生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_直接型ビリルビンの測定方法および測定用試薬
出願番号:1998143282
年次:2004
IPC分類:7,G01N33/72,C12Q1/26,G01N21/78,G01N30/88


特許情報キャッシュ

小島 良 笹川 吉清 岡崎 泰典 長澤 健 JP 3541677 特許公報(B2) 20040409 1998143282 19980525 直接型ビリルビンの測定方法および測定用試薬 日東紡績株式会社 000003975 浅村 皓 100066692 浅村 肇 100072040 長沼 暉夫 100088926 池田 幸弘 100102897 小島 良 笹川 吉清 岡崎 泰典 長澤 健 JP 1997163524 19970606 JP 1997193303 19970704 20040714 7 G01N33/72 C12Q1/26 G01N21/78 G01N30/88 JP G01N33/72 B C12Q1/26 G01N21/78 Z G01N30/88 E 7 G01N 33/72 C12Q 1/26 G01N 21/78 G01N 30/88 特開平07−203962(JP,A) 特開平05−276992(JP,A) 米国特許第04115064(US,A) 薬理と治療,vol.24,p.S2033-S2039 3 1999072497 19990316 17 20020409 宮澤 浩 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、試料中に含まれる直接型ビリルビンの測定方法及びそれに用いる測定用試薬に関する。【0002】【従来の技術】ビリルビンは老化赤血球由来のヘモグロビンの代謝産物で胆汁色素の主成分である。血液中には、側鎖のプロピオン酸基が肝臓で酵素的に主にグルクロン酸とエステル結合し水溶性が増加した画分(抱合型)と、プロピオン酸基が遊離の状態のままであり水溶性が低い画分(遊離型)が主に存在する。前者はジアゾ試薬と容易に反応するために直接型ビリルビンと称され、後者はアルコールなどの反応促進剤の存在下において初めてジアゾ試薬と反応するため、間接型ビリルビンとして捉らえられている。間接型ビリルビンは、反応促進剤の存在下全てのビリルビンをジアゾ発色して求められる総ビリルビンから直接型ビリルビンを差し引いて求めることができる。これらの抱合型(直接型)および遊離型(間接型)の各ビリルビン濃度を分別定量することにより各種肝疾患、溶血性疾患などによる黄だんの鑑別および診断を行うことができるため、ビリルビンの測定は臨床検査における重要な項目となっている。【0003】直接型ビリルビンの定量法としては、以下に示すように、ジアゾ試薬による方法、ビリルビンオキシダーゼによる方法、高速液体クロマトグラフィーによる方法、化学的酸化剤による方法などが報告されている。【0004】A)ジアゾ試薬による直接型ビリルビンの測定方法ジアゾ試薬による方法は、ビリルビンがジアゾ試薬と反応してアゾビリルビンを生成し、その結果、ビリルビン本来の可視部極大吸収波長より長波長域にアゾビリルビンの極大吸収が発生するため、この波長における吸光度変化によりビリルビンを定量するものである。これらは、間接型ビリルビンの反応促進剤の種類、反応停止条件、アゾビリルビンの検出条件の違いにより種々のものが報告されている(Malloy,H.T.,Evelyn,K.A.;J.Biol.Chem.,119,481(1937);The determinationof bilirubin with the photoelectriccolorimeter;Jendrassik,L.,Grof,P.,Biochem.Z.,297.81(1938):Vereinfachte Photometrische Methoden zur Bestimmung des Blutbilirubins;Micha elesson,M.,Scand.J.Clin.Lab.Invest.,12(Supp.56),1〜8(1937);Bilirubin determination in serum and urine)。