生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ボルデテラ属細菌用培地組成物及び培養方法
出願番号:1998298674
年次:2008
IPC分類:C12N 1/38,C12N 1/20


特許情報キャッシュ

瀧澤 和幸 黒澤 大介 丸山 裕一 酒井 伸夫 生島 紘一郎 佐藤 征也 JP 4162308 特許公報(B2) 20080801 1998298674 19981020 ボルデテラ属細菌用培地組成物及び培養方法 デンカ生研株式会社 591125371 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 的場 ひろみ 100101317 棚井 澄雄 100106909 瀧澤 和幸 黒澤 大介 丸山 裕一 酒井 伸夫 生島 紘一郎 佐藤 征也 20081008 C12N 1/38 20060101AFI20080918BHJP C12N 1/20 20060101ALI20080918BHJP JPC12N1/38C12N1/20 A C12N 1/00-1/38 BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) CA/CONFSCI/SCISEARCH(STN) JSTPlus(JDreamII) JMEDPlus(JDreamII) 米国特許第4551429(US,A) 国際公開第97/17427(WO,A1) 特開昭62−253377(JP,A) 特開昭63−105692(JP,A) 特開昭64−34925(JP,A) 12 2000125852 20000509 15 20050930 中村 正展 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ボルデテラ(Bordetella)属細菌の培養用の培地組成物、及びこれを用いたボルデテラ属細菌の培養方法に関し、更に詳細には、ボルデテラ属細菌の主要免疫抗原である百日咳毒素及び繊維状赤血球凝集素を高産生させることができるボルデテラ属細菌の培養用培地組成物及びこれを用いたボルデテラ属細菌の培養方法に関する。【0002】【従来の技術】ボルデテラ属に属する病原性細菌としては、例えば百日咳菌(ボルデテラ・パータッシス;Bordetella pertussis)、パラ百日咳菌(ボルデテラ・パラパータッシス;Bordetella parapertussis)、気管支敗血症菌(ボルデテラ・ブロンキセプチカ;Bordetella bronchisepitica)等がある。百日咳菌によって引き起こされる百日咳は、気管又は気管支が侵される急性呼吸器系感染症であり、我が国では届出伝染病に指定されている。百日咳は、体力の弱い乳幼児に多発し、罹患すると特有の咳が反復継続し、乳幼児では重症化しやすい。このため早期のワクチン開発が望まれていたが、1964年に百日咳の全菌体を用いた百日咳・ジフテリア・破傷風混合ワクチンの基準が作られ、1968年から定期接種に使用されるようになった。しかし、生活水準の向上に伴い衛生環境も向上し、更に化学療法の発展等も相まって百日咳による罹患率や死亡率が著しく低下したことから、この感染症自体の恐ろしさよりもむしろワクチンの副作用が問題となり、1975年、ワクチン接種が一時中断された。その後ワクチン接種は再開されたが、接種率の低下が続き、ついに1979年を頂点とした百日咳の全国的流行が起こり、小児患者が死亡した例などからワクチンの重要性が改めて見直されることとなった。【0003】このような経緯から、菌体を含まず、百日咳菌体成分である百日咳毒素(Pertussis Toxin;以下「PT」と略称する)及び繊維状赤血球凝集素(Filamentous Hemagglutinin;以下「F-HA」と略称する)を主に含有する精製百日咳コンポーネントワクチンが開発され、1981年から市販、使用が開始され今日に至っている(臨床と微生物, 24, 2, 125-130, 1997)。【0004】百日咳ワクチンの生産のために、百日咳I相菌を液体培地で培養すると、培地中にPT及びF-HAが産生されることが知られている。従って、百日咳等のワクチンを工業的に生産するため、ボルデテラ属細菌を効率良く培養し、PTやF-HAを大量かつ安定に産生させることが望まれる。