タイトル: | 特許公報(B2)_アルデヒドを安定化する方法 |
出願番号: | 1998363327 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07C 45/86,C07C 47/02,C07C 47/20 |
マイカル・リーデル ヴオルフガング・ツゴルツエルスキー ミッヒヤエル・メッセルシュミット クラウス・ベルクラート JP 4370010 特許公報(B2) 20090904 1998363327 19981221 アルデヒドを安定化する方法 オクセア・ゲゼルシャフト・ミト・べシュレンクテル・ハフツング 507254975 江崎 光史 100069556 奥村 義道 100093919 鍛冶澤 實 100111486 マイカル・リーデル ヴオルフガング・ツゴルツエルスキー ミッヒヤエル・メッセルシュミット クラウス・ベルクラート DE 19757531:5 19971223 20091125 C07C 45/86 20060101AFI20091105BHJP C07C 47/02 20060101ALI20091105BHJP C07C 47/20 20060101ALI20091105BHJP JPC07C45/86C07C47/02C07C47/20 C07C 45/86 C07C 47/02 C07C 47/20 CAplus(STN) 特公昭45−012282(JP,B1) 特開昭60−104058(JP,A) 米国特許第02170625(US,A) 13 1999246461 19990914 12 20050707 井上 千弥子 【0001】【発明が属する技術分野】本発明は、アルデヒドを重合及び自動縮合に対して安定化する方法に関する。【0002】【従来の技術】アルデヒドは、その高い反応性のために重合及び自動縮合する傾向がある。重合では主として三量体生成物が生ずる。例えば、イソブチルアルデヒドの場合は、2,4,6-トリイソプロピル-1,3,5- トリオキサンが形成し、また3〜14個の炭素原子を有する他の脂肪族アルデヒドの場合も、重合によって環状の三量体性アルデヒド(トリアルキルトリオキサン)が形成する。この三量化反応は、塩素または臭素、五酸化燐、硫酸、硫化水素、塩化水素、フッ化水素、三フッ化硼素、塩化アルミニウムまたは塩化亜鉛等の化学物質の作用により触媒作用される。このような酸性化合物の作用下に、アルデヒドの重合は自然発生的に始まる。この酸性化合物が十分に高い濃度で存在すると、二三分のうちに結晶性の三量体性アルデヒドが形成する。この酸性化合物の濃度が10ppm 以下の時は、この三量体の形成は、二三日のうちに幾らかよりゆっくりと進行する。更に、低温、すなわち0℃以下の温度またはUV光が、脂肪族アルデヒドの重合を促進する。更なる問題は、アルカリ性物質の作用下にアルデヒドが自動縮合する傾向があることである。【0003】このようなより高分子量の化合物に転移することが原因で、アルデヒドは制限無く長期間貯蔵することができない。確かに、アルデヒドの重合及び自動縮合生成物は高温下に再分解するが、このような物質の形成は、アルデヒドを制限なく工業的に利用するためには障害となる。それゆえ、アルデヒドからこのような高分子量生成物が形成することを阻止する試みがなされている。【0004】これはアルデヒドを高純度の形で製造及び保存した時に、限られた期間内で可能である。しかし、これに必要とされる精製操作は費用がかかり、そのためこれは工業的なアルデヒドの製造には適していない。【0005】この重合及び自動縮合反応を、ある種の物質を添加することによって防ぐことができることが公知である。しかし、実際には、アルデヒドを様々な用途に制限無く使用すべき場合は、満たさなければならない数多くの要求事項がこの物質にはかせられる。これには、この物質が低濃度でも長期間の間ずっと有効でなければならないこと及びその上、アルデヒドを原料として使用するプロセスにおいて化学反応によってそれを妨害しないことが要求される。【0006】イソブチルアルデヒドの安定剤として、例えばメルカプトベンズイミダゾール及び2,2-メチレン- ジ(4-メチル-6-tert.- ブチルフェノール)が開示されている。しかし、これらの安定剤の作用の有効時間は不十分である。例えば、ドイツ特許出願公開第29 05 267 号の記載によると、イソブチルアルデヒドに100ppmのメルカプトベンズイミダゾールを添加した際、安定化されたこのアルデヒドを僅か5週間貯蔵しただけで、かなりの程度で三量化反応の発生が再び観察される。【0007】他の方法では、重合を阻止するために、エタノール中のジフェニルアミンの溶液をアルデヒドに添加する。しかし、この方法も同様に、長期間にわたる重合の抑制を保証するものではない。