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タイトル:特許公報(B2)_潤滑油のスラッジ評価方法
出願番号:1998095224
年次:2007
IPC分類:G01N 33/30


特許情報キャッシュ

鈴木 克幸 関根 顕一 功刀 俊夫 大西 輝明 JP 3985980 特許公報(B2) 20070720 1998095224 19980325 潤滑油のスラッジ評価方法 株式会社コスモ総合研究所 000130189 コスモ石油株式会社 000105567 折口 信五 100095599 鈴木 克幸 関根 顕一 功刀 俊夫 大西 輝明 20071003 G01N 33/30 20060101AFI20070913BHJP JPG01N33/30 G01N 33/30 特開平10− 78423(JP,A) 特開平 9−127067(JP,A) 1 1999271300 19991005 8 20040827 宮澤 浩 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、潤滑油のスラッジ評価方法に関し、詳しくは潤滑油にせん断応力と熱を加えることにより、実際の装置での潤滑油のスラッジ生成を再現できる実験室評価方法に関するものである。【0002】【従来の技術】潤滑油は、長期間使用すると粘度が変化し、劣化することがある。近年、潤滑油を必要とする機械装置は、高出力化、小型化、メンテナンスの簡略化要求に伴う更油期間延長の傾向にあり、それに伴って潤滑油にも、従来以上の長寿命化が求められるようになっている。長期の使用において起こり得る潤滑油の劣化には色々なケースがあり、スラッジの生成を評価することは、潤滑油の寿命を管理する上で特に重要な項目である。従来、潤滑油劣化加速試験評価方法は、実験室レベルにおいては、熱、酸化を要因とするものが大部分である。たとえば、JIS K2514に規定されている内燃機関用潤滑油酸化試験、回転ボンベ式酸化安定度試験、タービン油酸化安定度試験、JIS K2503に規定されている腐食酸化安定度試験、JIS K2540に規定されている潤滑油熱安定度試験などである。しかしながら、これらの試験による劣化油は、実際の装置で劣化した油と異なる挙動を示すことが多く、実装置で見られるような粘度、全酸価などの油性上の変化がないのにスラッジが生成するといった現象を再現することが非常に困難である。つまり、前記したJIS規格の各種潤滑油劣化加速試験評価方法では、スラッジがほとんど生成されず、潤滑油の劣化に伴うスラッジを評価することができなかった。そこで、これらの潤滑油の商品開発に当たっては、実装置の機構を取り入れた台上試験装置を用いて油の劣化挙動を再現し、使用上の不具合を確認することが多い。しかし、台上試験装置を用いた評価では、実装置でのスラッジ生成を再現することは可能であるものの、試験機器が高価で熟練を要すること、試験時間が長く、長寿命の耐スラッジ性に優れた潤滑油の開発を短期間で効率的に行うことには問題点が多い。そこで、長寿命の耐スラッジ性の優れた潤滑油の開発を短期間で効率的に行うためには台上試験評価法と同様に実装置でのスラッジ生成を再現でき、しかも短期間でかつ容易に行うことのできる実験室評価方法の開発が要望されている。【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の従来技術の状況に鑑みてなされたものであり、長寿命の耐スラッジ性に優れた潤滑油を短期間で効率的に開発する上で欠かせない、台上試験評価と同様、実装置でのスラッジ生成を再現でき、かつ短期間で容易に行うことができる潤滑油のスラッジ生成に関する実験室評価方法を提供することを目的とする。【0004】【課題を解決するための手段】本発明者らは、短期間で効率的に長寿命で耐スラッジ性に優れた潤滑油の開発を行うといった要望にこたえるべく、潤滑油のスラッジ評価方法について鋭意検討を行った結果、潤滑油にせん断応力をかけ、さらにその後酸素存在下で加熱することにより、台上試験よりはるかに短期間でかつ容易に実装置のスラッジの生成を再現することを見い出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。