タイトル: | 特許公報(B2)_バニリンの製造法 |
出願番号: | 1998170406 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C12P 7/24,C12R 1/465 |
アンドレアス ミュハイム ブルーノ ミューラー トーマス ミュンヒ マークス ウェトリ JP 4359349 特許公報(B2) 20090814 1998170406 19980618 バニリンの製造法 ジボーダン ソシエテ アノニム 591040281 浅村 皓 100066692 浅村 肇 100072040 長沼 暉夫 100088926 アンドレアス ミュハイム ブルーノ ミューラー トーマス ミュンヒ マークス ウェトリ EP 97110010.2 19970619 20091104 C12P 7/24 20060101AFI20091015BHJP C12R 1/465 20060101ALN20091015BHJP JPC12P7/24C12P7/24C12R1:465 C12P 7/00-7/66 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) CA/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) 欧州特許第00761817(EP,B1) 国際公開第96/008576(WO,A1) 特開平05−227980(JP,A) 特開平05−244965(JP,A) Canadian Journal of Microbiology, 1983, Vol.29, p.1253-1257 Journal of Biotechnology, 1994, Vol.37, p.123-132 Flavour Science Recent Developments, 1996, Vol.197, p.111-117 18 ATCC 39116 1999069990 19990316 10 20050519 引地 進 【0001】【発明の属する技術分野】本発明はフェルラ酸から微生物学的方法でバニリンを製造する方法に関する。本発明の方法は、Actinomycetales 目の細菌、好ましくはStreptomycetaceae 科細菌の培養液、好ましくは深部培養液を、フェルラ酸基質と共にインキュベートし、発酵によりバニリンを製造することを特徴としている。生成物のバニリンは、分析的にも官能的にも精製された製品バニリン並びに価値ある発酵副生物、特に副生グアイアコール、に分離して回収が可能なように設計された抽出法により、発酵液から回収される。【0002】【従来の技術】芳香性化合物の使用において、芳香性化合物が”天然物”として設計されることがますます重要になってきている。このことは、ヨーロッパ及び米国規制では、芳香性化合物は物理的、酵素的又は微生物学的方法で、また、植物及び動物起源の材料から得られなければならないことを意味している。ここ10年間の多様な研究動向を概観すると、再生産可能で、廉価な天然原料を用いて、発酵によりバニリンを製造することに焦点があてられている。しかしながら、今までの刊行物及び特許では、商業的に魅力ある方法での大量生産は、ほとんど報告されていない。グアイアコールはフェノール性スモーキー分子で、バニリン抽出物特有の香りに著しく寄与している。そのため、しばしば、バニラ型香料でバニリンと組み合わせて使用されている。しかしながら、天然グアイアコールの発酵製造は、いまだ報告されていない。【0003】ここ10年間で、バニリンの微生物的又は酵素的製造に関する特許出願が幾つかなされている。一般的には、適当な前駆体を微生物または酵素によりバニリンに変換することが行われている。そこで使用される前駆体としてオイゲノール、イソオイゲノール、フェルラ酸、クルクミン又はベンゾエシアム樹脂が例示されている。しかしながら、通常、その変換収率は極めて低い。【0004】例えば、Haarman & ReimerのEP 0405197A1では、微生物Serratia、Klebsiella又はEnterobacterを用いて0.2g/Lのオイゲノールから18mg/Lの製品を得ることがクレームされているが、この変換には、13日間も要していた。