【0008】ドイツ特許出願公開第29 05 267 号及びドイツ特許出願公開第29 17 789 号から、トリエタノールアミンまたはジメチルエタノールアミンの添加によって、イソブチルアルデヒド並びに3〜14個の炭素原子を有する他の脂肪族アルデヒドを重合及び自動縮合に対して安定化できることが公知である。これらの安定剤の使用下では、比較的低い濃度で既に、長期にわたる良好な安定化が達成され得る。例えば、上記のエタノールアミンをアルデヒドを基準に10ppm の割合で使用すると、例えば酸素の作用による重合及び自動縮合に起因する高分子量化合物の形成を30週間の期間防ぐことができることが記載されている。アルデヒドを基準に20〜100ppmの割合で使用すると、この安定剤は、特別な予防処理を行うことなく、約1年の期間にわたるアルデヒドの貯蔵において三量体またはアルドール縮合生成物の形成を抑制する。しかし、この安定剤には、蒸留に多大な費用をかけないとアルデヒドから再び分離することができないという欠点がある。【0009】特公昭45-012282 B4号公報からも同様に、三量体の形成に対してイソブチルアルデヒドを安定化させる際の問題が知られている。水性のアルカリ溶液によるイソブチルアルデヒドの処理はどのような効果も示さないことが記載されている。アルカリ性物質は、固体の形かまたはかなり濃縮した水性溶液の形でイソブチルアルデヒドに添加しないと安定化効果は達成されず、この際、後者の場合では、水の量が、イソブチルアルデヒドの飽和限界以下であることが重要である。アルカリ性化合物としては、アルカリ金属化合物(炭酸塩、重炭酸塩、ケイ酸塩及び脂肪酸塩)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩及び脂肪酸塩)、並びにアンモニアまたは炭酸アンモニウムが使用される。しかし、このアルカリ性化合物の添加量はかなり多い。安定剤として、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム並びに水酸化カルシウム、酢酸ナトリウム及び酸化マグネシウムが使用される時は、これらはそれぞれ500ppmの量、つまり特公昭45-012282 B4号では既に少量であると見なされている量でイソブチルアルデヒドに添加される。このようなアルカリ性安定剤を多量に添加することによって、三量体の形成は確かに抑制されるが、アルカリによる触媒作用によってイソブチルアルデヒドのアルドール縮合がますます発生するという問題を避けられない。更に、アルカリ性物質を固体として多量の、例えばタンク中に貯蔵したアルデヒドに添加することには、全アルデヒド容量中でこのアルカリ性物質の完全な溶解、分散並びに均一な分布を達成せねばならないという問題が付随する。【0010】【発明が解決しようとする課題】それゆえ、本発明の課題は、アルデヒドの重合及び自動縮合反応をできるだけ長い時間防ぐことができる改善された方法を提供することである。【0011】【課題を解決するための手段】この課題は、アルカリ性物質を添加することによって脂肪族C3 〜C14−アルデヒドを安定化する方法であって、アルカリ性物質として、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩またはアルカリ土類金属カルボン酸塩を、安定化するべきアルデヒドに、このアルデヒドを基準として0.05〜20ppm、好ましくは0.05〜5ppm、特に好ましくは0.05〜2.5ppmの量で添加することを特徴とする上記方法によって達成される。【0012】本発明による方法は、使用される安定剤が極めて低い濃度で既に有効であることに特徴がある。該安定剤は、0.05ppmの濃度でも、またたとえ低温下でも更に別の予防手段を施すことなく数週間の間、重合またはアルドール縮合による高分子量化合物の形成をアルデヒドの貯蔵の際に防ぐ。更に、アルデヒドを安定化するために添加されるこの物質が、アルデヒドの二次加工の際に邪魔にならないということが強調されるべきである。それでもなお、アルデヒドの二次加工の前にこのアルカリ性物質を分離することが望ましい場合でも、これは簡単な蒸留によって行うことができ、この際、このアルカリ性物質は蒸留残液中に残留する。特に、この安定剤はアルカリ性であるにもかかわらず、アルデヒドにアルドール縮合反応を引き起こさないということが注目に値する。【0013】アルカリ金属水酸化物としては好ましくは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが、アルカリ土類金属水酸化物としては好ましくは水酸化カルシウムが使用される。アルカリ金属炭酸塩としては好ましくは炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムが、そしてアルカリ土類金属炭酸塩としては好ましくは炭酸マグネシウム及び炭酸カルシウムが使用される。