似体の合成に特に適していると思料される。c)生体触媒反応本発明において開発された系により、部位特異的変異誘発により産生されるP450変異体の迅速な機能性試験が可能になる。従って、改良された触媒特性を持つ新規なP450類を短時間で産生することができる。d)バイオ及び化学センサー本発明の菌細胞はバイオ又は化学センサーとしても有用である。特に、細胞から単離された膜が有用である。(検知又は検出される分子である)基質の結合は、菌細胞又は細胞から単離された膜が電極表面上に存在するときに電位変化をもたらし、よって基質分子の検出を可能にする。検出と分析のための固定化細胞の使用はKambeとNakanishi((1994)Current Opinion in Biotechnology 5, 54-59)に記載されている。e)バイオレメディエーション本発明の菌細胞はバイオレメディエーションにおいてもまた有用である。例えば、チトクロムP450モノオキシゲナーゼ系は有害な化合物を解毒することができる。有害な化合物を酸化することができる適切なチトクロムP450を発現する適切な菌細胞は上記化合物をより無害なようにするのに有用である。f)発ガン性試験他のところでより詳細に記載されているように、本発明の細胞、特にネズミチフス菌細胞は発ガン性試験において有用である。本発明の細胞は、無処置の細胞内において機能性チトクロムP450モノオキシゲナーゼ系を提供するので、特に有用であると考えられるが、膜が該細胞から単離され、該膜が細胞全体と比較してチトクロムP450モノオキシゲナーゼ系に富むこともまた本発明の一部である。菌細胞からの膜の単離は従来から良く知られている。本発明の細胞からの膜の単離は実施例でより詳細に記載する。本発明の第4の観点では、チトクロムP450を含む菌細胞であって、該細胞が上記チトクロムP450を発現し得る遺伝子作成物を含有し、チトクロムP450が菌細胞の細胞区画又は膜にチトクロムP450を方向付けるN末端部分を含む菌細胞が提供される。N末端部分はチトクロムP450を膜に方向付けることが好ましい。N末端部分はompA、pelB、malE又はphoAシグナルペプチド又はその機能的等価変異体を含むことが更に好ましい。N末端部分の好適な特徴、特にシグナルペプチド又はリーダー配列のものは、本発明の前記の観点において好適なものである。更に、チトクロムP450が菌細胞からのチトクロムP450の精製を助けるペプチド配列を更に含有することがより好ましい。更に好ましくは、上記ペプチド配列は化合物に対する結合部位を含む。上記ペプチド配列が-(His)-n(ここでn≧4)で上記化合物がニッケルであれば特に好適である。本発明の第4の観点は、チトクロムP450レダクターゼと通常はカップリングするチトクロムP450類と、アドレノドキシン/アドレノドキシンレダクターゼをカップリングするもの又は等価な電子伝達化合物のような他のチトクロムP450類の双方に対して有用であることが考えられる。従って、本発明の第4の観点の好適な実施態様においては、細胞は、等価な電子伝達成分のアドレノドキシン又はアドレノドキシンレダクターゼの各々又は双方を発現し得る遺伝子作成物を更に含有する。「等価な電子伝達成分」には、NADHからチトクロムP450へ電子を伝達できるあらゆる他の機能的に等価な成分、特にその自然の機能がNADHから特定のチトクロムP450類に電子を伝達することである成分が含まれる。本発明の第5の観点では、チトクロムP450を調製する方法であって、(a)本発明の第4の観点に係る充分な量の細胞を提供し(b)他の細胞区画からチトクロムP450を分離する方法が提供される。本発明の更なる観点では、チトクロムP450を発現し得る遺伝子作成物であって、チトクロムP450が菌細胞の細胞区画又は膜にチトクロムP450を方向付けるN末端部分を含有する作成物が提供される。N末端部分の好ましい特徴は、本発明の他の観点に関連して好適なものである。N末端部分がompA、pelB、melE又はphoAシグナルペプチド又は機能的に等価なその変異体を含んでなるものであれば特に好ましい。遺伝子作成物の他の好適な特徴は本発明の前述の観点において好ましいものである。本発明の他の更なる観点では、複数の本発明の第1又は第4の観点の菌細胞であって、各細胞が異なるチトクロムP450を発現し得る遺伝子作成物を含むか、チトクロムP450とチトクロムP450レダクターゼの異なる組み合わせをコード化する遺伝子作成物又は作成物群を含み、更に必要ならば、電子伝達を助けるもの又はチトクロムP450モノオキシゲナーゼ系の基質との反応の生成物を更に代謝するもののような他のポリペプチドを含むものが提供される。このような複数の細胞(又は細胞のライブラリー)は、例えばフリーザー中に適切な条件で、そして例えばマイクロタイタープレートで簡便に貯蔵することができ、各ウェルは異なる菌細胞を含む。複数の細胞は薬物試験又は発ガン性試験に対して、また上述したような他の目的に対して有用である。次の実施例と図面を参照して、以下に本発明を更に詳細に説明する。図1:pB216の作成プラスミドNF14は、SalIとBglII末端を持つtrpAターミネーターからなる徐冷オリゴヌクレオチド対により、存在する転写ターミネーターを置換することにより修飾した。この修飾により第2のBglII部位を除去し、残りのBglII部位で続くクローニングをなし、プラスミドpB215を作成した。PtacPtacプロモーターと共にpelBレダクターゼを含むBclI-BglII断片をpB207からpB215のBglII部位にサブクローニングし、同時発現プラスミドpB216を作成した。pelB-レダクターゼ挿入断片の配向は示されている通りであることが見出された。図2:大腸菌において発現されたレダクターゼとCYP3A4を含む膜画分のウェスタンブロット10μの各膜画分を各トラックに載せた。負荷の順序はブロットの上に沿って示されている。各発現サンプルはその非誘導対応物と並べて示されている。免疫検出はレダクターゼとCYP3Aに対する抗体を用いて実施された。ヒトの肝臓ミクロソームのトラック(10μgのミクロソームタンパク質)を参照トラックとして含めた。図3:本研究に用いられる2つの発現ベクターの提示プラスミドpCW(図3A)は、colE1複製開始点とβ-ラクタマーゼ遺伝子を含み、アンピシリンやカルベニシリンのような抗生物質に対する耐性をもたらす。これはP450のcDNAの発現に使用した。プラスミドpACYC184(図3B)はp15A複製開始点を含み、P450cDNAをpCWから同時に発現されているときに、P450レダクターゼのcDNAを発現するために使用した。pACYC184の選択に使用された抗生物質はクロラムフェニコールであった。独特の制限部位が強調文字で示されている。図4:細菌膜におけるP450レダクターゼの発現を示すウェスタンブロットタンパク質をSDS-PAGEにより分離し、ニトロセルロース膜上に移し、ウサギの抗レダクターゼ一次抗体と西洋わさびペルオキシダーゼ連結抗ウサギIgG二次抗体で探索した。検出は化学ルミネッセンスによった。タンパク質負荷はトラック当り10μgであった。非誘導及び誘導条件下での野生型P450レダクターゼのcDNAの発現はトラック1及び2にそれぞれ示す。細菌pelBリーダー-P450レダクターゼN末端融合タンパクの対応する発現はトラック3及び4に示す。ヒトの肝臓ミクロソームの試料を比較のためにトラック5に示す。レダクターゼ活性(mgタンパク質当り分当りに還元されたチトクロムcのnmol)は図の下に示す。図5:細菌膜におけるpelB-及びompA-CY3A4の発現を示すウェスタンブロットタンパク質を9%のアクリルアミドゲル上でSDS-PAGEにより分離し、ニトロセルロース上に移し、ウサギの抗CYP3A一次抗体と西洋わさびペルオキシダーゼ連結抗ウサギIgG二次抗体で探索した。検出は化学ルミネッセンスによった。レーン2と3は、それぞれpelB−CYP3A4かompA-CYP3A4の何れかを発現する細菌から単離した膜を含む(トラック当り24μgのタンパク質)。レーン1はヒトの肝臓ミクロソームの試料を比較のために含む(8μgのタンパク質)。図6:pelB-CYP3A4(図6A)、ompA-CYP3A4(図6B)を発現する細菌全体、あるいはこれらの細胞由来の膜から得られた還元Fe-COスペクトル一定分量の細胞又は膜を1:20で20%のグリセロール、10mMのCHAPS及び1mMのEDTAを含む100mMのトリス-HCl、pH7.4中に希釈し、数結晶の亜ジチオン酸ナトリウムを添加して還元し、ついで一対の適合ガラスキュベット間に等しく分けた。500から400nmの範囲に対するベースラインスペクトルの決定に続いて、試料キュベットを約1分間COで穏やかに泡立てた。ついで走査を繰り返し、91mM-1cm-1の消衰係数を用いてP450量を推定した。図7:還元Fe-CO差スペクトル(上記参照)から推定した大腸菌における異なる作成物からのCYP3A4の発現レベルのまとめ結果を平均±SDとして表した。尚、側定数は括弧で示す。標準化した条件(テリフィックブロス、30℃、24時間誘導)±0.5mMδ-ALA下で細胞を育成した。図8:細菌膜におけるompA-CYP2D6の発現を示すウェスタンブロットタンパク質を9%のアクリルアミドゲル上でSDS-PAGEにより分離し、ニトロセルロース上に移し、ウサギ抗CYP2D6及び抗レダクターゼ一次抗体の混合物で探索し、続いて西洋わさびペルオキシダーゼ連結抗ウサギIgG二次抗体で探索した。検出は化学ルミネッセンスによった。トラック1ないし4はそれぞれ2.5μgの細菌膜タンパクを含む。トラック5は10μgのヒト肝臓ミクロソームを含み、トラック6はタンパク標準物質を含む。膜は、空の発現ベクター、pCW(レーン1)、ompA-2D6のみ(レーン2)、又はヘム前駆物質δアミノレブリン酸の不存在下(レーン3)又は存在下(レーン4)の何れかで培養したompA-2D6プラスP450レダクターゼを担持する細胞から単離した。図9:ompA-CYP2D6のみ(図4A)、P450レダクターゼと同時発現されたompA-CYP2D6(図4B)を発現する細菌全体、あるいはこれらの細胞由来の膜から得られた還元Fe-COスペクトル一定分量の細胞又は膜を1:20で20%のグリセロール、10mMのCHAPS及び1mMのEDTAを含む100mMのトリス-HCl、pH7.4中に希釈し、数結晶の亜ジチオン酸ナトリウムを添加して還元し、ついで一対の適合ガラスキュベット間に等しく分けた。500から400nmの間のベースラインスペクトルの決定に続いて、試料キュベットを約1分間COで穏やかに泡立てた。ついで走査を繰り返し、91mM-1cm-1の消衰係数を用いてP450量を推定した。図10:還元Fe-CO差スペクトル(上記参照)から推定した大腸菌において単独で発現されたとき又はP450レダクターゼと同時発現されたときのompA-CYP2D6の観測レベルのまとめ結果を平均±SDとして表した。尚、側定数は括弧で示す。標準化した条件(テリフィックブロス、30℃、24時間誘導)±0.5mMδ-ALA下で細胞を育成した。図11:ompA-CYP2D6とP450レダクターゼを同時発現する細菌膜におけるブフラロールの1’-ヒドロキシル化に対して決定された動力学的パラメータタンパク質と時間(図示せず)に関して比例した生成物の形成をもたらす条件でNADPH産生系の存在下で基質の濃度を変えて(0−100μM)37℃で膜をインキュベートした。生成物形成の度合いを信頼のおける標準品を基準にして逆相HPLCにより評価した。動力学的パラメータを基質濃度に対する初速度の二重逆数プロットから推定した。