【0005】B)ビリルビンオキシダーゼによる直接型ビリルビンの測定方法ビリルビンオキシダーゼによる方法は、ビリルビンを含む検体にビリルビンオキシダーゼを作用させて、ビリルビンをビリベルジンに酸化させ、この際、ビリルビンの極大吸収波長域の吸光度が消失するので、この吸光度の減少量により定量するものである。この測定法では、間接ビリルビンの反応抑制の方法に種々の工夫がなされており、下記のごとく多数の方法が報告されている。【0006】B1)pH3.5〜4.5でビリルビンオキシダーゼを作用させることを特徴とする直接型ビリルビンの測定方法(特開昭59−125899)。B2)陰イオン界面活性剤を含有するpH5〜6の酸性緩衝液中で、ビリルビンオキシダーゼを作用させることを特徴とする直接型ビリルビンの測定方法(Shogo Otsuji:Clin.Biochem.,21,33〜38(1988)および特開昭60−152955)。B3)pH9〜10の緩衝液中でビリルビンオキシダーゼを作用させ生じた吸光度の変化を測定することを特徴とする抱合型ビリルビンの定量方法(特開昭62−58999)。B4)pH2.0〜3.3のフェロシアン化カリウムおよび/またはフェリシアン化カリウムを含む緩衝液中でビリルビンオキシダーゼを作用させ、生じた吸光度変化を測定することを特徴とする直接型ビリルビンの定量方法(特開昭64−5499)。B5)ビリルビンオキシダーゼとともに、フッ素化合物または還元剤を共存させることを特徴とする直接型ビリルビンの定量方法(特開平5−276992)。B6)ビリルビンオキシダーゼとともに、テトラピロール環化合物を共存させることを特徴とする直接型ビリルビンの定量方法(特開平7−231795)。【0007】C)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による直接型ビリルビンの測定方法HPLCによる直接型ビリルビンの測定法は、逆相カラムに有機溶剤の濃度勾配をかけビリルビンの画分を親水性/疎水性の序列により分画するものである。HPLCによると血清中のビリルビンは主にα、β、γ、δの4画分に分離され、それぞれ、α画分は遊離型ビリルビン、β画分は1分子中に2つある側鎖のプロピオン酸基の1つのみがグルクロン酸とエステル結合をしているビリルビン(ビリルビンモノグルクロナイド)、γ画分はプロピオン酸基が2つともグルクロン酸とエステル結合をしているビリルビン(ビリルビンジグルクロナイド)、δ画分はアルブミンとビリルビンが共有結合をしているものと同定されている。また、δ画分はγ画分とアルブミンが非酵素的に反応した結果、生成したものと推定されている(山本 俊夫:日内会誌78(11),36〜41(1989))。なお、HPLCでのα画分は上記A)のジアゾ試薬による方法では間接型ビリルビンに相当し、一方、βとγおよびδ画分は直接型ビリルビンに相当するとされる(John J.Lauff,Clin.Chem.,28(4)629〜637(1982))。HPLC法は、煩雑な検体前処理工程を極力省略した形で改良が進められており、種々の報告がなされている(Nakamura H.:Bunseki kagaku,36,352〜355(1987);Yukihiko Adachi:Gastroenterologia Japonica,23(3),268〜272(1988);加藤 裕子:近畿大医誌第14巻1号97〜112(1989).)。【0008】D)化学的酸化剤による直接型ビリルビンの測定方法化学的酸化剤によるものは、ビリルビンオキシダーゼの代わりに、低分子量の酸化剤を作用させて、ビリルビンをビリベルジンに酸化し、この際のビリルビンに基づく吸光度減少量により定量するものである。これらも、間接型ビリルビンの反応抑制の方法に種々の工夫がなされており、下記のごとく報告されている。D1)銅イオンおよびチオ尿素もしくはその誘導体を被検液に作用させることを特徴とする直接型ビリルビンの定量方法(特開昭63−118662)。D2)バナジン酸イオンまたは3価のマンガンイオンを酸化剤として作用させ、試料の光学的変化を測定することを特徴とするビリルビンの定量方法(特開平5−18978)。