タイトル: | 特許公報(B2)_トリコモナス症診断用培地 |
出願番号: | 1998103911 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C12Q 1/04,C12N 1/10 |
高橋 久可 JP 3868107 特許公報(B2) 20061020 1998103911 19980330 トリコモナス症診断用培地 高橋 久可 398028086 澤 喜代治 100084630 高橋 久可 20070117 C12Q 1/04 20060101AFI20061221BHJP C12N 1/10 20060101ALI20061221BHJP JPC12Q1/04C12N1/10 C12Q 1/00 C12N 1/00 JMEDPlus(JDream2) REGISTRY(STN) 特公平06−069394(JP,B2) 4 1999276195 19991012 15 20040312 森井 隆信 【0001】【産業上の利用分野】本発明はトリコモナス症の診断に用いられるトリコモナス症診断用培地に関するものであり、特に、患部から採取した検体を培養し、その培養に伴う培地の色の変化によって、感染の有無を何人も簡便に且つ確実に診断し得るトリコモナス症診断用培地に関する。【0002】【従来の技術】トリコモナス症は、男性及び女性に非常によく見られる、激しい局所的症状を引き起こす生殖器感染症である。トリコモナス症の症状としては、生殖器の痒疹、激しい痛み、臭気を伴う分泌物の発生等が挙げられる。【0003】このように、トリコモナス症は、自覚症状及び肉眼的観察によって自己診断を行うことも可能であるが、産婦人科等の医療領域において、トリコモナス症の診断を行う場合には、トリコモナスを検出する必要がある。【0004】トリコモナスの検出には、診断室又は診療所において、直接顕微鏡で観察する鏡検法とトリコモナスを培養する培養法があるが、この鏡検法には多大の労働力が必要であり、検出率の高い培養法が採用されている。【0005】培養法に用いる培地としては、肝エキスやブドウ糖等の他に一般細菌の成育を抑制する物質が配合されているトリコモナス培地が市販されており、トリコモナスの培養によって少数のトリコモナスでも検出することができる。【0006】しかしながら、このトリコモナス培地の使用に当たっては、患部から採取した検体を当該培地中、温度37℃で数日〜15日間培養し、その培養中、毎日又は隔日ごとに管底部よりサンプリングを繰り返し、その都度鏡検して感染の有無を診断する必要があるが、トリコモナスの検出には相当の熟練が要求される。【0007】又、室内で鏡検によってトリコモナスを検出する際、当該室内の温度が低いと、トリコモナスの運動性が悪くなって見のがす虞れがあるので、特に冬期、或いは夏期でも冷房による室内の温度が低いときには相当の注意を要する。【0008】一方、トリコモナスの増殖に伴う培地のpHの変化に着目し、予め、培地にpH指示薬を加え、倍地の色の変化でトリコモナスの検出を行う培養法が提案されているが、この方法ではトリコモナスがかなり増殖するまで判定できないので日数がかかる上、中間色を呈することが多く判別が困難であり、結局、この場合でも、鏡検によってトリコモナスを検出、確認する必要があった。【0009】そこで、窒素源、炭素源、動物血清、寒天、還元物質及び細菌発育抑制物質からなる培地組成にニュートラルレッドを配合してなるトリコモナス症診断用半流動培地が提案されている(特公平6ー69394号公報)。【0010】【発明が解決しようとする課題】このトリコモナス症診断用半流動培地は、トリコモナスの発育に必要な栄養が豊富に含まれ、しかも嫌気的状態に保ってあるので、トリコモナスが存在すると発育し、その発育に伴い培養液の酸化還元電位が低下して培地の色はニュートラルレッド指示薬により赤色から黄色に変化する。【0011】しかしながら、このトリコモナス症診断用半流動培地内に動物血清が配合されているが、この動物血清は栄養度が至極高く、極めて活性で腐敗、変質し易く、有効期間(保存期間)が短く、その保存には相当の注意を要する。【0012】又、このトリコモナス症診断用半流動培地は、前述のように、栄養度が至極高く、極めて活性で腐敗、変質し易いが、培地がニュートラルレッドで赤色に着色しており、使用の際、品質的に問題の無い培地つまり正常品か品質的に問題のある培地つまり異常品かの判別ができない結果、異常品を使用して誤った診断を下す虞れがあるという、致命的な欠陥がある。