| タイトル: | 特許公報(B2)_オリゴ糖の単離精製方法 |
| 出願番号: | 1998025167 |
| 年次: | 2007 |
| IPC分類: | C07H 1/06,C07H 3/04,C07H 3/06 |
水落 次男 JP 3885912 特許公報(B2) 20061201 1998025167 19980123 オリゴ糖の単離精製方法 タカラバイオ株式会社 302019245 学校法人東海大学 000125369 井上 昭 100087022 水落 次男 20070228 C07H 1/06 20060101AFI20070208BHJP C07H 3/04 20060101ALI20070208BHJP C07H 3/06 20060101ALI20070208BHJP JPC07H1/06C07H3/04C07H3/06 C07H 特開昭62−063524(JP,A) 特開昭61−130297(JP,A) 生化学, 1997,第69巻, 第7号, 第70回日本生化学会大会発表抄録集, 第913頁 4989 「セルロースカラムを用いた糖蛋白質糖鎖の高純度大量精製」 平成9年7月25日発行 1 1999209389 19990803 9 20020311 特許法第30条第1項適用 平成9年7月25日 社団法人日本生化学会発行の「生化学 第69巻第7号」に発表 伊藤 幸司 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、セルロースカラムクロマトグラフィーを用いたオリゴ糖の単離精製方法に関する。【0002】【従来の技術】オリゴ糖や多糖といった糖質の分離精製には、従来、ゲルろ過法や、逆相系、順相系の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の各種クロマトグラフィー技術が用いられてきている。しかしながら、これらの方法は、いずれも分離に長時間を要したり、あるいは分離能が良すぎるために試料のオリゴ糖や多糖の分子サイズや時には構造の違いによって分離してしまうことがあり、糖質画分の精製という目的には不十分であった。従来、糖質画分の単離という目的には、ろ紙クロマトグラフィーが広く用いられてきているが、操作に長時間を要することや大量調製には不向きであるなどの理由からこれに代わる方法の確立が望まれていた。特公平 5-79079号公報には、ヒドラジン分解によって糖タンパク質より得られたN−結合型非還元オリゴ糖から、セルロースカラムクロマトグラフィーにおいて、ブタノール:エタノール:水系の溶媒を用い、洗浄を行い、汚染物を除去し、蒸留水で目的とするオリゴ糖画分を回収する非還元オリゴサッカライドの単離方法を開示している。しかしながら、本発明者らが、上記特公平 5-79079号公報に開示されている方法で行ったところ、セルロースカラムクロマトグラフィー後のオリゴ糖画分に、他の不純物、特にカラムに用いたセルロース由来の不純物が混入していることがわかり、オリゴ糖を単離精製するにはかなり不十分なものであることがわかった。【0003】【発明が解決しようとする課題】上述したように、オリゴ糖や多糖といった糖質を短時間で、大量に単離・精製することが可能な方法、更に不純物が混入しない方法はなく、そのような方法が得られれば、糖質工学にとって、工業的にも非常に有用である。したがって、本発明の目的は、効率よく容易にかつ短時間で、他の不純物、特にセルロース由来の不純物を混入させることなく、目的のオリゴ糖のみを単離精製する方法を提供することにある。【0004】【課題を解決するための手段】 本発明を概説すれば、本発明はオリゴ糖の単離精製方法に関する発明であって、オリゴ糖試料からオリゴ糖を単離精製する方法において、エタノール濃度が50%であるエタノールと水の混合液を溶離液として、セルロースカラムクロマトグラフィーを行い、目的のオリゴ糖のみを単離精製することを特徴とする。【0005】本発明者は、セルロースカラムクロマトグラフィーを用いて、目的とするオリゴ糖以外の不純物、特にセルロース由来の不純物を混入させることなく、オリゴ糖を単離することができないかと、種々の条件について検討を行った結果、特定の組成の溶出液(溶離液)を用いて、オリゴ糖試料を溶出することにより、目的とするオリゴ糖以外の不純物を混入させることなく、目的とするオリゴ糖のみを単離することができることを見出し、本発明を完成するに至った。