タイトル: | 特許公報(B2)_トロンビンの製造法 |
出願番号: | 1997506095 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C12N 9/74 |
オーツ,エイドリアン マルコム クプッチク,マルゴーツァタ カーネロス,ジェリー JP 3810439 特許公報(B2) 20060602 1997506095 19960722 トロンビンの製造法 シーエスエル、リミテッド 佐藤 一雄 小野寺 捷洋 中村 行孝 オーツ,エイドリアン マルコム クプッチク,マルゴーツァタ カーネロス,ジェリー AU PN4369 19950724 20060816 C12N 9/74 20060101AFI20060727BHJP JPC12N9/74 C12N 9/74 特開平05−186369(JP,A) 特開平07−308190(JP,A) 8 AU1996000457 19960722 WO1997004081 19970206 1999509101 19990817 10 20030520 深草 亜子 発明の分野本発明は、プロトロンビンの活性化によるトロンビンの製造に関するものである。本発明により製造されたトロンビンは、フィブリングルーキットに、それ独自で人間の治療用に局所的薬剤として、または診断試薬として使用することができる。発明の背景トロンビンは凝固因子プロトロンビンの活性形態を代表するセリンプロテアーゼである。その最も研究されている役割はその、可溶性のフィブリノーゲンを不溶性のフィブリン凝塊に転化させ、それによって損傷した血管から出る血液の流れを食い止める能力である。またトロンビンは、第XIII因子を開裂させ、形成されたフィブリン凝塊をさらに安定化させるのに役立つ第XIIIa因子に活性化する(Furie, 1991)。プロトロンビンのトロンビンへの転化は、多くの異なった方法で行なうことができる。凝固に関する古典的な説明によれば、共因子である第Va因子、ホスホリピドおよび塩化カルシウムの存在下でプロトロンビンが凝固因子Xaによりトロンビンに転化される(Esmon, 1974)。様々な蛇毒もプロトロンビンを開裂させてトロンビンを形成させるが、その例は、タイパン蛇Oxyuranus scutellus(OwenおよびJackson, 1973)、タイガー蛇Notechis scutatus(JobinおよびEsnouf, 1966)および鋸鱗蛇Echis Cannatus(Franza, 1975)である。しかし、これらのどれも臨床用途向けのトロンビンの商業的製造には使用されていない。古典的なプロトロンビン活性化に必要な第Xa因子は、多くの方法で発生させることができる。凝固の内因経路(Intrinsic Pathway of Coagulation)は、共因子である第VIIIa因子、ホスホリピドおよび塩化カルシウムの存在下で第IXa因子と共に培養すると、第X因子が第Xa因子に転化されることを示唆している。凝固の外因経路(Extrinsic Pathway of Coagulation)は、塩化カルシウムの存在下で組織因子(トロンボプラスチンを含む)を第VII因子に露出させることにより開始される。これによって第VII因子が第VIIa因子へ活性化され、次いでその第VIIa因子が第X因子を第Xa因子に転化する。次いで両形態の第Xa因子が上記の様にプロトロンビンを活性化させる(Furie, 1991)。第Xa因子を発生させるための内因経路の特徴を利用するトロンビンの商業的製造に関する報告は無いが、十分な第Xa因子を発生し、続いてプロトロンビンを含む出発物質にトロンボプラスチンを加えることによりプロトロンビンを活性化させるための外因経路を利用する多くの報告がある(Green Cross Corporationの名前による日本国特許公開第63290829号および第2019400号各公報、およびBaxter International Inc.の名前によるヨーロッパ特許公開第443724号明細書参照)。第Xa因子は、塩化カルシウムの存在下で第X因子をRussell's Viper毒(RVV)で培養しても形成すさせことができる(Kisiel, 1976)。この方法は、診断試薬としてのトロンビンの製造に商業的に使用されている(Bio-Products Laboratories)。しかし、最終製品中に可溶性RVVが存在しないことを立証する必要性があるので、治療薬として登録することは困難である。トロンビンの粗製剤は本出願人により、プロトロンビン複合体濃縮物(PCC)製造法からのトロンボゲン性廃棄画分を使用して製造されているが、そこでは、塩化カルシウムの存在下で出発物質を人間の胎盤に由来するトロンボプラスチンで培養することにより、プロトロンビンをトロンビンに転化させている。この方法の限界は、胎盤性トロンボプラスチンの品質管理である。これは、診断用製品としては、その様な問題は生じていないが、臨床用の登録には厳格な安全性が必要とされるので、実際に導入されていない。トロンビンの商業的製造には、治療薬としても、診断用途にも特別な価値がある。特に、トロンビンは凝固の促進に、局所的薬剤(液体または粉末形態で)として使用するか、または外傷保護材料の中に取り入れることができる。