【0005】すなわち、本発明は、潤滑油にせん断応力を与えた後さらに潤滑油を酸素存在下で加熱し、その後潤滑油をろ過し、ろ別した不溶解分量を測定することを特徴とする潤滑油のスラッジ評価方法を提供するものである。以下、本発明を詳細に説明する。【0006】【発明の実施の形態】本発明において使用される潤滑油は、潤滑油の基油のみであってもよいし、潤滑油の基油に油性剤、pH調整剤、酸化防止剤、腐食防止剤などの各種添加剤の1種以上を適宜含有させたものであってもよい。潤滑油の基油は、鉱油、合成油の何れでもよく、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いられる。本発明において使用される好適な潤滑油としては、タービン油、油圧作動油などの工業用潤滑油、特に鉱物油を基油とするタービン油、油圧作動油があげられる。本発明において使用する潤滑油の量は、特に制限ないが、潤滑油中に発生する不溶解分(以下、スラッジという。)量をろ別して測定することから、50〜1000mlが好ましく、特に100〜500mlが好ましい。潤滑油の使用量が前記範囲より少ないとスラッジ量の測定誤差が大きくなり、前記範囲より多いとろ過に時間がかかり、迅速な試験が行いにくくなる。【0007】本発明においては、潤滑油にせん断応力を与える。せん断応力は、種々の手段により潤滑油に与えることができるが、好ましくは機械的にまたは超音波により潤滑油に与えることができる。機械的に与えるせん断応力は、せん断速度が103〜107s-1のものが好ましく、特に104〜107s-1のものが好ましい。せん断速度が前記範囲より遅いと、潤滑油にスラッジが生成しにくく、前記範囲より速いと生成するスラッジが実装置と異なるものになる傾向がある。せん断応力を与える時間は、10時間以上が好ましく、特に10〜100時間が好ましい。超音波によりせん断応力を与える場合は、超音波の周波数は、5〜20kHzが好ましく、特に8〜15kHzが好ましい。また、超音波の波長は、15〜40μmが好ましく、特に20〜30μmが好ましい。超音波を与える時間は、3〜20時間が好ましく、特に4〜10時間が好ましい。超音波を与える時間が、前記範囲より少ないと潤滑油にスラッジが生成しにくく、前記範囲より多いと生成するスラッジが実装置と異なるものになる傾向がある。【0008】また、せん断応力を与える間は、潤滑油の温度は20〜70℃が好ましく、特に30〜50℃が好ましい。潤滑油の温度が前記範囲より低いと潤滑油にスラッジが生成しにくく、前記範囲より高いと生成するスラッジが実装置と異なるものになる傾向がある。超音波を発信する装置としては、種々のものが使用できるが、周波数と波長を一定に保つことのできる超音波発信装置が好ましい。この好ましい超音波発信装置の具体例としては、たとえば、ASTM D2603に規定される超音波発信装置があげられる。試料油の潤滑油を入れる容器は、特に制限ないが、耐熱性ガラスビーカーが好ましい。超音波を潤滑油に与える方法としては、種々の方法が適用できるが、潤滑油面に超音波発信面が接する状態で超音波を与える方法が好ましい。【0009】機械的にせん断応力を与えることができる機械装置としては、種々のものが使用できるが、潤滑油を挟む状態で、挟んでいるものの両方またはどちらか一方が動き、せん断速度を一定に保つことができるものが好ましい。この好ましい機械装置の具体例としては、たとえば、DIN 51382に規定される機械装置があげられる。本発明においては、潤滑油にせん断応力を与えた後、潤滑油を酸素存在下で加熱する。酸素存在下とは、潤滑油が酸素と接触している状態のことを意味する。酸素は、酸素ガス単体でもよいし、他の気体と混合したもの、たとえば、空気でもよい。【0010】潤滑油の加熱温度は、100〜200℃が好ましく、さらに120〜180℃が好ましく、特に130〜170℃が好ましい。潤滑油の加熱時間は、20〜200時間が好ましく、さらに40〜150時間が好ましく、特に50〜100時間が好ましい。