【0005】ボルデテラ属細菌の培養用の液体培地としては、主としてホーニブルックの培地〔Hornibrook J. W., Publ. Hith. Rep., 54, 1847-1851(1939)〕、CW培地〔Cohen et al., Amer. J. Public Health, 36, Apr., 371-376(1946)〕、SS培地〔Stainer, D. W., Scholte, M. J., J. Gen. Microbiol., 63, 211-220(1971)〕などが用いられている。これらのうちSS培地は、酵母抽出物,ポリペプトン等の天然物質のような組成の複雑な物質を含有しないため、培養菌により産生、排泄された蛋白質抗原、例えばPTやF-HAを容易に精製することができ、また培養終期に得られた菌体又は菌種懸濁液の品質の再現性が良いという特長を有する。【0006】しかしながら、これら液体培地を用いても、工業的大規模生産に見合う十分な量の前記の抗原を発現させることはできない。しかも、これら液体培地を単独で用いると、静置培養条件以外では、F-HAの産生効率が特に低いことが知られている〔Arai, H. and Munoz, J. J., Infect. Immun., 25, 2, 764-767(1979)〕。従って、百日咳ワクチンの製造には、小規模でかつ長時間を要する静置培養に頼らざるを得ないことから、ボルデテラ属細菌の培養に用いる培地及び培養方法の改良が望まれていた。【0007】そこで、攪拌又は振盪液体培養によりPT及びF-HAを同時に高産生するために、SS培地等にシクロデキストリン又はその誘導体を添加する方法が提案されている〔Imaizumi A., Suzuki Y., Ono S., Sato H. and Sato Y., J. Clin. Microbiol., 17, No.5, 781-786(1983)、Imaizumi A., Suzuki Y., Ono S., Sato H. and Sato Y., Infect. Immun., 41, 1138-1143(1983)、Imaizumi A., Suzuki Y., Ginnaga A., Sakuma S. and Sato Y., J. Microbiol. Methods, 339-347(1984)、特公昭60-28277号公報〕。この培地を用いて培養を行えば、菌体収量を増大するばかりでなく、PT及びF-HAの産生も増大する。しかしながら、このシクロデキストリン又はその誘導体は、高価であると共に入手が容易でないという問題を有する。【0008】また、培地添加成分としてシクロデキストリン又はその誘導体と共にD-グルコース重合体のエーテル化誘導体を併用する方法(特許第2552479号公報)、及び培地にシクロデキストリンを含有させることなく水溶性セルロース誘導体のみを添加する方法(特許第2593147号公報、特許第2743177号公報)も提案されているが、これらD-グルコース重合体のエーテル化誘導体、あるいは水溶性セルロース誘導体は常温では水に溶解しにくく、かつその水溶液は粘稠性が高いため、操作上の問題を抱えている。【0009】【発明が解決しようとする課題】このように、従来の改良培地又は培養方法は、生産コストの点又は作業性の点に問題があるため、上記以外の添加剤の使用により又は従来の添加剤に他の添加剤を併用することにより、上記問題を解消ないし軽減することができ、かつPTやF-HAの更なる高生産も可能なボルデテラ属細菌用培地又は培養方法の開発が望まれている。【0010】【課題を解決するための手段】かかる実情において、本発明者らはボルデテラ属細菌のより効率的な培養に関し鋭意研究した結果、培養の際、培地中に安価かつ粘稠性の低いポリエチレングリコール又はその低級アルキルエーテル化誘導体を添加することにより、PT及びF-HAの産生量を増大できること、更には、ポリエチレングリコール又はその低級アルキルエーテル化誘導体を、D-グルコース重合体のエーテル化誘導体及び/又はシクロデキストリン若しくはその誘導体と共に添加した培地を用いた場合には、従来のD-グルコース重合体のエーテル化誘導体及び/又はシクロデキストリン若しくはその誘導体を添加した培地に比べ、PT及びF-HAの産生量、特にF-HAの産生量が著しく増大することを見出し、本発明を完成した。