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タイトル:特許公報(B2)_ベンジルアルコールの精製方法
出願番号:1998296767
年次:2008
IPC分類:C07C 33/22,C07C 29/80,C07C 29/88


特許情報キャッシュ

水井 規雅 堀 孝史 渡辺 真人 JP 4081886 特許公報(B2) 20080222 1998296767 19981019 ベンジルアルコールの精製方法 東ソー株式会社 000003300 水井 規雅 堀 孝史 渡辺 真人 JP 1997296953 19971029 20080430 C07C 33/22 20060101AFI20080410BHJP C07C 29/80 20060101ALI20080410BHJP C07C 29/88 20060101ALI20080410BHJP JPC07C33/22C07C29/80C07C29/88 C07C 33/22 C07C 29/80 C07C 29/88 CAplus(STN) REGISTRY(STN) 特公昭45−038324(JP,B1) 7 1999193256 19990721 17 20050825 太田 千香子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ベンジルアルコールの精製方法に関するものである。更に詳しくは、フェノール誘導体、芳香族基を有する酢酸エステル及びカルボン酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上の不純物を含む粗ベンジルアルコールから該不純物を経済的に除去するベンジルアルコールの精製方法に関するものである。【0002】ベンジルアルコールは、溶解性に優れた溶剤であり、塗料、樹脂の剥離剤、光沢付与剤、香料の揮発保留剤、写真の発色現像助剤等の用途のほかに、無毒性のため医薬用添加物、農薬や医薬等の中間体としても極めて重要な化合物である。【0003】【従来の技術】ベンジルアルコールの主な製造方法としては、次の方法が知られている。【0004】▲1▼ベンジルクロライドの加水分解法。【0005】▲2▼トルエンの直接酸化法。【0006】▲3▼トルエンの酸化アセトキシル化法。【0007】▲4▼ベンズアルデヒドの水素添加法。【0008】製法によって含まれる不純物の種類や濃度に多少の違いはあるがそれぞれ高度な精製技術が要求される。中でも▲2▼〜▲4▼の方法で得られるベンジルアルコールは、不純物として、フェノールやクレゾール等のフェノール誘導体、ベンジルアセテートやクレシルアセテートなどの芳香族基を有する酢酸エステルを含み、これらの不純物が、特異な強い臭気や変色し易いという性質を有すことから、これらを特に高度に分離除去することが望まれている。【0009】しかしながら、これらの不純物は、表1に示すようにベンジルアルコールと沸点が近接しているため、蒸留分離が困難である。【0010】【表1】【0011】ベンジルアルコール中のクレゾール類の除去方法としては、クレゾール類を含む蒸気状のベンジルアルコールとアルカリ金属ベンジラートの溶液を向流接触させクレゾール類をアルカリ金属塩として分離する方法が特公昭45―38324号公報に記載されている。この方法は、クレゾール類のみを除去する方法としては有効な方法である。【0012】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特公昭45−38324号公報に記載の方法では、除去すべきクレゾール類に対し過剰のアルカリ金属ベンジラートを使用しなければならない。そして特公昭45−38324号公報には、クレゾール類に対して過剰に使用するアルカリ金属ベンジラートと反応生成したアルカリ金属クレジラートとを分離する方法について何ら開示されていない。分離の方法如何によっては余剰の未反応アルカリ金属ベンジラートとして多量のベンジルアルコールをロスすることになり、その分離方法の具体化はプロセスの経済性すなわち実用性を決める上で重要な要因である。また、特公昭45−38324号公報に記載の方法をベンジルアセテートやクレシルアセテート等の芳香族基を有する酢酸エステルとクレゾール類とを含むベンジルアルコールの精製に用いる場合、クレゾール類はある程度反応し除去されるがベンジルアセテートはほとんど除去されないという問題がある。【0013】本発明は、前記既存技術の欠点を補うためになされたものであり、その目的は、フェノール誘導体、芳香族基を有する酢酸エステル及びカルボン酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上の不純物を含む粗ベンジルアルコールから高純度のベンジルアルコールを製造するベンジルアルコールの経済的精製方法を提供することである。【0014】【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、経済的にベンジルアルコールを精製する方法を見い出し本発明を完成するに至った。【0015】すなわち本発明は、(1) フェノール誘導体、芳香族基を有する酢酸エステル及びカルボン酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上の不純物を含む粗ベンジルアルコールと、アルカリ金属の水酸化物を蒸留器1に供給し、該蒸留器1で加熱蒸留処理することによって、ベンジルアルコールを主成分とする留出物と、反応生成するアルカリ金属塩を主成分とする蒸留残渣物とに分離することを特徴とするベンジルアルコールの精製方法、(2) 