タイトル: | 特許公報(B2)_免疫学的凝集反応試薬およびこれを用いたプロゾーン現象の抑制方法 |
出願番号: | 1998151098 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | G01N 33/543,G01N 33/531 |
山岡 利彦 JP 3886639 特許公報(B2) 20061201 1998151098 19980601 免疫学的凝集反応試薬およびこれを用いたプロゾーン現象の抑制方法 栄研化学株式会社 000120456 山岡 利彦 20070228 G01N 33/543 20060101AFI20070208BHJP G01N 33/531 20060101ALI20070208BHJP JPG01N33/543 583G01N33/531 B G01N33/48-33/98 特開平06−082450(JP,A) 特開平10−062421(JP,A) 特開平09−304389(JP,A) 特開昭63−200064(JP,A) 14 1999344494 19991214 8 20050510 白形 由美子 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、免疫学的凝集反応試薬およびこれを用いたプロゾーン現象の抑制方法に関するもので、特に測定すべき抗原または抗体が検体中に高濃度に含まれる場合であっても、検体を希釈することなく原液のままで用いることができる免疫学的凝集反応試薬およびこれを用いたプロゾーン現象の抑制方法に関するものである。【0002】【従来の技術】近年、各種疾患と関連して生体中に出現する蛋白質等の免疫学的活性物質を抗原抗体反応を利用して検出し、診断に利用することが広く行われている。このような抗原抗体反応を利用した測定方法としては、放射免疫測定法(RIA)、酵素免疫測定法(EIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、ラテックス凝集法(LA)、免疫比濁法(TIA)等の種々の方法が実用化されている。【0003】とりわけ、LAは操作が簡便で、しかも短時間で測定可能なため広く利用されている。LAでは、測定すべき抗原(または抗体)に対応する抗体(または抗原)がその表面に結合されたラテックス粒子が用いられる。このようなラテックス粒子は、緩衝液などの媒体中に懸濁され、検体と混合される。【0004】検体中の抗原(または抗体)と、ラテックス表面上の抗体(または抗原)とが抗原抗体反応を起こし、免疫複合体を形成し、検体中の抗原(または抗体)を介してラテックス粒子が架橋されて凝集する。この凝集の程度は、吸光度の変化または散乱光の強度の変化により簡単に測定することができる。LAは、B/F分離が必要なRIAやEIAに比べて反応ステップが少ないため、測定方法が簡単で、しかも自動分析装置に適している。【0005】しかしながら、検体中に高濃度に含まれる抗原(または抗体)、例えば、血清中に比較的高濃度に含まれるC反応性たんぱく質(CRP)などを従来のLA用試薬を用いて測定すると、プロゾーン現象を起こし、実際よりかなり低い測定値しか得られず、正確に診断することができない場合があった。【0006】測定値からこのプロゾーン現象を判断することは困難であり、反応の起ち上がり即ち吸光度の上昇速度からプロゾーンを判定する手段が自動分析器の一部に搭載されているものの効果は十分ではない.。最も確実な手段は、測定を終了後に反応混合液中にさらにCRPを添加し、測定値がさらに上昇するか、逆に減少するかによってプロゾーン現象であるかどうかを判断することである。プロゾーン現象であると判断された場合には、検体を希釈するか検体採取量を減じて、再度測定しなければならない。このような繁雑な操作を避けるためプロゾーン現象を生じない試薬の提供が望まれていた。【0007】このプロゾーン現象を改善する方法としては、測定に用いる水性溶媒のイオン強度を下げる方法、凝集試験用水性溶媒に特定分子量のデキストランを含有させた免疫定量法(特開昭59−220646号公報)、検体と媒体との混合物中にアミノ酸を含有させたラテックス凝集法に基づく免疫定量法(特開昭62−272157号公報)、添加剤としてポリエチレングリコール等の界面活性剤を含有させた免疫学的活性物質測定試薬(特開平8−285847号公報、特開平9−54092号公報、特開平9−96638号公報)、特定量の塩化ナトリウムを含有させた免疫学的測定法(特開平9−89894号公報)等が提案されている。【0008】一方、LAは、一般に普及されている自動分析装置に使用すると、その親水性材料の表面に免疫グロブリン分子が吸着や凝集されることにより、非特異的な凝集や沈殿を生ずることが知られている。