【0013】更に、このトリコモナス症診断用半流動培地おいて、トリコモナスの発育には必要な栄養と、当該培地が嫌気的状態に保たれていることが必要であるが、この培地が嫌気的状態に保たれているか否かの判断が困難であるなどの課題もある。つまり、ニュートラルレッド指示薬を用いたトリコモナス症診断用半流動培地では培地の変質・腐敗状態例えば培地が空気と接触し、酸化されてもその色が、還元状態で正常な培地と同一の赤色で、容器内の培地がどの程度変質、腐敗しているか否かの判別できないのである。【0014】本発明に係るトリコモナス症診断用培地は、前記技術的課題を解決するために完成されたものであって、トリコモナス症診断用培地基材に−350〜−500mVの範囲において変色する酸化還元指示薬を配合してなることにより、検体中にトリコモナスが存在すると、その発育に伴い培養液の酸化還元電位が低下して培地の色が変化し、これによって、トリコモナスの検出が至極容易にできるのであり、又、必ずしも培地内に動物血清を配合する必要がなく、従って、安定で腐敗や変質がし難く、有効期間(保存期間)が長く、比較的低温でも正確に診断できるトリコモナス症診断用培地を提供することを目的とする。【0015】 又、本発明に係るトリコモナス症診断用培地は、トリコモナス症診断用培地基材に−350〜−500mVの範囲において変色する酸化還元指示薬を配合するにあたり、特定の酸化還元指示薬を用いることにより、使用時において、当該培地が空気と接触し、酸化されると色が変化し、例えば培地上端部の酸化されている箇所、つまり容器内の空気と接触して酸化されている箇所と、その箇所以外の還元領域であってトリコモナスを培養し、診断し得る箇所と、の色が相違し、培地の酸化領域が色によって至極簡単に判別できる結果、培地が保存中にどの程度酸化されているかが簡単に識別でき、使用の際、正常品か異常品かが何人も簡便に認識できるトリコモナス症診断用培地を提供することを目的とする。【0016】【課題を解決するための手段】 本発明に係るトリコモナス症診断用培地は、前記目的を達成するために、トリコモナス症診断用培地基材に−350〜−500mVの範囲において変色する特定の酸化還元指示薬を配合してなることを特徴とするものである。【0017】本発明で用いられるトリコモナス症診断用培地基材(A1)としては、トリコモナスの発育に必要な栄養が豊富に含まれ、しかもトリコモナスの発育を促進する培地基材であれば特に限定されるものではないが、具体的には、例えば従来からトリコモナス診断用培地に用いられている窒素源、酵母エキス、炭素源、還元物質、寒天及び細菌発育抑制物質からなるものが挙げられる。【0018】前記窒素源としては総合アミノ酸やペプチド等が挙げられるのであり、具体的には、例えばペプトン、トリプトース、カザミノ酸などが挙げられるのであり、また、炭素源としては糖類、具体的には、例えばブドウ糖、麦芽糖、果糖等が挙げられる。【0019】又、前記酵母エキスとしては、酵母の自己消化液又は熱水抽出液であり、ビタミン類、有機塩基類、アミノ酸類を多量に含有するので栄養価が高く、トリコモナスを効果的に培養するのである。【0020】更に、前記還元物質としては培地を還元状態に保持し、嫌気状態を確保するために配合されるものであって、具体的には、例えばシスティン、システィン酸、システィン塩酸塩、アスコルビン酸等が挙げられる。【0021】前記寒天としては、培地を半活動状態に保持して空気酸化を極力防止したり、或いは色の変化を観察しやすくするために用いられるものである。【0022】ところで、本発明に係るトリコモナス症診断用培地には、細菌増殖抑制物質が配合されるが、この細菌増殖抑制物質は検体中に混在する雑菌の殺菌又はその増殖を抑制するものであり、抗生物質であるペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン等の他、抗菌物質であるサルファ剤やナトリウムアジド等が挙げられる。