生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_アラキドン酸及び/又はエイコサペンタエン酸含有油脂の製造方法
出願番号:1998052021
年次:2008
IPC分類:C12P 7/64,C12R 1/645


特許情報キャッシュ

秋元 健吾 東山 堅一 清水 昌 JP 4079494 特許公報(B2) 20080215 1998052021 19980304 アラキドン酸及び/又はエイコサペンタエン酸含有油脂の製造方法 サントリー株式会社 000001904 石田 敬 100077517 福本 積 100087871 戸田 利雄 100088269 西山 雅也 100082898 秋元 健吾 東山 堅一 清水 昌 20080423 C12P 7/64 20060101AFI20080403BHJP C12R 1/645 20060101ALN20080403BHJP JPC12P7/64C12P7/64C12R1:645 C12P 7/00-7/66 JST7580/JSTPlus(JDream2) G-Search 食品関連文献情報(食ネット) 特開平10−057085(JP,A) ニューフードインダストリー,Vol.37,No.9(1995)p.1-9 2 FERM BP-3590 FERM BP-6032 1999243981 19990914 10 20050222 三原 健治 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は醗酵法によるアラキドン酸及び/又はエイコサペンタエン酸(以下、「EPA」と略す。)を含有する油脂の製造方法に関する。【0002】【従来の技術】アラキドン酸は、ドコサヘキサエン酸と同じく母乳中に含まれており乳児の発育に役立つとの報告(「Advances in Polyunsaturated Fatty Acid Research 」, Elsevier Science Publishers, 1993, pp.261-264 )があり、さらに、胎児の身長や脳の発育における重要性も報告(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 1073-1077 (1993), Lancet, 344, 1319-1322 (1994) )され、アラキドン酸に対する関心が高まってきている。また、EPAは、海獣類、魚類を多食するグリーンランドのイヌイット族に心筋梗塞などの血栓性疾患が少ないという疫学的調査に端を発して研究が進展し、健康食品さらには医薬品へとその用途は拡大してきている。【0003】アラキドン酸やEPAの生産方法として微生物による方法は知られていたが、いずれの方法においても収量が低い、培養時間が長い、または工程が複雑であるなどの欠点があり、工業的にアラキドン酸やEPAを得る方法としては十分なものとはいえなかった。また、EPAの生産方法として魚油又はある種の藻類より抽出、精製する方法も知られているが、魚油中のEPAの含量は低く、さらには不完全な精製、濃縮では魚臭が残ること、藻類の培養にはある一定以上の光照射が必要であること等残された課題も多い。【0004】一方、モルティエレラ(Mortierella )属微生物を使用して、安価な常用の培地を用いて、従来法より短い培養時間で、高収率で、しかも単純な工程でアラキドン酸を製造する方法(特開昭63-44891)、並びにEPAを製造する方法(特開昭63-14697)が開発されてきた。しかし、これらの方法でも、アラキドン酸やEPAの生産量及び生成する全脂肪酸中のアラキドン酸やEPAの含有率に関しては、まだ満足いくものではない。アラキドン酸やEPAおよびそれらを含有する脂質を食品などに添加する場合、出来るだけその含有率が高く他の脂肪酸を含まないことが望ましく、アラキドン酸やEPAの含有率の高い脂質を大量に製造する方法を開発することが求められている。【0005】【発明が解決しようとする課題】本発明は、醗酵法によりアラキドン酸及び/又はEPA含有率がこれまでより大幅に高められた脂質を製造する方法を開発することを目的とする。