不純物として芳香族基を有する酢酸エステルを含む粗ベンジルアルコールとアルカリ金属のアルコキシドと、該粗ベンジルアルコール中に水が含まれない場合には更に水を蒸留器1に供給し、該蒸留器1で加熱蒸留処理することによって、ベンジルアルコールを主成分とする留出物と、反応生成するアルカリ金属塩を主成分とする蒸留残渣物とに分離することを特徴とするベンジルアルコールの精製方法、(3) (1)又は(2)に記載の精製方法において、蒸留器1からの蒸留残渣物にアルカリ金属水酸化物の水溶液又は水を添加混合し、静定して有機相と水相に分離し、有機相の一部又は全部を蒸留器1へ循環させることを特徴とするベンジルアルコールの精製方法、(4) (1)乃至(3)のいずれかに記載の精製方法において、蒸留器1からの留出物と、アルカリ金属の水酸化物及びアルカリ金属のアルコキシドからなる群より選ばれる1種又は2種以上のアルカリ金属化合物と、アルカリ金属化合物としてアルカリ金属のアルコキシドを使用し、蒸留器1からの留出物中に芳香族基を有する酢酸エステルが含まれ且つ水は含まれない場合には更に水を、もう一つの蒸留器2に供給し、該蒸留器2で加熱蒸留処理することによって、ベンジルアルコールを主成分とする留出物と、反応生成するアルカリ金属塩を主成分とする蒸留残渣物とに分離することを特徴とするベンジルアルコールの精製方法、(5) (4)に記載の精製方法において、蒸留器2からの蒸留残渣物の一部又は全部を蒸留器1に循環させることを特徴とするベンジルアルコールの精製方法、(6) フェノール誘導体、芳香族基を有する酢酸エステル及びカルボン酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上の不純物を含む粗ベンジルアルコールを蒸留器1に供給し、該蒸留器1で加熱蒸留処理することによって、ベンジルアルコールを主成分とする留出物を得、蒸留器1からの留出物と、アルカリ金属の水酸化物及びアルカリ金属のアルコキシドからなる群より選ばれる1種又は2種以上のアルカリ金属化合物と、アルカリ金属化合物としてアルカリ金属のアルコキシドを使用し、蒸留器1からの留出物中に芳香族基を有する酢酸エステルが含まれ且つ水は含まれない場合には更に水を、もう一つの蒸留器2に供給し、該蒸留器2で加熱蒸留処理することによって、ベンジルアルコールを主成分とする留出物と、反応生成するアルカリ金属塩を主成分とする蒸留残渣物とに分離し、該蒸留残渣物の一部又は全部を蒸留器1に循環させることを特徴とするベンジルアルコールの精製方法、並びに(7) (6)に記載の精製方法において、蒸留器1からの蒸留残渣物にアルカリ金属水酸化物の水溶液又は水を添加混合し、静定して有機相と水相に分離し、有機相の一部又は全部を蒸留器1へ循環させることを特徴とするベンジルアルコールの精製方法である。【0016】本発明において粗ベンジルアルコールとは、フェノール誘導体、芳香族基を有する酢酸エステル及びカルボン酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上の不純物を含むものであればよく、その製造方法は問わないが、前記製法▲2▼〜▲4▼の方法、とりわけ▲3▼のトルエンの酸化アセトキシル化法において製造された粗ベンジルアルコールを好適に用いることができる。通常、これらの製法により得られるベンジルアルコールは、製法の違いにより成分や量に多少の違いはあるが不純物としてフェノール誘導体、芳香族基を有する酢酸エステル、カルボン酸等を含む。【0017】本発明でいう不純物としては、具体的には、フェノール、o―クレゾール、m―クレゾール、p―クレゾール、o―ヒドロキシメチルフェノール、m―ヒドロキシメチルフェノール、p―ヒドロキシメチルフェノール、o―サリチルアルデヒド、m―サリチルアルデヒド、p―サリチルアルデヒド等の炭素数6〜8のフェノール誘導体;フェニルアセテート、ベンジルアセテート、o―クレシルアセテート、m―クレシルアセテート、p―クレシルアセテート等の炭素数8〜14の芳香族基を有する酢酸エステル類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、o―サリチル酸、m―サリチル酸、p―サリチル酸等の炭素数1〜8のカルボン酸等が例示される。本発明において、これら不純物が粗ベンジルアルコール中に1種類又は2種以上存在していても何ら問題なく処理することができる。これら不純物の総量は、粗ベンジルアルコール中、全重量比で0.01〜10%存在してもよい。【0018】本発明で使用されるアルカリ金属化合物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等の水酸化物類、又はナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、ナトリウムベンジルオキシド、カリウムメトキシド等のアルカリ金属のアルコキシド類である。ただし、粗ベンジルアルコール中に不純物として芳香族基を有する酢酸エステルが含まれ且つ水が含まれないときに該アルコキシド類を使用する場合には水を供給し、水の共存下で使用する。この場合、共存させる水の量は、処理時間と関係し、少なすぎると処理の時間がかかり、多すぎると後工程での分離が大変になる。本発明において水の供給量は、含まれる不純物の濃度にもよるが、通常芳香族基を有する酢酸エステルに対してモル比で0.8倍〜2000倍、好ましくは3〜1000倍である。これらのアルカリ金属化合物は1種又は2種以上を併用して用いることができる。本発明においては、入手が容易でベンジルアルコールの精製効率に優れることから、水酸化ナトリウムが好適である。【0019】本発明においてアルカリ金属化合物の使用量は、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて特に限定するものではないが、ベンジルアルコールの精製効率に優れることから、粗ベンジルアルコールに含まれる先に挙げた不純物のモル数の和に対して0.8〜300当量、好ましくは0.9〜200当量の範囲で使用することが好ましい。【0020】本発明においてアルカリ金属化合物は、固体又は溶液のいずれの形態であっても問題なく使用することができる。溶液の場合、溶媒として水;メタノール、1−ブタノール等のアルコール類が好ましく、特に水が好適である。