生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_固定化酵素の調製方法
出願番号:1998350920
年次:2006
IPC分類:C12N 11/08


特許情報キャッシュ

清水 雅美 小松 利照 清水 将夫 加瀬 実 JP 3734972 特許公報(B2) 20051028 1998350920 19981210 固定化酵素の調製方法 花王株式会社 000000918 古谷 馨 100063897 溝部 孝彦 100076680 古谷 聡 100087642 持田 信二 100091845 清水 雅美 小松 利照 清水 将夫 加瀬 実 20060111 C12N 11/08 20060101AFI20051215BHJP JPC12N11/08 A C12N9/00-9/99,11/00-13/00 特開昭63−160583(JP,A) 特開平05−336967(JP,A) 特開平03−130079(JP,A) 特開平01−153090(JP,A) 3 2000166552 20000620 5 20000824 渡邉 潤也 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、油脂を加水分解して脂肪酸とグリセリンを生成する工程で触媒として用いられる、酵素活性の損失が少なく、且つ高活性を示す固定化酵素の調製法である。【0002】【従来の技術】油脂を油脂分解酵素を用いて加水分解する際に、酵素を効率的に使用するため、無機又は有機の担体に油脂分解酵素を固定化した固定化酵素が用いられている。担体への酵素の吸着率を高め、また酵素活性を向上させるため、種々の研究がなされており、例えば特開平9−257号公報では、特殊な官能基を持つシランカップリング剤で処理した無機担体にリパーゼを固定化し、洗浄、乾燥した後、脂肪酸を含浸させた固定化酵素担体の製造方法が開示されている。しかし、この方法によっても、酵素吸着量、酵素活性は未だ不十分である。【0003】【発明が解決しようとする課題】以上の状況において、活性発現を十分に発し、さらに酵素の脱離や失活を抑えた油脂分解用酵素を調製することで、油脂の分解時に使用する酵素量を低減することが望まれている。【0004】【課題を解決するための手段】 この課題を解決するには、吸着時により多くの油脂分解用酵素を高い活性発現を示す様に吸着させ、さらに固定化酵素の周りに反応を促進させる雰囲気を形成することが望ましい。本発明は、酵素を多孔性の陰イオン交換樹脂からなる固定化用担体に吸着固定化した後、油脂を用いて処理し、次いで該油脂で処理された固定化酵素を水洗することなく濾過して該油脂と分離する、油脂加水分解用の固定化酵素の調製方法であり、これにより前記課題を解決したものである。【0005】【発明の実施の形態】本発明で使用する担体としては多孔性の陰イオン交換樹脂が良い。樹脂の粒子径は400 〜1000μmのものが望ましく、細孔径は100 〜1500Åのものが望ましい。樹脂の材質としては、フェノールホルムアルデヒド系、ポリスチレン系、アクリルアミド系、ジビニルベンゼン系等が挙げられる。特にフェノールホルムアルデヒド系樹脂(商品名Duolite A-568)が望ましい。この細孔が酵素吸着に大きな表面積を与え、より大きな吸着量を得ることができる。本発明では、高活性を発現するような吸着状態にするため、固定化の前処理として、担体を脂溶性脂肪酸若しくは脂溶性脂肪酸誘導体で処理することが好ましい。使用する脂溶性脂肪酸若しくは脂溶性脂肪酸誘導体としては炭素数8〜18のものが望ましい。例えば、該脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸等の直鎖飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸、リシノール酸等のヒドロキシ脂肪酸、もしくはイソステアリン酸等の分岐脂肪酸が挙げられる。脂肪酸誘導体としては、炭素数8〜18の脂肪酸と水酸基を有する化合物とのエステルが挙げられ、1価アルコールエステル、多価アルコールエステル、リン脂質、あるいはこれらのエステルに更にエチレンオキサイドを付加した誘導体等が例示される。1価アルコールエステルとしては、メチルエステル、エチルエステル等が、多価アルコールエステルとしては、モノグリセライド、ジグリセライド、及びそれらの誘導体、あるいはポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの脂肪酸及びその誘導体はいずれも常温で液状であることが工程上望ましい。またこれらは単一で用いても良いが、組み合わせることで一層の効果が発揮される。これらの脂溶性脂肪酸及びその誘導体と多孔性陰イオン交換樹脂の接触法としては、水もしくは有機溶剤中にこれらをそのまま加えても良いが、分散性を良くするために溶剤に脂溶性脂肪酸又はその誘導体を一旦分散・溶解させた後、水に分散させた多孔性陰イオン交換樹脂に加えても良い。この時の有機溶剤としてはクロロホルム、ヘキサン、エタノール等が挙げられる。脂溶性脂肪酸及びその誘導体と多孔性陰イオン交換樹脂の比率は、多孔性陰イオン樹脂1重量部(乾燥重量)に対し、脂溶性脂肪酸及びその誘導体0.01〜1重量部、特に0.05〜0.5 重量部であることが好ましい。接触温度は0〜100 ℃、好ましくは20〜60℃が良い。接触時間は、5分〜5時間程度で良い。本処理後濾過して樹脂を回収するが、この時乾燥しても良い。乾燥温度は室温〜100 ℃が良く、減圧乾燥を行っても良い。