タイトル: | 特許公報(B2)_ビスフェノールAの製造法 |
出願番号: | 1998300866 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C07C 37/20,B01J 31/08,C07C 39/16,C07B 61/00 |
岩原 昌宏 JP 4093655 特許公報(B2) 20080314 1998300866 19981022 ビスフェノールAの製造法 出光興産株式会社 000183646 大谷 保 100078732 東平 正道 100081765 岩原 昌宏 20080604 C07C 37/20 20060101AFI20080515BHJP B01J 31/08 20060101ALI20080515BHJP C07C 39/16 20060101ALI20080515BHJP C07B 61/00 20060101ALN20080515BHJP JPC07C37/20B01J31/08 XC07C39/16C07B61/00 300 C07C 37/20、 C07C 39/16 特開平06−032755(JP,A) 特開平06−092889(JP,A) 特開平06−025042(JP,A) 特開平06−343879(JP,A) 特開平08−319248(JP,A) 3 2000128819 20000509 6 20040308 小林 均 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、色相が安定なビスフェノールAの製造方法に関する。ビスフェノールはポリカーボネート樹脂,エポキシ樹脂,ポリアリレート樹脂等の原料として有用である。【0002】【従来の技術】ビスフェノールA〔2,2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン〕は、ポリカーボネート樹脂やポリアリレート樹脂などのエンジニアリングプラスチック、あるいはエポキシ樹脂などの原料として重要な化合物であることが知られており、近年その需要はますます増大する傾向にある。特に、ポリカーボネート樹脂の原料として用いる場合、色相が高温において安定で着色しないことが要求されている。【0003】このビスフェノールAは、酸性触媒及び、場合により用いられるアルキルメルカプタンなどの硫黄化合物の助触媒の存在下、過剰のフェノールとアセトンとを縮合させることにより製造されることは知られている。この方法において、従来よりビスフェノールAの色相の改善を目的にいろいろな試みがなされている。例えば、特公昭40−19333号公報には、シュウ酸やクエン酸をフェノール/水/ビスフェノールA混合物中に加えた後、蒸留処理することにより、色相の改善されたビスフェノールAを得る方法が開示されている。また、特公昭47−43937号には、チオグリコール酸,グリコール酸又はポリリン酸を添加する方法、特開平2−231444号公報には、乳酸,リンゴ酸又はグリセリン酸を添加する方法が開示されている。さらに、特公平7−78030号公報には、脂肪族カルボン酸を添加し、フェノールアダクトよりフェノールを減圧下で蒸発除去する方法が記載されている。しかし、以上の方法はいずれも第3物質の添加が必要でプロセスとして煩雑となり、またビスフェノールAの色相改善の効果は未だ不十分であった。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記観点からなされたもので、色相が高温において安定で着色しないビスフェノールAの製造法を提供することを目的とするものである。【0005】【課題を解決するための手段】本発明者は鋭意研究の結果、触媒として酸型イオン交換樹脂を、助触媒としてアルキルメルカプタンを使用し、フェノールとアセトンを特定の条件で反応させた場合、晶析原料中の有機硫黄化合物濃度がビスフェノールAの高温における色相に影響を及ぼすことを見出し、本発明を完成したものである。【0006】 すなわち、本発明は、酸型イオン交換樹脂を触媒とし、アルキルメルカプタンを助触媒とし、フェノールとアセトンを反応させてビスフェノールAを製造する方法において、反応温度60〜100℃、フェノール/アセトン(モル比)6〜13、アセトン/メルカプタン(モル比)13〜25の条件で反応させることでビスフェノールAを製造し、かつ、未反応アセトン、副生水及び助触媒のアルキルメルカプタンを蒸留除去し、さらに過剰のフェノールを蒸留除去した晶析原料中の有機硫黄化合物濃度を測定し、該濃度が200重量ppmを越える前に触媒を交換して、製造を続行することを特徴とするビスフェノールAの製造法を提供する。【0007】【発明の実施の形態】以下に、本発明について詳細に説明する。先ず、ビスフェノールAの製造方法の工程の概要について説明する。工程1(反応工程)ビスフェノールAは、触媒として酸型イオン交換樹脂を、助触媒としてアルキルメルカプタンを使用し、過剰のフェノールとアセトンを反応させることにより合成される。触媒の酸型イオン交換樹脂としては、一般にスルホン酸型陽イオン交換樹脂が用いられ、例えばスルホン化スチレン・ジビニルベンゼンコポリマー,スルホン化架橋スチレンポリマー,フェノールホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂,ベンゼンホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。