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タイトル:特許公報(B2)_スレイトールの製造方法
出願番号:1998071795
年次:2006
IPC分類:C12P 7/18


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原 磨理 川口 智子 上田 誠 JP 3750339 特許公報(B2) 20051216 1998071795 19980320 スレイトールの製造方法 三菱化学株式会社 000005968 長谷川 曉司 100103997 原 磨理 川口 智子 上田 誠 20060301 C12P 7/18 20060101AFI20060209BHJP JPC12P7/18 C12P 7/18 C12N 9/00-9/99 PubMed CAPLUS(STN) JSTPlus(JOIS) 特開平07−170977(JP,A) 特開平07−250693(JP,A) 特開平09−009958(JP,A) 特開平09−131183(JP,A) Arch Biochem Biophys. 1965 May;110:350-3 一楽健二 他, 日本生物工学会大会講演要旨集 1993;1993:204 J Biol Chem. 1965 Mar;240:965-74 3 1999266887 19991005 15 20021106 上條 肇 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、微生物の菌体及び/または該菌体処理物によるエリスリトールからスレイトールの製造に関するものである。【0002】【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】スレイトール(Threitol)は医薬あるいは農薬の中間原料として有用な物質であると近年注目されている。このスレイトールの化学的製造方法として、D−キシロース(D-Xylose)を原料とて化学的にD−スレイトールを製造する方法(J.Organic.Chem. 54(1989)22,5257-5264)、エリスリトールから化学的な異性化によりDL−スレイトールを製造する方法(Carbohydrate.Res.,44(1975)106 )等が知られているが、収率が低いこと、プロセスが煩雑であること等からいずれも工業的な製造には適した方法ではない。【0003】生物化学的にスレイトールをつくる方法は、Acetobacter suboxydansのエリスリトールの酸化物においてL−スレイトールが検出された例(C.L. HU, E,A,McCOMB , and V.V. RENDIG ARCHIVES of BIOCHEM.&BIOPHYSIC. 110 p350-353, 1965 )が報告されてはいるが、エリスリトールからL−スレイトールの工業的な製造方法は全く知られていない。さらにエリスリトールからD−スレイトールの微生物的変換は全く報告例がない。従って、本発明の目的はスレイトールを安価な原料から効率的に工業生産できる方法を提供することにある。【0004】【課題を解決するための手段】本発明者らは、スレイトールの工業的製造法を提供するべく鋭意検討した結果、エリスリトールからスレイトールを生成しうる微生物を見いだし、本発明を完成した。即ち、本発明はエリスリトールからスレイトールに変換する能力を有する微生物の菌体及び/または該菌体処理物を、エリスリトールに作用させることを特徴とするスレイトールの製造方法に存する。【0005】【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明においては、エリスリトールを変換しスレイトールを生産する能力を持つ微生物であれば、いずれの微生物も使用し得るが、好ましい微生物としては、アルカリゲネス(Alcaligenes )属、アシネトバクター(Acinetobacter )属、アグロバクテリウム(Agrobacterium )属、アルスロバクター(Arthrobacter)属、オーレオバクテリウム(Aureobacterium)属、バチルス(Bacillus)属、バクテリジウム(Bacteridium )属、ボルデテラ(Bordrtella)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属, クレブシエラ(Klebsiella)属、コマモナス(Comamonas )属、コリネバクテリウム(Corynebacterium )属、エンテロバクター(Enterobacter)属、エッシェリティア(Escherichia )属、エルウィニア(Erwinia )属、フラボバクテリウム(Flavobacterium)属、グルコノバクター(Gluconobacter )属、ハフニア(Hafnia)属、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属、ミクロコッカス(Micrococcus )属、モラクセラ(Moraxella )属、パラコッカス(Paracoccus)属、ラネラ(Rhanella)属、キサントモナス(Xanthomonas )属、、シュードモナス(Pseudomonas )属、セルロモナス(Cellulomonas)属、バークホルデリア(Burkholderia)属、ロドトルラ(Rhodotorula )属、ファエノココマイセス(Phaeococcomyces )属、キャンディダ(Candida )属、トリグノプシス(Trignopsis)属及びハンセニアスポラ(Hanseniaspora )属から選ばれる属に属する微生物が挙げられる。