【0011】すなわち本発明は、ポリエチレングリコール又はその低級アルキルエーテル化誘導体を含有する、あるいはこれに加えて更にD-グルコース重合体のエーテル化誘導体及び/又はシクロデキストリン若しくはその誘導体を含有するボルデテラ属細菌用培地組成物、及びボルデテラ属細菌を、同培地組成物で培養するボルデテラ属細菌の培養方法を提供するものである。【0012】【発明の実施の形態】本発明で使用するポリエチレングリコール又はその低級アルキルエーテル化誘導体は、安価であるうえ、容易に水に溶解し、かつその水溶液は粘稠性が低いため作業性に優れた化合物であるといえる。本発明において使用されるポリエチレングリコール又はその低級アルキルエーテル化誘導体の平均分子量は特に限定されないが、好ましくは2000以上である。ただし、その使用濃度において培地に完全に溶解する範囲のものを用いるのが望ましく、具体的には平均分子量2000〜4000000、特に平均分子量6000〜200000のものが好ましい。またポリエチレングリコールの低級アルキルエーテル化誘導体における低級アルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。かかるポリエチレングリコール又はその低級アルキルエーテル化誘導体は、いずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらは、和光純薬工業株式会社、ナカライテスク株式会社、純正化学株式会社、東京化成工業株式会社、関東化学株式会社、シグマ社等から入手し得る市販品を用いることもできる。【0013】ポリエチレングリコール又はその低級アルキルエーテル化誘導体の本発明培地への添加量は、その平均分子量と溶解度によっても異なり一律に規定することは困難であるが、一般には本発明の培地中に0.001〜40g/L、特に0.2〜4g/L含有させるのが好ましい。前記平均分子量範囲中の下限付近の低分子量のものを用いる場合には、必要添加量はより高くなり、また上限付近の高分子量のものを用いる場合には、少ない添加量でも効果を発揮し得る。ポリエチレングリコール又はその低級アルキルエーテル化誘導体は、培地中に全量を一度に添加しても、数段階(2〜6段階程度)に分けて添加してもよい。ポリエチレングリコール又はその低級アルキルエーテル化誘導体を一度に全量添加する場合、添加は培養開始時、あるいは菌が指数増殖期にある時点(一般に培養24時間後)において行うことができる。【0014】本発明の培地中には、上記ポリエチレングリコール又はその低級アルキルエーテル化誘導体と共に、D-グルコース重合体のエーテル化誘導体及び/又はシクロデキストリン若しくはその誘導体を含有させることが、F-HAの産生量を更に増加させる上では好ましい。なお、D-グルコース重合体のエーテル化誘導体を併用する場合には、前述したような作業性向上効果が、またシクロデキストリン又はその誘導体を併用する場合には、前述したような経済的効果が、それぞれ低下するとも考えられるが、これら問題点を遙かに凌駕する効果、すなわちF-HAの産生量の更なる増加が実現できる。【0015】特に、ポリエチレングリコールとD-グルコース重合体のエーテル化誘導体及び/又はシクロデキストリン若しくはその誘導体との併用は、F-HA含量の高いワクチンを製造する上において極めて有用である。すなわち、現在市販されている百日咳ワクチンは、PT及びF-HAの含量に関して、様々な比率で構成されていることが知られている。例えば、PT対F-HAの蛋白重量比は、Connaught Laboratories社製では2対1、Pasteur-Merieux社製では1対1、そしてLederle/Takeda社製では1対10である〔Kathryn M. Edwards et al., PEDIATRICS 96, 3, Sep., 548-557(1995)〕。ワクチンの有効性とこれら抗原の比率に関する明確なコンセンサスは、現在得られていないが、Lederle/Takeda社製のようなF-HAの比率の高いワクチンを製造するためには、上記のような併用系の液体培地を用いることが好ましい。【0016】本発明において使用されるD-グルコース重合体のエーテル化誘導体は、グルコース単位が、アミロースのようにα-置換によって結合した、又はセルロースのようにβ-置換によって結合した重合体のエーテル化誘導体であり、これら重合体中のヒドロキシル基の一部が低級アルキル基又は低級ヒドロキシアルキル基によってエーテル化されているものが挙げられる。