【0006】【発明の実施の形態】以下、本発明について具体的に説明する。本発明に使用されるセルロースカラムに用いるセルロースとしては、例えば微結晶質セルロース、又は微粒子状セルロース、微粉状セルロース、繊維状セルロース等が挙げられる。微結晶質セルロースは、例えば、市販されているアビセルを用いることができる。微粉状セルロース、繊維状セルロースとしては、例えば、セルロースパウダー CF−11〔ワットマン(Whatman )社製〕を用いることができる。これらセルロースの好ましい粒径は、約1〜100ミクロン以下である。【0007】セルロースカラムのカラムハウスとしては市販のガラス製カラム、ポリプロピレン製カラム、あるいは同じくポリプロピレン製のシリンジ等を用いることができるが、これらに限定されるものではなく、セルロースカラムのカラムハウスとして使用できれば、特に限定されるものではない。【0008】本発明で言う「オリゴ糖試料」とは、2糖以上のオリゴ糖を含むものであれば良く、例えば、糖タンパク質からヒドラジン分解、N−アセチル化によって得られたN−グリカン、あるいは同じくヒドラジン分解、N−アセチル化やアルカリ分解によって得られたO−グリカン、あるいはグリコサミノグリカン、デキストラン、フコイダン、デンプン等のような多糖及び該多糖の部分分解物などを含むものが挙げられるが、これらに限定される物ではない。また更に、ピリジル−2−アミノ化やパラアミノ安息香酸エチルエステル(以下、ABEEと略す)で標識されたオリゴ糖などのように、標識オリゴ糖やオリゴ糖誘導体を含むものも、本発明で言う、オリゴ糖試料に含まれる。【0009】本発明で言う「アルコール」とは、オリゴ糖を溶出することが可能なアルコールであればよく、例えば、メタノールやエタノールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、本発明の溶離液として使用する際には、1種類のアルコールと水の混合液として使用し、該混合液中のアルコール濃度は、10〜90%の範囲で使用することが好ましい。例えば50%のアルコール溶液を用いることができる。【0010】本発明のセルロースカラムクロマトグラフィーは、例えば、次のように行うことができる。まず、セルロースを蒸留水に懸濁し、デカンテーションを繰り返して良く洗浄する。洗浄したセルロースを適量、例えば1mlをカラムハウスにつめ、カラム容量の10倍量の蒸留水を流す。次に、溶離液であるアルコールと水の混合液(以下、A/Wと略す)を同じくカラム容量の10倍量流す。このA/W中のアルコールの濃度は10〜90%の範囲の中から適当に選べばよいが、例えば、50%のエタノール溶液を用いることができる。更に、1−ブタノール/エタノール/水の混合液(以下、B/E/Wと略す)をカラム容量の10倍量流してカラムを平衡化する。B/E/W比は、例えば、4:1:1(v/v/v)を用いることができる。平衡化が終了したカラムにオリゴ糖試料を添加する。このオリゴ糖試料はカラムの平衡化に用いた溶液、例えば、B/E/W=4:1:1(v/v/v)混合液に溶解されていることが望ましい。オリゴ糖試料添加後、カラム容量の10〜30倍のB/E/Wでカラムを洗浄する。このとき用いるB/E/Wは、カラムの平衡化に用いたものと同じ組成の溶液を用いるのが好ましい。洗浄後、上記記載の溶離液A/Wをカラム容量の10倍量流し、オリゴ糖を溶出する。A/Wで溶出されないようなオリゴ糖が、もしカラム内に残っている場合は、従来の通り、蒸留水を用いてカラムを洗浄すればそのようなオリゴ糖は回収することができるが、その際の蒸留水を用いて回収した画分にはセルロース由来の不純物が含まれている。A/Wで溶出された画分から、通常のエバポレーターや凍結乾燥機によって溶媒を除去することによって、目的とする精製オリゴ糖のみを得ることができる。【0011】このようにして得られたオリゴ糖は、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィーで分析可能であり、また、還元アミノ化反応によって、2−アミノピリジン、2−アミノベンゼン、ABEE等で標識した後、HPLC等を用いて、構造分析することも可能である。【0012】【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。