生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_チオグリコール酸又はその塩の製造法
出願番号:1998166179
年次:2008
IPC分類:C07C 323/52,C07C 319/02,C07B 61/00


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田鹿 治美 原野 嘉行 JP 4169136 特許公報(B2) 20080815 1998166179 19980529 チオグリコール酸又はその塩の製造法 ダイセル化学工業株式会社 000002901 後藤 幸久 100101362 田鹿 治美 原野 嘉行 20081022 C07C 323/52 20060101AFI20081002BHJP C07C 319/02 20060101ALI20081002BHJP C07B 61/00 20060101ALN20081002BHJP JPC07C323/52C07C319/02C07B61/00 300 C07C 323/00 C07C 319/00 CAplus(STN) REGISTRY(STN) 特開平03−130257(JP,A) 特開平09−176110(JP,A) 特開平02−072155(JP,A) 特開昭61−118358(JP,A) 1 1999343278 19991214 7 20050422 前田 憲彦 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、チオグリコール酸縮合物を加水分解してチオグリコール酸又はその塩を製造する方法に関する。チオグリコール酸は、化粧品工業においてパーマネント溶剤用として広く用いられている。また、多くの有機化合物の原料の一つとしても有用であり、さらに、塩化ビニル樹脂などの安定化剤としても利用されている。【0002】【従来の技術】チオグリコール酸の製造方法として、これまで種々の方法が提案されてきた。例えば、カリウスはモノクロロ酢酸と硫化水素カリウムとを反応させることによりチオグリコール酸を製造している[Ann. (1862), 124, 43]。この方法は、チオグリコール酸の工業的製造法の基本となるものである。その後、反応での選択性および収率の向上を図るために、応用研究がなされている。例えば、ツエンゲルらは、原料水溶液中の原料濃度が高くても、高収率でチオグリコール酸が得られることを見出した(特開昭50−71622号公報)。このように、反応における検討はこれまで比較的多く実施されてきたものの、チオグリコール酸の精製法については、さほど多くの検討はなされていない。【0003】チオグリコール酸の一般的な精製方法として、反応で生成したチオグリコール酸の塩を硫酸により遊離化し、次いでジイソプロピルエーテルなどの溶剤で抽出し、最後にその溶剤を蒸発させ、残渣としてチオグリコール酸を得る方法が知られている。木村らは、上記抽出溶媒によりチオグリコール酸を抽出した後、その溶剤を蒸発除去する際の操作方法に関して検討を行い、抽出溶剤を蒸発させる際に水分を共存させることにより、チオグリコール酸縮合物の生成が抑制されることを見出している(特開平2−72155号公報)。しかし、チオグリコール酸は、化粧品分野およびポリマー添加剤として使用されており、高純度の品質が要求される。したがって、上記方法で得られる溶剤蒸発後の残渣にはタール分などの高沸分が含まれているため、そのまま製品として使用することはできない。【0004】そこで、チオグリコール酸自身を何らかの方法により蒸発させ、この高沸分を除去する必要がある。ここで問題となるのが、チオグリコール酸の熱不安定性である。すなわち、チオグリコール酸は、分子内に−SHおよび−COOHの両方の官能基を有しており、そのため、下記式(1)及び(2)【化1】(式中、nは2以上の整数を示す)【化2】に示されるように、分子間自己縮合を起こしやすい。例えば、特公平7−59489号公報には、一般にチオグリコール酸を蒸留する方法では、チオグリコール酸の脱水縮合物が蒸留残分として多量に残ることが記載されている。【0005】この自己縮合反応は、温度が高温であればあるほど顕著となるが、室温であっても徐々に進行する。