タイトル: | 特許公報(B2)_生体成分の測定におけるビリルビンの干渉を回避する方法 |
出願番号: | 1998055119 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C12Q1/28,C12Q1/26,G01N33/50,G01N33/72 |
小島 良 岡崎 泰典 JP 3714512 特許公報(B2) 20050902 1998055119 19980306 生体成分の測定におけるビリルビンの干渉を回避する方法 日東紡績株式会社 000003975 浅村 皓 100066692 浅村 肇 100072040 長沼 暉夫 100088926 小堀 貞文 100090701 小島 良 岡崎 泰典 20051109 7 C12Q1/28 C12Q1/26 G01N33/50 G01N33/72 JP C12Q1/28 C12Q1/26 G01N33/50 Z G01N33/72 B 7 C12Q 1/00-70 EUROPAT(QUESTEL) JICSTファイル(JOIS) BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) 特開平11−103888(JP,A) 特開平09−224697(JP,A) 特開平07−155196(JP,A) 特開平07−039394(JP,A) 特開平03−228699(JP,A) 5 1999243993 19990914 9 20020408 阪野 誠司 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ビリルビンの干渉を回避することのできる生体成分の測定方法、及びビリルビンの干渉を回避するための生体成分測定用キットに関する。さらに詳しくは、酸化酵素−ペルオキシダーゼ−発色剤系の測定原理に基づいて血清などの生体試料中の生体成分の測定方法において、ビリルビンの干渉を回避することのできる測定方法、及びそれに用いるための測定用キットに関する。【0002】【従来の技術】臨床検査分野において、酵素法による血清成分の分析が広く行われており、なかでも酸化酵素−ペルオキシダーゼ−発色剤系の測定方法が、その大半を占めている。これらの測定方法は、試料中の目的とする成分を酸化酵素で反応させることにより過酸化水素を発生させ、生じた過酸化水素とペルオキシダーゼの作用で発色剤を酸化的に色素へ導き、これを比色定量するという原理に基づいている。従って試料中に還元性を有する物質、あるいは生成する色素の吸収帯近傍に吸収を有する物質が存在する場合、測定値に誤差を生じる。つまり約450nmに吸収極大を持ち還元性も有するビリルビンが病的に上昇した試料中の生体成分を測定する場合には、これらの測定方法に妨害を与え測定値に著しい誤差を生じるため大きな問題となっている。【0003】ビリルビンの干渉回避法としては、フェロシアン化物イオンを用いる方法(特開昭55−25840号公報)、ビリルビン特異性菌性酵素またはビリルビン酸化酵素を反応系に添加してビリルビンを消去する方法(特開昭57−71398号公報)、主反応の前に多量の過酸化水素を発生させペルオキシダーゼの酸化反応を利用してビリルビンを消去する方法(特開平2−49600、特開平6−339397号公報)が報告されている。また界面活性剤を利用したものとして、陽イオン系または両性イオン系界面活性剤を使用したビリルビンおよびヘモグロビンの干渉回避方法(特開平3−10696号公報)、アルキル置換されたアリール糖類、これらの糖類を含む界面活性剤を使用した妨害物質の干渉回避法(特公平7−11519)、アルキル置換された2糖以上の多糖を含む非イオン系界面活性剤とフェロシアン化合物イオンの組合せによりビリルビンの干渉を回避する方法(特開平9−224697)などが報告されている。しかし、これらの方法は測定試薬の保存安定性を低下させたり、測定系への阻害性を有するなどの問題があるため、多くの場合、臨床上の測定おいては不十分であった。【0004】【発明が解決しようとする課題】上記のように、臨床検査における血清などの生体試料中の生体成分の測定において、ビリルビンの干渉を回避する方法が数多く報告されている。しかし、これらの方法では、ある程度のビリルビンの干渉を回避することは可能でも、高濃度のビリルビンが共存していたり、あるいは測定対象物質の濃度が非常に低い場合に無視できるレベルにビリルビンの干渉を抑えることは不可能である。