図12:欠失と突然変異によるP450のN末端の修飾後に他のものにより得られた収量と比較した、遺伝子融合戦略を用いて大腸菌において達成されたP450の収量図13:ompA-CYP2A6を発現する細菌全体、あるいはこれらの細胞由来の膜から得られた還元Fe-COスペクトル一定分量の細胞又は膜を1:20で20%のグリセロール、10mMのCHAPS及び1mMのEDTAを含む100mMのトリス-HCl、pH7.4中に希釈し、数結晶の亜ジチオン酸ナトリウムを添加して還元し、ついで一対の適合ガラスキュベット間に等しく分けた。500から400nmの間のベースラインスペクトルの決定に続いて、試料キュベットを1分間COで穏やかに泡立てた。走査を繰り返し、91mM-1cm-1の消衰係数を用いてP450量を推定した。図14:還元Fe-COスペクトル(上記参照)から推定した、大腸菌において単独で発現されたときのompA-CYP2A6の観測レベルのまとめ結果を平均±SD、n=3として表した。尚、側定数は括弧で示す。δアミノレブリン酸(0.5mM)の存在下で標準化した条件(テリフィックブロス、30℃、24時間誘導)で細胞を育成した。図15:細菌膜におけるompA-CYP2E1の発現を示すウェスタンブロットタンパク質を9%のアクリルアミドゲル上でSDS-PAGEにより分離し、ニトロセルロース上に移し、ヒツジ抗CYP2E1一次抗体と西洋わさびペルオキシダーゼ連結抗ヒツジIgG二次抗体で探索した。検出は化学ルミネッセンスによった。レーン2は空の発現プラスミド、pCWを送り出す対照細菌から単離された膜を、レーン3はompA-CYP2E1から単離された膜を含む(それぞれの場合トラック当り24μgのタンパク質)。レーン1は比較のためのヒト肝臓ミクロソームの試料(8μgのタンパク質)を含む。図16:ompA-CYP2E1を発現する細菌全体から得られた還元Fe-COスペクトル一定分量の細胞を1:20で20%のグリセロール、10mMのCHAPS及び1mMのEDTAを含む100mMのトリス-HCl、pH7.4中に希釈し、数結晶の亜ジチオン酸ナトリウムを添加して還元し、ついで一対の適合ガラスキュベット間に等しく分けた。500から400nmの間のベースラインスキャンの決定に続いて、試料を1分間COで穏やかに泡立てた。走査を繰り返し、91mM-1cm-1の消衰係数を用いてP450量を推定した。発現レベル:細胞全体で451nmol/l培養。図17:未処理のJM109、AB1157、NS3678及びTA1535[pB216]細胞におけるCYP3A4によるニフェジピンの代謝グルコース(10mM)を補充したM9塩において振盪(200rpm)しながら37℃でインキュベーションを行った。0.5mlの10x濃縮細胞を4.5mlの緩衝液に加え、200μMの最終濃度までニフェジピンを添加するまで5−10分間37℃で前もって平衡化した。時々、200μlの分量を除去して、実施例4における材料と方法に記載されているようにHPLC分析のために処理した。図18:未処理のJM109、AB1157、NS3678及びTA1535[pB216]細胞におけるCYP3A4によるテストステロンの代謝グルコース(10mM)を補充したM9塩において振盪(200rpm)しながら37℃でインキュベーションを行った。0.5mlの10x濃縮細胞を4.5mlの緩衝液に加え、200μMの最終濃度までテストステロンを添加するまで5−10分間37℃で前もって平衡化した。時々、200μlの分量を除去して、実施例4における材料と方法に記載されているようにHPLC分析のために処理した。実施例1材料と方法菌株とプラスミド大腸菌K12株JM109(Yanischほか(1989)Gene 33, 103-19)及びDH5α(Woodcockほか(1989)Nucleic Acids Res 17, 3469-78)中における同時発現を比較した。全体を通じて選択し使用した菌株はJM109であった。ベクターpCWは、過去にCYP3A4を含む幾つかの哺乳動物P450のcDNAの発現に対して成功裡に使用されているので(Gillamほか(1993)Arch. Biochem. Biophys. 305, 123-131)、これをレダクターゼの発現に用いた。プラスミドpB207は、細菌pelBシグナル配列に翻訳的に融合したヒトレダクターゼcDNAを含むpCWベクターを含有する。cDNAの5’末端の配列は、[ATGAAATACCTGCTGCCGACCGCTGCTGCTGGTCTGCTGCTCCTCGCTGCCCAGCCGGCGATGGCCATGGATATCGGATCCGAATTCCGCAACATG-ヒトレダクターゼcDNA(〜2kb)](配列番号4)であり、ここでpelBリーダー配列には下線が付され、天然のレダクターゼATGは強調文字で示されている。NF14(最適化CYP3A4配列を含むpCW)をGillamほか(Gillamほか(1993)Arch. Biochem. Biophys. 305, 123-131)のものと同じような方法で作成した。転写ターミネーターを含むNF14のSalI-BglII断片を、次の配列(最初の鎖のみを示す)のtrpA転写ターミネーターを含むSalI-BglII二本鎖オリゴヌクレオチドと置換することによりプラスミドpB215を作成した:TCGACAGCCCGCCTAATGAGCGGGCTTTTTTTTA(配列番号5)。発現シグナルと共にpelB-レダクターゼcDNAを含むpB207からのBclI-BglII断片を、独特のBglII部位でpB215にサブクローン化してpB216を作成した。CYP3A4とレダクターゼの大腸菌中の同時発現発現条件は過去に記載されたもの(Gillamほか(1993)Arch. Biochem. Biophys. 305, 123-131)を修正したものとした。JM109細胞を、開示された(Inoueほか(1990)Gene 96, 23-8)pB216で形質転換し、形質転換体を50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天プレート上で単離した。単一のコロニーを調製し、アンピシリンを含むLBブロス中で5mlのスターター培養を播種するために使用し、これを37℃で一晩かけて振盪して成長させた。発現培養は、開示されたように(Gillamほか(1993)Arch. Biochem. Biophys. 305, 123-131)改変され補填されたテリフィックブロスを含む略100mlの培養(1lのフラスコ中)であった。発現培養は1mlの一晩の培養で播種され、1mMのIPTGでの誘導と0.5mMのδ-アミノレブリン酸の添加に先立って4−5時間の間、30℃、200rpmで振盪して育成した。ついで、異種性タンパクの育成と発現を200rpmで振盪しながら30℃で20−24時間継続した。培養の収集と発現レベルの決定開示されているようにして(Gillamほか(1993)Arch. Biochem. Biophys. 305, 123-131)、細胞を収穫し、5mlの100mMトリスアセテート(pH7.6)、0.5Mのスクロース、0.5mMのEDTA(2xTSE)中に再懸濁させた。ついで、等しい量の氷冷蒸留水を添加した。CYP3A4量は、Fe2+-CO対Fe2+差スペクトルを用いて、1xTSE中の50μlのホールセル懸濁液を950μlの100mMのトリスCl(pH7.4)、10mMのCHAPS、20%(v/v)のグリセロール、1mMのEDTAに加え、数粒子の亜ジチオン酸ナトリウムを加えて還元することにより決定した。ゼロ吸収のベースラインを500nmと400nmの間で記録し、ついで試料キュベットを約1分間の間定常CO流下でバブリングした。ついで、スペクトルを記録し、スペクトル的に活性なCYP3A4/l培養の収量を決定した。この段階で、一定分量の細胞全体を代謝の研究用に取り出した。膜画分は開示されたように(Gillamほか(1993)Arch. Biochem. Biophys. 305, 123-131)残りの細胞から単離した。膜のCYP3A4とレダクターゼ量を決定した。活性なレダクターゼの収量は、次のようにして、分光光度アッセイにより評価した。0.3Mのリン酸カリウム緩衝液(pH7.7)中の990μlの50μMのチトクロムcに、1−10μgの膜タンパクを添加し、ベースライン量を記録した。50μMのNADPHを加えてΔA550nmを経時的に記録した。膜のP450量を決定するために、細胞全体についてスペクトルを得た。異種的に発現されたCYP3A4とレダクターゼの免疫検出SDS−9%ポリアクリルアミドゲル上にトラック当り10μgの膜タンパクを載せ電気泳動法により分離した。ついでタンパク質をECL-ニトロセルロース膜(アメルシャム)に移し、TBS-T[50mMのトリスCl(pH7.9)、150mMのNaCl、0.05%のトウィーン20]中に10%のミルク粉末を含むもので20分間ブロックし、希釈した一次抗体とともに1時間までインキュベートした(ウサギの抗CYP3Aと抗レダクターゼ免疫グロブリンの混合物を使用した)。ついで膜をTBS-Tで洗浄し、希釈HRP-結合ロバ抗ウサギ抗血清中で約45分間インキュベートした。洗浄後、レダクターゼとCYP3A4をECL試薬(アメルシャム)を使用して検出した。抗レダクターゼ及び抗CYP3A4抗血清はICRFクレア・ホール・ファシリティにより提供され、HRP-結合ロバ抗ウサギ抗体はスコットランド・アンチボディ・プロダクション・ユニットから得た。テストステロン6β-水酸化酵素アッセイ細胞と膜画分で検定を行った。双方の場合において、約100pmolのP450を、30mMのMgCl2を含むTSE中で振盪しながらインキュベートした。テストステロンの最終濃度は0.2mMであった。膜を用いた場合、NADPH産生系を添加した(最終濃度1mMのNADP、5mMのグルコース-6-ホスファート、1単位のグルコース-6-ホスファートデヒドロゲナーゼ)。反応を5分間37℃で行わせ、1mlの氷冷メタノールを添加して停止させ、10分間氷上に放置した。遠心分離に続き、上清を等しい量の氷冷水で希釈し、IsoluteC18カラム(IST社)を用いてテストステロン代謝物を抽出し、1mlのメタノールに溶出させた。メタノールをSpeedVacで蒸発させ、代謝物をついで200μlの35%(v/v)メタノール中に再懸濁し、HPLCバイアルに移した。代謝物を、水、メタノール及びアセトニトリルに基づく勾配を使用して1ml/分の流量で、SpherisorbのODS-2(5μm)250x4.6mmカラム上でHPLCにより分離し、240nmで検出した。6β-ヒドロキシテストステロンの収量は既知の濃度の標準物質を参照して算定し、これによりテストステロンに対する組換えCYP3A4の比活性の決定が可能になった。HPLC法はGlaxo-Wellcomeから提供され、テストステロン代謝物はSteraloids社から提供された(Stering Winthropから贈られたもの)。エリスロマイシンN-デメチラーゼのアッセイ細菌膜画分を、NADPH産生系(上述のもの)の存在下で150mMのKClと10mMのMgCl2を含む50mMのHEPES緩衝液(pH7.5)中に含めた0.5mMのエリスロマイシンと共に、37℃で20分間の間、インキュベートした。ついで、7.5%(w/v)のトリクロロ酢酸の添加により反応を停止させ、遠心分離によりタンパク沈殿物を集めた。ついで、エリスロマイシンN-デメチラーゼの活性を、A412nmを測定する、Nash試薬[6Mの酢酸アンモニウム、60mMのアセチルアセトン、150mMの酢酸;Nash(1953)Biochem. J 55, 416-421]を使用して分光光度アッセイにより決定した。