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タイトル:特許公報(B2)_フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ、その製造方法、及び該酵素を用いたアマドリ化合物の測定方法
出願番号:1997520371
年次:2006
IPC分類:C12N 9/06,C12Q 1/26,C12R 1/66


特許情報キャッシュ

加藤 暢夫 阪井 康能 谷 ▲吉▼樹 福家 博司 八木 雅之 酒井 敏克 石丸 香 帖佐 敏 JP 3786966 特許公報(B2) 20060331 1997520371 19961202 フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ、その製造方法、及び該酵素を用いたアマドリ化合物の測定方法 アークレイ株式会社 青山 葆 田村 恭生 齋藤 みの里 加藤 暢夫 阪井 康能 谷 ▲吉▼樹 福家 博司 八木 雅之 酒井 敏克 石丸 香 帖佐 敏 JP 1995312342 19951130 JP 1996192003 19960722 20060621 C12N 9/06 20060101AFI20060601BHJP C12Q 1/26 20060101ALI20060601BHJP C12R 1/66 20060101ALN20060601BHJP JPC12N9/06C12Q1/26C12N9/06C12R1:66 C12N 9/06 BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) CA(STN) 特開平03−155780(JP,A) 特開平06−046846(JP,A) 特開昭61−280297(JP,A) Appl. Environ. Microbiol., 61[12](1995,Dec.,4) p.4487-4489 Eur. J. Biochem., 242[3](1996) p.499-505 7 FERM BP-5684 FERM BP-5756 FERM BP-5757 JP1996003515 19961202 WO1997020039 19970605 22 20031128 高堀 栄二 技術分野本発明は、新規なフルクトシルアミノ酸オキシダーゼに関し、さらに詳しくは、アスペルギルス属(Aspergillus)の菌由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼの生産方法、該酵素を用いたアマドリ化合物の分析法、及び該酵素を含有する試薬及びキットに関する。本発明は、酵素を用いるアマドリ化合物の測定方法、さらに詳しくは、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼによる新規なアマドリ化合物の測定方法、及び該方法に用いられる試薬及びキットに関する。背景技術アマドリ化合物は、タンパク質、ペプチド及びアミノ酸のようなアミノ基を有する物質と、アルドースのような還元性の糖が共存する場合、アミノ基とアルデヒド基が非酵素的かつ非可逆的に結合し、アマドリ転移することにより生成される。アマドリ化合物の生成速度は、反応性物質の濃度、接触時間、温度などの関数で表される。従って、その生成量から、それら反応性物質を含有する物質に関する様々な情報を得ることができると考えられている。アマドリ化合物を含有する物質としては、醤油等の食品、及び血液等の体液がある。生体では、グルコースとアミノ酸が結合したアマドリ化合物であるフルクトシルアミン誘導体が生成している。例えば、血液中のヘモグロビンが糖化されたフルクトシルアミン誘導体はグリコヘモグロビン、アルブミンが糖化された誘導体はグリコアルブミン、血液中のタンパクが糖化された誘導体の還元能はフルクトサミンと呼ばれる。これらの血中濃度は、過去の一定期間の平均血糖値を反映しており、その測定値は、糖尿病の症状の診断及び症状の管理の重要な指標となり得るために、測定手段の確立は臨床上、極めて有用である。また、食品中のアマドリ化合物を測定することにより、その食品の製造後の保存状況や期間を知ることができ、品質管理に役立つと考えられる。このように、アマドリ化合物の分析は医学及び食品を含む広範な分野で有用である。従来、アマドリ化合物の測定法としては、高速液体クロマトグラフィーを利用する方法[Chromatogr.Sci.10:659(1979)]、ホウ酸を結合させた固体をつめたカラムを用いる方法[Clin.Chem.28:2088-2094(1982)]、電気泳動[Clin.Chem.26:1598-1602(1980)]、抗原−抗体反応を利用する方法[JJCLA 18: 620(1993),機器・試薬16: 33-37(1993)],フルクトサミンの測定法[Clin.Chim.Acta 127: 87-95 (1982)],チオバルビツール酸を用いて酸化後比色定量する方法[Clin.Chim.Acta 112: 197-204 (1981)]などが知られているが、高価な機器が必要であったり、必ずしも正確で迅速な方法ではなかった。近年、酵素の有する特性(基質、反応、構造、位置などの特異性)に起因して、選択的に目的物質を迅速かつ正確に分析することができることから酵素反応を利用する方法が臨床分析や食品分析の分野で普及してきた。既に、アマドリ化合物に酸化還元酵素を作用させ、その反応における酸素の消費量又は過酸化水素の発生量を測定することにより、アマドリ化合物を測定する分析法が提案されている(例えば、特公平5-33997号公報、特公平6-65300号公報、特開平2-195900号公報、特開平3-155780号公報、特開平4-4874号公報、特開平5-192193号公報、特開平6-46846号公報)。さらに、糖尿病の診断のための糖化タンパクの測定法も開示されている(特開平2-195899号公報、特開平2-195900号公報、特開平5-192193号公報(EP 0 526 150 A)、特開平6-46846号公報(EP 0 576 838 A))。アマドリ化合物の酸化還元酵素による反応は下記の一般式で表すことができる。R1−CO−CH2−NH−R2 + O2 + H2O→R1−CO−CHO + R2−NH2 + H2O2(式中、R1はアルドース残基、R2はアミノ酸、タンパク質又はペプチド残基を表す)上記の反応を触媒する酵素として以下のものが知られている。1.フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ:コリネバクテリウム(Corynebacterium)属(特公平5-33997号公報、特公平6-65300号公報)、アスペルギルス属(Aspergillus)(特開平3-155780号公報)。2.フルクトシルアミンデグリカーゼ:カンジダ属(Candida)(特開平6-46846号公報)。3.フルクトシルアミノ酸分解酵素:ペニシリウム属(Penicillium)(特開平4-4874号公報)。