【0006】本発明において使用するアルカリゲネス(Alcaligenes )属に属する微生物の好ましい種としては、例えばAlcaligenes faecalis castellani, Alcaligenes denitrificans sub. denitrificans, Alcaligenes paradoxus, Alcaligenes xylosoxidans ssp. xylosoxidans等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてAlcaligenes faecalis castellani IAM1015, Alcaligenes denitrificans sub. denitrificans IAM12370, Alcaligenes paradoxus Biotype I DSM66, Alcaligenes paradoxus Biotype II DSM30162, Alcaligenes xylosoxidans ssp. xylosoxidans IAM12600, Alcaligenes xylosoxidans ssp. xylosoxidans IAM12685 等が挙げられる。【0007】本発明において使用するアシネトバクター(Acinetobacter )属に属する微生物の好ましい種としては、例えばAcinetobacter calcoaceticus ,Acinetobacter lwoffii等が挙げられる。さらに具体的な菌株としては Acinetobacter calcoaceticus IFO12552, Acinetobacter calcoaceticus ATCC19606, Acinetobacter lwoffii ATCC17910等が挙げられる。【0008】本発明において使用するアルスロバクター(Arthrobacter)属に属する微生物の好ましい種としては、例えばArthrobacter paraffineus, Arthrobacter crystallopoietes, Arthrobacter oxydans, Arthrobacter ramousus Arthrobacter citreus, Arthrobacter atrocyaneus, Arthrobacter hystidinolovorans, Arthrobacter sulfureus 等が挙げられる。さらに具体的な菌株としては Arthrobacter paraffineus ATCC15590, Arthrobacter crystallopoietes JCM2522, Arthrobacter oxydans JCM2521, Arthrobacter ramousus JCM1334, Arthrobacter citreus JCM1331, Arthrobacter atrocyaneus JCM1329,Arthrobacter hystidinolovorans JCM2520, Arthrobacter sulfureus JCM1338等が挙げられる。【0009】本発明において使用するアグロバクテリウム(Agrobacterium )属に属する微生物の好ましい種としては、例えばAgrobacterium radiobacter, Agrobacterium aureum, Agrobacterium rhizogenes, Agrobacterium tumefaciens, Agrobacterium viscosum等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてはAgrobacterium radiobacter NRRL B-11291, Agrobacterium radiobacter IAM12048, Agrobacterium tumefaciens IAM13129, Agrobacterium tumefaciens MAFF03-01224, Agrobacterium tumefaciens MAFF03-01001, Agrobacterium viscosum IFO13652, Agrobacterium aureum IFO13647, Agrobacterium rhizogenes MAFF07-20001, Agrobacterium rhizogenes MAFF03-01724等が挙げられる。【0010】本発明において使用するオーレオバクテリウム(Aureobacterium)属に属する微生物の好ましい種としては、例えば Aureobacterium saperdae, Aureobacterium testaceum等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてAureobacterium saperdae JCM 1352, Aureobacterium testaceum JCM1353等が挙げられる。本発明において使用するバチルス(Bacillus)属に属する微生物の好ましい種としては、例えばBacillus licheniformis, Bacillus megaterium, Bacillus sphaerium 等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてはBacillus licheniformis IFO12200, Bacillus megaterium IFO12108, Bacillus megaterium ATCC13639, Bacillus sphaerium ATCC7055 等が挙げられる。【0011】本発明において使用するバクテリジウム(Bacteridium )属に属する微生物の好ましい種としては、例えばBacteridium sp等が挙げられる。さらに具体的な代表株としては Bacteridium sp.R340 FERM P-2718等が挙げられる。