潤滑油の加熱温度および加熱時間が前記範囲より低いと潤滑油にスラッジが生成しにくく、前記範囲より高いと生成するスラッジが実装置と異なるものになる傾向がある。【0011】潤滑油の加熱は、種々の方法により行うことができるが、潤滑油を一定の温度に保つことのできる恒温装置による加熱が好ましい。恒温装置は、酸素を共存させることができるものであれば、特に制限ない。そのような恒温装置の具体例としては、たとえば、JIS K2540の熱安定度試験に用いる空気雰囲気下、温度を±1℃に保つことができ、毎分5〜6回転で回転するターンテーブルを有する恒温槽や、JIS K2514の内燃機関用潤滑油酸化安定度試験に用いる油槽で潤滑油の温度を±0.5℃に保つことができ、毎分1300回転で潤滑油を撹拌する装置などがあげられる。上記の潤滑油の加熱により潤滑油中にスラッジが生成する。【0012】本発明においては、その潤滑油をろ過し、潤滑油中のスラッジをろ別し、スラッジ量を測定する。ろ過するときの潤滑油の温度は、通常は室温または室温に近い温度が好ましい。そのため、上記の加熱された潤滑油はろ過前に冷却することが好ましい。加熱された潤滑油の冷却後の温度は、通常は0〜50℃が好ましく、さらに10〜40℃が好ましく、特に室温付近の温度が好ましい。ろ過の方法は、特に制限ないが、JIS B9931に規定されている作動油汚染度測定方法に従って行うろ過方法が好ましい。なお、ろ過に用いるフィルターの孔径は、特に制限ないが、0.1〜10μmのものが好ましく、特に0.4〜3μmのものが好ましい。フィルターの孔径が前記範囲より小さいとろ過に時間がかかり迅速な試験が行えにくくなり、前記範囲より大きいとスラッジ量が少なくなり台上試験機との相関が弱くなる。【0013】また、ろ別したスラッジは、フィルター上で溶媒により洗浄することが好ましい。洗浄に使用できる溶媒は、ヘキサンなどの非極性溶媒が好ましい。洗浄に使用される溶媒の量は、油分を除去できる量であれば、特に制限ないが、潤滑油量に対して通常0.5〜20倍質量が好ましく、特に1〜10倍質量が好ましい。また、洗浄溶媒の温度は、室温または室温に近い温度が好ましい。本発明においては、前記潤滑油へのせん断応力の付与および潤滑油の酸素存在下での加熱を1サイクルとして、1回のみ行ってもよいし、複数回も行ってもよい。サイクル回数を重ねる毎にスラッジ生成量が増大し、台上試験における試験時間延長と同じ効果が得られる。前記サイクル回数の好ましい範囲は、1〜10回である。サイクル回数が10回を超えると、ろ過に時間がかかり迅速な試験が行えなくなる。【0014】【実施例】次に、本発明を実施例及び比較例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明は、これらの例によって何ら制限されるものではない。なお、実施例および比較例において使用する潤滑油を以下に示す。潤滑油A:市販の無灰型耐摩耗性油圧作動油(鉱油基油系)潤滑油B:原油を減圧蒸留留出油をフルフラールで溶剤抽出し、メチルエチルケトンで溶剤脱ろう後、さらに水素化精製した基油に下記の添加剤a、添加剤bおよび添加剤cを配合したもの。(1)添加剤a:4,4−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)0.3質量%(2)添加剤b:アルケニルコハク酸部分エステル(以下の構造式においてR1が炭素数12のアルケニル基、R2がエチル基である。)0.05質量%【0015】【化1】(3)添加剤c:トリクレジルフォスフェート0.5質量%【0016】実施例1潤滑油A200mlを耐熱性ガラスビーカーに入れ、ASTM D2603に記載されている超音波発信器を図1に示すように潤滑油面に超音波発信面が接する状態で用いて、40℃に保った潤滑油Aに超音波(周波数:10kHz、波長:28μm)を5時間照射し、せん断応力を潤滑油Aに与えた。その後、JISK2540に記載された恒温槽の加熱装置を用いて、せん断応力が付与された潤滑油Aを空気の存在下に140℃で72時間加熱した。前記潤滑油へのせん断応力の付与および潤滑油の空気存在下での加熱からなるサイクルの回数は1回で止めた。