タイトル: | 特許公報(B2)_高純度トリメチロールプロパンの製造法 |
出願番号: | 1998370418 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07C 29/38,C07C 29/88,C07C 29/80,C07C 31/22,B01J 23/02,C07B 61/00 |
岩本 淳 二宮 暎之 渡辺 俊雄 池辺 貴樹 JP 4284477 特許公報(B2) 20090403 1998370418 19981225 高純度トリメチロールプロパンの製造法 三菱瓦斯化学株式会社 000004466 岩本 淳 二宮 暎之 渡辺 俊雄 池辺 貴樹 20090624 C07C 29/38 20060101AFI20090604BHJP C07C 29/88 20060101ALI20090604BHJP C07C 29/80 20060101ALI20090604BHJP C07C 31/22 20060101ALI20090604BHJP B01J 23/02 20060101ALI20090604BHJP C07B 61/00 20060101ALN20090604BHJP JPC07C29/38C07C29/88C07C29/80C07C31/22B01J23/02 XC07B61/00 300 C07C 29/38 C07C 29/80 C07C 29/88 C07C 31/22 CAplus(STN) 特公昭42−014605(JP,B1) 特公昭42−020521(JP,B1) 特公昭39−003012(JP,B1) 特公昭50−000009(JP,B1) 米国特許第02930818(US,A) 3 2000191568 20000711 7 20051201 松本 直子 【0001】【産業上の利用分野】本発明はポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、可塑剤、潤滑油、界面活性剤、化粧品の基剤、反応性モノマーなどの原料として有用なトリメチロールプロパンの製造法に関する。【0002】【従来の技術】トリメチロールプロパン(以下、TMPと称す)を製造する方法として、塩基性触媒の存在下ノルマルブチルアルデヒド(以下、NBALと称す)とホルムアルデヒドとのアルドール縮合反応、続いて交叉カニツアロ反応の二段反応で行う方法が知られており、例えば塩基性触媒として苛性曹達を用いた場合には以下の反応式で示される。【0003】【化1】【0004】この反応生成液には交叉カニツアロ反応で生成したギ酸塩が含まれており、公知の方法、例えば溶剤抽出するか或いは濃縮後熱時濾別して大部分のギ酸塩を分離したのち蒸留し、留出した粗TMPは更に精留して高純度の製品を得られている。特公昭50-9号には、TMPの粗蒸留物を水の存在下、カチオン交換樹脂で加熱下に処理した後、真空精留することが記載されている。【0005】【発明が解決しようとする課題】近年、TMPの用途は多岐に及び、特にUV硬化型ポリオールの原料等では、従来以上の高純度品が要求されるようになった。溶剤抽出等により得られたTMPには、蒸留によって分離が困難な不純物が含まれており、高純度のTMPを得ることが困難である。また特公昭50-9号の方法では高価なカチオン交換樹脂を用い、煩雑な操作が必要となる。本発明の目的は、塩基性触媒を用いてNBALとホルムアルデヒドとのアルドール縮合反応、交叉カニツアロ反応の二段反応により製造される粗TMPから、高純度のTMPを工業的に有利に製造する方法を提供することである。【0006】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の如き課題を有するTMPの製造方法について鋭意検討した結果、溶剤抽出等により得られた粗TMPより、高沸分及びギ酸曹達等の無機塩を予め除去し、酸性下で加熱処理し、その後に蒸留等により精製することによって、高純度のTMPが得られることを見出し本発明に到達した。【0007】 即ち本発明は、塩基性触媒存在下、ノルマルアルデヒドとホルムアルデヒドとを反応させて得られた粗トリメチロールプロパンより、あらかじめ高沸分及び無機塩を除去し、次に酸性下で140℃から280℃の温度で、5分から300分間の加熱処理した後、蒸留精製することを特徴とする高純度トリメチロールプロパンの製造法である。【0008】【発明の実施の形態】本発明は、塩基性触媒を用いてアルドール縮合反応および交叉カニツアロ反応によりNBALとホルムアルデヒドとを反応させて得られた粗TMPの精製法に関するものである。本発明で原料に使用されるホルムアルデヒドにはホルムアルデヒド水溶液や固形のパラホルムアルデヒドが用いられる。ホルムアルデヒドの使用量は、NBALに対するホルムアルデヒドのモル量比で 3.0〜8.0 モルである。【0009】本発明においてアルドール縮合反応および交叉カニツアロ反応における塩基性触媒は、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウムの水酸化物塩、又は炭酸塩、炭酸水素塩、或いはトリメチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、又は、その混合物の何れでも良いが、工業的に実施するにはナトリウム塩、カルシウム塩が一般的である。