タイトル: | 特許公報(B2)_2価フェノールのジカルボキシル化方法 |
出願番号: | 1997517788 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07C 65/05,C07C 51/15 |
シッケマ,デツェ,ヤコブ レイチウェイン,アドリアヌス,マリア JP 4271259 特許公報(B2) 20090306 1997517788 19961021 2価フェノールのジカルボキシル化方法 マゲラン システムズ インターナショナル,エルエルシー 508300976 松井 光夫 100085545 シッケマ,デツェ,ヤコブ レイチウェイン,アドリアヌス,マリア NL 1001628 19951110 20090603 C07C 65/05 20060101AFI20090514BHJP C07C 51/15 20060101ALI20090514BHJP JPC07C65/05C07C51/15 C07C 65/05 C07C 51/15 特開昭48−096553(JP,A) 特公昭45−000332(JP,B1) 特公昭46−025729(JP,B1) 特公昭46−025374(JP,B1) 9 EP1996004611 19961021 WO1997017315 19970515 1999515031 19991221 7 20031015 山田 泰之 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、2価フェノールのジカルボキシル化方法に関する。より特には、本発明は、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸(2,5-DHTA)の製造方法に関する。【0002】【従来の技術】アルカリフェノラートと二酸化炭素を強アルカリ媒体(例えばKOH)中で反応させることによる、フェノールのカルボキシル化は、コルベ−シュミット反応の名前で知られている。例えば、とりわけ欧州特許第298 289号、欧州特許第370 389号および欧州特許第548 906号。しかしながら、ジヒドロキシテレフタル酸(ヒドロキノンのジカルボキシル化生成物)の製造は、この反応によって、低い転化率および低い収率でのみ行われ得る。【0003】例えば英国特許第1,108,023号は、中性溶媒中でコルベ−シュミット反応により、2,5-DHTAを製造する方法を開示する。試薬は、塩基例えば炭酸カリウムおよび二酸化炭素を含む。この方法は、約65%から90%を超える収率を与えるが、非常に高圧を必要とするという主な欠点を有する(この反応は、オートクレーブ中で、約80〜約110気圧で起こる)。【0004】フェノールをカルボキシル化するためのよく知られている他の方法はまた、例えば異議の余地のある程の高圧、長い反応時間、低い収率または、それらがいかなる場合にもジカルボキシル化に適しているわけではないことといった欠点を伴う。【0005】例えばケミカル レビューズ、第57巻(1957年)、第585頁から、2価および3価フェノールをアルカリ(水)溶液中でカルボキシル化することが知られている。これは、大気圧で、常に二酸化炭素を通しながら、例えば重炭酸アルカリの溶液を使用する方法である。より反応性の2価および3価フェノール、例えばレゾルシノールについてのみ適当であると記載されているこの方法は、モノカルボキシル化を生ずる。本発明は、水酸基が互いにパラ位またはオルト位にある2価フェノールの場合(そのフェノールは、より反応性のフェノールの群に属さず、レゾルシノールより反応性がはるかに低い)にまた使用できるところのジカルボキシル化方法に関する。【0006】副次的に、レゾルシノールをジカルボキシル化する方法は、インディアン ジャーナル オブ ケミストリー、第12巻、1974年9月、第946−947頁から公知である。レゾルシノールと乾燥重炭酸カリウムとを高められた温度(210℃)で反応させることによって、対応する4,6-ジカルボン酸が形成される。カリウス管(Carius tube)(1x2.5cmの封管)中で、分析の規模でのみの、反応が行われる手順は、それが規模拡大には適していない、ましていかなる遠く離れて工業的に受け入れられる規模における使用も適していないこと、これは、得られた反応生成物が岩のような堅い塊の形であるという事実からみてもまた、適していないことを示す。