【0008】助触媒のアルキルメルカプタンとして、炭素数1〜10のアルキル基のメルカプタンが好適であり、例えばメチルメルカプタン,エチルメルカプタン,プロピルメルカプタン,オクチルメルカプタン,シクロヘキシルメルカプタンなどを挙げることができる。これらの中で、エチルメルカプタンが特に好ましい。なお、これらのアルキルメルカプタンは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。【0009】この反応における反応方法は、特に限定されないが、固定床連続反応や回分式反応が望ましい。固定床連続反応を実施する場合には、液時空間速度(LHSV)は、通常0.2〜30Hr-1、好ましくは0.5〜6Hr-1の範囲で選ばれる。反応混合物には、ビスフェノールAの他に、未反応フェノール,未反応アセトン,触媒,副生水,アルキルメルカプタン,及び有機硫黄化合物,着色物質等の副生物を含んでいる。【0010】工程(2)(副生水,未反応原料の回収工程)次に、工程(1)で得られた反応混合物は、回分式反応のとき、触媒はろ過により除去される。残りは減圧蒸留により、未反応アセトン,副生水及びアルキルメルカプタン等が塔頂より除去され、塔底よりビスフェノールA及びフェノール等を含む液状混合物が得られる。固定床反応器で反応させた場合、脱触媒の必要はない。減圧蒸留の条件は、圧力50〜600Torr、温度70〜180℃の範囲で実施され、この場合、未反応フェノールが共沸し、その一部は塔頂より系外へ除かれる。【0011】工程(3)(ビスフェノールAの濃縮工程)反応混合物から上記のような物質を除いた塔底液は、フェノールは減圧蒸留により留去され、ビスフェノールAは濃縮される。この濃縮残液が次の晶析原料となる。濃縮条件については特に制限はないが、通常温度100〜170℃、圧力40〜500Torrの条件で行われる。温度が100℃より低いと高真空が必要となり、170℃より高いと次の晶析工程で余分な除熱が必要となる。また、濃縮残液のビスフェノールAの濃度は20〜50重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲である。この濃度が20重量%未満であるとビスフェノールAの回収率が低く、50重量%を超えると晶析後のスラリーの移送が困難となる。【0012】工程(4)(晶析工程)工程(3)で得られた濃縮残液は、40〜70℃まで冷却され、ビスフェノールAとフェノールとの付加物(以下、フェノールアダクトと略称する)が晶析し、スラリー状になる。冷却は、外部熱交換器や晶析機に加えられる水の蒸発による除熱によって行われる。次に、スラリー状の濃縮残液は、濾過、遠心分離等によりフェノールアダクトと反応副生物を含む晶析母液に分離される。この晶析母液は、直接又は一部反応器へリサイクルしたり、一部又は全部をアルカリ分解しフェノールとイソプロペニルフェノールとして回収する。また、一部又は全部を異性化して晶析原料にリサイクルすることもできる(特開平6−321834号公報参照)。【0013】工程(5)(フェノールアダクトの加熱溶融工程)工程(4)で得られたビスフェノールAとフェノールとの1:1アダクトの結晶は100〜160℃で加熱溶融され、液状混合物になる。【0014】工程(6)(ビスフェノールAの回収工程)工程(5)で得られた液状混合物から、減圧蒸留によってフェノールを除去し、ビスフェノールAが回収される。減圧蒸留の条件は、圧力10〜100Torr,温度150〜190℃の範囲である。更に、スチームストリッピングにより残存するフェノールを除去する方法も知られている。【0015】工程(7)(ビスフェノールAの造粒工程)工程(6)で得られた溶融状態のビスフェノールAは、スプレードライヤー等の造粒装置により液滴にされ、冷却固化されて製品となる。液滴は、噴霧、散布等により作られ、窒素や空気等によって冷却される。【0016】次に、本発明の方法について詳細に説明する。本発明は、上記の工程(1)において、反応温度60〜100℃、フェノール/アセトン(モル比)6〜13、アセトン/メルカプタン(モル比)13〜25の条件で反応させ、未反応アセトン、副生水及び助触媒のアルキルメルカプタンを蒸留除去し、さらに過剰のフェノールを蒸留除去した晶析原料中の有機硫黄化合物濃度を測定し、該濃度を200重量ppm以下に保持することを特徴するものである。【0017】反応温度については、60℃未満であるとフェノール相が固化することがあり、また、100℃を超えるとイオン交換樹脂の劣化が大きくなり好ましくない。好ましくは65〜95℃の範囲である。フェノール/アセトン(モル比)については、6未満であると、晶析原料中の有機硫黄化合物濃度が200重量ppmを超え、また、13を超えると反応速度が遅くなったり、フェノールの回収量が多くなり好ましくない。好ましくは8〜12の範囲である。【0018】アセトン/メルカプタン(モル比)については、13未満であると、晶析原料中の有機硫黄化合物濃度が200重量ppmを超え、また、25を超えると反応速度が遅くなったり、反応選択性が低くなり好ましくない。好ましくは17〜22の範囲である。【0019】上記の条件で反応させ、工程(2)、工程(3)を経て工程(4)の晶析工程に至る。