タイトル: | 特許公報(B2)_試料ガスのサンプリング方法 |
出願番号: | 1998342555 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | G01N 1/22 |
荒井 猛 宇都宮 良明 JP 4125832 特許公報(B2) 20080516 1998342555 19981202 試料ガスのサンプリング方法 大陽日酸株式会社 000231235 木戸 一彦 100086210 荒井 猛 宇都宮 良明 20080730 G01N 1/22 20060101AFI20080710BHJP JPG01N1/22 A G01N 1/00 - 1/34 特開平05−133855(JP,A) 特開平04−157149(JP,A) 特公昭61−024463(JP,B1) 2 2000171361 20000623 7 20051129 榎本 吉孝 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、試料ガスのサンプリング方法に関し、詳しくは、高純度アルゴンや高純度窒素等の高純度ガス中の微量成分、特に水素を分析する際のサンプリング方法に関する。【0002】【従来の技術】不純物レベルがppm〜ppbである高純度アルゴンや高純度窒素等の高純度ガス製品の品質検査をを行うため、これらのガスの製造場所や使用場所でサンプラーにサンプリングし、これをガス分析装置の設置場所まで搬送することが行われている。【0003】このような高純度の試料ガスをサンプリングするサンプラーとして、従来からステンレス鋼製の流通式サンプラーが用いられており、試料ガスとの接触面には、金属表面から試料ガス中に不純物成分が放出されないようにするための各種の処理を施している。【0004】例えば、冷間圧延引抜き後に、アンモニアや水素あるいは水素と窒素との混合ガス等の還元雰囲気中で約1080℃に加熱して光輝焼鈍熱処理を行うBA(Bright Anneal)処理、硫酸やリン酸等の電解液中で陽極酸化処理することにより、電気化学反応で金属表面の微小凸部を優先的に溶解(イオン化)し、金属表面を平滑で、かつ、光沢に富む表面とするEP(Electro−Polish)処理、金属表面に酸化不動態膜を形成する0P処理、クロムリッチ不動態膜を形成するCRP処理等が行われている。【0005】【発明が解決しようとする課題】上述のような各種処理を行うことにより、金属表面への不純物の吸着や、金属表面に吸着した不純物が試料ガス中に放出されることは、略完全に防止することができるが、金属表面部分の金属中に存在する水素が金属表面から試料ガス中に放出されることがあり、水素の分析結果に大きな差を生じることがあった。【0006】例えば、サンプラー内にサンプリングした試料ガスを採取直後に分析したときには、水素成分が1ppb以下であったのに対し、サンプリングから1週間経過後に分析を行うと、水素成分が数十から百数十ppbに上昇してしまうことがあった。【0007】そこで本発明は、試料ガスをサンプラーにサンプリング(採取)してから分析までの期間中における金属表面からの水素の放出を抑制し、ガス分析の精度を向上させることができる試料ガスのサンプリング方法を提供することを目的としている。【0008】【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するため、本発明の試料ガスのサンプリング方法は、不活性ガスを主成分とし、分析対象ガスとして水素又は水素と反応する成分を含む試料ガスをサンプラー内にサンプリングする操作に先立ち、前記サンプラー内を不活性ガスでパージし、該パージ後のサンプラー内に酸素ガスを加圧充填して所定時間保持した後、前記試料ガスでサンプラー内をパージし、次いで、該パージ後のサンプラー内に前記試料ガスを充填してサンプリングすることを特徴としている。【0009】 さらに、前記酸素ガスの加圧充填を1kg/cm2G以上とし、その保持時間を24時間以上とすることを特徴としている【0010】【発明の実施の形態】図1及び図2は、本発明方法によって試料ガスをサンプリングする際の手順を示すもので、図1はサンプラー内に酸素ガスを充填する手順を説明するための配管系統図、図2はサンプラー内に試料ガスをサンプリングする手順を説明するための配管系統図である。【0011】まず、使用するサンプラーは、従来から用いられている各種のものを使用することができ、例えば、内容積10リットルのステンレス鋼(通常はSUS304)製流通式サンプラーで、その表面に前述のような各種処理を施したのものを使用することができる。