4.ケトアミンオキシダーゼ:コリネバクテリウム属、フサリウム属、アクレモニウム属又はデブリオマイセス属(特開平5-192193号公報)5.アルキルリジナーゼ:J.Biol.Chem.239巻、第3790−3796頁(1964年)記載の方法で調製。しかしながらこれらの酵素による方法には、下記の問題点があった。即ち、糖尿病の診断における指標となる、血中の糖化タンパクは糖化アルブミン、糖化ヘモグロビン及びフルクトシルアミンである。糖化アルブミンはタンパク分子中のリジン残基のε位にグルコースが結合して生成される[J. Biol. Chem. 261:13542-13545(1986)]。糖化ヘモグロビンは[J. Biol. Chem. 254:3892-3898(1979)]、リジン残基の他にβ鎖のN末端バリンにもグルコースが結合している。従って糖尿病の指標となる糖化タンパクの測定には、フルクトシルバリンに比べてフルクトシルリジンに対する特異性の高い酵素を用いる必要があった。しかし、既存のコリネバクテリウム属由来の酵素はフルクトシルリジンには作用せず、特開平3-155780記載のアスペルギルス属由来の酵素は、フルクトシルリジンに対する活性が、フルクトシルバリンに対する活性より低く、糖化タンパク又はその加水分解物に対する作用については明らかにされていない。他方、特開平5-192193号公報記載のケトアミンオキシダーゼはフルクトシルバリンは分解し得るが、リジン残基に糖が結合している糖化タンパクを正確に測定することはできない。フルクトシルアミンデグリガーゼは、ジフルクトシルリジンに高い活性があるのでリジン残基のε位の糖化物を特異的に測定することができず、またバリン残基の糖化物を特異的に測定することもできない。さらにアルキルリジナーゼを用いる方法は糖類以外がリジンに結合した物質に対しても作用し、糖化物に対する特異性が低いという問題があり、正確な測定が期待できなかった。特開平4-4874号記載のペニシリウム属由来の酵素はフルクトシルリジンとフルクトシルアラニンに作用する酵素である。このように、従来の酵素は糖化タンパクの正確な定量には適さず、フルクトシルバリンに比べてフルクトシルリジンに対する特異性が高い酵素の開発が待たれていた。一般的に、酵素を用いる分析法が正確かつ有用となるためには、分析の目的に最適な酵素を選択する必要がある。即ち、酵素の基質である被検物質の種類、測定試料の状態、測定条件など、種々の条件を考慮して適切な酵素を用いなければ、再現性のある正確な分析を行う事ができない恐れがある。そのような酵素を選択するためには、より多くのフルクトシルアミノ酸オキシダーゼを生産し、それらの特性を明らかにしておくことが望ましい。発明の開示本発明者らは、アマドリ化合物、特に糖化タンパクに特異的に作用する新規なフルクトシルアミノ酸オキシダーゼを提供することを目的として鋭意研究を重ねた結果、アスペルギルス属(Aspergillus)の菌をフルクトシルリジン及び/又は、フルクトシルNα−Z−リジンの存在下で培養すると、目的の活性を有する酵素が誘導されることを見いだし、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、フルクトシルリジン及びフルクトシルNα−Z−リジンの少なくとも一方を含有する選択培地によって選択的に生育されるアスペルギルス属(Aspergillus)由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ産生能を有する菌の培養物から得られることを特徴とするフルクトシルアミノ酸オキシダーゼを提供するものである。本発明のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ生産菌の培養に用いるフルクトシルリジン及び/又は、フルクトシルNα−Z−リジン含有培地は、グルコースとリジン及び/又はNα−Z−リジンを温度100〜150℃において3〜60分間、オートクレーブ処理することにより得られるフルクトシルリジン及び/又は、フルクトシルNα−Z−リジン(以下、FZLと略称することもある。)を含有する。後述するように、本発明のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼはフルクトシルリジン及びフルクトシルバリンの両者に活性があるが、その活性は同等か、前者よりも後者に対する活性が高いという特徴を有する。なお、本明細書中では、本発明のアスペルギルス属由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼをFAOD、又はFAOD−A、FAOD−Lと称することもある。【図面の簡単な説明】図1は、培養培地でのFAOD−Lの生産量と培養時間との関係を示すグラフである。図2は、FAOD−Aの活性と至適pHの関係を示すグラフである。図3は、FAOD−Lの活性と至適pHの関係を示すグラフである。図4は、FAOD−Aの活性と至適温度の関係を示すグラフである。図5は、FAOD−Lの活性と至適温度との関係を示すグラフである。図6は、スーパーデックス200pgを用いたゲルろ過による、アスペルギルス・テレウスIFO 6365(FERM BP−5756)(Aspergillus terreus)由来の精製FAOD−Aの分子量測定の結果を示すグラフである。図7は、アスペルギルス・テレウスGP1(FERM BP-5684)(Aspergillus terreus GP1)由来の精製FAOD−LのUV吸収スペクトルである。図8は、SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動)における、アスペルギルス・テレウスGP1(FERM BP-5684)(Aspergillus terreus GP1)由来の精製FAOD−Lの泳動パターンを示す写真の模写図。図9は、スーパーデックス200pgを用いたゲルろ過による、アスペルギルス・テレウスGP1(FERM BP-5684)(Aspergillus terreus GP1)由来の精製FAOD−Lの分子量測定の結果を示すグラフである。図10は、糖化ヒト血清アルブミンの濃度とFAOD−Lの作用により生成された過酸化水素量との関係を示すグラフである。図11は、ヒト血清アルブミンの糖化率と、FAOD−Lの作用により生成された過酸化水素量との関係を示すグラフである。図12は、糖化ヘモグロビンの濃度とFAOD−Lの作用により生成された過酸化水素量との関係を示すグラフである。発明を実施するための最良の形態本発明の酵素は、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ生産能を有するアスペルギルス属(Aspergillus)の菌をフルクトシルリジン及び/又はフルクトシルNα−Z−リジン含有培地で培養することにより生産することができる。