【0013】実施例1アビセル〔メルク(Merck )社製〕を蒸留水で膨潤洗浄後、0.7×2.6cm、容量1mlのカラムを作製した。このセルロースカラムを、10mlの蒸留水で洗浄した後、B/E/W=4:1:1(v/v/v)混合液でカラムを平衡化した。オリゴ糖試料として、50μgのマルトペンタオースをセルロースカラムに添加した。また、対照実験として、何もカラムに添加せずに同様の操作を行った。30mlのB/E/W=4:1:1(v/v/v)で洗浄した後、20mlの蒸留水を溶離液として、オリゴ糖を溶出させた。溶出液は1mlずつ、B/E/Wの洗浄時から分画し、各フラクションに含まれるオリゴ糖をフェノール硫酸法によって検出した。その結果を図1示す。すなわち図1は、セルロースカラムにマルトペンタオースを添加し、蒸留水で溶出したときのオリゴ糖の溶出パターンを示す図(上段)と、何も添加せずに蒸留水で溶出したときのオリゴ糖の溶出パターンを示す図(下段)である。図中、横軸は溶出容量(ml)を、縦軸は490nmにおける吸光度(A490 )を示す。図1から明らかなように、マルトペンタオースはカラムに吸着し、蒸留水で溶出されてきたが、対照としてカラムに何も添加せずに同様の操作を行った場合でも、フェノール硫酸法で呈色する物質が溶出されてくることが判明した。【0014】次に、この何も添加していないセルロースカラムから溶離液として蒸留水を用いた場合に溶出されてきた画分を集めて濃縮乾固したものを、グライココンジュゲート ジャーナル(Glycoconjugate Journal)、第8巻、第400〜413頁(1991)に記載の方法に従い還元アミノ化反応によってABEEで標識した。その後、BIO-GEL (登録商標)P-4 〔バイオラッド(BIORAD)社製〕カラムを用いて、ABEE化オリゴ糖を精製した。このABEE化オリゴ糖を、ワコーパック(登録商標)ワコーシルWS 5C18-200 〔Wakopak (登録商標) Wakosil WS 5C18-200(4.6×250mm)、和光純薬社製〕を用いた逆相HPLCで分析した。溶出は、A液及びB液を用いたグラジエントにより行った。A液は5%アセトニトリルを含む50mM酢酸溶液、B液は15%アセトニトリルを含む50mM酢酸溶液を用いた。まず、カラムを40%B液で平衡化した後、上記調製したABEE化オリゴ糖試料を添加し、その後60分間で、B液の割合を40%から70%まで上昇させて溶出させた。その結果を図2に示す。すなわち図2は、セルロースカラムに何も添加せずに蒸留水で溶出した画分を集めてABEE化したものを、逆相HPLCで分析した時の溶出パターンを示す図である。図中、横軸は相対保持時間(分)を、縦軸は304nmにおける吸光度を示し、矢印は、一連の二本鎖複合型糖鎖、高マンノース型糖鎖、三本鎖/四本鎖複合型糖鎖の溶出位置をそれぞれ示している。図2から、何も添加していないセルロースカラムから蒸留水で溶出される物質のABEE化物は、大きな複数のピークとして溶出され、しかもその溶出位置は二本鎖複合型糖鎖の一部や高マンノース型糖鎖、三本鎖、四本鎖複合型糖鎖の溶出位置と重なることが明らかとなった。すなわち、従来、溶離液として用いられている蒸留水を用いるセルロースカラムクロマトグラフィーでは、オリゴ糖画分に目的以外の不純物、特にセルロースカラム由来の不純物が混入してしまうことが明らかとなり、このため、蒸留水により得られたオリゴ糖は、正確な糖鎖の構造解析を行う過程で使用するには、極めて不十分であることが明らかとなった。また、上記のセルロースカラムのセルロースを、セルロースパウダー CF−11(ワットマン社製)に置き換えて、実験を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。【0015】実施例2実施例1と同様にして、アビセル(メルク社製)を用いて、セルロースカラムを作成し、10mlの蒸留水で洗浄した後、B/E/W=4:1:1(v/v/v)でカラムを平衡化した。次に、カラムにオリゴ糖試料を添加せずに、10mlずつのB/E/W=4:1:1、3:1:1、2:1:1、1:1:1、0:1:1、及び蒸留水を順次カラムに流し、それぞれの画分を濃縮後、得られた濃縮画分中のオリゴ糖量をフェノール硫酸法によって検出した。その結果を図3に示す。