塩基性触媒の使用量は、NBALに対するモル比で 1.0〜2.0 である。副生物を抑えて、高選択率に目的のTMPを得るためには、反応条件等に合わせて塩基性触媒の使用量を調整する必要がある。【0010】NBALとホルムアルデヒドとの反応生成物は、必要に応じて濃縮して未反応ホルムアルデヒドを分離した後、例えば溶媒抽出するか、或いは濃縮後熱時濾別して目的の粗TMPと交叉カニツアロ反応により副生したギ酸塩に分離される。溶媒抽出する際の溶媒には、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類や、反応原料でもあるNBAL等のアルデヒド類、また、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、或いは酢酸ブチルエステルなどのエステル類が用いられる。これらの溶剤は2種類以上混合して用いることもできる。【0011】本発明では、上記の方法により分離された粗TMPよりあらかじめ高沸分及び無機塩を除去する。この無機塩には交叉カニツアロ反応で副生するギ酸塩が含まれる。高沸分及び無機塩を除去するに際しては、短時間に処理できる薄膜蒸留が用いられる。また粗TMP中の残存ギ酸塩量が多く、薄膜蒸留が困難な場合にはギ酸塩のアルカリ熱分解があり得るので、リン酸等を加えてギ酸塩を不活性化させた後に、蒸留等により無機塩と高沸留分を除く方法が取られる。【0012】粗TMPよりあらかじめ高沸分及び無機塩を除去し、次に酸性下で加熱処理が行われる。TMP留分を酸性とするために添加される酸には1重量%水溶液にしたときpHが4以下となる酸、すなわちリン酸や硫酸の鉱酸類、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸類が用いられ、特にリン酸や硫酸が好適である。酸の添加量は、加熱条件によって異なるが、通常10ppmから5重量%であり、好ましくは50ppmから5000ppmである。10ppm以下では不純物の分解が起こり難く、5重量%以上では着色や、TMPの分解が起こり易い。加熱温度は140℃から200℃、好ましくは160℃から180℃であり、加熱時間は10分から300分、好ましくは50分から150分である。加熱雰囲気は大気下でも不活性ガス下でも良い。圧力は、常圧や加圧、減圧下の何れでも良い。【0013】塩基性触媒存在下、NBALとホルムアルデヒドとのアルドール縮合反応、続いて交叉カニツアロ反応の二段反応により得られたTMPには、蒸留によって分離が困難な不純物が含まれている。該不純物には、遊離のホルムアルデヒドや、TMPとホルムアルデヒドとの縮合物、又、原料ホルマリン中のメタノールや反応中に生成するメタノールとTMPとホルムアルデヒドの縮合物が挙げられる。例えば、縮合物として式(I)で示されるホルムアルデヒド由来のサイクリックホルマール(CMF)、式(II) で示されるモノメチルホルマール(MMF)、式(III)で示されるモノメチルジホルマール(MDF)等が挙げられる。特にMDFはTMPとの比揮発度が1に近く、蒸留では分離が不可能である。【0014】【化2】【0015】また、製品TMPの残存ホルムアルデヒドは一般的な蒸留では完全な除去は困難である。ホルムアルデヒドが微量でも含まれると品質に影響を与える。これらのホルムアルデヒドやMDF等の不純物を完全に分離するためには、蒸留塔の設計及び条件の上で経済的に不利となる。このため、従来の蒸留方法では、高純度のTMPが得られない。上記の縮合物は酸により加熱分解することが知られている (特公昭42-14605号等) 。しかし、TMP中にギ酸塩や高沸分が含まれるときに、ギ酸塩に相当する量の酸で加熱処理しても、縮合物の分解等は起こり難く、そのため高純度のTMPは得られない。また、過剰の酸で加熱処理すると縮合物の分解は起こるものの、TMPと蒸留では新たに分離の困難な高沸分由来の着色成分ができる。【0016】本発明では、TMP中にギ酸曹達等の無機塩や高沸分をあらかじめ除去した後に酸により加熱分解することにより、目的のTMPと蒸留分離の困難な成分が分解または化合し、蒸留分離しやすい成分となる。例えば蒸留分離の困難なMMFやMDFはCMFとメタノールに分解する。特にMDFは通常の蒸留では分離困難な化合物であるが、本発明の方法で処理することにより、容易に精製分離されるので高純度のTMPが得られる。また、残存ホルムアルデヒドはTMPと縮合してCMFとなり容易に精製分離されるので高純度のTMPが得られる。従って本発明により、蒸留塔の負荷が低下して蒸留装置の設備面と運転面での経済性が改善され、高純度のTMPを工業的に有利に製造することができる。【0017】【実施例】次に実施例により本発明を更に詳細に説明する。但し本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお各実施例及び比較例において、製品TMP中の残存ホルムアルデヒド濃度はアセチルアセトン法により、溶融色はAHPA比色分析法により測定した。【0018】製造例1ノルマルブチルアルデヒド(NBAL)4000gと40%ホルムアルデヒド13330gを苛性曹達2330gの水溶液中で反応させ、未反応ホルマリンを分離した後、溶媒抽出して粗TMPを7450g得た。