生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_核酸抽出法
出願番号:1998061064
年次:2008
IPC分類:C12N 15/00


特許情報キャッシュ

北廣 恒司 大島 邦裕 山本 良平 JP 4087489 特許公報(B2) 20080229 1998061064 19980312 核酸抽出法 倉敷紡績株式会社 000001096 青山 葆 100062144 北廣 恒司 大島 邦裕 山本 良平 20080521 C12N 15/00 20060101AFI20080424BHJP JPC12N15/00 Z C12N 15/00-90 C12Q 1/00ー70 G01N 33/00-98 PubMed、MEDLINE(STN) BIOSIS/WPI(DIALOG) 特開平06−046856(JP,A) 特開平09−157282(JP,A) 9 1999253158 19990921 9 20050202 斎藤 真由美 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は生体中に含まれる核酸の抽出法に関する。【0002】【従来の技術】近年、核酸を診断薬、DNA鑑定等として利用するために、血液、血清、血漿、組織等の中の核酸を抽出単離したり、また極めて低い濃度で存在する核酸を検出するために核酸を抽出濃縮する技術の必要性が高まってきている。近年、遺伝子操作技術は急速に発展し、各種疾患の診断にも遺伝子検査が取り入れられつつある。これらの検査には核酸抽出という操作が必須であるが、いずれも煩雑な操作を必要とする。DNA抽出では、プロテナーゼKと界面活性剤を用いた方法が一般的であるが、抽出に時間を要する。また最近各種核酸吸着担体を用いた抽出法が開発され、抽出時間は大幅に短縮されたが、微量の検体しか対応できないという欠点がある。RNA抽出では、最近はAGPC(Acid Guanidinium-Phenol-Chloroform)法がよく用いられ、これに準じた試薬も既に販売されているが、抽出工程で2層に分離した液体の上層をピペットで移すという煩雑な操作が含まれる。これを解決した試薬としてチクソトロピー性増粘剤を用いた方法(特許公報第2548494号)があるが、抽出操作に11,000Gという高い遠心力を要する。また従来の方法は、微量試料の検出には、いずれも抽出工程で冷却操作を必要とする。【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、生体試料中に含まれる核酸を、従来のような高遠心力も冷却操作も必要とせず、簡単な処理操作で効率よく分離抽出することのできる核酸抽出法を提供することである。【0004】【課題を解決するための手段】本発明は、生体試料から核酸を溶出する前処理をおこなったのち核酸を他の成分と液層分離して抽出する方法において、前処理後の液に水不溶性有機溶媒および高濃度無機塩と緩衝剤とを含む水溶液を加えて液層分離させる工程を含むことを特徴とする核酸抽出法に関する。より詳しくは、本発明は、生体試料から核酸を溶出する前処理を行ったのち、これに水不溶性有機溶媒および高濃度無機塩と緩衝剤とを含む水溶液を加えて核酸を含む水性層と核酸を含まない有機溶媒層とに液層分離し、遠心力を加えて液層分離を促進すると同時に水性層と有機層の境界面に固化層を形成させた後、核酸を含む水性層を分取し、アルコールを添加して核酸を沈殿させることにより核酸を回収することを特徴とする核酸抽出法に関する。また、本発明は核酸を含む水性層を分取し、アルコールを添加し、更に多糖類を添加する上記の核酸抽出法に関する。また本発明は、水不溶性有機溶媒が水不溶性高分子化合物を溶解している上記核酸抽出法に関する。【0005】本発明は、核酸を溶出する前処理を行ったのち、これに水不溶性有機溶媒および高濃度無機塩と緩衝剤とを含む水溶液を加えることにより、生体試料中の核酸と他の蛋白質等の不純物とを液層分離し次いで遠心分離により液層分離を促進する操作において、低遠心力を加えるだけで、両層の境界部に固化層を形成することができ、これによって核酸が含まれる水性層を、例えばデカンテーションにより容易に分離することができるという特徴を有する。また全工程を通じて常温での処理が可能となり、操作が著しく簡略化される。また水不溶性有機溶媒に水不溶性高分子化合物を溶解しておくことにより、水性層と有機溶媒層との境界面に形成される固化層をより強固なものとすることができる。また、核酸を含む水性層を分取した後、この水性溶液にイソプロパノール等のアルコールおよびグリコーゲン等の多糖類を添加して核酸を沈殿させることにより、低遠心力および常温で核酸を回収でき、沈殿物を目視できるという特徴を発現することができる。