この方法で直接型ビリルビンを測定するためには、間接型ビリルビンの反応抑制剤として、ヒドラジン類、ヒドロキシルアミン類、オキシム類、脂肪族多価アミン類、フェノール類、水溶性高分子およびHLBが15以上の非イオン型界面活性剤からなる群より選ばれた1種以上の化合物を使用する。D3)亜硝酸を酸化剤として作用させ、試料の光学的変化を測定することを特徴とするビリルビンの定量方法(WO96−17251)。この方法で直接型ビリルビンを測定するためには、間接型ビリルビンの反応抑制剤として、HLBが12〜15のポリオキシエチレン(n−アルキルあるいはiso−アルキル)エーテル、チオ尿素、ヒドラジン、ポリビニルピロリドン等を使用する。【0009】上記A)〜D)の各測定法にはそれぞれ一長一短があり、現在のところ、必ずしも、満足のいく測定方法は存在しない。以下に各測定法の問題点を列記する。【0010】ジアゾ試薬による方法A)は、反応促進剤が共存しない場合での反応をジアゾ直接反応と定義し、直接型ビリルビンの名称の由来ともなっている。しかしながら、このジアゾ直接反応は間接型ビリルビンの一部に対しても起こり得ることが多数報告がなされている(例えば、Killenberg,P.G.,Gastroenterology,78,1011〜1015(1980);Blankaert,N.,J.Lab.Clin.Med.,96,198〜212(1980);真鍋幸男:分析化学,30,736〜740(1981);Chan,K.M.,Clin.Chem.,31,1560〜1563(1985);高坂彰:検査と技術14 971〜975(1986);足立幸彦:生物試料分析 9 33〜42(1986))。従ってジアゾ直接反応により定義されたビリルビン測定値は、正確には“直接型ビリルビン”を測定しているとは言い切れない。【0011】ビリルビンオキシダーゼによる方法B)は、ジアゾ直接反応により定義されたビリルビン測定値と近似し得るように測定系を開発した結果、間接型ビリルビンの一部に対しても酸化反応が認められ、一般的には“直接型ビリルビン”を測定しているとは言い切れない。その中で、ビリルビンオキシダーゼにフッ素化合物を共存させる方法(特開平5−276992)やテトラピロール環化合物を共存させる方法(特開平7−231795)は、間接型ビリルビンに対する反応を回避し得るものである。しかし、フッ素化合物を使用するため環境汚染に問題を有し、またテトラピロール環化合物を試薬中に存在させるため安定性に欠け、溶液状態で長時間使用することに問題を有する。【0012】高速液体クロマトグラフィーによる方法C)は、高い分析性能を有するが1検体の処理に約1時間を要するので、多数の検体を処理するには不向きである。また高価で特殊な装置を必要とし汎用性に欠ける。【0013】化学的酸化剤による方法D)は、ビリルビンオキシダーゼによるものと同様にジアゾ直接反応により定義された直接型ビリルビン測定値と近似し得るように測定系を開発した結果、間接型ビリルビンの一部に対しても酸化反応が認められ、やはり正確には“直接型ビリルビン”を測定しているとは言い切れない。【0014】以上述べてきたように、間接型ビリルビンに対する反応を完全に回避し、安定かつ安全な直接型ビリルビンの測定方法は現在のところ必ずしも存在せず、この開発が待ち望まれている。【0015】【発明が解決しようとする課題】本発明は上記した現状に鑑みなされたもので、間接型ビリルビンの干渉を完全に回避し、廃液による環境汚染等の危険性のない直接型ビリルビンの測定方法および測定用試薬の提供をその目的とする。【0016】【課題を解決するための手段】本発明者らはビリルビンオキシダーゼの至適pH域において、間接型ビリルビンや直接型ビリルビンの反応性を鋭意検討した結果、ビリルビンにビリルビンオキシダーゼを作用させる際に、チオシアン酸イオン、ヒドラジド類、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)、または100mM〜800mMのカリウムイオンを共存させた場合、間接型ビリルビンの酸化が完全に抑制されると共に、直接型ビリルビンの酸化が定量的に進行し直接型ビリルビンを正確に測定できることを見いだし本発明を完成するに至った。