タイトル: | 特許公報(B2)_エポキシ樹脂及びその製造方法 |
出願番号: | 1998164404 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C07D 303/24,C08G 59/24 |
大沼 吉信 三浦 希機 原 善則 高橋 裕子 JP 4142155 特許公報(B2) 20080620 1998164404 19980529 エポキシ樹脂及びその製造方法 ジャパンエポキシレジン株式会社 000246239 三菱化学株式会社 000005968 金谷 宥 100102369 中本 宏 100078503 井上 昭 100087022 大沼 吉信 三浦 希機 原 善則 高橋 裕子 20080827 C07D 303/24 20060101AFI20080807BHJP C08G 59/24 20060101ALN20080807BHJP JPC07D303/24C08G59/24 C07D 303/24 C08G 59/24 REGISTRY(STN) CAplus(STN) 特開昭59−231078(JP,A) 特開平05−311048(JP,A) 特開平06−263676(JP,A) 特開平09−291085(JP,A) 米国特許第03336241(US,A) 特開平04−227059(JP,A) 4 1999343286 19991214 11 20040908 安居 拓哉 【0001】【発明が属する技術分野】 本発明は、新規なエポキシ樹脂及び該エポキシ樹脂の製造方法に関する。特に本発明は、液体状又は低融点固体状の化合物であるために作業性に優れ、半導体封止用樹脂、積層板用樹脂、塗料用樹脂、接着剤、成形材料及び電気絶縁材料等に使用可能である新規なエポキシ樹脂に関する。【0002】【従来の技術】 エポキシ樹脂は耐熱性、接着性、耐水性、機械的強度及び電気特性等に優れていることから、様々の分野で使用されている。特に電気・電子分野では、絶縁注型、積層材料、封止材料等において、幅広く使用されている。ところが、近年、電気・電子部品の小型化、精密化、高性能化に伴い、使用されるエポキシ樹脂も成形性、高度な耐湿性及び高度の電気特性が要求されるようになってきた。【0003】 例えば、最近、LSIのパッケージングの傾向は、ICカード、LCD、携帯電話及びノート型コンピユーターなどの携帯機器の発展により、高密度化、薄型化の傾向にあり、従来のトランスファー成形したパッケージから、ベアーチップを実装して液状の封止材で封止する、いわゆるCOB(チップオンボード)やTABという方式に変わりつつある。従来の液状封止用エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA又はビスフェノールFから得られるエポキシ樹脂が主流を占めている。しかし、これらの樹脂は耐湿性、耐熱性に劣るため、液状封止材の信頼性向上が望まれている。【0004】 そこで、トランスファー成形用LSIのパッケージング材料として大量に使用されている、低応力、低吸湿であり、ハンダクラックに優れるビフェニル型の結晶性エポキシ樹脂を液状化又は低融点化する方法が提案されている。(特開昭07−62060号公報参照)。しかし、この方法は、かなりの量のフェノール化合物又はカルボキシル基を持つ化合物とビフェニル型のエポキシ樹脂を反応させるため、得られるエポキシ樹脂の硬化性や硬化物の耐熱性が未だ十分でない。【0005】【発明が解決しようとする課題】 本発明は、上記問題点を解決し、従来品に無い低い溶融粘度を有し、耐湿性、耐熱性のバランスに優れた硬化物を与えることができる、液体又は低融点固体である新規なエポキシ樹脂を提供しようとするものである。【0006】【課題を解決するための手段】 本発明は、ビフェニル型構造の芳香族エポキシ樹脂を水素化することにより得られる、新規なエポキシ樹脂及び該エポキシ樹脂の製造方法に関する発明であり、以下の発明から選択される発明を包含する。【0007】(1)一般式(1)【化1】〔式中、R1 〜R4 は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは0〜3の数を示す。Z1 及びZ2 は、それぞれ一般式(2)又は(3)、【化2】(式中、R5 〜R8 は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)で示される基を示す。〕で示される室温で液体状のエポキシ樹脂。【0008】(2)一般式(4)【化3】(式中、R1 〜R8 は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは0〜3の数を示す)で示される芳香族エポキシ樹脂を水素化することを特徴とする、一般式(1)【化1】〔式中、R1 〜R4 は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは0〜3の数を示す。