セルロースのエーテル化誘導体の代表例としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。D-グルコース重合体のエーテル化誘導体のその他の例としては、でんぷんやアミロースの対応する誘導体が挙げられる。これらのうち、メチルセルロースが特に好ましい。【0017】D-グルコース重合体のエーテル化誘導体の粘度は特に限定されないが、その使用濃度において培地に完全に溶解する範囲のものを用いるのが望ましく、具体的には、2w/v%、20℃において15〜30000cP、特に25〜4000cPのものが好ましい。かかるD-グルコース重合体のエーテル化誘導体は、いずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらは、和光純薬工業株式会社、ナカライテスク株式会社、純正化学株式会社、東京化成工業株式会社、関東化学株式会社、信越化学工業株式会社、ダイセル化学株式会社、シグマ社、ダウケミカル社、カラーコン社、ユニオンカーバイド社、ハーキュレス社、デュポン社等から入手し得る市販品を用いることもできる。【0018】D-グルコース重合体のエーテル化誘導体は、本発明の培地中に、0.001〜2g/L、特に0.05〜0.5g/L含有させるのが好ましい。D-グルコース重合体のエーテル化誘導体は、培地中に全量を一度に添加しても、数段階(2〜6段階程度)に分けて添加してもよい。D-グルコース重合体のエーテル化誘導体を一度に全量添加する場合、添加は培養開始時、あるいは菌が指数増殖期にある時点(一般に培養24時間後)において行うことができる。【0019】本発明において使用されるシクロデキストリンとしては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリンが挙げられ、シクロデキストリンの誘導体としては、β-2,6-ジ-O-メチルシクロデキストリン等のメチルシクロデキストリンなど、エーテル化誘導体が挙げられる。シクロデキストリン又はその誘導体は、いずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらは、和光純薬工業株式会社、ナカライテスク株式会社、純正化学株式会社、東京化成工業株式会社、関東化学株式会社、シグマ社等から入手し得る市販品を用いることもできる。【0020】シクロデキストリン又はその誘導体は、本発明の培地中に0.001〜5g/L、特に0.1〜2g/L含有させるのが好ましい。シクロデキストリン又はその誘導体は、培地中に全量を一度に添加しても、数段階(2〜6段階程度)に分けて添加してもよい。シクロデキストリン又はその誘導体を一度に全量添加する場合、添加は培養開始時、あるいは菌が指数増殖期にある時点(一般に培養24時間後)において行うことができる。【0021】本発明の培地を調製するための基礎培地としては特に限定されないが、大量培養による工業的生産を目的とする場合には液体培地が好ましく、例えば公知の基礎培地であるステナー・ショルテ培地(SS培地)、コーエン・ウィラー培地(CW培地)等が挙げられる。【0022】本発明において対象とするボルデテラ属に属する細菌としては、例えば百日咳菌、パラ百日咳菌、気管支敗血症菌等が挙げられるが、百日咳菌、特に百日咳I相菌が好適に用いられる。【0023】本発明の培地を使用してボルデテラ属の細菌を培養するに際し、前培養を行う培地は特に限定されず、前培養に通常用いられる培地を使用することができるが、本発明の培地を前培養に使用することもでき、前培養用の培地にポリエチレングリコール又はその低級アルキルエーテル化誘導体を添加することにより、好ましくは更にD-グルコースのエーテル化重合体及び/又はシクロデキストリン若しくはその誘導体、特に前者を添加することにより、前培養段階においても、PT産生量及びF-HA産生量を増加させることができる。【0024】本発明の培地へのボルデテラ属細菌の接種量としては特に限定されないが、通常0.5×109(=0.5billion)〜5×109(=5billion)個/mLの菌濃度となるような量が好ましい。ここで、接種量や培養による菌の増殖(バイオマスの生産量)の指標である菌濃度は、分光光度計を用いた比濁法により、標準菌液に対する検体(培養液)の濁度を比較測定することによって求めることができる。【0025】ボルデテラ属細菌の培養方法及び条件は特に限定されるものでなく、従来公知の方法及び条件を採用できるが、静置培養よりは、攪拌下及び通気条件下での培養が好ましく、培養温度は20〜37℃、特に30〜36℃が好ましい。