この粗TMP中には、ギ酸曹達1.5重量%、低沸留分7重量%、高沸留分7重量%が含まれていた。【0019】実施例1製造例1で得られた粗TMP2000gにリン酸45.2gを添加して150℃、50torrで1時間処理することによりギ酸曹達を不活性化させた後、180℃、3torrでの蒸留によりTMP及び低沸留分を留出させて、リン酸曹達等の無機塩と高沸留分を除去した。このTMPを主成分とした留分1000gにリン酸を0.1gを添加し、常圧大気中で180℃、1時間加熱処理した。この後にスルーザーパックドカラム10段の蒸留塔で1torrの減圧下150℃で蒸留精製した。ガスクロマトグラフによる分析により、得られたTMPの純度は99.9%であった。また、製品TMP中の残存ホルムアルデヒドは1ppmであった。【0020】比較例1製造例1で得られた粗TMP2000gにリン酸45.2gを添加して150℃、50torrで1時間処理することによりギ酸曹達を不活性化させた後、180℃、3torrでの蒸留によりTMP及び低沸留分を留出させて、リン酸曹達等の無機塩と高沸留分を除去した。このTMPを主成分とした留分1000gをリン酸添加および加熱処理を行わずに、スルーザーパックドカラム10段の蒸留塔で1torrの減圧下150℃で蒸留精製した。得られたTMPの純度は98.8%であった。また、製品TMP中の残存ホルムアルデヒドは30ppmであった。【0021】比較例2製造例1で得られた粗TMP2000gにリン酸45.2gを添加して150℃、50torrで1時間処理することによりギ酸曹達を不活性化させた後、リン酸45.2gをさらに添加し、常圧大気中で180℃、1時間加熱処理した。この加熱処理した粗TMPをスルーザーパックドカラム10段の蒸留塔で1torrの減圧下150℃で蒸留精製した。得られたTMPの純度は99.5%であった。また、製品TMP中の残存ホルムアルデヒドは3ppmであった。しかし、製品TMPの溶融色が150であった。【0022】製造例2ノルマルブチルアルデヒド(NBAL)4000gと40%ホルムアルデヒド13330gを苛性曹達3236gの水溶液中で反応させ、未反応ホルムアルデヒドを分離した後、溶媒抽出して粗TMP7430gを得た。この粗TMP中には、ギ酸曹達0.3重量%、低沸留分7重量%、高沸留分7重量%が含まれていた。【0023】実施例2製造例2で得られた粗TMP2000gを薄膜蒸留により180℃、1torrでTMP及び低沸留分を留出させて、ギ酸曹達と高沸留分を除去した。得られたTMPを主成分とした留分1000gにリン酸を0.1gを添加し、5torrで150℃、1時間加熱処理した。この後にスルーザーパックドカラム10段の蒸留塔で1torrの減圧下150℃で蒸留精製した。ガスクロマトグラフによる分析により、得られたTMPの純度は99.9%であった。また、製品TMP中の残存ホルムアルデヒドは1ppmであった。【0024】比較例3製造例2で得られた粗TMP2000gを薄膜蒸留により180℃、1torrでTMP及び低沸留分を留出させて、ギ酸曹達と高沸留分を除去した。得られたTMPを主成分とした留分1000gにリン酸添加および加熱処理を行わずに、スルーザーパックドカラム10段の蒸留塔で1torrの減圧下150℃で蒸留精製した。ガスクロマトグラフによる分析により、得られたTMPの純度は98.8%であった。また、製品TMP中の残存ホルムアルデヒドは30ppmであった。【0025】比較例4製造例2で得られた粗TMP2000gにリン酸9.0gを添加して、常圧大気中で180℃、1時間加熱処理した。この後にスルーザーパックドカラム10段の蒸留塔で1torrの減圧下150℃で蒸留精製した。ガスクロマトグラフによる分析により、得られたTMPの純度は99.9%であった。また、製品TMP中の残存ホルムアルデヒドは5ppmであった。しかし、製品TMPの溶融色が110であった。【0026】【表1】【0027】【発明の効果】以上の実施例からも明らかなように、本発明の方法により粗TMPを精製することにより、高純度で残存ホルムアルデヒドが極めて少なく、着色度の低いTMPを容易に得ることができる。本発明では高価なカチオン交換樹脂等が不要であり、蒸留塔の負荷が低下して蒸留装置の設備面と運転面での経済性が改善され、UV硬化型ポリオールの原料等に用いられる高純度のTMPが工業的に有利に製造することができる。 塩基性触媒存在下、ノルマルブチルアルデヒドとホルムアルデヒドとを反応させて得られた粗トリメチロールプロパンより、あらかじめ高沸分及び無機塩を除去し、次に酸性下で140℃から280℃の温度で、5分から300分間の加熱処理した後、蒸留精製することを特徴とする高純度トリメチロールプロパンの製造法。 上記塩基性触媒としてナトリウムの水酸化物塩、炭酸塩または炭酸水素塩又は、その混合物を用い、かつ粗トリメチロールプロパン中のギ酸曹達を不活性化した後、高沸分及び無機塩の除去を行う請求項1に記載のトリメチロールプロパンの製造法。 酸性下での加熱処理に、1重量%水溶液にしたときのpHが4以下となる酸を使用し、被処理物に対して10ppmから5重量%を添加する請求項1に記載のトリメチロールプロパンの製造法。