【0007】特開平3−218919号公報は、フェノールをモノカルボキシル化することによるヒドロキシ安息香酸の製造方法に関し、この方法においては、ナトリウムフェノラート、炭酸ナトリウム、二酸化炭素およびギ酸ナトリウムがオートクレーブ中で化合され、全体を、75バールの圧力下にて、260℃で13時間反応させておく。【0008】特開昭46−25729号公報は、サリチル酸またはp−ヒドロキシ安息香酸をジカルボキシル化することによるヒドロキシトリメシル酸(hydroxytrimesylic acid)の製造方法に関し、この方法においては、上記した酸のうちの1つの二ナトリウム塩または二カリウム塩が、アルカリカーボネートおよびギ酸ナトリウムまたはギ酸カリウムの存在中で、ギ酸の融点より上の温度で、一般に50〜250バールに達する圧力下にて、二酸化炭素と反応される。まれに、わずか2バールの圧力が使用されることは真実であるが、その場合には、必要とされる反応時間は40時間を超え、収率は60%に過ぎない。【0009】特開昭46−25374号公報から、第2のカルボキシル基をm-ヒドロキシ安息香酸に加えることが知られており、これは、対応するカリウム塩を、ギ酸カリウムの存在中で、炭酸カリウムおよび二酸化炭素と反応させることによる。このようにして、50気圧までの圧力下で、かつ24時間を超える時間の反応によって、モノヒドロキシテレフタル酸が製造される。【0010】英国特許第1,155,776号は、一酸化炭素およびアルカリカーボネートを用いた種々の芳香族アルコールのカルボキシル化を扱う。この反応は、収率が低く、条件が経済的でない。例えば、ヒドロキノンが、54バールの圧力下でカルボキシル化され、5.5gのヒドロキノンから0.3gの2,5−ジヒドロキシテレフタル酸が形成される。この反応の所望の生成物への選択性は低く、反応生成物のはるかに最大の部分(4.5g)は、モノカルボン酸である2,5−ジヒドロキシ安息香酸によって形作られている。匹敵する公報は、特開平7−10933号(JA 7010933)である。【0011】米国特許第3,646,131号明細書から、モノカルボン酸例えばギ酸を、アルカリカーボネートおよび一酸化炭素と反応させることによって、ジカルボン酸例えばシュウ酸に転化することが知られている。この公報は、フェノールのジカルボキシル化を扱わない。【0012】米国特許第3,655,744号明細書は、一酸化炭素および、炭酸の金属塩例えば炭酸カリウムからなるカルボキシル化剤を用いた、金属アリールオキシドのカルボキシル化を記載する。【0013】別の背景技術の参照は、米国特許第2,816,137号明細書である。この文献は、出発化合物としてフェノールよりむしろヒドロキシ芳香族カルボン酸エステルを使用することに帰する、コルベ合成からの偏向を開示する。【0014】【発明が解決しようとする課題】2,5-DHTAを製造するのが望ましく、これは、国際特許出願WO94/25506号に記載されているように、堅い棒状ポリマー(rodpolymer)のためのモノマーであり、経済的に有利な方法での種々の着色剤および蛍光物質のための出発物質であり、またできるだけ少しの排気物質しか製造されない。したがって本発明は、2,5-DHTAおよび、パラまたはオルトの2価フェノールの他のジカルボキシル化生成物を、好ましい条件下で、特に高すぎない圧力、もしくは大気圧で、比較的短い反応時間で製造し、所望の生成物が、高い選択性で、かつ高い収量で得られる方法を提供することを目的とする。【0015】【課題を解決するための手段】驚くべきことに、2価フェノール(水酸基が互いにパラ位またはオルト位にあるものを含む)は、2価フェノールをアルカリ金属カーボネートの存在中で二酸化炭素と接触させることを含み、反応が、ギ酸カリウムの存在中で、ギ酸カリウムの融点より上の温度〜225℃の温度でかつ大気圧〜19.8バールの圧力下で行われるところの方法を用いて、ジカルボキシル化することができることを見出した。【0016】【発明の効果】この反応は、非常に好ましい条件下で行うことができて、よい選択率および高収率を与えることができる。さらに、この反応は、工業的規模での使用に適している。【0017】【発明の実施の形態】溶融したギ酸塩は、反応に本質的に好ましい効果を有することが見出され、このことはおそらく、それがとりわけ強い極性溶媒として機能し得るためである。これに関連して、使用されるギ酸のアルカリ金属塩はギ酸カリウムであるのが好ましい。というのは、ギ酸カリウムは比較的低い融点(167℃)を有し、反応を好ましい温度(約160℃から−反応混合物の融点は純粋なギ酸塩に関して低くなる)で行うことを可能にするからである。