【0006】【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、Δ5 不飽和化酵素活性およびΔ6 不飽和化酵素活性を有し、かつΔ12不飽和化酵素活性が低下または欠失したオメガ9 系高度不飽和脂肪酸生産能を有する微生物を、特定の不飽和脂肪酸類を添加した培地で培養することにより、これまでのものに比べアラキドン酸及び/又はEPAの含有率の極めて高い油脂を生成させることが出来ることを見いだし、本発明を完成した。【0007】なお、本明細書では、脂肪酸の二重結合の位置を命名法の規則に従って2通りの方法で表記している。「Δ」とは、脂肪族の末端カルボキシル基の炭素原子から二重結合のある炭素原子までの炭素数を表記する場合に用い、Δ5不飽和化酵素とは、脂肪酸の末端カルボキシル基の炭素原子から数えて5 番目と6 番目の炭素原子の間に二重結合を形成する酵素のことを言う。一方「オメガ」とは、脂肪酸の末端メチル基の炭素原子から二重結合のある炭素原子までの炭素数を表記する場合に用い、オメガ9 系高度不飽和脂肪酸とは、末端メチル基の炭素原子から数えて9 番目と10番目の炭素原子の間が二重結合となった脂肪酸群のことを言う。【0008】即ち本発明は、モルティエレラ(Mortierella )属、コニディオボラス(Conidiobolus)属、フィチウム(Pythium )属、フィトフトラ(Phytophthora)属、ペニシリューム(Penicillium )属、クラドスポリューム(Cladosporium)属、ムコール(Mucor )属、フザリューム(Fusarium)属、アスペルギルス(Aspergillus )属、ロードトルラ(Rhodotorula )属、エントモフトラ(Entomophthora )属、エキノスポランジウム(Echinosporangium)属又はサプロレグニア(Saprolegnia )属に属し、オメガ9 系高度不飽和脂肪酸生産能を有する微生物に、変異処理を施して得られる、Δ5 不飽和化酵素活性およびΔ6 不飽和化酵素活性を有し、かつΔ12不飽和化酵素活性が低下または欠失し、かつΔ5 不飽和化酵素活性及び/又はΔ6 不飽和化酵素活性及び/又は鎖長延長酵素活性が変異処理により高められた微生物を、不飽和脂肪酸類及び/又はこれらを構成成分として含む油脂を添加した培地で培養するか、或いは該微生物が培養されている培養液にこれらの不飽和脂肪酸類を添加して更に培養することによりアラキドン酸及び/又はEPAを含有する油脂を生成せしめ、そして該脂肪酸を含有する油脂を採取することを特徴とするアラキドン酸及び/又はEPA含有油脂の製造方法を提供するものである。【0009】【発明の実施の形態】本発明において使用することのできる微生物としては、オメガ9 系高度不飽和脂肪酸生産能を有し、Δ5 不飽和化酵素活性およびΔ6 不飽和化酵素活性を有し、かつΔ12不飽和化酵素活性が低下または欠失し、かつΔ5 不飽和化酵素活性及び/又はΔ6 不飽和化酵素活性及び/又は鎖長延長酵素活性が変異処理により高められた変異微生物であればいずれも使用することができる。例えば、モルティエレラ・エロンガタ(Mortierella elongata)IFO 8570、モルティエレラ・エキシグア(Mortierella exigua)IFO 8571、モルティエレラ・フィグロフィラ(Mortierella hygrophila)IFO 5941、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)IFO 8568等のモルティエレラ属モルティエレラ亜属に属するアラキドン酸生産能を有する微生物から誘導される突然変異株を挙げることができる。【0010】これらの微生物から本発明の目的に適う変異微生物を得るには、各微生物を適当な培地で固体培養又は液体培養した後スクリーニングすることにより、目的の性質を有する自然突然変異株を取得しても良いし、放射線(X線、ガンマー線、中性子線)照射や紫外線照射、高熱処理等を行ったり、また微生物を適当なバッファー中などに懸濁し、変異源を加えて一定時間インキュベート後、適当に希釈して寒天培地に植菌し、変異株のコロニーを得るといった一般的な突然変異操作を行うこともできる。