タイトル: | 特許公報(B2)_キナ酸の製造方法 |
出願番号: | 1998065361 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C07C 51/493,C07C 62/04,C07C 51/47,C07C 51/487 |
永井 直 津留 和孝 JP 3822350 特許公報(B2) 20060630 1998065361 19980316 キナ酸の製造方法 三井化学株式会社 000005887 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 島村 直己 100101904 永井 直 津留 和孝 20060920 C07C 51/493 20060101AFI20060831BHJP C07C 62/04 20060101ALI20060831BHJP C07C 51/47 20060101ALI20060831BHJP C07C 51/487 20060101ALI20060831BHJP JPC07C51/493C07C62/04C07C51/47C07C51/487 C07C 51/42-51/50 C07C 62/02-62/06 C07C 51/09 CA(STN) REGISTRY(STN) 特開平9−3000(JP,A) 特開平7−18256(JP,A) 特開平7−8169(JP,A) 3 1999263746 19990928 10 20030718 山本 昌広 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、例えば食品添加物、工業材料、医薬原料、化粧品原料として有用であり、かつ高価なキナ酸の製造方法に関し、より詳細には、キナ酸を含む原料液などの粗キナ酸からキナ酸を精製するキナ酸の製造方法に関する。【0002】【従来の技術】キナ酸の製造は従来から行われており、1954年に4−クロロシクロヘキサノンからキナ酸の全合成がなされている(R. Grewe, Ber., Vol. 87, p. 793 (1954))。また、1964年にはα−アセトアクリル酸メチルエステルと1,3−ブタジエンを出発原料としてキナ酸の全合成が行われている(J. Wolinsky, R. Novak 及びR. Vasileff, J. Org. Chem., Vol. 29, p. 3596 (1964) )。しかしながら、このような全合成によるキナ酸の製造は工程数が多いため収率が低く、従って、キナ酸を工業的に製造することは困難である。【0003】また、天然のキナ酸はキナ皮、コーヒー豆などの中に存在しており、キナ皮中では遊離の状態で、コーヒー豆中ではクロロゲン酸として存在している。その他にもサトウダイコンなど多くの植物に分布しており、これらの材料から抽出されることが報告されている。【0004】天然のキナ酸を抽出・精製する従来法としては、コーヒー生豆又はコーヒー抽出滓から、イオン交換や電気透析等を用いて抽出・精製する方法(特開平7−8169号公報、特開平7−18256号公報)があるが、大掛かりな装置が必要となり、ランニングコストがかかりすぎていた。また、タラ豆のサヤから没食子酸を製造したときに排出される没食子酸製造廃液からキナ酸を精製する方法(特開平9−3000号公報)が知られているが、この方法でも、精製の途中に水を留去する工程が数回あり、膨大なエネルギーを必要とするためにランニングコストがかかりすぎるという問題点がある。【0005】前述の抽出方法がいずれも大掛かりなものであることは、水溶性が極めて高く、低級アルコール以外の有機溶媒にはほとんど不溶性であり、かつ、ナトリウムイオン、カリウムイオンとの親和性が高いために無機塩との分離が困難なキナ酸を、高純度に抽出・精製することの難しさを示している。【0006】【発明が解決しようとする課題】前述した通り、キナ酸の安価で効率的な抽出方法がいまだに確立されていない。そこで、本発明は、天然物に含まれているキナ酸を効率よく、安価に精製する方法を提供することを目的とする。【0007】【課題を解決するための手段】本発明者らは前記の課題を解決するために検討を重ねた結果、キナ酸を一旦通常の有機溶媒に可溶な構造に誘導して無機塩と分離すると共に、再結晶による精製を行った後にキナ酸に戻すことにより、極めて困難であったキナ酸と無機塩の分離、及びキナ酸の晶析精製を容易に行うことができると考えた。更に、このような方法によるキナ酸の製造を実現するために、以下のような検討を行った。【0008】前記の目的に適合するキナ酸の誘導体の探索を行った。キナ酸のメチルエステル、エチルエステルはキナ酸を含む水溶液からも容易に誘導可能であったが、これらエステル類は、水と相分離可能な通常の有機溶媒には難溶性であるため、目的に適合しなかった。