アルカリ金属カルボン酸塩としては特に酪酸ナトリウムが使用される。【0014】該アルカリ性物質は、通常、0.01〜1M、好ましくは0.05〜0.5M、特に0.1〜0.25M水溶液として使用される。個々の場合において、このアルカリ性物質、特にアルカリ金属カルボン酸塩、この中でもとりわけ酪酸ナトリウムを固体として添加することも好適であり得る。【0015】本発明方法により安定化できるアルデヒドの例は、プロパナール、n-及びi-ブタナール、n-及びi-ペンタナール、n-及びi-ヘキサナール、n-及びi-ヘプタナール、n-及びi-オクタナール、n-及びi-ノナナール、n-及びi-デカナール、ウンデカナール、ドデカナール、ラウリンアルデヒド、メチルノニルアルデヒド(MNA) 、トリデシルアルデヒド並びにミリスチルアルデヒドである。【0016】これらのアルデヒドは、3重量%まで、好ましくは0.5〜2重量%、特に0.75〜1.25重量%の量で水を含んでいてもよい。【0017】本発明による方法は、水溶液の形の安定剤を先ず装入しそして場合によっては同様に水を含むアルデヒドをそれに添加することによって行うことができる。それとは逆に、安定剤の水溶液を、場合によっては水を含むアルデヒドに添加することもできる。【0018】【実施例】実施例1〜3:先ず、安定化に使用する水酸化ナトリウムを0.1M水溶液としてポリエチレン製ボトル中に適当量装入し、次いで適当量のアルデヒドと混合しそして窒素でガスシールする。実施例1及び2ではイソブチルアルデヒドは、既にそれぞれ脱イオン水(脱塩水)を2%含み、実施例3ではn-ブチルアルデヒドは脱イオン水を1%含む。次いで、このポリエチレン製ボトルを回転装置を用いて20分間振盪して、最適な十分な混合を達成する。実施例2では、このボトルを、4週間の全試験期間の間振盪する。【0019】これらのボトルを、光の遮断下に各々の試験時間中貯蔵する。様々な貯蔵時間後にそれぞれ試料採取を行い、この際、各々の試料の現存の状態を確保するためにトリエタノールアミンを100ppm量で添加する。採取した試料の分析をガスクトマトグラフィーを用いて行う。全ての作業は窒素雰囲気下に行う。【0020】【表1】【0021】実施例4〜10:先ず、安定化に使用する水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは炭酸ナトリウムを、表2に記載する濃度及び量で水溶液としてポリエチレン製ボトル中に装入し、次いで適当量のn-ブチルアルデヒドと混合しそして窒素でガスシールする。【0022】次いで、これらのポリエチレン製ボトルを回転装置を用いて20分間振盪して、最適な十分な混合を達成する。【0023】これらのボトルを、光を遮断して各々の試験時間の間貯蔵する。様々な貯蔵時間後に試料の採取をそれぞれ行い、この際、各々の試料の現存する状態を確保するためにトリエタノールアミンを100ppm量で添加する。試料の分析をガスクロマトグラフィーを用いて行う。全ての作業は窒素雰囲気下に行う。【0024】【表2】【0025】【表3】【0026】ここで各略語は以下の意味を有する:n−C4 −al :n−ブチルアルデヒドTrim C4 −al K1 :eee-またはaaa-配置の2,4,6-トリ-n- プロピル-1,3,5- トリオキサンTrim C4 −al K2 :eea-またはaae-配置の2,4,6-トリ-n- プロピル-1,3,5- トリオキサンΣTetramer :n-ブチルアルデヒドの四量体性重合生成物ΣAldol :アルドール縮合生成物の合計実施例11〜14:実施例11〜14の全てにおいて、先ず、1重量%の水含有率を有するn-ブチルアルデヒドを、硫酸を添加することによって、1ppmの酸含有率に調節する。実施例11は、安定剤としてのアルカリ性物質を添加してない空試験である。実施例12及び13においては、次いで固体の酪酸ナトリウムを20ppmまたは10ppmの量で、そして実施例14では、水酸化ナトリウムを10ppmの量でn-ブチルアルデヒドに添加する。次いで、窒素でガスシールしたボトルを回転装置を用いて20分間振盪して、最適な十分な混合を保証する。これらのボトルを、光を遮断して、各々の試験時間の間貯蔵する。様々な貯蔵時間の後にそれぞれ250mlの試料を採取し、この際、各々の試料の現存の状態を確保するためにトリエタノールアミンを100ppmの量でそれぞれ添加する。全ての作業は窒素雰囲気下に行う。この試料の分析をガスクロマトグラフィーにより行う。【0027】【表4】【0028】実施例15〜18:実施例15は、安定剤としてのアルカリ性物質を添加しない空試験である。実施例16、17及び18においては、次いで、固体の酪酸ナトリウム、固体の酪酸カルシウム並びに0.05M溶液としての水酸化ナトリウムを0.5ppmの量でn-ブチルアルデヒドに添加する。