【0017】すなわち、本発明は、試料にビリルビンオキシダーゼを作用させ、該試料の光学的変化により試料中の直接型ビリルビンを測定する方法において、チオシアン酸イオン、ヒドラジド類、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)及び100mM〜800mMのカリウムイオンから選ばれる間接型ビリルビン反応抑制剤の1種以上を共存させてビリルビンオキシダーゼを作用させることを特徴とする直接型ビリルビンの測定方法である。更に本発明は、必須構成成分として、i)ビリルビンオキシダーゼとii)チオシアン酸イオン、ヒドラジド類、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸及び100mM〜800mMのカリウムイオンから選ばれる間接型ビリルビン反応抑制剤の1種以上とを含むことを特徴とする直接型ビリルビン測定用試薬である。【0018】【発明の実施の形態】本発明では、試料は、直接型ビリルビンまたは間接型ビリルビンを含むものであれば特に限定しない。通常、試料は、血しょう、血清、尿等の生態体液試料、またはこれらのモデルサンプルである。【0019】本発明の方法においては、間接型ビリルビン反応抑制剤として用いるチオシアン酸イオンとしては、特に限定されないが、チオシアン酸アルカリ金属、チオシアン酸アルカリ土類金属、チオシアン酸アンモニウム等が挙げられるが、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム等が好ましい。【0020】ヒドラジド類としては、アセチルヒドラジド、フタルヒドラジド、イソフタロイルジヒドラジド、テレフタリックジヒドラジド、ベンゼンスルフォニルヒドラジド等を例示できる。【0021】還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)または還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)は、直接、反応試薬中に共存させてもよく、あるいはアルコールデヒドロゲナーゼ、グルコール−6−リン酸デヒドロゲナーゼ等の酵素反応により酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドから誘導したものを用いても本発明の目的を達することができる。【0022】カリウムイオンとしては、塩化カリウム、臭化カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、酒石酸カリウム、乳酸カリウム、フタル酸カリウム、硫酸カリウム等が限定されずに使用しうる。【0023】本発明においては、試料中のビリルビンにビリルビンオキシダーゼを作用させる際、その酵素反応液中に共存させる間接型ビリルビン反応抑制剤は、低濃度に過ぎると間接型ビリルビンの反応抑制効果が充分に得にくく、また高濃度に過ぎるとビリルビンオキシダーゼの阻害性が昂進し直接型ビリルビンの酸化反応が妨害されやすい。従って、間接型ビリルビン反応抑制剤として、チオシアン酸イオン又はヒドラジド類を用いる場合には酵素反応液中において、0.1mM〜100mMの濃度が好ましく、0.2mM〜50mMの濃度がさらに好ましい。NADHまたはNADPHを用いる場合には、0.1mM〜10mM、好ましくは0.2mM〜5mMの濃度範囲である。【0024】カリウムイオンを用いる場合には、酵素反応液中で、カリウムイオン濃度は、100mM〜800mMが好ましく、110mM〜600mMがさらに好ましく、120〜400mMが特に好ましい。カリウムイオン濃度が100mMを超えないと、間接型ビリルビンの反応抑制効果が弱くなる。カリウムイオン濃度が800mMを越えるビリルビンオキシダーゼの阻害性が昂進し直接型ビリルビンの酸化反応が妨害されやすい。【0025】本発明の方法においては、間接型ビリルビン反応抑制剤は、2種以上を用いてもよい。例えば、チオシアン酸イオン、ヒドラジド類、NADH及びNADPHから選ばれる2種以上の反応抑制剤を併用することができる。