【0009】キナ酸とケトン類又はアルデヒド類を酸触媒存在下で反応させることにより容易に合成可能な一般式(I)で表されるキナ酸アセタール体を検討した結果、水と相分離可能な通常の有機溶媒に可溶性であり、無機塩との分離及び再結晶による精製が極めてスムーズに進行することが判った。【0010】そこで、実際の抽出源からキナ酸をアセタール体として抽出する検討を行った。抽出源としてはタラ豆のサヤを用い、これを通常の方法でアルカリ加水分解を行った後、反応溶液を酸性とし、テトラヒドロフラン等の有機溶媒で没食子酸等の有機不純物を抽出除去した。このようにして、キナ酸及び硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等の無機塩を含む水溶液を得た。【0011】この水溶液を濃縮後、ケトン類又はアルデヒド類と酸触媒の存在下において、脱水させながら反応させたが目的物のキナ酸アセタール体(I)は少量しか得られず、一般式(II):【0012】【化2】【0013】(式中、R1及びR2は同一又は相異なり、水素、アルキル基又はアリール基を表し、また、R1及びR2は一緒になって、側鎖を有する又は有さない鎖員2〜7のアルキレン基を表してもよい。)【0014】で示されるキナ酸アセタール体が得られた。この化合物は通常の有機溶媒よりも水への溶解度が高く、本目的に適合しなかった。ここでアセタール体(I)が得られない理由は、共存しているナトリウム(又はカリウム)イオンとキナ酸がキレート化するため、ラクトン化が進行しなかったためと考えられる。【0015】そこで、共存している無機塩をイオン交換樹脂で除去した後にアセタール化反応を行ったところ、目的のキナ酸アセタール体(I)が良好な収率で得られることを見出した。【0016】また、キナ酸及び無機塩を含む抽出液を濃縮した後にメタノール、エタノール等のアルコール類を加えて酸触媒の存在下において反応させると、容易に対応するエステルに変換することが判ったので、これらのキナ酸エステルに対してアセタール化反応を行ったところ、同様に良好な収率でキナ酸アセタール体(I)が得られることを見出した。【0017】このようにして得られたキナ酸アセタール体(I)と共存している無機塩は、これらを含む混合物を有機溶媒で抽出処理した後に水洗することにより容易に除去することができた。その後、有機溶媒中で再結晶して精製し、酸触媒の存在下において加水分解することにより容易に高純度キナ酸に誘導することができる。【0018】以上のようにして、キナ酸を含む安価な原料液から、キナ酸をアセタール体(I)に誘導した後に精製し、これをキナ酸に戻すことにより効率的にキナ酸を抽出・精製できることを見出し、本発明を完成した。【0019】すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。(1)粗キナ酸を酸触媒の存在下において、ケトン類又はアルデヒド類と反応させることにより一般式(I):【0020】【化3】【0021】(式中、R1及びR2は同一又は相異なり、水素、アルキル基又はアリール基を表し、また、R1及びR2は一緒になって、側鎖を有する又は有さない鎖員2〜7のアルキレン基を表してもよい。)で示されるキナ酸アセタール体に誘導して精製した後、加水分解することを特徴とするキナ酸の製造方法。【0022】(2)前記粗キナ酸が、キナ酸を含有している原料液であり、該原料液から無機塩をイオン交換樹脂により除去した後、酸触媒の存在下において、ケトン類又はアルデヒド類と反応させることにより一般式(I)で示されるキナ酸アセタール体を製造する工程を含む前記(1)に記載の方法。【0023】(3)前記粗キナ酸が、キナ酸を含有している原料液であり、該原料液中でキナ酸をアルコール類と反応させることによりキナ酸エステルに変換した後、酸触媒の存在下において、ケトン類又はアルデヒド類と反応させることにより一般式(I)で示されるキナ酸アセタール体を製造する工程を含む前記(1)に記載の方法。【0024】【発明の実施の形態】以下、本発明を具体的に説明する。本発明において、粗キナ酸としては、通常、キナ酸を含有している原料液が用いられる。かかる原料液はキナ酸を含有していればどのような種類のものでもよく、特に限定しないが、例えば、タラ豆のサヤから没食子酸を製造したときに排出される没食子酸製造廃液(キナ酸を2〜3%含有)若しくはタラ豆のサヤ(キナ酸を約12%含有、没食子酸エステルとして存在)をアルカリ水溶液で加水分解処理した後に固形物をろ去したろ液、又はコーヒー抽出残渣(キナ酸をクロロゲン酸の形で約1%含有)をアルカリ水溶液で加水分解処理した後に固形物をろ去したろ液(特開平7−8169号公報)等を挙げることができる。【0025】前記一般式(I)において、R1又はR2で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基が挙げられ、アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基が挙げられる。