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タイトル:特許公報(B2)_マイクロ波を用いた分子配向度計測方法および装置
出願番号:1998091481
年次:2005
IPC分類:7,G01N22/00


特許情報キャッシュ

田中 善喜 小野寺 稔 JP 3691658 特許公報(B2) 20050624 1998091481 19980403 マイクロ波を用いた分子配向度計測方法および装置 株式会社クラレ 000001085 杉本 修司 100087941 田中 善喜 小野寺 稔 20050907 7 G01N22/00 JP G01N22/00 B G01N22/00 R G01N22/00 U G01N22/00 V 7 G01N 22/00-22/04 JICSTファイル(JOIS) 特公平07−081988(JP,B2) Shigeyoshi Osaki,Explanation of orientation patterns determined for sheet materials by mens of microwaves,J.Appl.Phys.,1990年 5月,Vol.67 No.10,pp.6513-6519 6 1999287771 19991019 11 20030418 田中 洋介 【0001】【発明の属する技術分野】フィルム、繊維織物、不織布、板、紙などポリマー分子などで構成される成形体は、ポリマー分子配向(すなわち配向の向き)によって、力学的、電気的、光学的性質が変わることはよく知られている。したがって、これら成形体の製造においては分子配向は製品の品質を左右する重要な検査項目の一つである。【0002】【従来の技術】従来、最もよく用いられている分子配向の測定は、偏光の透過強度を測定し、複屈折率を算出する方法である。ところが、偏光を用いる方法は成形体が光に対して透明でなければ用いることができない。そこで、光に不透明な被測定物体(成形体)に対しては、周知のマイクロ波分子配向度測定装置により、マイクロ波の透過強度を測定し分子配向度を算出する方法が専ら用いられてきた[大崎茂芳「化学技術誌MOL」Vol.26,No.1,pp92-100,(1988);大崎茂芳, J.Appl.Phys., Vol.67, No.10, pp6513-6519,(1990) ]。ここで、分子配向度MOR(Molecular Orientation Ratio) とは、物体を構成する分子の配向の度合いを与える指標をいう。【0003】上記分子配向度MORは、マイクロ波分子配向度測定装置において、以下のように算出される。説明を簡単にするために被測定物体をフィルムとすれば、マイクロ波共振導波管にマイクロ波の進行方向にフィルム面が垂直になるように配置したフィルムに、振動方向が一方向に偏ったマイクロ波を連続的に照射し、マイクロ波の進行方向と垂直な面内でフィルムを0〜360°回転させて、フィルムを透過したマイクロ波透過強度を検出し、その回転角Xとの依存性を図に描く。これによって、フィルムを構成する分子の分子配向度MORが、次式によりコンピュータなどを用いて計算される。分子配向度MOR=最大マイクロ波透過強度/最小マイクロ波透過強度ここで、「最大」,「最小」とは回転角を0〜360°で変化させたときに得られる最大値と最小値であって、通常、最小値を与える回転角を0°、最大値を与える回転角を90°と称している。この場合、フィルムを構成する分子の長さ方向が0°の方向と一致すればするほど分子配向度MORは大きくなる。【0004】【発明が解決しようとする課題】ところが、従来のマイクロ波による分子配向の測定においては、『測定試料のフィルム厚さに無関係に異方性の指数(度合い)を導くこと(算出すること)は非常に困難である』〔大崎茂芳,Polym J, Vol.19, No.7, pp821-828,(1987) 〕ために、マイクロ波による分子配向度測定における被測定物体(簡単に「物体」と称する)の厚さが異なれば、各物体の分子配向度MORを相互に比較することができないものであった。