この問題を解決するため、ホウ酸、シュウ酸、クエン酸、フタル酸などの多塩基酸を用いたLAが提案されている(特開平2−61561号公報)。【0009】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記特開平2−61561号公報に記載された方法は、非特異的な凝集や沈殿を防止する方法を開示しているに過ぎず、プロゾーン現象に対する改善に関しては、全く示唆していない。また、上記の他の公報に記載された方法では、確かにプロゾーン現象に対する改善は認められるものの、測定すべき抗原(または抗体)が検体中に高濃度に含まれる場合には、プロゾーン現象の抑制効果は未だ不十分であり、更に改善された方法が強く望まれていた。【0010】従って本発明は、このような従来の課題に着目してなされたものであって、測定すべき抗原(または抗体)が検体中に高濃度に含まれる場合であっても、プロゾーン現象を十分に抑制することのできる免疫学的凝集反応試薬およびこれを用いたプロゾーン現象の抑制方法を提供することを目的とする。【0011】【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、従来の免疫学的凝集反応試薬に、所定量のジカルボン酸類、および必要に応じて硫酸塩類および/またはポリエチレングリコールを含有させることにより、プロゾーン現象の高い抑制効果が得られることを見い出し、本発明に到達した。【0012】本発明の上記の課題は、抗体または抗原を結合させた不溶性担体粒子と、該不溶性坦体粒子を懸濁させる媒体とを含む免疫学的凝集反応試薬において、1.0〜20w/v%のジカルボン酸類を含有することを特徴とする免疫学的凝集反応試薬、およびこれを用いたプロゾーン現象の抑制方法により達成された。【0013】以下、本発明について更に詳細に説明する。【0014】本発明に使用するジカルボン酸類は、公知のジカルボン酸類の中から適宜選択して使用することができる。その具体例としては、例えばリンゴ酸、グルタル酸、アジピン酸およびコハク酸から成る群から選択される少なくとも1種が挙げられる。また、ジカルボン酸は、例えばNa等の塩であっても良く、アルコール等とエステルを形成しても良い。【0015】本発明においては、上記試薬全量に対してジカルボン酸類を1.0〜20w/v%、好ましくは5.0〜15w/v%となるように含有させる。ジカルボン酸類の添加量が1.0w/v%未満になると、プロゾーン現象を効果的に抑制することができない。【0016】本発明においては、ジカルボン酸類を単独で添加した場合であっても、プロゾーン現象の抑制効果が不十分な場合には、更に硫酸塩類および/またはポリエチレングリコールを添加することによってプロゾーン現象の抑制効果をより一層向上させることができる。【0017】本発明に使用する硫酸塩類は、公知の硫酸塩類の中から適宜選択して使用することができる。これらの硫酸塩類の中でも、特に硫酸ナトリウムおよび/または硫酸アンモニウムが好ましい。【0018】本発明においては、上記試薬全量に対して硫酸塩類を1.0〜10w/v%、好ましくは5.0〜10w/v%、より好ましくは7.5w/v%となるように含有させる。硫酸塩類の添加量が1.0w/v%未満になると、プロゾーン現象を効果的に抑制することができず、逆に10w/v%を超えると、低濃度域においても凝集反応が阻害される。【0019】本発明に使用するポリエチレングリコールも、公知のものの中から適宜選択して使用すれば良い。その平均分子量は1000〜10000、好ましくは6000である。ポリエチレングリコールは、試薬全体に対して0.05〜1.0w/v%となるように含有させる。【0020】プロゾーン現象は、不溶性担体粒子の表面に結合された抗体(または抗原)に対し、過剰の抗原(または抗体)が混合物中に存在する場合に、混合物中の抗原(または抗体)を介して不溶性担体粒子同士が架橋されなくなり、不溶性担体粒子の凝集が生じなくなるために起こると考えられている。従ってジカルボン酸類、ポリエチレングリコールおよび硫酸塩類の組み合わせや添加量は、測定すべき検体中に含まれる抗原または抗体の濃度範囲に応じて適宜選択すれば良い。【0021】本発明において使用される不溶性担体粒子としては、従来から免疫学的凝集反応の担体粒子として使用されているものの中から適宜選択して使用することができる。その具体例としては、例えば無機物質粉末、有機高分子物質粉末、微生物、血球、細胞膜片などが挙げられる。無機物質としては、特に限定されないが、金、チタン、鉄、ニッケル等の金属、アルミナ、チタニア等の金属酸化物、シリカ等が挙げられる。