また、R1及びR2は一緒になって、ペンタメチレン基等の鎖員2〜7のアルキレン基を表してもよい。この場合、R1及びR2は、隣接する炭素原子と共同して3〜8員環を形成する。また、前記アルキレン基は、前述した炭素数1〜5のアルキル基の側鎖を有してもよい。【0026】アセタール化反応に使用するケトン類及びアルデヒド類は、次式:【0027】【化4】R1−CO−R2【0028】(式中、R1及びR2は、前記と同義である。)で示されるカルボニル化合物である。【0029】前記ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルsec-ブチルケトン、シクロヘキサノン等を挙げることができ、好ましくは、アセトン又はシクロヘキサノンを用いる。前記アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド等を挙げることができる。【0030】アセタール化反応の触媒として用いる酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸類、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類、アンバーリスト−15等の固体酸類を挙げることができ、好ましくは硫酸を用いる。【0031】次に、本発明を実施するための、好ましい反応方法及び反応条件等を説明する。本発明は、好ましくは、キナ酸抽出、イオン交換樹脂処理若しくはエステル化、アセタール化及び脱アセタールを順次行うことにより実施される。従って、これらの各工程について、以下に説明する。【0032】(1)キナ酸抽出工程キナ酸を含有する原料液中には、不純物として有機物が存在する場合がある。有機物の種類にもよるが、例えば不純物が没食子酸等の酸類である場合には、キナ酸を含む原料液のpHを1〜2まで低下させた後、適当な有機溶媒でキナ酸以外の有機物を除去することができる。pHを低下させるのに用いる酸としては、このような目的で通常使用される酸を用いることができるが、好ましくは鉱酸、より好ましくは硫酸を使用する。ここで用いる有機溶媒としては、水と二相分離し、かつ、キナ酸以外の有機物を抽出可能なものであればどのようなものを使用してもよく、例えば、塩化メチレン及びクロロホルムに代表されるハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフランに代表されるエーテル類、ベンゼン、トルエン及びキシレンに代表される芳香族化合物、並びに酢酸エチルで代表されるエステル類などの不活性な有機溶媒を単独で又は混合して用いることができる。有機溶媒による抽出は、原料液に対して0.01〜100倍、好ましくは0.1〜1.0倍の体積の有機溶媒を加え、0〜50℃で撹拌した後、油層を分離することにより行うことができる。撹拌時間は特に限定されるものではないが、好ましくは0.5〜5時間の範囲である。この操作は、好ましくは1〜10回行う。【0033】次に、アルコール類を添加して撹拌し、析出する無機塩類を除去する。ここで用いるアルコール類としては、キナ酸を溶解させることができるものであればよく、特に限定しないが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール等を挙げることができ、好ましくはメタノール、エタノール又はi−プロパノールを用いる。析出する無機塩類の除去は、ろ過により容易に行うことができる。以上のようにして、粗キナ酸溶液を得ることができる。【0034】前記の無機塩類除去操作により大部分の無機塩を除去することができるが、そのままアセタール化反応を行ってもキナ酸アセタール体(I)が効率よく得られないのは前述の通りである。従って、次に述べる(2a)イオン交換樹脂を用いる方法又は(2b)エステルを経由する方法のいずれかを採用することが好ましい。【0035】(2a)イオン交換樹脂を用いる方法前述の(1)の方法により得られた粗キナ酸溶液(無機塩、水、アルコール等を含む)を、あらかじめ酸処理−水洗しておいた陽イオン交換樹脂とともに撹拌した後、ろ過することにより、ナトリウムイオン、カリウムイオン等の陽イオンが除去される。ここで用いられる陽イオン交換樹脂としては、例えば、アンバーライトIR−120B、アンバーライトIR−122、アンバーライトIR−124、アンバーライト200C、アンバーライト201B、アンバーライト252等を挙げることができ、好ましくはアンバーライトIR−120Bを用いる。ろ過時の洗浄に用いる溶媒としては、例えば、水、アルコール類等が挙げられる。