そのような菌として、アスペルギルス・テレウス(IFO 6365,FERM BP-5756)(Aspergillus terreus)、アスペルギルス・テレウスGP1(FERM BP-5684)(Aspergillus terreus GP1)、アスペルギルス・オリザ(IFO 4242,FERM BP-5757)(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・オリザ(IFO 5710)(Aspergillus oryzae)などの菌を挙げることができる。本発明のFAODの生産に用いるフルクトシルリジン及び/又はFZLは、グルコース0.01〜50重量%とリジン及び/又はNα−Z−リジン0.01〜20重量%とを溶液中で、100〜150℃において3〜60分間オートクレーブ処理する方法で製造される。具体的には、全量1000mlの溶液中にグルコース200g、Nα−Z−リジン10gを溶解させ、通常120℃、20分間オートクレーブ処理することによって製造することができる。また、本発明のFAODの生産に用いるフルクトシルリジン及び/又はFZL含有培地(以下、FZL培地と称する)は、上記の方法で得られたフルクトシルリジン及び/又はFZLを通常の培地に添加するか、例えば、グルコース0.01〜50重量%、リジン及び/又はNα−Z−リジン0.01〜20重量%、K2HPO40.1重量%、NaH2PO40.1重量%、MgSO4・7H2O0.05重量%、CaCl2・2H2O0.01重量%及び酵母エキス0.2重量%を含有する混合物(好ましくはpH5.5−6.0)を100〜150℃において3〜60分間オートクレーブ処理することによって得ることができる。本発明のFAODの生産に用いる培地は、炭素源、窒素源、無機物、その他の栄養源を含有する通常の合成あるいは天然の培地であってよく、炭素源としては、例えば、グルコース、キシロース、グリセリン等、窒素源としては、ペプトン、カゼイン消化物、酵母エキス、等を用いることができる。さらに無機物としてはナトリウム、カリウム、カルシウム、マンガン、マグネシウム、コバルト等、通常の培地に含有されるものを用いることができる。本発明のFAODは、フルクトシルリジン及び/又はFZLを含有する培地で培養したとき、最もよく誘導される。好ましい培地の例として、上記の方法で得られたFZLを単一の窒素源とし、炭素源としてグルコースを用いるFZL培地(1.0%グルコース、0.5%FZL、1.0%K2HPO4、0.1%NaH2PO4、0.05%MgSO4・7H2O、0.01%CaCl2・2H2O及び0.01%ビタミン混合物)を挙げることができる。特に好ましい培地は、全量1,000ml中にグルコース20g(2%)、FZL 10g(1%)、K2HPO41.0g(0.1%)、NaH2PO41.0g(0.1%)、MgSO4・7H20 0.5g(0.05%)、CaCl2・2H2O 0.1g(0.01%)及び酵母エキス2.0g(0.2%)を含有する培地(pH5.5−6.0)である。FZL培地は、通常の培地にFZLを添加するか、グルコースとNα−Z−リジンとを含有する培地をオートクレーブ処理することによって調製することができる。いずれの方法によっても得られる培地はフルクトシルリジン及び/又はFZLの存在によって褐色を呈しており、FZL褐変化培地又はGL(グリケーテッドリジン及び/又はグリケーテッドNα−Z−リジン)褐変化培地と称する。培養は、通常、25〜37℃、好ましくは28℃で行われる。培地のpHは4.0〜8.0の範囲であり、好ましくは5.5〜6.0である。しかしながら、これらの条件はそれぞれの菌の状態に応じて適宜調製されるものであり上記に限定されない。この条件下、20〜100時間、好ましくは80時間培養すると、FAODが培養培地に蓄積される(図1)。このようにして得られた培養物は、常法に従い、核酸、細部壁断片等を除去し、酵素標品を得ることができる。本発明のFAODの酵素活性は菌体中に蓄積されるので、培養物中の菌体を破砕し、酵素生産に用いる。細胞の破砕は、機械的手段又は溶媒を利用した自己消化、凍結、超音波処理、加圧などのいずれでもよい。酵素の分離精製方法も既知であり、硫安などを用いる塩析、エタノール等の有機溶媒による沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィーやゲルろ過、アフィニティークロマトグラフィーなどを組み合わせて精製する。例えば、培養物を、遠心又は吸引ろ過して菌糸体を集め、洗浄後、0.1Mトリス−塩酸(pH8.5)に懸濁し、Dyno-Millによって菌糸体を破砕する。次いで、遠心分離して得た上清を無細胞抽出液として、硫安分画、フェニル−セファロース疎水クロマトグラフィーで処理することにより精製する。しかしながら、本発明の目的から、FAODは、その精製度にかかわらず、アマドリ化合物の酸化反応を触媒することができる限り、培養液をはじめとする、あらゆる精製段階の酵素含有物及び溶液を包含する。また、酵素分子の内、触媒活性に関与する部位のみでも、本発明目的を達成することができることから、任意の、アマドリ化合物酸化活性を有するフラグメントをも包含するものとする。このようにして得られたFAODは、アマドリ化合物の定量、特に糖尿病の診断のための糖化タンパクの定量に有用である。従って、本発明は、遊離又は保護基を有するアミノ酸の糖化物及び/又はタンパクの糖化物を含有する培地で、真菌類を培養することによって該真菌類にフルクトシルアミノ酸オキシダーゼを生産させることを特徴とする、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼの製造方法を提供するものである。さらに、本発明は、アスペルギルス属(Aspergillus)の、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼを生産することができる菌株をフルクトシルリジン及び/又はフルクトシルNα−Z−リジン含有培地で培養し、培養物からフルクトシルアミノ酸オキシダーゼを回収することを特徴とする、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼの生産方法を提供するものである。これらの属の菌株が生産するFAODはいずれも本発明が解決すべき技術的な課題の解決に有用である。本発明のFAOD−L産生菌である、アスペルギルス・テレウスGP1は、本発明者らが土壌中より新規に単離した菌株であり、その菌学的特性は以下の通りである。(1)培地における生育状況Czapek寒天培地、酵母MY培地における生育は、いずれの培地でも非常に良好である。25℃の恒温器で10日間培地するとビロード状、まれに羊毛状にペトリ皿に広がり、集落裏面は無色から褐色を呈する。(2)分類学的性質分離した菌の同定は、微生物をCzapek寒天培地で培養し、分生子、分生子柄や分生子頭などの顕微鏡下の形態観察から行った。分生子頭は長円筒型で褐色から赤褐色である。分生子柄は滑面で無色であり、多少の屈曲が見られ先端は肥大して頂のうとなっている。頂のうは半球形で上半部より無色のメトレを生じている。