【0011】変異源としては、ナイトロジェンマスタード、メチルメタンサルホネート(MMS )やN-メチル-N'-ニトロ-N- ニトロソグアニジン(NTG )等のアルキル化剤、5-ブロモウラシル等の塩基類似体、マイトマイシンC 等の抗生物質、6-メルカプトプリン等の塩基合成阻害剤、プロフラビン等の色素類、4-ニトロキノリン-N- オキシド等のある種の発がん剤、塩化マンガン、ホルムアルデヒド等の化合物を挙げることができる。また、使用する微生物は、生育菌体(菌糸など)でも良いし、胞子でも良い。【0012】このようにして得られる好ましい変異微生物としては、例えば、Δ12不飽和化酵素活性が低下または欠失している変異株としてモルティエレラ・アルピナSAM1861 (微工研条寄第3590号、FERM BP-3590)が挙げられ、さらに、Δ12不飽和化酵素活性が低下または欠失し、且つΔ6 不飽和化酵素活性が増強されている変異株としてモルティエレラ・アルピナSAM2086 (微工研条寄第6032号、FERM BP-6032)を挙げることができる。【0013】添加する不飽和脂肪酸類としては、アラキドン酸及び/又はEPAの生合成前駆体で、Δ5 不飽和化酵素、Δ6 不飽和化酵素、または鎖長延長酵素の基質となる不飽和脂肪酸であれば良く、例えば、オメガ6 系不飽和脂肪酸やオメガ3 系不飽和脂肪酸を挙げることができる。それら不飽和脂肪酸はエステルや塩であっても良く、また、それら不飽和脂肪酸を構成成分として含む油脂であっても良い。【0014】より具体的には、アラキドン酸の生合成基質であるオメガ6 系不飽和脂肪酸としては、例えば、リノール酸、γ- リノレン酸、ジホモ- γ- リノレン酸を挙げることができ、また、それら不飽和脂肪酸を構成成分として含む油脂としては、例えば、サフラワー油、大豆油、トウモロコシ油、綿実油、Bio-γ(γ- リノレン酸含有トリグリセリド)等を挙げることができる。また、EPAの生合成基質であるオメガ3 系不飽和脂肪酸としては、例えば、α- リノレン酸、6, 9, 12, 15- オクタデカテトラエン酸、8, 11, 14, 17-エイコサテトラエン酸を挙げることができ、また、それら不飽和脂肪酸を構成成分として含む油脂としては、例えば、アマニ油を挙げることができる。【0015】前記変異微生物の培養培地へのこれら不飽和脂肪酸類の添加量は、培地に対し0.2 〜10重量% が好ましく、また、培養培地への添加は、生産微生物を接種する前又はその直後に添加するのがよいが、培養を開始した後或いは前後の両時点で加えてもよい。培養開始後の添加は1回でもよく、又は複数回に分けて間欠的に、或いは、連続的に添加することもできる。なお、これら不飽和脂肪酸類を唯一の炭素源として培養することもでき、また、複数の不飽和脂肪酸類を混合して添加することもできる。【0016】本発明における変異微生物の培養条件は、特に限定されるものではないが、常法に従いその菌株の胞子、菌糸、又は予め培養して得られた前培養液を、通常の液体培地又は固体培地に接種し、培養温度20〜30℃で、2 〜20日間行うのが好ましい。【0017】培養菌体からアラキドン酸及び/又はEPAを含有する油脂を採取するには、例えば、次のようにして行うことができる。培養終了後、培養液より遠心分離や濾過等の常用の固液分離手段により培養菌体を得る。菌体は十分水洗し、好ましくは乾燥する。乾燥菌体は、好ましくは窒素気流下で有機溶媒によって抽出処理する。有機溶媒としてはエーテル、ヘキサン、メタノール、エタノール、クロロホルム、ジクロロメタン、石油エーテル等を用いることができ、又メタノールと石油エーテルの交互抽出やクロロホルム−メタノール−水の一層系の溶媒を用いた抽出によっても良好な結果を得ることができる。抽出物から減圧下で有機溶媒を留去することにより、高濃度のアラキドン酸及び/又はEPAを含有する油脂が得られる。【0018】このようにして得られるアラキドン酸及び/又はEPAを含有する油脂は、主にアラキドン酸及び/又はEPAを構成成分とするトリグリセリドとして得ることができる。