ここで用いるアルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール等を挙げることができ、好ましくはメタノール、エタノール又はi−プロパノールを用いる。【0036】陽イオン交換樹脂で処理した溶液は処理前に比べpHが下がっている。このまま次のアセタール化工程に進んでもよいが、この段階で(1)でpHを低下させるのに使用した酸の陰イオン、例えば硫酸イオンを除去してもよい。あらかじめアルカリ処理−水洗しておいた陰イオン交換樹脂とともに反応溶液を撹拌した後、ろ過することにより硫酸イオン等の陰イオンを効率よく除去することができる。ここで用いられる陰イオン交換樹脂としては、例えば、アンバーライトIRA900、アンバーライトIRA904、アンバーライトIRA400、アンバーライトIRA401、アンバーライトIRA402を挙げることができ、好ましくはアンバーライトIRA900を用いる。ろ過時の洗浄に用いる溶媒としては、例えば、水、アルコール類等が挙げられる。ここで用いるアルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール等を挙げることができ、好ましくはメタノール、エタノール又はi−プロパノールを用いる。以上のようにして、キナ酸溶液を得ることができる。得られたキナ酸溶液は濃縮又は溶媒留去後に(3)アセタール化工程に供する。【0037】(2b)エステルを経由する方法(1)の方法で得られた粗キナ酸溶液(無機塩、水、アルコール等を含む)にアルコール類及び酸触媒を添加し、撹拌することにより、キナ酸を容易にキナ酸のエステルに変換することができる。粗キナ酸溶液はそのまま使用してもよいが、好ましくは溶媒を一旦留去し、その後にアルコール類及び酸触媒を添加する。その際に、アルコール類を添加した時点で不溶性物質があれば、ろ過等の公知の方法によりその不溶性物質を除去することが好ましい。ここで用いるアルコール類としては、好ましくは炭素数1〜5のアルコール類、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール等を挙げることができ、より好ましくはメタノール、エタノール又はi−プロパノールを用いる。酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸類、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類、アンバーリスト−15等の固体酸類を挙げることができ、好ましくは硫酸を用いる。アルコール類の使用量はキナ酸に対して通常1〜100重量倍、好ましくは2〜50重量倍、より好ましくは5〜30重量倍である。酸触媒の使用量はキナ酸に対して通常0.1〜100モル%、好ましくは1〜50モル%、より好ましくは5〜20モル%である。反応温度は用いるアルコール・酸触媒によって異なるが、通常0〜200℃、好ましくは20〜100℃である。反応時間は使用するアルコール類、酸触媒、反応温度等の条件によって異なるが、通常4〜12時間である。以上のようにして、キナ酸エステル溶液を得ることができる。得られたキナ酸エステルのアルコール溶液は濃縮又は溶媒留去後に(3)アセタール化工程に供する。【0038】(3)アセタール化工程得られたキナ酸又はキナ酸エステルに、ケトン類又はアルデヒド類及び酸触媒を加えて撹拌する。この際に、反応途中で生成する水又はアルコールを除去すると反応が速やかに進行する。除去方法としては特に限定しないが、溶媒と共に反応系外に除去するか、又は脱水剤、脱アルコール剤等を冷却管の下に取り付け、還流させながら除去する方法等がある。【0039】ケトン類又はアルデヒド類の使用量は、キナ酸に対して通常1〜100重量倍、好ましくは2〜50重量倍、より好ましくは5〜30重量倍である。酸触媒の使用量はキナ酸に対して通常0.1〜100モル%、好ましくは1〜50モル%、より好ましくは5〜20モル%である。反応温度は用いるアルコール及び酸触媒によって異なるが、通常0〜200℃、好ましくは20〜100℃である。アセタール化反応は無溶媒で行ってもよいし、溶媒中で行ってもよい。反応に用いる溶媒としては、反応に影響しないものであればよく、特に限定しないが、例えば、塩化メチレン及びクロロホルムに代表されるハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフランに代表されるエーテル類、ベンゼン、トルエン及びキシレンに代表される芳香族化合物、酢酸エチルで代表されるエステル類などの不活性な有機溶媒を単独で又は混合して用いることができる。反応時間は、使用するケトン類、アルデヒド類、酸触媒、溶媒及びそれらの使用量等の条件によって異なるが、通常4〜12時間である。以上のようにして、前記式(I)で示されるキナ酸アセタール体(I)を得ることができる。