タイトル: | 特許公報(B2)_採血管 |
出願番号: | 1998132459 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,A61B5/15,G01N33/48 |
立川 浩一 JP 3640798 特許公報(B2) 20050128 1998132459 19980514 採血管 テルモ株式会社 000109543 立川 浩一 20050420 7 A61B5/15 G01N33/48 JP A61B5/14 300B G01N33/48 J 7 A61B 5/15 G01N 33/48 特開平01−313040(JP,A) 特開昭57−045848(JP,A) 特開平05−157747(JP,A) 9 1999318867 19991124 7 20030130 上田 正樹 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、血液検査に用いる血液試料を採取するための採血管に関する。【0002】【従来の技術】採血後の血液凝固時間を短縮するべく採血管内に封入される血液凝固促進剤としては、シリカ粒子、トロンビン、蛇毒抽出物等が用いられ、この内1種類の血液凝固促進剤が単独で封入されているものが多かった。従来用いられているシリカ粒子では血液凝固時間に20分を要するが、トロンビン、蛇毒抽出物等の血液凝固促進剤では20分より短い時間で凝固できた。しかしながら、トロンビン、蛇毒抽出物等の血液凝固促進剤では凝固時間に個人差があり、おおよそ5分〜20分と大きなばらつきを生じていた。【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、採血管内に異なる種類の血液凝固促進物質を配置することにより、凝固時間が早く、個人差のない、確実かつ安定した血液検査が行える採血管を提供することである。【0004】【課題を解決するための手段】上記課題は、次の手段により達成される。【0005】(1)内部にフィルムが保持され、フィルムの一方の面に第1の血液凝固促進剤が付着され、かつ他方の面には第2の血液凝固促進剤が付着されていることを特徴とする採血管。【0006】(2)内部にフィルムが2枚収納され、1枚のフィルムには第1の血液凝固促進剤が付着され、もう1枚のフィルムには第2の血液凝固促進剤が付着されていることを特徴とする採血管。【0007】 (3)前記第1の血液凝固促進剤が無機物である(1)又は(2)に記載の採血管。【0008】(4)前記無機物がシリカ粒子、ガラス粉末、または珪藻土やカオリン等のSiO2を含む混合物である(3)に記載の採血管。【0009】 (5)前記第2の血液凝固促進剤が血液凝固活性を有する物質とバインダーとからなる(1)又は(2)に記載の採血管。【0010】(6)前記血液凝固活性を有する物質が、トロンビン、トロンビン様酵素、またはそれらを含む蛇毒抽出物質である(5)に記載の採血管。【0011】(7)前記バインダーが、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の水溶性物質、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の水溶性セルロース誘導体、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水溶性アクリル酸誘導体、ゼラチン、でんぷん等の水溶性多種タンパク質の混合物質からなる群のいずれか1種以上の物質を含む(6)に記載の採血管。【0012】 (8)第1の血液凝固促進剤、第2の血液凝固促進剤の順に血液に接触するように構成された(1)又は(2)に記載の採血管。【0013】 (9)前記フィルムに不織布が重ねられている(1)〜(8)のいずれかに記載の採血管。【0014】【発明の実施の形態】本発明はシリカ粒子等の無機物である血液凝固促進剤と、トロンビンや蛇毒抽出物質等の生物由来の血液凝固促進剤とを用いることにより、血液凝固時間の短縮を図ることを可能とした。【0015】第1の血液凝固促進剤として採血管に封入される無機物としては、シリカ粒子、ガラス粉末、または珪藻土やカオリン等のSiO2を含む混合物等がある。【0016】第2の血液凝固促進剤として採血管に封入される、血液凝固活性を有する物質としては、トロンビン、トロンビン様酵素、またはそれらを含む蛇毒抽出物質等がある。【0017】本発明によれば、採血後血液は先にシリカに接触するため、シリカは血液中に素早く均一に分散し血液は緩慢な凝固を開始する。続いて血液中にバインダーが溶解することによりトロンビンが血液中に溶解し、更に凝固が促進される。その結果急速で安定した凝固が可能となる。バインダーがない場合ではシリカとトロンビンが同時に溶解するが、トロンビンの凝固促進が非常に急速なため、トロンビンが血液全体に拡散する以前に部分凝固してしまい、トロンビンの分散ムラを生じ、ひいては血液全体の凝固ムラを生じやすい。【0018】従って、本発明により、第1および第2の血液凝固促進剤が同時に溶解するのではなく、シリカすなわち無機質の血液凝固促進剤の方が先に分散し、トロンビンすなわち生物由来の血液凝固促進剤の方が後に分散するようにすることによって、それぞれの血液凝固促進剤の反応のタイミングをずらし、血液全体をムラなく凝固させることを可能とした。