ニフェジピンオキシダーゼのアッセイ細胞又は細菌膜画分を、30mMのMgCl2を含むTSE中に含めた0.2mMのニフェディピンで、振盪しながら10分間の間、37℃でインキュベートした。膜画分を使用した場合は、NADPH産生系(上述のもの)を含めた。氷冷メタノール(30%(v/v)の最終濃度)と過塩素酸(1.5v/v最終濃度)を添加して反応を停止させ、遠心分離により沈殿タンパク質を集めた。上清をHPLCバイアルに移し、ニフェディピンとその酸化代謝物を、メタノール、アセトニトリル及び水(体積比25:30:45)の移動相を用いて、SpherisorbのODS-2(5μm)250x4.6mmカラム上でアイソクラティックに分離し、HPLCにより254nmで検出した。生成物の量は既知の酸化ニフェディピン濃度を含む標準物質を参照して算出した。結果CYP3A4とレダクターゼの同時発現用のプラスミドの作成大腸菌中でのレダクターゼの発現を最適化する予備実験では、ヒトレダクターゼのcDNAがそのN末端で細菌pelBリーダー配列に翻訳的に融合され、pB207と称されるプラスミドにおいてpCWのPtacPtacプロモーターから発現させたときに高レベルの調節可能な発現が達成された。これらの発現レベルはpelBリーダーを欠く匹敵する作成物から得られるもの(データは示さず)よりも大幅に高かった。これらの結果は、他の細菌のシグナル配列、ompAに融合されたラットのレダクターゼの過去の発現(Shenほか(1989)J. Biol. Chem. 264, 7584-7589)と一致している。同時発現プラスミドは、次のようにして、最適化されたCYP3A4発現プラスミドNF14にpelB-レダクターゼcDNAをサブクローン化することにより作成された(Gillamほか(1993)Arch. Biochem. Biophys. 305, 123-131)(本発明に対して再作成した)。ベクター内のBglII制限部位の一つを除去することによりNF14を修飾し、CYP3A4発現のターミネーターを保持しながらレダクターゼの次のクローン化に下流のBglII部位が用いられるようにした(詳しくは方法と材料の項と図1のpB215を参照のこと)。pelB-レダクターゼcDNAとそのPtacPtacプロモーターを含むpB207からのBclI-BglII断片をついでBglII部位でpB215にサブクローン化し、それぞれがPtacPtacプロモーターを担持している2つのcDNAがヘッドツーテイルで配置されたプラスミドpB216を作成した(図1参照)。pB216からのレダクターゼとCYP3A4の同時発現の最適化理想的な培養条件は、培養にδ-アミノレブリン酸を補填するとCYP3A4の発現を大幅的に増大させる(未公開データ)ことを除いて、NF14からのCYP3A4の発現に最適であるとされたもの(Gillamほか(1993)Arch. Biochem. Biophys. 305, 123-131)と同様であることが見出され、従って今回は常套的に使用される。大腸菌株JM109とDH5αにおける発現レベルが比較され、レダクターゼの発現レベルはJM109におけるよりもDH5αにおいて僅かに高いけれども、これはCYP3A4レベルを犠牲にしたものであったことが見出された(データは示さず)。従って、CYP3A4発現のレベルを優先させるべきであると決定されたので、JM109を発現株として選択した。大腸菌におけるレダクターゼの発現の過去の報告によれば、育成地にはリボフラボンが追加されることが示されている(Shenほか(1989)J. Biol. Chem. 264, 7584-7589)。我々は、リボフラボンを添加した場合の活性なレダクターゼの発現レベルに対する差異は無視できることを見出したので、発現培養にリボフラボンを含めなかった。発現レベルの決定細菌細胞全体におけるCYP3A4量はFe2+-CO対Fe2+差スペクトルを用いて決定することができるが、レダクターゼの発現レベルの評価には細菌膜画分が開示されたようにして(Gillamほか(1993)Arch. Biochem. Biophys. 305, 123-131)調製された。これが必要であったのは、レダクターゼアッセイがチトクロムcの還元速度を測定するからであり、JM109細胞において測定された背景活性が禁止的に高く、細胞又はスフェロプラストからの直接の測定を可能にする。pB216からのレダクターゼの発現に対しては、得られたレダクターゼの比活性は、膜調製物によるチトクロムcの還元の速度により計算して、400pmolレダクターゼ/mg膜タンパクの範囲にあった。膜中に測定されたCYP3A4量は典型的にはおよそ200pmol/mg膜タンパクであった。従って、pB216からのCYP3A4とレダクターゼの同時発現後に、細菌膜は、およそ2:1の比率のP450に対するP450レダクターゼを含んでいる。異種的に発現されたCYP3A4とレダクターゼの免疫検出異種的に発現されたレダクターゼとCYP3A4を示す典型的なウェスタンブロットを図2に示す。レダクターゼとCYP3A4に対応するバンドはpB216由来の膜画分において検出できる一方(トラック5及び6)、レダクターゼのみとCYP3A4のみはPB207(トラック1及び2)とNF14(トラック3及び4)由来の試料においてそれぞれ検出することができる。その発現がIPTGの添加によっては誘導されなかった(トラック4及び6)細菌培養から由来するトラックのレダクターゼとCYP3A4バンドの出現から観測されるように、発現は非誘導条件下では完全には抑制されなかった。しかし、これらの画分から由来する活性なレダクターゼとスペクトル的に活性なCYP3A4の量は誘導された培養から由来するものよりも更に低いことが見出され(データは示さず)、これが、バンドの検出が試料中のCYP3A4とレダクターゼの量に対して線形の応答ではないことを示しているのかも知れない。JM109pB216膜画分において異種的に発現されたCYP3A4とレダクターゼの量はヒトの肝臓のミクロソームの試料において検出されたものと同様であるようである(トラック6及び9)。細胞全体におけるCYP3A4活性のアッセイJM109pB216の細胞全体はテストステロンを代謝することが見出された。6β-ヒドロキシテストステロンは負の対照株JM109pCW(ベクターのみ)又はJM109pB207(レダクターゼ発現のみ)と共にテストステロンをインキュベートした後には検出されなかった。これは、大腸菌がCYP3A4が無い場合にテストステロンの6β-ヒドロキシル化を触媒することができないことを示している。CYP3A4だけを発現する細胞(JM109NF14)もまた検出可能なレベルの代謝物を生産せず、CYP3A4に電子を供与して触媒機能を許容し得る内因性タンパク質はないことを示している。しかしながら、100μMのクメンハイドロペルオキシドがJM109NF14細胞を含む反応物に添加されるときは、6β-ヒドロキシテストステロンが形成された。これは、JM109NF14細胞におけるCYP3A4が機能性であるが、利用できる電子の細胞内供給はないことを示唆している。達成された低い活性は細胞全体内でクメンヒドロペルオキシドに対するP450の隔絶性を反映する。レダクターゼとのCYP3A4の同時発現の際に、比較的高い速度のテストステロン代謝が生じる(JM109pB216試料)。これは、同時発現されたレダクターゼとCYP3A4が細胞全体中でカップリングして機能性モノオキシゲナーゼ系を産生する示している。この実験では、6β-水酸化酵素活性は〜17.3nmol産生6β-ヒドロキシテストステロン/分/nmolP450と計算された。細菌的に発現されたCYP3A4を含む再構築系での過去の結果は10nmol6β-ヒドロキシテストステロン/分/nmolP450までの代謝回転速度を得ていた(Gillamほか(1993)Arch. Biochem. Biophys. 305, 123-131)。JM109pB216膜によるテストステロン、エリスロマイシン及びニフェジピンの代謝pB216由来の膜画分はリン脂質、洗浄剤、グルタチオン又はチトクロムb5の補填なしにCYP3A4基質テストステロン、ニフェジピン及びエリスロマイシンの代謝を媒介することが見出された。これらのアッセイにおいては、100pmolのCYP3A4を含む膜画分をNADPH産生系の存在下で基質と共に単にインキュベートした。典型的な活性を表2に示す。結果は、JM109pB216膜画分が3つのCYP3A4基質の代謝に優れていることを示している。エリスロマイシンN-デメチラーゼ活性は、細菌的に発現されたCYP3A4を含む再構築系において過去に観察された(Gillamほか(1995)Arch. Biochem. Biophys. 317, 374-384)よりも〜2.5倍少なかった。しかしながら、これに対して、ニフェジピンオキシダーゼ活性は再構築系について過去に観察されたもの(Gillamほか(1993)Arch. Biochem. Biophys. 305, 123-131)と同様であった。P450量はFe2+-CO対Fe2+差スペクトルにより測定した。含量は4回の実験の平均±SDとして表している。*量は1xTSE中に含めた50μl細胞において測定した(〜0.5ml培養)。†量は組換え細菌由来の膜画分中のmgタンパク質当りで評価した。レダクターゼ活性は膜画分中のmgタンパク質当りのチトクロムcの還元速度を測定することにより計算し、値を4回の平均±SDとした。n.d.=検出可能な活性はなし組換えCYP3A4とp450レダクターゼを含む細胞又は膜による3種の既知のCYP3A4基質の代謝を評価した。代謝回転数は、nmol生成物/分/nmol P450として記録し、±SDで示した。検出された生成物は6βヒドロキシテストステロン、酸化ニフェジピン及びホルムアルデヒドであった。活性が検出されなかった場合は、検出レベルを示す。テストステロンの代謝では、CYP3A4又はP450レダクターゼの何れかを欠く細胞又は膜と共に60分インキュベートした後でさえ6βヒドロキシテストステロンは生成されなかった。* エリスロマイシンの代謝に対しては、細胞全体によるホルムアルデヒド生成の背景レベルが非常に高かったので、活性は膜についてのみ記録することができた。議論この実施例では、我々は、ヒトCYP3A4及びP450レダクターゼをコードしているcDNAの同時発現による機能性P450モノオキシゲナーゼ系の産生を記述する。我々の知る限りでは、これは、哺乳動物の異物代謝P450が未処理の大腸菌細胞において触媒的に活性であることが示された最初の例である。ステロイド産生P450 17α-水酸化酵素/17-,20-リアーゼ(P450c17)は、細菌フラボドキシン/NADPH-フラボドキシンレダクターゼ系から電子を受け取るその能力のために大腸菌において機能性であるけれども(Jenkinsほか(1994)J. Biol. Chem. 269, 27401-27408)、CYP3A4だけを発現する大腸菌細胞(JM109NF14細胞)は電子の外来性の供与がない場合には(この場合にはクメンヒドロペルオキシドから)CYP3A4基質テストステロンを代謝しなかった。従って、CYP3A4はこのあるいは他の細菌レダクターゼとはカップリングし得ないと結論できる。我々は、これらの細胞を有用なP450代謝物の生産に対する生体触媒として使用できるかもしれないことから、CYP3A4とヒトP450レダクターゼの大腸菌における同時発現系を開発した。