タイトル: | 特許公報(B2)_フィルムコーティング錠剤 |
出願番号: | 1998219035 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | A61K 9/36,A61K 47/02,A61K 47/38 |
伊藤 充 安藤 伸治 牧 亨 JP 4375686 特許公報(B2) 20090918 1998219035 19980803 フィルムコーティング錠剤 大正製薬株式会社 000002819 伊藤 充 安藤 伸治 牧 亨 20091202 A61K 9/36 20060101AFI20091112BHJP A61K 47/02 20060101ALI20091112BHJP A61K 47/38 20060101ALI20091112BHJP JPA61K9/36A61K47/02A61K47/38 A61K 9/36 A61K 47/02 A61K 47/38 特開平07−033659(JP,A) 特開平05−255088(JP,A) 国際公開第96/001874(WO,A1) 特開平09−002976(JP,A) 特開平05−294829(JP,A) 特開平06−024987(JP,A) 特開平07−097330(JP,A) 特開平07−196513(JP,A) 特開平10−057449(JP,A) 特開平10−036258(JP,A) 特開平09−025245(JP,A) 特開平09−003348(JP,A) 特開平10−194969(JP,A) 2 2000044464 20000215 6 20050801 岩下 直人 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、フィルムコーティング時や輸送時の錠剤の黒ずみによる汚れやフィルム層の剥がれを防止した、フィルムコーティングされた錠剤に関する。【0002】【従来の技術】錠剤は、含有する成分の持つ不快な味や匂いの隠蔽等による服用性の向上や、外観的な美麗化や識別性、錠剤自身の色の隠蔽を目的としてフィルムコーティングされる。また、配合成分の中には光や水分、大気中の酸素などの外的因子により分解されるものも多く、フィルムコーティングは配合成分を外的因子から隔離することを目的としても、たびたび適応される。【0003】フィルムコーティングにおいて、特に色の隠蔽や遮光等を目的として、顔料である酸化チタンをフィルム層中に配合することが多い。【0004】しかし、酸化チタンは無機物質でありそれ自身が非常に硬いため、フィルム層中の配合量がある一定以上であると、コーティングパンや貯蔵タンクの内壁と擦れて錠剤が黒ずんでしまい、商品価値を著しく損なうという問題がある。【0005】これらの問題を解決するために、フィルム層の酸化チタンの配合量を減量しつつ被覆されるフィルム層を厚くする方法、可塑剤であるポリエチレングリコールの添加(牧野ら、薬剤学、Vol.54、No.1、1994)やポリビニルピロリドンやポリビニルアルコールの添加(特開平9-2976)が提案されている。【0006】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、酸化チタンの配合量を減量する方法では、隠蔽能などを満足させるためにフィルム層を厚くする必要がある結果、崩壊遅延や工程時間の延長を招いてしまう。一方、ポリエチレングリコールやポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールを添加する方法では、錠剤中の配合成分などによっては添加できない場合もあり、実質的に上記問題を解決するには到っていない。【0007】本発明の目的は、汎用性が高くかつ簡便なフィルムコーティング技術と、商品性の高いフィルムコーティング錠剤を提供することにある。【0008】【問題を解決するための手段】本発明者らは上記問題を解決するために鋭意検討した結果、酸化チタンおよびタルクを配合したフィルム層でコーティングすることにより、フィルムコーティング操作中又は操作後の錠剤の汚れやフィルム層の剥がれを防止できることを見い出し、本発明に到った。【0009】すなわち本発明は、酸化チタンおよびタルクを配合したフィルム層でコーティングされたことを特徴とするフィルムコーティング錠剤である。また、もう一つの発明は、フィルム層中のフィルム基剤と酸化チタンの重量比が1:0.35〜0.85であり、かつ酸化チタンとタルクの重量比が1:0.15〜0.3であるフィルム層でコーティングされたことを特徴とするフィルムコーティング錠剤である。【0010】本発明は、酸化チタンによる錠剤の黒ずみ等の汚れを防止すべくタルクを配合するものであるが、本発明の効果を顕著に発揮させるためには、酸化チタンとタルクの配合(重量)比を、酸化チタン1に対して0.15〜0.3、望ましくは0.2〜0.27とすることが好ましい。タルクの配合比が0.15以下では、本発明の目的とする汚れを防止する効果は著しく低下してしまう。一方、タルクの配合比が0.3以上となると、汚れを防止する効果は得られるものの、フィルム層の強度が低下し脆弱になり、商品性を損なうものとなり易い。【0011】また、本発明においてフィルム層に配合される酸化チタンの量は、フィルム基剤1に対して0.35〜0.85、望ましくは0.35〜0.5とすることが好ましい。酸化チタンの配合比が0.35以下であると、フィルムの隠蔽効果等を得るためにはフィルム層を厚くしなければならなくなる。一方、酸化チタンの配合比が0.85以上となると、フィルム層の強度が低下して脆弱になり、商品性を損なうことがある。【0012】【発明の実施の形態】本発明に使用できるフィルム基剤としては、一般的に添加されているものを使用することができる。