【0006】本発明で使用する油脂分解酵素は、リゾプス(Rizopus) 属、アスペルギルス(Aspergillus) 属、クロモバクテリウム(Chromobacterium) 属、ムコール(Mucor) 属、シュードモナス(Pseudomonas) 属、ジオトリケム(Geotrichum)属、ペニシリウム(Penicillium) 属、キャンディダ(Candida) 属等の微生物起源のリパーゼ及び膵臓リパーゼ等の動物リパーゼが挙げられる。高分解率を得るためには位置特異性のない(ランダム型)のリパーゼが良く、微生物起源ではシュードモナス(Pseudomonas) 属、及びキャンディダ(Candida) 属等が良い。【0007】固定化を行う温度は酵素の失活が起きない0〜60℃、好ましくは5〜40℃が良いが、酵素の特性によって選ぶことができる。また酵素溶液のpHは、酵素の変性が起きない範囲であれば良く、pH3〜9が望ましい。これも温度同様酵素の特性によって決めれば良い。これらのpHを維持する緩衝液としては、特に限定しないが、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液等がある。【0008】本発明の固定化方法において、酵素溶液中の酵素濃度は、固定化効率の点から酵素の溶解度以下で且つ十分な濃度である事が望ましい。また必要に応じては不溶部を遠心分離で除去し、上澄を使用することも出来る。また固定化担体と酵素の比率は固定化担体1重量部に対して、酵素0.05〜10重量部、特に0.1 〜5重量部であることが好ましい。【0009】本発明で使用する固定化後に固定化酵素を処理する油脂反応基質としては、菜種油、大豆油、コーン油、オリーブ油、牛脂、魚油等であり、特に限定されるものではないが、実際に加水分解を行う油脂を使用するのが望ましい。【0010】固定化後の反応基質と固定化酵素の接触に関しては、固定化後に酵素溶液から濾過により固定化酵素を回収し、余分な水分を切ったのち、乾燥することなしに反応基質となる油脂に接触させる。このとき固定化酵素中の水分は、用いる担体の種類によっても異なるが、20重量%以上、好ましくは40〜60重量%の範囲にある。このときカラム等の充填容器に封入して、ポンプ等により油脂を循環しても良いし、油脂中に固定化酵素を分散させても良い。接触させる温度は常温〜60℃が良く、酵素の特性によって選ぶことができる。さらに接触する時間は2時間〜24時間程度で良い。この接触が終わった所で濾過し、固定化酵素を回収する。この操作により、固定化酵素の反応場が加水分解に適した状態になると考えられる。さらにこの処理を行った固定化酵素は、保存安定性も良い。これは油脂によってリパーゼが安定化されているためと考えられる。【0011】【実施例】実施例1 Duolite A-568 (ダイヤモンドシャムロック社製)10gをN/10のNaOH溶液100cc 中で1時間撹拌した。濾過した後100cc のイオン交換水で洗浄し500mM の酢酸緩衝液(pH7)100cc でpHの平衡化を行った。その後50mMの酢酸緩衝液(pH7)100cc で2時間ずつ2回pHの平衡化を行った。この後、濾過を行い担体を回収した後、エタノール50ccでエタノール置換を30分行った。濾過した後、リシノール酸を10g含むエタノール50ccを加え30分間、リシノール酸を担体に吸着させた。その後、濾過し、担体を回収し、50mMの酢酸緩衝液(pH7)50ccで30分ずつ4回洗浄し、エタノールを除去し、濾過して担体を回収した。その後、市販のリパーゼ(リパーゼOF名糖産業(株)製)10gを50mMの酢酸緩衝液(pH7)90ccに溶解した酵素液と5時間接触させ、固定化を行った。濾過し、固定化酵素を回収して、50mMの酢酸緩衝液(pH7)100cc で洗浄を行い、固定化していない酵素や蛋白を洗浄した。その後、実際に分解を行う大豆油を40g加え12時間撹拌した。以上の操作はいずれも20℃で行った。その後、濾過して油脂と分離し、固定化酵素とした。固定化後の酵素液の残存活性と固定化前の酵素液の活性の差より固定化率を求めたところ、82%であった。これは従来の方法で行った固定化率に比べると約20%多い。こうして得られた固定化酵素2.8 g(乾燥状態1g)を50ccのネジ付きの三角フラスコに秤量した。そこへ大豆油10gと蒸留水6gを添加し、40℃下、200rpmで浸盪し反応を行った。反応開始30分後、83%の分解率を得た。そして2時間で分解率97%に達した。分解率は酸価(AV)をケン価(SV)で除した値をパーセント表示している。この分解速度は従来報告されている方法で調製された固定化酵素に比べると最も速い水準にある。【0012】実施例2実施例1で示した方法で反応を終了したのち、固定化酵素を全量回収し、実施例1に示した仕込み組成で繰り返し反応を行った。5回の反応を行い、反応開始2時間で、97.0%、97.2%、96.5%、96.8%、96.5%の分解率を得た。 酵素を多孔性の陰イオン交換樹脂からなる固定化用担体に吸着固定化した後、油脂を用いて処理し、次いで該油脂で処理された固定化酵素を水洗することなく濾過して該油脂と分離する、油脂加水分解用の固定化酵素の調製方法。 固定化の前処理として、担体を脂溶性脂肪酸若しくは脂溶性脂肪酸誘導体で処理する請求項1記載の調製方法。 酵素の吸着固定化後に処理する油脂として油脂反応基質を用いる請求項1又は2記載の調製方法。


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