タイトル: | 特許公報(B2)_サルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質およびその製造方法 |
出願番号: | 1998157583 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12N 9/06,C12R 1/125 |
西矢 芳昭 川村 良久 JP 4161232 特許公報(B2) 20080801 1998157583 19980605 サルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質およびその製造方法 東洋紡績株式会社 000003160 西矢 芳昭 川村 良久 20081008 C12N 15/09 20060101AFI20080918BHJP C12N 9/06 20060101ALI20080918BHJP C12R 1/125 20060101ALN20080918BHJP JPC12N15/00 AC12N9/06 ZC12N15/00 AC12R1:125C12N9/06 ZC12R1:125 C12N 1/00-1/21 C12N 9/00-9/14 C12N 15/00-15/90 C07K 16/00-16/46 GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq UniProt/GeneSeq REGISTRY/CAplus/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開平08−238087(JP,A) Chem. Pharm. Bull., 1987, Vol.35, p.4194-4202 J. Ferment. Bioeng., 1994, Vol.77, p.231-234 生物試料分析, 1995, Vol.18, p.305-309 Nature, 1997, Vol.390, p.249-256 FEBS Letters, 1998, Vol.438, p.263-266 6 1999346771 19991221 17 20050527 長谷川 茜 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、サルコシン、クレアチン、クレアチニンの定量に用いることのできるサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質、および該タンパク質の製造方法に関する。【0002】【従来の技術】従来から、サルコシンオキシダーゼ(EC1.5.3.1)は、臨床的に筋疾患、腎疾患の診断の指標となっている体液中のクレアチン、クレアチニンの測定用酵素として、他の酵素、例えばクレアチニナーゼ、クレアチナーゼ、ペルオキシダーゼと共に使用されている。サルコシンオキシダーゼは基質であるサルコシンに水、酸素の存在下で作用して、グリシン、ホルムアルデヒドおよび過酸化水素を生成する。【0003】このようなサルコシンオキシダーゼは、バチルス(Bacillus)属(特開昭54−52789号公報)、コリネバクテリウム(Corynebacterium )属(J. Biochem. 89, 599 (1981))、シリンドロカルボン(Cylindrocarpon)属(特開昭56−92790号公報)、シュードモナス(Pseudomonas )属(特開昭60−43379号公報)等の細菌が生産することが報告されている。【0004】【発明が解決しようとする課題】特開平02−265478号公報においては、とりわけアースロバクター・エスピー(Arthrobacter sp.)TE1826(微工研菌寄第10637号)の生産するサルコシンオキシダーゼは、従来のサルコシンオキシダーゼよりも熱安定性に優れ、かつKmが約3mMと他の起源のものに比べて小さく、実用的な酵素であることが既に知られている。酵素のミカエリス−メンテン定数(以下、Kmと表す)の値は酵素を用いた測定に要する時間と密接な関係があり、Kmが小さい酵素はより実用的であるといえる。しかしながら、上記に示すようなサルコシンオキシダーゼは、サルコシン、クレアチン、クレアチニンの迅速な定量を実現するには十分なものではなく、よりKm値の小さいサルコシンオキシダーゼの開発が望まれていた。【0005】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成するために種々検討した結果、Kmが1mM以下であるサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質を見出し、本発明に到達した。そして、該タンパク質を用いることにより、サルコシン、クレアチン、クレアチニンの迅速な定量化を実現するに至った。【0006】すなわち、本発明は、Kmが1mM以下であることを特徴とするサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質である。より好ましくは、本発明は、Kmが0.2±0.1mM以下であることを特徴とするサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質である。【0007】また本発明は、好ましくは下記理化学的性質を有するサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質である。作用:水、酸素の存在下にサルコシンに作用して、過酸化水素を生成するKm:0.2±0.1mM分子量:40000±4000(SDS−PAGE)【0008】また本発明は、より好ましくは下記理化学的性質を有するサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質である。