有機高分子としては、特に限定されないが、スチレン重合体、スチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体、メタクリル酸重合体、アクリル酸重合体、アクリルニトリル−ブダジエン−スチレン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられるが、特にこれらの重合体粉末を水に均一に懸濁させたラテックス粒子が好ましい。【0022】これら不溶性担体粒子への抗原または抗体の感作は、公知の方法に従って行うことができる。その具体例としては、例えば、グルタルアルデヒド、ビスジアゾベンジジン、トリレンジトイソシアネート、ジフロロニトロベンゼン、カルボジイミド類、キノン類、塩化クロム、タンニン酸等のいわゆるカップリング剤を用いた化学的結合法、抗原または抗体と担体を水溶性溶媒中(例えば、水、生理食塩水、各種緩衝液など)で接触させる物理的吸着法等が挙げられる。【0023】本発明においては、上記担体粒子に感作させる抗原または抗体としては、特に限定されず、公知のものの中から適宜選択して使用することができる。その具体例としては、例えば、C反応性蛋白質(CRP)、リウマチ因子(RF)、トランスフェリン等の血漿蛋白に対する抗体、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、トリヨードサイロニン、サイロキシン、サイロキシン結合性蛋白、サイログロブリン、インスリン、エストリオール、ヒト胎盤性ラクトーゲン等のホルモンに対する抗体、癌胎児性抗原(CEA)、α−フェトプロテイン(AFP)等の腫瘍関連物質に対する抗体、HBs抗原、HBs抗体、HBe抗原、HBe抗体等のウイルス肝炎の抗原に対する抗体および抗体に対する抗原、ムンプス、ヘルペス、麻疹、風疹等のウイルス、各種生体成分に対する抗体または抗原、フェノバルビタール、アセトアミノフェノン、サリチル酸、シクロスポリン等の各種薬剤に対する抗体が挙げられる。【0024】上記担体粒子を浮遊させる媒体としては、従来既知のあらゆる凝集試験用水性媒体が利用でき、例えば水、生理食塩水、各種緩衝液(グッド緩衝液、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、グリシン緩衝液)、およびこれらの組み合わせからなる溶液が例示される。【0025】本発明の免疫学的凝集反応試薬は、従来の方法に従って検体と試薬とを混合して反応させて生ずる担体粒子の凝集の程度を、その混合物の吸光度の変化や散乱光の強度の変化を測定することによって使用することができる。【0026】【発明の効果】本発明は、測定すべき抗原または抗体が検体中に高濃度に含まれる場合であっても、検体を希釈することなく原液のままで免疫測定を行うことを可能とする。従って本発明によれば、検体を正確に希釈するという時間と労力を要する作業を省略することができる。【0027】【実施例】以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。【0028】実施例10〜150mg/dlのCRPを含む生理食塩水溶液3μlに、0、5.0w/v%のリンゴ酸を含む0.1MのHEPES緩衝液(pH7.4)200μlを加えた。抗CRP抗体(動物名:ヤギ)を結合した粒径0.08μmのラテックス粒子の懸濁液(0.2w/v%)200μlを混合物に加え、37℃で反応させ、1〜5分後にかけて波長570nmで吸光度を測定し、各測定点の間の吸光度変化量を求めた。測定には全自動分析装置日立7070(日立製作所製)を用いた。【0029】その結果を図1に示す。図1に示すように、5.0w/v%のリンゴ酸を添加した場合には、抗原過剰によるプロゾーン現象は生じなかった。これに対し、リンゴ酸を含まない場合には、抗原過剰によるプロゾーン現象が生じていた。【0030】実施例2実施例1で用いたリンゴ酸の代わりに、0、5.0w/v%のグルタル酸を用いた以外は、実施例1と全く同様にしてプロゾーン現象の抑制効果を調べた。その結果を図2に示す。図2に示すように、5.0w/v%のグルタル酸を添加した場合には、抗原過剰によるプロゾーン現象は生じなかった。これに対し、グルタル酸を含まない場合には、抗原過剰によるプロゾーン現象が生じていた。【0031】実施例3実施例1で用いたリンゴ酸の代わりに、0、3.75、7.5w/v%のアジピン酸を用いた以外は、実施例1と全く同様にしてプロゾーン現象の抑制効果を調べた。その結果を図3に示す。図3に示すように、3.75、7.5w/v%のアジピン酸を添加した場合には、抗原過剰によるプロゾーン現象は生じなかった。これに対し、アジピン酸を含まない場合には、抗原過剰によるプロゾーン現象が生じていた。