さらに、トロンビンはフィブリングルーキットの成分として使用でき、そこでは、使用の際、トロンビンとフィブリノーゲン/第XIII因子とを組み合わせ、切開術および他の新しい外傷に適用し、特に繊細な組織に対する外科手術の際に、縫合の代わりに使用することができる。本発明に至る研究において、本発明者は、人間または他の種類のトロンボプラスチンの使用を必要としない、プロトロンビンをトロンビンへ活性化させる方法を開発した。その上、本発明の方法は、Middletonら,1973により公開された方法により製造されるプロトロンビン完全濃縮物(PCC)から生じる、通常は廃棄されている画分を使用するのが特徴である。その結果、本発明は、商業的規模で経済的に製造することができるトロンビン製品を提供する。発明の概要本発明により、プロトロンビン含有物質からトロンビンを製造する方法であって、プロトロンビン含有物質が、以下に記載する活性化プロトロンビン複合体濃縮物(ActPPC)画分であり、該ActPPC画分を2価の陽イオンと接触させ、該画分中のプロトロンビンをトロンビンに転化させることを特徴とする方法が提供される。前に記載した様に、本発明によりActPPC画分からトロンビンを製造する場合、トロンボプラスチンの存在は必要無いことが分かった。本発明によりプロトロンビン含有出発物質として使用する「ActPPC画分」は、Cohn画分I上澄み液から得られる結合したタンパク質をDEAE−セルロース樹脂から溶離させることによりプロトロンビン複合体濃縮物(PCC)を製造する際に製造される上向きまたはピーク前(ascending or pre-peak)物質中のトロンボゲン性画分の少なくとも一部を含んでなる。ActPPC画分およびその製造に関しては、下記の詳細な説明および例で、さらに詳細に説明する。本発明はさらに、上に一般的に記載した方法により製造されるトロンビン、ならびにその治療用および診断用の製剤にも及んでいる。さらに、本発明は、本発明の方法により製造されるトロンビンを含んでなるフィブリングルーキットにも及ぶ。好ましくは、本発明の方法で使用する2価の陽イオンは、Ca2+イオンであり、ActPPC画分の活性化にはCaCl2を使用するのが有利である。別の好ましい態様では、本発明によるトロンビン製造に最適なCa2+イオンの濃度は、25〜50mM、より好ましくは35〜50mM、最も好ましくは約40mM、の濃度である。さらに、トロンビンの製造は4℃〜37℃の温度範囲で実行することができるが、最適温度はCa2+濃度によりかなり変化する。特に、最適な、したがって好ましい温度範囲は22℃〜25℃である。本発明の特に好ましい実施態様では、ActPPC画分は40±5mMのCaCl2で22〜25℃で4〜5時間処理される。無論、本発明によりプロトロンビンをトロンビンに転化させる処理の後、この分野では良く知られている方法によりトロンビンを回収および精製して、例えば純粋トロンビン>90%の、商業用濃縮物を製造する。好ましくは、その他の処理工程としては、ウイルスを含まないトロンビン濃縮物を製造するための、ウイルスの不活性化工程、例えば溶剤/洗剤処理(例えば製品を0.3%TNBP/1%Tween 80で、24〜26℃で8〜12時間培養することにより)がある。次いでウイルスを不活性化した製品をさらに処理し、クロマトグラフィーにより、例えばヘパリン−アガロース(例えばHeparin-Sepharose)を使用し、pH領域6〜8(好ましくはpH7.5)でNaClにより、好ましくは350mMを超えるNaCl濃度で、トロンビンを溶離させることにより、トロンビンを回収する。本明細書を通して、他に指示がない限り、「含んでなる(comprise)」の用語、またはその変形(comprisesまたはcomprisinggは、記載された事項または事項群を含むが、他の事項または事項群を排除しないことを意味する。発明の詳細な説明本発明の好ましい態様によるトロンビン製造法全体の概要を表1に示す。一般的に、この好ましい方法では、本来Middleton et al, 1973により開示された方法により、プロトロンビン複合体濃縮物(PCC)が製造される。希釈したCohn画分Iの上澄み液をバッチ様式でDEAEセルロース樹脂と混合し、遠心分離し、樹脂をクロマトグラフィーカラム中に移す。結合していないタンパク質を樹脂から洗い流し、結合したタンパク質(プロトロンビンを含む)を高塩緩衝液で溶離させる。カラムから溶離するタンパク質を屈折率監視により追跡し、上向きピーク物質を、本発明によるプロトロンビン活性化用の出発物質として集める。これらの画分(ActPCC)は、活性化された凝固因子を含み、プロトロンビン複合体濃縮物の製造では通常は上記の様に廃棄されるが、この画分が、トロンビンを製造するためのプロトロンビンの理想的な供給源であることが分かった。下降するピークを集め、プロトロンビン複合体濃縮物(PCC)の製造に使用する。ActPCCおよびPCC画分の溶離を図1に示す。次いで、好ましくは、ActPCC画分を最適量の塩化カルシウムで、最適温度範囲22〜25℃で培養する。