次いで、窒素でガスシールしたボトルを回転装置を用いて20分間振盪して、最適な十分な混合を保証する。これらのボトルを、光の遮断下に、各々の試験時間の間貯蔵する。様々な貯蔵時間後にそれぞれ250mlの試料を採取し、この際、各々の試料の現存の状態を確保するためにトリエタノールアミンをそれぞれ100ppmの量で添加する。全ての作業は窒素雰囲気下に行う。試料の分析をガスクロマトグラフィーを用いて行う。実施例19〜21:実施例19は、安定剤としてのアルカリ性物質を添加しない空試験である。実施例20及び21では、次いで、0.1M溶液としての水酸化ナトリウムを0.5ppmまたは0.25ppmの量でn-ブチルアルデヒドに添加する。次いで、窒素でガスシールしたボトルを回転装置を用いて20分間の間振盪し、最適な十分な混合を保証する。これらのボトルを、光の遮断下に、各々の試験時間の間貯蔵する。様々な貯蔵時間の後、それぞれ250mlの試料を採取し、この際、各々の試料の現存の状態を確保するためにトリエタノールアミンを100ppmの量でそれぞれ添加する。全ての試験は窒素雰囲気下に行う。試料の分析をガスクロマトグラフィーにより行う。【0029】【表5】【0030】【表6】 アルカリ性物質の添加によって脂肪族C3 〜C14−アルデヒドを安定化する方法であって、アルカリ性物質として、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属カルボン酸塩、またはアルカリ土類金属カルボン酸塩を、安定化するアルデヒドに、このアルデヒドを基準として0.05〜20ppmの量で添加することを特徴とする上記方法。 アルカリ性物質の添加量が、0.05〜5ppmであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。 アルカリ性物質の添加量が、0.05〜2.5ppmであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。 アルカリ金属水酸化物として水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを、アルカリ土類金属水酸化物として水酸化カルシウムを、アルカリ金属炭酸塩として炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムを、アルカリ土類金属炭酸塩として炭酸マグネシウムまたは炭酸カルシウムを、あるいはアルカリ金属カルボン酸塩として酪酸ナトリウムを使用することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。 アルカリ性物質を、0.01〜1M水溶液として使用することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。 アルカリ性物質を、0.05〜0.5M水溶液として使用することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。 アルカリ性物質を、0.1〜0.25M水溶液として使用することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。 脂肪族C3 〜C14−アルデヒドとして、プロパナール、n-ブタナール、i-ブタナール、n-ペンタナール、i-ペンタナール、n-ヘキサナール、i-ヘキサナール、n-ヘプタナール、i-ヘプタナール、n-オクタナール、i-オクタナール、n-ノナナール、i-ノナナール、n-デカナール、i-デカナール、ウンデカナール、ドデカナール、ラウリンアルデヒド、メチルノニルアルデヒド(MNA)、トリデシルアルデヒドまたはミリスチルアルデヒドを使用することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。 アルデヒドが、3重量%までの割合で水を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。 アルデヒドが、0.5〜2重量%の割合で水を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。 アルデヒドが、0.75〜1.25重量%の割合で水を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。 先ず、アルカリ性物質を水溶液の形で装入し次いで場合によっては同様に水を含むアルデヒドをそれに添加することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の方法。 アルカリ性物質の水溶液を、場合によっては水を含むアルデヒドに添加することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の方法。