【0023】前記トリコモナス症診断用培地基材(A1)において、窒素源、酵母エキス、炭素源、還元物 質、寒天及び細菌発育抑制物質の配合割合としてはトリコモナスの発育を促進するように調製されていれば特に限定されるものではないが、倍地基材の栄養度や色の変化の識別性更に嫌気的状態の確保並びに倍地基材の流動・取扱性等の観点から、当該培地基材全体に対して、窒素源が0.5〜5重量%の範囲、好ましくは0.75〜3.5重量%の範囲であり、又、酵母エキスが0.2〜3.5重量%の範囲、好ましくは0.5〜3重量%の範囲であり、更に、炭素源が0.5〜5重量%の範囲、好ましくは0.75〜3.5重量%の範囲であり、加えて、還元物質が0.025〜0.5重量%の範囲、好ましくは0.05〜0.35重量%の範囲であり、寒天が0.01〜0.5重量%の範囲、好ましくは0.05〜0.3重量%の範囲であり、加えて、細菌発育抑制物質が0.005〜0.75重量%の範囲、好ましくは0.02〜0.5重量%の範囲とするのが望ましい。【0024】このトリコモナス症診断用培地基材(A1)を用いることによって、トリコモナスの培養、発育を促進できるのである。【0025】 ところで、このトリコモナス症診断用培地基材(A1)を用い、トリコモナスを培養、発育させると、その発育に伴い倍地基材の酸化還元電位が低下するから、この酸化還元電位の変化に伴い色が変化する酸化還元指示薬を用いてトリコモナスの存否を確認できるのであり、この場合、−350〜−500mVの範囲において色が変化する酸化還元指示薬を用いる必要がある。【0026】即ち、本発明に係るトリコモナス症診断用培地は、トリコモナス症診断用培地基材(A1)に−350〜−500mVの範囲において変色する酸化還元指示薬を用いる点に特徴を有するものであり、特に、トリコモナスの検出を一層正確にするために、−375〜−485mVの範囲において変色する酸化還元指示薬を用いるのが一層望ましい。【0027】この場合、酸化還元指示薬としては−350〜−500mVの範囲、特に−375〜−485mVの範囲において、特に、色が顕著に変化する指示薬が目視による判断が一層容易になるので一層望ましい。【0028】本発明で用いられる酸化還元指示薬としては、下記一般式【0029】【化2】【0030】で示されるものが、−350〜−500mVの範囲、特に−375〜−485mVの範囲、において色が顕著に変化する上、以下に述べる理由より最も望ましい。【0034】即ち、この構造式で示される酸化還元指示薬を用いると、使用時において、当該培地が空気と接触し、酸化されると色が変化し、例えば培地上端部の酸化されている箇所、つまり容器内の空気と接触して酸化されている箇所と、その箇所以外の還元領域であってトリコモナスを培養し、診断し得る箇所と、の色が相違し、培地の酸化領域が色によって至極簡単に判別できる結果、培地が保存中にどの程度酸化されているかが簡単に識別でき、使用の際、正常品か異常品かが何人も簡便に認識できるので、誤診を確実に防止できるのである。【0035】前記のトリコモナス症診断用培地基材(A1)と酸化還元指示薬(B)との配合割合としてはこの(A1)+(B)の全体に対して(B)が0.0005〜0.02重量%の範囲とするのが好ましく、(B)の配合割合が、0.0005重量%未満と少な過ぎると、トリコモナスの培養、育成によって酸化還元電位が低下しても、色の変化が乏しく目視による判定が困難であり、一方、0.02重量%を超えると配合する意味がない上、濃度が高過ぎて種々の弊害が生じる虞れが有る場合があり、しかもコストが高くなって不経済であり、いずれの場合も好ましくなく、従って、目視による識別性や経済性等の観点から、特に、0.001〜0.01重量%の範囲とするのが望ましい。【0036】本発明に係るトリコモナス症診断用培地(A1)においては、トリコモナスが存在すると、その僅かな増殖によって酸化還元電位が−350〜−500mVの範囲に変化し、その結果、酸化還元指示薬によって当該倍地が変色するのである。【0037】又、本発明においては、前記トリコモナス症診断用培地基材(A1)において、この倍地基材(A1)には更に乳及び/又は乳製品とコレステロールが配合されてなる培地基材(A2)がトリコモナスの発育を一層促進するので特に望ましい。【0038】前記乳及び/又は乳製品とは、乳或いは乳製品又は乳と乳製品の混合物をいう。【0039】この乳とは、哺乳動物の乳腺からそれらの幼動物の栄養のために分泌される液体であるが、哺乳動物の種類に応じて、牛乳、山羊乳、馬乳などと呼ばれるが、一般に牛乳が挙げられる。【0040】そして、この乳には生乳、牛乳、特別牛乳、部分脱脂乳、脱脂乳及び加工乳から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。