【0006】【発明の実施の形態】本発明の核酸抽出法は次の工程を含む。目的とする核酸を含む生体試料を当業界で一般に用いられている方法により細胞から核酸を溶出する前処理を行う。これに水不溶性高分子化合物を含むかまたは含まない水不溶性有機溶媒および高濃度無機塩および緩衝剤を溶解した水溶液を加えて、核酸を含む水性層と核酸を含まない有機溶媒層に液層分離し、遠心処理により2層の分離を十分に行うと共に、その境界面に固化層を形成する。固化層を利用して例えばデカンテーションにより水性層を抜き出し、これに沈殿剤を加えて核酸を沈殿させる。沈殿を分離し洗浄して核酸を単離する。【0007】生体試料から目的とする核酸を分離抽出するために、その核酸を含有する細胞を含む生体試料、例えば血液等を処理して細胞膜を溶解して核酸を溶出する必要がある。このための方法として一般に、約1〜6Mのグアニジンチオシアネートや塩酸グアニジン等のグアニジン誘導体からなるタンパク可溶化剤と約0.1〜10.0%(W/V)の濃度の陰イオン性界面活性剤や、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤等の膜溶解剤が用いられる。本発明においてもこれらまたはその他の従来の方法を使用することができる。【0008】上記のようにして核酸を溶出した前処理後の液には、本発明ではまず水不溶性有機溶媒が加えられる。本発明で用いることができる水不溶性有機溶媒は、水性層の取り出しを容易にするために比重が1より大きい、好ましくは比重が1.05以上のものが用いられる。具体的にはクロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,2-ジブロモエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、o-ジクロロベンゼン等のハロゲン化合物、2,2,2-トリフルオロエタノール、フェノール、フルフラール等のアルデヒド、ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物、スルホラン等の硫黄化合物を挙げることができる。より好ましくはクロロホルムである。これらは2種類以上併用して用いてもよい。これら水不溶性有機溶媒は使用する生体試料の前処理溶解液に対して10〜30%(V/V)の量を用いるのが適切である。水不溶性有機溶媒の変性を防止するために少量の安定剤を添加してもよい。水不溶性有機溶媒に添加する安定剤としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、イソアミルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール等のアルコールを用いることができる。【0009】上記水不溶性有機溶媒には、好ましくは水不溶性高分子化合物が溶解されている。水不溶性高分子化合物が添加されることにより、後の工程で遠心力を加えた段階で形成される固化層をよりしっかりしたものとすることができる。このような水不溶性高分子化合物は、低級アルコールまたは低級アルコールと水との混合溶媒に可溶なものが用いられ、好ましくは疎水性モノマーと親水性モノマーとの共重合体である。【0010】共重合体を構成する親水性モノマーの例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトール(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコール(メタ)アクリレートおよびオリゴプロピレングリコール(メタ)アクリレートを挙げることができる。特に好ましくはヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである。また疎水性モノマーの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。特に好ましくはn-ブチル(メタ)アクリレートである。親水性モノマーおよび疎水性モノマーはそれぞれ2種以上を混合して用いてもよい。共重合体を構成する親水性モノマーと疎水性モノマーとの比率は重量比で90:10〜10:90である。【0011】水不溶性高分子化合物は、上記のように低級アルコールまたは低級アルコールと水との混合溶媒のいずれかに溶解するものであれば特に限定されないが、分子量は40,000〜60,000、好ましくは50,000〜60,000である。水不溶性高分子化合物は、上記水不溶性有機溶媒中、5〜500mg/ml、好ましくは5〜100mg/mlの濃度で用いられる。