【0032】実施例4実施例1で用いたリンゴ酸の代わりに、0、5.0、10w/v%のジメチルグルタル酸を用いた以外は、実施例1と全く同様にしてプロゾーン現象の抑制効果を調べた。その結果を図4に示す。図4に示すように、5.0、10w/v%のジメチルグルタル酸を添加した場合には、抗原過剰によるプロゾーン現象は生じなかった。これに対し、ジメチルグルタル酸を含まない場合には、抗原過剰によるプロゾーン現象が生じていた。【0033】実施例5実施例1で用いたリンゴ酸の代わりに、0、2.5、5.0、10、15w/v%のコハク酸ジカリウムを用いた以外は、実施例1と全く同様にしてプロゾーン現象の抑制効果を調べた。その結果を図5に示す。図5に示すように、5.0、10、15w/v%のコハク酸ジカリウムを添加した場合には、抗原過剰によるプロゾーン現象は生じなかった。これに対し、2.5w/v%のコハク酸ジカリウムを添加した場合には、プロゾーン現象の抑制効果は認められるものの、未だ不十分であり、またコハク酸ジカリウムを含まない場合には、抗原過剰によるプロゾーン現象が生じていた。【0034】実施例62.5w/v%のコハク酸を添加し、更に2.5、5.0w/v%の硫酸ナトリウムを添加した以外は、実施例1と全く同様にしてプロゾーン現象の抑制効果を調べた。その結果を図6に示す。図6に示すように、コハク酸と硫酸ナトリウムを組み合わせた場合には、実施例1〜5で得られた効果と比較して更にプロゾーン現象の抑制効果が向上したことが認められる。【0035】実施例72.5w/v%のコハク酸を添加し、更に0.08、0.5w/v%のポリエチレングリコールを添加した以外は、実施例1と全く同様にしてプロゾーン現象の抑制効果を調べた。その結果を図7に示す。図7に示すように、コハク酸とポリエチレングリコールを組み合わせた場合には、実施例1〜5で得られた効果と比較して更にプロゾーン現象の抑制効果が向上したことが認められる。【図面の簡単な説明】【図1】リンゴ酸を用いた場合のプロゾーン現象の抑制効果を示すグラフ【図2】グルタル酸を用いた場合のプロゾーン現象の抑制効果を示すグラフ【図3】アジピン酸を用いた場合のプロゾーン現象の抑制効果を示すグラフ【図4】ジメチルグルタル酸を用いた場合のプロゾーン現象の抑制効果を示すグラフ【図5】コハク酸ジカリウムを用いた場合のプロゾーン現象の抑制効果を示すグラフ【図6】コハク酸と硫酸ナトリウムを組み合わせた場合のプロゾーン現象の抑制効果を示すグラフ【図7】コハク酸とポリエチレングリコールを組み合わせた場合のプロゾーン現象の抑制効果を示すグラフ 抗体または抗原を結合させたラテックス粒子と、該ラテックス粒子を懸濁させる媒体とを含む免疫学的ラテックス凝集反応試薬において、7.5〜15W/V%のジカルボン酸類を含有することを特徴とする免疫学的ラテックス凝集反応試薬。 ジカルボン酸類がリンゴ酸、グルタル酸、アジピン酸およびコハク酸、またはそれらの塩もしくはそれらのエステル類からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1記載の免疫学的ラテックス凝集反応試薬。 硫酸塩類を含有する請求項1または2記載の免疫学的ラテックス凝集反応試薬。 硫酸塩類の含有量が1〜10W/V%の範囲である請求項3記載の免疫学的ラテックス凝集反応試薬。 硫酸塩類が硫酸ナトリウムおよび/または硫酸アンモニウムである請求項3または4記載の免疫学的ラテックス凝集反応試薬。 ポリエチレングリコールを含有する請求項1または2記載の免疫学的ラテックス凝集反応試薬。 ポリエチレングリコールの含有量が0.05〜1.0W/V%の範囲である請求項6記載の免疫学的ラテックス凝集反応試薬。 抗体または抗原を結合させたラテックス粒子と、該ラテックス粒子を懸濁させる媒体とを含む免疫学的ラテックス凝集反応において、7.5〜15W/V%のジカルボン酸類を含有させたことを特徴とするプロゾーン現象の抑制方法。 ジカルボン酸類がリンゴ酸、グルタル酸、アジピン酸およびコハク酸、またはそれらの塩もしくはそれらのエステル類から成る群から選択される少なくとも1種である請求項8記載のプロゾーン現象の抑制方法。 硫酸塩類を含有させた請求項8または9記載のプロゾーン現象の抑制方法。 硫酸塩類の含有量が1.0〜10W/V%の範囲である請求項10記載のプロゾーン現象の抑制方法。 硫酸塩類が硫酸ナトリウムおよび/または硫酸アンモニウムである請求項10または11記載のプロゾーン現象の抑制方法。 ポリエチレングリコールを含有させた請求項8または9記載のプロゾーン現象の抑制方法。 ポリエチレングリコールの含有量が0.05〜1.0W/V%の範囲である請求項13記載のプロゾーン現象の抑制方法。