作用:水、酸素の存在下にサルコシンに作用して、過酸化水素を生成するKm:0.2±0.1mM至適温度:45±5℃至適pH:8.0±0.5熱安定性:45±5℃以下(pH8.0、10分間処理)pH安定性:8.0±0.5(25℃、5時間処理)分子量:40000±4000(SDS−PAGE)160000±16000(ゲル濾過)阻害剤:p−クロロメルクリ安息香酸(以下、PCMBと表す)基質特異性:サルコシンの他、グリシン、N−エチルグリシンにも反応性を有する【0009】また本発明は、好ましくは、以下の(a)または(b)のタンパク質であるサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質である。(a)配列表・配列番号1に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質(b)アミノ酸配列(a)において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつサルコシンオキシダーゼ活性を有するタンパク質また本発明は、より好ましくは、配列表・配列番号1に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質であるサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質である。【0010】また本発明は、以下の(a)または(b)のタンパク質であるサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質をコードする遺伝子である。(a)配列表・配列番号1に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質(b)アミノ酸配列(a)において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつサルコシンオキシダーゼ活性を有するタンパク質また本発明は、好ましくは、配列表・配列番号1に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質であるサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質をコードする遺伝子である。【0011】また本発明は、好ましくは、以下の(c)または(d)のDNAであるサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質をコードする遺伝子である。(c)配列表・配列番号4に記載される塩基配列からなるDNA(d)上記(c)の配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されており、かつサルコシンオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAまた本発明は、より好ましくは、配列表・配列番号4に記載される塩基配列からなるDNAを有するサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質をコードする遺伝子である。【0012】また本発明は、上記のようなサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質をコードする遺伝子を含有する組換えベクターである。また本発明は、上記のようなサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質をコードする遺伝子を含有する組換えベクターを含む形質転換体である。【0013】また本発明は、Kmが1mM以下であるサルコシンオキシダーゼ活性を有するタンパク質を生産するバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis )マーバーグ168系菌株を培養し、培養物からサルコシンオキシダーゼ活性を有するタンパク質を採取することを特徴とするサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質の製造方法である。【0014】また本発明は、上記のようなサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質をコードする遺伝子を保持し、かつサルコシンオキシダーゼ活性を有するタンパク質の生産性を有する組換えベクターを導入した形質転換体を培養し、培養物からサルコシンオキシダーゼ活性を有するタンパク質を採取することを特徴とするサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質の製造方法である。【0015】【発明の実施の形態】本発明のサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質は、サルコシンオキシダーゼ生産性の微生物、なかでも、バチルス・ズブチリスから単離することが好ましい。具体的には、例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)より入手できるバチルス・ズブチリス マーバーグ168系菌株、例えばバチルス・ズブチリス MI113、DE100、ASB298等から単離し得る。しかしながら、本発明のタンパク質をコードする遺伝子を分離し、これより発現されるタンパク質を単離することにより、簡便で、かつ効率的に入手することもできる。【0016】本発明の一実施態様としては、例えば配列表の配列番号1に記載されるようなアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつサルコシンオキシダーゼ活性を有するタンパク質が挙げられる。【0017】上記のアミノ酸の欠失、置換、付加の程度については、基本的な特性を変化させることなく、あるいはその特性を改善するようにしたものを含む。これらの変異体を製造する方法は、従来から公知である方法に従って得ることができる。【0018】上記サルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質をコードする遺伝子は、例えばバチルス・ズブチリス マーバーグ168系菌株から抽出することができ、また化学的に合成することも可能である。