【0041】又、本発明において、乳製品としてはトリコモナスの培養に使用し得るものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、例えばクリーム、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、バターミルクパウダー、クリームパウダー、加糖粉乳及び調製粉乳から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。【0042】前記トリコモナス症診断用培地基材(A2)において、乳及び/又は乳製品とコレステロールの配合割合としてはトリコモナスの発育を一層促進するように調製されていれば特に限定されるものではないが、前記倍地基材の栄養度の向上を図って、トリコモナスの発育を一層促進するなどの観点から、前記培地基材全体に対して、乳又は乳製品から選ばれた少なくとも1種が0.01〜5重量%の範囲、好ましくは0.05〜2.5重量%の範囲であり、又、コレステロールが0.0001〜0.05重量%の範囲、好ましくは0.00035〜0.01重量%の範囲とするのが望ましい。【0043】このトリコモナス症診断用培地基材(A2)を用い、トリコモナスを培養、発育させると、その発育に伴い倍地基材(A2)の酸化還元電位が低下するから、この酸化還元電位の変化に伴い色が変化する酸化還元指示薬を用いてトリコモナスの存否を確認できるのであり、この場合、−350〜−500mVの範囲において色が変化する酸化還元指示薬を用いるのが望ましい。【0044】即ち、本発明に係る他のトリコモナス症診断用培地は、トリコモナス症診断用培地基材(A2)に−350〜−500mVの範囲において変色する酸化還元指示薬を用いる点に特徴を有するものであり、トリコモナスの検出を一層正確にするために、特に、−375〜−485mVの範囲において変色する酸化還元指示薬を用いるのが一層望ましい。【0045】この場合、酸化還元指示薬としては−350〜−500mVの範囲、特に−375〜−485mVの範囲において、特に色が顕著に変化する指示薬が目視による判断が一層容易になるので一層望ましい。【0046】 このトリコモナス症診断用培地(A2)を用いるにあたり、用いられる酸化還元指示薬としては、下記一般式【0047】【化3】【0048】で示されるものが挙げられる。【0052】即ち、この構造式で示される酸化還元指示薬を用いると、使用時において、当該培地が空気と接触し、酸化されると色が変化し、例えば培地上端部の酸化されている箇所、つまり容器内の空気と接触して酸化されている箇所と、その箇所以外の還元領域であってトリコモナスを培養し、診断し得る箇所と、の色が相違し、培地の酸化領域が色によって至極簡単に判別できる結果、培地が保存中にどの程度酸化されているかが簡単に識別でき、使用の際、正常品か異常品かが何人も簡便に認識できるので、誤診を確実に防止できるのである。【0053】前記のトリコモナス症診断用培地基材(A2)と酸化還元指示薬(B)との配合割合としてはこの(A2)+(B)の全体に対して(B)が0.0005〜0.02重量%の範囲とするのが好ましく、(B)の配合割合が、0.0005重量%未満と少な過ぎると、トリコモナスの培養、育成によって酸化還元電位が低下しても、色の変化が乏しく目視による判定が困難であり、一方、0.02重量%を超えると配合する意味が無いうえ、濃度が高過ぎて種々の弊害が生じる虞れが有る場合があり、しかもコストが高くなって不経済であり、いずれの場合も好ましくなく、従って、目視による識別性や経済性等の観点から、特に、0.001〜0.01重量%の範囲とするのが望ましい。【0054】本発明に係るトリコモナス症診断用培地(A2)においては、トリコモナスが存在すると、その僅かな増殖によって酸化還元電位が−350〜−500mVの範囲に変化し、その結果、酸化還元指示薬によって当該倍地が変色するのである。【0055】更に、本発明においては、前記トリコモナス症診断用培地基材(A1)又は(A2)において、この倍地基材(A1)又は(A2)には更に動物血清が配合されてなる培地基材(A3)がトリコモナスの発育を一層促進するので特に望ましい。【0056】前記動物血清としては、動物の血清であれば特に限定されるものではないが、特に、馬や家兎の血清が好ましい。動物血清にはアルブミン、グロブリンなどの蛋白質、グルコースなどの糖類及び脂質の他、各種ビタミン類、ホルモン、有機酸、更にナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄等の無機質が含まれ、栄養価値が高く、トリコモナスを効果的に培養するのである。