また、チオシアン酸イオン、ヒドラジド類、NADH及びNADPHから選ばれる1種または2種以上の反応抑制剤とカリウムイオンとを併用することもできる。【0026】本発明の方法において、ビリルビンオキシダーゼは、特に限定されないが、Myrothecium verrucaria 由来のビリルビンオキシダーゼ(天野製薬(株)から入手可能)あるいはTrachyderma tsunodae 由来のビリルビンオキシダーゼ(宝酒造(株)から入手可能)あるいはPleurotus 属由来のビリルビンオキシダーゼ(株式会社盛進から入手可能)等が挙げられ、その必要量は最終反応液中において、それぞれ0.001〜10U/mlの濃度にて使用するのが好ましい。より好ましくは0.01〜1U/ml、特に好ましくは0.02〜0.5U/mlの濃度範囲である。【0027】ビリルビンオキシダーゼを作用させる際、pH範囲は、酵素活性が至適状態で発現しうる範囲であれば限定されないが、pH4.5〜6.5が好ましく、pH5.0〜6.0が特に好ましい。使用する緩衝液はこのpH範囲において緩衝能を有するものであれば特に限定されないが、フタル酸水素カリウム/水酸化ナトリウム緩衝液、クエン酸ナトリウム/水酸化ナトリウム緩衝液、リンゴ酸/水酸化ナトリウム緩衝液等を含むものが挙げられる。特に緩衝液の成分として、フタル酸水素カリウム等のカリウム塩を含む場合、カリウムイオンが、間接型ビリルビン反応抑制効果を有する点から好ましい。【0028】本発明では、試料中の直接型ビリルビンを、例えば、ビリルビンオキシダーゼおよび間接型ビリルビン反応抑制剤の1種以上を含む直接型ビリルビン測定用試薬を用いて測定することができる。【0029】直接型ビリルビン測定用試薬としては、例えば、チオシアン酸イオン又はヒドラジド類を含む液を第1試薬液とし、また、ビリルビンオキシダーゼを含む液を第2試薬液とし、これら2つの試薬から構成されるキットとすることが好ましい。第1試薬液には、さらにカリウムイオンを含むことが好ましい。【0030】あるいは、例えば、pH4.5〜6.5の緩衝液、好ましくはpH5.0〜6.0の緩衝液を第1試薬液とし、また、ビリルビンオキシダーゼとNADH、NADPHまたはカリウムイオンとを含む液を第2試薬液とし、これら2つの試薬から構成されるキットとすることがNADH、NADPHまたはビリルビンオキシダーゼの安定性から好ましい。NADHまたはNADPHを用いる場合、NADHまたはNADPHの溶液状態での安定性から、第2試薬液のpHは、9以上が好ましく、9〜11.0がさらに好ましい。さらにカリウムイオンを含むことが好ましい。間接型ビリルビンオキシダーゼの反応抑制剤としてカリウムイオンを単独で用いる場合、ビリルビンオキシダーゼを含む第2試薬液のpHは、7〜11がビリルビンオキシダーゼの安定性から好ましい。緩衝液の組成としては、前記したように、フタル酸水素カリウム/水酸化ナトリウム緩衝液、クエン酸ナトリウム/水酸化ナトリウム緩衝液、リンゴ酸/水酸化ナトリウム緩衝液等を含むものを例示できる。第1試薬液には、さらにカリウムイオンを含むことが好ましい。【0031】本発明の方法は、例えば、上記したキットにより、以下のように実施できる。試料と上記の第1試薬液とを混合し、この混合液中のビリルビンに基づく波長域(430〜460nm)の特定の波長、好ましくは波長450nmにおける吸光度を測定する(吸光度1)。ついで、得られる液にビリルビンオキシダーゼを含む第2試薬液を添加して25〜40℃で、3〜15分間、ビリルビンの酸化反応を行った後、再度溶液中のビリルビンに基づく特定の波長における吸光度を測定する(吸光度2)。得られた吸光度1および吸光度2の値に液量補正等を処した後、酸化反応前後での吸光度変化量を求める。この値と、予め濃度既知の標準液を用いて上記と同様の操作により得られた吸光度変化量に基づいて作成した検量線から、試料中の直接型ビリルビン濃度を求めることができる。このようなキットによる直接型ビリルビンの測定方法は、日立7070型自動分析装置等の汎用型の自動分析装置に適用可能である。なお、試料は、0.005〜2mlが好ましい。