タイトル: | 特許公報(B2)_水素化ビスフェノールA異性体組成物 |
出願番号: | 1998212886 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C07C 35/21,C07C 29/20,C07C 29/76 |
吉田 安久 藤谷 貫剛 JP 4182305 特許公報(B2) 20080912 1998212886 19980728 水素化ビスフェノールA異性体組成物 新日本理化株式会社 000191250 三枝 英二 100065215 掛樋 悠路 100076510 小原 健志 100086427 中川 博司 100090066 舘 泰光 100094101 斎藤 健治 100099988 藤井 淳 100105821 関 仁士 100099911 中野 睦子 100108084 大月 伸介 100109438 鈴木 活人 100109427 吉田 安久 藤谷 貫剛 20081119 C07C 35/21 20060101AFI20081030BHJP C07C 29/20 20060101ALI20081030BHJP C07C 29/76 20060101ALI20081030BHJP JPC07C35/21C07C29/20C07C29/76 C07C 35/21 C07C 29/20 C07C 29/76 CAplus(STN) REGISTRY(STN) 米国特許第3277186(US,A) 特開昭53−119855(JP,A) 特公昭43−26859(JP,B1) 日本化学雑誌,1969年,Vol.90、No.6,p.534-537 9 2000044503 20000215 20 20050404 松本 直子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、低い加熱温度で固体状態から流動状態となる水素化ビスフェノールA及びその製造法に関する。特に、水素化ビスフェノールAのトランス−トランス異性体の含有量が特定量であり、固体状態から流動状態となる温度が大幅に低下した水素化ビスフェノールA、即ち、水素化ビスフェノールAの異性体組成物ないし混合物、及びその製造法に関する。【0002】【従来の技術】水素化ビスフェノールAは、脂環式二価アルコールの範疇に属する化合物であり、ビスフェノールA、即ち、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの二つのベンゼン核を核水素化することにより得られる。本明細書において、「水素化ビスフェノールA」は、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンを指す。【0003】水素化ビスフェノールAは、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂の原料及び改質剤として、これらの樹脂に耐熱性、耐候性又は耐湿性等を付与する原料として有用な化合物である。【0004】現在知られている水素化ビスフェノールAは、融点170〜190℃の固体である。この化合物は、融点が高いことに起因して、溶融工程における溶融速度が遅く、生産性が良くなかった。【0005】更に、このような溶解性の低い固体の製品を、各種化合物の製造原料として工業的に取扱う場合、溶解槽の設置やホッパー、スクリューコンベアなどの付帯設備の設置及び維持が必要であり、しかも、粉末状固体であるが故に粉塵爆発の防止策や粉塵発生による作業環境悪化の防止策などが必要である。最近の化学プラントの自動化により、工程監視が容易で、装置トラブルが少ない液状原料が求められている。そこで、若干の昇温操作により固体状態から流動状態へと変化し、工業的に液体として取り扱え、操作が容易な水素化ビスフェノールAが望まれている。【0006】また、従来のビスフェノールAは、上記樹脂の原料として共用するグリコール類などに溶解する工程において溶解速度が遅く、グリコール類との相溶性の点でも必ずしも満足できない面があった。【0007】水素化ビスフェノールAには、式(1)、(2)及び(3)【0008】【化1】【0009】で表されるトランス−トランス異性体(T−T)、シス−トランス異性体(C−T)、シス−シス異性体(C−C)の3種類の立体異性体があり、各々の融点はトランス−トランス異性体が194.1℃、シス−トランス異性体が168.3℃、シス−シス異性体が176.5℃である(日本化学雑誌 90巻6号(1969)第534−537頁)。【0010】特開昭53−119855号には、ルテニウム触媒及びイソブタノール又はイソプロパノールの存在下、140〜160℃でビスフェノールAを接触水素化することにより、上記トランス−トランス異性体体の含有量をニッケル触媒に比較して、70%に減ずることができることが開示されており、該公報の実施例によれば、反応温度155℃で、トランス−トランス異性体含有量が35.8%の水素化ビスフェノールAの結晶を得ている。しかし、その結晶の融点は、170〜172℃である旨記載されており、比較的低温で固体状態から流動状態へと変化する水素化ビスフェノールAとは言えないものであった。【0011】【発明が解決しようとする課題】本発明は、水素化ビスフェノールA、特に、若干の加熱により容易に溶融するか、又は、若干の加熱により流動状態となって、液体として扱うことができる水素化ビスフェノールA及びその製造法を提供することを目的とする。また、本発明は、グリコール類との相溶性の良い水素化ビスフェノールAを提供することを目的とする。【0012】【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる現状に鑑み、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、融点が170℃以上である水素化ビスフェノールA異性体混合物の結晶であっても、それを溶融し、該溶融物を特定の冷却条件で冷却して固体にした場合に、得られる固体が流動状態へと変化する温度が、当該結晶の融点に比し、大幅に低いものとなり、70℃以下の低い温度で固体状態から流動状態へと変化することを見いだした。【0013】特に、上記式(1)のトランス−トランス異性体の含有量が、トランス−トランス異性体、トランス−シス異性体及びシス−シス異性体の合計量に対して、33重量%以下の異性体混合物は、そのような流動状態となる温度が低い固体を容易に形成する混合物であり、若干の加熱により液体として扱え、しかも、グリコール類との相溶性にも優れていることをを見いだし、本発明を完成するに至った。【0014】即ち、本発明は、水素化ビスフェノールAのトランス−トランス異性体、トランス−シス異性体及びシス−シス異性体を含み、固体状態で加熱した場合に流動状態へ変化し終わり、固体状態が認められなくなる温度が70℃以下であることを特徴とする水素化ビスフェノールA異性体組成物ないし水素化ビスフェノールA異性体混合物を提供するものである。【0015】特に、本発明は、水素化ビスフェノールAのトランス−トランス異性体、トランス−シス異性体及びシス−シス異性体を含み、これら異性体の合計量に対して、該トランス−トランス異性体が33重量%以下の量で存在しており、固体状態で加熱した場合に、流動状態へ変化し終わり、固体状態が認められなくなる温度が70℃以下である水素化ビスフェノールA異性体組成物ないし水素化ビスフェノールA異性体混合物を提供するものである。