タイトル: | 特許公報(B2)_ピルビン酸の製造方法 |
出願番号: | 1998047302 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C12P 7/50,C12R 1/40,C12R 1/38,C12R 1/385,C12R 1/39 |
清水 昌 小川 順 JP 3817725 特許公報(B2) 20060623 1998047302 19980227 ピルビン酸の製造方法 味の素株式会社 000000066 中村 稔 100059959 大塚 文昭 100067013 宍戸 嘉一 100065189 竹内 英人 100096194 今城 俊夫 100074228 小川 信夫 100084009 村社 厚夫 100082821 箱田 篤 100084663 清水 昌 小川 順 20060906 C12P 7/50 20060101AFI20060817BHJP C12R 1/40 20060101ALN20060817BHJP C12R 1/38 20060101ALN20060817BHJP C12R 1/385 20060101ALN20060817BHJP C12R 1/39 20060101ALN20060817BHJP JPC12P7/50C12P7/50C12R1:40C12P7/50C12R1:38C12P7/50C12R1:385C12P7/50C12R1:39 C12P 7/50 特開昭64−43197(JP,A) 3 1999243980 19990914 6 20040421 中島 庸子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、環状イミド化合物を資化する活性を有し、フマル酸をピルビン酸に変換する活性を有する微生物をフマル酸に作用させ、生成するピルビン酸を採取することを特徴とするピルビン酸の製造方法に関する。ピルビン酸は、生体代謝の重要中間体であり、各種アミノ酸ならびに医薬、農薬等の合成原料として有用である。【0002】【従来の技術】従来、発酵法によるピルビン酸の製法として各種微生物を糖質を炭素源とする発酵培地に培養し、培養液中にピルビン酸を蓄積させる方法が知られている。これまでに各種微生物を酢酸、プロピオン酸を主炭素源とする培地で培養する方法(特公昭51-34475)、炭素数2-10の脂肪酸アミドを主炭素源とする培地で培養する方法(特公昭52-112)、グルコン酸含有培地で培養する方法(特公昭51-38792)、糖質を主炭素源とする発酵培地に培養する方法(特公昭57-796、特公昭51-34475、特開昭57-159492 、特開昭61-146190 )が発酵法によるピルビン酸の製法として知られている。しかしながら、発酵法による製法は発酵時間も長く、副生物が多いため工業的に満足のいくものではなかった。これらの欠点を解決すべく微生物の培養物を酵素源として基質を変換する方法が開発された。微生物変換による反応としては、例えばL-酒石酸にL-酒石酸デヒドラターゼ活性を有する微生物を作用させ、L-酒石酸をピルビン酸に変換する方法(特開昭60-248187 、特開昭61-12293)、フマル酸をピルビン酸に変換する能力を持つ微生物をフマル酸に作用させる方法(特開昭61-40796)、フマラーゼ、ピルビン酸−リンゴ酸カルボキシラーゼおよびNADHオキシダーゼの存在下にフマル酸、金属イオン、NADもしくはNADHを反応させる方法(特開昭64-43197)が知られている。しかし、L-酒石酸をピルビン酸に変換する方法(特開昭60-248187 、特開昭61-12293)では反応速度、収率、転換率の向上を図るためには反応を不活性ガスシール下で行う必要があるため、工業的スケールでの反応は難しい。また、フマル酸をピルビン酸に変換する能力を持つ微生物をフマル酸に作用させる方法(特開昭61-40796)は収率が低く、実際的な収率でピルビン酸を得るには反応液中に2-ケトカルボン酸を添加する必要があるため経済的に不利である。また反応時に2-ケトカルボン酸に対応するアミノ酸が同時に副生してしまうため、反応液からピルビン酸を分離精製するのが煩雑となる。フマラーゼ、ピルビン酸−リンゴ酸カルボキシラーゼおよびNADHオキシダーゼの存在下にフマル酸、金属イオン、NADもしくはNADHを反応させる方法(特開昭64-43197)ではNADHオキシダーゼを添加しない場合には、反応収率は非常に低いが、NADHオキシダーゼの調製は煩雑な操作が必要であり、また少量とはいえ高価な補酵素の添加が必要なため、経済的に不利である。このように、いずれの方法も欠点があり工業的に実際的とは言い難く、さらに優れたピルビン酸の製造方法が求められている。