Z1 及びZ2 は、それぞれ一般式(2)又は(3)、【化2】(式中、R5 〜R8 は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)で示される基を示す。〕で示される室温で液体状のエポキシ樹脂の製造方法。【0009】(3)前記水素化は、前記一般式(4)で示される芳香族エポキシ樹脂をエーテル系溶剤に溶解し、ロジウム又はルテニウムをグラファイトに担持した触媒の存在下、加圧下に水素化して前記一般式(1)で示されるエポキシ樹脂を製造する反応であることを特徴とする、前記(2)項記載のエポキシ樹脂の製造方法。【0010】(4)前記一般式(4)で示される芳香族エポキシ樹脂が、該一般式(4)中のR1 、R2 、R7 及びR8 が水素原子又はメチル基であり、R3 、R4 、R5 及びR6 が水素原子であり、nが0〜3のいずれかの数である芳香族エポキシ樹脂であることを特徴とする、前記(2)〜(4)項のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂の製造方法。(7)前記(1)項記載の一般式(1)で示されるエポキシ樹脂の一種又は二種以上とエポキシ樹脂硬化剤を含有することを特徴とする、硬化用組成物。【0011】【発明の実施の形態】(エポキシ樹脂) 本発明の新規エポキシ樹脂は、前記一般式(1)で示されるエポキシ樹脂であり、下記一般式(5)の芳香環完全水素化エポキシ樹脂及び/又は一般式(6)の芳香環半水素化芳香族エポキシ樹脂を含有する水素化エポキシ樹脂からなる。【0012】【化4】(式中、R1 〜R8 及びnは前記に同じ。)。【0013】【化5】(式中、R1 〜R8 及びnは前記に同じ。)。【0014】 さらに、前記一般式(1)で示される本発明のエポキシ樹脂は、前記一般式(4)で示される原料の芳香族エポキシ樹脂が残存して含まれていても構わない。即ち、本発明の実施により得られるエポキシ樹脂の芳香環の水素化率は、10〜100%の範囲であり、液体のエポキシ樹脂を得ようとするならば水素化率は20〜90%の範囲であるのが好ましい。【0015】(エポキシ樹脂の製造方法) 本発明のエポキシ樹脂の製造方法は、前記一般式(4)で示される芳香族エポキシ樹脂を、触媒の存在下、公知の方法で選択的に芳香環を水素化反応することにより得られる。好ましい反応方法としては、芳香族エポキシ樹脂をテトラヒドロフラン、ジオキサン等のエ一テル系の有機溶剤に溶解し、ロジウム又はルテニウムをグラファイトに担持した触媒の存在下、芳香環を選択的に水素化反応する。グラファイトは、表面積が10m2 /g以上、400m2 /g以下、好ましくは、50m2 /g以上、300m2 /g以下の範囲の担体を用いる。反応は、圧力、1〜30MPa、好ましくは、3〜15MPa、温度30〜150℃、好ましくは、50〜120、時間0.5〜20時間、好ましくは、1〜10時間の範囲内で適宜選択される。反応終了後、触媒を濾過により除去し、エ一テル系有機溶剤を減圧で、実質的に無くなるまで留去し、芳香環が水素化されたエポキシ樹脂を得る。【0016】 さらに、一般式(4)で示される原料芳香族エポキシ樹脂の合成は、下記一般式(7)【化6】(式中、R1 〜R8 は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)で示されるビフェノール化合物、エピハロヒドリン及び塩基を公知の方法で反応させる方法によって行われる。【0017】 一般式(1)で示される本発明のエポキシ樹脂の原料となる前記一般式(4)で示される芳香族エポキシ樹脂を製造する際に用いられる一般式(7)で示されるビフェノール化合物の具体例としては、ビフェノール、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジオール、3,3’−ジtert−ブチルビフェニル−4,4’−ジオール、3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル−4,4’−ジオール、2,2’−ジtert−ブチル−5,5’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジオール、3,3’−ジtert−ブチル−5,5’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジオール、3,3’,5,5’−テトラtert−ブチルビフェニル−4,4’−ジオール、2,2’3,3’−5,5’−ヘキサメチルビフェニル−4,4’−ジオール、2,2’3,3’、5,5’,6,6’−オクタメチルビフェニル−4,4’−ジオール、3,3’−ジ−n−ヘキシルビフェニル−4,4’−ジオール、3,3’−ジ−n−ヘキシル−5,5’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジオール等が挙げられる。