その後、JIS B9931に記載された装置(フィルターの孔径:0.45μm)および定量方法を用いて、潤滑油中に生成したスラッジをろ過し、ろ別されたスラッジをn−ヘキサン約500mlで洗浄し、スラッジを定量した。【0017】実施例2実施例1において、潤滑油へのせん断応力の付与および潤滑油の空気存在下での加熱からなるサイクルの回数を2回にした以外は、実施例1と同様にして、スラッジを定量した。実施例3実施例1において、潤滑油として潤滑油Bを使用し、潤滑油へのせん断応力の付与および潤滑油の空気存在下での加熱からなるサイクルの回数を2回にした以外は、実施例1と同様にして、スラッジを定量した。【0018】比較例1JIS K2540に記載された恒温槽の加熱装置を用いて、潤滑油A200mlを空気の存在下に140℃で72時間加熱した。その後、JIS B9931に記載された装置(フィルターの孔径:0.45μm)および定量方法を用いて、潤滑油中に生成したスラッジをろ過し、ろ別されたスラッジをn−ヘキサン約500mlで洗浄し、スラッジを定量した。【0019】比較例2比較例1において、潤滑油として潤滑油Bを使用した以外は、比較例1と同様にして、スラッジを定量した。比較例3比較例1において、加熱時間を144時間にした以外は、比較例1と同様にして、スラッジを定量した。【0020】比較例4比較例1において、加熱温度を160℃にした以外は、比較例1と同様にして、スラッジを定量した。比較例5比較例1において、JIS K2540に記載された恒温槽の加熱装置をJIS K2514に記載された恒温槽の加熱装置に代えた以外は、比較例1と同様にして、スラッジを定量した。【0021】比較例6図2に示したポンプ試験システム(高圧ピストンポンプテスト回路)からなる台上試験装置を用いて、潤滑油Aの劣化加速試験を行った。潤滑油A12リットルの中に銅触媒および鉄触媒を入れ、その潤滑油Aの温度を80℃に保った。ポンプ(内田油圧製、A2FO10ピストンポンプ)をポンプ回転数1200rpm、圧力34.3MPaで作動させ、その潤滑油Aを循環させ、循環系内に設けたリリーフバルブ(内田油圧製、DBDH6PA/400)の前後の差圧上昇を監視した。潤滑油Aを500時間循環させた後、試験油を均一な状態で200mlサンプリングし、JIS B9931に記載された装置(フィルターの孔径:0.45μm)および定量方法を用いて、潤滑油中に生成したスラッジをろ過し、ろ別されたスラッジをn−ヘキサン約500mlで洗浄し、スラッジを定量した。【0022】比較例7比較例6において、循環時間を1000時間にした以外は、比較例6と同様にして、スラッジを定量した。比較例8比較例6において、潤滑油として潤滑油Bを使用した以外は、比較例6と同様にして、スラッジを定量した。実施例および比較例において生成したスラッジ量を表1および表2に示す。なお、各実施例1〜3および比較例1〜5をそれぞれ3回実施し、それぞれの3回のスラッジ量を示した。また、比較例6〜8の台上試験については、それぞれ2回実施し、それぞれの2回のスラッジ量を示した。【0023】【表1】【0024】【表2】【0025】上記実施例および比較例から、潤滑油へのせん断応力の付与および潤滑油の空気存在下での加熱からなるサイクルの回数が1回では、実機評価試験の500時間に相当し、サイクル回数が2回では、実機評価試験の1000時間に相当することが分かった。【0026】【発明の効果】本発明の潤滑油のスラッジ評価方法は、実装置でのスラッジ生成を再現でき、かつ短期間で容易に行うことができ、実験室評価方法として実用上極めて有用である。【図面の簡単な説明】【図1】超音波発信器を潤滑油面に超音波発信面が接する状態で用いて、潤滑油に超音波を照射している状態を示す概略図である。【図2】ポンプ試験システムである高圧ピストンポンプテスト回路の概略図である。 潤滑油にせん断応力を与えた後さらに潤滑油を酸素存在下で加熱し、その後潤滑油をろ過し、ろ別した不溶解分量を測定することを特徴とする潤滑油のスラッジ評価方法。


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