さらに、ポリメラーゼ・チェーン・リアクション法(PCR法)の利用により、サルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質をコードする遺伝子を含むDNA断片を得ることも可能である。【0019】上記遺伝子としては、例えば配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、または該アミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、サルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質をコードするDNAが挙げられる。具体的には、例えば、配列表の配列番号4に記載される塩基配列からなるDNA、または該塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列が挙げられる。【0020】上記DNAの欠失、置換、付加の程度については、基本的な特性を変化させることなく、あるいはその特性を改善するようにしたものを含むものである。これらの変異体を製造する方法は、従来から公知である方法に従って得ることができる。【0021】上記遺伝子を得る方法としては、例えばバチルス・ズブチリス マーバーグ168系菌株の染色体DNAを鋳型とし、配列表の配列番号2及び3のオリゴヌクレオチドをプライマーとして公知の条件でPCRを行い、サルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質をコードする遺伝子を採取すれば良い。【0022】遺伝子供与体であるバチルス・ズブチリス マーバーグ168系菌株の染色体DNAは、具体的には例えば、以下のような工程により採取される。すなわち、供与微生物を例えば1〜3日間撹拌培養して得られた培養物を遠心分離にて集菌し、次いでこれを溶菌させることにより染色体DNA含有溶菌物を調製することができる。溶菌の方法としては、例えばリゾチームやβ−グルカナーゼ等の溶菌酵素により処理が施され、必要に応じてプロテアーゼや他の酵素やラウリル硫酸ナトリウム(SDS)等の界面活性剤が併用され、さらに凍結融解やフレンチプレス処理のような物理的破砕方法と組み合わせても良い。【0023】上記のようにして得られた溶菌物からDNAを分離・精製するには常法に従って、例えばフェノール処理やプロテアーゼ処理による除蛋白処理や、リボヌクレアーゼ処理、アルコール沈澱処理などの方法を適宜組み合わせることにより行うことができる。【0024】組換え体を作製する際のベクターとしては、宿主微生物内で自律的に増殖し得るファージまたはプラスミドから遺伝子組換え用として構築されたものが適している。【0025】上記ファージとしては、例えばエシェリヒア・コリー(Escherichia coli)を宿主微生物とする場合には、ラムダgt10、ラムダgt11などが挙げられる。【0026】また、上記プラスミドとしては、例えばエシェリヒア・コリーを宿主微生物とする場合には、pBR322、pUC18、pUC19、pBluescriptなどが挙げられる。【0027】一方、宿主微生物としては、組換えベクターが安定で、かつ自律増殖可能であり、外来性遺伝子の形質発現できるものであれば良く、一般的には、例えば、エシェリヒア・コリーW3110、エシェリヒア・コリーC600、エシェリヒア・コリーHB101、エシェリヒア・コリーJM109などを挙げることができる。【0028】宿主微生物に組換えベクターを移入する方法としては、例えば宿主微生物がエシェリヒア・コリーの場合には、カルシウム処理によるコンピテントセル法やエレクトロポレーション法などが用いることができる。【0029】上記のようにして得られた形質転換体である微生物は、栄養培地で培養されることにより、多量の目的タンパク質を安定に生産し得る。宿主微生物への目的組換えベクターの移入の有無についての選択は、目的とするDNAを保持するベクターの薬剤耐性マーカーとサルコシンオキシダーゼ活性を同時に発現する微生物を検索すれば良く、例えば薬剤耐性マーカーに基づく選択培地で生育し、かつサルコシンオキシダーゼを生成する微生物を選択すれば良い。【0030】形質転換体である宿主微生物の培養形態は、宿主の栄養生理的性質を考慮して培養条件を選択すればよく、多くの場合は液体培養で行われるが、工業的には通気撹拌培養を行うのが有利である。培地の栄養源としては、微生物の培養に通常用いられるものが広く使用され得る。炭素源としては資化可能な炭素化合物であればよく、例えば、グルコ−ス、シュークロース、ラクトース、マルトース、フラクトース、糖蜜、ピルビン酸などが使用される。窒素源としては利用可能な窒素化合物であればよく、例えば、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物、大豆粕アルカリ抽出物などが使用される。その他、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、マンガン、亜鉛などの塩類、特定のアミノ酸、特定のビタミンなどが必要に応じて使用される。【0031】培養温度は微生物が成育し、目的タンパク質を生産する範囲で適宜変更し得るが、エシェリヒア・コリーの場合、好ましくは20〜42℃程度である。培養時間は条件によって多少異なるが、乳酸酸化酵素が最高収量に達する時期を見計らって適当時期に培養を終了すればよく、通常は6〜48時間程度である。培地のpHは菌が発育し目的タンパク質を生産する範囲で適宜変更し得るが、好ましくはpH6.0〜9.0程度である。【0032】培養物中のサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質を生産する菌体を含む培養液をそのまま採取し利用することもできるが、一般には、常法に従ってサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質が培養液中に存在する場合は濾過、遠心分離などにより、目的タンパク質含有溶液と微生物菌体とを分離した後に利用される。サルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質が菌体内に存在する場合には、得られた培養物から濾過または遠心分離などの手段により菌体を採取し、次いでこの菌体を機械的方法またはリゾチームなどの酵素的方法で破壊し、また必要に応じてEDTA等のキレート剤及びまたは界面活性剤を添加して目的タンパク質を可溶化し、水溶液として分離採取する。【0033】上記のようにして得られたサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質を含有する溶液を、例えば減圧濃縮、膜濃縮、更に硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムなどの塩析処理、あるいは親水性有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、アセトンなどによる分別沈澱法により沈澱せしめればよい。また、加熱処理や等電点処理も有効な精製手段である。その後、吸着剤あるいはゲル濾過剤などによるゲル濾過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を行うことにより、精製されたサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質を得ることができる。【0034】例えば、セファデックスG−25、G−200(ファルマシアバイオテク製)などによるゲルろ過、DEAEセファロースCL6−B(ファルマシアバイオテク製)、オクチルセファロースCL6−B(ファルマシアバイオテク製)カラムクロマトグラフィーにより分離・精製し、精製酵素標品を得ることができる。この精製酵素標品は、電気泳動(SDS−PAGE)的にほぼ単一のバンドを示す程度に純化されている。【0035】上記のようにして得られる本発明のサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質は、Kmが1mM以下であることを特徴とする。該Kmの値は、好ましくは0.5mM以下、より好ましくは0.2mM以下、さらに好ましくは0.2±0.1mMである。Kmが1mMより大きいと、サルコシン、クレアチン、クレアチニンの定量における迅速性の点で劣るために好ましくない。すなわち、従来より知られているサルコシンオキシダーゼのKmは約3mM以上であるのに対して、本発明のサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質は、同一反応を触媒する公知の酵素とはKm値が大きく異なることを特徴とする新規な酵素である。【0036】本発明のサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質は、具体的には、以下に示す理化学的性質を有するものが好ましい。作用:水、酸素の存在下にサルコシンに作用して、過酸化水素を生成するKm:0.2±0.1mM分子量:40000±4000(SDS−PAGE)【0037】さらには、本発明のサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質は、以下に示す理化学的性質を有するものがより好ましい。作用:水、酸素の存在下にサルコシンに作用して、過酸化水素を生成するKm:0.2±0.1mM至適温度:45±5℃至適pH:8.0±0.5熱安定性:45±5℃以下(pH8.0、10分間処理)pH安定性:8.0±0.5(25℃、5時間処理)分子量:40000±4000(SDS−PAGE)160000±16000(ゲル濾過)阻害剤:PCMB基質特異性:サルコシンの他、グリシン、N−エチルグリシンにも反応性を有する【0038】本発明のサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質は、上述したように、サルコシン、クレアチン、クレアチニンの定量に際して有用であり、サルコシン、クレアチン、クレアチニンの定量用試薬として好適に利用されるものである。本発明におけるサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質を用いることにより、サルコシン、クレアチン、クレアチニンの定量に要する時間は、従来のサルコシンオキシダーゼを用いる場合と比較すると、数倍短縮せしめることが可能である。【0039】【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明する。実施例中、サルコシンオキシダーゼ活性の測定は以下の試薬および測定条件で行った。【0040】<試薬>10mM サルコシン、50mM リン酸カリウム(pH8.0)、0.5mM 4−アミノアンチピリン、2mM フェノール、6U/ml ペルオキシダーゼを含む水溶液を用いた。【0041】<測定条件>試薬3mlを、37℃で約2分予備加温後、0.15mlのサンプル(酵素溶液)を加え、緩やかに混和後、水を対照に37℃に制御された分光光度計で500nmの吸光度変化を2〜3分間記録し、その初期直線部分から1分間当りの吸光度変化を測定した。上記条件で1分間に1μmolのサルコシンを分解する酵素量を1単位(U)とする。【0042】実施例1 染色体DNAの分離ATCC保存菌株でバチルス・ズブチリス マーバーグ168系菌株であるバチルス・ズブチリス MI113(ATCC33712)の染色体DNAを次の方法で分離した。同菌株をブレインハートインヒュージョン培地(ディフコ社製)で37℃一晩振盪培養した後、遠心分離(8000rpm、10分間)により集菌した。15mMクエン酸ナトリウム(0.15M塩化ナトリウムを含む)溶液で菌体を洗浄した後、20%シュークロース、50mMトリス塩酸(pH7.6)、1mMEDTAを含んだ溶液5mlに懸濁し、1mlのリゾチーム溶液(100mg/ml)を加えて、37℃、30分間保温し、次いで11mlの1%ラウロイルサルコシン酸、0.1M EDTA(pH9.6)を含む溶液を加えた。【0043】この懸濁液に、臭化エチジウム溶液、0.5%塩化セシウムを約100%加え、攪拌混合し、55000rpm、20時間の超遠心分離でDNAを分取した。