【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明は、フマル酸を原料とし、プロセスが単純で工業的に有利なピルビン酸の製造方法を提供すること目的とする。【課題を解決するための手段】本発明は、上記既存の方法の欠点を改良するために鋭意検討の結果、環状イミド化合物を資化する活性を有するシュウドモナス属に属する微生物が、反応液中に2-ケトカルボン酸のような反応の基質以外の添加物や、NADHオキシダーゼのような補酵素再生のための酵素の添加無しに高収率、高蓄積でフマル酸をピルビン酸に変換する能力を持つとの知見に基づくものである。すなわち、本発明は、環状イミド化合物を資化する活性を有し、フマル酸をピルビン酸に変換する能力を有する、シュウドモナス属に属する微生物の培養物、該培養物より分離した微生物菌体または該微生物の菌体の処理物をフマル酸に作用せしめ、生成するピルビン酸を採取することを特徴とするピルビン酸の製造方法を提供する。【0004】【発明の実施の形態】本発明において環状イミド化合物資化能を有するとは、各種環状イミド化合物を単一炭素源として生育できることを意味し、本発明に用いられる微生物としては、環状イミド化合物資化能を有し、高収率でフマル酸をピルビン酸に変換する能力を持つシュウドモナス属に属する細菌であれば、野生株、変異株、細胞融合法、遺伝子操作法その他の遺伝的手法で誘導される組換え株のいずれも用いることができる。これらの微生物は、スクシンイミド、グルタルイミドまたはフタルイミド等の環状イミド化合物を資化可能であるが、特にスクシンイミドまたはグルタルイミドを資化する能力を有する微生物が好ましい。これらの微生物の具体的な例としては、例えば以下のような菌株を挙げることができる。シュウドモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)IFO3081シュウドモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)IFO3925シュウドモナス・フラギ(Pseudomonas fragi)IFO3458シュウドモナス・アエルギノザ(Pseudomonas aeruginosa)IFO3918シュウドモナス・プチダ(Pseudomonas putida)IFO12996シュウドモナス・プチダ(Pseudomonas putida)IFO3738シュウドモナス・クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)IFO3904シュウドモナス・パボナセア(Pseudomonas pavonacea)IFO12055【0005】これらの微生物を培養する培地は格別の制限はなく、通常の炭素源、窒素源、無機イオン更に必要ならば有機栄養源を含む通常の培地でよい。炭素源としては、グルコ−ス等の炭水化物、グリセロ−ル等のアルコ−ル類、有機酸、その他が適宜使用される。窒素源としては、アンモニアガス、アンモニア水、アンモニウム塩、その他が用いられる。無機イオンとしては、マグネシウムイオン、燐酸イオン、カリウムイオン、鉄イオン、マンガンイオン、その他が必要に応じ適宜使用される。有機栄養源としては、ビタミン、アミノ酸等及びこれらを含有するレバーエキス、酵母エキス、麦芽エキス、ペプトン、肉エキス、コ−ンスティ−プリカ−、カゼイン分解物、その他が適宜用いられる。また、酵素の誘導剤としてスクシンイミド、グルタルイミド、フタルイミドなどの環状イミド化合物を培地に添加することによって、フマル酸をピルビン酸に変換する活性が向上する場合がある。培地中の環状イミド化合物の濃度は0.1〜5重量%(以下、%と略称する)であるのが好ましく、より好ましくは0.5〜1%である。培養条件にも格別の制限はなく、例えば、好気的条件下pH5〜8及び温度25〜40℃の範囲内でpH及び温度を適当に制限しつつ12〜96時間程度培養を行なえばよい。【0006】上記微生物をフマル酸又はフマル酸塩に作用せしめる方法としては、かくして得られる微生物培養物にフマル酸を添加して反応させる方法、微生物培養物から遠心分離等により菌体を分離し、これをそのままもしくは洗浄した後、緩衝液に再懸濁したものにフマル酸を添加して反応させる方法等がある。また、微生物菌体の処理物として、菌体破砕物、アセトン処理菌体、凍結乾燥菌体、あるいはポリアクリルアミドゲル法、カラギーナン法、アルギン酸ゲル法等の公知の方法で固定化した菌体も用いることもできる。更に、微生物菌体処理物としては、菌体抽出物もしくは菌体から公知の方法を組み合わせて精製取得した酵素等も使用できる。【0007】反応は通常、温度20〜60℃、望ましくは25〜35℃で、pH4.0 〜9.0 望ましくはpH7.0 〜8.0 で好結果を与える。