その晶析原料中の有機硫黄化合物濃度を測定する。該有機硫黄化合物としては、例えば、主として、ジアルキルジスルフィド,チオアセタール,アセトン二量化物のメルカプタン付加物,フェノールとアセトンとメルカプタンとの反応物等のメルカプタン由来の副生物を挙げることができる。この有機硫黄化合物濃度を200重量ppm以下に保持することにより、色相が高温において安定で着色しないビスフェノールAを得ることができる。すなわち、この有機硫黄化合物濃度を指標にすることにより、製品のビスフェノールAのオフスペックを判定でき、触媒の交換時期を判定できる。好ましい有機硫黄濃度の指標は50重量ppm以下である。【0020】【実施例】次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらの実施例になんら制限されるものではない。〔実施例1〕内径20mm、高さ1,500mmの充填層式の反応器にスルホン酸型イオン交換樹脂(三菱化学(株)製、ダイヤイオン−104H)を充填した。反応温度80℃に保ち、反応器入口より、フェノール,アセトン及びエチルメルカプタンを、フェノール/アセトン(モル比)=10、アセトン/メルカプタン(モル比)=20、LHSV=1Hr-1の条件で流通させ、反応を行った。アセトン転化率75%に落ち着いたところで、反応液を圧力500Torr,温度172℃にて未反応アセトンや一部の過剰フェノールを留去した。更に、圧力118Torr,温度134℃にて過剰フェノールを留去し、ビスフェノールA濃度を40重量%に濃縮した。この晶析原料中には、有機硫黄化合物が20重量ppm含まれていた。この濃縮液を43℃に冷却してフェノールアダクトを晶析し、次いで固液分離した。フェノールアダクトは、圧力30Torr,温度170℃にてフェノールを除去しビスフェノールAを得た。晶析母液は、その90%をスルホン酸型イオン交換樹脂(三菱化学(株)製、ダイヤイオン−SK104H)触媒により、反応温度80℃にて異性化反応を行った後、晶析原料としてリサイクルした。残りの10%は、フェノールを回収してブローした。得られたビスフェノールAの色相評価は、空気雰囲気下で220℃,30分間加熱し、目視によりAPHA標準液を用いて行った。その結果10APHAで良好であった。【0021】〔実施例2〕実施例1において、アセトン/メルカプタン(モル比)=17に変更したこと以外は同様にビスフェノールAを製造した。晶析原料中の有機硫黄化合物濃度は25重量ppmで、生成したビスフェノールAの色相は10APHAで良好であった。〔実施例3〕実施例1において、反応温度85℃、アセトン/メルカプタン(モル比)=22に変更したこと以外は同様にビスフェノールAを製造した。晶析原料中の有機硫黄化合物濃度は18重量ppmで、生成したビスフェノールAの色相は10APHAで良好であった。【0022】〔実施例4〕実施例1において、反応温度70℃、フェノール/アセトン(モル比)=9、アセトン/メルカプタン(モル比)=18に変更したこと以外は同様にビスフェノールAを製造した。晶析原料中の有機硫黄化合物濃度は38重量ppmで、生成したビスフェノールAの色相は10APHAで良好であった。〔比較例1〕実施例1において、反応温度85℃、フェノール/アセトン(モル比)=6、アセトン/メルカプタン(モル比)=10に変更したこと以外は同様にビスフェノールAを製造した。晶析原料中の有機硫黄化合物濃度は247重量ppmで、生成したビスフェノールAの色相は30APHAであった。【0023】〔比較例2〕実施例1において、反応温度95℃、フェノール/アセトン(モル比)=5、アセトン/メルカプタン(モル比)=8に変更したこと以外は同様にビスフェノールAを製造した。晶析原料中の有機硫黄化合物濃度は386重量ppmで、生成したビスフェノールAの色相は35APHAであった。〔比較例3〕実施例1において、反応温度90℃、フェノール/アセトン(モル比)=4、アセトン/メルカプタン(モル比)=7に変更したこと以外は同様にビスフェノールAを製造した。晶析原料中の有機硫黄化合物濃度は523重量ppmで、生成したビスフェノールAの色相は45APHAであった。【0024】【発明の効果】本発明によれば、晶析原料中の有機硫黄化合物濃度を指標にすることにより、製品のビスフェノールAのオフスペックを判定でき、触媒の交換時期を判定できる。したがって、色相が高温において安定で着色しないビスフェノールAを製造することができる。 酸型イオン交換樹脂を触媒とし、アルキルメルカプタンを助触媒とし、フェノールとアセトンを反応させてビスフェノールAを製造する方法において、反応温度60〜100℃、フェノール/アセトン(モル比)6〜13、アセトン/メルカプタン(モル比)13〜25の条件で反応させることでビスフェノールAを製造し、かつ、未反応アセトン、副生水及び助触媒のアルキルメルカプタンを蒸留除去し、さらに過剰のフェノールを蒸留除去した晶析原料中の有機硫黄化合物濃度を測定し、該濃度が200重量ppmを越える前に触媒を交換して、製造を続行することを特徴とするビスフェノールAの製造法。 酸型イオン交換樹脂が、スルホン酸型陽イオン交換樹脂である請求項1記載のビスフェノールAの製造法。 アルキルメルカプタンが、エチルメルカプタンである請求項1又は2に記載のビスフェノールAの製造法。