例えば、厚さ50μmのフィルムと厚さ100μmのフィルムの分子配向度MORの測定値が全く同じであっても、両フィルムを構成する分子の分子配向度MORの実際値を同じとすることができず、これらフィルムのどちらが強く分子配向しているかは不明であった。【0005】一方、上記マイクロ波分子配向度測定装置を用いた分子配向度測定においては、この測定装置が設置された部屋の室温変動、あるいは装置自体の発熱による温度上昇によって、マイクロ波測定値が変化してしまい、測定の再現信頼性の障害となるという問題があった。また、測定装置内の温度が安定していることが必要であるので、測定装置の電源を入れてから測定装置内の温度が十分上昇して安定するまで待たなければならず、この待ち時間が長いという問題もあった。【0006】本発明は、物体の厚さの影響をなくすとともに、温度依存性がなく分子配向度を計測できるマイクロ波を用いた分子配向度計測方法および装置を提供することを目的とする。【0007】【課題を解決するための手段】従来技術における根本的な問題点は、物体の厚さとマイクロ波透過強度との関係が明らかでないため、分子配向度を計算するときに用いる理論式が物体の厚さを考慮したものではなく、物体の厚さを考慮した理論式が存在しないことにあった。このため、異なる厚さのフィルムの分子配向度を相互に比較することはできなかった。本発明はフィルムの厚さとマイクロ波透過強度との関係を明確にし、物体の厚さを考慮した理論式を用いて、従来と異なる概念の分子配向度を算出することによって、上記の課題を解決するものである。【0008】請求項1に係るマイクロ波を用いた分子配向度計測方法は、物体のマイクロ波透過強度をマイクロ波分子配向度測定装置で測定し、該強度が物体を構成する分子の配向に依存することを利用して、物体を構成する分子の分子配向度を求める方法であって、Z0 を装置定数、dzを物体の平均厚さ、νmax をマイクロ波の振動数を変化させたときの最大マイクロ波透過強度を与えるマイクロ波の振動数、ν0 を物体の平均厚さがゼロのとき(つまり、物体がないとき)の最大マイクロ波透過強度を与えるマイクロ波の振動数としたとき、物体を前記マイクロ波分子配向度測定装置のマイクロ波共振導波管中でマイクロ波の進行方向に垂直に回転させ、マイクロ波透過強度を測定して得られる物体の厚さを考慮した屈折率mを、次式(1)で算出し、m=(Z0 /dz)×[1−(νmax /ν0 )] (1)前記算出された屈折率mにおいて、マイクロ波の振動方向に対する回転角p°,q°(p≠q)における値をmp ,mq としたとき、物体の厚さを考慮した分子配向度SORを次式(2)で算出することを特徴とする。SOR=f(mp ,mq ) (2)ここで、f(mp ,mq )は、mp ,mq を独立変数とする任意の関数である。【0009】請求項4に係るマイクロ波を用いた分子配向度計測装置は、物体のマイクロ波透過強度をマイクロ波分子配向度測定装置で測定し、該強度が物体を構成する分子の配向に依存することを利用して、物体を構成する分子の分子配向度を求める装置であって、Z0 を装置定数、dzを物体の平均厚さ、νmax をマイクロ波の振動数を変化させたときの最大マイクロ波透過強度を与えるマイクロ波の振動数、ν0 を物体の平均厚さがゼロのとき(つまり、物体がないとき)の最大マイクロ波透過強度を与えるマイクロ波の振動数としたとき、物体を前記マイクロ波分子配向度測定装置のマイクロ波共振導波管中でマイクロ波の進行方向に垂直に回転させてマイクロ波透過強度を検出し、上記マイクロ波の各振動数νmax ,ν0 を求める透過強度検出手段と、前記透過強度検出手段により求めたマイクロ波の各振動数νmax ,ν0 に基づいて、次式(1)の演算により、物体の厚さを考慮した屈折率mを得る屈折率演算手段と、m=(Z0 /dz)×[1−(νmax /ν0 )] (1)前記屈折率演算手段により得られた屈折率mにおいて、マイクロ波の振動方向に対する回転角p°,q°(p≠q)における値をmp ,mq としたとき、次式(2)の演算により、物体の厚さを考慮した分子配向度SORを得る分子配向度演算手段とを備えている。