【0012】核酸を溶出した液に水不溶性有機溶媒を加え、十分に撹拌した後、これに高濃度の無機塩および緩衝剤を含む水溶液が加えられる。無機塩としてはアルカリ金属塩を用いることができる。またこれらの塩は必要に応じて2種以上を併用することもできる。好ましくは塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム等のアルカリ金属塩酸塩である。特に好ましい無機塩は塩化ナトリウムである。これらの塩は3重量%以上、好ましくは6〜30重量%の高濃度の水溶液として用いることによって本発明の目的を達することができる。なお、核酸を抽出した液および無機塩を溶解した水、緩衝剤を溶解した水の総量を使用する水の量とすると、無機塩の量は使用する水に対しては約3〜15重量%程度になる。【0013】上記水溶液には、上記無機塩とともにまた緩衝剤が加えられる。緩衝剤が添加されない場合は、水性層と有機層との境界面に形成される固化層は十分しっかりした固化層とならない。ここで用いるに適切な緩衝剤としては、酢酸のアルカリ金属塩を例示することができる。特に好ましい緩衝剤は酢酸ナトリウム、酢酸カリウムである。緩衝剤の量は使用する水の量に対して0.3〜1重量%濃度となるようにすればよい。緩衝剤と無機塩とは一つの水溶液中に同時に溶解しておいて前処理済みの核酸を含む溶液に加えてもよいし、別々の水溶液として加えてもよい。別々の溶液として加える場合は、どちらを先に加えてもよい。【0014】本発明では、核酸溶出液に、上記のように水不溶性高分子化合物を含むかまたは含まない水不溶性有機溶媒を加えて核酸を含む水可溶性成分と水不溶成分とを別の層として液層分離し、これに更に高濃度の無機塩と緩衝剤とを含む水溶液を添加したのち、遠心分離機で遠心力が加えられる。遠心力の印加により水性層と有機溶媒層とは更に明瞭に分離し、且つ両方の層の境界面には蛋白質分解物等を含む層が固化層として形成される。このような固化層を形成するため本発明の方法では従来のような10,000Gを越えるような高い加速度を必要とせず、2,000G以下、好ましくは500〜2,000Gの加速度をかけるだけで十分である。このように低い遠心力で十分なため、経済性および安全性の面で好ましい。またこのような低遠心力の場合は熱の発生も少ないため、遠心分離の工程で冷却の必要もなく、すべての工程を通じて常温で取り扱うことができる。【0015】遠心工程を経た系は完全に2層に分かれ、且つ2層の界面には固化層が形成されているため、その容器を単に傾けるだけで、デカンテーションにより容易に水性層だけを抜き出し、移液することができる。そのため水性層と有機溶媒層の分離にはそれほど熟練性が必要とされず、したがってまた再現性よく核酸を抽出することができる。【0016】抜き出した核酸を含む水性溶液には、アルコールを添加して核酸を凝固沈殿させる。アルコールとしてはイソプロパノール、エタノール、n-ブタノールから選ばれる1種または2種以上の混合液を使用することができる。n-ブタノールを使用する際には、イソプロパノール、またはエタノールとの混合液が好ましい。特に好ましいのはイソプロパノールの単独使用である。またアルコールは上記水性溶液に対して60〜100%(V/V)加えるのが好ましい。また、上記核酸を含む水性溶液から、核酸を凝固沈殿させる際に、凝固補助剤として多糖類を更に添加することができる。多糖類としては、グリコーゲン、デキストランを挙げることができる。特に好ましい多糖類は、グリコーゲンである。多糖類は0.1〜1 g/lの濃度の水溶液として、上記水性溶液中に10〜20μg含まれるように加えるのが好ましい。アルコールと多糖類とを併用すると核酸の凝固沈殿を確実にし、核酸の収率を向上させることできる。【0017】アルコールと多糖類を含む水性液に遠心力をかけ、核酸の沈殿を固めた後、デカンテーションにより上澄みを廃液する。遠心処理は遠心力500〜2,000Gで室温5〜10分位で十分である。底部に残った核酸にはアルコール、例えば70%エタノールを加えて核酸を洗浄し、遠心力をかけたのち、液をデカンテーションで廃棄する。アルコールによる洗浄を繰り返したのち、減圧乾燥し、核酸を滅菌水に溶解して、核酸を水溶液として得ることができる。【0018】【実施例】以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。実施例 1次のようにしてポリオウィルスのRNAを抽出した。1)2ml容のマイクロチューブに入れた、ポリオワクチンウィルスを100〜103PFU(Plaque Formation Unit)を含む血清100μlにウィルス溶解用の液〔2Mのグアニジンチオシアネート、0.25%のザルコシン、12.5mMのクエン酸ナトリウム(pH7)、0.72%の2-メルカプトエタノール〕の0.5mlを添加混合し、ウィルスを溶解した。