生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_アスタキサンチン含有ヘマトコッカスの製造方法
出願番号:1998241639
年次:2008
IPC分類:C12N 1/12,C12M 1/00


特許情報キャッシュ

太郎田 博之 野中 規正 JP 4045663 特許公報(B2) 20071130 1998241639 19980827 アスタキサンチン含有ヘマトコッカスの製造方法 大日本インキ化学工業株式会社 000002886 河野 通洋 100124970 太郎田 博之 野中 規正 20080213 C12N 1/12 20060101AFI20080124BHJP C12M 1/00 20060101ALN20080124BHJP JPC12N1/12C12M1/00 C12N 1/12 BIOSIS/MEDLINE/WPIDS/CAplus(STN) JMEDPlus/JST7580/JSTPlus(JDream2) 日本生物工学会大会講演要旨集,1998年 8月31日,第1998巻,第197頁,演題番号:936 Appl. Microbiol. Biotechnol., vol. 51, pp. 431-438 (1999) 2 2000060532 20000229 13 20050524 石丸 聡 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、食材用色素として、また化粧品、医薬品、健康食品として、更には魚介類や卵黄等の食材の色揚げ等に有用なアスタキサンチンを3%以上含有するヘマトコッカスの工業的な製造方法に関する。【0002】【従来の技術】アスタキサンチンは赤色を呈するカロテノイド色素の一種で、自然界に広く分布している。例えば、マダイやサケ・マス等の魚類、あるいは甲殻類等は、その表皮、筋肉又は外殻等にアスタキサンチンを蓄積し、その為に表皮あるいは肉が美しい赤色もしくは桃色を呈するが、これらの生物は自らアスタキサンチンを生合成することはできない。【0003】この為、アスタキサンチンは天然物由来で、食材用色素として有用であると共に、これら魚介類を養殖する場合には、通常飼料にアスタキサンチンを添加し、着色、いわゆる色揚げが行われている(特開昭54-70995号公報、特開平7-67546号公報)。また鶏卵の色調改善等を目的とした家禽用飼料等にも利用されており(特許2561198号号公報)、更に最近はアスタキサンチンの持つ強力な抗酸化作用が注目され、化粧品や医薬品、健康食品としての用途も検討されている(特開昭63-83017号公報、特開平2-49091号公報)。【0004】これらに用いられるアスタキサンチン源としては、化学合成品の他、アスタキサンチンを含有する、オキアミ・アミエビ類やファフィア酵母類等がある。市場では安全性の面から天然品の方がより好まれており、オキアミから色素を抽出精製する方法や、ファフィア酵母の培養法等が盛んに研究されている(特開平6-200179号公報、特開平8-508885号公報)。【0005】しかしながら、これら生物はアスタキサンチン含有量が低く、抽出や精製等にも問題があり、現在のところ化学合成品が最も多く使用されているが、安全性の観点から、天然物由来のアスタキサンチンを安価に使用したいとの要請は強い。【0006】藻類のヘマトコッカスは、上述の生物に比べてアスタキサンチン含有量が顕著に高い為、天然物由来のアスタキサンチン源として近年特に注目されている。 しかしながら、ヘマトコッカスがアスタキサンチンを生成蓄積することは古くから知られ(T. W. Goodwin, et. al., Biochem. J., 57, p376 (1954))、以来様々な研究が為されて来たにもかかわらず、大量培養技術は未だに確立されていない。