【0012】流通式サンプラー1は、その両端に弁2,3(入口弁及び出口弁)を有するものであって、流通パージ等のパージ操作を行うことにより、内部のガスを完全に置換することができる。このような流通式サンプラー1を使用して試料ガスをサンプリングするには、まず、図1に示すようにして酸素ガスの充填を行う。【0013】すなわち、流通式サンプラー1の入口弁2に、酸素ガス元弁11,酸素ガス減圧弁12及び酸素ガス供給弁13を有する酸素ガス供給系統10と、窒素ガス元弁21,窒素ガス減圧弁22及び窒素ガス供給弁23を有する窒素ガス供給系統20とを切換え可能に設けたガス供給部30に接続する。なお、通常は、このように不活性ガスとして窒素ガスを使用するが、アルゴン等を使用することも可能である。【0014】最初に、窒素ガス元弁21を開いて窒素ガス減圧弁22を1kg/cm2Gに設定した後、窒素ガス供給弁23,入口弁2,出口弁3を、この順番に開いて流通式サンプラー1内に窒素ガスを流通させる。この窒素ガスによる流通式サンプラー1内のパージを少なくとも10分間行い、流通式サンプラー1内に存在しているガス、特に、酸素と反応し易い物質を除去する。窒素パージを所定時間行った後、出口弁3,入口弁2,窒素ガス供給弁23,窒素ガス減圧弁22,窒素ガス元弁21の順に各弁を閉じる。【0015】次に、酸素ガス元弁11を開いて酸素ガス減圧弁12を1kg/cm2Gに設定した後、酸素ガス供給弁13,入口弁2,出口弁3の順に弁を開き、流通式サンプラー1内に酸素ガスを流通させて流通式サンプラー1内の窒素ガスを排出する流通パージを行う。この酸素ガスによるパージも10分以上行って窒素ガスを完全に追い出し、流通式サンプラー1内を酸素ガス雰囲気にする。パージ終了後、出口弁3,入口弁2,酸素ガス供給弁13,酸素ガス減圧弁12,酸素ガス元弁11の順に各弁を閉じることにより、流通式サンプラー1内に、酸素ガスが圧力1kg/cm2Gで充填され、封印された状態となる。【0016】このようにして流通式サンプラー1内に酸素ガスを充填した後、流通式サンプラー1をガス供給部30から取外し、そのままの状態で放置する。この流通式サンプラー1の放置は、室温で24時間以上行えばよく、例えば、サンプリング予定の1〜2日前に上述の酸素ガス充填処理を行い、そのまま室内に放置しておけばよい。【0017】このとき、酸素ガスの充填圧力が低すぎると、酸素ガスを充填した処理を行う効果が十分に得られなくなり、また、保持時間が短すぎても効果が小さくなる。なお、最高充填圧力は、流通式サンプラー1の耐圧に応じて設定することができ、保持時間も長時間行うことができるが、充填圧力を不必要に高くしたり、極めて長時間保持するようにしても効果の向上はほとんど期待できない。【0018】試料ガスのサンプリングは、図2に示すように、流通式サンプラー1をサンプリング用配管40を介して試料ガス取出弁41に接続することにより、従来と同様にして行うことができる。前記サンプリング用配管40は、放出弁42や圧力計43を備えた小口径で短寸の配管であって、試料ガス源が高圧の場合、即ち9.5kgf/cm2G以上の場合は、試料ガス取出弁41の下流に減圧弁等の圧力調節手段が取付けられる。【0019】以下、試料ガスのサンプリング手順の一例を説明する。まず、上述の酸素ガス充填処理を行った流通式サンプラー1の出口弁3に接続した流量計44を確認しながら出口弁3を開いて流通式サンプラー1内のガス(酸素ガス)を放出し、直ちに出口弁3を閉じる。【0020】また、サンプリング用配管40の放出弁42を微開状態にして試料ガス取出弁41を開き、圧力計43の指示値を確認しながら流路内のパージを行う。このときの試料ガスの流量は、通常、毎分10リットル以上に設定され、流量の確認は、放出弁42に流量計を接続することによって行うことができる。【0021】パージ終了後、放出弁42を閉じてから試料ガス取出弁41を閉じ、流路内を保圧状態にして気密状態を確認する(漏洩検査)。この漏洩検査は、石鹸水等の塗布あるいは圧力計43の指示値の監視により行うことができる。【0022】上記漏洩検査終了後、流通式サンプラー1の出口弁3,入口弁2及び試料ガス取出弁41をこの順で開き、試料ガスを流通式サンプラー1内に流通させて流通パージを行う。試料ガスの流量は、出口弁3に接続した流量計44で確認し、必要に応じて試料ガス取出弁41で適当な流量に調節する。