すなわち図3は、各溶出画分に含まれるオリゴ糖量をフェノール硫酸法によって定量した結果を示す図であり、横軸にB/E/Wの組成を、縦軸に490nmにおける吸光度を示す。その結果、フェノール硫酸法で呈色する物質は、種々の混合比のB/E/Wでは溶出されず、蒸留水の画分に溶出された。また、上記のセルロースカラムのセルロースを、セルロースパウダー CF−11(ワットマン社製)に置き換えて、実験を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。【0016】実施例3実施例1と同様にして、アビセル(メルク社製)を用いて、セルロースカラムを作成し、10mlの蒸留水で洗浄した後、B/E/W=4:1:1(v/v/v)でカラムを平衡化した。次に、オリゴ糖試料として50μgのマルトペンタオースをセルロースカラムに添加して、B/E/W=4:1:1(v/v/v)30mlで洗浄後、溶離液として、エタノール/水の混合液(E/W)=1:1(v/v)20mlを用い、溶出を行った。その結果を図4に示す。すなわち図4は、各フラクション中の中性糖含量をフェノール硫酸法によって定量した、マルトペンタオースの溶出パターンを示す図であり、横軸に溶出容量(ml)、縦軸に490nmにおける吸光度を示す。カラムに吸着した糖鎖は、E/W=1:1(v/v)で速やかに溶出され、フェノール硫酸法による測定の結果、その回収率は100%であった。更に、25mgのマルトペンタオースを同じカラムに添加した場合も、同様の結果が得られた。また、上記のセルロースカラムのセルロースを、セルロースパウダー CF−11(ワットマン社製)に置き換えて、実験を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。【0017】実施例4ヒト免疫グロブリンG(IgG)を、メソッズ イン モレキュラー バイオロジー(Methods in Molecular Biology)、第14巻、第55〜68頁〔E.ハウンセル(E. Hounsell )ら編集、ヒューマナ プレス(Humana Press)1993年発行〕記載の方法に従って、ヒドラジン分解、N−アセチル化した物を、実施例1と同様にして、アビセル(メルク社製)を用いて作成したセルロースカラムに供して、一連の二本鎖複合型糖鎖を精製した。溶出は、実施例3に記載の方法と同様に行い、最後に蒸留水10mlによる溶出も行った。その結果を図5に示す。すなわち図5は、IgGのヒドラジン分解産物をセルロースカラムクロマトグラフィーに供した際の溶出パターンを示す図であり、ポリペプチド鎖由来のヒドラジン分解物の溶出位置を215nmにおける吸光度で測定(図中、黒三角印で示す)し、同時にIgG由来糖鎖の溶出位置をフェノール硫酸法による呈色を490nmにおける吸光度で測定(図中、黒丸印で示す)した図である。横軸に溶出容量(ml)、右縦軸に215nmにおける吸光度、左縦軸に490nmにおける吸光度を示す。図中、矢印はE/W=1:1(v/v)で溶出を開始した箇所及び蒸留水で溶出を開始した箇所を示す。図5から明らかなように、ポリペプチド鎖由来のヒドラジン分解物はカラムに吸着せず、B/E/W=4:1:1(v/v/v)で速やかに洗い流された。一方、IgG由来糖鎖は、E/W=1:1(v/v)で溶出を行った画分にピークが認められ、また最後に蒸留水を流した画分にもピークが認められた。【0018】次に、E/W=1:1(v/v)で溶出を行った画分と、蒸留水で溶出した画分をそれぞれ集め、実施例1と同様の方法で、ABEE化した後、逆相HPLC分析を行った。その結果を図6に示す。すなわち図6は、上記溶出した画分をABEE化した後、逆相HPLC分析に供した際の溶出パターンを示す図である。図中、Iは対照としてIgG由来糖鎖をメソッズ イン モレキュラー バイオロジー、第14巻、第55〜68頁(E.ハウンセルら編集、ヒューマナ プレス、1993年発行)に従って、ろ紙クロマトグラフィーにより精製した物を、ABEE化した後、逆相HPLC分析に供した際の溶出パターンを示し、IIはE/W=1:1(v/v)で溶出を行った画分の逆相HPLCの溶出パターンを示し、III は蒸留水で溶出した画分の逆相HPLCの溶出パターンを示し、更にIVは対照としてセルロースカラムに何も添加せずにE/W=1:1(v/v)で溶出を行った画分の逆相HPLCの溶出パターンを示す。