その理由は、ヘマトコッカスが比較的弱い藻類であり、培養しにくいことである。【0007】ヘマトコッカス中に多量にアスタキサンチンを生成蓄積させる為には、多量の強い光を照射することが重要であり、藻類を光合成培養する為には、光源として太陽光が最も安価かつ強力で、従って、通常は屋外の太陽光下の池型の培養装置(以下、屋外培養池という)が用いられる。【0008】しかし、屋外培養池でヘマトコッカスを培養する場合は、ヘマトコッカスを補食する動物や寄生する微生物が外部から培養池に混入すること(以下夾雑という)を防ぐことは非常に困難で、従来、屋外培養池での商業生産に成功した藻類は、増殖の速いクロレラ、あるいはアルカリ又は高塩濃度条件下で培養することにより、夾雑を防止できるスピルリナやドナリエラに限られていた。【0009】ヘマトコッカスをコストの安い屋外培養池で培養すると、数日後に繊毛虫、ワムシ等の動物プランクトンや、真菌類が夾雑してヘマトコッカスを補食あるいは寄生する為、ヘマトコッカスの培養は不可能であった。【0010】捕食あるいは寄生生物の夾雑を防止する為に、チューブラー等の様々な閉鎖型培養装置や培養方法が考案されてきた(特公平2-501189号公報、特開平5-68585号公報)。しかしいずれも、装置が複雑で製造コストが高くなること、夾雑を十分に防止できないこと等の問題点があり、研究段階にとどまっている。【0011】【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は、屋外培養池で捕食あるいは寄生生物の影響を軽減せしめた、高いアスタキサンチン含有ヘマトコッカスの工業的な製造方法を提供することにある。【0012】【課題を解決する為の手段】本発明者らは、鋭意研究の結果、屋外培養池でヘマトコッカスを培養する場合、ヘマトコッカスを補食する動物(以下補食動物という)や寄生する微生物(以下寄生微生物という)の夾雑により、培養開始から4〜8日間以降に藻体量が減少し始めること、更に屋外培養池の培養開始時のヘマトコッカス藻体濃度(以下、初発藻濃度という)とアスタキサンチン生成速度の関係を調べ、効率良くアスタキサンチンを生成蓄積させるのに適した初発藻濃度があること、【0013】ヘマトコッカスを閉鎖型培養装置で増殖させ、殺菌後の屋外培養池に接種しヘマトコッカス中にアスタキサンチンを生成、蓄積させることにより、補食動物や寄生微生物の夾雑により藻体が減少する前に、アスタキサンチン含有量の高いヘマトコッカス藻体を製造できることを見いだして、本発明を完成するに至った。【0014】即ち、本発明は(イ)藻類ヘマトコッカスを閉鎖型培養装置で増殖させ、次いで屋外培養池において、ヘマトコッカス中にアスタキサンチンを生成蓄積させ、ヘマトコッカスを補食あるいは寄生する生物が培養池中に夾雑、増殖する前に培養を完了することを特徴とする、2段階培養法によるアスタキサンチン含有ヘマトコッカスの製造方法と、【0015】(ロ)アスタキサンチンを生成蓄積させる屋外培養池の初発ヘマトコッカス濃度を5〜20gDCW/m2とすることを特徴とする、(イ)に記載のアスタキサンチン含有ヘマトコッカスの製造方法と、【0016】(ハ)閉鎖型培養装置が、培養液に人為的に光を照射しない装置であることを特徴とする、(イ)又は(ロ)に記載のアスタキサンチン含有ヘマトコッカスの製造方法と、【0017】(ニ)屋外培養池の培養液中に、ヘマトコッカスの増殖栄養源としての窒素源を実質的に含まないことを特徴とする、(イ)又は(ロ)に記載のアスタキサンチン含有ヘマトコッカスの製造方法とを含むものである。