【0016】本明細書において、水素化ビスフェノールA異性体組成物ないし水素化ビスフェノールA異性体混合物を「固体状態で加熱した場合に、流動状態へ変化し終わり、固体状態が認められなくなる温度」は、融点測定器(商品名「微量融点測定器MP−J3」、柳本製作所(株)社製)を用い、固体状態の水素化ビスフェノールA異性体組成物ないし水素化ビスフェノールA異性体混合物のサンプルを昇温速度1℃/分にて加熱し、水素化ビスフェノールAサンプル固体が流動状態となり、もはや固体状態が存在しなくなるに至る温度である。以下、本明細書では、簡便のため、該温度を、単に「流動化温度」ということがある。【0017】【発明の実施の形態】以下、本発明の水素化ビスフェノールA異性体組成物ないし混合物、その製造法、及びその有用性について、詳しく説明する。【0018】水素化ビスフェノールA異性体組成物本発明に係る水素化ビスフェノールA異性体組成物は、前記式(1)、(2)及び(3)で表されるトランス−トランス異性体、トランス−シス異性体及びシス−シス異性体を含むものであって、その流動化温度が70℃以下、好ましくは60℃以下であることを特徴とする。【0019】本発明の水素化ビスフェノールA異性体組成物は、その流動化温度が70℃以下である限り、当該組成物を構成する異性体混合物の組成は特に限定されない。【0020】しかし、本発明の水素化ビスフェノールA異性体組成物は、そのトランス−トランス異性体の割合が、トランス−トランス異性体、トランス−シス異性体及びシス−シス異性体の合計量(以下「三異性体合計量」という)に対して、33重量%以下である場合、低い流動化温度を有する固体を容易に形成し、若干の加熱により液体として扱えるので好ましい。その場合には、その流動化温度は通常70℃以下、特に60℃以下になり、しかも、プロピレングリコールやネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール類との相溶性に優れている。【0021】また、トランス−トランス異性体の割合が、三異性体合計量に対して、33重量%を超える場合であっても、上記と同様に低い流動化温度を有する固体が得られ、その溶融工程が効率よく行えるので、好ましい。【0022】本発明の水素化ビスフェノールA異性体組成物の流動化温度については、基本的には、70℃以下であるが、その組成ないし製造法によっては、最も低い場合で流動化温度は55℃程度となる。好ましくは、本発明の水素化ビスフェノールA異性体混合物ないし組成物の流動化温度は、55〜60℃の範囲にある。【0023】本発明の上記水素化ビスフェノールA異性体組成物ないし水素化ビスフェノールAの異性体混合物がこのような低い流動化温度を示すことは、極めて予想外のことであった。即ち、上記の如く、式(1)、(2)及び(3)の個々の異性体の融点はトランス−トランス異性体が194.1℃、シス−トランス異性体が168.3℃、シス−シス異性体が176.5℃といずれも高融点である。また、前記特開昭53−119855号においては、トランス−トランス異性体含有量が35.8%の水素化ビスフェノールAの結晶の融点は170〜172℃である旨記載されており、やはり高融点である。【0024】ところが、本発明者らは、水素化ビスフェノールA異性体混合物を溶融状態又は流動状態から急冷して固体とすることにより、流動化温度が低いものとなることを見出したものである。特に、該異性体混合物中のトランス−トランス異性体含有量が三異性体合計量に対して33重量%以下の場合は、流動化温度が70℃以下の水素化ビスフェノールA異性体混合物が極めて容易に得られ、従来公知の水素化ビスフェノールA結晶の融点に比し、著しく低い温度で固体状態から流動状態へと変化する現象を見いだした。かかる著しく低い温度で流動状態となる現象は、上記個々の異性体の融点や特開昭53−119855号に記載の水素化ビスフェノールAの結晶の高い融点からは、予想もできないものであった。【0025】このように本発明の水素化ビスフェノールA異性体混合物が、その結晶の融点に比し、著しく低い温度で流動状態となる理由は、必ずしも明確ではない。しかし、詳細は未だ完全には解明されていないものの、その理由の一つとしては、本発明の異性体混合物がガラス状態にあり、そのガラス転移温度が低いために、若干の加熱により、容易に固体状態から流動状態へ移行するためと推察される。従って、おそらく、本発明者らは、本発明の水素化ビスフェノールA異性体混合物が、融解現象とは異なるメカニズムに基づいて、固体状態から流動状態へと変化する性質を有することを見出したものと思われる。【0026】例えば、トランス−トランス異性体の含有量が50重量%であり、その融点が178〜185℃である水素化ビスフェノールA異性体混合物の結晶を溶融し、得られる溶融物を急冷して固体を得たところ、得られた固体の流動化温度は、64℃であった。また、トランス−トランス異性体の含有量が前記特開昭53−119855号の実施例と同様の36重量%である水素化ビスフェノールA異性体混合物を、イソブタノールに溶解し、溶媒を回収留去する際に得られた結晶は、融点が135〜143℃であったが、他方、同じくトランス−トランス異性体の含有量が36重量%の水素化ビスフェノールA異性体混合物を溶融し、得られた融溶物を急冷して得た固体は、流動化温度が64℃であった。【0027】本発明においては、特に、そのトランス−トランス異性体の含有量が、三異性体合計量に対して、33重量%以下である水素化ビスフェノールA異性体混合物は、これを溶融して得られる溶融物を急冷して得られる固体が、若干の加熱により液体として扱える好ましい混合物であることが判明した。しかも、トランス−トランス異性体の含有量が三異性体合計量に対して33重量%以下である水素化ビスフェノールA異性体混合物は、プロピレングリコールやネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール類との相溶性に優れている。【0028】本発明の水素化ビスフェノールA異性体混合物ないし組成物にあっては、上記トランス−トランス異性体の含有量が三異性体合計量に対して33重量%以下、特に15〜33重量%であることが好ましいが、上記のように70℃以下の流動化温度を示す限り、他の異性体の比率は特に限定されず、混合物中にどのような比率で存在していてもよい。【0029】しかし、一般には、本発明の水素化ビスフェノールAの三異性体合計量に対して、各異性体が次の割合、即ち(a)トランス−トランス異性体が15〜33重量%、特に15〜28重量%(b)トランス−シス異性体が40〜75重量%、特に40〜65重量%(c)シス−シス異性体が10〜45重量%、特に20〜45重量%の割合で存在することが好ましい。【0030】上記本発明に係る水素化ビスフェノールA異性体組成物ないし水素化ビスフェノールA異性体混合物は、常温では固体であるが、従来の水素化ビスフェノールAに比較して、70℃以下という低温で流動化するため、工業的に取り扱う際に、若干の昇温操作により液体として取り扱うことができ、操作性がよいという利点がある。これにより、水素化ビスフェノールAグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAジアクリレート、水素化ビスフェノールAのポリカーボネートなどの誘導体製造において、無溶剤で反応を行なうか又は反応溶媒を低減することが可能となる。【0031】上記のように、本発明の水素化ビスフェノールA異性体混合物は70℃以下の温度で固体状態から流動状態へと変化するものであるが、その組成によっては、例えば、70〜150℃程度の温度に保持することにより、結晶を析出してしまう場合がある。