【0032】直接型ビリルビン測定用試薬に含まれるチオシアン酸イオン、ヒドラジド類、カリウムイオンは水溶液中でとくに不安定ではなく、またNADHまたはNADPHおよびビリルビンオキシダーゼは、pH9以上では水溶液中でとくに不安定ではないので、この試薬は、水溶液の状態で液状試薬として使用することも可能である。また、直接型ビリルビン測定用試薬には、他の試薬類、例えば防腐剤、キレート化剤、界面活性剤等の通常の試薬やキットに使用し得るものであれば公知の方法に準じて適宜選択して使用することができる。【0033】【実施例】実施例1〜6および比較例1間接型ビリルビンの抑制効果ビリルビンオキシダーゼを作用させる際、100mM〜800mMのカリウムイオン(実施例1)、チオシアン酸イオン(実施例2)、ヒドラジド類(実施例3及び実施例4)、NADH(実施例5)、NADPH(実施例6)を共存させると、間接型ビリルビンの酸化反応が抑制されるかどうかを観察するため以下の実験を行った。なお、比較例1では、これらチオシアン酸イオン等を含まない条件で行った。それらの試薬、試料、測定、結果を以下に示す。【0034】【0035】(2)試料試料は、間接型ビリルビン濃度50mg/dlでありかつヒト血清アルブミン濃度6.0g/lのものを用いた。その試料は、以下のようにして調整した。間接型ビリルビン5mgを秤量し0.4mlのジメチルスルホキシドに分散させる。この分散した液に、0.4mlの100mM炭酸ナトリウム溶液を加え間接型ビリルビンを溶解させた直後、ヒト血清アルブミンを含む100mM Tris緩衝液(pH7.00)9.2mlにて希釈して試料を調製した。【0036】(3)比較例1及び実施例1〜6での測定日立7070型自動分析装置において、試料10μl、第1試薬液300μl、第2試薬液75μlの条件で、主波長450nm、副波長546nmにおける吸光度変化を2Point End法にて求めた。即ち、自動分析装置上で第1試薬液と試料とを混合し、37℃で5分間インキュベーションした後、この溶液中のビリルビンに基づく吸光度を主波長450nm、副波長546nmにて測定する(吸光度1)。ついで、得られる溶液に、ビリルビンオキシダーゼを含む第2試薬液を添加して37℃で、5分間ビリルビンの酸化反応を行った後、再度、溶液中のビリルビンに基づく吸光度を前記の波長で測定する(吸光度2)。得られた吸光度1及び吸光度2の値に液量補正等を処した後、酸化反応前後での吸光度減少量を求める。これらの測定及び計算は、自動分析装置で自動的に行われる。【0037】(4)比較例1及び実施例1〜6の結果比較例1及び実施例1〜6における間接型ビリルビンでの吸光度減少量の結果を表1に示す。また、比較例1及び実施例1〜6における自動分析装置上における反応経過過程(反応タイムコース)を図1〜6に示す。【0038】【表1】【0039】表1及び図1〜図6から明らかなように、本発明に基づく方法(実施例1〜6)では、間接型ビリルビンの酸化に基づく吸光度減少量は、自動分析装置の測定誤差程度であり、反応タイムコースにおいても吸光度の減少は認められない。これに対して、比較例1では明らかな間接型ビリルビンの酸化に伴う吸光度の減少が認められる。これにより、チオシアン酸イオン、ヒドラジド類、100mM〜800mMのカリウムイオン、NADH、NADPH共存下では、いずれも、ビリルビンオキシダーゼによる間接型ビリルビンの反応が抑制されることが明らかにされた。【0040】実施例7〜12直接型及び間接型ビリルビンとを含む試料中の直接型ビリルビンの測定(1)試料の調製100mM Tris緩衝液(pH7.00)中に合成抱合型ビリルビンであるジタウロビリルビンを5mg/dl(ビリルビン相当濃度)とヒト血清アルブミンを6.0g/l含む溶液を直接型ビリルビン溶液として調整した。また、それとは別に、100mM Tris緩衝液(pH7.00)中に非抱合型ビリルビンを5mg/dlとヒト血清アルブミンを6.0g/l含む溶液を間接型ビリルビン溶液として調製した。次いで、直接型ビリルビン溶液を間接型ビリルビン溶液にて希釈し、総ビリルビン濃度が同一(5mg/dl)でかつ直接型ビリルビン濃度が異なる種々の試料を調整した。