Pernod-Ricard のEP 453368Aでは、フェルラ酸から、6日間以内のピクノポーラス発酵で46mg/Lのバニリンを得ることがクレームされている。同様にKraft General Foods のUS5,128,253 では、フェルラ酸から54日以内で210mg/L のバニリンを得ることがクレームされている。この値を得るためには還元剤を添加する必要があり、さもなければ、バニリンの生成は起こらず、バニリン酸が生成してしまう。【0005】Takasagoの JP 227980/1993 では、バニリン分解経路に対してブロックされた突然変異Pseudomonas 菌株を調製し、それにより、1g/Lのフェルラ酸から0.28g/L のバニリンを得ている。発酵法での経済的に魅力あるバニリンの大量生産法を記述した唯一の特許出願が最近Haarman & Reimerの EP 0761817A2 でなされている。その中で発明者らはAmycolatopsis 属の二菌株が、フェルラ酸食餌後の発酵培養液中に、バニリンを11.5g/L まで蓄積することを見いだしている。【0006】結論としては、微生物系では大量のバニリンを容易に生成させることはできないと言えるが、これは1g/L濃度以上ではバニリン生成菌の生長が妨げる、バニリンの細胞毒性に主に起因している。微生物系では、通常は、バニリンは見いだされず、それぞれのアルコール又は酸が見いだされる。このバニリンの細胞毒効果は、特定酵素類(Quest, EP 0542348 A2)を用いることで克服でき、lipoxygenaseでイソオイゲノールを処理すると、10〜15g/L のバニリンが10〜15%収率で得られる。また、オイゲノールを用いた時には、非常に低濃度(0.3〜0.5g/L、 収率0.3 〜0.5 %) でバニリンが得られたが、フェルラ酸を用いた時には全くそれが得られなかった。また、lipoxygenaseを用いる前記方法は経済性の面からは魅力的方法とは言い難い。【0007】バニリンの細胞毒性を克服する他の手段として、加熱処理でバニリンが生成するコニフェリルアルデヒドを微生物で生産する方法が挙げられる(BASF ,公開特許 DE 3604874 A1 参照) 。バニリンが1g/L濃度で蓄積したとされる、最近のOrsan の特許出願(WO 96/34971) の固定化細胞系でも同様方法が採用されている。この固定化バイオマスを用いる方法の経済的利点として、そこで使用した生物触媒をリサイクルできることが挙げられる。【0008】多数の報告で、オイゲノール、イソオイゲノール又はフェルラ酸から出発するそれぞれの代謝経路が取り扱われているが、一般的には、バニリンがこれら化合物の分解経路の中間体と考えられている。フェルラ酸の分解系にバニリンが関与していることを示す二つの刊行物を列挙引用できる。【0009】Toms and Wood,Biochemistry 9(1970) 337 - 343、では、Pseudomonas sp. をフェルラ酸と共に培養し、その分解経路を明らかにしている。培養液上澄み液中にはバニリンが見いだされなかったが、バニリン酸を見いだしたことより、バニリンが中間体である証拠を得ている。また、フェルラ酸から出発して、Streptomyces setoniiの培養で、バニリンが得られている(Sutherland et al., Can. J.Microbiol. 29(1983) 1253 - 57) が、量としての生成の兆候は得られなかったが、繰り返し実験を行った時に痕跡だけその生成が見いだされた。【0010】生物変換用基質としてのフェルラ酸は種々の天然物から豊富に得られ、利用できる。この酸は、木、甜菜糖蜜、トウモロコシ糠、米及び種々のタイプの草等の、植物材料中にグルコシドの形でしばしば存在する。フェルラ酸はこれら産物中の対応するグリコシドを、良く知られた加水分解法、例えば酵素法などで分解することで得られ、粗原料又は精製原料として用いられる。