例えば、トランス−トランス異性体の割合が、三異性体合計量に対して、33重量%を超える場合は、一般に、70〜150℃程度の温度に5分間〜1時間程度保持することにより、結晶を析出してしまう。【0032】しかし、本発明のトランス−トランス異性体の含有量が、三異性体合計量に対して、33重量%以下である水素化ビスフェノールA異性体混合物は、一般に100〜150℃、好ましくは100〜120℃の温度範囲に保持すると、長期間流動状態を維持し、結晶を析出することもないので、上記温度で液体のまま貯蔵、運搬及び使用することが可能である。【0033】よって、本発明は、このように、若干の加熱、例えば100〜150℃の温度に加熱することにより流動状態を保持しており、トランス−トランス異性体の含有量が三異性体合計量に対して33重量%以下である水素化ビスフェノールA異性体混合物ないし水素化ビスフェノールA異性体組成物を提供するものでもある。【0034】更に、本発明の水素化ビスフェノールA異性体組成物ないし水素化ビスフェノールA異性体混合物を、プロピレングリコールやネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール類に溶解させる際には、従来の水素化ビスフェノールAに比較して、溶解速度が大きくなった。特に、トランス−トランス異性体の含有量が三異性体合計量に対して33重量%以下である水素化ビスフェノールA異性体混合物は、プロピレングリコールやネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール類への溶解速度が高く、しかも、該グリコール類との相溶性に優れているため、不飽和ポリエステル樹脂の製造コストを低減させることができ、工業的により有用なものである。【0035】水素化ビスフェノールA異性体混合物の製造法以下に、本発明の水素化ビスフェノールA異性体組成物ないし水素化ビスフェノールA異性体混合物の製造法について説明する。【0036】本発明の流動化温度が70℃以下の水素化ビスフェノールA異性体組成物は、基本的には、(i)原料水素化ビスフェノールA異性体混合物を加熱して流動状態とするか又は溶融することにより流動化物又は溶融物を得る工程、及び、(ii)得られた流動化物又は溶融物を急冷して固体を得る工程を包含する方法により得られる。【0037】加熱により溶融又は流動化するための条件及び急冷条件は、原料水素化ビスフェノールA異性体混合物中のトランス−トランス異性体の割合が、トランス−トランス異性体、トランス−シス異性体及びシス−シス異性体の合計量に対して、33重量%を超える場合と33重量%以下である場合とで異なる。【0038】即ち、本発明では、水素化ビスフェノールAの異性体混合物を、上記トランス−トランス異性体の割合が三異性体合計量に対して33重量%を超える場合は、原料水素化ビスフェノールA異性体混合物を、180〜220℃に加熱して溶融し、次いで、溶融物を例えば20〜50℃までに0.1〜10分間で急冷して固体にし、上記トランス−トランス異性体の割合が三異性体合計量に対して33重量%以下の場合は、原料水素化ビスフェノールA異性体混合物を、180〜220℃、好ましくは100〜150℃に加熱して流動化し、次いで、流動化した原料を例えば0〜50℃までに0.1〜30分間で急冷して固体にするものである。【0039】(I)トランス−トランス異性体含量が、三異性体合計量の33重量%を超える場合まず、原料水素化ビスフェノールA異性体混合物のトランス−トランス異性体の割合が、三異性体合計量に対して、33重量%を超える場合について説明する。【0040】この場合、原料水素化ビスフェノールA異性体混合物を、例えば、180〜220℃に加熱して溶融し、溶融物を20〜50℃まで急冷すると、無色透明の固体を得ることができる。急冷しない場合、結晶の析出により白濁した固体の水素化ビスフェノールA異性体混合物が生成し、本発明の低い流動化温度を有する水素化ビスフェノールA異性体混合物とはならない。【0041】原料である水素化ビスフェノールA異性体混合物は、トランス−トランス異性体の割合が、三異性体合計量に対して、33重量%を超えておれば、特に限定されず、その組成もどのようなものであっても良い。例えば、現在市販されている水素化ビスフェノールAを原料として使用することもできる。また、従来公知の方法、例えば、前記特開昭53−119855号に記載のように、ルテニウム触媒を用いてビスフェノールAを水素化する方法等により得られる水素化ビスフェノールA異性体混合物の結晶を、原料異性体混合物として使用することもできる。また、原料として使用する水素化ビスフェノールA異性体混合物は、結晶形態でなくても良く、更には、任意の水素化ビスフェノールA異性体混合物を2種以上混合したものであっても良い。【0042】上記原料水素化ビスフェノールA異性体混合物を溶融する方法も特に限定されない。例えば、原料水素化ビスフェノールA異性体混合物を、そのまま加熱して溶融する方法が採用できる。加熱温度も、原料固体が溶融する温度であれば特に限定されないが、一般には180〜220℃程度とすることが推奨される。【0043】また、原料の水素化ビスフェノールA異性体組成物ないし水素化ビスフェノールA異性体混合物には、その製造時に副生する2−シクロヘキシル−2−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等の不純物がしばしば混入している。そのような場合、本発明では、原料異性体混合物を溶融し、得られる溶融物からこれら不純物を減圧下での蒸留トッピング等により除去し、実質的に水素化ビスフェノールA異性体のみからなる混合物とすることもできる。【0044】しかし、該不純物を含んだままでも原料として使用でき、その溶融物を急冷して得られる水素化ビスフェノールA異性体組成物は、更に低い流動化温度を有する。この場合、不純物、特に2−シクロヘキシル−2−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンは、水素化ビスフェノールAのトランス−トランス異性体、トランス−シス異性体及びシス−シス異性体の合計量100重量部に対して、通常8重量部以下程度、好ましくは0.1〜6重量部程度、より好ましくは0.1〜2重量部程度の量で存在させることができる。急冷の条件としては、広い範囲の急冷条件を採用できるが、一般には、例えば180〜220℃で溶融状態にある原料水素化ビスフェノールA異性体混合物(上記不純物を含んでいても良い)を、20〜50℃の温度まで、0.1〜10分間程度、好ましくは0.1〜5分間程度で急冷することが推奨される。【0045】実験室的には、溶融状態にある水素化ビスフェノールA異性体混合物を、0〜30℃程度の温度の金属製容器に注ぎ入れることにより、急冷を行うことができる。また、工業的には、溶融水素化ビスフェノールA異性体混合物の溶融槽に、公知のフレーカーを接続した装置により急冷を行うことができる。フレーカーとしては、ドラム型、ベルト型の何れもが使用できる。この方法に限らず、所望の低い流動化温度を有する固体が得られる限り、溶融物の冷却条件及び冷却方法は問わない。【0046】急冷により得られた固体は、そのままで使用することも可能であるが、必要ならば、粉砕、分級等の処理を施しても良い。【0047】この急冷を行う方法により得られる本発明の水素化ビスフェノールA異性体組成物ないし水素化ビスフェノールA異性体混合物は、使用した原料水素化ビスフェノールA異性体混合物と同じ組成であるが、上記溶融工程及び急冷工程により、流動化温度が原料の結晶の融点よりもかなり低いものとなる。