【0005】そのため、高濃度のビリルビンが共存していたり、あるいは測定対象物質の濃度が非常に低い血清などの試料においても、ビリルビンの干渉を回避した正確な測定値が得られるような生体成分の測定法が望まれている。【0006】【課題を解決するための手段】上記問題点に鑑み、本発明者らは鋭意検討した結果、生体試料中の生体成分を、酸化酵素−ペルオキシダーゼ−発色剤系の原理に基づく比色定量法により測定する方法において、鉄錯体とステロイド骨格を有するアルキル基及びポリオキシアルキレン基を含む界面活性剤とを存在させることにより、ビリルビンが高濃度で共存するような試料においても、その干渉による測定値への誤差を最小限に抑えられることを見出し本発明を完成させた。【0007】即ち、本発明は、酸化酵素−ペルオキシダーゼ−発色剤系の測定原理に基づいて生体試料中の生体成分を測定する方法において、反応系に鉄錯体と一般式(I)R−O−(XO)n−Y (I)(式中、Rはステロイド骨格を有するアルキル基を示し、Xはエチレン基またはプロピレン基を示し、Yは水素原子または−SO3 Naを示し、nは1〜200の整数を示す)で表わされる界面活性剤を存在させ、試料中に存在するビリルビンの干渉を回避することを特徴とする生体成分の測定方法に関する。更に本発明は、ビリルビンの干渉を回避するための生体成分測定用キットであって、酸化酵素、ペルオキシダーゼおよび発色剤とともに、更に鉄錯体および一般式(I)で表わされる界面活性剤を含む、上記生体成分測定用キットに関する。【0008】【発明の実施の形態】本発明で用いる鉄錯体としては、EDTA−鉄(III)、塩化第一鉄−EDTA、フェロシアン化カリウムをはじめとしたフェロシアン化物イオンなどが挙げられる。これらは通常単独で用いられるが、場合によっては複数種を適宜組み合わせて使用できる。本発明では鉄錯体とともに一般式(I)で表わされる界面活性剤を用いる。一般式(I)においてRは、ステロイド骨格を有するアルキル基であればいずれでも構わないが、ステロール残基が好ましい。ステロール残基としては、フィトステロール(植物由来ステロール)、ズーステロール(動物由来ステロール)、マイコステロール(菌類由来ステロール)由来のステロール残基、それらの水素添加残基(例えば、フィトスタノール残基)等が挙げられるが、フィトステロール残基、その水素添加残基であるフィトスタノール残基がさらに好ましい。ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンの重合度nは1〜200であるが、5〜100が好ましく、15〜50がさらに好ましい。本発明に用いる界面活性剤としては、ポリオキシエチレンフィトステロール(例えば、ニッコールBPS−30 日光ケミカル社製)、ポリオキシエチレンフィトスタノール(例えば、ニッコールBPSH−25 日光ケミカル社製)などの非イオン系界面活性剤が具体的に例示できる。【0009】これらの鉄錯体および界面活性剤は、生体試料中の生体成分から酸化酵素により過酸化水素を発生させ、生じた過酸化水素とペルオキシダーゼの作用で発色剤を酸化的に色素へ導く際の発色反応系に存在させて用いる。鉄錯体および界面活性剤を発色反応系に共存させることによって、過酸化水素とペルオキシダーゼの作用により発色剤の酸化カップリング反応によって色素を生成することにより生体成分を測定する際のビリルビンの干渉を回避することができる。【0010】発色反応系への、鉄錯体および界面活性剤の添加量としては、ビリルビンの干渉を回避するに十分な量であり、測定に支障を来さない濃度範囲であれば特に限定されないが、例えば鉄錯体の発色反応における濃度が1〜2000μM、好ましくは5〜200μMとなる量が望ましい。界面活性剤の場合には発色反応における濃度が0.01〜10.0%、より好ましくは0.1〜5.0%となる量が望ましい。また複数種を組み合わせて使用する場合でも、それぞれの総量が上述の濃度範囲であればよい。【0011】上記した発色反応系並びに発色反応系に用いる発色剤は周知であり、かかる発色剤としては、過酸化水素とペルオキシダーゼの存在により色素を形成するものであればよく、水素供与体とそのカプラーの組合わせが通常用いられる。かかる組合わせとしては、例えばフェノールもしくはその誘導体あるいはアニリン誘導体と、4−アミノアンチピリンの組合わせが挙げられる。