本発明の方法は、本来Sasら,1975およびFanugiaら,1989により開示された、37mM塩化カルシウムを37℃で加え、トロンビン発生の度合いを測定することにより血栓形成性(凝固機構の活性化度)を検出するのに試用される試験管内血栓形成性(thrombogenicity)試験に基づいている。本発明の他の特徴は、下記の例に、より詳細に説明されるとおりである。しかし、この詳細な説明は本発明を例示するためにのみ含まれるのであって、上記の本発明の一般的な説明を決して制限するものではない。例1この例は、本発明によりプロトロンビンを活性化させてトロンビンを形成するための具体的な方法を説明する。1.陰イオン交換樹脂による処理Cohn分別製法から得た画分I上澄み液を希釈して混合物のイオン強度を下げる。次いでこれをDEAE−セルロース樹脂と混合し、第IX因子を吸着させる。その手順は下記の通りである。(i)画分I上澄み液に殺菌した樹脂懸濁液を、画分I上澄み液1リットルあたり20〜40グラムの量(湿ったDEA樹脂として測定)で加える。(ii)次いで十分な水を加え、画分I上澄み液の温度を2±2℃に調節し、混合物を、画分I上澄み液の元の体積の1.3〜1.4倍の最終体積に希釈する。(iii)樹脂混合物を2±2℃で2時間を超えない時間攪拌する。(vi)吸着させた樹脂を2±2℃で遠心分離する。2. プロトロンビン含有画分のバルク溶液の調製2.1 吸着させた樹脂の洗浄緩衝液W(表2参照)で洗い流すことにより、結合していないタンパク質をDEAEから除去する。樹脂1kgあたり緩衝液1.2リットル未満を使用してスラリー化させて洗浄する。この工程および続く工程は、30℃を超えない常温で行なう。2.2 吸着させた樹脂の溶離樹脂床に緩衝液E(表2参照)を加えることにより、プロトロンビン含有画分(ActPCC)を樹脂から溶離させる。2.3 溶離した画分の選択溶離するタンパク質は屈折率計を使用して監視する。上向きのピーク(ActPCC)を集め、プロトロンビン複合体濃縮物の製造には不適当であるが、トロンビン形成用の供給源としては理想的である活性化凝固因子を含むので、プロトロンビンの供給源として使用する。ピークおよび下降する画分(PCC)も集め、プロトロンビン複合体濃縮物の製造に使用する。溶離したピーク前の画分(ActPCC)は、下記の様に凍結および/または清澄化することができる。2.4 ActPCC溶離液の凍結(必要に応じて行なう工程)ピーク前の溶離液を−30℃未満に急速凍結し、その後の処理に必要になるまで、その温度で6か月を超えない期間保存する。使用の直前に溶離液を室温(30℃未満)に温める。この必要に応じて行なう工程の目的は、製造工程を休止し、必要に応じてトロンビン製造に2ロッド以上の溶離液を混合できる様にすることである。3. プロトロンビン含有画分(ActPCC)の活性化ActPCCの必要体積に攪拌しながら塩化カルシウムを最終濃度40±5mMになるまで22℃〜25℃で5時間までかけて加える。この時間の後、粗製トロンビン溶液を濾過/遠心分離により清澄化させ、ウイルスを不活性化させ、さらに表1に概略を示す様にしてトロンビン濃縮物に処理する。例2この例は、3種類の異なった温度4℃、22〜25℃および37℃で、トロンビン形成の速度および時間を測定することにより、トロンビン発生の最適温度を示す。1. 緩衝液:3.3g/lNa2HPO4・2H2O、pH6.63.2g/lNaH2PO4・12H2O8.8g/lNa3クエン酸塩・2H2O2. 条件:Prothrombinex(PTX)廃棄画分を4℃(白の正方形)、22〜25℃(黒の円)および37℃(黒の三角形)で、それぞれ35mM、40mMおよび37mM塩化カルシウムの存在下で培養した。3種類の異なった塩化カルシウム濃度は、それぞれの温度におけるトロンビン発生に必要な最適濃度に相当する。全時間にわたって準試料を取り出し、トロンビン活性(色素)を査定し、トロンビンに関する国際標準(70/157)に対して標準化した。3. 結論:図2に示された結果により、トロンビンは4℃から37℃の温度範囲で発生し得るが、トロンビンの最適形成には22〜25℃を使用すべきであることが示されている。例3この例は、PTX廃棄画分に対する、プロトロンビンをトロンビンに活性化させるのに最適な塩化カルシウム濃度の測定を説明する。1. 緩衝液:3.3g/lNa2HPO4・2H2O、pH6.63.2g/lNaH2PO4・12H2O8.8g/lNa3クエン酸塩・2H2O2. 条件:PTX廃棄画分を、塩化カルシウムの濃度を増加させながら(25〜50mM f.c.)、22〜25℃で4時間培養させた。この時間の後、試料をトロンビン発生に関して査定し、結果を国際単位/mLで表した。3. 結論:図3に示された結果により、トロンビンは25〜50mMの最終濃度で発生し得るが、トロンビンの最適形成には40mMの最終濃度を使用すべきであることが示されている。引例Esmon,,C.T.,Owen,W.G.,Jackson,C.M.等の「The conversion of protrombinto thrombin.V.The activation of prothrombin by factor Xa in the presenceof phospholipid」(J.Biol.Chem.249:24,7798-7807頁,1974年に掲載)。