こうして得られるトランス−トランス異性体が三異性体合計量に対して33重量%を超える本発明の水素化ビスフェノールA異性体組成物の流動化温度は、70℃以下であり、メルターで溶融する際、低い温度から固体が流動化して加熱面に接触し、熱伝導が順調に行われる。従って、結晶の形態にある従来品に比較して、加熱が効率的に行われ溶融に必要な時間が短くなり、生産性が向上する等の点で工業的に有用である。【0048】(II)トランス−トランス異性体含量が、三異性体合計量の33重量%以下の場合トランス−トランス異性体含量が三異性体合計量に対して33重量%以下の場合も、基本的には、トランス−トランス異性体の割合が三異性体合計量に対して、33重量%以下である原料水素化ビスフェノールA異性体混合物を加熱により流動化させ、これを急冷して固体にする方法により得られる。【0049】トランス−トランス異性体の割合が、三異性体合計量に対して、33重量%以下である原料水素化ビスフェノールA異性体混合物は、後述する方法により得ることができる。【0050】こうして得られる水素化ビスフェノールA異性体混合物は、例えば、180〜220℃に加熱して流動状態としても良いが、それよりも低い温度である100〜150℃程度の温度に加熱するだけで、流動状態となるので、この流動状態から0〜50℃、好ましくは20〜40℃の温度に、例えば、0.1〜30分間、好ましくは0.1〜10分間で冷却することにより、本発明の水素化ビスフェノールA異性体組成物ないし混合物が、無色透明の固体として得られる。【0051】冷却の具体的方法は上記(I)の場合と同様であり、金属製容器に注ぎ入れる実験室的方法やフレーカーを使用する工業的方法等が採用できる。【0052】また、このトランス−トランス異性体の含有量が当該異性体混合物に対して33重量%以下である混合物は、既述のように、加熱下で結晶を析出することがないので、上記加熱により流動状態とした後、そのまま加熱を続けて、例えば100〜200℃、好ましくは100〜150℃、より好ましくは100〜120℃の温度に保持することにより、流動状態を維持することもできる。また、上記と同様に、原料の水素化ビスフェノールA異性体組成物ないし水素化ビスフェノールA異性体混合物が、2−シクロヘキシル−2−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等の不純物を含んでいる場合、原料異性体混合物を溶融し、得られる溶融物からこれら不純物を減圧下での蒸留トッピング等により除去し、実質的に水素化ビスフェノールA異性体のみからなる混合物とすることもできるが、該不純物を含んだままでも原料として使用でき、その溶融物を急冷して得られる水素化ビスフェノールA異性体組成物は、更に低い流動化温度を有する。この場合、不純物、特に2−シクロヘキシル−2−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンは、水素化ビスフェノールAのトランス−トランス異性体、トランス−シス異性体及びシス−シス異性体の合計量100重量部に対して、通常8重量部以下程度、好ましくは0.1〜6重量部程度、より好ましくは0.1〜2重量部程度の量で存在させることができる。次に、トランス−トランス異性体の含有量が、三異性体合計量に対して、33重量%以下である本発明の水素化ビスフェノールA異性体混合物の製造方法について説明する。【0053】該異性体混合物のトランス−トランス異性体含有量を三異性体合計量に対して33重量%以下に調整する方法としては、公知の晶析、蒸留、混合などの何れの方法であっても使用できるが、比較的容易に目的物を製造できる方法は以下の三方法である。【0054】(a)ビスフェノールAを特定の溶媒中で、ルテニウム触媒を使用し、特定の温度条件下に接触水素化する方法(b)トランス−トランス異性体含有量が三異性体合計量に対して33重量%を越える水素化ビスフェノールA異性体混合物を、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン、酢酸エチル等のエステル、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素等の溶媒に、好ましくは加熱下に、溶解し、得られる溶液から再結晶法によりトランス−トランス異性体を除去する方法(c)上記の方法(a)又は(b)によって得たトランス−トランス異性体含有量が低い混合物と該トランス−トランス異性体含有量が三異性体合計量に対して33重量%を越える混合物とを混合して、得られる混合物において、トランス−トランス異性体の割合を、三異性体合計量に対して33重量%以下に調整する方法。【0055】上記方法のうちでも、特に、(a)のルテニウム触媒による接触水素化法は工業的に有利な方法である。以下、これらの方法について説明すると共に、本発明の水素化ビスフェノールA異性体組成物の製造法についても説明する。【0056】方法(a)本発明のトランス−トランス異性体の含有量が三異性体合計量に対して33重量%以下である水素化ビスフェノールA異性体混合物を、接触水素化により製造するには、ルテニウム触媒の存在下及び溶媒としてのグリコール若しくはグリコールエーテル又は飽和脂肪族一級アルコールの存在下に、溶媒がグリコール若しくはグリコールエーテルの場合は反応温度80〜180℃で、溶媒が飽和脂肪族一価アルコールの場合は反応温度80〜130℃で、ビスフェノールAを接触水素化することにより得られる。【0057】ここで使用できるルテニウム触媒としては、公知のものでよく、ビスフェノールAのベンゼン環の水素化の触媒活性を有するルテニウム化合物又は金属ルテニウムが使用できる。例えば、かかるルテニウム化合物として、塩化ルテニウム、ルテニウム酸カリウム、ルテニウム酸ナトリウム、ルテニウム酸ルビジウム、ルテニウム酸アンモニウムなどのルテニウム酸塩を使用し、該ルテニウム酸塩を、例えば、珪藻土、軽石、活性炭、シリカゲル、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタンなどの担体に担持させ、次いで、必要ならば、水素気流中で常法に従い活性化処理することにより、所望のルテニウム触媒が容易に得られる。また、金属ルテニウム、酸化ルテニウム、水酸化ルテニウムなどを、上記のような担体に担持し又は担持することなくそのまま用いることもできる。いずれの場合も、上記ルテニウム化合物又は金属ルテニウムの担持量は特に限定されないが、上記ルテニウム化合物を、触媒の全体重量に対して、ルテニウム金属として、0.1〜10重量%程度の量で上記担体に担持させるのが好ましい。【0058】一般に、固定床反応を行う場合は、ルテニウム化合物をルテニウム金属として触媒の全体重量に対して0.1〜2重量%の量で担体に担持させてなるペレット又は粒状の形態の触媒を使用することが好ましく、懸濁反応を行う場合、ルテニウム化合物をルテニウム金属として触媒の全体重量に対して2〜10%重量の量で担体に担持させてなる粉末形態の触媒を使用することが好ましい。【0059】また、使用するルテニウム触媒は市販のものであってもよい。かかる市販のルテニウム触媒として、エヌ・イー・ケムキャット社、ジョンソン・マッセー社、日産ガードラー社の5%Ruカーボン粉末、5%Ruカーボン粉末含水品、5%Ruアルミナ粉末、酸化ルテニウム、ルテニウムブラック、0.5%Ruカーボン粒、0.5%Ruアルミナペレットを例示することができる。