培養期間は、ボルデテラ属細菌の生育状態及び培地上清中のPT及びF-HAの産生状態に応じて適宜調整することができるが、一般に20〜100時間、特に30〜40時間程度が適当である。【0026】培養上清中に産生されたPT及びF-HAの量は、EIAを基本とした公知の方法に従って測定することができる〔Chazono M., Yoshida I., Konobe T., Fukai K., J. Biol. Stand., 16, 2, 83-89(1988)、Sato H., Sato Y., Infect. Immun., 46, 415-421(1984)〕。【0027】【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。【0028】なお、以下の実施例において、菌濃度(バイオマスの生成量)は、培養期間中に分光光度計を用いて650nmにおける培養液の濁度を測定することにより求めた。ここで、2.0(OD650)は菌数50bil./mL(5×1010個/mL)に相当する。【0029】またPTの産生量は、培養液をハプトグロビンを固相化したマクロプレート上で反応させ、これにパーオキシダーゼ標識した抗PTウサギ抗体を反応させるELISA法により測定し、F-HAの産生量は、培養液を、ヤギの高度免疫処理されクロマトグラフィー的手法に基づいて純化された抗体を固相化したプレート上で反応させ、これにパーオキシダーゼ標識した抗F-HAウサギ抗体を反応させるELISA法〔Chazono M., Yoshida I., Konobe T., Fukai K., J. Biol. Stand., 16, 2, 83-89(1988)、Sato H., Sato Y., Infect. Immun., 46, 415-421(1984)〕により測定した。【0030】実施例1液体培地へのポリエチレングリコールの添加による、百日咳I相菌の生育並びにPT及びF-HAの産生に対する影響について、下記の培地組成物を用いて比較試験を行った。【0031】(使用培地)培地1:SS培地にカゼイン水解物を添加した培地(1L中に下記の成分を含有)グルタミン酸ナトリウム 10.72gL-プロリン 0.24gKH2PO4 0.50gKCl 0.20gMgCl2・6H2O 0.10gCaCl2・2H2O 0.02gトリスヒドロキシメチルアミノメタン 6.10gカゼイン水解物 10.00gNaCl 2.50gL-システイン 40.00mgFeSO4・7H2O 10.00mgアスコルビン酸 4.00mg還元グルタチオン 100.00mgナイアシン 4.00mg【0032】培地2:培地1にポリエチレングリコール70000を2.0g/Lとなるように添加した培地【0033】(使用菌株)通常ワクチン菌株として使用される百日咳I相菌の東浜株(国立感染症研究所分与株)【0034】(方法)有効容量500mLの坂口フラスコに培地1又は2を125mLとり、これに百日咳I相菌東浜株を接種し、培養温度35℃、振盪速度100rpmの条件で、40時間振盪培養した後、上清中のPT及びF-HAの量を測定する。【0035】(結果)この結果を図1に示す。培地1にポリエチレングリコールを単独添加した場合、PT産生量は5倍以上、F-HA産生量は2倍となった。【0036】実施例2下記の培地を用いる以外は実施例1と同様にして、メチルセルロース単独添加の場合と、ポリエチレングリコールとメチルセルロースの併用の場合とを比較した。【0037】(使用培地)培地3:培地1にメチルセルロース(1500cP)を0.2g/Lとなるように添加した培地培地4:培地3にポリエチレングリコール70000を2.0g/Lとなるように添加した培地【0038】(結果)この結果を図2に示す。ポリエチレングリコールとメチルセルロースを併用した場合、メチルセルロース単独添加の場合に比べ、PT量はやや増加し、F-HA量は著しく増加した。【0039】実施例3下記の培地を用いる以外は実施例1と同様にして、β-2,6-ジ-O-メチルシクロデキストリン単独添加の場合と、ポリエチレングリコールとβ-2,6-ジ-O-メチルシクロデキストリンの併用の場合とを比較した。