さらに、食物油脂の精製工程である脱ガム、脱酸、脱色、脱臭の工程により、食用に適した良質の油脂とすることができる。また、このようにして得られるアラキドン酸及び/又はEPAを含有する油脂は、所望によりアラキドン酸及びEPAを分離、精製して使用することもできる。油脂からのアラキドン酸及びEPAの分離は、これらを直接分離することもできるが、常法により低級アルコールとのエステルとして分離するのが好ましい。【0019】このようなエステルにすることにより、他の脂質成分、例えば培養中に生成する他の脂肪酸(パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、α- リノレン酸等)から容易に分離することができる。分離手段としては、カラムクロマトグラフィー、低温結晶化法、尿素包接法、液々向流分配クロマトグラフィー、真空蒸留、銀錯体形成法、超臨界抽出法、リパーゼ処理法等を単独で、又は適宜組み合わせて使用することができる。こうして単離されたアラキドン酸又はEPAのエステルから遊離の酸を得るには、常法によりアルカリで加水分解した後エーテル等の有機溶媒で抽出すればよい。【0020】本発明に従えば、変異微生物の種類及び培地に添加する不飽和脂肪酸類を選択するとともにその添加量を調節することにより、アラキドン酸やEPA、5,8,11- エイコサトリエン酸(ミード酸)等の高度不飽和脂肪酸含有率の異なる油脂が菌体内に生成、蓄積される。この菌体を前記記載の如く処理すると、これらの高度不飽和脂肪酸が混合し、組成比率を種々異にする油脂を得ることもできる。【0021】即ち、本変異微生物は、本来オメガ9 系高度不飽和脂肪酸、例えば5,8,11- エイコサトリエン酸を生産する能力を有することから、培養培地へのオメガ3 系不飽和脂肪酸、例えばα- リノレン酸の添加によりEPAと5,8,11- エイコサトリエン酸を含む油脂を、また、オメガ6 系不飽和脂肪酸、例えばリノール酸の添加によりアラキドン酸、EPA及び5,8,11- エイコサトリエン酸を含有する油脂を得ることができる。【0022】【実施例】次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例1.オメガ6系またはオメガ3系の不飽和脂肪酸を含む油脂の添加によるアラキドン酸またはエイコサペンタエン酸(EPA)の生産Czapek寒天培地10 ml (0.2% NaNO3、0.1% K2HPO4 、0.05% MgSO4 ・7H2O、0.05% KCl 、0.001% FeSO4・7H2O、 3% シュークロース、2% 寒天、pH 6.0)を試験管(18 mm φ)に入れ、120 ℃で20分間殺菌しCzapek寒天スラントを調製し、オメガ9 系高度不飽和脂肪酸生産能を有する微生物モルティエレラ・アルピナ SAM1861または SAM1861から誘導されたΔ6 不飽和化酵素活性が上昇したモルティエレラ・アルピナ SAM2086を植菌し、2 週間胞子形成させた後、4 ℃で保管した。【0023】培地A (グルコース0.5%、酵母エキス1%、サフラワー油2%、pH 6.0)、培地B (グルコース0.5%、酵母エキス1%、アマニ油2%、pH 6.0)2 mlを10 ml 容のエルレンマイヤーフラスコに入れ、120 ℃で20分間殺菌した。上記モルティエレラ・アルピナ SAM1861またはモルティエレラ・アルピナ SAM2086の胞子形成スラントに滅菌水を8 ml入れて得た胞子溶液を200 μl 植菌し、28℃で2 日間、20℃で7 日間、振盪培養(120 rpm )した。なお、コントロールとして油脂を添加していない以外は上記と同じ培地を用いて、同じ条件でそれぞれの菌を培養した。【0024】培養後、濾過により菌体を回収し、十分水洗した後、105 ℃で2 時間乾燥させた。得られた乾燥菌体をねじ口試験管(16.5 mm φ)に入れ、塩化メチレン 1 ml 、無水メタノール−塩酸(10% )2 mlを加え、50℃で3 時間処理することでメチルエステル化し、n−ヘキサン 4 ml 、水 1 ml を加えて、2 回抽出し、抽出液の溶媒を遠心エバポレーター(40℃、1 時間)で留去した後、得られた脂肪酸メチルエステルをガスクロマトグラフィーで分析した。