Farrugia,A.,Oates,A.,Spiers,D.,Young,l.,Herrington,R.等の「A microtitre plate test for assessment of in vitro thrombogenicity in factor IX concentrates using a chromogenic substrate」(Thrombosis Reseafch.53:191-196,1989年に掲載)。Franza,R.B.Jnr,Aronson,D.L.,Finlayson,J.B.等の「Activation of human prothrombin by a procoagulant factor from the venom of Echis carinatus. Identification of a high molecular weight intermediate with thrombin activity」(J.Biol.Chem.250:7056-7068頁,1975年に掲載)。Furie,B.,Furie,B.C.等の「The Molecular Basis of Blood Coagulation」(Chapter 93,1213-1231頁、Heaematologyで、Basic Principles and Practice、Churchill Livingstone Inc.1991年に掲載)。Jobin,F.,Esnouf,M.P.等の「Coagulant activity of tiger snake (Notechis scutatus scutatus) venom」(Nature21:873-875頁,1966年に掲載)。Kisiel,W.,Hermodson,M.A.,Davie,E.W.等の「Factor X Activating Enzyme from Russell's Viper Venom:Isolation and Characterisation」(Biochemistry.15:22,4901-4906頁,1976年に掲載)。Middleton,S.M.,Bennett,l.H.,Smith,J.K.等の「A therapeutic concentrate of coagulation factors II,IX and X from citrated,factor Vlll-depleted plasma」(Vox.Sang.24:441-456頁,1973年に掲載)。Owen,W.G.,Jackson,C.M.等の「Activation of Prothrombin with Oxyuranus scutellatus scutellatus (Taipan Snake) venom」(Thrombosis Research.3:705-714頁,1973年に掲載)。Sas,G.,Owens,R,E.,Smfth,J.K.,Middleton,S.M.,Cash,J.D.等の「In vitro spontaneous thrombin generation in human factor IX concentrates」(Br.J.Haemotol.31:25-35頁,1975年に掲載)。 プロトロンビン含有物質からトロンビンを製造する方法であって、前記プロトロンビン含有物質が、活性化プロトロンビン複合体濃縮物(ActPCC)画分であり、前記ActPCC画分を2価の陽イオンと接触させて前記画分中のプロトロンビンをトロンビンに転化させるものであり、前記ActPCC画分が、プロトロンビン含有溶液から得られる結合タンパク質をイオン交換樹脂から溶離させることによりプロトロンビン複合体濃縮物(PCC)を製造する際に得られた上向きまたはピーク前物質中のトロンボゲン画分の少なくとも一部を含んでなることを特徴とする方法。 前記ActPCC画分が、Cohn画分I上澄み液から得られる結合したタンパク質をDEAE−セルロース樹脂から溶離させることによりプロトロンビン複合体濃縮物(PCC)を製造する際に得られた上向きまたはピーク前物質中のトロンボゲン画分の少なくとも一部を含んでなる、請求項1に記載の方法。 2価の陽イオンがCa2+イオンである、請求項1に記載の方法。 Ca2+イオンの濃度が25〜50mM、より好ましくは35〜50mM、である、請求項3に記載の方法。 前記ActPCC画分をCa2+イオンと4℃〜37℃、より好ましくは22℃〜25℃、の温度で接触させる、請求項3または4に記載の方法。 前記ActPCC画分を40±5mMのCaCl2と共に22〜25℃で4〜5時間処理する、請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。 ウイルスの不活性化工程、好ましくは溶剤/洗剤処理工程、をさらに含んでなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。 トロンビンを回収および精製する工程をさらに含んでなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。