【0060】ルテニウム触媒の使用量は、水素圧力により変化するが、懸濁反応の場合、原料ビスフェノールA重量に対して、ルテニウム金属として0.01〜1重量%、特に、0.05〜0.5重量%とするのが、反応速度と触媒コストの観点から好ましい。【0061】この製造方法で使用する溶媒は、原料及び生成物と反応せず、自らも水素化されない不活性なものであり、生成物を溶解することができる有機溶媒であれば、各種のものを使用できる。しかし、特に好ましい反応溶媒はグリコール及びグリコールエーテルから選ばれた少なくとも1種の溶媒、及び飽和脂肪族一級アルコールである。【0062】グリコールとしては、一般式HO−(AO)m−H (4)[式中、Aは炭素数1〜5の直鎖又は分枝のアルキレン基を示し、mは1〜4の整数を示す。但し、Aがネオペンチレン基の場合、mは1を示す。]で表されるものが例示できる。また、グリコールエーテルとしては、一般式R1O−(CH2CH2O)n−H (5)[式中、R1は、炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは1〜4の整数を示す。]で表されるものが使用できる。【0063】そのうちでも、上記一般式(4)で表されるグリコールがより好ましい。グリコールのうちでも、特に、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3ーブタンジオール、1,4ーブタンジオール、ネオペンチルグリコールを望ましいものとして例示することができる。【0064】これらの中で、プロピレングリコールは最も反応速度が速く、溶媒コストが安価であり、且つ、主な用途である不飽和ポリエステル樹脂やウレタン樹脂の原料として共用するグリコールであること、及び、溶媒を留去して高純度水素化ビスフェノールAを得る場合にも留去しやすいことから、最も好ましい反応溶媒はプロピレングリコールである。【0065】また、溶媒としては、飽和脂肪族一級アルコールも使用でき、特に炭素数1〜8の直鎖の飽和一級アルコール、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール等及び炭素数4〜8の分岐の飽和脂肪族一級アルコール、例えばイソブタノール、イソオクタノール等を例示できる。これらの中で、n−ブタノールが反応時の蒸気圧が低く反応に有利であって、反応後の除去が容易であるところから好ましい溶媒である。【0066】上記一般式(4)で表されるグリコール及び一般式(5)で表されるグリコールエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種を使用する場合も、上記飽和脂肪族一級アルコールを使用する場合も、該溶媒の使用量は任意の範囲で選択できるが、工業的には、原料ビスフェノールA/溶媒=2/8〜8/2、特に、4/6〜7/3の重量比とするのが生産性を考慮した場合に好ましい範囲である。【0067】接触水素化反応は、バッチ方式、連続式の何れもに適用できる。バッチ式懸濁反応方式、連続式流動床方式、固定床連続方式においても適用される。【0068】反応は、溶媒として上記一般式(4)で表されるグリコール及び一般式(5)で表されるグリコールエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種を使用する場合は、通常、80〜180℃、好ましくは80〜130℃、より好ましくは90〜120℃程度の温度で行われ、溶媒として上記一級アルコールを使用する場合は、通常、80℃〜130℃、好ましくは90〜120℃で行われる。一般に、反応温度が高温であると反応速度は大きいが、反応選択性が低下し、核水素化副生成物である2−シクロヘキシル−2−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、4−イソプロピルシクロヘキサノール、シクロヘキサノール等が生成し易くなる。【0069】反応水素圧力は特に限定されないが、1〜250kg/cm2Gを例示できる。高圧であるほど、反応速度が大きく、生産性が良好であり、核水素化副生成物の2−シクロヘキシル−2−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等の発生量が少ないため、好ましい。好ましい反応水素圧力は10〜200kg/cm2Gである。【0070】反応時間は反応条件により異なる。一般には、水素圧力、反応温度、触媒量等を調整して、例えば、懸濁バッチ方式では、反応時間が1〜12時間となるように、また、連続固定床方式の場合には、空塔線速度が0.5〜2(時間-1)となるようにするのが好ましい。【0071】上記の条件下で水素化反応を行なって得られる反応混合物から、目的とする本発明の水素化ビスフェノールA異性体混合物を単離するには、慣用されている精製処理手段を採用することができる。例えば、反応混合物から、ルテニウム触媒を濾過等の手段により除去し、得られる反応粗物から溶媒及び副生した2−シクロヘキシル−2−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、4−イソプロピルシクロヘキサノール、シクロヘキサノール等の低沸点不純物を、減圧留去、例えば圧力1〜5mmHg程度、温度170〜250℃程度で減圧留去することにより、前記トランス−トランス異性体、シス−トランス異性体及びシス−シス異性体の混合物からなり、トランス−トランス異性体の含有量が三異性体合計量に対して33重量%以下である混合物を高純度で得ることができる。しかし、既述のように、2−シクロヘキシル−2−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等は、完全に除去しなくても良く、若干残留させることにより流動化温度を、より低くすることもできる。【0072】上記不純物を完全に又は不完全に留去した時点では、残留する本発明の水素化ビスフェノールA異性体混合物は、流動状態ないし溶融状態にあり、これを急冷することにより、低い流動化温度を有する無色透明の固体になる。この場合、急冷条件は、一般には、例えば100〜150℃程度の温度で流動状態にある状態から0〜50℃、好ましくは20〜40℃の温度まで、例えば、0.1〜30分間、好ましくは0.1〜10分間で冷却することが推奨される。よって、トランス−トランス異性体含量が三異性体合計量に対して33重量%を超える混合物の溶融物に比べて、流動化物の温度を低く設定でき、また、冷却に要する時間を長くすることができ、工業的に有利である。【0073】本実施形態においては、流動化物の温度を低く設定できるため、次のような利点がある。(1)急冷装置の熱負担が少ない。高温物を急冷する場合は、大量の熱をごく短時間で除去する必要があり、そのため、処理できる対象物の量が少なくなり、生産性が低下する。しかし、本実施形態では、上記流動化の温度を低く設定できるので、比較的大量の流動化物を急冷でき、生産性が向上する。(2)また、水素化ビスフェノールAの溶融物は空気に接触して酸化劣化する。精製工程は、不活性ガス下で行うが、急冷装置では高温で空気と接触する。よって、急冷装置に供給する流動化物の温度が低い本実施形態は、得られる製品の品質の観点からも好ましい。【0074】急冷の具体的方法は上記(I)の場合と同様であり、例えば、金属製容器に注ぎ入れる実験室的方法やフレーカーを使用する工業的方法等が採用できる。