これらの溶媒の使用量は、後の分離等を考慮し、ベンジルアルコールに対して10重量%以内で使用することが好ましい。【0021】本発明において蒸留器における加熱蒸留処理は、アルカリ金属水酸化物と不純物の反応によって生成するアルカリ金属塩、及び余剰のアルカリ金属水酸化物とベンジルアルコールによって生成するアルカリ金属ベンジラート等の蒸留残渣物を、ベンジルアルコールや揮発性の不純物から予め分離除去することを目的とする。この操作により、蒸留したベンジルアルコールの次なる蒸留精製工程でのスケーリングや閉塞トラブルを回避することができる。蒸留残渣物は蒸留器のボトムから排出し、生成塩類の蓄積を防ぐ。原料の粗ベンジルアルコール中の不純物量、アルカリ金属化合物の使用量及び加熱蒸留処理による濃縮率等にもよるが通常ボトム排出混合物はスラリーである。したがって排出ラインの閉塞を防ぐ意味でボトム混合物の一部を循環しながら生成塩類の蓄積分を廃棄することもできる。【0022】本発明において、蒸留器の型式を何ら限定するものではないが、粗ベンジルアルコール等の加熱蒸留処理によって析出する固形物がスケーリングや閉塞を起こしにくい型式のものが望ましい。蒸発率を高めることによってボトムからのベンジルアルコールの排出ロスを少なくするために掻き取り式の薄膜蒸発器を使用することもできる。図3に例示するように、蒸留器のボトムから排出される残渣物を水又はアルカリ金属水酸化物の水溶液と混合し、静定分離処理することにより、ベンジルアルコールの廃棄ロスを少なくすることができる。この場合、蒸留器での蒸留処理をボトム残渣物の流動性がある範囲で行うことができ、最もシンプルな単蒸留装置を採用することができる。この場合の留出物とボトム排出の蒸留残渣物との比率は、重量比で通常60:40〜98:2、好ましくは65:35〜95:5である。【0023】本発明において、蒸留器1に多段の蒸留塔を採用することができる。この場合の供給方法について特に限定するものではないが、塔の上部からアルカリ金属化合物を供給し、塔の下部又はボトムに粗ベンジルアルコールを供給する。アルカリ金属化合物としてアルコキシドを使用するときに、粗ベンジルアルコール中に不純物として芳香族基を有する酢酸エステルが含まれ且つ水は含まれない場合には、水を粗ベンジルアルコールの供給場所と同じか又はそれより下部に供給し、水の共存下で粗ベンジルアルコール中の不純物とアルカリ金属のアルコキシドを向流接触させる。不純物と共存させる水の量は、含まれる不純物量や要求される製品ベンジルアルコールの純度にもよるため特に限定するものではないが、不純物として含まれる芳香族基を有する酢酸エステルに対してモル比で0.8〜2000倍、好ましく3〜1000倍である。アルカリ金属化合物としてアルカリ金属水酸化物を使用する場合は、このような水の共存は必須ではないが、水の共存によって反応性が向上するだけでなく、塔内反応部での析出物によるスケーリングや閉塞トラブルを抑制する上でも効果があり、好ましい方法である。この場合の共存させる水の量は、不純物として芳香族基を有する酢酸エステルが含まれる場合には該酢酸エステルに対して、また該酢酸エステルが含まれない場合にはフェノール誘導体及びカルボン酸の合計量に対してモル比で1〜2000倍、好ましくは3〜1000倍である。【0024】蒸留器のボトム温度は、20〜300℃の範囲で、成分の熱安定性と反応性から好ましくは30〜200℃、更に好ましくは40〜180℃である。圧力は、ボトムの温度と組成に相関されるものであるが、0.01〜760mmHg,好ましくは、20〜300mmHgである。【0025】蒸留器に単段の蒸留装置を採用する場合、アルカリ金属化合物と不純物との反応をより完全に行うために粗ベンジルアルコールとアルカリ金属化合物を予め混合することによってアルカリ金属化合物との反応性不純物の一部又は全部を反応させた後でこれらを蒸留器へ供給することも可能であり、好適な方法である。この場合の反応温度及び反応圧力は、不純物が液で存在する温度、圧力ならば使用可能である。反応温度で代表していえば、通常20〜300℃、反応性と成分の熱安定性を考慮すれば、好ましくは30〜200℃,更に好ましくは40〜180℃である。反応時間としては1分〜1時間の範囲内で十分である。【0026】なお、本発明は、一部又は全部を回分式でも連続式でも実施可能であり、これに限定されるものではない。【0027】【発明の実施の形態】以下、図によって本発明の実施の形様を例示する。【0028】図1は、本発明の基本フローを示すものである。すなわち、粗ベンジルアルコールを導管1より、またアルカリ金属化合物を導管2より蒸留器D1へ供給する。【0029】該アルカリ金属化合物としてアルカリ金属のアルコキシドを使用し、該粗ベンジルアルコール中に不純物として芳香族基を有する酢酸エステルが含まれ且つ水は含まれない場合は、水を導管14から供給する。アルカリ金属化合物としてアルカリ金属水酸化物を使用する場合も該粗ベンジルアルコール中に水が含まれない場合に該導管14から積極的に水を供給することは好ましい方法である。水の供給は図1に示すように混合して供給してもよいし、別々に供給してもよい。蒸留器D1では不純物とアルカリ金属化合物との反応と、この際反応生成するアルカリ金属塩からのベンジルアルコール及び揮発性不純物の蒸留分離を行う。図1には記載していないが、蒸留器D1のボトムは、ボトム混合物がスラリーを形成する場合には撹拌機を設置して撹拌するか、又はポンプ循環することが好ましい。蒸留器D1のボトムの蒸留残渣物は底部の導管3から排出する。導管3の排出ラインの閉塞を防ぐため、図1に点線で示すように循環ラインを設けることもできる。蒸留器D1に単段の蒸留装置を使用する場合、粗ベンジルアルコールとアルカリ金属水酸化物を予め混合して蒸留器D1に供給する方法は、不純物の一部又は全部が反応して供給されるため、ベンジルアルコールと共に未反応のまま留出する不純物量が少なくなり好ましい方法である。