【0018】 これらの中で、一般式(7)におけるR1 、R2 、R7 及びR8 が水素原子又はメチル基であり、R3 、R4 、R5 及びR6 が水素原子であるビフェノール化合物が、原料入手の容易さ及び耐熱性に優れた硬化物が得られるという点で好ましい。 さらに、一般式(4)におけるnの値が0〜3である芳香族エポキシ樹脂を原料に用いるのが、得られるエポキシ樹脂の溶融粘度が低下することや、硬化剤との硬化反応が良好となるという面で好ましい。 得られるエポキシ樹脂は、室温で液体又は融点が80℃以下の化合物であり、種々のエポキシ樹脂用硬化剤で硬化させることにより強靱な硬化物とすることができる。【0019】 本発明の水素化エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤としては、一般のエポキシ樹脂の硬化剤として使用されるものが使用することができる。そのような硬化剤の例としては、アミン類、カルボン酸無水物類、多価フェノール類、イミダゾール系化合物類、アミンのBF3 錯体化合物類、スルホニウム塩類のようなブレンステッド酸塩類、有機酸ヒドラジッド化合物類、ポリメルカプタン類、有機ホスフィン化合物類などを、各単独又は2種以上併用することによって使用することができる。 硬化剤の使用量は、新規エポキシ化合物(樹脂)100重量部当たり0.01〜200重量部、好ましくは0.1〜150重量部の範囲である。【0020】 本発明のエポキシ樹脂の硬化物を得るに当たっては、必要に応じて、粉末状の補強剤や充填剤を添加することができる。 たとえば、酸化アルミニウムや酸化マグネシウム等のような金属酸化物、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩、ケイソウ土粉、溶融シリカ等のケイ素化合物、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、その他、カオリン、マイカ、グラファイト等、及び繊維質の補強剤や充填材、たとえば、ガラス繊維、セラミック繊維、カーボンファイバー、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等が使用できる。これらは、エポキシ化合物と硬化剤の和の100重量部に対して、10〜900重量部の範囲で配合される。【0021】 着色剤、顔料、難燃剤、たとえば二酸化チタン、鉄黒、モリブデン赤、紺青、群青、カドミウム黄、カドミウム赤、三酸化アンチモン、赤燐、ブロム化合物、及びトリフェニルホスフェイト等も添加することができ、これらは、通常、エポキシ化合物と硬化剤の和の100重量部に対して0.1〜20重量部の範囲で添加される。 さらに、本発明の新規なエポキシ樹脂の硬化物である、塗膜、接着層、成形品などにおける性質を改善する目的で種々の硬化性モノマー、オリゴマー、ポリマー等を配合することもできる。【0022】【実施例】 以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明エポキシ樹脂とその製造方法をさらに詳しく説明する。なお、各例中の部は重量部を意味する。参考例1 攪拌機、冷却器及び温度計を備えた500ミリリットルのオートクレーブ内に、エピコートYX4000(油化シェルエポキシ社商品名;3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル−4,4’−ジオールのジグリシジルエーテル、エポキシ当量185g/eq.)を100g、テトラヒドロフランを100g及び、5重量%ロジウム/95重量%グラファイト(グラファイトの表面積:130m2 /g)触媒4.0gを仕込み、水素圧力7MPa、温度70℃、攪拌数500〜800rpmの条件を保持しながら、9時間還元反応を行った。反応終了後、冷却し、触媒を濾別した後、テトラヒドロフランをエバポレーターにて減圧下、温度50℃で留去させて、黄色固体のエポキシ化合物(樹脂)96.9gを得た。 このエポキシ樹脂の融点は58℃、過塩素酸滴定法により求めたエポキシ基の損失率は9.6%、核磁気共鳴分析により求めた芳香環の水素化率は、94%であった。 得られた樹脂が目的物であるかどうかは、核磁気共鳴スペクトル(図1)及びFAB−マススペクトルにより確認した。