本発明において使用するボルデテラ(Bordrtella)属に属する微生物は、例えば Bordrtella bronchiseptica等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてBordrtella bronchiseptica ATCC4617等が挙げられる。【0012】本発明において使用するブレビバクテリウム(Brevibacterium)属に属する微生物の好ましい種としては、例えばBrevibacterium ammoniagenes,Brevibacterium butanicum, Brevibacterium flavum, Brevibacterium iodinum 等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてはBrevibacterium ammoniagenes JCM1305, Brevibacterium ammoniagenes JCM1306,Brevibacterium butanicum ATCC21196, Brevibacterium flavum ATCC14067, Brevibacterium iodinum IFO3558等が挙げられる。【0013】本発明において使用するコマモナス(Comamonas )属に属する微生物の好ましい種としては、例えばComamonas acidovorans, Comamonas terrigena等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてはComamonas acidovorans NCIMB9289, Comamonas terrigena IFO13299 等が挙げられる。本発明において使用するコリネバクテリウム(Corynebacterium )属に属する微生物の好ましい種としては、例えばCorynebacterium glutamicum, Corynebacterium flaccumfaciens, Corynebacterium flavescens, Corynebacterium hydrocarboclastum 等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてCorynebacterium glutamicum ATCC13032, Corynebacterium flaccumfaciens ATCC12813, Corynebacterium flavescens JCM1317, Corynebacterium hydrocarboclastum ATCC15960 等が挙げられる。【0014】本発明において使用するエンテロバクター(Enterobacter)属に属する微生物の好ましい種としては、例えばEnterobacter aerogenes, Enterobacter cloacae, Enterobacter taylorae 等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてEnterobacter aerogenes IFO13534, Enterobacter aerogenes ATCC13048, Enterobacter cloacae ATCC222, Enterobacter cloacae ATCC13047, Enterobacter cloacae IFO12935, Enterobacter tayloraeJCM3943等が挙げられる。【0015】本発明において使用するエルウィニア(Erwinia )属に属する微生物の好ましい主としては、例えばErwinia chrysanthemi, Erwinia rhapontici等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてErwinia chrysanthemi MAFF 03-01767, Erwinia rhapontici MAFF 03-01331等が挙げられる。本発明において使用するエッシェリティア(Escherichia )属に属する微生物の好ましい主としては、例えばEscherichia coli等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてEscherichia coli ATCC11775, Escherichia coli IFO3301, Escherichia coli ATCC10798等が挙げられる。【0016】本発明において使用するフラボバクテリウム(Flavobacterium)属に属する微生物の好ましい種としては、例えばFlavobacterium aquatile, Flavobacterium dehydrogenans 等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてFlavobacterium aquatile IFO3772, Flavobacterium dehydrogenans ATCC13930 等が挙げられる。本発明において使用するグルコノバクター(Gluconobacter )属に属する微生物の好ましい種としては、例えばGluconobacter capsulatus等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてGluconobacter capsulatus IAM1813等が挙げられる。【0017】本発明において使用するハフニア(Hafnia)属に属する微生物の好ましい種としては、例えばHafnia alvei等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてHafnia alvei ATCC13337等が挙げられる。