【0030】また、蒸留器D1に多段の蒸留塔を採用するときには、図2に示すように蒸留器D1の上部導管2からアルカリ金属化合物を供給し、蒸留器D1の下部導管1又はボトムに粗ベンジルアルコールを供給し、更に図1で説明したように水の供給が必要な場合や、好ましい形態として積極的に水を供給する場合には、該粗ベンジルアルコールの供給場所と同じか又はそれより下部の導管14から水を供給して、水の共存下で粗ベンジルアルコール中の不純物とアルカリ金属化合物を向流接触させる。こうすることによって塔内反応部での析出物によるスケーリングや閉塞なしに効率的に不純物を除去できる。該蒸留塔の段数としては、特に限定するものではないが、下部の粗ベンジルアルコール供給段から上部のアルカリ金属化合物の供給段までの理論段数として通常2〜30段、好ましくは2〜10段であるが、アルカリ金属化合物の供給段より上部にアルカリ金属化合物が飛沫同伴によって留出しないように数段の段数を設け留出物の一部を還流するか、デミスター等の飛沫同伴を抑える設備を設けるのが好ましい。【0031】蒸留器D1の頂部から取り出したベンジルアルコールを主成分とする留出物は、導管4を通じ、必要ならばベンジルアルコールの更なる蒸留精製工程へ送られる。例えば、図1及び図2に点線で示すように水等の低沸物を低沸物除去塔Lで導管11から除去し、更に製品塔Pで導管12から高沸物を分離して導管13から製品ベンジルアルコールを取り出す。【0032】図3と図4は、それぞれ図1及び図2の各蒸留器D1の蒸留残渣物からベンジルアルコールを回収する工程を考慮したフローを示すものである。すなわち、蒸留器D1のボトムの導管3から排出される蒸留残渣物と、導管5から供給される水又はアルカリ金属水酸化物の水溶液を、混合・静定装置Eに送って混合し、静定して有機相と水相に相分離し(以下、この操作を抽出操作と呼ぶ)、水相は導管6より系外へ取り出し、有機相は導管7を通って蒸留器D1に循環させる。この際、有機相を、図3に示すように導管1から供給される粗ベンジルアルコール及び導管2から供給されるアルカリ金属化合物と混合して蒸留器D1へ循環させてもよいし、直接蒸留器D1に循環させてもよい。水の供給が必要な場合や積極的に水を供給する場合には、水を導管14から供給することができるが、導管7から循環される有機相中に水が溶解している場合は、この導管14から水を供給する工程を省略することもできる。導管3から排出される蒸留残渣物中の余剰のアルカリ金属とベンジルアルコールとの反応物、すなわちアルカリ金属ベンジラートは、導管5から供給される水と混合することによって分解され、ベンジルアルコールとアルカリ金属水酸化物となり、そのときの構成成分の濃度や温度等の条件によって決まる分配係数に基づき、それぞれ有機相と水相に分配・分離される。アルカリ金属化合物と不純物の反応によって生成するアルカリ金属塩は、水相により多く分配され水相として導管6から系外へ取り出される。水の代わりに添加するアルカリ金属水酸化物としては、前述のアルカリ金属化合物の説明で述べたものが使用でき、水酸化ナトリウムが特に好ましい。不純物を除去するために使用するアルカリ金属化合物に、アルカリ金属水酸化物を使用する場合は、その使用量の調整によって、この抽出操作でのアルカリ金属水酸化物の添加を省略するか添加量を最小化できる。この抽出操作では、静定後の水相中のアルカリ金属濃度が重要である。水相中の好ましいアルカリ金属濃度としては、構成成分の種類と濃度及び使用するアルカリ金属の種類等により異なり一概に言えないが、通常0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%、特に好ましくは0.8〜5重量%である。この抽出操作の組み入れによって、系外へのベンジルアルコールのロス量はベンジルアルコールの水相への溶解量となり、図1に示す方法に比べてベンジルアルコールの系外への排出ロス量を大幅に抑制することができ、プロセスの経済性が向上する。特に図4に示す蒸留器D1に多段の蒸留塔を使用する方法は、プロセス的にシンプルで不純物の除去効果が高く、かつ系外へのベンジルアルコールのロスも少ない経済的に優れた方法である。なお、蒸留器D1の頂部から取り出したベンジルアルコールを主成分とする留出物は、必要に応じ、図1に示すようなベンジルアルコールの更なる蒸留精製工程へ送られる。【0033】図5は、蒸留器D1と蒸留器D2の2基の単蒸留装置を採用することによって製品ベンジルアルコール中の不純物濃度を最小化する方法を示すものである。すなわち、蒸留器D1の塔頂から留出されるベンジルアルコールを主成分とする留出物中の残存未反応不純物を、もう一度アルカリ金属化合物と反応させ、ベンジルアルコール中の不純物濃度を最小にする方法である。導管8より供給されるアルカリ金属化合物と導管4より供給される蒸留器D1の留出物を別々に直接もう一つの単蒸留装置である蒸留器D2へ供給するか、又は図5に示すように導管8より供給のアルカリ金属化合物を蒸留器D1の留出物と予め混合する形で該蒸留器D2へ供給する。導管2から供給されるアルカリ金属化合物を省略して必要量の全部を導管8から供給してもよいし、導管2と導管8の両方から適当な比率で供給することもできる。アルカリ金属化合物としてアルカリ金属のアルコキシドを使用し、導管4からの蒸留器D1の留出物に不純物として芳香族基を有する酢酸エステルが含まれ且つ水は含まれない場合や、積極的に水を供給する場合には、導管15から水を供給する。蒸留器D2のボトムから排出される蒸留残渣物は、導管9を通って直接蒸留器D1へ循環させるか、又は図5に示すように、導管7から循環される有機相や導管1から供給される粗ベンジルアルコール、導管2から供給されるアルカリ金属化合物等と混合して蒸留器D1へ循環させる。一方、蒸留器D2の頂部の導管10から取り出したベンジルアルコールを主成分とする留出物は、必要に応じ、図1に示すようなベンジルアルコールの更なる蒸留精製工程へ送られる。この方法によれば、構造的にシンプルな単蒸留装置2基を使って、図4の場合と同様に、高純度のベンジルアルコールを経済的に製造することが可能である。