これらのことから、GP1株はアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)と同定された。本菌株は、茨城県つくば市東1丁目1丁目3号の通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に受託番号FERM BP-5684の下で寄託されている(原寄託日:1996年5月31日;国際寄託への移管日:1996年9月30日)。また、本発明のFAOD−A産生菌であるアスペルギルス・テレウスIFO 6365及びアスペルギルス・オリザIFO 4242は、財団法人発酵研究所(大阪府大阪市淀川区十三本町2丁目17番85号)より分譲されるものであり、上記住所の通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に、それぞれ、受託番号FERM BP-5756及びFERM BP-5757の下で寄託されている(寄託日:1996年11月25日)。なお、アスペルギルス・オリザIFO 5710は、上記住所の財団法人発酵研究所に寄託されて、第三者が請求により何時でも入手可能な状態で30年以上登録され続けられる。以下に本発明のFAODの特性を詳細に説明する。1.一般的な誘導特性本発明のFAOD-Lは、フルクトシルリジン及び/又はFZLによって誘導される誘導酵素であり、フルクトシルリジン及び/又はFZLを窒素源とし、グルコースを炭素源とするフルクトシルリジン及び/又はFZL培地で、例えば、アスペルギルス・テレウス GP1を培養することにより生産される。本発明のFAOD-Aは、フルクトシルリジン及び/又はFZLによって誘導される誘導酵素であり、フルクトシルリジン及び/又はFZLを窒素源とし、グルコースを炭素源とするフルクトシルリジン及び/又はFZL培地で、例えば、アスペルギルス・テレウスIFO 6365又はアスペルギルス・オリザIFO 4242を培養することにより生産される。FAODは、グルコースとリジン及び/又はNα−Z−リジンを共にオートクレーブして得られるGL褐変化培地で誘導されるが、グルコースとリジン及び/又はNα−Z−リジンを別々にオートクレイブ処理して調製した培地では誘導されないことから、該酵素はアマドリ化合物に特異的に作用するものである。以下に本発明のFAODの特性を詳細に説明する。1.一般的な誘導特性本発明のFAODはフルクトシルリジン及び/又はFZLによって誘導される誘導酵素であり、フルクトシルリジン及び/又はFZLを窒素源とし、グルコースを炭素源とするフルクトシルリジン及び/又はFZL培地で、アスペルギルス属(Aspergillus)のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ生産菌を培養することにより生産される。FAODは、グルコースとリジン及び/又はNα−Z−リジンを共にオートクレーブして得られるGL褐変化培地で誘導されるが、グルコースとリジン及び/又はNα−Z−リジンを別々にオートクレイブ処理して調製した培地では誘導されないことから、該酵素はアマドリ化合物に特異的に作用するものである。2.反応特異性及び基質特異性本発明のFAODは、式:R1−CO−CH2−NH−R2 + O2 + H2O→R1−CO−CHO + R2−NH2 + H2O2(式中、R1はアルドース残基、R2はアミノ酸、タンパク質又はペプチド残基を表す)で示される反応における触媒活性を有する。上記の反応式において、R1が−OH、−(CH2)n−又は−[CH(OH)]n−CH2OH(式中、nは0−6の整数)であり、R2が−CHR3−[CONHR3]mCOOH(式中、R3はα−アミノ酸側鎖残基、mは1−480の整数を表す)で示されるアマドリ化合物が基質として好ましい。中でも、R3がリジン、ポリリジン、バリン、アスパラギンなどから選択されるアミノ酸の側鎖残基であり、またnが5〜6、mが55以下である化合物が好ましい。本発明のFAOD生産能力を有する菌株を下記表1に例示する。表1に示されているように、本発明のFAODは、フルクトシルリジンに対する活性がフルクトシルバリンに対する活性と同等か、より高い特徴を有しており、このことは該FAODが糖化タンパクの測定に有用であることを示唆するものである。さらに、A. terreus IFO6365由来のFAOD−Aの各基質に対する活性を以下の表2に示す。表2から、本発明のFAOD−Aはフルクトシルリジン及びフルクトシルバリンに対して活性を有し、又フルクトシルポリリジンにも活性を示すことが分かる。このことは、糖化ヘモグロビンの測定にも有用であることを示唆している。また、A. terreus GP1由来のFAOD−Lの各基質に対する活性を以下の表3に示す。表3から、本発明のFAOD−Lはフルクトシルリジン及びフルクトシルバリンに対して活性を有し、又フルクトシルポリリジンにも活性を示すことが分かる。さらに、糖化タンパクのプロテアーゼ消化物に対する活性も認められており、このことは、糖化ヘモグロビンの測定に有用であることを示唆している。3.力価の測定酵素の力価測定は下記の方法で行った。(1)生成する過酸化水素を比色法により測定する方法。A.速度法100mM FZL溶液はあらかじめ得られたFZLを蒸留水で溶解することによって調製した。45mM 4−アミノアンチピリン、60ユニット/mlパーオキシダーゼ溶液、及び60mM フェノール溶液それぞれ100μlと、0.1Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)1ml、及び酵素溶液50μlを混合し、全量を蒸留水で3.0mlとする。30℃で2分間インキュベートした後、100mM FZL溶液50μlを添加し、505nmにおける吸光度を経時的に測定した。生成するキノン色素の分子吸光係数(5.16×103M-1cm-1)から、1分間に生成する過酸化水素のマイクロモルを算出し、この数字を酵素活性単位(ユニット:U)とする。B.終末法上記A法と同様に処理し、基質添加後、30分間30℃でインキュベートした後の505nmにおける吸光度を測定し、あらかじめ標準過酸化水素溶液を用いて作成した検量線から生成した過酸化水素量を算出することにより、酵素活性を測定する。(2)酵素消費量を測定する方法0.1Mトリス-塩酸緩衝液(pH8.0)1mlと酵素溶液50μlを混合し、蒸留水で全量を3.0mlとし、ランク ブラザーズ社の酸素電極のセルに入れる。30℃で攪拌し、溶存酸素と温度を平衡化した後、50mM FZL 100μlを添加し、酸素消費量を記録計で連続的に計測し、初速度を得る。標準曲線から1分間に消費された酸素量を求め、これを酵素単位とする。4.pH及び温度条件pH条件の検討至適pHは、通常のFAOD活性測定法(上記3.力価の測定法における(1)、A法参照)で使用する緩衝液をpH5〜11の各種緩衝液(0.1Mリン酸カリウム緩衝液(KPB)、トリス−塩酸緩衝液及びグリシン−NaOH緩衝液)に置き換えて酵素反応を行い検討した。