よく知られたコルベ−シュミット反応および他のよくあるカルボキシル化反応と比べて、本発明は、重要な利点、例えばより低い操作圧力、より高い収率および/またはより短い反応時間を提供する。さらに、この反応は、水の存在について比較的低い感度を示し、その結果、例えばフェノール性の塩よりむしろフェノール自体から出発することができる。【0018】フェノール性塩が空気に対して非常に敏感であることを考慮すると、これは利点である。【0019】本発明の方法におけるさらに重要な試薬は、二酸化炭素およびカーボネート(炭酸塩)である。二酸化炭素およびアルカリ金属カーボネートを別々に加える代わりに、アルカリ金属重炭酸塩(MHCO3)が、その場でアルカリ金属カーボネート(M2CO3)およびCO2に分解するので、非常に適当に使用され得る。反応がこのやり方で行われるなら、約5〜15バールの操作圧力を使用するのが好ましい。さもなければ、重炭酸塩の形で導入されたCO2の一部が漏れるからである。それは次に、別に集められて、なお反応器にポンプで送られなければならない。しかし好ましくは、二酸化炭素およびカーボネートは別々に使用される。というのは、これは、最大で1〜2バールの圧力で反応を行うことを可能にし、大気圧下で操作することがまた可能であるからである。【0020】二酸化炭素とカーボネートが別々に使用される実施態様および二酸化炭素と塩基がアルカリ金属重炭酸塩の形で使用される実施態様の両方において、反応の改善された進行およびより低いカリウム塩の融点のために、カーボネートとして炭酸カリウムまたは重炭酸カリウムを使用するのが好ましい。【0021】本発明に従いカルボキシル化され得る2価フェノールは、水酸基が互いにメタ位にある、より反応性の2価フェノールだけでなく、特に、水酸基が互いにパラ位またはオルト位にあるものである。これらは、ヒドロキノン(p-ジヒドロキシベンゼン)(これから、本発明に従い、2,5-DHTAが製造される)、ピロカテコール(o-ジヒドロキシベンゼン)(これから2,3-DHTAが製造される)、および類似の多核芳香族2価フェノール(これから、対応する多核芳香族ジヒドロキシジカルボン酸が製造され得る)を含む。【0022】先に記載したように、本発明の方法は、特に2,5-ジヒドロキシテレフタル酸の製造に関する。この方法においては、2価フェノールとしてヒドロキノンが使用され、得られるジアルカリ金属塩は公知のやり方で作られる。反応は好ましくは、ヒドロキノンを、任意的に重炭酸カリウムの形で、炭酸カリウムおよび二酸化炭素と接触させ、反応はギ酸カリウムの存在中で、160℃より上の温度、好ましくは175〜225℃で行われることを含む。2,5-DHTAの得られる二カリウム塩は、最大で数時間(3〜4時間)で、定量的収率で形成される。ジカリウム塩を対応するジカルボン酸に作り上げるのが望ましいなら、1つの適した方法は、反応の終局に、加えられた水からの結晶化を含む。この方法では、ギ酸カリウムは、濾液の溶液中に残り、容易に煮詰められた後、再利用され得る。【0023】2,5-DHTAの製造において、ヒドロキノン1g当たり1〜20g、好ましくは2〜6gのギ酸カリウムを使用するのが好ましい。2価フェノール1モル当たり、好ましくは2〜5モル、より好ましくは2〜3モルのアルカリ金属重炭酸塩を使用し、あるいはアルカリ金属カーボネート1〜1.5モルおよび二酸化炭素1〜1.5モルの形で使用する。それに関する限り、二酸化炭素の量は限定され得ない。【0024】以下の限定的でない実施例によって、本発明を説明する。【0025】【実施例1】300mlのオートクレーブ(ステンレス鋼、タービン攪拌器付き、バッフルなし)中で、22.22gのヒドロキノン、次いで86.55gのp-キシレンを、47.55gのKHCO3、62.10gのHCOOKおよび1.97gのK2CO3と化合させた。空気を窒素で置き換え、6.0バールの窒素ブランケット下で、加熱および攪拌を開始した。40分後、137℃の温度で、温度がさらに増加する前に、反応器の内容は10分間かけて溶融し、10分後、温度は204℃に達し、反応混合物を198℃で3時間攪拌した(Tmax211℃、7分間で、3時間期間へ、198℃へ落ち着く前;Pmax19.8バール)。73℃に冷却した後、100mlの水および0.59gの亜硫酸ナトリウムの混合物を、反応器を開ける前に加えた:反応塊は、キシレン層の下に凍結した溶融物(攪拌装置の高さ以上で、くだいて塊にした)からなっていたことに注意すべきである。