【0034】【発明の効果】本発明は、不純物としてフェノール誘導体、芳香族基を有する酢酸エステル及びカルボン酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含む粗ベンジルアルコールを、アルカリ金属化合物と共に加熱蒸留処理することによって、高純度のベンジルアルコールの製造を可能にするものである。更に、蒸留残渣中のアルカリ金属化合物及びアルカリ金属ベンジラートを回収利用することができ廃棄物量削減から環境面でも好ましく、経済的にもメリットがあり工業的に価値のある精製方法を提供することができる。【0035】【実施例】以下に本発明を更に詳しく説明するため実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、断りのない限り%は重量%を示す。【0036】実施例1マグネチックスターラー、窒素導入用3方コック、温度計、留出冷却器を備えた200ml丸底フラスコに、ベンジルアルコール98.6%、ベンジルアセテート1.0%、クレゾール0.3%(オルソ:メタ:パラ比 17:53:30)、酢酸0.1%からなる粗ベンジルアルコール液161.70gを仕込み、80℃に昇温した。40%NaOH水溶液3.59g(35.9mmol、不純物の総モル数の2.0倍当量)を添加した。80℃で5分間反応させた後、20mmHgの減圧下で留出がなくなるまで単蒸留した。30℃から104℃の留出分(水とベンジルアルコールの共沸留分)2.93g、104℃の留分155.75gを得、蒸留残渣は6.61gであった。(全留出量と残渣量の重量比=96.0:4.0)。留出液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、ベンジルアセテート70ppm,クレゾール(オルソ、メタ、パラの合計値、以下同じ)105ppm、酢酸0ppmであった。【0037】ガスクロマトグラフィー条件:機種 :島津製作所 GC−14Aディテクター:水素炎イオン化ディテクターカラム :クロムパック社製FFAP−CB 0.32mmID×25m膜厚0.3μmキャリアガス:He 0.93ml/分インジェクション温度:260゜Cディテクター温度 :260゜Cカラム温度 :65℃(3分間)→昇温15℃/分→230℃(15分間)スプリット比:1/60サンプル注入量:1μl内部標準物質:1,4−ジオキサン本実施例では、ボトム混合物の流動性がなくなり、留出物が出なくなるまで濃縮した。蒸留残渣中のベンジルアルコールはナトリウムベンジラート分も含めてベンジルアルコール換算で4.21gであり、原料の粗ベンジルアルコール中の全ベンジルアルコール(ベンジルアセテート反応分を含む)に対して2.62%であった。この値は、蒸留残渣物としてボトムから排出されるベンジルアルコールの最小排出ロス量を示す。【0038】比較例1撹拌機、窒素導入用3方コック、温度計、留出冷却器を備えた1000ml丸底フラスコに、ベンジルアルコール1043.43gと28%ナトリウムメチラートのメタノール溶液39.93gを仕込み、減圧下で回分単蒸留を開始した。【0039】150mmHg、156℃まで減圧、昇温して、メタノールのほぼ全量とベンジルアルコールの一部を留出し、ナトリウムベンジラートのベンジルアルコール溶液を調製した。【0040】このナトリウムベンジラートのベンジルアルコール溶液を使用して、ベンジルアセテート1.0%、クレゾール0.67%(オルソ:メタ:パラ比 17:53:30)、酢酸0.04%、水0.0149%。ナトリウムベンジラート26.93g(0.201mol)を含むベンジルアルコール液1005.73gを調製した。水分は(株)京都電子工業製カ−ルフィッシャ水分計MKA−210を用いて測定した。この溶液を、撹拌機、窒素導入用3方コック、温度計、留出冷却器を備えた1000ml丸底フラスコに仕込み、100℃に昇温し、55mmHgの減圧下で回分蒸留を開始した。留出率(全仕込量に対する留出量の比)90.1%まで単蒸留した。蒸留時間は約3時間であった。全留出量906.47gを得、蒸留残渣は99.26gであった。(全留出量と残渣量の重量比=90.1:9.9)。留出液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、ベンジルアセテート7800ppm、クレゾール189ppm、酢酸0ppmであった。【0041】実施例2〜実施例7表2に示したアルカリ金属化合物及びその当量数を用いる以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表2に示す。【0042】【表2】【0043】実施例8撹拌機、窒素導入用3方コック、温度計、留出冷却器を備えた1000ml丸底フラスコに、ベンジルアルコール98.29%、ベンジルアセテート1.0%、クレゾール0.67%(オルソ:メタ:パラ比 17:53:30)、酢酸0.04%からなる粗ベンジルアルコール液1000.88gを仕込み、100℃に昇温した。40.25%NaOH水溶液19.95g(0.201mol、不純物の総モル数の1.49倍当量)を添加すると同時に、55mmHgの減圧下で回分単蒸留を開始した。留出率(全仕込量に対する留出量の比)90.1%まで単蒸留した。蒸留時間は約3時間であった。全留出量919.77gを得、蒸留残渣は101.06gであった。(全留出量と残渣量の重量比=90.1:9.9)。留出液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、ベンジルアセテート1020ppm,クレゾール859ppm、酢酸0ppmであった。【0044】実施例9撹拌機、窒素導入用3方コック、温度計、留出冷却器を備えた2000ml丸底フラスコに、ベンジルアルコール98.29%、ベンジルアセテート1.0%、クレゾール0.67%(オルソ:メタ:パラ比 17:53:30)、酢酸0.04%からなる粗ベンジルアルコール液2001.76gを仕込み、100℃に昇温した。