【0040】反応終了後、得られたキナ酸アセタール体を溶媒抽出し、次いで水洗することにより無機塩を除去する。前記溶媒抽出に使用する溶媒としては、例えば、酢酸エチルで代表されるエステル類、塩化メチレン、クロロホルムで代表されるハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテルで代表されるエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンで代表される芳香族化合物等の水不混和性有機溶媒を用いる。次いで、有機層の溶媒を留去した後、適当な有機溶媒を用いて再結晶することにより精製を行う。再結晶に用いる溶媒としては、例えば、塩化メチレン及びクロロホルムに代表されるハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフランに代表されるエーテル類、ベンゼン、トルエン及びキシレンに代表される芳香族化合物、酢酸エチルで代表されるエステル類などの不活性な有機溶媒を単独で又は混合して用いることができる。【0041】(4)脱アセタール工程得られたキナ酸アセタール体(I)を、酸触媒の存在下において水と反応させることにより容易に脱アセタールし、キナ酸に誘導することができる。ここで用いる酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸類、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類、酢酸、プロピオン酸等の有機酸類、アンバーリスト−15、アンバーライトIR120B等の固体酸類を挙げることができ、好ましくは、除去容易な有機酸又は固体酸を用いる。反応温度は用いる酸触媒によって異なるが、通常0〜200℃、好ましくは20〜100℃である。脱アセタール反応は無溶媒で行ってもよいし、溶媒を用いて二相で反応を行ってもよい。反応に用いる溶媒としては、反応に影響しないものであればよく、特に限定しないが、例えば、塩化メチレン及びクロロホルムに代表されるハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフランに代表されるエーテル類、ベンゼン、トルエン及びキシレンに代表される芳香族化合物などの不活性な有機溶媒を単独で又は混合して用いることができる。反応時間は使用する酸触媒、溶媒等の条件によって異なるが、通常1〜12時間である。【0042】キナ酸に誘導した後は、再結晶して精製することができる。再結晶溶媒としては特に限定しないが、好ましくは水、アルコール類、アセトン等の組み合わせを用いる。【0043】【実施例】以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。【0044】〔実施例1〕タラ豆のサヤを原料として用い、順次、キナ酸抽出、イオン交換樹脂処理、アセタール化及び脱アセタールすることにより、純度99%以上のキナ酸を得た。以下に、各工程の操作を記載する。【0045】(キナ酸抽出工程)1L容の反応器にタラ豆のサヤ(破砕物)200g及び20%水酸化ナトリウム水溶液400gを入れ、内温95〜102℃で4時間撹拌した。得られた暗褐色スラリ−溶液を室温まで冷却した後、水100mlを加え、反応溶液のpHが1.5になるまで硫酸を加えた。不溶物を遠心ろ過によって除去し、褐色水溶液1038gを得た。以下の条件での高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析したところ、前記褐色水溶液1038g中のキナ酸含有量は24.43gであった。【0046】カラム:イオン交換樹脂 #2618(日立計測エンジニアリング社製)溶離液:0.4%リン酸水溶液流 速:0.3 ml/min検 出:UV(210nm)【0047】次いで、反応溶液中に含まれる没食子酸を除去するために、テトラヒドロフラン200mlで3回抽出除去を行ったところ、黄橙色の反応溶液(水溶液)844g(キナ酸18.2g含有)が得られた。この反応溶液にメタノール670gを加えて1時間撹拌した後、析出した無機塩をろ去し、キナ酸抽出液1221g(キナ酸17.58g含有、抽出率72%)を得た。【0048】(イオン交換樹脂処理工程)キナ酸抽出液71.4g(キナ酸1g含有)を、あらかじめ10%塩酸で処理した後に水洗しておいたアンバーライトIR120B(陽イオン交換樹脂)10.0gとともに室温で30分間撹拌した後、ろ過し、メタノールで洗浄した。ろ液と洗液を混合したものに、あらかじめ1N水酸化ナトリウム水溶液で処理した後に水洗しておいたアンバーライトIRA900(陰イオン交換樹脂)11.4gを加え30分間撹拌した。反応溶液のpHは3.0となった。ろ過した後、メタノールで洗浄し、ろ液と洗液を混合した。溶媒を2.7kPaの減圧下、50〜60℃に加熱して留去し(溶媒の減圧留去条件は、以下において同じ。)