タイトル: | 特許公報(B2)_大豆発酵食品の製造方法 |
出願番号: | 1998133558 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | A23L 1/20,A23L 1/211,C12N 1/20,C12R 1/46 |
荒 勝俊 吉松 正 JP 3824776 特許公報(B2) 20060707 1998133558 19980515 大豆発酵食品の製造方法 花王株式会社 000000918 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 的場 ひろみ 100101317 荒 勝俊 吉松 正 20060920 A23L 1/20 20060101AFI20060831BHJP A23L 1/211 20060101ALN20060831BHJP C12N 1/20 20060101ALN20060831BHJP C12R 1/46 20060101ALN20060831BHJP JPA23L1/20 EA23L1/211C12N1/20 AC12N1/20 AC12R1:46 A23L 1/20 A23L 1/211 C12N 1/20 C12R 1/46 JSTPlus(JDream2) BIOSIS(DIALOG) 特開平06−276979(JP,A) 特開平03−201944(JP,A) 特開昭59−227241(JP,A) 特開昭53−104764(JP,A) 特開昭49−101569(JP,A) 特開昭47−016666(JP,A) 4 FERM P-16574 1999318371 19991124 8 20041020 中島 庸子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、苦み、渋み、収斂味等の不快味、青臭み、刺激臭等の不快臭の改善された大豆発酵食品及びその製造方法に関する。【0002】【従来の技術】近年の健康志向の高まりから、良質な植物性蛋白質を含有する豆乳等の大豆加工食品が注目されている。しかし豆乳は2−ヘキサノールに由来する青臭み、サポニンに由来する苦み、イソフラボノイドに由来する収斂味等の不快味、不快臭を有するため、十分に市場を拡大することができなかった。このため、豆乳を乳酸発酵することにより、豆乳の風味を改善する研究がなされている(特開平6−276979号公報、特開平5−184320号公報、特開昭59−227241号公報、特開昭51−22070号公報、特開昭63−7743号公報、特開平3−201944号公報)。【0003】【発明が解決しようとする課題】しかし、上記技術で用いられる乳酸菌は主発酵においてラクトースまたはグルコースを必要とし、豆乳中にはこれらの糖がほとんど存在しないため、乳酸菌が十分増殖せず、このため豆乳の不快味、不快臭を十分に除去することが困難であった。またラクトースやグルコースを添加すると風味が変質してしまうという問題があった。さらに2種類以上の乳酸菌を併用する場合が多いため、菌叢のコントロールが難しく、安定した品質を得難かった。【0004】したがって本発明は、大豆食品の不快味、不快臭を除去した大豆発酵食品及びその製造方法を提供することを目的とする。【0005】【課題を解決するための手段】本発明者らは、ラクトースを添加した豆乳中で増殖する乳酸菌を検索した結果、ストレプトコッカス エスピー(Streptococcus sp.)KSM−85−4株を用いれば、ラクトースやグルコースが存在しない系で十分に増殖し、乳酸生産性、香気性に優れ、大豆食品特有の不快味、不快臭を除去した大豆発酵食品が得られ、さらに菌叢のコントロールが容易なため安定した品質のものを簡便に製造できることを見出し、本発明を完成した。【0006】すなわち本発明は、大豆食品を、ストレプトコッカス エスピーKSM−85−4株(FERM P−16574)で発酵させることを特徴とする大豆発酵食品の製造方法を提供するものである。本発明はまた大豆食品を、ストレプトコッカス エスピーKSM−85−4株(FERM P−16574)で発酵させた大豆発酵食品を提供するものである。