40.25%NaOH水溶液39.90g(0.401mol、不純物の総モル数の1.49倍当量)を添加した。100℃で5分間反応させた後、55mmHgの減圧下で回分単蒸留した。全留出量1843.38gを得、蒸留残渣は198.28gであった。(全留出量と残渣量の重量比=90.3:9.7)。留出液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、ベンジルアセテート127ppm,クレゾール338ppm、酢酸0ppmであった。【0045】蒸発残渣中のベンジルアルコールはナトリウムベンジラート分も含めてベンジルアルコール換算で163.36gであり、原料の粗ベンジルアルコール中の全ベンジルアルコール(ベンジルアセテート反応分を含む)に対して8.2%であった。【0046】[抽出操作]上記の単蒸留で得られた蒸留残渣195.74gを500mlのミキサーセトラー(撹拌機を備え、下部抜き出しのジャケット付きセパラブルフラスコ)に仕込み、水319.96gを添加して、50℃で5分間撹拌後、静定し有機相と水相に分離した。得られた両相の重量と組成は表3のとおりであった。組成分析は、両相とも塩酸でpH1以下に中和後ガスクロマトグラフィーで分析し、クレゾールNa塩はクレゾール量から、酢酸ナトリウムは酢酸量から算定し、水濃度は物質収支から求めた(以下同様)。【0047】【表3】【0048】実施例10撹拌機、窒素導入用3方コック、温度計、留出冷却器を備えた1000ml丸底フラスコに、実施例9の抽出操作で得られた有機相76.25gと粗ベンジルアルコール792.73g(ベンジルアルコール98.36%、ベンジルアセテート1%、クレゾール0.6%(オルソ、メタ、パラ比=17:53:30)、酢酸0.04%を仕込み、100℃に昇温した。40.25%NaOH水溶液15.19g(0.153mol、不純物の総モル数の1.5倍当量)を添加した。100℃で5分間反応させた後、55mmHgの減圧下で回分単蒸留した。全留出量795.75gを得、蒸留残渣は88.42gであった。(全留出量と残渣量の重量比=90:10)。留出液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、ベンジルアセテート113ppm,クレゾール425ppm、酢酸0ppmであった。【0049】[抽出操作]上記単蒸留で得られた蒸留残渣86.0gを実施例9で述べた500mlのミキサーセトラーに仕込み、水111.0gを添加して、50℃で5分間撹拌後、静定し有機相と水相に分離した。得られた両相の重量と組成は表4のとおりであった。【0050】【表4】【0051】本実施例は、図2に示したプロセスの応用例で、アルカリ金属化合物として40.25%のNaOH水溶液を使用し、単蒸留後の蒸留残渣中の不純物のナトリウム塩を水で抽出分離し、有機相をリサイクルした例である。【0052】有機相をリサイクルすることで少し不純物の負荷増となり、同じアルカリ金属化合物の使用量では少しその除去効果が低下するが、原料の粗ベンジルアルコール中の全ベンジルアルコール(ベンジルアセテート反応分を含む)に対する系外に排出の水相中のベンジルアルコール(排出ロス)は0.78%となり、抽出操作をしない場合に比べてベンジルアルコールの排出ロスを大幅に削減できる。【0053】実施例11実施例9の単蒸留で得られた留出液887.34gを仕込み、100℃に昇温した。40.25%NaOH水溶液19.31gを添加して100℃で5分間反応させた後、100mmHgの減圧下で回分単蒸留した。94℃から144℃の留出分(水とベンジルアルコールの共沸留分)74.08gと144℃から149℃の留出分663.24gを得、蒸留残渣は169.33gであった。(全留出量と残渣量の重量比=81.3:18.7)。留出液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、ベンジルアセテート0ppm,クレゾール7ppm、酢酸0ppmであった。【0054】本実施例は、実施例9の1回目の単蒸留処理に対し、2回目の単蒸留処理を行うことにより不純物量を大幅に削減できることを示す。【0055】実施例12[1回目単蒸留]実施例10と同じ単蒸留装置に、実施例9の抽出操作で得られた有機相68.68g、アルカリ金属化合物の代わりに実施例11の単蒸留の蒸留残渣133.62g及び粗ベンジルアルコール797.76g(ベンジルアルコール98.36%、ベンジルアセテート1%、クレゾール0.6%(オルソ、メタ、パラ比=17:53:30)、酢酸0.04%)を仕込み、100℃に昇温し5分間保持して反応させた。次いで、55mmHgの減圧下で回分単蒸留した。76℃から110℃の留出分(水とベンジルアルコールの共沸留分)10.78gと110℃から130℃の留出分904.48gを得、蒸留残渣は87.86gであった(全留出量と残渣量の重量比=91.2:8.8)。留出液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、ベンジルアセテート119ppm,クレゾール428ppm、酢酸0ppmであった。【0056】蒸発残渣中のベンジルアルコールはナトリウムベンジラート分も含めてベンジルアルコール換算で73.26gであり、原料の粗ベンジルアルコール中の全ベンジルアルコール(ベンジルアセテート100%反応分含む)に対して9.3%であった。【0057】[抽出操作]上記1回目の単蒸留で得られた蒸留残渣85.22gを実施例9で述べた500mlのミキサーセトラーに仕込み、水129.46gを添加して、50℃で5分間撹拌後、静定し有機相と水相に分離した。得られた両相の重量と組成は表5のとおりであった。【0058】【表5】【0059】原料の粗ベンジルアルコール中の全ベンジルアルコール(ベンジルアセテート100%反応分含む)に対する系外に排出の水相中のベンジルアルコール(排出ロス)は0.80%であつた。