【0018】【発明の実施の形態】本発明で用いられるヘマトコッカスとは、緑藻綱ボルボックス目クラミドモナス科ヘマトコッカス属に属する単細胞藻類であり、特定の藻株に限る必要はなく、大学や研究機関に保存されている藻株、あるいは世界各地の湖沼、河川、水たまり、海辺等で採取し純粋分離した藻株を用いることができる。【0019】前者の例としては、ヘマトコッカス プルビアリス(Haematococcus pluvialis)は、国立環境研究所のNIES144、米国テキサス大学藻類保存施設のUTEX2505、ヘマトコッカス ラキュストリス(H. lacustris)は、American Type Culture CollectionのATCC30402、同30453、東京大学応用微生物研究所のIAM C-392、同C-393、同C-394、同C-339、UTEX 16、同294、ヘマトコッカス カペンシス(H. capensis)は、UTEX LB1023、ヘマトコッカス ドロエバケンシス(H. droebakensis)は、UTEX 55、ヘマトコッカス ジンバブエンシス(H. zimbabwiensis)は、UTEX LB1758、等が挙げられる。【0020】後者としては、例えば、墓石や岩石の窪みに溜まった雨水が赤色を呈している場合、それを採取して、淡水産藻類用培地の平板寒天培地に塗抹することにより、ヘマトコッカスを分離することができる。【0021】ヘマトコッカスは、好適な条件下では2本の等長鞭毛を有する涙滴型の遊走子細胞となり、細胞分裂により増殖する。この遊走子に、例えば窒素欠乏や強い光の照射、高塩濃度等の様々なストレスを与えると、増殖を停止して形態が変化し、鞭毛が無い球形のシスト細胞になることが知られている(M. R. Droop, Arch. Mikrobiol., 21, p267 (1955))。シスト化にともなって、多くの場合、原形質にアスタキサンチンを生成蓄積する。尚、この細胞内構造をヘマトクロームと呼ぶこともある。【0022】ヘマトコッカスを屋外培養池で培養した場合には、参考例に示すように、必ず補食動物や寄生微生物の夾雑が発生する。培養池を次亜塩素酸塩等で殺菌した後培養を開始した場合には8日目以降に、あるいは培養後に池を殺菌しなかった場合は4日目以降に、顕微鏡下で補食動物あるいは寄生微生物が認められ、藻濃度は減少する。【0023】補食動物としては繊毛虫、ワムシの他、アメーバ、ユスリカの幼虫(アカムシ)等が挙げられ、ヘマトコッカスの遊走子及びシスト細胞の両方を補食する。一方、寄生微生物としては真菌のツボカビ類に属するキトリッド等が挙げられ、ヘマトコッカスのシスト細胞に特異的に寄生し死滅させる。【0024】このような捕食又は寄生生物の夾雑を防止する目的で、本発明における2段階培養では、ヘマトコッカスをまず捕食又は寄生生物の夾雑のない閉鎖型(密閉型)培養装置で増殖させる。ここで用いる装置は、補食動物あるいは寄生微生物の夾雑を防止できるものであれば良く、例えばタンク型、チューブラー型、又はエアドーム型の培養装置が挙げられるが、これらに限定されるものではない。【0025】高圧蒸気滅菌できるタンク型培養装置は、ヘマトコッカスを純粋培養することができるので、この目的に好適である。淡水産藻類用の培地に酢酸又は酢酸塩を1〜100mmol/l、好ましくは5〜30mmol/l加え、pHを6〜9、好ましくは7〜8に調整し、高圧蒸気滅菌する。淡水産藻類用の培地には藻類の増殖に必要な窒素、リン、カリウム、マグネシウム、鉄、その他微量金属の無機塩とチアミン等のビタミンが含まれ、例えばVT培地、C培地、MBM培地、MDM培地等が挙げられる(藻類研究法、千原光雄・西澤一俊編、共立出版、1979)。【0026】なかでもC培地はトリス塩酸塩が含まれ、pH調整が容易なので好ましい。これにヘマトコッカスを接種して、20〜32℃、好ましくは25〜28℃で通気、及び攪拌しながら培養する。