英国文献の GB 2301103 A1では、フェルラ酸含有植物材料をフェルラ酸エステラーゼで酵素的に分解し、遊離酸を得る例を記述している。【0011】【発明が解決しようとする課題】本発明は、微生物学的方法で高収率でバニリンを製造する方法を提供することを目的としている。【0012】【課題を解決するための手段】新規で、かつ、高収率でバニリンを生産する本発明の微生物学的方法は、最初に栄養素入り培養液でActinomycetales 目の微生物、好ましくはStreptomycetaceae 科、特に好ましくは細菌のStreptomyces setoniiを、好ましくは約5 〜40時間、炭素源グルコースが(ほとんど)消費されるまで培養し、しかる後、基質のフェルラ酸を発酵液中濃度が5 〜40g/L の範囲になるように連続的もしくはバッチ的に加えることを含む。約5 〜50時間のインキュベーション(生物変換)の後、基質のバニリンへの変換及び何種類かの副生物への変換は完結する。【0013】この時点でフェルラ酸は完全に消費され、発酵液中にはバニリンが約8 〜16g/L蓄積している。このフェルラ酸の生物変換での代表的副生物は、バニルアルコール、バニル酸、グアイアコール、p ‐ビニルグアイアコール及び2 ‐メトキシ‐4 ‐エチルフェノールである。【0014】引き続いて、バイオマスの除去、適当な有機溶媒、好ましくはメチル‐t ‐ブチルエーテルを用いての二段階抽出で、生成物の回収が行われる。第一段階の抽出は、水相pH> 約9 、好ましくはpH10〜約11で行われ、官能的に高活性グアイアコールなどの副生物が選択的に抽出される。【0015】しかる後、水相抽出残液を中性pH値まで「酸性化」し、生成物バニリンを選択的に抽出する。粗バニリン抽出物の精製は、最終的には、良く知られた再結晶化法で行われる。グアイアコールは粗抽出液の蒸留で精製される。【0016】以下の図で示される生化学的反応経路に従ったフェルラ酸からの天然バニリン並びに副生物を生産する、前述してきた微生物学的方法及び抽出操作は経済的に魅力ある方法である。Streptomyces setonii によるフェルラ酸分解経路【0017】【化1】【0018】得られたバニリン(化合物2)並びに副生物グアイアコール(化合物3)は、両方とも、既知の芳香性化合物で、それらの用途及び応用は当業者には既知である。これら化合物を効率的かつ量的にバランス良く使用することで、飲料、酪産物、ベーカリー製品、アイスクリームなどの芳香性消費材の官能特性を向上および増大させることができる。発酵法で生産されたバニリンとグアイアコールは、特に、全成分が天然成分であることが要求されるバニラ型及び果実芳香性組成物において特に価値がある。【0019】【発明実施の形態】上述してきたように、本発明者らは、官能的及び分析的に精製されたバニリンを高収率生産でき、同時にハイ‐インパクトな芳香化合物のグアイアコールを副生物として得ることが可能な効率的生成物回収法と組み合わせた厳密な発酵条件を見いだした。これら条件は、適当な培養媒体中でStreptomyces属細菌を培養し、引き続いて、基質フェルラ酸を過剰濃度、例えば5 〜40g/L 、 で添加し、バニリンを発酵液中で高容量収率で得ることに基づいている。【0020】先に指摘したように、最適の菌株はStreptomyces setonii菌株であり、好ましくは商業的に利用できるATCC 39116菌株である。基質のフェルラ酸は式(1) で定義したものであり、本発明の新規な方法では、好ましくは10%以上のフェルラ酸含量を有するフェルラ酸原料が基質として用いられる。フェルラ酸原料における、フェルラ酸以外の残余物質の性質は、該原料に依存する。【0021】本発明の実施において、細菌の培養は、通常の栄養素を含む水性媒体中で行われる。最適の培養媒体には、炭素源、有機もしくは無機の窒素源、無機塩及び成長因子が含まれている。培養媒体には炭素源として、濃度5 〜50g/L 、 さらに好ましくは20〜35g/L のグルコースの使用が適している。また、約2 〜20g/L 、 特に好ましくは5 〜10g/L 濃度の酵母抽出物が窒素、りん酸塩、成長因子及び極微量元素源として適している。