また、前記の各種緩衝液にFAODを添加し、30℃で10分間インキュベートした後、通常の条件(30℃、pH8.0)で活性を測定する事によりpHによる安定性を検討した。温度条件の検討至適温度を検討するために、反応温度を20〜60℃まで変化させて酵素活性を測定した。温度安定性については、0.1Mトリス-塩酸緩衝液(pH8.0)に溶解したFAODを20〜60℃の各温度で10分間インキュベートし、その酵素液を用いて通常の条件で残存活性を測定した。上記方法で測定した結果、本発明のFAOD−Aの至適pHは、7.5〜9.0、より好ましくは8.5であり(図2)、安定なpH域は、7.0〜10.0であった。また、FAOD−Lの至適pHは、7.5〜9.0、より好ましくは8.0であり(図3)、安定なpH域は、4.0〜13.0であった。また、FAOD−Aの酵素反応は20〜40℃、より好ましくは35℃で効率よく進行した(図4)。安定な温度領域は20〜40℃であった。FAOD−Lの酵素反応は20〜50℃、より好ましくは25〜40℃、より好ましくは35℃で効率よく進行した(図5)。安定な温度領域は20〜50℃であった。5.既知の酵素との比較既存の菌由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼと、本発明のFAODとを比較した。表4から、本発明のFAODと他の2種の菌株由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼとの間に、以下のような相違点が認められる。すなわち、本発明によって製造し得るFAODは、フルクトシルバリンよりもフルクトシルリジンに対する活性が高いが、コリネバクテリウム属由来の酵素はフルクトシルリジンには作用せず、特開平3-155780号記載のアスペルギルスsp.由来の酵素はフルクトシルリジンに対する活性が、フルクトシルバリンに対する活性に比べて低い。6.FAOD−A及びFAOD−Lの分子量FAOD−A及びFAOD−Lの分子量をスーパーデックス200pgゲルを用いたゲルろ過で調べた。結果を表5に示す。表5から明らかなように、本発明のFAOD−A及びFAOD−Lは分子量が異なっており、異なる酵素であることが分かる。7.酵素の阻害、活性化及び安定化(1)金属の影響0.1Mトリス-塩酸緩衝液(pH8.0)に、各種金属イオンを終濃度1mMとなるように添加し、30℃で5分間インキュベートした後、活性を測定した。結果を下記の表6、7に示す。表6から明らかなように、本発明のFAOD−Aの酵素活性に対し、亜鉛イオン及び水銀イオンが阻害的であり、マンガンイオン及びコバルトイオンも阻害した。表7から明らかなように、本発明のFAOD−Lの酵素活性に対し、銅イオン、亜鉛イオンが阻害的であり、銀イオン及び水銀イオンは完全に阻害した。(2)各種阻害物質の影響上記(1)の金属イオンの影響に関する試験と同様の方法で試験した。ただし、パラクロロ安息香酸第二水銀は終濃度0.1mM、それ以外は1mMとした。結果を表8、9に示す。表8から明らかに、FAOD−A活性はPCMB、DTNB、フェニルヒドラジンにより完全に阻害された。表9から明らかに、FAOD−L活性はPCMB、DTNB、ヒドラジンにより強く阻害された。これより、FAODの酵素反応にはSH基及びカルボニル基が重要な働きをしていることが予想される。このため、FAODの保存に適した緩衝液は1〜2mMのジチオスレイトール含有のpH7.5〜9.0の緩衝液であると考えられる。スーパーデックス200pgによるゲルろ過[カラム:Superdex 200 pg HR16/60;バッファー:0.2Mリン酸カリウム(pH7.0);流速1ml/min;試料:各タンパク0.5mgをサンプルバッファー0.2mlに溶解]では、FAOD−Aは分子量は約50,000(50kDa)と推定された(図6)。また、同様の方法でFAOD−Lのゲルろ過を行ったところ、分子量は約94,000(94kDa)と推定された(図9)。即述のごとく、本発明の酵素FAODは、アマドリ化合物の定量に有用である。従って、本発明は、アマドリ化合物を含有する試料と、本発明のFAODとを接触させ、酸素の消費量又は過酸化水素の発生量を測定することを特徴とする、試料中のアマドリ化合物の分析法を提供するものである。本発明の分析法は、生体成分中の糖化タンパクの量及び/又は糖化率の測定、又はフルクトシルアミンの定量に基づいて行われる。FAODの酵素活性は下記の反応に基づいて測定される。R1−CO−CH2−NH−R2 + O2 + H2O→R1−CO−CHO + R2−NH2 + H2O2(式中、R1はアルドース残基、R2はアミノ酸、タンパク質又はペプチド残基を表す)被検液としては、アマドリ化合物を含有する任意の試料溶液を用いることができ、例えば、血液(全血、血漿又は血清)、尿等の生体由来の試料の外、醤油等の食品が挙げられる。本発明のFAODをアマドリ化合物含有溶液に、適当な緩衝液中で作用させる。反応溶液のpHは、FAOD−AでpH6.0〜10.0、好ましくは8.5、温度は20〜50℃、好ましくは35℃である。また、FAOD−LでpH7.0〜9.0、好ましくは8.5、温度は25〜40℃、好ましくは35℃である。緩衝液としてはトリス-塩酸等を用いる。FAODの使用量は、終点分析法においては通常、0.1ユニット/ml以上、好ましくは1〜100ユニット/mlである。本発明の分析法では、下記のいずれかのアマドリ化合物の定量法を用いる。(1)過酸化水素発生量に基づく方法当該技術分野で既知の過酸化水素の定量法、例えば、発色法、過酸化水素電極を用いる方法等で測定し、過酸化水素及びアマドリ化合物の量に関して作成した標準曲線と比較することにより、試料中のアマドリ化合物を定量する。具体的には、上記3の力価の測定に準じる。ただし、FAOD量は1ユニット/mlとし適当に希釈した試料を添加し、生成する過酸化水素量を測定する。過酸化水素の発色系としては、パーオキシダーゼの存在下で4−アミノアンチピリン、3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン等のカップラーとフェノール等の色原体との酸化縮合により発色する系を用いることができる。色原体として、フェノール誘導体、アニリン誘導体、トルイジン誘導体等があり、例えば、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、2,4−ジクロロフェノール、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン、N−エチル−N−(3−スルホプロピル)−3,5−ジメチルアニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメチルアニリン等が挙げられる。