このように、チオグリコール酸の自己縮合には温度依存性があることから、真空度を上げ、少しでも低温で蒸発が可能なようにすることはもちろんのこと、熱履歴を低減できる蒸発器(例えば、薄膜式蒸発器等)を選定することも重要である。しかし、抽出溶剤留去後のチオグリコール酸残渣を蒸発させてチオグリコール酸を留出させる際、前記自己縮合物の副生を完全に抑えることは不可能であり、副生した縮合物はチオグリコール酸蒸発後の残渣として、産業廃棄物等として廃棄せざるを得なかった。【0006】前記特公平7−59489号公報には、チオグリコール酸若しくはその水溶液又はチオグリコール酸塩の水溶液を減圧下で水蒸気蒸留して、脱臭チオグリコール酸若しくはその塩を含有するパーマネントウェーブ剤を得る方法が開示されている。この方法によれば、温度を低くできるので、精製時におけるチオグリコール酸の自己縮合をある程度抑制できる。しかし、この方法では、得られるチオグリコール酸に水分が含まれており、用途がパーマネントウェーブ剤に限定される。また、水蒸気蒸留であることから、製造能力の低下は避けられない。さらに、前記のように、チオグリコール酸の自己縮合物の副生を完全に抑制することは困難である。【0007】【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の目的は、チオグリコール酸の自己縮合物を工業的に有効に利用できる方法を提供することにある。本発明の他の目的は、チオグリコール酸の製造プロセス全体におけるチオグリコール酸の収率を向上し、チオグリコール酸の製造コストを低減できる方法を提供することにある。【0008】【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、チオグリコール酸の自己縮合物を特定成分の存在下で加水分解すると、チオグリコール酸が良好な収率で生成することを見いだし、本発明を完成した。【0009】 すなわち、本発明のチオグリコール酸又はその塩の製造法では、チオグリコール酸精製工程の蒸留残渣として得られるチオグリコール酸縮合物を、チオグリコール酸縮合物に対して、1〜3当量倍(但し、チオグリコール酸縮合物が、下記式(3)で表される化合物とアルカリとの塩を含む場合には、このような塩に対応するアルカリの量も前記アルカリ使用量に加算するものとする。また、加水分解に付す被処理物中に、遊離のチオグリコール酸が含まれている場合には、該チオグリコール酸を対応する塩に変換するためのアルカリが別に必要となる)のアルカリ、又はチオグリコール酸縮合物に対して0.01〜1当量倍(但し、チオグリコール酸縮合物が、下記式(3)で表される化合物とアルカリとの塩を含む場合には、このような塩を遊離化するのに必要な量の酸が別に必要である。また、加水分解に付す被処理物中に、チオグリコール酸とアルカリとの塩が含まれている場合にも、該チオグリコール酸の塩を遊離化するための酸を別途必要とする)の酸の存在下、40〜90℃の温度で加水分解する。 H−(S−CH2−CO)n−OH (3)【0010】【発明の実施の形態】前記チオグリコール酸縮合物には、下記式(3)【化3】(式中、nは2以上の整数を示す)で表される鎖状縮合物又はその塩、及び式(4)【化4】で表される環状縮合物(シクロマー)が含まれる。【0011】前記nは、2以上の整数であればよいが、通常2〜10、特に2〜4程度である。前記鎖状縮合物の塩としては、特に限定されず、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩などが挙げられる。チオグリコール酸縮合物は、単一化合物であってもよく、2種以上の混合物であってもよい。【0012】 チオグリコール酸縮合物は、チオグリコール酸精製工程の蒸留残渣として得られる。【0013】本発明では、アルカリ又は酸を加水分解促進剤として使用する。前記アルカリとしては、水溶液中でアルカリ性を示す物質であればよく、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩、及びアンモニアなどの無機塩基;トリエチルアミンなどの有機塩基などが挙げられる。好ましいアルカリには、無機塩基、特に水溶性の無機塩基、例えばアルカリ金属水酸化物などが含まれる。なかでも水酸化ナトリウムなどが好ましい。アルカリは、単独で又は2種以上混合して使用できる。