さらに、マグネシウムイオン、例えば硫酸マグネシウムなど、が約0.1 〜5g/L、 好ましくは約0.5 〜1g/L濃度で添加可能である。【0022】バイオリアクター中でこの培養液を調製、殺菌し、しかる後、成長フェーズを開始させることを目的として、Streptomyces菌株でインキュベートする。成長フェーズの適当期間は約5 〜40時間、好ましくは15〜35時間、特に好ましくは約20〜30時間である。【0023】他のプロセス条件の詳細pH範囲 : 約7 〜9温度範囲 : 約30〜約45℃エアレーション : この好気性プロセスには好ましい。攪拌 : 好ましい。【0024】成長フェーズの停止後、基質のフェルラ酸を培養液に加えるが、その適当な添加量は発酵液に対して5 〜40g/L 、 好ましくは約15〜30g/L 、 特に好ましくは20〜25g/L である。この基質は固体のまま、もしくは水溶液又は懸濁液として添加される。基質の全添加量は、一段階、二段階もしくは多段階、もしくは連続的に加えられる。【0025】生物変換フェーズは基質供給の開始と共に開始され、全ての基質が生成物及び副生物に変換されるまで、約5 〜50時間、好ましくは10〜30時間、特に好ましくは15〜25時間、続けられる。基質フェルラ酸の転化が停止後バニリンの高容量収率が観察されたことから、供給フェルラ酸の過剰濃度が、バニリンの高容量収率に主に影響していると考えられ、さらに、先に概要したプロセス条件が、有用材のグアイアコールの蓄積にも影響していると考えられる。【0026】生物変換フェーズの停止後、遠心分離又は膜ろ過等の既知の方法で、発酵液からバイオマスを分離し、無細胞発酵液を得る。【0027】この生物変換で親水性基質のフェルラ酸が疎水性のバニリンやグアイアコールに変換されるので、発酵系での全容積生産性は、 in situ 生成物回収法を採用することで向上できる。これを目的として、例えば水非混合性有機溶媒、植物オイル又は固体抽出剤、例えば樹脂、好ましくはAmberlite XAD 又はXAD 7 等の中性樹脂、の抽出相を発酵液に加えることができる。このようなin situ 生成物回収法を採用することで、水への溶解濃度に達した後までもバニリン及びグアイアコールの継続生産が可能となる。【0028】この発酵液から、バニリン及び副生物を二種類の異なる抽出法で選択的に抽出可能であり、a)連続的液‐液抽出又はb)バッチ的抽出がこのプロセスには適している。【0029】a)pH値依存抽出に基づいて、バニリン及びグアイアコールの効率的単離が遂行できる。第一段階で、グアイアコールを発酵液から抽出する。この段階の抽出には、水非混合性有機溶媒による抽出器内での向流抽出法を使用するのが好ましい。溶媒例としてC1-3の酸のC1-4アルコールとのエステル、エーテル類、特にメチル‐t ‐ブチルエーテル(MTBE)が挙げられる。pHは好ましくは10〜11、 特にpH10.8〜11の範囲が適している。【0030】バニリンはグアイアコールの抽出水性残液から、pH約5 〜約8 、好ましくは約6 〜約7.5 、特に好ましくは約6.9 〜約7.1 で抽出される。バニリン濃度が約8 〜16g/L の場合、向流抽出操作は供給液/溶媒比が2.5 ‐3:1 、特に、2.6:1が最も適している。【0031】b)高い水相バニリン濃度の時、例えば水蒸発で発酵液を濃縮した時などは、異なるpH値での、前記した溶媒による対応する二段階バッチ抽出が適している。【0032】【発明の効果】本発明の新規プロセスの利点を次のように要約できる。(1)Streptomyces 、例えばS.setonii の発酵液中のバニリン蓄積量を経済的に魅力的な濃度(約8 〜16g/L)にまでできる発酵条件を利用できる。(2) この方法では、バニリンとグアイアコール、すなわち天然香料調製で価値の高い二種類の産品、の同時生産が可能である。(3) この発酵方法は技術的には複雑でなく、容易に入手可能な原料から得られる製造原料を使用できる。