又パーオキシダーゼの存在下で酸化発色を示すロイコ型発色試薬も用いることができ、そのようなロイコ型発色試薬は、当業者に既知であり、o−ジアニシジン、o−トリジン、3,3−ジアミノベンジジン、3,3,5,5−テトラメチルベンジジン、N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4−ビス(ジメチルアミノ)ビフェニルアミン、10−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン等が挙げられる。(2)酸素の消費量に基づく方法反応開始時の酸素量から反応終了時の酸素量を差し引いた値(酸素消費量)を測定し、酸素消費量とアマドリ化合物の量に関して作成した標準曲線と比較することにより、試料中のアマドリ化合物を定量する。具体的には、上記3の力価の測定に準じて行う。ただし、用いるFAOD量は1ユニット/mlとし、適当に希釈した試料を添加し、消費される酸素量を求める。本発明方法は試料溶液をそのまま用いて行うこともできるが、対象となる糖化タンパクによっては、あらかじめ糖が結合したリジン及び/又はバリン残基を遊離させてから行うことが好ましい。そのような目的には、タンパク質分解酵素を用いる場合(酵素法)と、塩酸等の化学物質を用いる場合(化学法)がある。酵素法の場合、本発明方法には当業者に既知である、エンド型及びエキソ型のタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)を用いることができる。エンド型のプロテアーゼには、例えばトリプシン、α−キモトリプシン、ズブチリシン、プロティナーゼK、パパイン、カテプシンB、ブロメライン、ペプシン、サーモリシン、プロテアーゼXIV、リジルエンドペプチダーゼ、プロレザー、ブロメラインF等がある。一方、エキソ型のプロテアーゼにはアミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ等が挙げられる。酵素処理の方法も既知である。上記のごとく、本発明のFAODは、糖化タンパクに含まれるフルクトシルリジンに高い基質特異性を有するものであることから、血液試料中の糖化タンパクを測定することを含む、糖尿病の診断などに有用である。また、フルクトシルバリンにも特異性を有することから、糖化ヘモグロビンの測定にも有用である。なお、検体として血液試料(全血、血漿又は血清)を用いる場合、採血した試料をそのまま、あるいは透析等の処理をした後用いる。さらに、本発明方法に用いるFAOD、パーオキシダーゼ等の酵素は、溶液状態で用いてもよいが、適当な固体支持体に固定化してもよい。例えば、ビーズに固定化した酵素をカラムに充填し、自動化装置に組み込むことにより、臨床検査など、多数の検体の日常的な分析を効率的に行うことができる。しかも、固定化酵素は再使用が可能であることから、経済効率の点でも好ましい。さらには、酵素と発色色素とを適宜組み合わせ、臨床分析のみならず、食品分析にも有用なアマドリ化合物の分析のためのキットを得ることができる。酵素の固定化は当該技術分野で既知の方法により行うことができる。例えば、担体結合法、架橋化法、包括法、複合法等によって行う。担体としては、高分子ゲル、マイクロカプセル、アガロース、アルギン酸、カラギーナン、などがある。結合は共有結合、イオン結合、物理吸着法、生化学的親和力を利用し、当業者既知の方法で行う。固定化酵素を用いる場合、分析はフロー又はバッチ方式のいずれでもよい。上記のごとく、固定化酵素は、血液試料中の糖化タンパクの日常的な分析(臨床検査)に特に有用である。臨床検査が糖尿病診断を目的とする場合、診断の基準としては、結果を糖化タンパク濃度として表すか、試料中の全タンパク質濃度に対する糖化タンパク質の濃度の比率(糖化率)又はフルクトサミン値で表す。全タンパク質濃度は、通常の方法(280nmの吸光度、ブラッドフォード法、Lowry法、ビュレット法、アルブミンの自然蛍光、ヘモグロビンの吸光度など)で測定することができる。本発明はまた、本発明のFAODを含有するアマドリ化合物の分析試薬又はキットを提供するものである。本発明のアマドリ化合物の定量のための試薬は、本発明のFAODと好ましくはpH7.0〜9.0、より好ましくはpH8.0〜8.5の緩衝液からなる。該FAODが固定化されている場合、固体支持体は高分子ゲルなどから選択され、好ましくはアルギン酸である。試薬中のFAODの量は、終点分析を行う場合、試料あたり、通常、1〜100ユニット/ml、緩衝液はトリス-塩酸(pH8.0及び8.5)が好ましい。過酸化水素の生成量に基づいてアマドリ化合物を定量する場合、発色系としては、先述の「(1)過酸化水素発生量に基づく方法」に記載の酸化縮合により発色する系、並びにロイコ型発色試薬等を用いることができる。本発明のアマドリ化合物の分析試薬と、適当な発色剤ならびに比較のための色基準あるいは標準物質を組み合わせてキットとすることもできる。そのようなキットは、予備的な診断、検査に有用であると考えられる。上記の分析試薬及びキットは生体成分中の糖化タンパク量及び/又は糖化率の測定、又は、フルクトシルアミンを定量するために、用いられるものである。以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。実施例1 アスペルギルス・テレウスの培養とFAOD−Aの精製1)培養アスペルギルス・テレウスIFO6365(FERM BP-5756);A.terreus)をFZL 0.5%、グルコース1.0%、リン酸二カリウム0.1%、リン酸一ナトリウム0.1%、硫酸マグネシウム0.05%、塩化カルシウム0.01%、イーストエキス0.2%を含有した培地(pH6.0)7Lに植菌し、ジャーファーメンターを用いて28℃、80時間振とう培養した。培養物は瀘過して集めた。2)粗酵素液の調製菌糸体100g(湿重量)を、2mMのDTTを含む0.1Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)200mlに懸濁し、1/2容のジルコニウムビーズを加え、ビードビーターを用いて1分間破砕、1分氷冷を2回、合計3分間行うことにより菌糸体を破砕した。破砕液を4℃で、9,500rpm,10分間遠心分離し、得られた上清(無細胞抽出液)を粗酵素液として、以下の方法で精製した。3)精製ステップ1:硫安分画粗酵素液に40%飽和になるように硫酸アンモニウム(以下、硫安と略す)を加え、遠心分離(4℃,12,000rpm)して余分なタンパクを除去した。さらに、上清に硫安を80%飽和になるように添加して沈殿を回収した。ステップ2:イオン交換クロマトグラフィーステップ1で得られた沈殿を、2mMのDTTを含有する50mMリン酸緩衝液(以下、緩衝液Aと略す)に溶解し、同緩衝液で一晩透析した後、緩衝液Aで平衡化したDEAE-トヨパール(DEAE-TOYOPEARL)カラムに透析内液を吸着させ、緩衝液Aで洗浄後、0〜0.5M塩化カリウムの直線濃度勾配で溶出した。これを回収して硫安で濃縮してから次のステップに用いた。ステップ3:疎水クロマトグラフィー回収した活性画分をフェニルトヨパールカラム(40%硫安を含む緩衝液Aで平衡化)に用いた。