反応には、静置反応あるいは撹はん反応のいずれの方法も採用し得る。反応時間は、使用する菌体の活性、フマル酸濃度などの条件によって異なるが、1 〜100 時間が望ましい。フマル酸の塩としてはアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等が使用される。反応液中のフマル酸の添加量は格別の制限はないが、一般には0.1 〜20%(w/v) が適当である。この濃度を初発から添加してもよいし、逐次添加により最終的にこの濃度になるように添加してもよい。このようにして生成したピルビン酸を反応終了混合物より採取分離するには、合成吸着樹脂を用いる方法や沈殿剤を用いる方法、その他通常の採取分離方法が採用できる。【0008】【発明の効果】本発明によると、高収率でフマル酸をピルビン酸に変換する能力を持つ微生物を用い、反応液中に反応の基質以外の添加物無しに、単純なプロセスでピルビン酸を製造することができる。以下、実施例にて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。【0009】【実施例】以下、実施例にて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、本実施例において、原料のフマル酸および生成したピルビン酸は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、下記の条件にて分析した。カラム:YMC-pack ODS-AQ AQ-303〔YMC 社製品〕移動層:20mMリン酸バッファー(pH2.8 )流 速:0.7 ml/min、温 度:30℃、検 出:UV220nm実施例 1下記の成分を含有するスクリーニング用培地(寒天培地)に各種菌を接種して培養し、環状イミド化合物を資化する活性を有する微生物を選択した。KH2 PO4 :0.1%K2 HPO4 :0.1%MgSO4 ・7H2 O:0.03%NH4 Cl:0.2%YEAST EXTRACT(酵母エキス):0.01%環状イミド化合物(スクシンイミド):0.15%上記の方法で選択した菌株を用いて、ピルビン酸を以下の方法で調製した。トリプトン(Difco社製品)0.2% (w/v)、酵母エキス(Difco)0.2%%、KH2PO4 0.1%、スクシンイミド0.5 %を含む培地50ml(細菌と放線菌の培養にはpH7.0 、酵母の培養にはpH6.0 に調製)を500ml 坂口フラスコに分注し、120 ℃、20分間加熱滅菌した。この培地に各菌株を接種し、28℃で2 〜3 日間振とう培養した。該培養液から遠心分離により菌体を集め、生理食塩水で1 回洗浄した。フマル酸ナトリウム100mM を0.1Mトリス−HCl 緩衝液 (pH 7.5) に溶解し、試験管に1ml ずつ分注した。この反応液にそれぞれの培養菌体を湿重量で約5%(w/v) となるように添加し、pH 7.5、28℃にて16時間振とう反応を行った。反応後、遠心分離により菌体を除いた後、生成したピルビン酸を定量した。この結果を表1に示した。表1に示したようにいずれの菌体を用いた反応によってもフマル酸よりピルビン酸が効率よく生成蓄積した。【0010】【0011】実施例2トリプトン(Difco社製品)0.2% (w/v)、酵母エキス(Difco)0.2%%、KH2PO4 0.1%、スクシンイミド0.5 %を含む培地50ml(pH7.0 )を500ml 坂口フラスコに分注し、120 ℃、20分間加熱滅菌した。この培地にシュウドモナス・プチダ(Pseudomonas putida)IFO3738 を接種し、28℃で2日間振とう培養した。該培養液から遠心分離により菌体を集め、生理食塩水で1 回洗浄した。フマル酸ナトリウム100mM を0.1Mトリス−HCl 緩衝液 (pH 7.5)1mlに溶解した。この反応液に培養菌体を湿重量で約5%(w/v) となるように添加し、pH 7.5、28℃にて振とう反応を行った。反応開始より24時間および48時間目にフマル酸ナトリウム100mM を追加添加し(合計300mM )72時間反応を行った。遠心分離により菌体を除いた後、生成したピルビン酸を定量したところ139.8mM のピルビン酸がモル収率46.6% で生成蓄積した。 環状イミド化合物を資化する活性を有し、フマル酸をピルビン酸に変換する能力を有する、シュウドモナス属に属する微生物の培養物、該培養物より分離した微生物菌体または該微生物の菌体の処理物をフマル酸に作用せしめ、生成するピルビン酸を採取することを特徴とするピルビン酸の製造方法。 シュウドモナス属に属する微生物がシュウドモナス・プチダである請求項1記載のピルビン酸の製造方法。 環状イミド化合物がスクシンイミド、グルタルイミドまたはフタルイミドである請求項1記載のピルビン酸の製造方法。