【0057】前記トリコモナス症診断用培地基材(A3)において、動物血清の配合割合としてはトリコモナスの発育を一層促進するように調製されていれば特に限定されるものではないが、前記倍地基材の栄養度の向上を図って、トリコモナスの発育を一層促進するなどの観点から、前記培地基材全体に対して、動物血清が5〜25重量%の範囲、好ましくは7.5〜20重量%の範囲とするのが望ましい。【0058】このトリコモナス症診断用培地基材(A3)を用い、トリコモナスを培養、発育させると、その発育に伴い倍地基材(A3)の酸化還元電位が低下するから、この酸化還元電位の変化に伴い色が変化する酸化還元指示薬を用いてトリコモナスの存否を確認できるのであり、この場合、−350〜−500mVの範囲において色が変化する酸化還元指示薬を用いるのが望ましい。【0059】即ち、本発明に係る他のトリコモナス症診断用培地は、トリコモナス症診断用培地基材(A3)に−350〜−500mVの範囲において変色する酸化還元指示薬を用いる点に特徴を有するものであり、トリコモナスの検出を一層正確にするために、特に、−375〜−485mVの範囲において変色する酸化還元指示薬を用いるのが一層望ましい。【0060】この場合、酸化還元指示薬としては−350〜−500mVの範囲、特に−375〜−485mVの範囲において、特に色が顕著に変化する指示薬が目視による判断が至極容易になし得るので一層望ましい。【0061】 このトリコモナス症診断用培地(A3)を用いるにあたり、用いられる酸化還元指示薬としては、下記一般式【0062】【化4】【0063】で示されるものが挙げられる。【0067】即ち、この構造式で示される酸化還元指示薬を用いると、使用時において、当該培地が空気と接触し、酸化されると色が変化し、例えば培地上端部の酸化されている箇所、つまり容器内の空気と接触して酸化されている箇所と、その箇所以外の還元領域であってトリコモナスを培養し、診断し得る箇所と、の色が相違し、培地の酸化領域が色によって至極簡単に判別できる結果、培地が保存中にどの程度酸化されているかが簡単に識別でき、使用の際、正常品か異常品かが何人も簡便に認識できるので、誤診を確実に防止できるのである。【0068】前記のトリコモナス症診断用培地基材(A3)と酸化還元指示薬(B)との配合割合としてはこの(A3)+(B)の全体に対して(B)が0.0005〜0.02重量%の範囲とするのが好ましく、(B)の配合割合が、0.0005重量%未満と少な過ぎると、トリコモナスの培養、育成によって酸化還元電位が低下しも、色の変化が乏しく目視による判定が困難であり、一方、0.02重量%を超えると配合する意味が無いうえ、濃度が高過ぎて種々の弊害が生じる虞れが有る場合があり、しかもコストが高くなって不経済であり、いずれの場合も好ましくなく、従って、目視による識別性や経済性等の観点から、特に、0.001〜0.01重量%の範囲とするのが望ましい。【0069】本発明に係るトリコモナス症診断用培地は、トリコモナスが存在すると、その僅かな増殖によって酸化還元電位が−350〜−500mVの範囲に変化し、その結果、酸化還元指示薬によって当該倍地が変色し、その確認が至極容易にできるのである。【0070】【実施例】以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。【0071】実施例1表1に示すトリコモナス症診断用培地基材(A1)を公知の方法で調製した。【0072】【表1】【0073】表1に示すトリコモナス症診断用培地基材(A1)1000mlに対して、下記構造式【0074】【化5】【0075】で示される酸化還元指示薬15mgを配合し、本発明に係るトリコモナス症診断用培地を得た。【0076】得られた培地を試験管に6mlずつ分注、密封して数時間放置すると、当該培地が試験管内の空気と接触し、酸化されると色が変化し、この場合、培地上端部の酸化されている箇所が紫色であり、その箇所以外の還元領域であってトリコモナスを培養し、診断し得る箇所が赤色となり、この色の相違によって、培地の酸化領域が色至極簡単に判別できる結果、培地が保存中にどの程度酸化されているかが簡単に識別でき、使用の際、正常品か異常品かが何人も簡便に認識できるので、誤診を確実に防止できることが認められた。これを実施例1とした。