単一プラスミドpB216において別個のPtacPtacプロモーターのもとで両方のcDNAが発現され、CYP3A4とレダクターゼの協調性発現がIPTGにより誘導された。発現の最適レベルを達成するために、双方のcDNAをその元の形態から改変した。CYP3A4のcDNAの5’末端を過去に記載されているようにして改変した(Gillamほか(1993)Arch. Biochem. Biophys. 305, 123-131)。P450レダクターゼの効果的な発現には、細菌のpelBシグナルペプチドをコードしている配列との融合によりcDNAの5’末端を伸展させることが必要であることが分かった。200pmol/mg膜タンパクのCYP3A4の収量と400pmol/mg膜タンパクのレダクターゼの収量が得られた。同時発現されたCYP3A4及びpelB-レダクターゼは、これらから単離されたJM109pB216細胞と膜がCYP3A4基質に対して活性であるので、細菌の周辺質膜の同じ面上に局在化しうると思われ、これはタンパク質が効果的にカップリングできなければならないことを示している。基質に対して測定された活性は、再構築系において精製された細菌発現CYP3A4で得られた過去の結果(Gillamほか(1993)Arch. Biochem. Biophys. 305, 123-131;Gillamほか(1995)Arch. Biochem. Biophys. 317, 374-384)よりも高いことが分かった。このような再構築系は精製CYP3A4、レダクターゼ、チトクロムb5、グルタチオン、洗浄剤及び最適化リン脂質組成物を含む。チトクロムb5は、CYP3A4-レダクターゼ融合タンパク質に対する特定の基質に対して最大のCYP3A4活性を得るのに重要であることが示されている一方(Shetほか(1993)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 11748-11752)、リン脂質組成物とグルタチオン濃度もまたCYP3A4を含む再構築系において重要であることも示された(Gillamほか(1993)Arch. Biochem. Biophys. 305, 123-131)。これらの付属的な因子がない場合は、テストステロンに対するCYP3A4活性は、ここで用いた単純な緩衝系内では細胞全体及び膜においてむしろ予期されなかった。従って、これらの基質に対する高レベルのCYP3A4活性が、我々の研究では、外来的に添加されるチトクロムb5の不存在下で観察されたことは極めて興味深かった。要約すると、我々は、大腸菌におけるCYP3A4とヒトP450レダクターゼの高レベルの同時発現を成功裡に達成した。結果として得られた菌株は外来的に適用されたNADPHの不存在下においてさえもテストステロンとニフェジピンのホールセル代謝に好適であり、(少なくとも)レダクターゼ活性部位が細胞質的に配向していることを示唆している。細菌由来の膜は、NADPHのみが補充された簡単な緩衝液中においてテストステロン、ニフェジピン及びエリスロマイシンを代謝する。我々の同時発現菌株から達成される特異的活性は再構築系で過去に得られたよりも高い。代謝回転速度を改善するためにこの矛盾の可能な理由を調査することを我々は望む。本実施例において記載された菌株はCYP3A4代謝物の生産に対する生物工学的ツールとしての用途があり、大腸菌におけるP450レダクターゼとの他のP450のアイソフォームの将来の同時発現のモデル系として使用される。実施例2:材料と方法菌株とプラスミド大腸菌K-12株JM109(Yanischほか(1985)Gene 33, 103-19)を全体を通じて使用した。チトクロムP450cDNAをプラスミドpCWから発現させた。このプラスミドは、β-ラクタマーゼ遺伝子を含み、よってアンピシリン又はカルベニシリンのような薬剤の存在下で育成された菌細胞において安定に維持することができる。ヒトP450レダクターゼcDNAはプラスミドpACYC184から発現され、該プラスミドはクロラムフェニコールの存在下で菌細胞中に安定に維持することができる。細菌シグナルペプチドコード配列の単離と発現作成物の産生細菌pelBシグナルペプチドに対するコード配列の供給源は市販のベクターpET-20b(ノバゲン)であった。染色体DNAを大腸菌株JM109から抽出し、特異的オリゴヌクレオチドプライマーを使用するPCRによるompAリーダー配列の単離に対する鋳型として使用した。このPCR産物をサブクローン化し、ジデオキシ配列決定を行い、GenEMBLデータベースに既に登録されているompAリーダー配列(目録番号:v00307)、すなわち:5’ATGAAAAAGACAGCTATCGCGATTGCAGTGGCACTGGCTGGTTTCGCTACCGTAGCGCAGGCC-3’(配列番号6)と同一であることが分かった。PCR融合技術(Yonほか(1989)Nucleic Acids Res. 17, 4895)を使用して全長P450cDNAの5’末端にインフレームで細菌pelB又はompAシグナルペプチドのコード配列を融合させた。この方法を使用して、pelB-CYP3A4、ompA-CYP3A4、ompA-CYP2D6、ompA-CYP2A6及びompA-CYP2E1融合を作成し、各々の場合において作成物の5’末端のNdeI制限部位を操作してpCWへのサブクローン化を容易にした。全てのPCR由来断片はジデオキシ配列決定により確かめた。過去に記載されたpelB-ヒトレダクターゼ作成物を上流(tac)2プロモーターカセットと共に、BclI-BglII断片として、プラスミドpACYC184の独特のBamHI部位にサブクローン化して、プラスミドpJR7を生産した。細菌リーダー配列に融合したヒトP450類の大腸菌における発現JM109細胞をpCW/pelB-CYP3A4、pCW/ompA-CYP3A4、pCW/ompA-CYP2D6、pCW/ompA-CYP2A6又はpCW/ompA-CYP2E1で形質転換した(Inoueほか(1990)Gene 96, 23-28)。形質転換細胞をアンピシリンで選択し、更なる研究用に増幅した。同時発現では、JM109細胞をプラスミドpCW/ompA-CYP2D6及びpJR7で同時形質転換し、アンピシリンとクロラムフェニコールの両方で選択した。標準的なプロトコールを全ての発現及び同時発現実験に対して用いた。形質転換体は、凍結グリセロール貯蔵物から、アンピシリンだけか(p450の発現に対して)アンピシリンとクロラムフェニコール(P450とレダクターゼの同時発現に対して)を含むLB寒天プレート上に画線され、37℃で12−14時間インキュベートされた。ついで、単一の単離コロニーを数mlのLBブロス(適当な抗生物質を含む)中に播種し、37℃で一晩振盪させた。このスターター培養を、1lの三角フラスコ中において、開示された(Gillamほか(1993)Arch. Biochem. Biophys. 305, 123-131)ようにして改変され補充され、しかしレダクターゼが同時発現されるときはクロラムフェニコール(25μg/ml)が添加された100mlのテリフィックブロス中に1:100で希釈した。これらの培養を振盪しながら30℃で4−5時間インキュベートした。ついで、ヘム前駆物質δ-アミノレブリン酸を、0.5mMの最終濃度になるまで添加し、1mMになるまで誘導剤IPTGを添加した。ついで異種性タンパク質の発現を30℃で22−23時間の間継続させた。培養の収集と発現レベルの決定−先に記載されたとおり異種的に発現されたP450とレダクターゼの免疫検出SDS-9%ポリアクリルアミドゲル上でタンパク質を分離し、ついでHybond-ECL膜(アメルシャム、UK)上に移した。該膜を、TBS-X[50mMのトリスCl(pH7.9)、150mMのNaCl、0.10%のトリトンX-100]中に5%のミルク粉末を含むもので1時間ブロックし、希釈した一次抗体と共に45−60分間インキュベートした。用いた一次抗体は、ウサギ抗-CYP3A、ウサギ抗-CYP2D6、ウサギ抗レダクターゼ、又はヒツジ抗-CYP2E1免疫グロブリンであった。ついで膜をTBS-Xで4回洗浄し、25−35分間二次抗体(適当なHRP-結合ロバ抗ウサギ又は抗ヒツジIgG)でインキュベートした。TBS-Xで4回洗浄した後、ECL(アメルシャム、UK)を用いて化学ルミネッセンスにより組換えタンパク質を検出した。二次抗体は、スコットランド・アンチボディ・プロダクション・ユニットから得た。ブフラロール1’-水酸化酵素アッセイ300μlの全容積中に20又は50pmolのCYP2D6、50μM(±)-ブフラロール及びNADPH産生系(実施例1を参照)を含む50mMのリン酸カリウム緩衝液、pH7.4中において37℃で細菌膜画分について検定を行った。pCW/ompA-CYP2D6のみ(すなわち同時発現されるレダクターゼはなし)を担持する細胞から単離された膜に対しては、NADPH産生系は100μMのクメンヒドロペルオキシドにより置換した。反応を15μlの60%過塩素酸の添加により停止させ、5−10分間氷上に置いた。沈殿したタンパク質を遠心分離により除去し、ついで上清について、信頼性のある標準物質を参照して、逆相HPLCにより1’-ヒドロキシブフラロールを分析した。分離は、Spherisorbの5μmのODS-2カラム25cmx4.6mmと、アセトニトリルの線形勾配(12分で27から51%)を持つ0.1M酢酸アンモニウム(pH5.0)の移動相を用いて達成した。検出は、それぞれ252nmと302nmの励起及び放射波長を使用した蛍光法によった。細胞全体についての検定を50mlの三角フラスコ中で37℃で実施した。5mlの全容積中に50pmolのCYP2D6、50μM(±)-ブフラロール及び1xTSE緩衝液を含んでいた。試料(300μl)を、氷上に60%過塩素酸を15μl含む管内に0、2、5及び10分で取り出した。ついで膜のアッセイ(上記)と同様にして分析を進めた。ミカエリス-メンテン動力学パラメータの決定に対しては、20pmolのCYP2D6で5分間、基質の濃度を変えながら(0から100μM)インキュベーションを行った。Kmとvmaxは初期反応速度対基質濃度の二重逆数プロットから推定した。結果P450とP450レダクターゼのcDNAの単離:CYP3A4、CYP2D6、CYP2A6及びCYP2E1及びP450レダクターゼに対するcDNAを、刊行されている配列情報に基づいて合成されたアンプリマーを使用してRT-PCRにより単離した。cDNAはDNA配列決定により確証され、CYP3A4、CYP2D6、CYP2A6及びCYP2E1及びヒトP450レダクターゼに対して刊行されたものと同一の一次構造を持つタンパク質をコードすることが分かった。pelBリーダー配列に融合したヒトP450レダクターゼの作成と発現P450レダクターゼはヒトP450類の触媒活性に必要であり、大腸菌中には存在しない。我々は、大腸菌において天然のP450レダクターゼ又はpelBリーダー配列(MKYLLPTAAAGLLLLAAQPAMA-)(配列番号1)にそのN末端で融合したP450レダクターゼを発現させようと試みた。最初は、プラスミドpCWにおいてIPTG(イソプロピルチオガラクトシド)誘導性(tac)2プロモーターの調節下で両方のタンパク質を発現させようと試みた(図3)。天然のP450-レダクターゼ及びpelB-レダクターゼが宿っている大腸菌から膜を単離し、免疫ブロットにより分析した(図4)。IPTGがない場合は、無視できる量のP450レダクターゼが検出され、組換えタンパク質の明白な誘導がIPTGの添加時に観察された。