【0025】アラキドン酸の前駆体となるオメガ6 系不飽和脂肪酸を含むサフラワー油を添加したA 培地の場合はアラキドン酸の生産量は、SAM1861 及びSAM2086 それぞれ0.8, 1.6 g/Lであり、EPAの前駆体となるオメガ3 系不飽和脂肪酸を含むアマニ油を添加したB 培地の場合のEPAの生産量は、SAM1861 及びSAM2086 でそれぞれ0.77及び1.02 g/Lであった。なお、A 培地、B 培地から油脂を除いた培地で培養したコントロールでは、いずれの菌株でもアラキドン酸またはEPAを生産しなかった。【0026】実施例2.オメガ6系不飽和脂肪酸を含む油脂の添加によるアラキドン酸生産(油脂添加量による変化)グルコース4%、酵母エキス1%、油脂(サフラワー油、大豆油、トウモロコシ油、綿実油、リノール酸メチルエステルまたはBio-γ)0.2%、0.5%または1%を含む培地(pH 6.0)2 mlを10 ml 容のエルレンマイヤーフラスコに入れ、120 ℃で20分間殺菌した。実施例1で調製したモルティエレラ・アルピナ SAM1861またはモルティエレラ・アルピナ SAM2086の胞子形成スラントに滅菌水を8 ml入れて得た胞子溶液を200 μl 植菌し、28℃で1週間、振盪培養(150 rpm )した。なお、コントロールとして油脂の入っていない上記培地でそれぞれの菌を培養した。【0027】培養後、実施例1と同様にメチルエステル化を行い、得られた脂肪酸メチルエステルをガスクロマトグラフィーで分析した。モルティエレラ・アルピナ SAM1861及びモルティエレラ・アルピナ SAM2086を各培地で培養した時のアラキドン酸の生産量を表1に示した。アラキドン酸の生産量は油脂の添加濃度の上昇に伴って増加し、その程度はΔ6 不飽和化酵素活性が上昇したモルティエレラ・アルピナ SAM2086で明らかに高かった。【0028】【表1】【0029】実施例3.オメガ6系不飽和脂肪酸を含む油脂の添加によるアラキドン酸生産(培地グルコース濃度による変化)油脂(綿実油、大豆油)1%を含む培地A (グルコース4%、酵母エキス1%、pH 6.0)、培地B (グルコース2%、酵母エキス1%、pH 6.0)、培地C (グルコース1%、酵母エキス1%、pH 6.0)、及び培地D (グルコース0.5%、酵母エキス1%、pH 6.0)2 mlを10 ml 容のエルレンマイヤーフラスコに入れ、120 ℃で20分間殺菌した。実施例1で調製したモルティエレラ・アルピナ SAM1861またはモルティエレラ・アルピナ SAM2086の胞子形成スラントに滅菌水を8 ml入れて得た胞子溶液を200 μl 植菌し、28℃で1 週間、振盪培養(150 rpm )した。なお、コントロールとして油脂の入っていない上記培地でそれぞれの菌を培養した。【0030】培養後、実施例1と同様にメチルエステル化を行い、得られた脂肪酸メチルエステルをガスクロマトグラフィーで分析した。モルティエレラ・アルピナ SAM1861及びモルティエレラ・アルピナ SAM2086を各培地で培養した時のアラキドン酸及びミード酸の生産量を表2に示した。【0031】【表2】【0032】実施例4.オメガ6系不飽和脂肪酸および該脂肪酸を含む油脂の添加によるアラキドン酸の生産油脂(サフラワー油、リノール酸メチルエステル)1%を含む培地A (グルコース4%、酵母エキス1%、pH 6.0)、培地B (グルコース2%、酵母エキス1%、pH 6.0)、培地C (グルコース1%、酵母エキス1%、pH 6.0)及び培地D (グルコース0.5%、酵母エキス1%、pH 6.0)2 mlを10 ml 容のエルレンマイヤーフラスコに入れ、120 ℃で20分間殺菌した。実施例1で調製したモルティエレラ・アルピナ SAM1861またはモルティエレラ・アルピナ SAM2086の胞子形成スラントに滅菌水を8 ml入れて得た胞子溶液を200 μl 植菌し、28℃で1 週間、振盪培養(150 rpm )した。