その様な被覆剤として、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デキストリン、プルラン、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、メタアクリル酸コポリマー、白糖、マンニトール、ゼラチン等が好適に使用され、これら1種又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でもヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等がより好適に使用される。その使用量も特別な値とする必要はなく、フィルム層に対して45重量%以上とすればよい。【0013】また、本発明の実施において、フィルム層には種々の添加剤を加えることもできる。添加剤としては、酸化鉄や黄色5号アルミニウムレーキなどの色素や、ポリエチレングリコール、トリアセチン、中鎖脂肪酸トリグリセリド、アセチルグリセリン脂肪酸エステル、クエン酸トリエチルなどの可塑剤、その他フィルムコーティングで使用される一般的な添加剤を挙げることができる。【0014】本発明のフィルムコーティングを錠剤に施す手法には特に制限はない。例えば、精製水を溶媒としてフィルム基剤を溶解し、これに酸化チタンとタルクを分散させたコーティング液を、市販のコーティング装置を用いて錠剤に被覆させればよい。【0015】【実施例】以下、実施例を示し本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。【0016】<実施例1>ヒドロキシプロピルメチルセルロース100gを精製水に溶解し、酸化チタン35g、タルク7gを添加し十分に分散させ全量1420gのフィルム液を調製した。次にイブプロフェン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウムからなり、常法により製した錠径9mm、1錠300mgの素錠1000gをパンコーティング装置(パウレック社製、DRC-300型)に投入し、錠剤を流動させながら上記フィルム液をスプレーし、水分を蒸発させることによりフィルムコーティングされた錠剤を得た。フィルム量は素錠に対して5%とした。【0017】<実施例2>ヒドロキシプロピルメチルセルロース100gを精製水に溶解し、酸化チタン50g、タルク13gを添加し十分に分散させ全量1630gのフィルム液を調製した。実施例1と同様にして素錠にコーティングを行い、本発明の錠剤を得た。【0018】<実施例3>ヒドロキシプロピルメチルセルロース100gを精製水に溶解し、酸化チタン80g、タルク20gを添加し十分に分散させ全量2000gのフィルム液を調製した。実施例1と同様にして素錠にコーティングを行い、本発明の錠剤を得た。【0019】<比較例1>ヒドロキシプロピルメチルセルロース100gを精製水に溶解し、酸化チタン35gを添加し十分に分散させ全量1350gのフィルム液を調製した。実施例1と同様にして素錠にコーティングを行い、フィルムコーティングされた錠剤を得た。【0020】<比較例2>ヒドロキシプロピルメチルセルロース100gを精製水に溶解し、酸化チタン80g、タルク30gを添加し十分に分散させ全量2040gのフィルム液を調製した。実施例1と同様にして素錠にコーティングを行い、フィルムコーティングされた錠剤を得た。【0021】<比較例3>ヒドロキシプロピルメチルセルロース100gを精製水に溶解し、酸化チタン80g、タルク35gを添加し十分に分散させ全量2110gのフィルム液を調製した。実施例1と同様にして素錠にコーティングを行い、フィルムコーティングされた錠剤を得た。【0022】以上の実施例1、実施例2、および比較例1〜3の5種類のフィルムコーティング錠におけるフィルム層中のフィルム基剤、酸化チタン、およびタルクの配合比をまとめると、表1の様になる。【0023】【表1】【0024】<試験例>実施例1、実施例2、および比較例1〜3の5種類のフィルムコーティング錠について以下の試験を行った。【0025】各錠剤1000gをパンコーティング装置(パウレック社製、DRC-300)に投入し、パンを回転させることにより錠剤を流動させた。流動時間0、1、2時間経過後の錠剤100錠について目視にて検査を行い、黒ずみによる汚れの度合いを確認した。また、同様に目視によりフィルムのはがれ、クラックの発生について検査を行った。汚れの度合いは、(++);かなり汚れている、(+);汚れている、(±);わずかに汚れている、(−);まったく汚れていない、によって評価した。その結果を表2、表3に示す。【0026】【表2】【0027】【表3】【0028】表2、表3の試験結果のように、タルクを本発明の範囲内で配合したフィルム液を用いた錠剤(実施例1〜3)では、汚れの発生は全く認められなかった。一方、比較例1では錠剤が試験前の時点で既にわずかに汚れており、試験時間の経過とともに汚れがひどくなることが判明した。またタルクを所定量より多く配合した比較例2では、汚れの発生は認めれられないがフィルムのはがれやクラックが発生するなど、商品性が低下した。さらに、比較例2よりもタルクを増量した比較例3ではフィルムが更にもろくなっており、タルクの過剰な配合はフィルムを脆弱にすることが示された。 フィルム層中のフィルム基剤と酸化チタンの重量比が1:0.35〜0.5であり、かつ酸化チタンとタルクの重量比が1:0.15〜0.3であるフィルム層でコーティングされたことを特徴とするフィルムコーティング錠剤。 フィルム基剤がヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースである請求項1に記載のフィルムコーティング錠剤。