【0060】[2回目単蒸留]上記1回目と同じ単蒸留装置に1回目単蒸留で得られた留出液907.43gを仕込み、100℃に昇温した。40.25%NaOH水溶液15.40gを添加して100℃で5分間反応させた後、100mmHgの減圧下で回分単蒸留した。94℃から144℃の留出分(水とベンジルアルコールの共沸留分)59.18gと144℃から149℃の留出分724.16gを得、蒸留残渣は139.49gであった(全留出量と残渣量の重量比=81.3:18.7)。留出液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、ベンジルアセテート0ppm,クレゾール19ppm、酢酸0ppmであった。【0061】本実施例は、図3に示したプロセスで、アルカリ金属化合物として40.25%のNaOH水溶液を2段目に供給し、一段目の反応のアルカリ金属源に2段目の単蒸留の蒸留残渣を使用すると共に、1段目の蒸留残渣中の不純物のナトリウム塩を水で抽出除去し、有機相をリサイクルするという抽出処理を組み合わせることによって、少ないNaOH使用量で高い不純物除去効果を得、同時にベンジルアルコールの排出ロスを低く抑えることに成功した例である。【0062】実施例13[1回目単蒸留]実施例1と同様な設備の300ml丸底フラスコに、ベンジルアルコール98.3%、ベンジルアセテート1.0%、クレゾール0.6%(オルソ:メタ:パラ比 17:53:30)、酢酸0.1%からなる粗ベンジルアルコール液223.74gを仕込み、80℃に昇温した。40.0%NaOH水溶液3.13g(31.3mmol、不純物の総モル数の1.0倍当量)を添加した。80℃で5分間反応させた後、20mmHgの減圧下で回分単蒸留した。留出液204.18gを得、残渣は22.69gであった。(全留出量と残渣量の重量比=90.0:10.0)。留出液をガスクロマトグラフィーで分析した結果ベンジルアセテート312ppm、クレゾール1505ppm、酢酸は0ppmであった。【0063】[2回目単蒸留]上記と同じ装置に1段目の単蒸留の留出液200.0g(ベンジルアセテート:62mg、クレゾール:301mg、酢酸:0g)を仕込み、80℃に昇温した。40.0%NaOH水溶液3.13g(31.3mmol、不純物の総モル数の9.8倍当量、1回目の単蒸留時と同じ仕込量)を添加した。80℃で5分間反応後、20mmHgの減圧下で回分単蒸留を行った。30℃から104℃の留出分(共沸留分)3.29g、104℃の留出分184.85gを得、残渣は18.28gであった(全留出量と残渣量の重量比=91.0:9.0)。【0064】留出液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、ベンジルアセテート12ppm、クレゾールは39ppm、酢酸0ppmであった。【0065】本実施例は、1回目の単蒸留処理に対し、2回目の単蒸留処理を行うことにより不純物量を大幅に削減できることを示す。【0066】実施例145段の蒸留セクションと、それを挟んで上下2カ所のフィードセクションを持つ塔径32mmの連続式オルダーショウカラムを使用した。スチルは撹拌機と液面コントローラーを有し、マントルヒーターで加熱される。塔頂は凝縮器と還流調節器を有す。運転は、塔頂圧力150mmHgの減圧下で、以下のフィード量で連続蒸留した。下部フィードセクションから粗ベンジルアルコール451.3g/h(ベンジルアセテート0.994%、o−クレゾール0.100%、m−クレゾール0.298%、p−クレゾール0.199%、ベンズアルデヒド0.048%、水0.358%を含む)を供給した。一方、上部フィードセクションからベンジルアセテートもクレゾールも含まないベンジルアルコールと47.62%NaOH水溶液の混合液75.6g/h(NaOH4.05%、水4.52%、ベンズアルデヒド0.045%、ベンジルアルコール91.38%)を供給した。フィードのベンジルアセテートとクレゾールの合計量に対するフィードNaOHのモル比は1.40であった。また、不純物のベンジルアセテート及びクレゾールと共存して加熱処理される水とベンジルアセテートのモル比は3.0であった。塔頂からの還流はしないで全部留出させたときの、全フィード量に対する留出量の比(以下、留出率と呼ぶ)が70%になるように、マントルヒーターによるスチル加熱を調節した。定常状態に到達後の留出量は375.7g/hであり、留出率71.3%であった。得られた留出液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、ベンジルアセテート濃度は340ppmで、クレゾールは0ppmであった。留出液中の水分をカールフィッシャ水分計で測定すると1.45%であった。スチル内液及び缶出液は固形物の析出で白濁を呈していたが、カラム内には固形物の析出やスケーリングの気配は全くなかった。【0067】比較例2(特公昭45−38324号公報に記載の方法の適用例)実施例14と同じ装置を使用し、上下のフィードセクションからの供給量と組成を変える以外は、実施例14と同様に行った。すなわち、下部フィードセクションから粗ベンジルアルコール451.3g/h(ベンジルアセテート1.000%、o−クレゾール0.100%、m−クレゾール0.300%、p−クレゾール0.200%、ベンズアルデヒド0.032%、水0.066%を含む)を供給した。一方、上部フィードセクションから、ベンジルアルコールにNaOHを添加した後蒸留して生成水を除去して得たナトリウムベンジラートのベンジルアルコール溶液451.3g/h(ナトリウムベンジラート13.82%、水0.07%、ベンズアルデヒド0.032%、ベンジルアルコール86.08%)を供給した。フィードのベンジルアセテートとクレゾールの合計量に対するフィードのナトリウムベンジラートのモル比は1.43であった。この例では積極的な水の供給はなく、原料のベンジルアルコール中わずかに含まれる水分が持ち込まれるのみである。参考までにベンジルアセテートに対する水のモル比を求めると0.55であった。