【0075】また、このトランス−トランス異性体の含有量が三異性体合計量に対して33重量%以下である混合物は、既述のように、加熱下で結晶を析出することがないので、上記不純物を留去した後、そのまま加熱を続けて、例えば100〜200℃、好ましくは100〜150℃の温度に保持することにより、流動状態を維持することができる。【0076】方法(b)また、上記方法(b)は、トランス−トランス異性体が最も容易に結晶化し易い性質を有することを見出し完成された方法であり、例えば原料水素化ビスフェノールA異性体混合物を上記メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン、酢酸エチル等のエステル、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素等の溶媒に溶解し、溶液を冷却することにより結晶を析出させると、得られる結晶は大部分がトランス−トランス異性体であるため、相対的に、母液中ではシス−シス異性体及びシス−トランス異性体の割合が増大し、トランス−トランス異性体の割合が減少する。【0077】よって、上記再結晶条件を適宜選択することにより、この母液中のトランス−トランス異性体の割合を三異性体合計量に対して33重量%以下とすることができ、こうして得られた母液から溶媒及び必要に応じて不純物を減圧下に留去することにより、目的とするトランス−トランス異性体の割合が三異性体合計量に対して33重量%以下の水素化ビスフェノールA異性体混合物を得ることができる。【0078】減圧留去の条件及び急冷して固体とする際の条件としては、上記方法(a)において記載した条件が使用できる。【0079】また、方法(a)に記載のように、減圧留去完了の時点で流動状態にある本発明のトランス−トランス異性体の含有量が三異性体合計量に対して33重量%以下である水素化ビスフェノールA異性体混合物は、そのまま若干加熱して流動状態を持続させることも可能である。【0080】方法(c)方法(c)は、(i)上記の方法(a)又は(b)によって得たトランス−トランス異性体含有量が低い混合物と(ii)該トランス−トランス異性体含有量が三異性体合計量に対して33重量%を越える混合物とを均一混合して、得られる最終混合物において、トランス−トランス異性体の割合を、三異性体合計量に対して33重量%以下に調整する方法である。【0081】上記均一混合は、例えば、上記(i)と(ii)とを溶融状態ないし流動状態において、撹拌しながら均一となるまで混合することにより、行なうことができるが、その他の方法であっても、均一混合ができる限り採用することができる。【0082】こうして得られた均一混合物を、上記方法(a)と同様に、例えば100〜150℃程度の温度で流動状態にある状態から0〜50℃、好ましくは20〜40℃の温度まで、例えば、0.1〜30分間、好ましくは0.1〜10分間で急冷することが推奨される。急冷の具体的方法は上記(I)の場合と同様であり、例えば、金属製容器に注ぎ入れる実験室的方法やフレーカーを使用する工業的方法等が採用できる。【0083】また、このトランス−トランス異性体の含有量が三異性体合計量に対して33重量%以下である水素化ビスフェノールA異性体混合物は、既述のように、加熱下で結晶を析出することがないので、上記溶融状態ないし流動状態で均一混合した後、そのまま加熱を続けて、例えば100〜200℃、好ましくは100〜150℃の温度に保持することにより、流動状態を維持することもできる。【0084】上記(II)の方法(a)〜(c)により得られるトランス−トランス異性体の割合が三異性体合計量に対して、33重量%以下であり、流動化温度が70℃以下である水素化ビスフェノールA異性体混合物は、工業的に取り扱う際に、若干の昇温操作により液体として、取り扱うことが出来るという利点がある。【0085】本発明の水素化ビスフェノールA異性体混合物は従来から水素化ビスフェノールAが使用されていた各種の用途に使用することができる。【0086】例えば、不飽和ポリエステル樹脂原料、ウレタン樹脂原料、飽和ポリエステル原料、ポリカーボネート原料、エポキシ樹脂原料として使用できる。【0087】また、誘導体として、ポリエステルポリオール、アクリル酸ジエステル、メタクリル酸ジエステル、ジグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加物、プロピレンオキシド付加物、亜燐酸エステルなどの原料として使用できる。【0088】上記の用途のうちでも、不飽和ポリエステル樹脂の製造、ポリエステルポリオールの製造及びウレタン樹脂の製造の用途を具体的に説明する。(A)不飽和ポリエステル樹脂の製造当該不飽和ポリエステル樹脂は、例えば、本発明の水素化ビスフェノールAとグリコールとジカルボン酸とから不飽和ポリエステルを製造し、これにモノマー成分を添加し、得られる混合物を、ラジカル発生剤を触媒とする架橋重合に供して不飽和ポリエステル樹脂となすものである。【0089】上記グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物、ジブロムネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトールジアリルエーテル等を例示できる。【0090】上記ジカルボン酸成分としては、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、無水テトラブロムフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸等を例示できる。【0091】上記モノマー成分として、スチレン、ビニルトルエン、メタクリル酸メチル、ジアリルフタレートとの混合物を製造し、過酸化物やアゾビス化合物等のラジカル発生触媒により架橋重合して不飽和ポリエステル樹脂とする。【0092】また、上記不飽和ポリエステル樹脂は、エポキシ樹脂変性、イソシアナート変性、ジシクロペンタジエン変性、、アクリル変性EVA変性、ゴム変性を行なうことができる。【0093】エポキシ樹脂としては、汎用のビスフェノールAジグリシジルエーテルなどが使用される。イソシアナート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、水添ジフェニルメタンジイソシアナート、イソホロンジイソシアネート、1,3−メチレンシクロヘキサンジイソシアネートなどが使用できる。ゴム変性としては、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ネオプレンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンゴム、スチレン・イソプレン・スチレンゴムなどのゴム類などを使用し、必要な変性が可能である。【0094】これらの不飽和ポリエステル樹脂は、シートモールドコンパウンド(SMC)、バルクモールドコンパウンド(BMC)として有用であり、大理石調樹脂としてバスタブやキッチンウォール、テーブルのトップコート、自動車外板、紫外線透過性樹脂、電子レンジ用食器、塗料などに使用され、特に、大理石調のバスタブ用途に有用である。【0095】(B)ポリエステルポリオール本発明の水素化ビスフェノールA異性体混合物と共用するグリコール成分として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1、3−ブタンジオール、1、4−ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物などがある。