【0007】【発明の実施の形態】本発明に用いるストレプトコッカス エスピーKSM−85−4株は醤油から常法に従い採取されたものであり、以下の菌学的性質を有する。なお菌学的性質は、特殊なものを除き一般乳酸菌接種用培地(日水製薬(株)製)を用いて37℃で1〜3日間培養したものを、主にアピ20ストレップ(bioMerieux社製)使用して検定した。【0008】菌学的性質形態:直径0.7〜1.1μmの球形、連鎖状発酵性:ホモ発酵グラム染色性:(+)硝酸塩還元能:(−)カタラーゼ反応:(−)馬尿酸ナトリウム加水分解:(−)ピルビン酸ナトリウムからのアセトイン産生:(−)エスクリンのβ−グルコシダーゼ分解:(−)ピロリドニルアリルアミダーゼ:(−)α−ガラクトシダーゼ:(−)β−グルクロニダーゼ:(−)β−ガラクトシダーゼ:(+)アルカリフォスファターゼ:(+)ロイシンアリルアミダーゼ:(+)アルギニンジヒドロラーゼ:(−)表面発育性:(−)ガス発生:(−)溶血反応:(+)(α溶血)ゼラチン液化能:(−)リトマスミルク(48時間後)凝固:(+)還元:(+)赤変:(+)牛乳中の最高酸度:0.68%滴定酸度生育温度:10℃:(−)20℃:(±)30℃:(+)40℃:(+)45℃:(+)(w)50℃:(−)生産温度:37℃60℃、30分加熱に対する抵抗性:(−)耐塩性:(+)(2%食塩培地に生育する)耐アルカリ性:(−)(0.01%濃度で生育せず)アセトイン及びジアセチル産生能:(−)糖利用性:スターチ(−)、デキストリン(+)、イヌリン(−)、サリシン(−)、ラフィノース(−)、マルトース(+)、シュークロース(+)、ラクトース(+)、グルコース(+)、マンノース(+)、ガラクトース(+)、アラビノース(−)、キシロース(−)、マンニトール(−)、リボース(−)、ソルビトール(−)、トレハロース(−)、グリコーゲン(−)酸素要求性:通性嫌気性【0009】以上の菌学的性質について「Bergey's Manual of Systematic Bacteriology」(Williams & Wilkins社、1984年)の記載に準じて検討したところ、該菌株はストレプトコッカス ミティス(Streptococcus Mitis)に類似の性質を有していた。しかし、既知のストレプトコッカス ミティスの諸性質とは完全に一致しない新規な微生物であるため、該菌株を工業技術院生命工学工業技術研究所にストレプトコッカス エスピーKSM−85−4(FERMP−16574)として寄託した。【0010】本発明において大豆食品とは、大豆そのものまたはこれを加熱、抽出、分離、凝固等したものであり、発酵したものは含まない。このうち豆乳が好ましい。豆乳は全脂豆乳、脱脂豆乳、調整豆乳、無調整豆乳のいずれでもよい。豆乳は大豆またはその粉砕物から常法により製造できる。豆乳中の固形分含量に特に制限はないが、例えば1〜30重量%が好ましい。【0011】本発明の大豆発酵食品は以下の方法で製造できる。まずストレプトコッカスエスピーKSM−85−4株を用いてスターターを作成する。固形分濃度約6〜12%の脱脂乳、還元脱脂乳及び/または全脂乳溶液に必要に応じてグルコース等の糖類、酵母エキス等を添加し、殺菌、冷却したスターター用調製液に、ストレプトコッカス エスピーKSM−85−4株を接種し、好ましくは30〜45℃、特に好ましくは35〜40℃で24〜48時間培養する。【0012】次いで殺菌された大豆食品に、上記スターターを好ましくは1〜10%、特に好ましくは5〜10%添加し、好ましくは30〜45℃、特に好ましくは35〜40℃で、好ましくは18〜48時間、特に好ましくは20〜30時間発酵することにより、大豆発酵食品を製造できる。なお大豆食品調製の際またはスターター添加時にフォスファチジル酸を好ましくは0.001〜0.1%、特に好ましくは約0.01%、ジグリセリドを好ましくは0.1〜2%、特に好ましくは約1%添加してもよい。これにより不快味、不快臭の改善効果がさらに向上する。また得られた大豆発酵食品を凍結乾燥等により粉末化すると、さらに青臭みを除去できる。