本発明において使用するクレブシエラ(Klebsiella)属に属する微生物の好ましい種としては、例えばKlebsiella planticola, Klebsiella oxytoca , Klebsiella terrigena等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてKlebsiella planticola NCIB11885, Klebsiella oxytoca JCM1665, Klebsiella terrigena JCM1687 等が挙げられる。【0018】本発明において使用するミクロバクテリウム(Microbacterium)属に属する微生物の好ましい種としては、例えばMicrobacterium lacticum, Microbacterium flavum等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてMicrobacterium lacticum IAM1640, Microbacterium flavum JCM1317等が挙げられる。本発明において使用するミクロコッカス(Micrococcus )属に属する微生物の好ましい種としては、例えばMicrococcus varians, Micrococcus morrhuae , Micrococcus luteus等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてMicrococcus varians IAM1314, Micrococcus morrhuae IAM1711, Micrococcus luteus ATCC4698, Micrococcus varians IAM1099 等が挙げられる。【0019】本発明において使用するモラクセラ(Moraxella )属に属する微生物の好ましい種としては、例えばMoraxella nonliquefaciens 等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてMoraxella nonliquefaciens FERM-P4348等が挙げられる。本発明において使用するパラコッカス(Paracoccus)属に属する微生物の好ましい種としては、例えばParacoccus denitrificans等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてParacoccus denitrificans IFO13301 、Paracoccus denitrificans FERM-P4349 等が挙げられる。【0020】本発明において使用するシュードモナス属(Pseudomonas )属に属する微生物の好ましい種としては、例えばPseudomonas putida, Pseudomonas oleovolans, Pseudomonas sp. 等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてPseudomonas putida NCIMB11924, Pseudomonas oleovolans IFO13583, Pseudomonas sp. ATCC13261 等が挙げられる。本発明において使用するラネラ(Rhanella)属に属する微生物の好ましい種としては、例えばRhanella aquatilis等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてRhanella aquatilis JCM1683等が挙げられる。【0021】本発明において使用するキサントモナス(Xanthomonas )属に属する微生物の好ましい種としては、例えばXanthomonas maltophila等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてXanthomonas maltophila ATCC13637等が挙げられる。本発明において使用するにセルロモナス(Cellulomonas)属に属する微生物の好ましい種としては、例えばCellulomonas biazotea, Cellulomonas flavigena, Cellulomonas gelida等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてCellulomonas biazotea ATCC486, Cellulomonas flavigena ATCC482, Cellulomonas biazotea JCM1340, Cellulomonas flavigena IFO3754, Cellulomonas gelida IFO3748 等が挙げられる。【0022】本発明において使用するバークホルデリア(Burkholderia)属に属する微生物の好ましい種としては、例えばBurkholderia cepacia等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてBurkholderia cepacia ATCC25416等が挙げられる。本発明において使用するロドトルラ(Rhodotorula )属する微生物の好ましい種としては、例えばRhodotorula minuta等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてRhodotorula minuta IFO0387等が挙げられる。