SOR=f(mp ,mq ) (2)ここで、f(mp ,mq )は、mp ,mq を独立変数とする任意の関数である。【0010】ここで、分子配向度SOR(Segment Orientation Ratio) とは、高分子のミクロブラウン運動において、この運動単位となる高分子鎖の部分であるセグメントについての分子配向の度合いを与える指標をいう。この分子配向度SORは、従来からの物体を構成する分子の配向の度合いを与える指標であるMOR(Molecular Orientation Ratio) とは異なり、上記セグメントについての分子配向に着目したものであり、物体の厚さを考慮した値である。上記の平均厚さdzとは、測定対象となる物体の平均厚さであって、例えば、穴が空いたフィルムや繊維束や不織布など、厚さが不均一であっても、例えば、[平均厚さ]=[単位面積当たりの物体の重さ]/[物体の密度]を用いて与えることが容易に可能である。【0011】上記構成によれば、上記式(1)の屈折率mは物体の平均厚さdzをパラメータとするものであり、物体の厚さを考慮したものである。したがって、この屈折率mを用いた上記式(2)で表される分子配向度SORにより、従来全く得ることができなかった、物体の厚さを考慮した、言い換えれば、厚さの影響をなくした分子配向の指標が得られる。したがって、物体を構成する分子の配向が同じであれば、同じ分子配向度SORが得られる。また、物体の平均厚さdzをパラメータとするので、フィルムなどのように平面方向に一定の厚さをもつ物体に対してだけでなく、繊維織物、不織布、紙、射出成形品など平面方向に一定の厚さをもたない物体に対してもマイクロ波による分子配向度測定を可能にする。【0012】また、請求項2に係るマイクロ波を用いた分子配向度計測方法は、請求項1において、上記式(1)で算出された屈折率mにおいて、マイクロ波の振動方向に対する回転角が0°における値をm0 、回転角が90°における値をm90としたとき、物体の厚さを考慮した分子配向度SORを次式(3)で算出することを特徴とする。SOR=m0 /m90 (3)【0013】請求項5に係るマイクロ波を用いた分子配向度計測装置は、請求項4において、上記屈折率演算手段により得られた式(1)の屈折率mにおいて、マイクロ波の振動方向に対する回転角が0°における値をm0 、回転角が90°における値をm90としたとき、上記分子配向度演算手段は、次式(3)の演算により、物体の厚さを考慮した分子配向度SORを得る。SOR=m0 /m90 (3)【0014】上記分子配向度SORの一般式(2)は、2つの相異なる回転角p,qにおける屈折率mの関数として、人為的に与えられるものである。例えば、(m0 + 1 )/(m90 + 1)、m0 /(m90+1)、m0 /(m90+m0 )や、回転角が0°,90°以外のm値を用いる定義式などが容易に考え得る。このうち、上記分子配向度SORの代表式(3)における屈折率m0 やm90は、物体が引き起こす新たな電場に関係するパラメータとしての物理的な意味がある。つまり、分子配向度SORの代表式(3)は、純粋に物体に係わる屈折率mの回転角0°と90°の比を計算するものであるので、最も単純に、純粋に物体に係わるものであるということができる。通常、この代表式(3)により、本発明の分子配向度SORが表される。【0015】さらに、請求項3に係るマイクロ波を用いた分子配向度計測方法は、請求項1または2において、cを光速度、Nを上記マイクロ波共振導波管長がマイクロ波の半波長の何倍であるかを与える定数としたとき、上記装置定数Z0 を、上記物体の平均厚さがゼロのとき(物体がないとき)の最大マイクロ波透過強度を与えるマイクロ波の振動数ν0 を用いて、次式(4)で算出する。