分取したDNAは1mM EDTAを含んだ10mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0;以下、TEと略記する)で透析して、精製DNA標品とした。これを等量のクロロホルム・フェノール溶液で処理後遠心分離により水層を分取し、2倍量のエタノールを加えて上記方法で、もう一度DNAを分離し、2mlのTEで溶解した。【0044】実施例2 サルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質をコードする遺伝子を有する組換えベクターの調製実施例1で得たDNAを鋳型として、配列表の配列番号2及び3のオリゴヌクレオチドをプライマーとして表1に示すような組成液を調製し、公知の条件でPCRを行い、サルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質をコードする遺伝子を増幅した。【0045】【表1】【0046】増幅産物(約1.1kbp)と制限酵素SmaIで分解処理したベクターpUC19をT4DNAリガーゼでライゲーションして、エシェリヒア・コリーJM109のコンピテントセル(東洋紡績製)で形質転換し、形質転換体を得た。該形質転換体の保有する約3.8kbpのプラスミドには約1.1kbpの挿入DNA断片が存在している。該遺伝子の塩基配列をダイデオキシ法により、配列表の配列番号4のように決定し、また該プラスミドをpBSOLR2とし、該形質転換体をエシェリヒア・コリーJM109(pBSOLR2)とした。エシェリヒア・コリーJM109(pBSOLR2)は、サルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質をコードする遺伝子を有する形質転換体である。なお、pBSOLR2の構造は図1に示す通りである。【0047】実施例3 エシェリヒア・コリーJM109(pBSOLR2)からのサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質の製造TB培地500mlを2Lフラスコに分注し、121℃、15分間オートクレーブを行い、放冷後別途無菌ろ過した50mg/mlアンピシリン(ナカライテスク製)0.5mlを添加した。この培地にLB培地であらかじめ,30℃、16時間振盪培養したエシェリヒア・コリーJM109(pBSOLR2)の培養液5mlを接種し、37℃で24時間通気撹拌培養した。培養終了時のサルコシンオキシダーゼ活性は約0.35U/mlであった。【0048】上記菌体を遠心分離にて集菌し、50mMリン酸緩衝液(pH8.0)に懸濁した。上記菌体懸濁液を超音波で破砕し、遠心分離を行い上清液を得た。得られた粗酵素液に対し、0.5M飽和硫安分画処理を行った後、セファデックスG−25(ファルマシアバイオテク製)によるゲルろ過により脱塩し、DEAEセファロースCL6−B(ファルマシアバイオテク製)カラムクロマトグラフィー、セファデックスG−200(ファルマシアバイオテク製)カラムクロマトグラフィーにより分離・精製し、精製タンパク質表品を得た。本方法により得られたサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質の標品は、電気泳動(SDS−PAGE)的にほぼ単一なバンドを示し、この時の比活性は約0.6U/mg−タンパク質であった。【0049】以下に、上記方法により得られたサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質の性質を示す。作用:水、酸素の存在下にサルコシンに作用して、過酸化水素を生成するKm:0.2±0.1mM至適温度:45±5℃至適pH:8.0±0.5熱安定性:45±5℃以下(pH8.0、10分間処理)pH安定性:8.0±0.5(25℃、5時間処理)分子量:40000±4000(SDS−PAGE)160000±16000(ゲル濾過)阻害剤:PCMB基質特異性:サルコシンの他、グリシン、N−エチルグリシンにも反応性を有するなお、上記タンパク質のアミノ酸配列は、配列表の配列番号1のように決定された。【0050】【発明の効果】上述したように、本発明により、Kmが1mM以下であるサルコシンオキシダーゼ活性を有する新規なタンパク質が単離された。また、該タンパク質を用いることにより、サルコシン、クレアチン、クレアチニンに関する迅速な定量化が可能となった。さらに、タンパク質工学的手法を用いることによる機能改変を行うことにより、理化学的性質の改良を導き出すことができる。【0051】【配列表】【0052】【0053】【0054】【図面の簡単な説明】【図1】 pBSOLR2の構造を示す図である。 以下の(a)または(b)のタンパク質。(a)配列表・配列番号1に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質(b)アミノ酸配列(a)において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつサルコシン分解活性を有するタンパク質 以下の(a)または(b)のタンパク質をコードする遺伝子。(a)配列表・配列番号1に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質(b)アミノ酸配列(a)において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつサルコシン分解活性を有するタンパク質 以下の(c)または(d)のDNAである遺伝子。(c)配列表・配列番号4に記載される塩基配列からなるDNA(d)上記(c)の配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されており、かつサルコシン分解活性を有するタンパク質をコードするDNA 請求項2または3に記載の遺伝子を含有する組換えベクター。 請求項4に記載の組換えベクターを含む形質転換体。 請求項5の形質転換体を培養し、培養物からサルコシン分解活性を有するタンパク質を採取することを特徴とする請求項1に記載のタンパク質の製造方法。