また留出率は70.2%であった。得られた留出液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、クレゾールは0ppmであったが、ベンジルアセテート濃度は5550ppmと非常に高かった。【0068】実施例15〜実施例17下部フィードセクションから粗ベンジルアルコールと共に供給の水の量を変えて粗ベンジルアルコール中のベンジルアセテートに対する水のモル比を変えることと、上部フィードセクションからの47.62%NaOH水溶液とベンジルアルコールの混合割合を変えて粗ベンジルアルコール中のベンジルアセテートとクレゾールの合計モル数に対する上部フィードのNaOHモル比を変える以外は実施例14と同様に行った。結果は表6のとおりであった。【0069】【表6】【0070】実施例18粗ベンジルアセテートをメタノリシス反応後低沸成分を蒸留分離して粗ベンジルアルコールを得た。該粗ベンジルアルコール305.43g/h(メタノール0.058%、ベンズアルデヒド0.072%、ベンジルアルコール97.8%、ベンジルアセテート0.074%、o−クレゾール0.084%、m−クレゾール0.253%、p−クレゾール0.168%、その他ナトリウム塩等)と後述の缶出液に水を添加し抽出分離して得られた有機相185.69g/h(ベンジルアルコール81.9%、ベンズアルデヒド0.065%、クレゾール類1.37%、酢酸ナトリウム0.065%、水16.6%)を実施例14に記載の下部フィードセクションから供給した。一方上部フィードセクションから、47.62%NaOH水溶液とベンジルアルコールの混合溶液81.55g/h(NaOH3.49%、水3.83%、ベンジルアルコール92.6%、ベンズアルデヒド0.045%)を供給した。塔頂圧力150mmHgで操作し、塔頂からの還流はしないで全留出した。留出率は79.5%で運転した。【0071】留出ベンジルアルコール中のベンジルアセテートとクレゾール類はいずれも0ppmであった。一方缶出液は、水122.75g/hと撹拌混合し、静定して有機相と水相に分離し、有機相は下部フィードセクションへ循環した。水相中のNaOH濃度は3.42%であった。また、水相中の酢酸ナトリウムとクレゾールNa塩を塩酸で分解後ガスクロマトグラフィー分析したところ、原料の粗ベンジルアルコール中のベンジルアセテートとクレゾール類に見合う量の酢酸とクレゾールが検出された。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の方法を実施する際の具体例を示した工程図である。【図2】本発明の方法を実施する際の具体例を示した工程図である。【図3】本発明の方法を実施する際の具体例を示した工程図である。【図4】本発明の方法を実施する際の具体例を示した工程図である。【図5】本発明の方法を実施する際の具体例を示した工程図である。【符号の説明】1〜14 導管D1、D2 蒸留器E 混合・静定装置L 低沸物除去塔P 製品塔 不純物として芳香族基を有する酢酸エステルを含む粗ベンジルアルコールとアルカリ金属のアルコキシドと、該粗ベンジルアルコール中に水が含まれない場合には更に水を蒸留器1に供給し、該蒸留器1で加熱蒸留処理することによって、ベンジルアルコールを主成分とする留出物と、反応生成するアルカリ金属塩を主成分とする蒸留残渣物とに分離することを特徴とするベンジルアルコールの精製方法。 請求項1に記載の精製方法において、蒸留器1からの蒸留残渣物にアルカリ金属水酸化物の水溶液又は水を添加混合し、静定して有機相と水相に分離し、有機相の一部又は全部を蒸留器1へ循環させることを特徴とするベンジルアルコールの精製方法。 請求項1又は請求項2に記載の精製方法において、蒸留器1からの留出物と、アルカリ金属の水酸化物及びアルカリ金属のアルコキシドからなる群より選ばれる1種又は2種以上のアルカリ金属化合物と、アルカリ金属化合物としてアルカリ金属のアルコキシドを使用し、蒸留器1からの留出物中に芳香族基を有する酢酸エステルが含まれ且つ水は含まれない場合には更に水を、もう一つの蒸留器2に供給し、該蒸留器2で加熱蒸留処理することによって、ベンジルアルコールを主成分とする留出物と、反応生成するアルカリ金属塩を主成分とする蒸留残渣物とに分離することを特徴とするベンジルアルコールの精製方法。 請求項3に記載の精製方法において、蒸留器2からの蒸留残渣物の一部又は全部を蒸留器1に循環させることを特徴とするベンジルアルコールの精製方法。 フェノール誘導体、芳香族基を有する酢酸エステル及びカルボン酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上の不純物を含む粗ベンジルアルコールを蒸留器1に供給し、該蒸留器1で加熱蒸留処理することによって、ベンジルアルコールを主成分とする留出物を得、蒸留器1からの留出物と、アルカリ金属の水酸化物及びアルカリ金属のアルコキシドからなる群より選ばれる1種又は2種以上のアルカリ金属化合物と、アルカリ金属化合物としてアルカリ金属のアルコキシドを使用し、蒸留器1からの留出物中に芳香族基を有する酢酸エステルが含まれ且つ水は含まれない場合には更に水を、もう一つの蒸留器2に供給し、該蒸留器2で加熱蒸留処理することによって、ベンジルアルコールを主成分とする留出物と、反応生成するアルカリ金属塩を主成分とする蒸留残渣物とに分離し、該蒸留残渣物の一部又は全部を蒸留器1に循環させることを特徴とするベンジルアルコールの精製方法。 請求項5に記載の精製方法において、蒸留器1からの蒸留残渣物にアルカリ金属水酸化物の水溶液又は水を添加混合し、静定して有機相と水相に分離し、有機相の一部又は全部を蒸留器1へ循環させることを特徴とするベンジルアルコールの精製方法。 蒸留器1及び/又は蒸留器2が単段の蒸留器であることを特徴とする請求項3乃至請求項6のいずれかに記載のベンジルアルコールの精製方法。


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