【0023】本発明において使用するファエノココマイセス(Phaeococcomyces )属に属する微生物の好ましい種としては、例えばPhaeococcomyces nigricans 等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてPhaeococcomyces nigricans CBS 652.76等が挙げられる。本発明において使用するキャンディダ(Candida )属に属する微生物の好ましい種としては、例えばCandida molischiana, Candida terreus, Candida parapsilosis, Candida zeylanoides, Candida maltosa等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてCandida molischiana IFO 10926, Candida terreus IFO 0727, Candida parapsilosis IFO 604, Candida zeylanoides IFO6408, Candida maltosa IFO 1977等が挙げられる。【0024】本発明において使用するトリグノプシス(Trignopsis)属に属する微生物の好ましい種としては、例えばTrignopsis variabilis 等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてTrignopsis variabilis IFO4095 等が挙げられる。本発明において使用するハンセニアスポラ(Hanseniaspora )属に属する微生物の好ましい種としては、例えばHanseniaspora uvarum IFO 1755 等が挙げられる。さらに具体的な代表株としてHanseniaspora uvarum IFO 1755 等が挙げられる。【0025】また、リビトール、ガラクチトールあるいはキシリトールを唯一の炭素源として生育できる菌株の数多くの菌株がエリスリトールからスレイトールへの変換が可能である。よって自然界よりリビトール、ガラクチトールあるいはキシリトールを唯一の炭素源として生育できる菌で、エリスリトールからスレイトールへの変換が可能な菌であればいずれも本反応に使用できる。【0026】また、上記微生物は、変異株、あるいは細胞融合もしくは遺伝子組換え法などの遺伝学的手法により誘導される組換え株などのいずれの株であってもよい。また、上記の菌株はいずれも公知の菌株であり、それぞれ、(財)発酵研究所(IFO)、セントラルビューローフォーシュメルカルチャーズ(CBS)、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から容易に入手することができる。【0027】本発明の製造方法においては、上記微生物の1種あるいは2種以上が菌体及び/または菌体処理物として用いられる。具体的には、上記微生物を培養して得られた菌体をそのまま、あるいは培養して得られた菌体を公知の手法で処理したもの、即ち、アセトン処理したもの、凍結乾燥処理したもの、菌体を物理的または酵素的に破砕したもの等の菌体処理物を用いることができる。また、これらの菌体または菌体処理物から、エリスリトールに作用しスレイトールへ変換する能力を有する酵素画分を粗製物あるいは精製物として取り出して用いることも可能である。さらには、このようにして得られた菌体、菌体処理物、酵素画分等を通常の固定化技術を用いて、すなわち、ポリアクリルアミド、カラギーナンゲル等の担体に固定化したもの等を用いることも可能である。そこで本明細書において、「菌体及び/または該菌体処理物」の用語は、上述の菌体、菌体処理物、酵素画分、及びそれらの固定化物全てを含有する概念として用いられる。【0028】次に、本発明の製造方法について具体的に説明する。本発明においては、原料としてエリスリトールを用い、これに上記特定の微生物の菌体又は該菌体処理物を作用させて、スレイトールを製造する。本発明の製造方法において微生物は、通常、培養して用いられるが、この培養については定法通り行うことができる。本微生物の培養の為に用いられる培地には本微生物が資化しうる炭素源、窒素源、及び無機イオン等が含まれる。炭素源としては、グルコース、フルクトース、サッカロース等の炭水化物、グリセロール、マンニトール、キシリトール、リビトール等のポリアルコール類、有機酸その他が適宜使用される。窒素源としては、NZアミン、トリプトース、酵母エキス、ポリペプトン、肉エキス、大豆抽出物などの有機窒素源、あるいは硫酸アンモニウム塩、硝酸アンモニウム塩などの無機窒素源、その他などが適宜使用される。無機イオンとしては、リン酸イオン、マグネシウムイオン、鉄イオン、マンガンイオン、モリブデンイオンその他が必要に応じ適宜使用される。更に、イノシトール、パントテン酸、ニコチン酸アミドその他のビタミン類を必要に応じ添加することは有効である。酵素の誘導剤として、エリスリトール、グリセロール、マンニトール、キシリトール、リビトール等のポリアルコール類が適宜使用される。培養は、好気的条件下に、pH約3〜11、温度約4〜50℃の適当な範囲に制御しつつ1〜100時間行う。【0029】エリスリトールからスレイトールを製造する方法として、本微生物を培養し、得られた菌体及び/または該菌体処理物にエリスリトールを添加し反応させスレイトールを得る方法、培地にエリスリトールを添加し培養と反応を同時に行う方法、あるいは培養終了後、エリスリトールを添加して更に反応を行う方法等を適宜用いることができる。反応は温度4〜70℃、好ましくは20〜50℃の範囲で行い、pHは2〜11、好ましくは6〜9のの範囲で行う。エリスリトールの濃度は0.0001〜80%、好ましくは0.01〜50%の範囲が望ましく、必要ならばエリスリトールは反応の間、追補添加される。【0030】エリスリトール以外の炭水化物が反応液に添加されると著しく反応が促進される場合がある。