【0033】最後に、本発明はまた、Streptomyces setonii ATCC39116の代わりに、その酵素又はバニリン及び/又はグアイアコールの細胞性生合成に関連しているか又は関与している酵素をコードする遺伝子学的物質を含む組み替え微生物、例えば酵母、を使用し、先に述べてきたような微生物を用いない、バニリン製造用の新規方法にも関する。【0034】【実施例】例1以下の組成の媒体50mLが入った250mL 振とうフラスコを準備し、そのpHをNaOHで7.2 に調整した。スクロース 103 g/LNa2 HPO4 4 g/LKH2 PO4 1 g/L酵母エキス 1 g/LNaCl 0.2 g/LMgSO4 0.2 g/LCaCl2 0.05 g/L【0035】この振とうフラスコに、2mL の前培養されたStreptomyces setonii ATCC 39116 を接種し、37 ℃、190rpm で16時間、培養を行った。成長フェーズ終了時に0.3gのフェルラ酸(Aldrich社から購入、cat.no 12.870 - 8, 99%) を、培養液に加えた。この操作を行うにあたり、10%w/w 酸基質/0.5M NaOH溶液( 最終pHは約7.2)を前もって調製し、無菌ろ過した。【0036】フラスコを再度37℃、190rpm でインキュベートし、 生物変換(インキュベーション)を31.5時間行ったところ、バニリン濃度は3.10g/L(HPLC) に達した。分子収率は66mol %であった。【0037】例2250mL 振とうフラスコを準備し、例1 と同様にインキュベートした。16時間の成長フェーズ後、0.6gのフェルラ酸(10w/w溶液/0.5M NaOH)を培養液に加え、フラスコを再度、37℃、190rpmでインキュベートした。78時間の生物変換後、バニリン濃度は5.94g/L(HPLC) に達した。分子収率は63mol %であった。【0038】例3250mL 振とうフラスコを準備し、例1 と同様にインキュベートした。18時間の成長フェーズ後、0.3gのフェルラ酸(10w/w溶液/0.5M NaOH)を培養液に加え、フラスコを再度、37℃、190rpmでインキュベートした。28時間後に二回目のフェルラ酸0.3g供給を行った。インキュベーション終了時(58 時間) 、バニリン濃度は6.41g/L(HPLC) に達した。分子収率は68mol %であった。【0039】例4Streptomyces setoniiの前培養液を振とうフラスコ中で、pH7.2 、37℃、190rpmの条件下、24時間、成育した。この振とうフラスコ内媒体は、グルコース 5 g/LNa2HPO4 4 g/LKH2PO4 1 g/L酵母エキス 10 g/LMgSO4 0.2 g/Lであった。【0040】32g/L のグルコース、8g/Lの酵母エキス、0.8g/LのMgSO4 及び0.2g/Lの消泡剤(Dow Corning AF 1520) を含む10L の媒体で、バイオリアクターを満たし、熱殺菌後、前述した振とうフラスコ内で成育した前培養液を接種した。使用した接種液量は3 %であった。プロセス条件を、37℃、pH7.2 、空気流速1.0vvm、800rpm、として24時間インキュベートした。成長フェーズ終了後の残留グルコース濃度は4.6g/Lであった。【0041】引き続いて、NaOH(30%) でpHを8.5 にし、接種24.5時間後で、10%w/w フェルラ酸0.5M NaOH 溶液2.25L を発酵液に添加した。供給時点で、グルコース濃度は4.0g/Lに低下した。前駆体添加3 〜4 時間後に、フェルラ酸のバニリンへの生物変換開始が観察された。前駆体供給17時間後、GC測定で発酵液中に13.9g/L のバニリンと0.4g/Lのグアイアコールが存在することを確認した。この時点で、フェルラ酸は完全に変換されていた。バニリン収率は75mol %であった。【0042】バイオプロセスを80℃、15 分間の条件で殺菌して停止させ、しかる後、発酵液をミクロフィルター(0.2μm)でろ過した。【0043】例5実動容積340Lの450Lバイオリアクターを、前述した操作に従って運転した。26.5時間の成長フェーズ後、pHを8.5 に調整し、例4 に従って、一回目のフェルラ酸供給(4.08kg)を行った。