【0013】大豆食品が豆乳である場合、本発明の大豆発酵食品は、白色〜淡黄色でヨーグルト様に凝固し、滑らかな組織を有する。pHは好ましくは4.6〜5.0、特に好ましくは約4.8であり、乳酸酸度は好ましくは0.1〜0.6%、特に好ましくは0.3〜0.6%である。また酸味は顕著でなく、爽やかでマイルドであり、チーズ、バターフレーバーのようなアセトイン、ジアセチル等の独特の臭いもなくさっぱりしており、不快味、不快臭は大幅に除去されている。【0014】得られた大豆発酵食品は、例えば10℃以下で冷蔵することによりヨーグルト様食品として喫食できる。【0015】【実施例】次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明する。【0016】実施例1及び比較例1〜7無調整豆乳(固形分8%以上、紀文フードケミファ社製)1000mlに、ストレプトコッカス エスピーKSM−85−4株の種発酵物(スターター)50mlを添加し、37℃で24時間培養して大豆発酵食品を得た(実施例1)。また20%ラクトースを50mlを無調整豆乳950mlに添加し、これに表1に示す各スターターを50ml添加し、実施例1と同様にして培養し、大豆発酵食品を得た(比較例1〜7)。別に対照として未発酵の無調整豆乳を用いた。【0017】【表1】【0018】試験例1上記の各大豆発酵食品及び未調整豆乳のpHを測定し、凝固物の性状、酸味、不快臭の有無、アセトイン・ジアセチル臭の有無及び不快味の有無を評価した。結果を表1に示す。(評価基準)酸味:++:酸味が非常に強い+:酸味が強い±:マイルドで爽やかな酸味−:酸味が弱い不快臭の有無、アセトイン・ジアセチル臭の有無及び不快味の有無:++:非常に強い+:強い±:ほとんどない−:ない【0019】比較例4〜7は豆乳の不快臭、不快味の除去効果がほとんどなかった。比較例1〜3は多糖生成によるマスキング作用により不快臭、不快味はやや改善したが、水のように無味、無臭に近いものであった。実施例1は爽やかで適度な酸味があり、大豆特有の青臭み等の不快臭及びイソフラボノイドやサポニン由来の不快味が非常に低減していた。【0020】比較例8比較例2において、ラクトコッカス クレモリスの代わりに市販のブルガリアヨーグルト50mlを添加した以外は比較例2と同様にして大豆発酵食品を得た。【0021】試験例25名のパネラーにより、実施例1及び比較例8の大豆発酵食品について、香りの質、味の質、後味の質、後味の強さ、異臭の強さ、異味の強さ及び全体評価を、良い、普通、悪いの3段階で評価した。結果を図1(実施例1)及び図2(比較例8)に示す。実施例1はすべての項目で優れており、特に異味、異臭の点で顕著に優れていた。【0022】比較例9比較例2において、さらに市販のブルガリアヨーグルト50mlを添加した以外は比較例2と同様にして大豆発酵食品を得た。【0023】試験例38名のパネラーにより、実施例1及び比較例9の大豆発酵食品について、試験例2と同様に評価した。結果を図1(実施例1)及び図3(比較例9)に示す。実施例1はすべての項目で優れていた。【0024】【発明の効果】本発明の方法により、乳酸生産性、香気性に優れ、大豆食品特有の不快味、不快臭を除去した大豆発酵食品が得られる。また菌叢のコントロールが容易なため、安定した品質のものを簡便に製造できる。【図面の簡単な説明】【図1】ストレプトコッカス エスピーKSM−85−4株を用いて発酵させた大豆発酵食品の風味評価を示す図である。【図2】市販のブルガリアヨーグルトを用いて発酵させた大豆発酵食品の風味評価を示す図である。【図3】市販のブルガリアヨーグルト及びラクトコッカス・クレモリスを用いて発酵させた大豆発酵食品の風味評価を示す図である。 大豆食品を、ストレプトコッカス エスピー(Streptococcus sp.)KSM−85−4株(FERM P−16574)で発酵させることを特徴とする大豆発酵食品の製造方法。 大豆食品が豆乳である請求項1記載の製造方法。 大豆食品を、ストレプトコッカス エスピーKSM−85−4株(FERM P−16574)で発酵させた大豆発酵食品。 大豆食品が豆乳である請求項3記載の大豆発酵食品。