増殖が始まると酢酸が消費されてpHが上昇し、そのままでは増殖が阻害されるので、酢酸や塩酸等を添加してpHを6〜9、好ましくはpH7〜8に保つことが好ましい。【0027】この培養は光を照射しながら行うこともでき、その場合には炭素源として酢酸の代わりに二酸化炭素を用いることもできる。但し、酢酸を用いた方が増殖は速い。本発明では、次の屋外培養池での培養で、安価な太陽光を利用してアスタキサンチンをヘマトコッカス中に蓄積させる為、高価な装置と運転コストがかかる閉鎖型培養装置での光照射は必ずしも必要としない。【0028】閉鎖型培養装置での培養により、緑色、茶色ないし赤色の遊走子又はシストからなる、補食動物や寄生微生物の夾雑がない清浄なヘマトコッカス藻体が得られる。これを次に屋外培養池に移し、アスタキサンチンを迅速に生成蓄積させる。【0029】屋外培養池は、コンクリート製、又はプラスチック製の円型あるいはレースウエイ型等の池と、培養液を攪拌する装置、及び二酸化炭素を培養液に供給する装置からなり、クロレラやスピルリナ、ドナリエラ等の培養に一般に使われているものを用いることもでき、その表面は大気、太陽光下に開放されているものであり、補食動物や寄生微生物の屋外培養池への浸入を防止する為に、屋外培養池が特にガラス等で密閉されている必要はない。【0030】閉鎖型培養装置で培養したヘマトコッカスを屋外培養池に移す前に、屋外培養池が殺菌されていることが好ましい。屋外培養池の殺菌は、補食動物や寄生微生物を死滅させる方法であれば何でも良いが、次亜塩素酸塩やオゾンによる薬液殺菌は方法が簡便で本発明に適している。【0031】具体的には、屋外培養池を洗浄した後、次亜塩素酸塩やオゾンを培地に溶解して屋外培養池に満たすだけでよく、同時に培地の殺菌も行われる。殺菌後は太陽光の照射と攪拌により残留塩素やオゾンは培地中から消失するので、そのまま培養を開始することができる。【0032】殺菌条件は添加濃度(ppm)と時間(分)の積であるCT値で表され、本発明においては、次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸カルシウムの場合CT値が5〜500、オゾンの場合ではCT値が0.5〜10となるよう殺菌する。これらの殺菌操作を行うと、ヘマトコッカスを屋外培養池で最大7日間培養することができる。また殺菌操作を行わない場合は、最大3日間培養することができる。【0033】本来、屋外培養池での培養中に夾雑生物が存在しないことを確認しながら行うことが好ましいが、本発明で言う、ヘマトコッカスを補食あるいは寄生する生物が培養池中に夾雑、増殖する前に培養を完了するとは、閉鎖型培養装置で培養したヘマトコッカスを屋外培養池に移す前に、屋外培養池を殺菌した場合は、最大7日間、屋外培養池を殺菌していない場合は、最大3日間培養することを意味する。【0034】夾雑の有無は検鏡して確認するが、培養液1滴中に補食動物や寄生微生物が認められた場合は、既に藻濃度が減少し始めていることも多く、そうなると培養後の培養池の洗浄や滅菌もまた難しくなる為、これらの日数は重要な意味を持つ。【0035】屋外培養池での培地は、淡水産藻類用培地に含まれる無機塩類の一部、又は全てを除いたもの、少なくとも、ヘマトコッカスの増殖栄養源としての窒素源を実質的に含まないものを用いる。地下水、河川水、農業用水あるいは飲料水そのものでもよい。このような栄養分が欠乏した培地を用いることにより、ヘマトコッカスの遊走子は増殖を停止してシスト化しアスタキサンチンがヘマトコッカス中に生成蓄積される。【0036】また0.3〜0.4%の塩化ナトリウム等の添加による塩分濃度の増加によっても、この現象を促進させることが出来る(M. R. Droop, Arch. Mikrobiol., 20, 391頁 (1954))。