【0077】実施例2表2に示すトリコモナス症診断用培地基材(A2)を公知の方法で調製した。【0078】【表2】【0079】表2に示すトリコモナス症診断用培地基材(A2)1000mlに対して、下記構造式【0080】【化6】【0081】で示される酸化還元指示薬15mgを配合し、本発明に係るトリコモナス症診断用培地を得た。【0082】得られた培地を試験管に6mlずつ分注、密封して数時間放置すると、当該培地が試験管内の空気と接触し、酸化されると色が変化し、この場合、培地上端部の酸化されている箇所が紫色であり、その箇所以外の還元領域であってトリコモナスを培養し、診断し得る箇所が赤色となり、この色の相違によって、培地の酸化領域が色至極簡単に判別できる結果、培地が保存中にどの程度酸化されているかが簡単に識別でき、使用の際、正常品か異常品かが何人も簡便に認識できるので、誤診を確実に防止できることが認められた。これを実施例2とした。【0083】実施例3表3に示すトリコモナス症診断用培地基材(A3)を公知の方法で調製した。【0084】【表3】【0085】表3に示すトリコモナス症診断用培地基材(A3)1000mlに対して、下記構造式【0086】【化7】【0087】で示される酸化還元指示薬15mgを配合し、本発明に係るトリコモナス症診断用培地を得た。【0088】得られた培地を試験管に6mlずつ分注、密封して数時間放置すると、当該培地が試験管内の空気と接触し、酸化されると色が変化し、この場合、培地上端部の酸化されている箇所が紫色であり、その箇所以外の還元領域であってトリコモナスを培養し、診断し得る箇所が赤色となり、この色の相違によって、培地の酸化領域が色至極簡単に判別できる結果、培地が保存中にどの程度酸化されているかが簡単に識別でき、使用の際、正常品か異常品かが何人も簡便に認識できるので、誤診を確実に防止できることが認められた。これを実施例3とした。【0089】比較例実施例3で用いたものと同様のトリコモナス症診断用培地基材(A3)を用い、酸化還元指示薬として、実施例3で用いたものに代えてニュ−トラルレッドを用いた以外は実施例3と同様にしてトリコモナス症診断用培地を得た。【0090】得られた培地を試験管に6mlずつ分注、密封して数時間放置したが、当該培地が試験管内の空気と接触し、酸化されている箇所、つまり培地上端部の酸化されている箇所と、その箇所以外の還元領域が赤色であり、即ち、培地全体が赤色であり、従って、培地が保存中にどの程度酸化されているかが判別できず、使用の際、正常品か異常品かが認識できないので、誤診の虞れが有ることが認められた。これを比較例とした。【0091】トリコモナス症診断試験1実施例1〜3の培地を用い、これらにトリコモナス、真菌及び細菌を接種し、10時間後の色の変化を調べた。尚接種量は、トリコモナスは約1×105cells/tubeとし、真菌及び細菌は約1×107CFU/tubeとした。その結果を表4に示す。【0092】【表4】【0093】表4に示される結果から、実施例1〜3の培地においてはトリコモナス症の主原因であるトリコモナス・バギナリスのみに色の変化が見られたが、膣内に常在するカンジダや乳酸桿菌、大腸菌などでは色の変化が観察されなかった。【0094】一方、比較例の培地を用い、実施例1〜3と同様に、これにトリコモナス、真菌及び細菌を接種し、24時間後の色の変化を調べた。尚接種量は、トリコモナスは約1×105cells/tubeとし、真菌及び細菌は約1×107CFU/tubeとした。【0095】ところで、実施例1〜3の培地は24時間放置すると、当該培地が試験管内の空気と接触し、当該培地上端部2〜7mmの幅(深さ)が酸化されて紫色であり、その箇所以外の還元領域であってトリコモナスを培養し、診断し得る箇所が赤色であり、培地の酸化状態が確認できたが、比較例のものは培地全体が赤色であり、従って、培地が保存中にどの程度酸化されているかが判別できなかった。【0096】トリコモナス症診断試験2実施例1〜3及び比較例を用い、外陰掻痒感、帯下を訴える患者(パネラー)150名(26〜41歳)を対象にして臨床試験を行った。【0097】即ち、150人のパネラーの膣内からそれぞれ綿棒で分泌物を採取し、この綿棒を実施例1の試験官内にそれぞれ投入後、37℃で48時間静置培養を行った。