【0096】ジカルボン酸成分として無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水コハク酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸等がある。【0097】これらのポリエステルポリオールは、ウレタン樹脂鎖長剤、エポキシ樹脂粉体塗料原料、アクリル樹脂原料に使用される。【0098】(C)ウレタン樹脂本発明の水素化ビスフェノールA異性体混合物及び/又は本発明の水素化ビスフェノールA異性体混合物から得ることができるポリエステルポリオール、及び必要に応じてグリコールを含有する混合物を鎖長剤として、公知のジイシソアナート化合物と反応させて、ウレタン樹脂を製造する。【0099】かかるウレタン樹脂は、高Tg熱可塑性ポリウレタン樹脂、無黄変性ポリウレタン塗料、発泡用樹脂等に使用される。【0100】【発明の効果】本発明の水素化ビスフェノールA異性体組成物ないし水素化ビスフェノールA異性体混合物は、若干の加熱により流動化するので、操作性がよく、工業的に有利である。【0101】これにより、水素化ビスフェノールAの誘導体の製造において、反応溶媒を不要とするか反応溶媒の使用量を減少させるプロセスが可能となる。即ち、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテルの製造において、エピクロルヒドリンを添加する工程において、好ましい反応温度100℃において液体とする為に、従来、キシレンなどの反応溶媒を用いていた。しかし、本発明の水素化ビスフェノールA異性体組成物ないし水素化ビスフェノールA異性体混合物は、当該温度において液状であり、これを原料として使用すると、無溶剤反応が可能となって、生産性が向上する。【0102】また、本発明の水素化ビスフェノールA異性体混合物は、不飽和ポリエステルやポリエステルポリオールの製造において、仕込時から均一液体であるので、反応して得られる分子鎖中の当該水素化ビスフェノールAの偏りがない。【0103】さらに、従来からの水素化ビスフェノールAの用途である不飽和ポリエステル樹脂やウレタン樹脂の中間原料であるポリエステルポリオールの製造において、本発明の水素化ビスフェノールA異性体組成物ないし水素化ビスフェノールA異性体混合物は共用するプロピレングリコールやネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール類に対して、溶解速度が大きく、生産性が向上する。【0104】特に、本発明のトランス−トランス異性体の含有量が三異性体合計量に対して33重量%以下である水素化ビスフェノールA異性体混合物の場合には、プロピレングリコールやネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール類との相溶性に優れている。この為、本発明のトランス−トランス異性体の含有量が当該異性体混合物に対して33重量%以下である水素化ビスフェノールA異性体混合物、及び、該水素化ビスフェノールA異性体混合物に更にプロピレングリコールやネオペンチルグリコールを含有させた混合物を、特別な装置を付帯することなく、パイプ輸送やローリー搬送することが可能となり、工業的に極めて有利なものである。【0105】また、特に、トランス−トランス異性体の含有量が三異性体合計量の33重量%以下である水素化ビスフェノールA異性体混合物は、若干の加熱により流動状態を保持するのみならず、若干加熱して流動状態のまま長期保存しても結晶の析出が実質的に無いので、パイプ輸送やローリー搬送が容易に行える等の点で有利である。【0106】更に、高反応性物質であるイソシアネートや酸クロリド等の低温で反応させることが一般となっている化合物との反応に使用できる。【0107】【実施例】以下、実施例及び比較例を掲げ、本発明を詳しく説明する。実施例及び比較例において、得られた異性体混合物の流動化温度及び融点、各異性体の含有量並びにPG曇点は、以下のようにして測定した。【0108】(1)流動化温度及び融点融点測定器(商品名「微量融点測定器MP−J3」、柳本製作所(株)社製)を用い、昇温速度1℃/分にて水素化ビスフェノールA異性体混合物サンプルを加熱し、目視にて、水素化ビスフェノールAサンプル固体が完全に流動状態となり固体状態が存在しなくなるに至る温度を測定し、この温度を流動化温度として記録した。【0109】また、融解するサンプルについても、上記と同様に、サンプル固体が完全に融解する温度を測定し、これを融点として記録した。【0110】(2)各異性体の含有量ガスクロマトグラフィー(以下「GLC」と略す)により、分析した。【0111】(3)PG曇点水素化ビスフェノールA異性体混合物とプロピレングリコールとを160℃で加熱溶解して、50重量%のプロピレングリコール溶液を調製し、溶解後、毎分1℃で室温まで冷却し、溶液が曇り始めた温度を測定した。この温度が低いほど、水素化ビスフェノールA異性体混合物とグリコールとの相溶性が良好であることを示す。【0112】実施例1500mlの電磁攪拌機付きオートクレーブに、ビスフェノールA100g、プロピレングリコール100g、5%Ruアルミナ触媒(粉末状、商品名「ER−50」、エヌ・イー・ケムキャット社製)4gを仕込み、撹拌しながら、水素圧力100kg/cm2G、反応温度110℃で水素化を行った。反応時間2時間で水素吸収は見られなくなり、さらに、110℃で攪拌を続け、0.5時間熟成反応を行った。【0113】反応混合物中のルテニウム触媒を濾別し、GLCで分析した結果、未反応のビスフェノールAは存在していなかった。【0114】この反応粗物を、窒素雰囲気中で、温度170℃、圧力2mmHgで蒸留トッピングして、溶媒及び2−シクロヘキシル−2−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等の不純物を留去した。【0115】留去完了後、得られた流動化物(温度:約140℃)を、ステンレス製のバット(温度:20℃)に注いで急冷し、本発明の水素化ビスフェノールA異性体組成物(即ち、水素化ビスフェノールA異性体混合物)の透明な固体101gを得た。【0116】この水素化ビスフェノールA異性体組成物は、GLC分析したところ、シス−シス異性体、シス−トランス異性体及びトランス−トランス異性体から実質上なっており、これら三異性体合計量に対して、シス−シス異性体25重量%、シス−トランス異性体50重量%、トランス−トランス異性体25重量%であった。【0117】また、本組成物中の2−シクロヘキシル−2−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンの含量は、三異性体合計量100重量部に対して、0.1重量部であった。また、本組成物の流動化特性については、加熱により、55℃でサンプル固体が変形を始め、流動化温度は58℃であった。また、このもののPG曇点は室温以下であった。【0118】また、上記透明固体を140℃に加熱して流動化させて得た流動化物50gを空気オーブン中110℃で1週間保持した。結晶化は認められず、流動化物は、均一な流動状態を保っていた。【0119】実施例23リットルフラスコに、水素化ビスフェノールA異性体混合物(シス−シス異性体 8重量%、シス−トランス異性体40重量%、トランス−トランス異性体52重量%)100g及びクロロホルム1000gを入れ、加熱還流させて溶解し、冷却して、白色固体を析出させ、析出固体を濾別除去した。