これらの培地を上記の薬液殺菌又は紫外線殺菌、熱殺菌等の方法で殺菌した後、屋外培養池に投入する。【0037】次に、閉鎖型培養装置で培養した夾雑のないヘマトコッカス藻体を屋外培養池に接種するが、この時の初発藻濃度はアスタキサンチンの生産性及びヘマトコッカスのアスタキサンチン含有量に大きく影響する。この時、アスタキサンチン生成速度及びアスタキサンチン含有量は光量とも深い関係がある。【0038】光量は光量子束密度(E)で表され、屋外での光量はもちろん場所や天候等により異なるが、ヘマトコッカスの培養に好適な場所の光量は25〜100E/m2・日、年平均で50E/m2・日程度である。初発藻濃度及び光量と、アスタキサンチンの培養面積当たり生成速度及びヘマトコッカスのアスタキサンチン含有量との関係は、実施例に具体的に示した。初発藻濃度が5gDCW/m2以下では、どの光量においても面積当たりのアスタキサンチン生産性が低いことが分かった。【0039】本発明で言う、gDCWとは、乾燥細胞重量の略であり、JIS K 0101(工業用水試験方法)、JIS K0102(工場排水試験方法)記載の水中の懸濁物質(SS)の測定用として一般に広く用いられていアドバンテック東洋株式会社製のGS−25(孔径約1μm、極微細な硼珪酸塩ガラス繊維を有機バインダー(アクリル樹脂)処理した濾紙)で培養液を濾過した後、該濾紙を105℃で6時間乾燥し、恒量とした後、重量を測定することにより得られる乾燥細胞重量をgで表したものを言う。【0040】ヘマトコッカスはアスタキサンチン含有量が最大5%にも達することが特長であるが、光量が25E/m2・日と弱い場合には、初発藻濃度が20gDCW/m2を超えると、ヘマトコッカス中のアスタキサンチン含有量が3日間以内には3%まで到達せず、また初発藻濃度が30gDCW/m2を超えると、アスタキサンチン含有量が7日間以内には3%に到達せず、十分にアスタキサンチンを生成蓄積することができない。【0041】従って、3%以上のアスタキサンチンを含有するヘマトコッカスを製造する為には、屋外培養池での初発藻濃度は、屋外培養池を殺菌し、培養期間が7日間以内の場合には5〜30gDCW/m2、屋外培養池を殺菌せず、3日間以内の場合には5〜20gDCW/m2にしなければならない。【0042】本発明においては、屋外培養池の初発ヘマトコッカス濃度を5〜20gDCW/m2とすることが好ましい。屋外培養池の液深は、任意に変えられるが、太陽光を有効に利用することから、好ましくは5cm〜40cm、更に好ましくは10cm〜30cmである。【0043】例えば、屋外培養池の液深が10cmである場合には、屋外培養池の初発ヘマトコッカス濃度5〜20gDCW/m2は、培養液のヘマトコッカス濃度が50mg/l〜200mg/lであることを意味し、液深が20cmの場合には、25mg/l〜100mg/lであることを意味する。【0044】屋外培養池での培養は、適当に攪拌しながら3〜7日間行う。培地のpHは、昼間は光合成による二酸化炭素の消費により上昇し、夜間は呼吸による二酸化炭素の排出で低下する。昼間は二酸化炭素濃度が低下し光合成の律速段階となるので、外部から二酸化炭素を添加してpHを6〜9、好ましくは7〜8に保つようにする。【0045】この間、ヘマトコッカスの遊走子は増殖が停止してシスト化が進み、細胞数は増加しないが、光合成によりアスタキサンチンを生成蓄積するので、細胞は大型化し、見かけの藻濃度も増大する。本発明の2段階培養法によって、3%以上の高濃度のアスタキサンチンを含有したヘマトコッカス藻体を効率よく製造することができる。【0046】【実施例】以下に本発明を実施例及び比較例により説明するが、元より本発明はこれらに限定されるものではない。