Z0 =cN/2ν0 (4)【0016】請求項6に係るマイクロ波を用いた分子配向度計測装置は、請求項4または5において、cを光速度、Nをマイクロ波共振導波管長がマイクロ波の半波長の何倍であるかを与える定数としたとき、上記物体の平均厚さがゼロのときの最大マイクロ波透過強度を与えるマイクロ波の振動数ν0 を用いて、次式(4)の演算により、上記装置定数Z0 を得る装置定数演算手段を備えている。Z0 =cN/2ν0 (4)【0017】上記装置定数Z0 は、マイクロ波分子配向度測定装置のマイクロ波共振導波管の長さに相当するものである。したがって、この測定装置の設計定数から装置固有のものとして与えることもできるが、マイクロ波を共振させるためにマイクロ波共振導波管を微調整した場合には長さを実測することは困難であり、またマイクロ波共振導波管が室温によって膨張あるいは収縮する場合にはマイクロ波共振導波管の長さを求めることはさらに困難である。本発明は、物体がないときの最大マイクロ波透過強度を与えるマイクロ波振動数ν0 を測定することにより、簡単に装置定数Z0 を求める方法を提供するものである。物体がないときの最大マイクロ波透過強度を与えるマイクロ波振動数ν0 は温度変化に対してほとんど一定であるので、室温が変化したときにも迅速に対応して装置定数Z0 を算出することが可能となり、測定の再現信頼性を向上することができる。【0018】【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るマイクロ波を用いた分子配向度計測装置を示す構成図である。本装置は、平均厚さdzをもつフィルムのような物体5にマイクロ波を透過させて、そのマイクロ波透過強度を検出し、マイクロ波の分子配向度を測定するマイクロ波分子配向度測定装置(例えば、KSシステムズ社製分子配向度測定機MOA-2001A )2を用いて、分子配向度SORを計測するものである。【0019】上記マイクロ波分子配向度測定装置2は、上記物体5に照射する所定波長のマイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置3、マイクロ波共振導波管4および透過強度検出手段8とを備えている。上記マイクロ波共振導波管4は、その中央部に、マイクロ波の進行方向にフィルム面が垂直になるようにフィルム5を配置し、このフィルム5を、図示しない回転機構により、マイクロ波の進行方向と垂直な面内でR方向に回転可能な状態にして保持するとともに、物体5を透過するマイクロ波を、両端部に設けられた一対の反射鏡7,7で反射させることにより共振させるものである。上記物体5を透過した後のマイクロ波透過強度は、透過強度検出手段8により検出される。【0020】上記透過強度検出手段8は、上記マイクロ波共振導波管4内の後方の所定位置に挿入した検出素子8aでマイクロ波透過強度を検出するものであり、物体5を前記マイクロ波分子配向度測定装置2のマクロ波共振導波管4中でマイクロ波の進行方向に垂直に回転させてマイクロ波透過強度を検出し、マイクロ波の振動数を変化させたときの最大マイクロ波透過強度を与えるマイクロ波の振動数νmax 、物体の平均厚さがゼロのとき(すなわち、物体がないとき)の最大マイクロ波透過強度を与えるマイクロ波の振動数ν0 を求める。上記検出素子8aには、例えばフォトダイオード等が用いられる。【0021】屈折率演算手段10は、上記物体5の平均厚さdzと、上記透過強度検出手段8により求めたマイクロ波の各振動数νmax ,ν0 と、装置定数演算手段14により上記式(4)で算出された装置定数Z0 とに基づいて、上記式(1)の演算により、物体5の厚さを考慮した屈折率mを得る。【0022】分子配向度演算手段12は、上記算出された屈折率mにおいて、例えば、マイクロ波の振動方向に対する回転角が0°における値をm0 、回転角が90°における値をm90としたとき、物体の厚さを考慮した分子配向度SORを上記式(3)で算出する。【0023】以下、本装置の動作を、図2のフローチャートに基づいて説明する。まず、図1のマイクロ波分子配向度測定装置2におけるマイクロ波共振導波管4に挿入するフィルムのような物体5についての平均厚さdzを求める。