プラスミドpJR1からの天然P450レダクターゼの発現は低い一方、高レベルのpelB-P450レダクターゼがプラスミドpJR2から得られた。これらの差異は、二つの組換えタンパク質を含む膜において検出されたチトクロムcに対するP450-レダクターゼ活性にもまた反映されていた。これらの調製物において、pelB-レダクターゼは天然のP450レダクターゼと比較しておよそ10倍強いレダクターゼ活性を示した(図4)。これらの結果は、大腸菌における機能性P450レダクターゼの最適な発現は細菌リーダー配列へのこのタンパク質の融合の後にのみ可能になることを明らかに証明している。細菌リーダー配列に融合したCYP3A4の作成と発現CYP3A4は主要なヒトの肝臓のP450であり(Shimadaほか(1994)J. Pharmacol. Exp. Ther. 270, 414-423)、広範囲の治療薬並びに化学発ガン物質の代謝に関与している。この重要なP450の効果的な発現を達成するために、我々は、任意の部位において任意の二つの配列の融合を可能にすることが示されているPCRベースの戦略(Yonほか(1989)Nucleic Acids. Res. 17, 4895)を使用して、細菌pelB又は細菌ompAリーダー配列(MKKTAIAIAVALAGFATVAQA)(配列番号2)にそのN末端で融合したCYP3A4をコードする一連の修飾CYP3A4のcDNAを作成した。結果的に得られたcDNA作成物を配列決定し、ベクターpCWにクローン化し、発現のために大腸菌株JM109に形質転換した。アンピシリンの存在下で成長したコロニーを更なるDNA及びタンパク質の分析用に選択した。発現作成物を含む大腸菌をテリフィックブロス中で成長させ、材料と方法の項に記載されたようにしてIPTGによりP450発現を誘導した。細菌膜の免疫ブロット分析(図5)及び細胞全体又は膜のスペクトル分析(図6)によりCYP3A4の発現を検出した。図5から分かるように、免疫反応性pelB-CYP3A4のレベルはヒトの肝臓ミクロソームに見出されるCYP3A4レベルと同様である一方、免疫反応性ompA-CYP3A4のレベルは少なくとも一桁強かった。興味深いことに、pelB-CYP3A4は2つの接近して遊走する免疫反応性タンパク質を産生した。同様な結果が、ニッケル-アガロースアフィニティクロマトグラフィーによるHisタグpelB-3A4の精製後にも得られ、また精製されたompA-3A4は同様に均質なタンパク質を産生した。pelB-CYP3A4とompA-CYP3A4は、P450ヘモタンパク質に典型的なFe2+対Fe2+-COスペクトルを示した(図6)。スペクトル的に活性なpelB-CYP3A4の収量(ompA-CYP3A4タンパク質のものではない)は、成長培地におけるδ-アミノラエブリン酸(ALA)の存在下で強く刺激された(図7)。免疫ブロット分析から予期されたほど差異は顕著ではないが、これらの条件下で、ompA-3A4は、pelB-CYP3A4と比較してより多くのスペクトル的に活性なP450を産生した(それぞれ500nmol/l培養対143nmol/l培養)。培地中のALAの存在により、組換えP450のスペクトル分析において420nmの吸収ピークが出現する(図6、ALAの存在下で発現されたpelB-3A4及びALAの不存在下で発現されたompA-3A4を参照せよ)。発現されたタンパク質の触媒活性の直接的な測定は、細菌膜中にP450レダクターゼがないので可能ではなかった。従って、P450酵素活性は、P450類に対する人工的な酸素供与体となるクメンヒドロペルオキシドの存在下で測定した。この分析において、テストステロンの6β-水酸化に対するpelB-CYP3A4とompA-CYP3A4の代謝回転数はそれぞれ4.2min-1及び3.2min-1であった。これらの結果は、大腸菌においてこれらのP450類はスペクトル的にかつ触媒的に活性な酵素に正しく折畳まれることを明白に証明している。ompAリーダー配列に融合したCYP2D6の作成と発現ompA-CYP3A4に対して得られた収量はpelB-CYP3A4に対するよりも更に高かったことを我々は見出したので、様々な治療的に重要な化合物の代謝に関与しているP450であるCYP2D6のN末端にompA配列を排他的に融合させることを決めた。CYP2D6cDNAへのompAシグナル配列の融合に用いたPCR技術はompA-CYP3A4の作成に用いられた戦略と同様であった。この作成物はベクターpCWから発現された。図8は、ompA-CYP2D6のcDNA作成物を含んでいる大腸菌から得られた細菌膜の免疫ブロットを示している(レーン2)。組換えCYP2D6に対応する免疫反応性バンドがこれらの膜において検出されたが、これは空の発現プラスミドpCWを担持する細菌から単離された膜には存在していなかった(レーン1)。ompA-CYP2D6は典型的なP450のFe2+対Fe2+-COスペクトルを示した(図9)。スペクトル的に活性なCYP2D6の収量(481nmol/l培養、図10)はompA-CYP3A4に対して得られた収量と同様であり、前者のヘモタンパク質を発現する細菌は明確な赤色に着色された。スペクトル的に活性なompA-CYP2D6のALAに依存した増大はpelB-CYP3A4に対するよりも更に強かった。クメンヒドロペルオキシドの存在下では、ompA-CYP2D6は、50±3min-1の代謝回転数で典型的なCYP2D6基質ブフラロールの水酸化を触媒した。細菌リーダー配列に融合したP450とP450-レダクターゼの同時発現は大腸菌において機能性モノオキシゲナーゼ系を産生する:機能性P450-モノオキシゲナーゼ系を産生するために、我々は大腸菌においてP450とP450-レダクターゼを同時発現することを試みた。大腸菌において2つのタンパク質の同時発現を達成するには3つの主要な方法を考えることができる。第1は、2つのcDNAを同じ細胞において分離した適合性プラスミドから発現させることができる:例えばP450をpCWから、P450レダクターゼを別個のベクターから発現させることができる。第2に、双方のcDNAを同じプラスミドにサブクローン化することができる。第3に、P450又はP450レダクターゼをコードしているcDNAの一つ又は双方を細菌染色体に組込むことができる。我々は、技術的な要求が最も少ない最初の戦略を選択した。pelB-レダクターゼcDNAをベクターpACYC184中に(図3)クローン化してベクターpJR7を産生した。この作成物の利点は、pACYC184がpCWとは異なる複製開始点を含むことである。加えて、これらのベクターは異なる選択マーカーを含み、これにより一つはP450-レダクターゼの発現(pACYC184)、他方(pCW)はP450の発現に対して、2つの別個のプラスミドでの安定した同時形質転換が可能となる。大腸菌は、ompA-CYP2D6のcDNAを担持するpCW及びpJR7で形質転換をした。形質転換体をアンピシリンとクロラムフェニコール上で選択し、更なる分析のために拡大した。免疫ブロット(図8)により同時発現菌株から単離された膜における組換えP450レダクターゼとCYP2D6に対応する免疫反応性バンドが明らかになり(レーン3と4)、これは空の発現ベクターpCWを担持する細菌から単離された膜には両方とも無かった(レーン1)。ompA-CYP2D6とpelB-レダクターゼを同時発現する大腸菌は典型的なFe2+対Fe2+-COスペクトル(図9)を示した。スペクトル的に活性なompA-CYP2D6の細胞全体の収量は同時発現株において365nmol/l培養であり、これはCYP2D6だけを発現する大腸菌におけるよりも25%だけ低かった(図10)。ompA-CYP2D6とP450-レダクターゼを含む膜は530nmol/min/mgのチトクロムcレダクターゼ活性を示し、これはヒト肝臓ミクロソームに対して報告された値より2倍高い。最も重要な点は、ompA-CYP2D6とpelB-レダクターゼを同時発現する未処理の細菌並びにその由来の膜が、それぞれ4.6min-1と5.7min-1の代謝回転数と、ヒト肝臓ミクロソームに対して報告された値より40倍高い比活性(1.2nmol/min/mg膜タンパク)で、極めて効率良く典型的なCYP2D6基質ブフラロールの水酸化を触媒した。ブフラロールの1’-水酸化を触媒したCYP2D6に対するVmaxとKmはそれぞれ13.3min-1と11.1μMであった(図11)。ompAシグナルペプチドに融合したCYP2A6の作成と発現ompAシグナルペプチドを全長CYP2A6のN末端にPCR法により融合させた。pCWから発現した組換えompA-CYP2A6は、細胞全体と膜の双方がこれらの細胞から由来する典型的なFe2+対Fe2+-CO差スペクトルを示した(図13)。細胞全体におけるスペクトル的に活性なCYP3A6の収量(193nmol/l培養、図14)は類似作成物から発現されたCYP3A4かCYP2D6の何れよりも幾分低かった。しかし、これらの細胞から単離された膜の特異的CYP2A6量はヒト肝臓ミクロソームに見出されるレベルを大きく越えていた。ompAシグナルペプチドに融合したCYP2E1の作成と発現ompAシグナルペプチドを全長CYP2E1のN末端に融合させるために同じPCRベースの戦略を用いた。pCWからの発現により、特異的抗-CYP2E1抗体を使用する免疫ブロット法で検出可能であったタンパク質が細菌膜に出現し(図15、レーン3)、これはヒト肝臓ミクロソーム(図15、ライン1)の試料におけるCYP2E1と同じ見かけサイズであった。このタンパク質は、空の発現プラスミド、pCWを担持する大腸菌から単離された膜の試料では見出せなかった(レーン2)。相対的なバンド強度(レーン1と3を比較)から、この細菌株において非常に高いレベルの組換えCYP2E1が生産されたことが示唆される。更に、pCW/ompA-CYP2E1からの発現により、菌細胞全体において典型的な還元Fe-CO差スペクトルがつくられた(図16)。但し、この例では、約420nmでの吸収極大は他のP450-発現作成物のものよりもむしろより明白であった。pCW/ompA-CYP2E1を担持する大腸菌全体におけるスペクトル的に活性なCYP2E1の収量は451nmol/l培養と推定され、これは類似のompA-作成物から細胞全体において生産されるCYP3A4及びCYP2D6のレベルとほぼ同じである。議論この実施例は、例えばpelB及びompAのような細菌リーダー配列にP450類並びにP450レダクターゼを融合させることにより、大腸菌において非常に機能性のモノオキシゲナーゼ系をつくることができることを証明している。このことは、pelBリーダー配列への天然P450レダクターゼの融合及びベクターpCWからのこの作成物の発現の後に得られるほぼ十倍増加する機能性P450レダクターゼレベルにより明白に例証される(図1)。P450類とP450-レダクターゼの同時発現に対して我々が用いたベクターpACYC184からのpelB-レダクターゼの発現により、ヒト肝臓ミクロソームにおいて見出されたものと同様の大腸菌膜におけるP450-レダクターゼレベルを産生した(100pmolP450-レダクターゼ/mgタンパク)。我々のアプローチ法の利用性は、pelB-P450レダクターゼを、大腸菌において達成されるレベルと同様のレベルでネズミチフス菌においても発現させることができるので(データは示さず)、大腸菌におけるP450-レダクターゼの発現にのみ限られるものではない。