【0047】(参考例1〜5)夾雑による藻濃度の減少(殺菌した培養池)Haematococcus pluvialis NIES144及び本発明者が純粋分離したHaematococcus sp. DY-1をタンク型培養装置で培養し、緑色遊走子の藻体を得た。液深が10cmになるよう飲料水を満たした屋外の円型培養池(1.2m2)を表中の条件で薬液殺菌し、ここに藻体を20g DCW/m2(200mg/l)となるよう接種し、pHを二酸化炭素で7.5に制御しながら12rpmで攪拌培養した。毎日培養液1滴をスライドグラスに滴下して検鏡し、また藻濃度を測定した。結果を表1に示す。いずれの培養例でも夾雑は8日目以降に観察され、ヘマトコッカス濃度も8日目以降に減少し始めた。【0048】【表1】【0049】(参考例6〜12)夾雑による藻濃度の減少(殺菌しない培養池)屋外の円型培養池(1.2m2)又はレースウエイ型培養池(5m2)を、洗浄しただけで薬液殺菌せずに飲料水を液深10cmになるよう満たし、ここに参考例1〜5と同様の藻体を20gDCW/m2(200mg/l)となるよう接種して、pHを二酸化炭素で7.5に制御しながら攪拌培養した。毎日検鏡と藻濃度の測定を行った。結果を表2に示す。いずれの培養例でも、夾雑は4日目以降に観察され、ヘマトコッカス濃度も5日目以降に減少し始めた。【0050】【表2】【0051】(実施例1)パドル型インペラーを装着した5Lタンク型培養装置に、2倍に濃縮したC培地に酢酸ナトリウムを10mmol/lとなるよう添加した培地2.8Lを加え、高圧蒸気滅菌した。これにフラスコで培養したH. pluvialis NIES144の培養液200mlを接種して、25℃、攪拌速度50rpm、通気量300ml/分で培養した。培地pHは1M酢酸の添加により7.5に制御した。10日間培養して、緑色の遊走子からなる藻濃度600mg/lの無菌の培養液を得た。【0052】次に25Lアクリル製円筒型密閉培養槽に、2倍に濃縮したC培地17Lを加え、次亜塩素酸ナトリウムで薬液殺菌(CT値=120)した。これに上記の培養液3Lを接種して、25℃、通気量2L/分で、陽光ランプで照明しながら(光量=4E/L/日)培養した。培地pHは、二酸化炭素の添加により7.5に制御した。5日間培養して、緑色の遊走子からなる藻濃度600mg/Lの培養液を得た。この培養液からは、当初の培地に含まれていた硝酸態窒素は全く検出されず、また補食動物や寄生微生物の夾雑も認められなかった。【0053】こうして得た培養液を飲料水で1、2、3、6、12及び24倍に希釈して、次亜塩素酸ナトリウムで殺菌(CT値=60)した1.2m2の屋外円型培養池に液深が10cmになるよう接種し、pHは二酸化炭素の添加により7.5に制御しながら培養した。培養期間中の温度は25〜32℃、光量は平均で26E/m2・日、及び48E/m2・日となるように農業用遮光シートで調節した。【0054】緑色の遊走子は速やかにシスト化しアスタキサンチンを生成蓄積した。培養3日目および7日目のアスタキサンチン生成速度、及びアスタキサンチン含有量を表3(光量は平均26E/m2・日)と表4(光量は平均48E/m2・日)に示す。尚、培養7日目まで、補食動物や寄生微生物の夾雑は認められなかった。【0055】【表3】【0056】【表4】【0057】(実施例2)パドル型インペラーを装着した50Lタンク型培養装置に、2倍に濃縮したC培地に酢酸ナトリウムを10mmol/lとなるよう添加した培地27Lを加え、高圧蒸気滅菌した。これに実施例1と同様に5Lタンク型培養装置で培養し藻濃度が600mg/lとなったH. sp. DY-1の培養液3Lを接種して、25℃、攪拌速度40rpm、通気量3L/分で培養した。培地pHは1M酢酸の添加により7.5に制御した。8日間培養して、緑色の遊走子からなる藻濃度600mg/lの無菌の培養液を得た。