それとともに、透過強度検出手段8により、マイクロ波の振動方向に対する物体5の回転角が0°における最大マイクロ波透過強度を与えるマイクロ波の振動数νmax (回転角0°)、回転角が90°における最大マイクロ波透過強度を与えるマイクロ波の振動数νmax (回転角90°)、および物体5がないときの最大マイクロ波透過強度を与えるマイクロ波の振動数ν0 を求める(ステップS1)。【0024】つぎに、装置定数演算手段14により、測定装置2内の温度変化の影響を受けないように、上記式(4)の演算を行って、装置定数Z0 を求める(ステップS2)。そして、この装置定数Z0 と、ステップS1で求めた上記振動数νmax (回転角0°)、振動数νmax (回転角90°)、および振動数ν0 とに基づいて、屈折率演算手段10により、上記式(1)の演算を行って、マイクロ波の振動方向に対する物体5の回転角が0°における屈折率m0 、回転角が90°における屈折率m90を求める(ステップS3)。つぎに、分子配向度演算手段12により、m0 /m90の演算を行って、分子配向度SORを上記式(3)から求める(ステップS4)。【0025】このように、式(1)の屈折率mは、物体5の平均厚さdzをパラメータとするものであり、物体5の厚さを考慮したものである。したがって、この屈折率mを用いた代表式(3)により、物体5の厚さの影響をなくした分子配向度SORを計測できる。【0026】なお、この実施形態では、装置定数Z0 として、式(4)で演算した値を用いているが、測定装置2内の温度が十分に安定した状態にあれば、定数N,物体がないときの最大マイクロ波透過強度を与えるマイクロ波の振動数ν0 をそれぞれ一定とみなすことができるので、測定装置2の設計定数から与えられた装置固有の値を用いてもよい。【0027】なお、この実施形態では、物体5の回転角が0°,90°における屈折率m0 ,m90を用いた分子配向度SORを、代表式(3)により計測しているが、任意の相異なる回転角p°,q°における屈折率mp ,mq を用いた上記一般式(2)により、分子配向度SORを計測するようにしてもよい。【0028】【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。〔参考例〕6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸単位27モル%及びp−ヒドロキシ安息香酸単位73モル%からなるサーモトロピック液晶ポリエステルをTダイから溶融押出しすることにより厚み108μmのフィルムを得た。得られた液晶ポリマーフィルムの融点(Tm)は280°Cであり、熱変形温度は220°Cであった。同様にして、厚み52μmの液晶ポリマーフィルム及び厚み50μmの液晶ポリマーフィルムを得た。【0029】〔実施例1〕本実施例は、図1のマイクロ波を用いた分子配向度計測装置により、分子配向が同じで厚さが異なる液晶ポリマーフィルムについて、それぞれ屈折率mおよび分子配向度SORを算出したものである。例えば、フィルムの厚さが1枚で108μmのものと、これを2枚重ねした216μmのものを使用する。表1は、これらフィルムについて、本発明により算出された屈折率mおよび分子配向度SOR(式(3))と、従来技術により算出された分子配向度MORとを比較して示したものである。【0030】【表1】【0031】表1により、従来の分子配向度MORはフィルムの厚さによって大きく変化するが、本発明により算出された屈折率mおよび分子配向度SORはフィルム厚さに無関係に同じ程度の値を示すことが明らかである。【0032】〔実施例2〕本実施例は、図1のマイクロ波を用いた分子配向度計測装置により、開口を設けた液晶ポリマーフィルムについて、屈折率mおよび分子配向度SORを算出したものである。例えば、フィルム(サイズ10×10mm角、厚52μm)の中央に直径がそれぞれ10,20mmと異なる円形開口を設け、厚さがフィルム平面方向に一定でない(開口部の厚さは0、非開口部は52μm)ものを使用する。