2)親水性モノマーヒドロキシエチルメタクリレートと疎水性モノマーn-ブチルメタクリレートとの等モルからなる共重合体を、10mg/mlの濃度でクロロホルムに溶解した溶液0.15mlを上記のウィルスを溶解した液に添加混合した。3)次にこれに1M濃度の酢酸ナトリウム水溶液(pH4)0.05mlを緩衝液として添加混合した。4)これに更に5M濃度の塩化ナトリウム水溶液0.65mlを添加混合した。【0019】5)この試料を3個調製し、それぞれ500G、1,900Gおよび12,000Gで10分間遠心力を加えた後、液層分離した上層をデカンテーションにより、それぞれ新しいチューブへ移液した。6)移液した上層の水性相の入った3本のチューブのすべてに、0.4μg/μl濃度のグリコーゲン水溶液を0.05mlと、イソプロパノール0.9mlとを添加混合し、これをそれぞれ1,900Gで10分間遠心し、上澄み液だけをデカンテーションで流し出した。7)チューブのそこに残った沈殿物に70%エタノールをそれぞれ1ml注ぎ、1,900Gで5分間遠心し、上澄みをデカンテーションで廃液した。8)再度70%エタノールで洗浄した。9)底に残った核酸を乾燥後滅菌水に溶解し、RNAの水溶液を得た。【0020】比較例 1AGPC(Acid Guanidinium Phenol Chloroform)法に準じて、実施例1に於ける工程1)のウィルス溶解用の液の代わりにRNAzolB〔バイオテック・ラボラトリーズ社製〕を用い、同じく工程2)〜4)において高分子化合物も無機塩も使用せず、クロロホルムのみを用いて試薬RNAzolBに添付されている方法にしたがって実施例1の血清からRNAを抽出した。この場合、遠心処理により、水性層と有機溶媒層の境界面に固化層は形成されていなかった。【0021】比較例 2実施例1の血清から、SepaGeneRV−R法〔三光純薬(株)〕にしたがってRNAを抽出した。実施例1および比較例1、2の方法について、実施例1の工程5)に相当する遠心後の水性層のデカンテーションによる分離の容易性を比較した結果を表1に示した。低遠心力(1,900G)では本発明の場合のみデカンテーションによる移液を容易に行うことができた。本発明の場合は遠心力500Gでもデカンテーションによる移液が可能であった。【0022】【表1】【0023】実施例 2実施例1において、工程4)の水溶液の塩化ナトリウム濃度を0、0.5、1.0、2.0、3.0、5.0Mと変えて抽出操作を行った。抽出したRNAをRT-PCR法により検出した。結果を比較例1で抽出した場合と比較して表2に示した。本発明の方法では塩化ナトリウム濃度が1〜5Mの範囲で、RNAの一般的な抽出法である比較例1と同等の101PFUまで抽出できていることが確認され、従来法と同等の検出力が確認された。【0024】【表2】【0025】比較例 3核酸抽出法における工程3)の酢酸ナトリウムを加えない以外は、実施例1と同様にして核酸の抽出を行った。実施例1と異なり、水性層と有機溶媒層との境界面の中間層は固化が不充分であり、デカンテーションによる移液が不可能であった。【0026】実施例 3プラスミド自動分離装置PI-100〔倉敷紡績(株)製〕を用いて次のようにしてC型肝炎ウィルスのRNAを自動抽出した。1)プラスミド自動分離装置PI-100専用チューブに入れた、C型肝炎ウィルス(HCV)を101〜103コピーを含む血清100μlおよび300μlそれぞれにウィルス溶解用の液〔2Mのグアニジンチオシアネート、0.25%のザルコシン、12.5mMのクエン酸ナトリウム(pH7)、0.72%の2-メルカプトエタノール〕の0.5mlを添加混合し、ウィルスを溶解した。2)親水性モノマーヒドロキシエチルメタクリレートと疎水性モノマーn-ブチルメタクリレートとの等モルからなる共重合体を、10mg/mlの濃度でクロロホルムに溶解した溶液0.15mlを上記のウィルスを溶解した液に添加混合した。3)次にこれに1M濃度の酢酸ナトリウム水溶液(pH4)0.05mlを緩衝液として添加混合した。4)これに更に5M濃度の塩化ナトリウム水溶液0.65mlを添加混合した。【0027】5)これらの試料をそれぞれ1,900Gで10分間遠心し、液層分離した上層をデカンテーションにより、それぞれ新しいチューブへ移液した。6)移液した上層の水性層の入ったチューブのそれぞれに、0.4μg/μl濃度のグリコーゲン水溶液を0.05mlと、イソプロパノール0.9mlとを添加混合し、これをそれぞれ1,900Gで10分間遠心力を加えた後、上澄み液だけをデカンテーションで流し出した。