これらの炭水化物としてはグルコース、フルクトース、サッカロース等の糖類、エタノール、グリセロール、マンニトール、キシリトール、リビトール等のアルコール類、ピルビン酸などの有機酸などが適宜使用される。添加濃度はエリスリトールに対し0.1〜200%、好ましくは10〜100%の範囲で用いられる。【0031】また、必要に応じてコバルトイオン、マグネシウムイオン等の金属イオンを添加することにより反応が促進される場合がある。微生物によっては反応の中間体物質としてエリスルロースが検出されることもあり、この場合は酸化と還元が微生物内で同時に行われ結果的にスレイトールが蓄積されると推定される。微生物によってはこの中間体がほとんど検出されないものもあり、ある種の異性化酵素である可能性も示唆される。【0032】培養及び反応で得られたスレイトールの採取方法としては、微生物などの固形分を遠心分離、フィルタープレス、限外濾過などの通常の分離装置によりを除去した後に、残存するその他の糖質や菌体及び培地由来の物質を通常の方法、すなわちクロマトグラフィーや晶析技術を用いることで除去できる。工業的には、イオン交換樹脂を用いた疑似移動相型クロマトグラフィーにより分離することも可能である。分離精製の工程には、必要に応じて脱塩、脱色など、通常の棟の精製における操作を加えることもできる。さらに低温晶析、有機溶媒を用いた晶析等、通常の晶析技術を用い、スレイトールの結晶を得る事ができる。【0033】【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、その要旨を越えない限り本発明の技術分野における通常の変更をすることができる。実施例1リビトール 10g/L、イーストエキス 5g/L、ポリペプトン 5g/L、リン酸2カリウム 3g/L、リン酸1カリウム 1g/L(pH7.1)の組成からなる液体培地10mLに、第1表に示した各種の菌株を接種し、30℃で24時間好気的に培養した。得られた培養液を遠心分離し、菌体を集め、これにエリスリトール 10g/L、およびフルクトース 5g/Lを含む100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)を加え、全量を1mLとし30℃で24時間好気的に反応させた。反応終了後菌体を遠心分離にて除去し上清を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分析した。HPLCの条件はカラム:MCIGEL CK08EC 温度:75度溶離液:水100% 流速:0.8ml/min.検出器:RI検出器およびUV検出器(210nm)標準サンプルとしてSigma社の試薬を用いた。結果を第1表に示す。【0034】【表1】【0035】【表2】【0036】実施例2マンニトール 2g/L、リビトール 5g/L、硫安 3g/L、リン酸2ナトリウム 13.5g/L、リン酸1カリウム 1.5g/L、硫酸マグネシウム7水和物 0.2g/L、硫酸第二鉄 5mg/L(pH7.2)の組成からなる液体培地1 0mLにEnterobacter aerogenes IFO13534, Enterobacter aerogenes ATCC13048, Enterobacter cloacae ATCC222, Enterobacter cloacae ATCC13047, Enterobacter cloacae IFO12935, Enterobacter tayloraeJCM3943をそれぞれ接種し、30℃で30時間好気的に培養した。得られた培養液を遠心分離し、菌体を集めた。【0037】この菌体に1mlの1%エリスリトール溶液(100mMリン酸カリウム緩衝液(pH8.0))と蒸留水9mlを加え30℃で4日間反応させた。反応開始1日目にピルビン酸を10マイクロリットル添加して反応を続けた。反応終了後菌体を遠心分離にて除去し上清をHPLCにて分析した。結果を第2表に示す。【0038】【表3】【0039】実施例3リビトール 10g/L、イーストエキス 10g/L、リン酸1カリウム 1.4 g/L、リン酸2ナトリウム 3g/L、硫酸アンモニウム5g/L、NaCL0.5g/L、硫酸マグネシウム0.5g/L(pH6.3)の組成からなる液体培地10mLに、第3表に示した各種の菌株を接種し、30℃で48〜72時間好気的に培養した。得られた培養液を遠心分離し、菌体を集め、これにエリスリトール15g/L、およびフルクトース5g/Lを含む100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5 )を加え、全量を1 mLとし30℃で24時間好気的に反応させた。反応終了後菌体を遠心分離にて除去し上清を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分析した。結果を第3表に示す。【0040】【表4】【0041】実施例4グルコース10g/L、イーストエキス 10g/L、リン酸2カリウム 3g/L、リン酸1カリウム 1g/L、エリスリトール 2g/L、硫酸マグネシウム 0.5g/L、硫酸マンガン 10mg/L、塩化コバルト 10mg/L(pH7.0)の組成からなる液体培地200mLに、Agrobacterium radiobacter NRRL B-11291を接種し、30℃で24時間好気的に培養し種培養とした。同組成の培地20Lを30Lジャーファーメンターに仕込み、120℃20分殺菌後、31℃に温度を設定し、種培養を植菌して、15時間培養した。得られた培養液を遠心分離し、菌体を集め、全量1Lになるように水に懸濁した。