ここで用いるフェノール誘導体としては、例えば2,6−ジクロロフェノール、3,5−ジクロロ−2−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、3−ヒドロキシ−2,4,6−トリクロロ安息香酸、3−ヒドロキシ−2,4,6−トリブロモ安息香酸などが挙げられ、アニリン誘導体としては、N,N−ジメチルアニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メトキシアニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン、N−エチル−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メチルアニリンなどが挙げられる。カプラーとしては、4−アミノアンチピリン以外に、3−メチル−2−ベンゾチアゾリンヒドラゾン、ジアミノアンチピリンなどを用いることができる。【0012】上記した本発明のビリルビンの干渉を回避する測定法は、酸化酵素−ペルオキシダーゼ−発色剤系の測定原理に基づく測定方法であれば特に限定されずいずれの生体成分の測定法にも適用できる。例えば、グルコース、総コレステロール、各コレステロール分画、トリグリセリド、尿酸、尿素窒素、無機リン、リン脂質、ピルビン酸、クレアチニンおよび乳酸などの生体成分測定系に組み込むことが可能である。【0013】本発明のビリルビンを回避するための生体成分測定用キットは、以上の説明から明らかなように、酸化酵素、ペルオキシダーゼおよび発色剤とともに、更に鉄錯体および一般式(I)の非イオン系界面活性剤から構成される。ここで用いられる酸化酵素は、生体成分を酸化させて過酸化水素を発生させる酵素または酵素群であり、例えば生体成分としてグルコースを測定する場合には、グルコースオキシダーゼ、尿酸の場合にはウリカーゼ、クレアチニンの場合にはクレアチニナーゼ、クレアチナーゼ及びザルコシンオキシダーゼの酵素群、乳酸の場合には乳酸オキシダーゼが用いられる。ペルオキシダーゼとしては、例えばホースラディシュ由来のペルオキシダーゼが用いられ、発色剤としては前記した、フェノールもしくはその誘導体あるいはアニリン誘導体と、4−アミノアンチピリンの組合わせなどが用いられる。【0014】【実施例】以下に、クレアチニンおよび乳酸測定の2つの実施例により、さらに詳しく本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。【0015】実施例1以下のように試薬及び試料液を調製した。なお、試薬中の界面活性剤としてはポリオキシエチレンフィトスタノール、鉄錯体としてはフェロシアン化カリウムを用いた。また、以下の比較例に示すように対照としてポリオキシエチレンフィトスタノール無添加の第一試薬、フェロシアン化カリウム無添加の第二試薬についても、同様に調製した。【0016】試料液結合型ビリルビン添加液プール血清に、ジタウロビリルビンを40mg/dlになるように添加した。遊離型ビリルビン添加液プール血清に、遊離型ビリルビンを40mg/dlになるように添加した。また、対照としてビリルビン無添加の試料液も用意した。【0017】測定操作は、以下の通り行った。測定方法:各試料液15μlに第一試薬250μlを加え、37℃で5分間加温後、反応液中の546nmにおける吸光度(A1)を測定する。次いで第二試薬50μlを加え、37℃で5分間放置した後,再び反応液中の546nmにおける吸光度(A2)を測定する。得られたA1及びA2に液量補正を施した後(各々A1’、A2’とする)、A2’よりA1’を差し引いて反応前後での吸光度変化量(ΔA)を求める。一方、生理食塩水及びクレアチニン標準液(クレアチニン5.0mg/dl含有)を試料液として用いて同様の操作を行い、盲検値AB及び標準液吸光度ASを求める。【0018】ここで得られたΔA、AB及びASから、次式(1)に従って試料液中のクレアチニン濃度を算出した。【0019】【0020】比較例1実施例1において第一試薬より、ポリオキシエチレンフィトスタノールを除いた以外、実施例1と全く同様の測定を行い、実施例1と全く同様にして試料中のクレアチニン濃度を求めた。【0021】比較例2実施例1において第二試薬より、フェロシアン化カリウムを除いた以外、実施例1と全く同様の測定を行い、実施例1と全く同様にして試料中のクレアチニン濃度を求めた。【0022】比較例3実施例1において第一試薬よりポリオキシエチレンフィトスタノールを、そして第二試薬よりフェロシアン化カリウムを除いた以外、実施例1と全く同様の測定を行い、実施例1と全く同様にして試料中のクレアチニン濃度を求めた。