横軸は相対保持時間(分)を、縦軸は304nmにおける吸光度を示す。図6から明らかなように、E/W=1:1(v/v)で溶出を行った画分IIには、aからlまでの12種類の糖鎖に相当するピークが溶出し、ろ紙クロマトグラフィーにより精製したIgG糖鎖の溶出パターンと完全に一致した。一方、蒸留水で溶出した画分には、不純物又はセルロースカラム由来と考えられるピークは認められるが、IgGの糖鎖に相当するピークは全く検出されなかった。更に、何も添加せずにE/W=1:1(v/v)で溶出を行った画分にも全くピークは検出されなかった。また、上記のセルロースカラムのセルロースを、セルロースパウダー CF−11(ワットマン社製)に置き換えて、実験を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。したがって、これらの結果から、蒸留水を溶離液としたセルロースカラムクロマトグラフィーにより得られるオリゴ糖は、不純物を含み、極めて不十分なものであるのに対して、上記で示したような、アルコールと水の混合液を溶離液とする、本発明のセルロースカラムクロマトグラフィーは、微量糖タンパク質糖鎖構造解析のためのオリゴ糖画分を、迅速かつ簡便に、しかも高純度に精製するのに、非常に有効な手段であることが証明された。【0019】実施例5一連の高マンノース型糖鎖を持つリボヌクレアーゼB(RNase B )100mgを実施例4と同様にヒドラジン分解後、セルロースカラムによる精製を行い、ABEE化した後、アミド80カラム(東ソー社製)を用いた順相HPLCにて分析を行った。その結果を図7に示す。すなわち図7は、上記E/W=1:1(v/v)で溶出した画分を、ABEE化した後、順相HPLC分析に供した際の溶出パターンを示す図である。図中、Iは、対照としてRNase B 由来糖鎖をメソッズ インモレキュラー バイオロジー、第14巻、第55〜68頁(E.ハウンセルら編集、ヒューマナ プレス、1993年発行)に従って、ろ紙クロマトグラフィーにより精製した物を、同じようにABEE化した後、順相HPLC分析に供した際の溶出パターンであり、IIはセルロースカラムからE/W=1:1(v/v)で溶出を行った画分の順相HPLC溶出パターンを示す。横軸は相対保持時間(分)を、縦軸は304nmにおける吸光度を示す。図7から明らかなように、セルロースカラムからE/W=1:1(v/v)で溶出を行った画分には、M5からM9までの5種類の糖鎖に相当するピークが認められ(図中、矢印で示す)、ろ紙クロマトグラフィーにより精製したRNase B 糖鎖の溶出パターンと完全に一致した。更に、この糖鎖混合物をα1,2−マンノシダーゼで消化すると、すべてM5に相当するピークに変換された。また、それぞれの糖鎖に相当するピークを分取して、MALDI−TOF MSによるによる質量分析を行ったところ、それぞれ理論値に相当するマススペクトルを与えることを確認した。【0020】【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明により、迅速かつ簡便にオリゴ糖を単離精製する方法が提供され、目的とするオリゴ糖以外の不純物、特に使用したセルロース由来の不純物を含むことなく、目的とするオリゴ糖のみを微量に、あるいは大量に、かつ、高純度で精製することが可能となった。【図面の簡単な説明】【図1】セルロースカラムの溶出パターンを示す図である。【図2】セルロースカラムから蒸留水で得られた溶出した画分のABEE化物の逆相HPLC溶出パターンを示す図である。【図3】各溶出画分に含まれるオリゴ糖量をフェノール硫酸法によって定量した結果を示す図である。【図4】各フラクション中のマルトペンタオースの溶出パターンを示す図である。【図5】IgGのヒドラジン分解産物をセルロースカラムクロマトグラフィーに供した際の溶出パターンを示す図である。【図6】溶出した画分のABEE化物の逆相HPLC溶出パターンを示す図である。【図7】溶出した画分のABEE化物の順相HPLC溶出パターンを示す図である。 オリゴ糖試料からオリゴ糖を単離精製する方法において、エタノール濃度が50%であるエタノールと水の混合液を溶離液として、セルロースカラムクロマトグラフィーを行い、目的のオリゴ糖のみを単離精製することを特徴とするオリゴ糖の単離精製方法。