【0014】前記酸としては、塩酸、塩化水素、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などのスルホン酸類;酢酸などのカルボン酸;陽イオン交換樹脂などが挙げられる。好ましい酸には、強酸、特に、塩酸、塩化水素、硫酸などの無機酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸類、強酸性陽イオン交換樹脂などが含まれる。酸は、1種又は2種以上混合して使用できる。【0015】加水分解反応は、前記チオグリコール酸縮合物を、水の存在下で前記アルカリ又は酸と接触させることにより行われる。水は、チオグリコール酸縮合物に対して1当量倍以上あればよいが、通常過剰量(例えば、2当量倍以上、好ましくは5当量倍以上)使用する。水を溶媒として用いてもよい。なお、本明細書において、当量とは、チオグリコール酸1モルに対応する量を意味する。【0016】また、溶媒として、反応に不活性な溶媒、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類;ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類などを用いることもできる。好ましい溶媒は水溶性溶媒である。なお、反応を2層系で行うこともできる。【0017】加水分解促進剤としてアルカリを用いる場合のアルカリの使用量は、チオグリコール酸縮合物に対して、例えば1〜3当量倍、好ましくは1.3〜2.5当量倍、さらに好ましくは1.8〜2.2当量倍程度である。なお、チオグリコール酸縮合物が、式(3)で表される化合物と前記アルカリとの塩を含む場合には、このような塩に対応するアルカリの量も前記アルカリ使用量に加算するものとする。また、加水分解に付す被処理物中に、遊離のチオグリコール酸が含まれている場合には、該チオグリコール酸を対応する塩に変換するためのアルカリが別に必要となる。【0018】加水分解促進剤として酸を用いる場合の酸の使用量は、触媒量であればよく、例えば、チオグリコール酸縮合物に対して0.01〜1当量倍、好ましくは0.05〜0.5当量倍程度である。なお、チオグリコール酸縮合物が、式(3)で表される化合物とアルカリとの塩を含む場合には、このような塩を遊離化するのに必要な量の酸が別に必要である。また、加水分解に付す被処理物中に、チオグリコール酸とアルカリとの塩が含まれている場合にも、該チオグリコール酸の塩を遊離化するための酸を別途必要とする。【0019】加水分解反応の反応温度は、例えば10〜150℃、好ましくは20〜100℃、さらに好ましくは40〜90℃程度である。反応は、通常常圧で行われるが、加圧下で行ってもよい。前記加水分解促進剤の量が少ない場合や反応温度が低い場合には、加水分解速度が低下して、反応に長時間を要するか、又は分解率が低下しやすい。【0020】反応は、回分式、半回分式、連続式の何れの方式で行ってもよい。なお、加水分解促進剤を連続的に反応系に供給する場合、加水分解促進剤の供給量を、反応系のpHを監視することにより制御することができる。【0021】本発明の方法では、アルカリ又は酸の作用によりチオグリコール酸縮合物の加水分解が著しく促進され、チオグリコール酸(酸を加水分解促進剤として用いた場合)又はその塩(アルカリを加水分解促進剤として用いた場合)が効率よく生成する。生成したチオグリコール酸又はその塩は、必要に応じて、塩形成又は遊離化した後、周知乃至公知の分離精製手段、例えば、濾過、pH調整(塩の形成又は遊離化)、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶などに付すことにより、高純度品として又は溶液として得ることができる。また、反応混合液を、そのまま、又は必要に応じて、適当に希釈又は濃縮したり、塩形成又は遊離化処理した後、通常のチオグリコール酸製造工程にリサイクルすることにより、製品化することもできる。上記塩形成により得られるチオグリコール酸の塩には、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなど)との塩などが含まれる。また、生成したチオグリコール酸又はその塩をリサイクルするチオグリコール酸製造工程としては、特に限定されず、例えば、モノクロロ酢酸又はその塩と硫化水素カリウムなどの硫化水素アルカリ金属塩(若しくはアルカリ土類金属塩)又は多硫化ナトリウムなどの多硫化アルカリ金属塩(若しくはアルカリ土類金属塩)とからチオグリコール酸又はその塩を製造する工程(そのうち、特に精製工程)などが挙げられる。