更に、細菌リーダー配列に融合したP450類は、最適なP450発現に対して必須であると過去には考えられていた(Barnesほか(1991)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88, 5597-5601; Gillamほか(1993)Arch. Biochem. Biophys. 305, 123-131; Larsonほか(1991)J. Biol. Chem. 266, 7321-7324)P450N末端の広範な修飾に依存しないで大腸菌において効率的に発現させることができることを我々は証明した。我々の遺伝子融合アプローチは、CYP3A4,CYP2D6、CYP2A6及びCYP2E1(図5、8及び15)を全てこの戦略を用いて大腸菌において発現できることを我々は示すことができたので、異なる遺伝子ファミリーに属するP450類に対しても適用可能である。我々は最近このアプローチをCYP2C9とCYP2D9にも拡張した。以前はCYP3A4とCYP2D6のcDNAは、二次構造を形成する可能性を持つ領域を除去するためにその5’末端を修飾した後に大腸菌において発現されていた(Gonzalezほか(1995)Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 35, 369-390)。これらの修飾はCYP3A4とCYP2D6のN末端領域の広範な変化になって現れた(以下これらの修飾タンパク質をそれぞれ17α-CYP3A4及び17α-CYP2D6と称す)。P450の収量に関しては、ベクターpCWから発現されたompA-CYP3A4及びompA-CYP2D6の収量は17α-CYP3A4及び17α-CYP2D6に対する刊行値よりも少なくとも1.7及び4.8の係数だけそれぞれ高いので、P450の収量に関し少なくとも我々が試みたP450類に対しては、我々の遺伝子融合戦略はこのアプローチより優れている(図12)。我々は、刊行された手順(Gillamほか(1993)Arch. Biochem. Biophys. 305, 123-131; Gillamほか(1995)Arch. Biochem. Biophys. 319, 540-550)に従って我々の研究所において産生された作成物から17α-CYP3A4と17α-CYP2D6の発現を繰り返すことにより、この観察を補強した。我々はヒスチジン残基の伸展を含むC末端伸展を有するpelB-CYP3A4及びompA-CYP3A4を発現した。我々はニッケルアガロースアフィニティクロマトグラフィーを使用する構造解析のためにこれらのタンパク質のmg量を精製することができた。我々はompAリーダー融合戦略を拡張して、2つの更なるヒトチトクロムP450、すなわちCYP2A6及びCYP2E1の発現を可能にした。CYP2E1に対しては、451nmol/l培養という我々の発現レベル(図16)は、通常の配列最適化法を使用して、大腸菌におけるこの酵素の過去に発表された発現レベル(40nmol/l, Gillamほか(1994)Arch. Biochem. Biophys. 312, 59-66)よりも一桁大きい。我々の知る限りでは、大腸菌におけるCYP2A6の発現はこれまで全く報告されていない。従って、我々は我々の系の単純性と多用途性を証明することができた。最も重要なことは、遺伝子融合アプローチを、大腸菌における非常に機能性のヒトP450モノオキシゲナーゼ系を産生するために使用することができることを示したことである。このことは、ompA-CYP2D6とpelB-P450レダクターゼを同時発現する未処理の大腸菌に観察される高いブフラロール1’-水酸化酵素活性により明白に証明される。この活性(1.2nmol/min/mgタンパク)はヒト肝臓ミクロソームのパネルに対して報告された平均のブフラロール水酸化酵素活性よりも約20倍高い。また、この大腸菌株から単離された細菌膜は同様の高いP450酵素活性を示す。ompA-CYP2D6はヒト肝臓ミクロソームに対して計算された値(1min-1)よりも、また最適化された細胞遊離系において再構成されたCYP2D6について報告されたデータよりも高い基質代謝回転数(4.6min-1)を示す。この結果は、ompA-CYP2D6とpelB-P450レダクターゼが大腸菌において非常に効率よくカップリングすることを明らかに証明しており、両方のタンパク質が、再構築系において用いられる複合リン脂質組成物と少なくとも同じほど最適であるリン脂質環境において細菌膜の同じ側に位置していることを示唆している。ompA-CYP2D6及びpelB-レダクターゼを発現する大腸菌は、外因的に加えられるNADPHの不存在下でP450酵素活性を示したので、等価物を還元するソースとして内因性NADPHを使用することに留意することは重要である。この知見は、レダクターゼ活性部位が、NADPHの細胞内プールを用いることができる内膜の細胞質側に位置していることを示唆している。この性質は、組換えタンパク質の高収量と技術的に簡単な維持と組み合わせて、系をバイオリアクター用に理想的に適したものとする。しかしながら、我々は、本研究において使用された緩衝液中よりも培養ブロス中に維持したときは、P450基質は、P450類とP450レダクターゼを同時発現する大腸菌により不充分に代謝されることを観察した。これは、前者の条件下では、基質が菌細胞壁と膜を浸透することができなかったことを示しているのかもしれない。従って、我々は我々の戦略を更に進め、ネズミチフス菌株のTA系列おいて機能性P450モノオキシゲナーゼ系を発現させた。これらの菌株は、浸透性細胞壁が生じる深部ラフ型変異を含むので、発ガン性試験に頻繁に用いられており、大きなパネルの構造的に雑多な化合物により貫通され得る(Amesほか(1975)Mutat. Res. 31, 347-364; Shimadaほか(1993)Carcinogenesis 14, 1371-1376)。我々は、我々の遺伝子融合戦略を使用して機能性P450-モノオキシゲナーゼ系をネズミチフス菌において産生することができることを示すことができた。大腸菌におけるP450とP450-レダクターゼ発現レベルは他のベクター又は他の細菌宿主を使用して更に増大させることができる。例えば、我々は、細菌的に発現されたompA-CYP2D6のあるものは不適当に折畳まれ、封入体を形成したかもしれないことを観察した。最近、分子シャペロンとチオレドキシンを発現する大腸菌株が入手できるようになった(Yasukawaほか(1995)J. Biol. Chem. 270, 25328-25331)。新たに合成されたタンパク質の間違った折畳みを防止するこれらのタンパク質を発現させると、幾つかの組換えタンパク質に対して更に高い収量が得られるようになる。これらの菌株はまたpCWよりもより強い細菌プロモーターを含む発現ベクターからP450類を発現させるために用いることもできる。例えば、我々は、pET系列のベクターにおいて強力なT7ポリメラーゼプロモーターの調節下で高レベルの組換えCYP3A4を大腸菌において発現できることを観察した。しかしながら、組換えCYP3A4のほんの僅かな画分だけがスペクトル的に活性であった。更に、P450類のP450-レダクターゼとのカップリングが、P450とP450レダクターゼを含む再構築系においてP450酵素活性を刺激することが最近示されたP450-レダクターゼFMNドメインの同時発現により更に改良することができると思料される。要約すると、我々は、P450類の効率的な細菌発現に対する一般的なアプローチ法を開発し、このアプローチ法を非常に高い機能性のP450依存性モノオキシゲナーゼ系を含む細菌を産生するために使用することができることを証明した。これらのモデルは薬物開発及び生体触媒反応において重要な商業的用途を有している。実施例3:ネズミチフス菌における発現例えばTA1538とTA1535のようなある種のネズミチフス菌株におけるP450とP450類の同時発現は上述の大腸菌系から即座に適応化される。双方の種において同じベクター系を用いることができる。ベクターは、P450発現に使用される大腸菌株(例えばJM109又はDH5α)から大腸菌株LA5000を通って、またそこからネズミチフス菌株まで先ず通過する。しかし、変異原生試験において頻繁に使用されるネズミチフス菌株TA98とTA100におけるP450類の発現には、戦略は僅かに修正されなければならない。TA98とTA100は、これらの菌株においてSOS修復を増大させ、同時に変異誘発物質に対する感受性を増大させるプラスミドpKM101を担持する。しかし、このプラスミドはまたアンピシリナーゼをコード化する。これらの菌株における発現プラスミドpCWからのP450類の発現には、pCW上のアンピシリナーゼマーカーをテトラサイクリン耐性マーカーと置換しなければならない。ネズミチフス菌におけるP450発現の他の育成条件及び誘導は大腸菌系と同様である。しかし、P450誘導期の間は育成培地からテトラサイクリンを省くことが望ましいことを我々は見出した。実施例4:外膜浸透性を変更した場合の大腸菌とネズミチフス菌株におけるCYP3A4とP450レダクターゼの発現材料と方法細菌株とプラスミド用いた大腸菌K-12株はJM109(Yanischほか(1989)Gene 33, 103-19)、AB1157(Howard-Flandersほか(1964)Genetics 49, 237-246)及びNS3878(ChaterjeeとSternberg(1995)Proc. Natl. Acad. Sci. 92, 8950-8954)であった。ネズミチフス菌株はTA1535であった(Ames(1975)Mutat. Res. 31, 347-352)。NS3678は株AB1157tolC(λLP1)であり、tolC突然変異はTn10tetr挿入による。TolC-変異体は疎水性薬剤に極めて敏感であり(Whitney(1970)Genetics 30, 39-59)、このタンパク質は外膜におけるリポ多糖の構築においてある役割を担うと提案されている(SchnaitmannとKlena(1993)Microbiol. Rev 57, 655,682)。ネズミチフス菌株TA1535はrfa突然変異を担持し、欠陥のある外膜を有している。CYP3A4とP450レダクターゼの同時発現は以前の例において記載されているプラスミドpB216を使用して達成された。CYP3A4とP450レダクターゼの同時発現発現に用いたプロトコールは、NS3678[pB216]に対してテトラサイクリン(10μg/l)が画線プレートと一晩のLB培養に含まれ、テリフィックブロスには含まれなかったことを除いて先に記載したものと同じであった。CYP3A4量はFe2+-CO対Fe2+差スペクトルを使用して細菌細胞全体において決定した。CYP3A4基質での未処理細胞のインキュベーション通常の20−24時間の誘導後、遠心分離により収集する前に細胞を氷上で10分間冷却した。ついで、1/10容量のM9+グルコース(10mM)中に再懸濁する前に等しい容量の氷冷1xM9塩溶液で細胞を一度洗浄した。細胞に激しいピペッティングを被らせないように留意した。CYP3A4基質でのインキュベーションに必要になるまで、細胞懸濁液を氷上に貯蔵し、500μlを除去し、4.5mlのM9+グルコースを含む50mlのポリプロピレン管に加えた。200μMの最終濃度でテストステロン又はニフェジピンの何れかを添加して反応を開始させる前に37℃で軌道振盪機において5−10分間管をプレインキュベートした。必要に応じて、200μlの細胞懸濁液を除去し、100μlのメタノールと5μlの60%過塩素酸を含む1.5mlのエッペンドルフマイクロ遠心管に移した。