【0019】本発明のバインダーとしては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の水溶性物質、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の水溶性セルロース誘導体、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水溶性アクリル酸誘導体、ゼラチン、でんぷん等の水溶性多種タンパク質の混合物質などが挙げられる。【0020】一方、プラスチック製フィルムにシリカ微粉末等を付着させることはよく行われている方法であるが、このようなフィルムの片面にシリカ微粉末等を均一にフィルム全面に付着させ、もう一つの面にトロンビンのように急速に凝固を促進する物質を付着させ、この面を下とすることで、血液は初めにシリカ微粉末に触れ、緩慢な凝固を開始し、続いてトロンビンに触れることにより、急速に凝固が促進され、ムラなく迅速確実に凝固を完了することができる。【0021】さらに別の態様として、プラスチック製フィルムを2枚収納する方法もある。すなわち1枚のプラスチック製フィルムにシリカ微粉末を付着させ、このフィルムを上とし、もう1枚のプラスチック製フィルムにトロンビンを付着させ、このフィルムを下にすることで、前述の方法と同様の効果が期待できる。【0022】本発明のフィルムの材料としては、血清より高い比重を有するプラスチック製フィルムであれば何でもよく、例えば、延伸PETフィルム、ナイロンフィルム、フィラー充填PPフィルム、フィラー充填PEフィルム、プラスチックラミネートアルミ箔フィルム等が用いられ、さらに血液凝固促進剤が付着させやすいように、表面処理、例えばプラズマ処理やエンボス加工を施したものも用いられる。また、前述のフィルムに血清より高い比重を有する不織布を重ねたものでもよく、不織布の材料としては、ポリエステル、ナイロン、レーヨンおよびそれらを組み合わせたものが用いられる。【0023】本発明の採血管の材質としては、ガスバリアー性の高い、ポリエチレンテレフタレート、共重合ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタアクリレート、ポリメタアクリル酸等のアクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ナイロン等のポリアミド、ポリスチレンなどの熱可塑性樹脂のほか、ガラス等の無機材質が使用可能である。【0024】また、採血管の内面には血餅剥離性物質を塗布することが好ましい。【0025】本発明の血餅剥離性物質としては、ポリエーテル変性シリコーンオイル等の水溶性シリコーン、ジメチルポリシロキサン等の変性シリコーンオイル、ポリプロピレングリコール等のグリコール類、パラフィン、ワックス類、フタル酸ジオクチル等の可塑剤、各種セルロース誘導体等が好ましい。【0026】採血管内に血餅剥離性物質を塗布する方法としては、採血管内に噴霧または採血管内に血餅剥離性物質を満たした後除去し、風乾、熱乾燥、減圧乾燥等の方法により乾燥するという方法がある。【0027】本発明において、採血管内に血清分離剤が収納されていてもよい。この場合血清分離剤入りの採血管では血清分離剤と接触していないのが好ましい。こうすることにより、血清分離剤が血液凝固促進剤と接触して凝固時間に誤差が生じる等の問題がなくなる。【0028】血清分離剤としてはポリエステル系樹脂に無機充填剤を配合したもの、ポリブテン系樹脂に無機充填剤を配合したもの、アクリル系樹脂に無機充填剤を配合したもの等が挙げられる。【0029】【実施例】以下、本発明の具体的実施例について説明する。図1及び図2は本発明の採血管を説明するための中央断面図である。【0030】(実施例1)ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる採血管1にエタノール40%水溶液にポリプロピレングリコールを3.5%溶解したものを血餅剥離性物質2として管内壁にほぼ均一に塗布、風乾した。【0031】次いで、採血管1内の底部にポリエステル系樹脂に無機充填剤を配合した血清分離剤7を1.7g充填した。【0032】第1の血液凝固促進剤3として、エア・ブラウン株式会社が販売しているシリカ微粉を100mg/mlになるように水と混合し、これにポリビニルピロリドンを1.5重量%添加した。その液5μlを延伸PETフィルム5の上面全体に拡がるように塗布して分散状態とし、風乾した。【0033】次いで、第2の血液凝固促進剤4として、持田製薬株式会社が販売しているトロンビンを6400IU/mlになるように水と混合し、これにポリビニルピロリドンを1.5重量%添加した。その液5μlを上記延伸PETフィルム4の下面に一つの塊として塗布し、風乾した。この延伸PETフィルム5を採血管1内の中間部分の内壁に挟持させた。【0034】上記採血管1の開口部を所定の減圧下でシール性部材7で密封し、その天面に再シール性部材8を接着した減圧採血管を製造した(図1)。この減圧採血管10本にそれぞれ人の全血を5mlずつ採取し、血液凝固後、1670Gの強さで5分間の遠心分離を行ったところ、凝固時間は4〜5分であり、血清分離剤の隔壁形成状態も良好でフィブリンの発生はなく、分離した血清上に油状物の発生は全く見られなかった。