なお、コントロールとして油脂の入っていない上記培地でそれぞれの菌を培養した。【0033】培養後、実施例1と同様にメチルエステル化を行い、得られた脂肪酸メチルエステルをガスクロマトグラフィーで分析した。モルティエレラ・アルピナ SAM1861及びモルティエレラ・アルピナ SAM2086を各培地で培養した時のアラキドン酸及びミード酸の生産量を表3に示した。実施例3と比較して、全脂肪酸に占めるオメガ6 系不飽和脂肪酸の割合が高い場合、炭素源の濃度を抑制することで全くオメガ9 系不飽和脂肪酸を含まない脂質を得ることができた。【0034】【表3】【0035】実施例5.低温培養条件下でのオメガ6系不飽和脂肪酸の添加によるアラキドン酸及びEPAの生産油脂(リノール酸メチルエステル)1%を含む培地A (グルコース4%、酵母エキス1%、pH 6.0)、培地B (グルコース2%、酵母エキス1%、pH 6.0)、培地C (グルコース1%、酵母エキス1%、pH 6.0)及び培地D (グルコース0.5%、酵母エキス1%、pH 6.0)2 mlを10 ml 容のエルレンマイヤーフラスコに入れ、120 ℃で20分間殺菌した。実施例1で調製したモルティエレラ・アルピナ SAM1861またはモルティエレラ・アルピナ SAM2086の胞子形成スラントに滅菌水を8 ml入れて得た胞子溶液を200 μl 植菌し、12℃で11日間、振盪培養(150 rpm )した。なお、コントロールとして油脂の入っていない上記培地でそれぞれの菌を培養した。【0036】培養後、実施例1と同様にメチルエステル化を行い、得られた脂肪酸メチルエステルをガスクロマトグラフィーで分析した。モルティエレラ・アルピナ SAM1861及びモルティエレラ・アルピナ SAM2086を各培地で培養した時のアラキドン酸及びミード酸の生産量を表4に示した。実施例4と比較して、低温培養によってアラキドン酸以外にEPA を産生させることができた。【0037】【表4】【0038】【発明の効果】オメガ9 系高度不飽和脂肪酸生産能を有する微生物に、変異処理を施して得られる、Δ5 不飽和化酵素活性およびΔ6 不飽和化酵素活性を有し、かつΔ12不飽和化酵素活性が低下または欠失し、かつΔ5 不飽和化酵素活性及び/又はΔ6 不飽和化酵素活性及び/又は鎖長延長酵素活性が変異処理により高められた微生物、例えばモルティエレラ・アルピナ SAM2086を用い、その培養培地に不飽和脂肪酸類を添加することにより、アラキドン酸及び/又はEPAを高濃度に含有する油脂を得ることができる。 モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)SAM1861(微工研条寄第3590号;FERM BP-3590)及びモルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)SAM2086(微工研条寄第6032号;FERM BP-6032)から選ばれる、Δ5 不飽和化酵素活性およびΔ6 不飽和化酵素活性を有し、かつΔ12不飽和化酵素活性が低下または欠失し、かつΔ5 不飽和化酵素活性及び/又はΔ6 不飽和化酵素活性及び/又は鎖長延長酵素活性が変異処理により高められた微生物を、オメガ6系及び/又はオメガ3系の不飽和脂肪酸、或いは該不飽和脂肪酸のエステルもしくは塩または該不飽和脂肪酸を構成成分として含む油脂を添加した培地で培養するか、或いは該微生物が培養されている培養液にこれらの不飽和脂肪酸類を添加して更に培養することによりアラキドン酸及び/又はエイコサペンタエン酸を含有する油脂を生成せしめ、そしてアラキドン酸及び/又はエイコサペンタエン酸を含有する油脂を採取することを特徴とするアラキドン酸及び/又はエイコサペンタエン酸含有油脂の製造方法。 アラキドン酸及び/又はエイコサペンタエン酸を含有する油脂をトリグリセリドとして生成せしめることを特徴とする、請求項1記載のアラキドン酸及び/又はエイコサペンタエン酸含有油脂の製造方法。


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