この培養液からは、当初の培地に含まれていた硝酸態窒素は全く検出されなかった。【0058】洗浄した1.2m2の屋外円型培養池に飲料水100Lを満たし、ここに上記の培養液20Lを接種して(液深10cm)、pHは二酸化炭素の添加により7.5に制御しながら3日間培養した。培養期間中の温度は25〜32℃、日平均光量は46E/m2・日であった。3日後に、赤色シストからなるヘマトコッカス藻体を収穫し、遠心濃縮の後凍結乾燥して、アスタキサンチン含有量3.2%の藻体を41g得た。収穫の際検鏡したが、補食動物や寄生微生物の夾雑は認められなかった。【0059】(比較例1)パドル型インペラーを装着した5Lタンク型培養装置に、2倍に濃縮したC培地に酢酸ナトリウムを10mmol/lとなるよう添加した培地2.8Lを加え、高圧蒸気滅菌した。これにフラスコで培養したH. pluvialis NIES144の培養液200mlを接種し、25℃、攪拌速度50rpm、通気量300ml/分で培養した。培地pHは、1M酢酸の添加により7.5に制御した。10日間培養して、緑色の遊走子からなる藻濃度600mg/lの無菌の培養液を得た。この時、当初の培地に含まれていた硝酸態窒素は全て消費されており、検出されなかった。【0060】屋外の0.3m2アクリル製角型培養池に、2倍に濃縮したC培地27Lを加え、次亜塩素酸ナトリウムで薬液殺菌(CT値=60)した。これに上記の培養液3Lを接種して(液深10cm)培養した。培地pHは、二酸化炭素の添加により7.5に制御した。10日間培養して、茶色の遊走子からなる藻濃度840mg/lの培養液を得た。培養期間中の温度は25〜30℃、日平均光量は36E/m2・日であった。この培養液からは、当初の培地に含まれていた硝酸態窒素は全く検出されず、検鏡によりヘマトコッカスを補食して緑色を呈した繊毛虫が培養液1滴当たり1〜3個観察された。【0061】洗浄した1.2m2の屋外円型培養池に飲料水90Lを満たし、ここに上記の培養液30Lを接種して(液深10cm)、pHは二酸化炭素の添加により7.5に制御しながら培養した。培養期間中の温度は25〜32℃、日平均光量は41E/m2・日であった。2日後に培養液をサンプリングしたところ、赤褐色のシストからなるヘマトコッカスの藻濃度は31gDCW/m2(310mg/l)、藻体のアスタキサンチン含有量は1.9%であった。しかし、この日から繊毛虫とワムシが急速に増殖してヘマトコッカスを補食し、3日目に検鏡するとヘマトコッカスは全く見られなかった。【0062】【発明の効果】本発明のアスタキサンチン含有ヘマトコッカスの製造方法により、閉鎖型培養装置で清浄なヘマトコッカス藻体を得ることにより夾雑を防ぐことができ、それを屋外培養池に移してアスタキサンチンを生成蓄積させることにより、3%以上の高いアスタキサンチン含有ヘマトコッカスを安価かつ効率的に製造することができる。 藻類ヘマトコッカスを閉鎖型培養装置で増殖させ、次いで屋外培養池において、ヘマトコッカス中にアスタキサンチンを生成蓄積させ、ヘマトコッカスを補食あるいは寄生する生物が培養池中に夾雑、増殖する前に培養を完了する2段階培養法によるアスタキサンチン含有ヘマトコッカスの製造方法であり、藻類ヘマトコッカスがヘマトコッカス プルビリアスで、アスタキサンチンを生成蓄積させる屋外培養池の初発ヘマトコッカス濃度を5〜20gDCW/m2とすることを特徴とする、2段階培養法によるアスタキサンチン含有ヘマトコッカスの製造方法。 閉鎖型培養装置が、培養液に人為的に光を照射しない装置であることを特徴とする、請求項1に記載のアスタキサンチン含有ヘマトコッカスの製造方法。


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