【0035】上記採血管を準備し、常温下で定期的に3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月経過させ、毎期10本ずつの減圧採血管に全血5mlを採血し、上記と同様の遠心分離と評価を行った。いずれの場合も凝固時間は4〜5分であり、血清分離剤の隔壁形成状態も良好でフィブリンの発生はなく、分離した血清上に油状物の発生は全く見られなかった。【0036】(実施例2)第2の血液凝固促進剤4として、持田製薬株式会社が販売しているトロンビンを6400IU/mlになるように水と混合し、これにポリビニルピロリドンを1.5重量%添加した。その液5μlを採血管1内の中間部分の内壁に挟持した1枚の延伸PETフィルム5の上面に一つの塊として塗布し、風乾した。【0037】次いで、第1の血液凝固促進剤3として、エア・ブラウン株式会社が販売しているシリカ微粉を100mg/mlになるように水と混合し、これにポリビニルピロリドンを1.5重量%添加した。その液5μlをもう1枚の延伸PETフィルム5の上面全体に拡がるように塗布して分散状態とし、風乾したのち採血管1内の上部の内壁に挟持した。【0038】それ以外は、実施例1と同様の減圧採血管を製造し(図2)、実施例1と同様の評価を行ったところ、凝固時間は3〜5分であり、血清分離剤の隔壁形成状態も良好でフィブリンの発生はなく、分離した血清上に油状物の発生は全く見られなかった。【0039】(比較例1)血液凝固促進剤として、エア・ブラウン株式会社が販売しているシリカ微粉を100mg/mlになるように水と混合し、これにポリビニルピロリドンを1.5重量%添加し、その液10μlを採血管内の中間部分の内壁に挟持した1枚の延伸PETフィルムの上面全体に拡がるように塗布して分散状態とし、風乾したこと以外は実施例1と同様の減圧採血管を製造し、上記実施例1と同様の評価を行ったところ、凝固時間は20〜25分であった。【0040】(比較例2)血液凝固促進剤として、持田製薬株式会社が販売しているトロンビンを320IU/mlになるように水と混合し、これにポリビニルピロリドンを1.5重量%添加した。その液0.1mlを採血管内の底部に分注し、採血管の底部を鉛直下向きとした直立状態で凍結乾燥した。【0041】それ以外は実施例1と同様の減圧採血管を製造し、実施例1と同様の評価を行ったところ、10本中3本は凝固時間は5〜8分であったが、5本は8〜12分を要し、2本は12分以上を要した。【0042】【発明の効果】本発明により、シリカ微粉末等の血液凝固促進剤と、トロンビンのように急速に血液凝固を促進する生物由来の血液凝固促進剤とを併用し順に血液に接触させることにより、トロンビン単独よりも短時間でかつ安定して血液を凝固させることが可能となる。【0043】前述の実施例によれば、フィルムの上面にシリカ微粉末すなわち無機物の血液凝固促進剤を均一にフィルム全面に付着させ、下面にトロンビンすなわち血液凝固活性を有する生物由来の血液凝固促進剤を付着させる方法や、2枚のフィルムにそれぞれ無機物の血液凝固促進剤と血液凝固活性を有する生物由来の血液凝固促進剤とを付着させる方法により、血液は初めに無機物の血液凝固促進剤に触れて緩慢な凝固を開始し、続いて血液凝固活性を有する生物由来の血液凝固促進剤に触れて急速に凝固が促進され、ムラなく確実に凝固を完了することができる。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の実施例の採血管を説明するための中央断面図である。【図2】本発明の別の実施例の採血管を説明するための中央断面図である。【符号の説明】1 ;採血管2 ;血餅剥離性物質3 ;第1の血液凝固促進物質4 ;第2の血液凝固促進物質5 ;延伸PETフィルム6 ;シール性部材7 ;再シール性部材8 ;血清分離剤 内部にフィルムが保持され、フィルムの一方の面に第1の血液凝固促進剤が付着され、かつ他方の面には第2の血液凝固促進剤が付着されていることを特徴とする採血管。 内部にフィルムが2枚収納され、1枚のフィルムには第1の血液凝固促進剤が付着され、もう1枚のフィルムには第2の血液凝固促進剤が付着されていることを特徴とする採血管。 前記第1の血液凝固促進剤が無機物である請求項1又は2に記載の採血管。 前記無機物がシリカ粒子、ガラス粉末、または珪藻土やカオリン等のSiO2を含む混合物である請求項3に記載の採血管。 前記第2の血液凝固促進剤が血液凝固活性を有する物質とバインダーとからなる請求項1又は2に記載の採血管。 前記血液凝固活性を有する物質が、トロンビン、トロンビン様酵素、またはそれらを含む蛇毒抽出物質である請求項5に記載の採血管。 前記バインダーが、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の水溶性物質、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の水溶性セルロース誘導体、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水溶性アクリル酸誘導体、ゼラチン、でんぷん等の水溶性多種タンパク質の混合物質からなる群のいずれか1種以上の物質を含む請求項6に記載の採血管。 第1の血液凝固促進剤、第2の血液凝固促進剤の順に血液に接触するように構成された請求項1又は2に記載の採血管。 前記フィルムに不織布が重ねられている請求項1〜8のいずれかに記載の採血管。