この管を逆にして混合し、遠心分離して沈殿物を除去する前に10分間氷上に保管した。上清をHPLC分析のためにマイクロバイアルに移した。先に記載されているようにして代謝物を分離し、既知の標準物質を参照して6β-OHT又はニフェジピンオキシドの収量を計算した。結果4種の菌株におけるCYP3A4とP450レダクターゼの発現P450発現とP450レダクターゼ活性のレベルを表Aに示す。NS3678[pB216]細胞におけるCYP3A4量は、他の3つの菌株におけるよりも有意に低く、典型的には約30nmol/lである。この理由は不明であり、この菌株における発現には更なる最適化が必要となる。P450量はFe2+-CO対Fe2+差スペクトルにより測定した。含量は少なくとも3回の実験の平均±SDとして表す。代謝回転数はnmol生成物/min/nmolP450として記録し、±SDとして示す。検出された生成物は6βヒドロキシテストステロンとニフェジピンオキシドであった。CYP3A4及びP450レダクターゼを発現する未処理大腸菌及びネズミチフス菌によるテストステロン及びニフェジピンの代謝4つの菌株によるテストステロンとニフェジピンの代謝回転を表Aに示す。JM109[pB216]を用いる過去の研究から、細胞がEDTAを含む緩衝液(TSE)中に懸濁されて浸透圧ショックを受けないならばテストステロンの代謝は無視できることが示されている。このことはここで確認され、10分のインキュベーション後の代謝回転は0.15nmol6β-OHT/nmolP450/分だけであった。これに対して、他の2つの大腸菌株におけるテストステロン代謝は更により広範であり、NS3678[pB216]はJM109[pB216]よりも100倍高い15.3の代謝回転を持ち特に印象的である。ネズミチフス菌株TA1535[pB216]もまたテストステロンに対してJM109[pB216]よりも強い活性を示したが、3−4倍に過ぎなかった。ニフェジピンに対する代謝回転は、株内差異がテストステロンの場合ほど顕著ではないが、同様なパターンに従った。大腸菌株NS3678[pB216]とAB1157[pB216]もまた約18nmolニフェジピンオキシド/nmolP450/分で最も高い活性を示し、TA1535[pB216]とJM109[pB216]に対する代謝回転はそれぞれ約3及び15倍低かった。2つの基質ニフェジピンとテストステロンでの時間経過インキュベーションの結果を図17と図18にそれぞれ示す。2つの最も広範に代謝する菌株AB1157とNS3678では、代謝物の蓄積は1−2時間継続し、20−30%の収量を表す30−40μMの範囲の代謝物最終濃度になった。およそ1時間のインキュベーションの後の線形性の喪失はCYP3A4の喪失又は代謝物の阻害によるものであろう。議論先の実施例に記載した研究は、常套的に発現に用いられている大腸菌株であるJM109は、細胞をTSE緩衝液中で浸透圧ショックを受けさせないなら、CYP3A4とレダクターゼを同時発現するとき、テストステロンの水酸化を触媒することができなかったことを示している。この代謝の欠如はほぼ間違いなく大きな疎水性分子に対する大腸菌外膜の不浸透性のためであり(NikaidoとVaara(1985)Microbiol. Rev 49, 1-32)、バイオリアクター系における多量のある種のP450代謝物の産生にはこの菌株は適さない。外膜浸透性は必ずしも全てのP450基質にとっての問題ではないと思われ、例えば我々は、CYP1A2とP450レダクターゼを発現する未処理のJM109における7-エトキシレゾルフィンの代謝回転は浸透圧的にショックを受けた細胞のものに匹敵することを見出した(データは示さず)。突然変異体tolC遺伝子を担持するNS3678のような大腸菌株は疎水性薬剤に対して過敏であることが知られ、P450基質に対する浸透性もまた増加することが予想された。JM109[pB216]に対してNS3678[pB216]によるテストステロンとニフェジピンの極めて高い代謝回転に基づくと、この通りであると思われる。現在のところ、菌株NS3678におけるP450発現レベルは比較的低い。これは、成長条件を最適化することにより改善することができるものと思われる。しかしながら、親株AB1157[pB216]における発現レベルはJM109[pB216]のものに匹敵し、基質代謝回転がかなりより高いという利点がある。これは、部分的に欠陥のある外膜をもたらすこの菌株によりなされるrfbD1変異によると思われる。我々の研究は、大腸菌の「浸透性」株における機能性P450モノオキシゲナーゼの発現の最初の例である。ここに記載した系は全てのP450類の発現に対して適用することができ、「バイオリアクター」系における広範囲のP450代謝物の生産を容易にする。まとめP450レダクターゼと共にP450類を同時発現した大腸菌JM109又はDH5αは、膜の浸透性を変更する緩衝液(TSE)での処理の後にのみ基質を代謝した。我々は今これらの酵素を浸透性細胞壁を持つネズミチフス菌TA1535及び大腸菌株において発現させた。生理的ブロス(最少培地+グルコース)の存在下で、基質の代謝はTSE緩衝液に再懸濁された細胞を用いて見出されたものに近づく代謝回転速度で60分を越えて線形であることを示すことができた。実施例5:レダクターゼとのompA-及びompA(+2)-P450類の同時発現材料と方法プラスミド2つのP450発現プラスミド、pCW/ompA(+2)-CYP3A4とpCW/ompA(+2)-CYP2A6を作成した。それぞれの場合、OmpAシグナルペプチドとP450N末端の間に、成熟OmpAタンパクの最初の2つのアミノ酸に対応するジペプチド「リンカー」(-Ala-Pro-)を挿入するためにPCR法を用いた。N末端配列解析のためのアフィニティクロマトグラフィーによる組換えCYP3A4の容易な精製を可能にするために(以下を参照)、2つの更なるプラスミド、pCW/ompA-CYP3A4(His)6及びpCW/ompA(+2)-CYP3A4(his)6をまた作成した。ここで、6つのヒスチジン残基がP450のC末端に添付された。同時発現方法別個の適合性があるプラスミドからのP450とレダクターゼの同時発現に対する基本的な方法はこれまでの実施例に既に記載している。クマリン7-水酸化酵素アッセイ500μlの全容量中に20pmolのCYP2A6、50μMのクマリン、及びNADPH産生系(先に実施例1に記載)を含む100mMのトリス-HCl(pH7.4)において膜アッセイを実施した。菌細胞についてのアッセイは、5mlの全容積のTSE緩衝液中で行い、1mlインキュベーション当り50pmolのCYP2A6と50μMのクマリンを含んでいた。試料(500μl)を時折取り出し、代謝物生成につき分析した。細胞と膜のアッセイからの試料の処理は同じであった:反応は72μlの12.5%トリクロロ酢酸の添加により停止させ、氷上に配した。ついでジクロロメタン(1ml)を添加し、管を激しくボルテックスした。ついで2つの相に分離する遠心分離に続いて、上(水性)層を破棄した。下の有機相の一定分量(500μl)をついで3mlの30mMホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.0)を含む新しい管に移した。ついで管をボルテックスし、もう一度遠心分離した。ついで上(水性)相中の代謝物を、信頼性のある標準物質(ウンベリフェロン、シグマ)を参照して、それぞれ358及び458nmの励起及び放射波長を用いて、蛍光定量的に定量した。組換えP450の精製とN末端配列分析pCW/ompA-CYP3A4(His)6及びpCW/ompA(+2)-CYP3A4(his)6の発現を先に記載されたようにして実施した。細胞のリゾチーム処理と遠心分離に続いて、スフェロプラストを結合緩衝液(500mMの塩化カリウムと20%のグリセロール(v/v)を含む20mMのリン酸カリウム、pH7.4)に再懸濁し、−70℃で貯蔵した。125mlの培養から採られたスフェロプラストは典型的には9mlの緩衝液中に再懸濁された。P450の精製では、スフェロプラストを氷上で融解し、70%の出力でMSE SoniPrep150超音波処理器を使用して、プロテアーゼインヒビター、アプロチニン(1μg/ml)、ロイペプチン(1μg/ml)及びPMSF(1mM)の存在下で超音波処理した。遠心分離(1.2x104g、12分、4℃)後、上清タンパクをEmulgen911(1mg/mgタンパク)の存在下で4℃で60分間攪拌して溶解させた。混合物を遠心分離(105g、60分、4℃)により清澄化し、ついでニッケルイオンが充填され0.10%のEmulgen911(w/v)を含む結合緩衝液で予備平衡化されたHi−Trapキレートカラム(ファーマシア)上に配置した。カラムを更に10カラム容量の結合緩衝液(Emulgen911を含む)で洗浄し、ついで弱く結合したタンパク質を5カラム容量の洗浄緩衝液(0.10%のEmulgen911(w/v)と75mMのイミダゾールを含む結合緩衝液)で除去した。赤色のP450バンドを溶出緩衝液(0.10%のEmulgen911(w/v)と1Mのイミダゾールを含む結合緩衝液)で溶出させた。−イミダゾール濃度を高く保ち、P450をできるだけ少ない容量に溶出させた。タンパク質の試料はアニオン交換緩衝液(20%のグリセロール(v/v)、0.2mMのジチオスレイトール、1mMのEDTA及び0.10%のEmulgen911(w/v)を含む20mMのトリス-Cl、pH7.5)を数回交換して4℃で一晩かけて透析し、Hi-TrapQカラム(ファーマシア)上に配した。P450を含む流通画分を、20%のグリセロール(v/v)、1mMのEDTA、1mMのDTT及び0.05%のナトリウムキレート(w/v)を含む10mMのリン酸ナトリウム、pH7.4で平衡化したEcono-Pac(登録商標)HTPカートリッジ(バイオラッド)上に配した。リン酸ナトリウムの濃度をカラム洗浄の間25mMまで、ついで100mMまで増加させ、P450を400mMのリン酸塩で溶出させた。手順の各段階におけるP450調製物の純度はSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により、クーマシーブリリアントブルーR-250で染色した9%のアクリルアミド(w/v)ゲル上で評価した。N末端配列決定精製タンパクはついでPro−Blotポリビニリデンフロリド膜(アプライドバイオシステム)上に移され、染色された。N末端アミノ酸配列解析を、4ないし6サイクルのエドマン分解でモデル476A機器(アプライドバイオシステム)を用いてダンディー大学の生化学学部において実施した。結果レダクターゼとのompA-P450類の同時発現先に報告されているように、pCW/ompA-CYP2D6から発現されたP450は同時発現されたレダクターゼとよくカップリングし典型的なCYP2D6-依存性活性を触媒する(実施例2を参照)。ompA-CYP2D6に対して測定された代謝回転は、一般に、対応するpCW/17α-CYP2D6作成物から測定されたものよりも僅かに高かった(データは示さず)。我々はそれ以来、CYP3A4及びCYP2A6を含む大腸菌においてレダクターゼと共に多くの他のompA-P450類を同時発現させた。CYP2D6に対して、これらの2つのompA-P450類は、プローブ基質に対する酵素活性が一般により低いので対応する17α-P450類と同じほどレダクターゼと効率的にはカップリングしないようである。