なお、試料は、総ビリルビンに対する直接型ビリルビンの比が0.0、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0の6種のものを調製した。【0041】(2)測定条件この試料を用いた以外は、実施例1〜6記載の測定試薬、測定条件で、吸光度減少量を測定し、それぞれ、実施例7(カリウムイオン使用)、実施例8(チオシアン酸イオン使用)、実施例9(ヒドラジド類使用)、実施例10(ヒドラジド類使用)、実施例11(NADH)、実施例12(NADPH)とした。【0042】(3)結果結果を図7〜12に示す。図7〜12では、横軸に総ビリルビンに対する直接ビリルビンの比、縦軸に吸光度減少量を表わしている。本発明の方法(実施例7〜12)では、直接型ビリルビンの量に比例して吸光度が大きくなり、原点回帰の良好な希釈直線性が得られた。これは、実施例7〜12では、間接型ビリルビンの干渉なく、直接型ビリルビンを選択的に測定していることを示している。【0043】比較例2従来法による直接型ビリルビンと間接型ビリルビンとを含む試料中の直接型ビリルビンの測定一方、実施例7〜12に用いた試料を用いて、従来法で直接型ビリルビンを測定した。従来法は、pH3.5〜4.5の条件でビリルビンオキシダーゼを作用させる測定法(特開昭59−125899;Shogo otsuji,Clin.Biochem.,21,33〜38(1988))で行った。即ち、以下の組成の試薬条件によるものである。【0044】【0045】(2)測定法従来法の測定条件は、試薬液以外は、実施例1記載の測定条件と同一とした。【0046】(3)結果結果を図7〜12に示す。従来法(比較例2)では、試料中の直接型ビリルビン濃度と測定された吸光度との間に直線性が得られないことが判明した。従来法では、試料中の間接型ビリルビンの干渉を大きく受け、試料中の直接型ビリルビンを正確に測定していないことを示す。【0047】実施例13〜18及び比較例3本発明の測定方法条件下でビリルビン高値患者検体中の間接型ビリルビンが反応しないことをHPLCで確認した例(1)試料試料としてビリルビン高値の患者プール血清検体を用いた。血清検体に対しては、硫酸ナトリウムによる塩析を行わず、未処理のまま分析に処した。試料中のグロブリンがカラムに吸着し劣化を早める結果となるが、ビリルビン画分の変性を防止することを目的とした為である。【0048】(2)試薬実施例13(カリウムイオン使用)、実施例14(チオシアン酸イオン使用)、実施例15(ヒドラジド類使用)、実施例16(ヒドラジド類使用)、実施例17(NADH使用)、実施例18(NADPH使用)では、それぞれ、実施例1〜6で用いた試薬を使用した。比較例3では、比較例2で用いた試薬を使用した。【0049】(3)ビリルビンオキシダーゼによる試料中のビリルビンの酸化反応試料16μlに対して第1試薬液480μlを添加し、37℃で5分間加温した。さらに、得られる液に、120μlの第2試薬液を添加し、37℃で5分間加温後、120μlの2%アスコルビン酸水溶液を添加してビリルビンオキシダーゼの反応を停止させた。【0050】(4)HPLCによる分析HPLCの分析は、文献(John J. Lauff,Clin.Chem,28(4),629〜637(1982))記載の方法により行い、反応前後における間接型ビリルビンに基づくピーク面積の変化を調べた。反応前のデータは、第2試薬液として生理食塩水を用いた以外は、上記した酸化反応と同様の操作を行い、間接型ビリルビンに基づくピーク面積を求めた。HPLCは、日立HPLCシステム(Column Oven L−7300、UV Detector L−7400、Pump L−7100、Integrator D−7500)に関東化学(株)製の逆相系カラムLichrspher 100 RP−18(10μm)を接続して使用した。すなわち、上記の酸化反応で得られる液を、0.45μmのメンブランフィルターにてろ過し、ろ液150μlをHPLCのカラムに注入して反応後の間接ビリルビンに基づくピーク面積を求めた。