【0120】こうして得たクロロホルム溶液(濾液)を、窒素雰囲気中で、常圧下加熱して大部分のクロロホルムを留去し、さらに、温度170℃、圧力2mmHgで蒸留トッピングして、溶媒及び2−シクロヘキシル−2−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等の不純物を留去した。【0121】得られた溶融物(温度:200℃)を、ステンレス製のバット(温度:20℃)に注いで急冷して、本発明の水素化ビスフェノールA異性体組成物(即ち、水素化ビスフェノールA異性体混合物)の透明な固体60gを得た。【0122】この水素化ビスフェノールA異性体組成物は、GLC分析したところ、シス−シス異性体、シス−トランス異性体及びトランス−トランス異性体から実質上なっており、これら三異性体合計量に対して、シス−シス異性体12重量%、シス−トランス異性体56重量%、トランス−トランス異性体32重量%であった。【0123】また、本組成物中の2−シクロヘキシル−2−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンの含量は、三異性体合計量100重量部に対して、0.1重量部であった。また、本組成物の流動化特性については、加熱により、58℃でサンプル固体が変形を始め、流動化温度は64℃であった。また、このもののPG曇点は33℃であった。【0124】実施例3実施例2で使用した原料水素化ビスフェノールA異性体混合物100gを200℃に加熱して溶融し、さらに、窒素雰囲気中で、温度200℃、圧力2mmHgで蒸留トッピングして、2−シクロヘキシル−2−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等不純物を留去した。【0125】この溶融物(温度:200℃)を、ステンレス製のバット(温度:20℃)に注いで急冷して、本発明の水素化ビスフェノールAの透明な固体90gを得た。【0126】この水素化ビスフェノールAは、GLC分析したところ、シス−シス異性体、シス−トランス異性体及びトランス−トランス異性体から実質上なっており、これら三異性体合計量に対して、シス−シス異性体8重量%、シス−トランス異性体40重量%、トランス−トランス異性体52重量%であった。また、本組成物中の2−シクロヘキシル−2−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンの含量は、三異性体合計量100重量部に対して、0.1重量部であった。【0127】また、本組成物の流動化特性については、加熱により、58℃でサンプル固体が変形を始め、流動化温度は64℃であった。このもののPG曇点は95℃であった。【0128】実施例4反応溶媒として、プロピレングリコール100gに代えて、n−ブタノール100gを使用した以外は実施例1と同様な操作を行い、 水素化ビスフェノールA異性体組成物100g(モル収率95%)を透明な固体として得た。反応時間4時間で水素吸収が見られなくなり、このものの反応粗物のGLC分析において、未反応ビスフェノールAは存在していなかった。【0129】この水素化ビスフェノールA異性体組成物は、GLC分析したところ、シス−シス異性体、シス−トランス異性体、トランス−トランス異性体から実質的になっており、これら三異性体合計量に対して、シス−シス異性体25重量%、シス−トランス異性体50重量%、トランス−トランス異性体25重量%であった。また、本組成物中の2−シクロヘキシル−2−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンの含量は、三異性体合計量100重量部に対して、0.1重量部であった。また、本組成物の流動化特性については、加熱により、55℃でサンプル固体が変形を始め、流動化温度は58℃であった。また、このもののPG曇点は室温以下であった。【0130】また、上記透明固体を140℃に加熱して流動化させて得た流動化物50gを、空気オーブン中110℃で1週間保持した。結晶化は認められず、流動化物は、均一な流動状態を保っていた。 水素化ビスフェノールAのトランス−トランス異性体、トランス−シス異性体及びシス−シス異性体を含み、固体状態で加熱した場合に、流動状態へ変化し終わり、固体状態が認められなくなる温度が70℃以下であることを特徴とする水素化ビスフェノールA異性体組成物。 水素化ビスフェノールAのトランス−トランス異性体、トランス−シス異性体及びシス−シス異性体を含み、これら異性体の合計量に対して、該トランス−トランス異性体が33重量%以下の量で存在しており、固体状態で加熱した場合に、流動状態へ変化し終わり、固体状態が認められなくなる温度が70℃以下である水素化ビスフェノールA異性体組成物。 水素化ビスフェノールAのトランス−トランス異性体、トランス−シス異性体及びシス−シス異性体を含み、これら異性体の合計量に対して、(a)トランス−トランス異性体が15〜33重量%(b)トランス−シス異性体が40〜75重量%(c)シス−シス異性体が10〜45重量%の量で存在することを特徴とする請求項2に記載の水素化ビスフェノールA異性体組成物。 水素化ビスフェノールAのトランス−トランス異性体、トランス−シス異性体及びシス−シス異性体を含み、これら異性体の合計量に対して、該トランス−トランス異性体が33重量%以下の量で存在しており、100〜150℃で流動状態にある水素化ビスフェノールA異性体組成物。 水素化ビスフェノールAのトランス−トランス異性体、トランス−シス異性体及びシス−シス異性体を含み、これら異性体の合計量に対して、(a)トランス−トランス異性体が15〜33重量%(b)トランス−シス異性体が40〜75重量%(c)シス−シス異性体が10〜45重量%の量で存在しており、100〜150℃で流動状態にある水素化ビスフェノールA異性体組成物。 (i)水素化ビスフェノールAの異性体混合物を加熱して流動化又は溶融して流動物又は溶融物とする工程、及び(ii)該流動化物又は溶融物を急冷して固体にする工程を包含する請求項1に記載の水素化ビスフェノールA異性体組成物の製造方法。 (i)一般式HO−(AO)m−H (4)[式中、Aは炭素数1〜5の直鎖又は分枝のアルキレン基を示し、mは1〜4の整数を示す。但し、Aがネオペンチレン基の場合、mは1を示す。]で表されるグリコール及び一般式R1O−(CH2CH2O)n−H (5)[式中、R1は、炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは1〜4の整数を示す。]で表されるグリコールエーテルからなる群から選ばれた少なくとも1種の溶媒中、ルテニウム触媒の存在下に、反応温度80〜180℃の温度でビスフェノールAを接触水素化して流動状態にある水素化ビスフェノールA異性体混合物を得る工程、及び(ii)得られた流動状態にある水素化ビスフェノールA異性体混合物を急冷して固体にする工程を包含する請求項2又は3に記載の水素化ビスフェノールA異性体組成物の製造法。 溶媒が、プロピレングリコールである請求項7に記載の製造法。 (i)飽和脂肪族一級アルコール中で、ルテニウム触媒の存在下に、反応温度80〜130℃の温度でビスフェノールAを接触水素化して流動状態にある水素化ビスフェノールA異性体混合物を得る工程、及び(ii)得られた流動状態にある水素化ビスフェノールA異性体混合物を急冷して固体とする工程を包含する請求項2又は3に記載の水素化ビスフェノールA異性体組成物の製造法。