表2は、これらフィルムについて、本発明による平均厚さdzを用いた屈折率mおよび分子配向度SOR(式(3))と、従来技術により算出された分子配向度MORとを比較して示したものである。【0033】【表2】【0034】表2において、従来技術による分子配向度MORは、上記のように厚さが不均一なフィルムに対しては、厚さを考慮することができないので、開口直径に分子配向度が依存する結果になっており、同じフィルムでも開口直径の大きさによって分子配向が異なるという明らかに不合理な結果になる。本発明により算出された平均厚さdzを用いた屈折率mおよび分子配向度SOR(式(3))は、開口の直径には依存することなく同じ程度の値を示すことが明らかである。【0035】このように、フィルム中央部の厚さが0である場合だけでなく、逆に中央部のみ厚さが正であり中央部以外の周辺部は厚さが0の場合でも、同様に容易に分子配向度が測定できるであろうことは容易に導かれることである。このことは、本発明により提供される方法を用いれば、物体サイズがマイクロ波共振導波管4のサイズに比較して小さい場合でも分子配向度の測定ができることを示している。【0036】〔実施例3〕本実施例は、図1のマイクロ波分子配向度測定装置2内の温度変化に対応するための装置定数Z0 を算出するものである。まず、フィルムを装置に装着しない場合(すなわちブランクの場合)の、最大マイクロ波透過強度を与えるマイクロ波振動数ν0 を種々の温度において測定し、光速度c=3×1010cm/secと、マイクロ波共振導波管長がマイクロ波の波長の何倍であるかを与える定数N=3とを用いて、上記式(4)により計算し装置定数Z0 を得た。また、厚さ50μmの液晶ポリマーフィルムについても最大マイクロ波透過強度を与えるマイクロ波振動数νmax を測定し、上記式(1),(3)を用いて屈折率mおよび分子配向度SORを算出した。表3はこれらの結果をまとめて示すものである。【0037】【表3】【0038】表3により、フィルムの場合の最大マイクロ波透過強度を与えるマイクロ波振動数νmax は温度により変動するが、ブランクの場合の最大マイクロ波透過強度を与えるマイクロ波振動数ν0 は温度変化に対してほとんど一定であるので、本発明による装置定数Z0 の効果により装置定数Z0 が温度補正係数として作用し、フィルムの屈折率m、分子配向度SORは温度変化に対しほとんど一定となることが明らかである。【0039】上記マイクロ波分子配向度測定装置2は、電源を入れた後、この測定装置2内の温度が時間と共に上昇し、従来技術では温度が十分に上昇して一定になるまでは測定ができなかった。測定装置2を恒温室に設置した場合においても、温度が十分に上昇するまで5〜6時間以上を要しており、この間は測定できなかった。本発明による装置定数Z0 を用いた温度補正を行えば、測定装置2の電源を入れてほとんど直ちに測定を開始することができる。【0040】【発明の効果】以上のように、本発明によれば、被計測物体の厚さの影響をなくした分子配向の計測が可能となり、また被計測物体が均一な厚さをもたない場合でも分子配向の計測が可能となる。さらに温度変動による計測値の狂いがない再現信頼性の高い分子配向計測が可能となる。このように本発明は、マイクロ波透過強度のデータの優れた計算方法により、マイクロ波を用いる分子配向計測を根本的に改良するものである。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の一実施形態に係るマイクロ波を用いた分子配向度計測装置を示す構成図である。【図2】図1の装置の動作を説明するフローチャートである。【符号の説明】2…マイクロ波分子配向度測定装置、4…マイクロ波共振導波管、5…物体、8…透過強度検出手段、10…屈折率演算手段、12…分子配向度演算手段、14…装置定数演算手段。 