【0098】その結果、培養開始後3〜12時間後には、38人のパネラーに対し、その培養液の還元領域であってトリコモナスの培養箇所が赤色から淡黄色に変色し、時間の経過に伴い黄変が進行し、培養開始後48時間後には明白な黄色に変色し、陽性であることを示し、残りの112人のパネラーに対しては培養液の還元領域であってトリコモナス原虫の培養箇所の色の変化がなく、陰性であることを示した。【0099】次いで、37℃で48時間静置培養後、鏡検法により、トリコモナスの有無を総てのパネラーに対して確認したところ、陽性を示した38人の全パネラーからはトリコモナスが確認されたが、陰性を示した112人の全パネラーからはトリコモナスが確認されず、信頼性が高いことが認められた。【0100】又、実施例2を用い、実施例1と同様の臨床試験を行ったところ、実施例1で陽性を示した38人のパネラーの培養液におけるトリコモナスの培養箇所が赤色から黄色に変色し、残りの112人のパネラーに対しては培養液の還元領域であってトリコモナス原虫の培養箇所の色の変化がなく、陰性であることを示し、実施例1と同様に、信頼性が高いことが認められた。【0101】又、実施例3を用い、実施例1と同様の臨床試験を行ったところ、実施例1で陽性を示した38人のパネラーの培養液におけるトリコモナスの培養箇所が赤色から黄色に変色し、残りの112人のパネラーに対しては培養液の還元領域であってトリコモナス原虫の培養箇所の色の変化がなく、陰性であることを示し、実施例1と同様に、信頼性が高いことが認められた。【0102】一方、比較例を用い、実施例1と同様のトリコモナスの培養を行ったところ、培養開始後6時間後には、40人のパネラーに対し、その培養液が赤色から淡黄色に変化したが、時間の経過に伴い黄変が進行し、培養開始後48時間後には、実施例1で陽性を示した38人の全パネラーの培地については明白な黄色に変色し、前記40人のうち残りの2人は淡黄色のままで偽陽性と判定した。【0103】又、残りの110人のパネラーに対しては培養液が赤色のままで色の変化がなく、陰性であることを示した。【0104】次いで、偽陽性の2人につき更に37℃で5日間静置培養を行った後、鏡検法により、トリコモナスの有無を確認したところ、この偽陽性の2人からはトリコモナスが確認されなかった。【0105】ところで、実施例1の培地と実施例2の培地とを温度5℃で保存させたところ、実施例1の培地の方が実施例2の培地より1.35倍以上の長期保存性に優れていることが認められた。【0106】【発明の効果】本発明に係るトリコモナス症診断用培地は、トリコモナス症診断用培地基材に−350〜−500mVの範囲において変色する酸化還元指示薬を配合してなることにより、患者から採取した分泌物(検体)中にトリコモナスが存在すると、その発育に伴い培養液の酸化還元電位が低下して培地の色が変化し、これによって、トリコモナスの検出が至極容易にできるのであり、又、必ずしも培地内に動物血清を配合する必要がなく、従って、安定で腐敗や変質がし難く、有効期間(保存期間)が長く、比較的低温でも正確に診断できる効果を奏するのである。【0107】 又、本発明に係る他のトリコモナス症診断用培地は、トリコモナス症診断用培地基材に−350〜−500mVの範囲において変色する酸化還元指示薬を配合するにあたり、酸化によって変色する特定の酸化還元指示薬を用いることにより、使用時において、当該培地が空気と接触し、酸化されると色が変化し、例えば培地上端部の酸化されている箇所、つまり容器内の空気と接触して酸化されている箇所と、その箇所以外の還元領域であってトリコモナスを培養し、診断し得る箇所と、の色が相違し、培地の酸化領域が色によって至極簡単に判別できる結果、培地が保存中にどの程度酸化されているかが簡単に識別でき、使用の際、正常品か異常品かが何人も簡便に認識できる効果を奏するのである。 トリコモナス症診断用培地基材に−350〜−500mVの範囲において変色する酸化還元指示薬を配合してなるトリコモナス症診断用培地であって、前記酸化還元指示薬が、下記一般式で示されるものであることを特徴とするトリコモナス症診断用培地。 トリコモナス症診断用培地基材が窒素源、酵母エキス、炭素源、還元物質、寒天及び細菌発育抑制物質からなるものを必須成分とするものである請求項1に記載のトリコモナス症診断用培地。 トリコモナス症診断用培地基材には更に乳及び/又は乳製品とコレステロールが配合されてなる請求項1又は2に記載のトリコモナス症診断用培地。 トリコモナス症診断用培地基材には更に動物血清が配合されてなる請求項1ないし3のいずれか1項に記載のトリコモナス症診断用培地。