この懸濁液500mLと水1250mL、さらにエリスリトール190g、およびフルクトース37.5gを含む100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)200mLを加え1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)100mL加え、5Lのミニジャーファーメンターにて30℃、600rpm、1vvmで6日間反応させた。反応終了後HPLCにて分析したところ、スレイトール152g、エリスリトール8g含まれていた。(収率80.3%) (変換率95.7%)【0042】実施例5実施例4の反応終了液を遠心分離にかけ菌体を除いた。さらにその上清を透析膜にて高分子物質を除き、濃縮後エタノールを加えて結晶を析出させた。この結晶20mgとりテトラヒドロフラン0.2mLと無水トリフルオロ酢酸を0.02mL加え、さらにピリジンを5μl加え室温で撹拌し、ガスクロマトグラフィー(GC)にて光学純度の分析した。光学純度は100%D体であった。GCの条件は以下の通りである。Column :β-DEX325 (Superco, 30m*0.25mmID*0.25μm )Carrier : He 1.5ml/min(1.2KG ), Oven : 100℃, Det : FID, 300℃Inj : 1 μl, split (50:1), 220 ℃尚、TFA化エリスリトールは7.3 分に、TFA化L−スレイトールは10.1分に、TFA化D−スレイトールは9.3 分に検出される。【0043】実施例6リビトール 10g/L、イーストエキス 5g/L、ポリペプトン 5g/L、リン酸2カリウム 3g/L、リン酸1カリウム 1g/L(pH7.1)の組成からなる液体培地50mLに、Agrobacterium tumefaciens IAM 13129, Enterobacter aerogenes IFO13534, Alcaligenes paradoxus Biotype II DSM30162 をそれぞれ接種し、30℃で24時間好気的に培養した。得られた培養液を遠心分離し、菌体を集め、これにエリスリトール80g/L、およびマンニトール40g/Lを含む100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)を加え、全量を5mLとし30℃で24時間好気的に反応させた。反応終了後菌体を遠心分離にて除去し上清を得た。この上清を濃縮乾固し、実施例5と同様にGCにて光学純度の分析を行った。結果、Agrobacterium tumefaciens IAM 13129 及び, Enterobacter aerogenes IFO13534 はL−スレイトール由来のピークは認められず、100%D体のスレイトールであった。 Alcaligenes paradoxus Biotype II DSM30162は96.7%の光学純度であった。【0044】実施例7グルセロール10g/L、イーストエキス 10g/L、リン酸2カリウム3g/L、リン酸1カリウム 1g/L、エリスリトール2g/L(pH7.0)の組成からなる液体培地20mLに、Agrobacterium radiobacter NRRL B-11291を接種し、30℃で24時間好気的に17時間培養した。得られた培養液を遠心分離し、菌体を集め、全量2mLになるように水に懸濁した。この懸濁液100μLと10%エリスリトール200μL、および第4表に示した各種の炭水化物10%濃度液を100μL、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)600μLを加え、27℃で20時間好気的に反応させた。反応終了後HPLCにて分析して炭水化物の影響を調べた。結果を第4表に示すが、何も入れないときに比べて特に、フルクトースにもっとも生産性を高める効果があった。【0045】【表5】【0046】実施例8リビトール 10g/L、イーストエキス 5g/L、ポリペプトン 5g/L、リン酸2カリウム 3g/L、リン酸1カリウム 1g/L(pH7.1)の組成からなる液体培地10mLに、第5表に示した各種の菌株を接種し、30℃で24時間好気的に培養した。得られた培養液を遠心分離し、菌体を集め、これにエリスリトール80g/L、およびフルクトース30g/Lを含む100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)を加え、全量を1 mLとし30℃で24時間好気的に反応させた。反応終了後菌体を遠心分離にて除去し上清を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分析した。結果を第5表に示す。【0047】【表6】【0048】【発明の効果】本発明によって、微生物を利用してエリスリトールからスレイトールを簡便に製造することが可能になった。 アグロバクテリウム属、エンテロバクター属及びアルカリゲネス属よりなる群から選ばれたエリスリトールをD−スレイトールに変換する能力を有する微生物の菌体及び/または該菌体処理物を、エリスリトールに作用させることを特徴とするD−スレイトールの製造方法。 アグロバクテリウム属に属する微生物であってエリスリトールをD−スレイトールに変換する能力を有する微生物の菌体及び/または該菌体処理物を、エリスリトールに作用させることを特徴とするD−スレイトールの製造方法。 微生物の菌体及び/または該菌体処理物をエリスリトールに作用させるに際し、リビトール、キシリトール、アラビノース、リボース、ソルビトール、マンニトール、イノシトール、グルコース、フラクトース、ソルボース、ラクチトール、ミオ−イノシトール、サッカロース、エタノール、グリセロール、及びピルビン酸よりなる群から選ばれた化合物を共存させることを特徴とする請求項1又は2記載のD−スレイトールの製造方法。


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