例えば、細胞と膜の双方におけるクマリン7-水酸化酵素活性は、17α-CYP2A6と比較してompA-CYP2A6では一桁以上低い(表B)。同様に、CYP3A4に対しては、膜画分におけるテストステロン6β-水酸化酵素活性はompA-作成物では減少する(表C)。しかし、2つの作成物の間のこの差異は、我々が用いた異なるプローブ基質であるニフェジピンではみられないことは興味深い(表C)。このことは可能な場合はどこででも数種のマーカー活性を用いる必要性を強調する。可能な場合は、値は、少なくとも3回の独立した測定に基づき、平均±SDとして表した。チトクロムP450は、20%(v/v)グリセロール、10mMのCHAPS及び1mMのEDTAを含む100mMのトリス-HCl、pH7.4中でのFe2+-CO対Fe 2+差分光法により定量化した。*CYP2A6に対するプローブ活性は蛍光定量的に測定した。レダクターゼとのompA-P450類のカップリングが相対的に欠けることに対する説明を見つけるために、6のヒスチジン残基をpCW/ompA-CYP3A4から発現されたP450のC末端に添付した。これにより、ニッケルキレートアフィニティクロマトグラフィー(材料と方法において記載)による組換えタンパク質の精製が容易になった。これは、ompA-P450が細菌シグナルペプチダーゼによる予期されたプロセシング(そこではシグナルペプチドが保持される)を受けていなかったことを明らかにした。これは、シグナルペプチダーゼの利用性が、特に低いプロセシング効率を持つハイブリッド前駆物質に対しては限られていることが知られているので、P450の過剰発現の一般的レベルを反映する(van Dijlほか(1991)Mol. Gen. Genet. 227, 40-48)。シグナルペプチダーゼ活性に強く影響を与える他の因子は、シグナルペプチドの後の最初の数個のアミノ酸を含む(Barkocy-GallagherとBassford(1992)J. Biol. Chem. 267, 1231-1238; Nilssonとvon Heijne(1992)FEBS Lett. 299, 243-246)、シグナル切断の部位の周りの構造である(DuffaudとInoyue(1988)J. Biol. Chem. 263, 10224-10228; Barkocy-Gallagherほか(1994)J. Biol. Chem. 269, 13609-13613)。非切断シグナルペプチドを持つタンパク質の過剰発現は、細胞の転位置装置を完全にブロックすることができ、タンパク前駆物質の蓄積に至る(Barkocy-GallagherとBassford(1992)J. Biol. Chem. 267, 1231-1238)。我々の作成物では、シグナルペプチドに直ぐに続く配列はCYP3A4のN末端である。切断部位に対して+1の位置にあるアミノ酸は従ってメチオニンであり、一方細菌遺伝子中のこの位置にはアラニンが強く望まれる(von Heijne(1986)Nucl. Acids Res. 14, 4683-4690)。従って、我々はシグナルペプチドの除去の確率を改善するために3つの可能な戦略を考えることができる。第1に、細菌シグナルペプチダーゼを別個の適合性があるプラスミドから過剰発現させるもので、その幾つかのものは開示されている(van Dijlほか(1991)Mol. Gen. Genet. 227, 40-48; DalbeyとWickner(1985)J. Biol. Chem. 260, 15925-15931; MarchとInoue(1985)J. Biol. Chem. 260, 7206-7213)。この最初のアプローチに対する代替方法として、あるいは恐らくそれと共に、短いN末端伸展を持つP450を生産するという不具合があるかも知れないけれども、シグナルペプチドとP450の間に短い「リンカー」配列を導入することが推奨される。最後に、異なった細菌株において発現を試みることも、ハイブリッド融合タンパクからのシグナルペプチドの除去度合いに影響を及ぼすことが示されているので、試みることができる(Monteilhetほか(1993)Gene 125, 223-228)。シグナル保持のこの問題を解決するために、我々は、OmpAリーダーとP450のN末端との間に成熟OmpAタンパクの最初の2つのアミノ酸(-Ala-Pro-)を導入することにより切断部位を修飾することに決めた。その結果、pCW/ompA(+2)+CYP2A6とpCW/ompA(+2)-CYP3A4(上述)の作成物が得られた。ompA-P450類に対して、これらのompA(+2)-P450類は同時発現されるレダクターゼとより効率的にカップリングし、より高い基質代謝回転をもたらすようである(表B及びC)。pCW/ompA(+2)-CYP3A4(His)6から発現される組換えタンパク質をついで精製し、N末端配列分析を行う。これにより、細菌シグナルペプチダーゼによりタンパク質が正しくプロセシングを受け、N末端にアラニン-プロリン−を含む天然CYP3A4の細菌膜に蓄積されるようになることが明らかになった。可能な場合は、値は、少なくとも3回の独立した測定に基づき、平均±SDとして表した。チトクロムP450は、20%(v/v)グリセロール、10mMのCHAPS及び1mMのEDTAを含む100mMのトリス-HCl、pH7.4中でのFe2+-CO対Fe 2+差分光法により定量化した。*細菌膜画分において測定§レダクターゼ活性の1単位は毎分当たりに還元されたチトクロムcの1nmolとして定義される。†2つの既知のCYP3A4基質の代謝は30mMのMgCl2の存在下で膜画分において評価された。活性はnmolCYP3A4当り毎分当りに形成されたnmolの代謝回転として表した。まとめP450類に対するompAリーダー配列の直接の融合は、同時発現されたレダクターゼとカップリングするP450アイソザイムには必ずしもならない。P450配列に融合したompA配列の潜在的な切断部位のアミノ酸残基を変更すると、カップリングとリーダー配列の効果的な除去がもたらされる。 機能性チトクロムP450モノオキシゲナーゼ系を含む菌細胞であって、該細胞がチトクロムP450を発現し得る遺伝子作成物と上記チトクロムP450とは別個にチトクロムP450レダクターゼを発現し得る遺伝子作成物を含み、チトクロムP450とチトクロムP450レダクターゼのそれぞれがそのN末端にチトクロムP450およびチトクロムP450レダクターゼを菌細胞の膜に誘導する細菌シグナルペプチドを有する菌細胞。 上記細胞が腸内細菌科の菌細胞である、請求項1に記載の菌細胞。 上記チトクロムP450はチトクロムP450のCYP1、CYP2、CYP3又はCYP4ファミリーの何れかのメンバーである、請求項1又は2に記載の菌細胞。 上記チトクロムP450は、チトクロムP450のCYP1A、CYP1B、CYP2A、CYP2B、CYP2C、CYP2D、CYP2E、CYP3A、CYP4A又はCYP4B亜科の何れかである、請求項1ないし3の何れか1項に記載の菌細胞。 チトクロムP450は、チトクロムP450のCYP3A4、CYP2D6、CYP2C9、CYP2D9、CYP2A6及びCYP2E1の何れかである、請求項4に記載の菌細胞。 チトクロムP450レダクターゼは、ヒトチトクロムP450レダクターゼである、請求項1ないし5の何れか1項に記載の菌細胞。 細胞は大腸菌細胞又はネズミチフス菌細胞である、請求項2ないし6の何れか1項に記載の菌細胞。 細菌シグナルペプチドは、ompA、pelB、malE又はphoAシグナルペプチドの何れかである、請求項1に記載の菌細胞。 チトクロムP450の細菌シグナルペプチドはチトクロムP450レダクターゼの細菌シグナルペプチドと同一である、請求項1ないし8の何れか1項に記載の菌細胞。 チトクロムP450又はチトクロムP450レダクターゼの正しい折畳みを助けるポリペプチド補助因子を発現し得る遺伝子作成物を更に含有する、請求項1ないし9の何れか1項に記載の菌細胞。 上記ポリペプチド補助因子は分子シャペロンである、請求項10に記載の菌細胞。 チトクロムP450とチトクロムP450レダクターゼの間の電子の伝達を助けるポリペプチド補助因子を発現し得る遺伝子作成物を更に含有する、請求項1ないし11の何れか1項に記載の菌細胞。 チトクロムP450とチトクロムP450レダクターゼの間の電子の伝達を助ける上記補助因子は、チトクロムb5又はチトクロムP450レダクターゼのFMN領域である、請求項12に記載の菌細胞。 チトクロムP450モノオキシゲナーゼ系により触媒される反応の生成物を代謝し得る任意の酵素を発現し得る遺伝子作成物を更に含有する、請求項1ないし13の何れか1項に記載の菌細胞。 上記酵素は、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、エポキシドヒドロラーゼ又はUDP-グルクロノシルトランスフェラーゼの何れかである、請求項14に記載の菌細胞。 チトクロムP450とチトクロムP450レダクターゼは異なる遺伝子作成物によりコード化されている、請求項1ないし15の何れか1項に記載の菌細胞。 チトクロムP450とチトクロムP450レダクターゼは同じ遺伝子作成物によりコード化されている、請求項1ないし15の何れか1項に記載の菌細胞。 上記細胞は、チトクロムP450モノオキシゲナーゼ系の基質である化合物に対して浸透性である、請求項1ないし17の何れか1項に記載の菌細胞。 チトクロムP450の基質を生成物に転換する方法であって、請求項1ないし18の何れか1項に記載の菌細胞と上記基質を混合することを含み、上記細胞が上記基質を転換し得る機能性チトクロムP450モノオキシゲナーゼ系を含む方法。 チトクロムP450の基質を生成物に転換するための、請求項1ないし18の何れか1項に記載の菌細胞の使用。 チトクロムP450を含む菌細胞において、上記チトクロムP450をコード化し、かつ発現し得る遺伝子作成物を含有し、チトクロムP450がそのN末端に細菌シグナルペプチドを含む、菌細胞。 細菌シグナルペプチドは、ompA、pelB、malE又はphoAシグナルペプチドの何れかである、請求項21に記載の菌細胞。 チトクロムP450は、菌細胞からチトクロムP450の精製を助けるペプチド配列を更に含む、請求項21又は22に記載の菌細胞。 上記ペプチド配列は化合物に対する結合部位を含む、請求項23に記載の菌細胞。 上記ペプチド配列が-(His)n(ここで6≧n≧4)で、上記化合物がニッケルである、請求項24に記載の菌細胞。 上記細胞は腸内細菌科の菌細胞である、請求項21ないし25の何れか1項に記載の菌細胞。 上記チトクロムP450が請求項3ないし5の何れか1項に記載されたものである、請求項21ないし26の何れか1項に記載の菌細胞。 チトクロムP450を調製する方法であって、(a)請求項21ないし27の何れか1項に記載の細胞を充分な量提供する工程と、(b)他の細胞区画からチトクロムP450を分離する工程を含んでなる方法。 チトクロムP450を発現し得る遺伝子作成物であって、チトクロムP450がそのN末端に細菌シグナルペプチドを含む遺伝子作成物。 請求項1に記載の複数の菌細胞であって、各細胞がチトクロムP450とチトクロムP450レダクターゼの異なる組合せ又は他のポリペプチドの更なる組合せをコード化する遺伝子作成物又は作成物群を含む菌細胞。 請求項21に記載の複数の菌細胞であって、各細胞が異なるチトクロムP450をコード化する遺伝子作成物を含む菌細胞。


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