7)チューブのそこに残った沈殿物に70%エタノールをそれぞれ1ml注ぎ、1,900Gで5分間遠心し、上澄みをデカンテーションで廃液した。8)再度70%エタノールで洗浄した。9)底に残った核酸を乾燥後滅菌水に溶解し、RNAの水溶液を得た。10)抽出したRNAをRT-PCR法とサザンハイブリダイゼーション法の組み合わせにより検出した。【0028】比較例 4AGPC(Acid Guanidinium Phenol Chloroform)法に準じて、実施例3に於ける工程1)の専用チューブの代わりに1.5mlのマイクロチューブを用い、またウィルス溶解用の液に代えてRNAzolB〔バイオテック・ラボラトリーズ社製〕を用い、同じく工程2)〜4)において高分子化合物も無機塩も使用せず、クロロホルムのみを用いて試薬RNAzolBに添付されている方法にしたがって実施例3の血清からRNAを抽出した。抽出したRNAを、実施例3と同様にRT-PCR法とサザンハイブリダイゼーション法の組み合わせにより検出した。表3に実施例3と比較例4との検出結果を示した。本発明の実施例3の方法により、血清試料100μlおよび300μl中に含まれるC型肝炎ウィルスのRNAを、従来のRNAの一般的抽出法である比較例4と同等の抽出効率で抽出できることが確認された。【0029】【表3】【0030】【発明の効果】本発明の核酸抽出法によれば、全工程を通して室温で、且つ低遠心力で液層分離ができ、しかも分離された両液層の界面に固化した中間層が形成されるため、核酸を含む水性層を容易に分取できる。したがってこの方法は再現性もよく、またより多量の試料からも純度よく抽出できるため、核酸含有量の少ない試料種からも効率よく核酸を抽出できる。また本発明の方法は核酸の抽出の自動化にも適している。 生体試料から核酸を溶出する前処理を行ったのち核酸を他の成分と液層分離して抽出する方法において、前処理後の液に水不溶性有機溶媒および3〜15重量%の高濃度アルカリ金属塩と0.3〜1重量%の酢酸アルカリ金属塩緩衝剤とを含む水溶液を加えて液層分離させる工程を含むことを特徴とする核酸抽出法。 生体試料から核酸を溶出する前処理を行ったのち、これに水不溶性有機溶媒および3.0〜15重量%の高濃度アルカリ金属塩と0.3〜1重量%の酢酸アルカリ金属塩緩衝剤とを含む水溶液を加えて核酸を含む水性層と核酸を含まない有機溶媒層とに液層分離し、遠心力を加えて液層分離を促進すると同時に水性層と有機層の境界面に固化層を形成させた後、核酸を含む水性層を分取し、アルコールを添加して核酸を沈殿させることにより核酸を回収することを特徴とする核酸抽出法。 核酸を含む水性層を分取し、アルコールを添加し、更に多糖類を添加する請求項2記載の核酸抽出法。 水不溶性有機溶媒が水不溶性高分子化合物を溶解している請求項1、2または3記載のいずれかに記載の核酸抽出法。 水不溶性有機溶媒の比重が1より大きい請求項1〜4のいずれかに記載の核酸抽出法。 水不溶性有機溶媒がクロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,2-ジブロモエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、o-ジクロロベンゼン等のハロゲン化合物、2、2,2-トリフルオロエタノール、フェノール、フルフラール等のアルデヒド、ニトロエタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物、スルホラン等の硫黄化合物からなる群から選ばれる1種または2種以上の混合物である請求項5記載の核酸抽出法。 水不溶性高分子化合物が、低級アルコールまたは低級アルコールと水との混合溶媒に可溶な、疎水性モノマーと親水性モノマーとの共重合体である請求項4記載の核酸抽出法。 水不溶性有機溶媒中の水不溶性高分子化合物の濃度が5〜500mg/mlである請求項4記載の核酸抽出法。 親水性モノマーが、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトール(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコール(メタ)アクリレートおよびオリゴプロピレングリコール(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1種または2種以上の混合物であり、疎水性モノマーが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1種または2種以上の混合物である請求項7記載の核酸抽出法。


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