物体のマイクロ波透過強度をマイクロ波分子配向度測定装置で測定し、該強度が物体を構成する分子の配向に依存することを利用して、物体を構成する分子の分子配向度を求める方法であって、Z0 を装置定数、dzを物体の平均厚さ、νmax をマイクロ波の振動数を変化させたときの最大マイクロ波透過強度を与えるマイクロ波の振動数、ν0 を物体の平均厚さがゼロのときの最大マイクロ波透過強度を与えるマイクロ波の振動数としたとき、物体を前記マイクロ波分子配向度測定装置のマイクロ波共振導波管中でマイクロ波の進行方向に垂直に回転させ、マイクロ波透過強度を測定して得られる物体の厚さを考慮した屈折率mを、次式(1)で算出し、m=(Z0 /dz)×[1−(νmax /ν0 )] (1)前記算出された屈折率mにおいて、マイクロ波の振動方向に対する回転角p°,q°(p≠q)における値をmp ,mq としたとき、物体の厚さを考慮した分子配向度SORを次式(2)で算出することを特徴とするマイクロ波を用いた分子配向度計測方法。SOR=f(mp ,mq ) (2)ここで、f(mp ,mq )は、mp ,mq を独立変数とする任意の関数である。 請求項1において、前記式(1)で算出された屈折率mにおいて、マイクロ波の振動方向に対する回転角が0°における値をm0 、回転角が90°における値をm90としたとき、物体の厚さを考慮した分子配向度SORを次式(3)で算出することを特徴とするマイクロ波を用いた分子配向度計測方法。SOR=m0 /m90 (3) 請求項1または2において、cを光速度、Nを前記マイクロ波共振導波管長がマイクロ波の半波長の何倍であるかを与える定数としたとき、前記装置定数Z0 を、前記物体の平均厚さがゼロのときの最大マイクロ波透過強度を与えるマイクロ波の振動数ν0 を用いて、次式(4)で算出することを特徴とするマイクロ波を用いた分子配向度計測方法。Z0 =cN/2ν0 (4) 物体のマイクロ波透過強度をマイクロ波分子配向度測定装置で測定し、該強度が物体を構成する分子の配向に依存することを利用して、物体を構成する分子の分子配向度を求める装置であって、Z0 を装置定数、dzを物体の平均厚さ、νmax をマイクロ波の振動数を変化させたときの最大マイクロ波透過強度を与えるマイクロ波の振動数、ν0 を物体の平均厚さがゼロのときの最大マイクロ波透過強度を与えるマイクロ波の振動数としたとき、物体を前記マイクロ波分子配向度測定装置のマイクロ波共振導波管中でマイクロ波の進行方向に垂直に回転させてマイクロ波透過強度を検出し、上記マイクロ波の各振動数νmax ,ν0 を求める透過強度検出手段と、前記透過強度検出手段により求めたマイクロ波の各振動数νmax ,ν0 に基づいて、次式(1)の演算により、物体の厚さを考慮した屈折率mを得る屈折率演算手段と、m=(Z0 /dz)×[1−(νmax /ν0 )] (1)前記屈折率演算手段により得られた屈折率mにおいて、マイクロ波の振動方向に対する回転角p°,q°(p≠q)における値をmp ,mq としたとき、次式(2)の演算により、物体の厚さを考慮した分子配向度SORを得る分子配向度演算手段とを備えたことを特徴とするマイクロ波を用いた分子配向度計測装置。SOR=f(mp ,mq ) (2)ここで、f(mp ,mq )は、mp ,mq を独立変数とする任意の関数である。 請求項4において、前記屈折率演算手段により得られた式(1)の屈折率mにおいて、マイクロ波の振動方向に対する回転角が0°における値をm0 、回転角が90°における値をm90としたとき、前記分子配向度演算手段は、次式(3)の演算により、物体の厚さを考慮した分子配向度SORを得ることを特徴とするマイクロ波を用いた分子配向度計測装置。SOR=m0 /m90 (3) 請求項4または5において、cを光速度、Nをマイクロ波共振導波管長がマイクロ波の半波長の何倍であるかを与える定数としたとき、前記物体の平均厚さがゼロのときの最大マイクロ波透過強度を与えるマイクロ波の振動数ν0 を用いて、次式(4)の演算により、前記装置定数Z0 を得る装置定数演算手段を備えたことを特徴とするマイクロ波を用いた分子配向度計測装置。Z0 =cN/2ν0 (4)


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