濃縮液を吸着させ、同緩衝液で洗浄した。活性画分は40〜0%硫安の直線勾配で得られた。ステップ4:ゲル濾過最後にスーパーデックス200pg(2mM DTTを含有する20mMリン酸緩衝液(pH7.5)で平衡化)により、ゲルろ過を行った。これにより、約10ユニットの酵素標品を得た。精製酵素の力価の測定は、上記「3.力価の測定」における(1),A法により行った。分子量の測定スーパーデックス200pgによるゲルろ過[カラム:Superdex 200 pg HR16/60];バッファー:0.2Mリン酸カリウム(pH7.0);流速1ml/min;試料:各タンパク0.5mgをサンプルバッファー0.2mlに溶解]では、分子量は約50,000(50kDa)と推定された(図6)。実施例2 アスペルギルス・テレウスGP1の培養とFAOD−L精製1)培養アスペルギルス・テレウスGP1(FERM BP-5684);Aspergillus terreus GP1)をFZL 0.5%、グルコース1.0%、リン酸二カリウム0.1%、リン酸一ナトリウム0.1%、硫酸マグネシウム0.05%、塩化カルシウム0.01%、イーストエキス0.2%を含有した培地(pH6.0)10Lに植菌し、ジャーファーメンターを用いて通気量2L/分、攪拌速度400rpmの条件で28℃、80時間攪拌培養した。培養物は瀘過して集めた。2)粗酵素液の調製菌糸体270g(湿重量)を、2mMのDTTを含む、0.1Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.5)800mlに懸濁し、Dino−Millにより菌糸体を破砕した。破砕液を9,500rpmで20分間遠心分離し、得られた上清(無細胞抽出液)を粗酵素液として、以下の方法で精製した。3)精製ステップ1:硫安分画粗酵素液に40%飽和になるように硫酸アンモニウム(以下、硫安と略す)を加え、遠心分離(4℃,12,000rpm)して余分なタンパクを除去した。さらに、上清に硫安を75%飽和になるように添加して沈殿を回収した。ステップ2:疎水クロマトグラフィー(バッチ法)ステップ1で得られた沈殿を、2mMのDTTを含有する50mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.5)(以下、緩衝液Aと略す)に溶解し、等量の硫安40%を含む緩衝液Aを添加した。同粗酵素液にブチルトヨパール(butyl-TOYOPEARL)樹脂200mlを加えて、バッチ法による吸着を行った。溶出も、緩衝液Aを用いたバッチ法で行い、活性画分は硫安沈殿により濃縮した。ステップ3:疎水クロマトグラフィー25%硫安を含む緩衝液Aで平衡化したフェニルトヨパール(phenyl-TOYOPEARL)カラムに濃縮した活性画分を吸着させ、同緩衝液で洗浄後、25〜0%硫安の直線勾配で溶出した。回収した活性画分は硫安沈殿により濃縮し、次のステップに用いた。ステップ4:疎水クロマトグラフィー(カラム法)回収した活性画分をブチルトヨパールカラム(40%硫安を含む緩衝液Aで平衡化)に用いた。濃縮液を吸着させ、同緩衝液で洗浄した。活性画分は40〜0%硫安の直線勾配で得られた。ステップ5:イオン交換クロマトグラフィー次に、DEAE−トヨパール(DEAE-TOYOPEARL)カラムクロマトグラフィーを行った(緩衝液Aで平衡化)。洗浄画分にFAOD活性が認められたため、これを回収して硫安で濃縮してから、次のステップに用いた。ステップ6:ゲル濾過最後にセファクリル−300によるゲル瀘過をおこなった(0.1M NaCl,2mM DTTを含む0.1Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.5)で平衡化)。これにより、70〜100ユニットの酵素標品を得た。精製酵素のUV吸収スペクトルを図7に示す。図7は、本酵素がフラビン酵素であることを示している。またSDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミド電気泳動)及びスーパーデックス200pgを用いたゲル濾過により得られた精製酵素の標品の分子量の決定を行った。SDS−PAGEは、デービスの方法に従い、10%ゲルを用いて、40mAで3時間泳動し、タンパク染色はクマシーブリリアントブルーG−250でおこなった。標準タンパクとしてホスホリラーゼB、牛血清アルブミン、オボアルブミン、カルボニックアンヒドラーゼ、大豆トリプシンインヒビターを同様に泳動して分子量マーカーを作成した。その結果、精製酵素のサブユニット分子量は約48,000(48kDa)であった(図8)。一方、ゲルろ過は0.1M NaCl含有0.1Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.5)を用いて行った結果、図9に示すように、約94,000(94kDa)であった。実施例3 糖化ヒト血清アルブミン濃度の測定糖化ヒト血清アルブミン(シグマ社)を0.9%塩化ナトリウム水溶液で溶解させ、0〜10%の範囲で濃度の異なる糖化ヒト血清アルブミン溶液を調製した。これらの溶液を用いて以下の操作を行った。1)プロテアーゼ処理糖化アルブミン溶液 60μl12.5mg/ml プロテアーゼXIV(シグマ社)溶液 60μlこの混合液を37℃で30分間インキュベートし、その後、約90℃で5分間、加熱して反応を停止させた。2)活性測定FAOD反応液は以下のようにして調製した。45mM 4−アミノアンチピリン溶液 30μl60mM N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジン溶液 30μl60ユニット/ml パーオキシダーゼ溶液 30μl0.1M トリス−塩酸緩衝液(pH8.0) 300μl6ユニット/ml FAOD−L溶液 50μl蒸留水で全量を1mlとした。6ユニット/ml FAOD−L溶液は、実施例2の方法で得たFAOD−Lを6ユニット/mlになるよう、0.1Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で希釈して調製した。FAOD反応液を30℃で2分間インキュベートした後、上記の各プロテアーゼ処理溶液を100μl加え、30分後の555nmにおける吸光度を測定した。この方法で得られる糖化アルブミンの濃度と吸光度との関係を図10に示す。図中の縦軸は555nmの吸光度(過酸化水素の量に対応)、横軸は糖化アルブミンの濃度を表す。図は、糖化アルブミンの濃度と過酸化水素発生量が相関関係にあることを示している。実施例4 ヒト血清アルブミンの糖化率の測定0.9%塩化ナトリウム水溶液3mlに、糖化ヒト血清アルブミン(シグマ社)150mg、ヒト血清アルブミン(シグマ社)150mgをそれぞれ溶解した。これらの溶液を混合することにより、糖化率の異なる溶液を作製し、自動グリコアルブミン測定装置(京都第一科学)を用いて検定したところ、その糖化率は、24.6%〜61.1%であった。これらの溶液を用いて以下の操作を行った。