【0023】 核磁気共鳴スペクトル0.8〜1.8ppm;シクロ環及びシクロ環に付いたメチル基のプロトン2.5〜2.6ppm及び2.7〜2.8ppm; エポキシ環のメチレンプロトン3.0〜3.2ppm;エポキシ環のメチンプロトン3.45〜3.6ppm及び3.65〜3.8ppm; グリシジルエーテル基のメチレンプロトン【0024】 FAB−マススペクトル;芳香環完全水素化エポキシ樹脂; 366(一般式(5)のn=0成分) 676(一般式(5)のn=1成分)芳香環半水素化エポキシ樹脂; 360(一般式(6)のn=0成分) 上記の各フラグメントピークを確認した。【0025】実施例1 水素化時間を3時間に変える以外は、上記実施例1と同様の操作を行い、黄色透明液体のエポキシ樹脂96.1gを得た。 得られた樹脂が目的物であるかどうかは、核磁気共鳴スペクトル(図2)により確認した。得られたエポキシ樹脂の性状を表1に示す。【0026】参考例2 原料の芳香族エポキシ樹脂をYL6121H(油化シェルエポキシ社商品名;3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル−4,4’−ジオールのジグリシジルエーテルと4,4’−ビフェノールのジグリシジルエーテルの混合物、エポキシ当量;171g/eq.)100gに変える以外は、実施例1と同様の操作を行い、淡黄色固体のエポキシ樹脂97.3gを得た。得られたエポキシ樹脂の性状を表1に示す。【0027】実施例2 原料の芳香族エポキシ樹脂をYL6121H 100gに変える以外は、実施例2と同様の操作を行い、淡黄色透明液体のエポキシ樹脂96.8gを得た。得られたエポキシ樹脂の性状を表1に示す。【0028】【表1】*1;核磁気共鳴スペクトルより求めた、残存する芳香環の割合*2;DSCより求めた、吸熱ピーク頂点温度(10℃/分で昇温)*3;液体クロマトグラフ(RI検出器)より求めた、各成分の面積百分率*4;エポキシ基が水素化した化合物、可鹸化塩素含有化合物等*5;ゲルパーミエーションクロマトグラフより求めた面積百分率であり、一般式 (1)及び一般式(4)におけるn=0成分の割合【0029】【発明の効果】 本発明の実施により、ビフェニル型構造を有する芳香族エポキシ樹脂を水素化することにより、新規なエポキシ樹脂が容易に得られる。このエポキシ樹脂は、室温で液体又は低融点の固体のため作業性に優れ、広範な用途に応用展開が可能である。特に、半導体封止剤、注型材料及び電気絶縁材料等の電気・電子分野等の用途において有利に使用できる。【図面の簡単な説明】【図1】 図1は、参考例1のエポキシ樹脂の核磁気共鳴スペクトルを示す図。【図2】 図2は、実施例1のエポキシ樹脂の核磁気共鳴スペクトルを示す図。 一般式(4)(式中、R1 〜R8 は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは0〜3の数を示す。)で示される芳香族エポキシ樹脂をその芳香環の水素化率が50〜90%となるまで水素化することを特徴とする、一般式(1)〔式中、R1 〜R4 は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは0〜3の数を示す。Z1 及びZ2 は、それぞれ一般式(2)又は(3)、(式中、R5 〜R8 は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)で示される基を示す。〕で示される、室温で液体状のエポキシ樹脂の製造方法。 前記水素化は、前記一般式(4)で示される芳香族エポキシ樹脂をエーテル系溶剤に溶解し、ロジウム又はルテニウムをグラファイトに担持した触媒の存在下、加圧下に水素化して前記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂を製造する反応であることを特徴とする、請求項1記載のエポキシ樹脂の製造方法。 前記一般式(4)で示される芳香族エポキシ樹脂は、該一般式(4)中のR1 、R2 、R7 及びR8 が水素原子又はメチル基であり、R3 、R4 、R5 及びR6 が水素原子であり、nが0〜3のいずれかの数である芳香族エポキシ樹脂であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂の製造方法。 前記請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法にしたがって製造されていることを特徴とする、一般式(1)〔式中、R1 〜R4 は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは0〜3の数を示す。Z1 及びZ2 は、それぞれ一般式(2)又は(3)、(式中、R5 〜R8 は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)で示される基を示す。〕で示される、室温で液体状のエポキシ樹脂。