その時点での残留グルコース濃度は7.5g/Lであった。1時間後に二回目のフェルラ酸供給(3.57kg)を行った。全フェルラ酸供給量は22.5g/L であった。一回目の前駆体供給25.5時間後に、バニリン濃度は9.0g/L、 フェルラ酸濃度は1.75g/L になった。バニリン収率は51mol %であった。【0044】例6工業規模でのバニリンとグアイアコールの液‐液向流抽出7.1g/L バニリンと0.35g/L のグアイアコールを含む7930kgの無細胞、膜ろ過済み発酵液をNaOHでpH11に調整し、攪拌向流抽出器中で、最初に溶媒としてMTBEを用いて、グアイアコールを分離した。MTBE蒸発後、MTBEと33%w/w グアイアコールを含む8kg の粗抽出物を得た。このアルカリ抽出の水性抽出残液pHを塩酸で6.9 〜7.1 に調整し、MTBEを溶媒として同じ抽出器中で、バニリンの抽出を行った。この第二抽出段階から、MTBEと37%w/w バニリンを含む150kg の粗抽出物を得た。【図面の簡単な説明】【図1】図1はバニリンとグアイアコールの生成を示し、10L 規模でのバニリン生産バッチの代表的チャートである。図1に示した方法では、24時間の成長フェーズ後、フェルラ酸を供給する前に、pHを8.5 に調整した。基質添加3 〜4 時間で少量のバニリンが検出された。合計41時間の発酵後( フェルラ酸供給17時間後) 、バニリン濃度は13.9g/L に達した。その時点でのグアイアコール濃度は0.38g/L であった。生産速度はバニリンが1.10g/L/h 、 グアイアコールが0.04g/L/h であった。フェルラ酸が完全に変換された後、バニリンとグアイアコールの濃度減少が観察された。定量的測定はHPLC及びGCで行った。 バニリンの製造法であって、 a)Streptomyces属に属する細菌を培養して、発酵液を形成し、 b)基質フェルラ酸を該発酵液に加えて、5g/Lから40g/Lのフェルラ酸濃度を与えることにより、フェルラ酸を生体内変換に供してバニリンを生成させ、バイオマスを該発酵液から分離し、 c)該バニリンを、発酵液から抽出する ことを特徴とするバニリンの製造法。 前記発酵液から更にグアイアコールを抽出する、請求項1に記載の方法。 工程a)の培養を、5から40時間行って、前記発酵液を形成し、その後、前記発酵液のpHを約8.5に調製して、工程b)の生体内変換を5〜50時間行う、請求項1又は2に記載の方法。 工程b)において、15g/Lから30g/Lのフェルラ酸濃度を有する発酵液を形成する、請求項1から3の何れか1項に記載の方法。 工程b)において、20g/Lから25g/Lのフェルラ酸濃度を有する発酵液を形成する、請求項1から3の何れか1項に記載の方法。 前記フェルラ酸を、細菌増殖段階の停止後に添加する、請求項1から3の何れか1項に記載の方法。 前記細菌を、グルコース、酵母抽出液、及びマグネシウムイオンから選択される、1以上の成分を含む培地で培養する、請求項1から3の何れか1項に記載の方法。 工程a)を、pH7からpH9で行う、請求項1から3の何れか1項に記載の方法。 工程a)を、30〜45℃で行う、請求項1から3の何れか1項に記載の方法。 工程a)が、撹拌を含む、請求項1から3の何れか1項に記載の方法。 前記生体内変換を、10から30時間行う、請求項1から3の何れか1項に記載の方法。 前記生体内変換を、15から25時間行う、請求項11に記載の方法。 工程c)において、最初に、発酵液のpHを9より高くし、有機溶媒を使用してグアイアコールを抽出する、請求項1〜12の何れか1項に記載の方法。 グアイアコールを抽出後、前記発酵液のpHを5〜8にし、バニリンを有機溶媒により抽出する、請求項13に記載の方法。 前記発酵液のpHを6〜7.5にする、請求項14に記載の方法。 前記有機溶媒が、メチル−tert−ブチルエーテルである、請求項13又は14に記載の方法。 前記細菌が、Streptomyces setoniiに属する、請求項1〜16の何れか1項に記載の方法。 前記細菌が、Streptomyces setoniiATCC39116である請求項17に記載の方法。