1)プロテアーゼ処理糖化アルブミン溶液 60μl12.5mg/ml プロテアーゼXIV(シグマ社)溶液 60μlこの溶液を37℃で30分間インキュベートし、その後、約90℃で5分間加熱して反応を停止させた。2)活性測定FAOD反応液は以下のようにして調製した。45mM 4−アミノアンチピリン溶液 30μl60mM N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジン溶液 30μl60ユニット/ml パーオキシダーゼ溶液 30μl0.1M トリス−塩酸緩衝液(pH8.0) 300μl6ユニット/ml FAOD−L溶液 50μl蒸留水で全量を1mlとした。6ユニット/ml FAOD−L溶液は、実施例2の方法で得たFAOD−Lを6ユニット/mlになるよう、0.1Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で希釈して調製した。FAOD反応液を30℃で2分間インキュベートした後、上記の各プロテアーゼ処理溶液を100μl加え、30分後の555nmにおける吸光度を測定した。この方法で得られるアルブミンの糖化率と吸光度との関係を図11に示す。図中の縦軸は555nmの吸光度(過酸化水素の量に対応)、横軸はアルブミンの糖化率を表す。図は、アルブミンの糖化率と過酸化水素発生量が相関関係にあることを示している。実施例5 糖化ヘモグロビン濃度の測定グリコヘモグロビンコントロール(シグマ社)を蒸留水で溶解させ、0〜30%の範囲で濃度の異なる糖化ヘモグロビン溶液を調製した。これらの溶液を用いて以下の操作を行った。1)プロテアーゼ処理糖化ヘモグロビン溶液 25μl500ユニット/ml アミノペプチダーゼ溶液5μl0.1M トリス−塩酸緩衝液(pH8.0) 20μlこの混合液を30℃で30分間インキュベートした。その後、10%トリクロロ酢酸を50μl加えて撹拌し、0℃で30分間静置した後12000rpmで10分間遠心分離を行った。得られた上清に2M NaOHを約50μl加え中性溶液にした。2)活性測定FAOD反応液は以下のようにして調製した。3mM N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4−ビス(ジメチルアミノ)ビフェニルアミン溶液 30μl60ユニット/ml パーオキシダーゼ溶液 30μl0.1M トリス−塩酸緩衝液(pH8.0) 300μl4ユニット/ml FAOD−L溶液 10μl蒸留水で全量を1mlとした。4ユニット/ml FAOD−L溶液は、実施例2の方法で得たFAOD−Lを4ユニット/mlになるよう、0.1Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で希釈して調製した。FAOD反応液を30℃で2分間インキュベートした後、上記の各プロテアーゼ処理溶液を80μl加え、30分後の727nmにおける吸光度を測定した。この方法で得られる糖化ヘモグロビンの濃度と吸光度との関係を図12に示す。図中の縦軸は727nmの吸光度(過酸化水素の量に対応)、横軸は糖化ヘモグロビンの濃度を表す。図は、糖化ヘモグロビンの濃度と過酸化水素発生量が相関関係にあることを示している。産業上の有用性本発明のFAODは、従来の同種の酵素フルクトシルアミノ酸オキシダーゼと異なり、フルクトシルリジン及びフルクトシルバリンのいずれにも特異的に作用し、また、前者に対する特異性がより高い。従って、新たな臨床分析及び食品分析法の開発に有用であり、糖尿病の診断や食品の品質管理の面で寄与するところが大きい。特に、血中の糖化タンパク量及び/又は糖化率あるいはフルクトシルアミン量を指標として、糖尿病の病状の診断に役立つと考えられる。また、本発明のFAODを用いるアマドリ化合物の分析試薬及び分析方法によって、正確に糖化タンパクを定量することができ、糖尿病の診断、症状管理に貢献することができる。 アスペルギルス属(Aspergillus)の菌を培養することにより産生されるフルクトシルアミノ酸オキシダーゼであって、下記の理化学的特性を有する、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ:1)酸素の存在下でアマドリ化合物を酸化し、α−ケトアルデヒド、アミン誘導体および過酸化水素を生成する反応を触媒し;2)至適pHは8.5であり;3)至適温度は35℃であり;4)スーパーデックス200pgを用いたゲルろ過法で測定した場合、分子量は約50,000(50kDa)であり、5)フルクトシルリジンおよびフルクトシルバリンに対して活性であり、フルクトシルリジンに対する活性がフルクトシルバリンに対する活性より高い。 アスペルギルス属(Aspergillus)の菌を培養することにより産生されるフルクトシルアミノ酸オキシダーゼであって、下記の理化学的特性を有する、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ:1)酸素の存在下でアマドリ化合物を酸化し、α−ケトアルデヒド、アミン誘導体および過酸化水素を生成する反応を触媒し;2)至適pHは8.0であり;3)至適温度は35℃であり;4)スーパーデックス200pgを用いたゲルろ過法で測定した場合、分子量は約94,000(94kDa)であり、5)フルクトシルリジンおよびフルクトシルバリンに対して活性であり、フルクトシルリジンに対する活性がフルクトシルバリンに対する活性より高い。 フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ生産能を有するアスペルギルス属(Aspergillus)に属する菌をフルクトシルリジン及びフルクトシルNα−Z−リジンの少なくとも一方を含有する培地で培養し、その培養物からフルクトシルアミノ酸オキシダーゼを入手することを特徴とする、請求項1又は2記載のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼの製造方法。 アマドリ化合物を含有する試料と、請求項1又は2に記載のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼを接触させ、酸素の消費量又は過酸化水素の発生量を測定することを特徴とする、試料中のアマドリ化合物の分析法。 試料が生体成分であり、アマドリ化合物の分析が該生体成分中の糖化タンパクの量及び/又は糖化率の測定、あるいはフルクトシルアミンの定量によってなされることを特徴とする請求項4記載の方法。 請求項1又は2に記載のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼを含有するアマドリ化合物の分析試薬又はキット。 生体成分中の糖化タンパクの量及び/又は糖化率の測定、あるいはフルクトシルアミンの定量に用いられることを特徴とする請求項6記載の分析試薬又はキット。


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