【0040】(使用培地)培地5:培地1にβ-2,6-ジ-O-メチルシクロデキストリンを2.0g/Lとなるように添加した培地〔Imaizumi A., Suzuki Y., Ono S., Sato H. and Sato Y., J. Clin, Microbiol., 17, No.5, 781-786(1983)〕培地6:培地5にポリエチレングリコール70000を2.0g/Lとなるように添加した培地【0041】(結果)この結果を図3に示す。ポリエチレングリコールとβ-2,6-ジ-O-メチルシクロデキストリンを併用した場合、β-2,6-ジ-O-メチルシクロデキストリン単独添加の場合に比べ、PT量、F-HA量とも、増加が認められた。【0042】実施例4(1) 凍結乾燥した百日咳I相菌の東浜株を、固体ボルデー・ジャング培地を入れた試験管8本に接種し、36℃で48時間培養した後、各試験管に生理食塩水6mLずつを加えた。次いで、容量2Lの坂口フラスコ4個のそれぞれに下記組成の前培養培地500mLを調製し、これらに得られた菌懸濁液の15mLを接種し、攪拌下、36℃で24時間培養した。【0043】前培養培地組成:カザミノ酸 2.0(w/v%)イースト・エクストラクト 0.75(w/v%)MgCl2・6H2O 0.01(w/v%)L-システイン塩酸塩 0.001(w/v%)ナイアシン(ニコチン酸)0.1%溶液 0.0001(v/v%)KH2PO4 0.1(w/v%)NaCl 0.5(w/v%)【0044】(2) 得られた菌懸濁液を合せて混合物とし、これを実施例1で用いた培地1又はこれに各種ポリエチレングリコールを添加した培地125mLを含む500mLの坂口フラスコに接種した。これらを攪拌下に40時間培養した。なお、ポリエチレングリコールは、培養開始時に表1に示す組み合わせと濃度で添加した。40時間培養後に各培地中のPT及びF-HAの濃度を測定した。この結果を表1に示す。【0045】【表1】【0046】培地1に比べ、ポリエチレングリコールを添加した培地はいずれも、PT及びF-HAの産生量の著しい増加が認められた。【0047】実施例5培地として、実施例1で用いた培地1にポリエチレングリコール及び/又はメチルセルロース(ナカライテスク社製)を添加した培地を用いる以外は、実施例4の(2)と同様に培養を行い、40時間後の各培地中のPT及びF-HAの濃度を測定した。【0048】(結果)この結果を表2に示す。【0049】【表2】【0050】培地1にメチルセルロースのみを単独添加した培地に比べ、メチルセルロースにポリエチレングリコールを併用した培地では、PT産生量はメチルセルロース単独使用の場合とほぼ同等であったが、いずれもF-HA産生量の著しい増加が認められた。また、ポリエチレングリコール一定濃度存在下で、メチルセルロース濃度を変えることで、PTとF-HAの産生比率を種々調整できることも明らかとなった。【0051】実施例6実施例4の(1)で用いた前培養培地、当該前培養培地にポリエチレングリコール70000を2g/L添加した培地、並びに当該前培養培地にポリエチレングリコール70000を2g/L及びメチルセルロース1500(ナカライテスク社製)を0.2g/L添加した培地を使用して、実施例4の(1)と同様に35℃で24時間東浜株の前培養を行った。24時間後の菌濃度、PT産生量、及びF-HA産生量を測定した。【0052】(結果)この結果を表3に示す。【0053】【表3】【0054】培地1にポリエチレングリコールを添加することでPT及びF-HAの産生量が共に増加したが、ポリエチレングリコールとメチルセルロースを併用すると、更にF-HAの産生量が増大した。【0055】実施例7実施例1で用いた培地1にポリエチレングリコールとメチルセルロースを添加した培地を使用して百日咳I相菌の工業的規模の培養を行った。【0056】(1) 前培養1固体ボルデー・ジャング培地を含む試験管13本に、凍結乾燥した百日咳I相菌の東浜株のアンプル(ダイズトリブチカーゼ培地1mL中に支持されている)3本分を接種した。これらの試験管を湿潤雰囲気下、36℃の恒温槽中に48時間保持した。【0057】(2) 前培養2各試験管に生理食塩水6mLを加え、純度をグラム染色試験法によって検査した後、回収された菌懸濁液を混合した。この混合液の約15mLずつを、実施例4で使用したのと同じ前培養培地500mLを入れた容量2Lの坂口フラスコ5個に接種した。次いでこれらのフラスコを振盪攪拌条件下で36℃で24時間培養した。グラム染色試験法によって菌の純度を検査した後に、これらのフラスコの菌懸濁液を合せ、菌濃度を650nmにおける光学密度を測定することによって求めた。