【0023】この流通パージの時間は、流通式サンプラー1の大きさや流通する試料ガスの流量に応じて、流通式サンプラー1内のガス置換を行える程度実施すればよいが、通常は、試料ガスの流量が毎分5リットルの場合は80分、同じく10リットルで40分、15リットルで30分、20リットルで20分行う。【0024】上記流通パージを終了したら、流通式サンプラー1の出口弁3を閉じた後、試料ガス取出弁41を全開にして流通式サンプラー1内が試料ガス源と同一圧力になるまで試料ガスを充填して入口弁2を閉じる。なお、このときの最高充填圧力は、35℃換算で9.5kgf/cm2Gとする。また、試料ガスの充填状態は、前記圧力計43により確認することができる。【0025】試料ガスの充填後は、放出弁42を開いてサンプリング用配管40内のガスを放出し、サンプリング用配管40内が大気圧になってから流通式サンプラー1を取り外す。さらに、流通式サンプラー1の入口弁2及び出口弁3の気密状態を確認後、両端に封止キャップを装着することにより、一連のサンプリング操作が終了する。試料ガスサンプリング後の流通式サンプラー1内の試料ガスの分析は、分析装置に応じた操作で通常通り行うことができる。【0026】このように、試料ガスをサンプリングする操作に先立ち、流通式サンプラー1内に酸素ガスを加圧充填して所定時間保持する操作を行うことにより、流通式サンプラー1の金属面から水素が試料ガス中に放出されることを抑制することができる。したがって、水素許容濃度が極めて低い高純度ガス、特に、アルゴンや窒素等、半導体製造用に使用される高純度不活性ガス中に不純物として含まれる水素量を正確に分析することができる。また、水素が分析対象ガスでない場合でも、水素と反応する成分を含む試料ガスの分析には極めて有効である。【0027】【実施例】筒径165mm、長さ530mmで容積10リットルのステンレス鋼製流通式サンプラーを使用し、試料ガスをサンプリングする前に酸素ガスを充填して放置する処理を行った場合(実施例1〜4)と、この処理を行わなかった場合(比較例1〜4)とにおける水素ガス濃度[ppb]の経時変化を表1に示す(表中の「<1」は検出限界以下)。【0028】実施例1〜4で使用した流通式サンプラーは、その内面をBA処理したものであり、試料ガスのサンプリングの前に、前述のようにして窒素ガスでパージした後、酸素ガスを1kg/cm2Gで充填して24時間保持したものである。また、比較例1の流通式サンプラーは内面をEP処理したもの、比較例2及び3の流通式サンプラーは内面をBA処理したもの、比較例4の流通式サンプラーは内面をOP処理したものである。【0029】試料ガスは、実施例1及び3以外は同じガス(高純度窒素ガス)であり、試料ガスをサンプリングする操作は、各例とも同じ手順で行い、水素ガス濃度の分析は、検出限界が1ppb未満の光イオン化検出器付きガスクロマトグラフを使用して同一条件で行った。実施例1及び3で使用した試料ガスは高純度アルゴンガスであり、その圧力や水素許容量は前記高純度窒素ガスと同じものを選定した。【0030】【表1】【0031】【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、試料ガスサンプリング後の不純物成分濃度の上昇を抑制することができるので、ガス分析の精度を向上させることができるとともに、サンプリング後のガス分析を余裕を持って行うことができるので、ガス分析の負担も軽減できる。【図面の簡単な説明】【図1】 サンプラー内に酸素ガスを充填する手順を説明するための配管系統図である。【図2】 サンプラー内に試料ガスをサンプリングする手順を説明するための配管系統図である。【符号の説明】1…流通式サンプラー、2…入口弁、3…出口弁、10…酸素ガス供給系統、20…窒素ガス供給系統、40…サンプリング用配管、41…試料ガス取出弁、42…放出弁、43…圧力計、44…流量計 不活性ガスを主成分とし、分析対象ガスとして水素又は水素と反応する成分を含む試料ガスをサンプラー内にサンプリングする操作に先立ち、前記サンプラー内を不活性ガスでパージし、該パージ後のサンプラー内に酸素ガスを加圧充填して所定時間保持した後、前記試料ガスでサンプラー内をパージし、次いで、該パージ後のサンプラー内に前記試料ガスを充填してサンプリングすることを特徴とする試料ガスのサンプリング方法。 前記酸素ガスの加圧充填を1kg/cm2G以上とし、その保持時間を24時間以上とすることを特徴とする請求項1記載の試料ガスのサンプリング方法。