【0022】【発明の効果】 本発明の方法によれば、チオグリコール酸精製工程などで生じたチオグリコール酸縮合物を、効率よくチオグリコール酸又はその塩に変換できるので、資源を有効利用できるだけでなく、環境汚染を低減できる。 また、チオグリコール酸又はその塩の製造プロセス全体におけるチオグリコール酸又はその塩の収率が増大し、チオグリコール酸又はその塩の製造における原単位(原料利用率)が向上するため、製造コストを大きく低減できる。【0023】【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。【0024】実施例1加水分解槽として、撹拌装置を装備した1リットルのジャケット付きガラス容器を使用した。この加水分解槽に予め26重量%苛性ソーダ水溶液1リットルを仕込み、ジャケットに温水を流入して60℃とした。そこに、チオグリコール酸製造プロセスのうち精製工程で得られたチオグリコール酸蒸発残渣(チオグリコール酸縮合物を含有)と26重量%苛性ソーダ水溶液とを、それぞれ920g/時、3040g/時の速度で連続的に滴下し[NaOH/チオグリコール酸縮合物(チオグリコール酸換算でのモル比=当量比)=2.0]、オーバーフローした液(滞留時間:70分)を受け槽に受けた。加水分解温度が89℃になるように、ジャケットに流入する温水の温度を調節した。加水分解槽の液組成が平衡に達するまでこの操作を続け、その後、受け槽に流出してくる液をサンプリングし、組成分析を行った。その結果、チオグリコール酸縮合物は完全に加水分解され、100%がチオグリコール酸ナトリウムに変換されていた。なお、使用した前記チオグリコール酸蒸発残渣の組成は、チオグリコール酸:44.5重量%、前記式(4)で表されるシクロマー:5.9重量%、前記式(3)で表される鎖状縮合物のうちn=2の化合物:27.5重量%、n=3の化合物:10.4重量%、n=4の化合物:7.1重量%、その他:4.6重量%であった。【0025】実施例2チオグリコール酸蒸発残渣と26重量%苛性ソーダ水溶液とを、それぞれ1130g/時、2830g/時の速度で連続的に滴下した[NaOH/チオグリコール酸縮合物(チオグリコール酸換算でのモル比=当量比)=1.5]以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、チオグリコール酸縮合物の分解率は65%であり、分解生成物はすべてチオグリコール酸ナトリウムであった。【0026】実施例3加水分解温度を50℃とした以外は、実施例2と同様の操作を行った。その結果、チオグリコール酸縮合物の分解率は43%であり、分解生成物はすべてチオグリコール酸ナトリウムであった。【0027】実施例4実施例1で用いたのと同様のチオグリコール酸蒸発残渣と30重量%硫酸水溶液とを1:1(重量比)の割合で混ぜ、80℃で20時間放置したところ、チオグリコール酸縮合物の80%が分解し、チオグリコール酸に変換されていた。 チオグリコール酸精製工程の蒸留残渣として得られるチオグリコール酸縮合物を、チオグリコール酸縮合物に対して、1〜3当量倍(但し、チオグリコール酸縮合物が、下記式(3)で表される化合物とアルカリとの塩を含む場合には、このような塩に対応するアルカリの量も前記アルカリ使用量に加算するものとする。また、加水分解に付す被処理物中に、遊離のチオグリコール酸が含まれている場合には、該チオグリコール酸を対応する塩に変換するためのアルカリが別に必要となる)のアルカリ、又はチオグリコール酸縮合物に対して0.01〜1当量倍(但し、チオグリコール酸縮合物が、下記式(3)で表される化合物とアルカリとの塩を含む場合には、このような塩を遊離化するのに必要な量の酸が別に必要である。また、加水分解に付す被処理物中に、チオグリコール酸とアルカリとの塩が含まれている場合にも、該チオグリコール酸の塩を遊離化するための酸を別途必要とする)の酸の存在下、40〜90℃の温度で加水分解することを特徴とするチオグリコール酸又はその塩の製造法。 H−(S−CH2−CO)n−OH (3)


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