この結果、光学密度は1.80(OD650)であり、これは約4.5×1010個/mlの菌濃度に相当するものであった。【0058】(3) 工業的規模の培養培地1、培地1にポリエチレングリコール70000を添加した培地、及び培地1にポリエチレングリコール70000及びメチルセルロース25(ナカライテスク社製)を添加した培地を用いた。ポリエチレングリコール及びメチルセルロースは、各々の最終濃度が2g/L及び0.2g/Lとなるように65Lの培地1に添加し、高圧蒸気にて滅菌後、これらの培地に前工程で得た菌懸濁液を、1×109個/mL程度の菌濃度となるように接種した。培養は攪拌及び通気条件下、35℃で35時間行った。培養期間を通じ、バイオマス(菌体)の生成量及び培養上清中の抗原物質の量を経時的に測定した。なお、この際、培養液は菌体を除去するため連続的に遠心分離し、上清を濾過により清澄化して実施した。【0059】(結果)この結果を図4〜6に示す。図4〜6から明らかなように、百日咳I相菌の工業的規模の培養においても、培地にポリエチレングリコールを添加することにより、PT及びF-HAの産生量が共に増大した。また、更にメチルセルロースを添加することで、F-HAの産生量が著しく増加した。【0060】【発明の効果】本発明によれば、ボルデテラ属細菌を効率良く培養し、PTやF-HAの生産量を増大させることができる。【図面の簡単な説明】【図1】培地へのポリエチレングリコールの添加の有無による、PT及びF-HAの産生に与える効果を示す図である。【図2】培地に対しメチルセルロースのみを添加した場合と、ポリエチレングリコールとメチルセルロースを添加した場合のPT及びF-HAの産生に与える効果を示す図である。【図3】培地に対しβ-2,6-ジ-O-メチルシクロデキストリンのみを添加した場合と、ポリエチレングリコールとβ-2,6-ジ-O-メチルシクロデキストリンを添加した場合のPT及びF-HAの産生に与える効果を示す図である。【図4】 (1)培地1、(2)培地1にポリエチレングリコールを添加した培地、(3)培地1にポリエチレングリコールとメチルセルロースを添加した培地におけるバイオマスの生成量の時間ごとの増加を示す図である。【図5】 (1)培地1、(2)培地1にポリエチレングリコールを添加した培地、(3)培地1にポリエチレングリコールとメチルセルロースを添加した培地におけるPTの産生量の時間ごとの増加を示す図である。【図6】 (1)培地1、(2)培地1にポリエチレングリコールを添加した培地、(3)培地1にポリエチレングリコールとメチルセルロースを添加した培地におけるF-HAの産生量の時間ごとの増加を示す図である。 ポリエチレングリコール又はその低級アルキルエーテル化誘導体を含有することを特徴とするボルデテラ属細菌用培地組成物。 ポリエチレングリコール又はその低級アルキルエーテル化誘導体の平均分子量が、2000〜4000000の範囲である請求項1記載の培地組成物。 ポリエチレングリコール又はその低級アルキルエーテル化誘導体の含有量が、0.001〜40g/Lである請求項1又は2記載の培地組成物。 更に、D-グルコース重合体のエーテル化誘導体を含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の培地組成物。 D-グルコース重合体のエーテル化誘導体が、メチルセルロースである請求項4記載の培地組成物。 D-グルコース重合体のエーテル化誘導体の含有量が、0.001〜2g/Lである請求項4又は5記載の培地組成物 更に、シクロデキストリン又はその誘導体を含有するものである請求項1〜6のいずれかに記載の培地組成物。 シクロデキストリン又はその誘導体が、メチルシクロデキストリンである請求項7記載の培地組成物。 シクロデキストリン又はその誘導体の含有量が、0.001〜5g/Lである請求項7又は8記載の培地組成物 ボルデテラ属細菌を、ポリエチレングリコール又はその低級アルキルエーテル化誘導体を含有する培地組成物で培養することを特徴とするボルデテラ属細菌の培養方法。 培地組成物が、更にD-グルコース重合体のエーテル化誘導体を含有するものである請求項10記載の培養方法。 培地組成物が、更にシクロデキストリン又はその誘導体を含有するものである請求項10又は11記載の培養方法


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