【0023】実施例、比較例1、比較例2及び比較例3の測定結果を表1に示す。表中の数値は、ビリルビン無添加の試料を測定したときの測定値を100%として表した。【0024】【表1】【0025】表1の結果から、フェロシアン化カリウムとポリオキシエチレンフィトスタノールを添加すると、ビリルビンの干渉はほとんど無視できるレベルにまで達することを見出した。【0026】実施例2以下のように試薬及び試料液を調製した。なお、実施例1のときと同様に試薬中の界面活性剤としてはポリオキシエチレンフィトスタノール、鉄錯体としてはフェロシアン化カリウムを用いた。また、以下の比較例に示すように対照としてポリオキシエチレンフィトスタノール無添加の第一試薬、フェロシアン化カリウム無添加の第二試薬についても、同様に調製した。【0027】試料液結合型ビリルビン添加液プール血清に、ジタウロビリルビンを20mg/dlになるように添加した。遊離型ビリルビン添加液プール血清に、遊離型ビリルビンを20mg/dlになるように添加した。また、対照としてビリルビン無添加の試料液も用意した。【0028】測定操作は、以下の通り行った。測定方法:各試料液2.5μlに第一試薬200μlを加え、37℃で5分間加温後、反応液中の600nmにおける吸光度(A1)を測定する。次いで第二試薬50μlを加え、37℃で5分間放置した後,再び反応液中の600nmにおける吸光度(A2)を測定する。得られたA1及びA2に液量補正を施した後(各々A1’、A2’とする)、A2’よりA1’を差し引いて反応前後での吸光度変化量(ΔA)を求める。一方、生理食塩水及び乳酸標準液(乳酸40.0mg/dl含有)を試料液として用いて同様の操作を行い、盲検値AB及び標準液吸光度ASを求める。【0029】ここで得られたΔA、AB及びASから、次式(2)に従って試料液中の乳酸濃度を算出した。【0030】【0031】比較例4実施例2において第一試薬より、ポリオキシエチレンフィトスタノールを除いた以外、実施例2と全く同様の測定を行い、実施例2と全く同様にして試料中の乳酸濃度を求めた。【0032】比較例5実施例2において第二試薬より、フェロシアン化カリウムを除いた以外、実施例2と全く同様の測定を行い、実施例2と全く同様にして試料中の乳酸濃度を求めた。【0033】比較例6実施例2において第一試薬よりポリオキシエチレンフィトスタノールを、そして第二試薬よりフェロシアン化カリウムを除いた以外、実施例2と全く同様の測定を行い、実施例2と全く同様にして試料中の乳酸濃度を求めた。【0034】実施例2、比較例4、比較例5及び比較例6の測定結果を表2に示す。表中の数値は、ビリルビン無添加の試料を測定したときの測定値を100%として表した。【0035】【表2】【0036】表2の結果から、フェロシアン化カリウムとポリオキシエチレンフィトスタノールを添加すると、ビリルビンの干渉はほとんど無視できるレベルにまで達することを見出した。【0037】【発明の効果】本発明によれば、酸化酵素−ペルオキシダーゼ−発色剤系に基づく生体成分の測定方法において、ステロイド骨格を有するアルキル基及びポリオキシアルキレン基を含む界面活性剤と、鉄錯体を存在させることにより、検体試料中のビリルビンの干渉をほとんど受けずに生体成分を測定することが可能になる。 酸化酵素−ペルオキシダーゼ−発色剤系の測定原理に基づいて生体試料中の生体成分を測定する方法において、反応系に鉄錯体と一般式(I)R−O−(XO)n−Y (I)(式中、Rはステロイド骨格を有するアルキル基を示し、Xはエチレン基またはプロピレン基を示し、Yは水素原子または−SO3 Naを示し、nは1〜200の整数を示す)で表わされる界面活性剤を存在させ、試料中に存在するビリルビンの干渉を回避することを特徴とする生体成分の測定方法。 鉄錯体が、EDTA−鉄(III)、塩化第一鉄−EDTAまたはフェロシアン化物イオンである、請求項1記載の生体成分の測定方法。 界面活性剤として、一般式(I)においてRが植物由来のステロール残基またはその水素添加ステロール残基である界面活性剤を用いる、請求項1または2記載の生体成分の測定方法。 界面活性剤が、ポリオキシエチレンフィトステロールまたはポリオキシエチレンフィトスタノールである請求項1から3のいずれかに記載の生体成分の測定方法。 ビリルビンの干渉を回避するための生体成分測定用キットであって、酸化酵素、ペルオキシダーゼおよび発色剤とともに、更に鉄錯体および請求項1記載の一般式(I)で表わされる界面活性剤を含む、上記生体成分測定用キット。