溶出は、ビリルビン画分を、A液:(精製水950容/2−メトキシエタノール50容/りん酸にてpH2.1に調製)とB液:(イソプロパノール950容/2−メトキシエタノール50容/りん酸2.5容)の2液間におけるイソプロパノールの直線勾配により行い、450nmの波長により検出した。【0051】(5)結果反応前のデータを100とし、そのデータと反応後の間接型ビリルビンに基づくピーク面積のデータとの比較により、間接型ビリルビンの残存比率を求めた。結果を表2に示す。反応前後で間接型ビリルビンに基づくピーク面積がほとんど変わらず、本発明の測定条件下では、間接型ビリルビンが反応しないことが確認された。一方、比較例3(従来法)では、間接型ビリルビンが16.5%減少していた。従来法の条件下では、間接型ビリルビンの一部が反応したことを示している。【0052】【表2】【0053】【発明の効果】本発明によれば、試料中の直接型ビリルビンを間接ビリルビンの影響なく選択的に測定することができ、臨床検査の分野において有用である。【図面の簡単な説明】【図1】実施例1及び比較例1での反応タイムコースを示す。横軸に測光ポイント(1ポイントは約20秒)、縦軸には、吸光度×10000を示す。【図2】実施例2及び比較例1での反応タイムコースを示す。横軸に測光ポイント(1ポイントは約20秒)、縦軸には、吸光度×10000を示す。【図3】実施例3及び比較例1での反応タイムコースを示す。横軸に測光ポイント(1ポイントは約20秒)、縦軸には、吸光度×10000を示す。【図4】実施例4及び比較例1での反応タイムコースを示す。横軸に測光ポイント(1ポイントは約20秒)、縦軸には、吸光度×10000を示す。【図5】実施例5及び比較例1でのビリルビンオキシダーゼによる間接型ビリルビンの反応タイムコースを示す。横軸に測光ポイント(1ポイントは約20秒)、縦軸には、吸光度×10000を示す。【図6】実施例6及び比較例1でのビリルビンオキシダーゼによる間接型ビリルビンの反応タイムコースを示す。横軸に測光ポイント(1ポイントは約20秒)、縦軸には、吸光度×10000を示す。【図7】実施例7及び比較例2での結果を示す。横軸に総ビリルビンに対する直接型ビリルビンの比、縦軸に吸光度減少量を示す。【図8】実施例8及び比較例2での結果を示す。横軸に総ビリルビンに対する直接型ビリルビンの比、縦軸に吸光度減少量を示す。【図9】実施例9及び比較例2での結果を示す。横軸に総ビリルビンに対する直接型ビリルビンの比、縦軸に吸光度減少量を示す。【図10】実施例10及び比較例2での結果を示す。横軸に総ビリルビンに対する直接型ビリルビンの比、縦軸に吸光度減少量を示す。【図11】実施例11及び比較例2での結果を示す。横軸に総ビリルビンに対する直接型ビリルビンの比、縦軸に吸光度減少量を示す。【図12】実施例12及び比較例2での結果を示す。横軸に総ビリルビンに対する直接型ビリルビンの比、縦軸に吸光度減少量を示す。 ビリルビンを含む試料にビリルビンオキシダーゼを作用させ、該試料の光学的変化により試料中の直接型ビリルビンを測定する方法において、チオシアン酸イオン、ヒドラジド類、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド及び還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸から選ばれる間接型ビリルビン反応抑制剤の1種以上を共存させてビリルビンオキシダーゼを作用させることを特徴とする直接型ビリルビンの測定方法。 ビリルビンオキシダーゼを作用させるときのpHが5.0〜6.0である請求項1の直接型ビリルビンの測定方法。 必須成分として、i)ビリルビンオキシダーゼとii)チオシアン酸イオン、ヒドラジド類、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド及び還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸から選ばれる間接型ビリルビン反応抑制剤の1種以上とを含むことを特徴とする直接型ビリルビン測定用試薬。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る