反応器を再び閉め、129℃に加熱し、そして室温に冷却した。リッチスラリーを集めた。反応混合物の分析(キャピラリーゾーン電気泳動)は、反応混合物のDHTAK2への転化率は95%を超え、残余はジヒドロキシ安息香酸のカリウム塩であることを示した。【0026】【実施例2】U形攪拌器および熱電対を備えたガラス反応器に、ヒドロキノン(22.33g、0.20モル)、炭酸カリウム(31.36g、0.23モル)及びギ酸カリウム(45.54g)の混合物を入れ、3回フラッシュした(真空/CO2)。反応混合物を200℃に、1.2バールのCO2下で4時間加熱した。うす黄色のパン生地のような生成物を、0.5%のNa2SO3を含む沸騰水1リットルに溶かし、濃塩酸で沈殿させた。明るい黄色の生成物、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸(2,5-DHTA)を濾別し、そして50℃にて減圧下で乾燥した。収量は44.14g(0.20モル、100%)であった。【0027】【実施例3】底に出口を有し、らせん形の攪拌器と熱電対を備えたガラス反応器中で、ギ酸カリウム(329g)を減圧下で溶融させた。溶融物の温度が190℃に達したら、反応器を、CO2で曝気し、炭酸カリウム(125.04g、0.906モル)およびヒドロキノン(80.06g、0.728モル)を溶融物に加えた。反応混合物を200℃にて1.5バールCO2下で4.5時間攪拌した。水250mlを反応混合物に加え、反応器からスラリーを除き、沸騰水3.5リットルから結晶化させた。冷却後、生成物を濾別し、氷水で洗浄した。減圧下で100℃にて乾燥すると、87%のうす黄色のジカリウム2,5-ジヒドロキシテレフタレート(K2-2,5-DHTA、173.77g、0.634モル)が生成した。濾液を煮詰め、残渣を、炭酸カリウム(95.90g、0.695モル)およびヒドロキノン(75.06g、0.682モル)を用いたカルボキシル化反応で再使用した。上記の詳細に従い、98%のうす黄色のK2-2,5-DHTA(184.31g、0.673モル)が得られた。上記の詳細に従う、炭酸カリウム(94.14g、0.682モル)およびヒドロキノン(75.16g、0.683モル)を用いたこのリサイクル過程の反復により、95%ののうす黄色のK2-2,5-DHTA(178.65g、0.652モル)が生成した。【0028】【実施例4】U形攪拌器および熱電対を備えたガラス反応器に、レゾルシノール(25.06g、0.228モル)、炭酸カリウム(39.55g、0.287モル)及びギ酸カリウム(50.73g)の混合物を入れ、3回フラッシュした(真空/CO2)。反応混合物を200℃に、1バールのCO2下で5.5時間加熱した。うす赤色のパン生地のような生成物を、0.5%のNa2SO3を含む沸騰水1リットルに溶かし、濃塩酸で沈殿させた。生成物、4,6-ジヒドロキシイソフタル酸(4,6-DHIA)を濾別し、そして50℃にて減圧下で乾燥した。収量は37.52g(0.189モル、83%)であった。 2価フェノールをジカルボキシル化する方法であって、アルカリ金属カーボネートの存在中で、フェノールを二酸化炭素と接触させることを含む方法において、ギ酸カリウムの存在中で、ギ酸カリウムの融点より上の温度〜225℃の温度でかつ大気圧〜19.8バールの圧力下で反応を行うことを特徴とする方法。 二酸化炭素およびカーボネートを、アルカリ金属重炭酸塩の形で使用する請求項1記載の方法。 2価フェノール1モル当たり2〜5モルの重炭酸塩を使用する請求項2記載の方法。 二酸化炭素およびカーボネートを別々に使用する請求項1記載の方法。 2価フェノール1モル当たり1.0〜1.5モルのカーボネートおよび1.0〜1.5モルの二酸化炭素を使用する請求項4記載の方法。 使用するカーボネートが炭酸カリウムである請求項4または5記載の方法。 水酸基が互いにパラ位もしくはオルト位にあるフェノールを使用する請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。 ヒドロキノンを炭酸カリウムおよび二酸化炭素と接触させる、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸の製造方法において、ギ酸カリウムの存在中で、ギ酸カリウムの融点より上の温度〜225℃の温度でかつ大気圧〜19.8バールの圧力下で反応を行うことを特徴とする方法。 ギ酸カリウムがヒドロキノン1g当たり1〜20g使用される請求項8記載の方法。