、2.3gの油状物質を得た。これにメタノール50mlを加え、析出する無機塩をろ去した後、ろ液の溶媒を減圧留去(上掲)し、キナ酸抽出物1.98g(キナ酸0.789g含有、イオン交換樹脂処理後回収率79%)を得た。【0049】(アセタール化工程)50ml容の反応容器に、上部に冷却管が付いたソックスレー抽出器を取り付け、抽出用器の中に脱水用のモレキュラーシーブス4A約30gを加えた。この反応容器に、得られたキナ酸抽出物1.98g、アセトン30ml及び98%硫酸81mgを加え、生成する水分を除去しながら8.5時間加熱還流した。反応溶液を室温まで冷却した後に、炭酸水素ナトリウム0.14gを加えて30分間撹拌し、その後に溶媒を減圧留去(上掲)した。得られた反応混合物に酢酸エチル50ml及び水30mlを加え、キナ酸アセタール体(I)を抽出した。水洗した後、有機層の溶媒を減圧留去(上掲)した。得られた黄色固溶体1.04gを酢酸エチル−ヘキサン(1:3)を用いて再結晶し、得られた結晶をろ別、乾燥(室温、667Pa、5時間)した。その結果、3,4−O−イソプロピリデンキニックアシド−1,5−ラクトン(キナ酸アセタール体(I)、R1=R2=Me)が704mg(3.29mmol、白色針状晶、mp=146〜147℃、アセタール化収率80%)得られた。【0050】(脱アセタール工程)得られた3,4−O−イソプロピリデンキニックアシド−1,5−ラクトン704mg(3.29mmol)に、あらかじめ10%塩酸で処理した後水洗しておいたアンバーライトIR120B(陽イオン交換樹脂)0.36g及び水7mlを加え、80℃で8時間撹拌した。HPLC(上掲)でキナ酸がほぼ定量的に生成していることを確認した。イオン交換樹脂をろ別した後、溶媒を減圧留去(上掲)した。残渣から、メタノール−アセトン(1:2)を用いて再結晶し、得られた結晶をろ別した後に乾燥した。その結果、純度99%以上のキナ酸が555mg(2.89mmol、脱アセタール収率88%)得られた。【0051】〔実施例2〕実施例1のキナ酸抽出工程で得られたキナ酸抽出液71.4g(キナ酸1g含有)中の溶媒を減圧留去(上掲)した。得られた残渣にメタノール50mlを加え、不溶の無機塩をろ去した。ろ液に98%硫酸26mgを加え、5時間加熱還流した。HPLC(上掲)により、キナ酸が消失し、キナ酸メチルエステルに変換していることを確認した。溶媒を減圧留去(上掲)した後、実施例1のアセタール化工程と同様の操作でアセタール化及び精製を行ったところ、目的物の3,4−O−イソプロピリデンキニックアシド−1,5−ラクトン(キナ酸アセタール体(I)、R1=R2=Me)が660mg(3.08mmol、アセタール化収率75%)得られた。【0052】〔実施例3〕実施例2において、メタノールを用いる代わりにエタノールを用いる以外は同様の操作を行った。その結果、目的物の3,4−O−イソプロピリデンキニックアシド−1,5−ラクトン(キナ酸アセタール体(I)、R1=R2=Me)が686mg(3.2mmol、アセタール化収率78%)得られた。【0053】〔実施例4〕実施例1のアセタール化工程において、アセトンの代わりにシクロヘキサノンを用いた以外は同様の条件で反応を行ったところ、アセタール化工程の目的物である3,4−O−シクロヘキシリデンキニックアシド−1,5−ラクトン(キナ酸アセタール体(I)、R1+R2=(CH2)5、白色結晶、mp=142〜143℃)が80%の収率で得られた。引き続き実施例1と同様の条件で脱アセタールを行ったところ、脱アセタール収率85%でキナ酸が得られた。【0054】【発明の効果】本発明により、高純度のキナ酸を得ることができるだけでなく、キナ酸の抽出及び精製を低コストかつ効率的に実施することができる。 粗キナ酸を酸触媒の存在下において、ケトン類又はアルデヒド類と反応させることにより一般式(I):(式中、R1 及びR2 は同一又は相異なり、水素、アルキル基又はアリール基を表し、また、R1及びR2 は一緒になって、側鎖を有する又は有さない鎖員2〜7のアルキレン基を表してもよい。)で示されるキナ酸アセタール体に誘導して精製した後、加水分解することを特徴とするキナ酸の製造方法。 前記粗キナ酸が、キナ酸を含有している原料液であり、該原料液から無機塩をイオン交換樹脂により除去した後、酸触媒の存在下において、ケトン類又はアルデヒド類と反応させることにより一般式(I)で示されるキナ酸アセタール体を製造する工程を含む請求項1記載の方法。 前記粗キナ酸が、キナ酸を含有している原料液であり、該原料液中でキナ酸をアルコール類と反応させることによりキナ酸エステルに変換した後、酸触媒の存在下において、ケトン類又はアルデヒド類と反応させることにより一般式(I)で示されるキナ酸アセタール体を製造する工程を含む請求項1記載の方法。