タイトル: | 特許公報(B2)_コレステリック媒体における螺旋軸の回転方向の判別方法 |
出願番号: | 1997370534 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | G01N 21/19,G01N 21/21,G01M 11/00,G02F 1/13 |
西村 涼 JP 3821940 特許公報(B2) 20060630 1997370534 19971219 コレステリック媒体における螺旋軸の回転方向の判別方法 新日本石油株式会社 000004444 森田 順之 100103285 西村 涼 20060913 G01N 21/19 20060101AFI20060824BHJP G01N 21/21 20060101ALI20060824BHJP G01M 11/00 20060101ALI20060824BHJP G02F 1/13 20060101ALI20060824BHJP JPG01N21/19G01N21/21 ZG01M11/00 TG02F1/13 101 G01N21/00-21/61 G01M11/00-11/08 特開平09−061414(JP,A) 特開平11−64160(JP,A) 特開平11−58579(JP,A) 特開平11−64633(JP,A) 特開平3−217817(JP,A) 3 1999183371 19990709 8 20041206 田邉 英治 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、コレステリック液晶や当該液晶をフィルム化したコレステリック液晶フィルムなどのコレステリック媒体における螺旋軸の回転方向を容易に判別する方法に関する。【0002】【従来の技術】コレステリック液晶または当該液晶をフィルム化したコレステリックフィルムといったコレステリック媒体は、その特異な光学特性に着目され、古くから光学素子としての応用が考えられてきた。その光学特性の特異性は、液晶分子の配向が螺旋構造をなすことに起因している。また螺旋構造においては、その回転方向によっても特異性が異なるため、コレステリック媒体の使用においては当該螺旋構造における回転方向を調べることが重要となる。【0003】コレステリック媒体の内部の螺旋構造の回転方向を調べる方法としては、右円偏光と左円偏光をそれぞれ入射し、各偏光に対する透過光量もしくは反射光量を比較して、螺旋構造の回転方向の左右を定める方法が公知である。【0004】また自然光を入射し、コレステリック媒体を透過もしくは反射する光を偏光解析し、円偏光ないし楕円偏光の参照面における位相差から、螺旋構造の回転方向の左右を定める方法も公知である。【0005】これらの方法は、高精度な測定結果を与えるものであるが、一方、測定方法が複雑である、測定時間を要する、測定装置が高価、特に訓練された測定者が必要である、といった決して汎用性に優れた方法ではなかった。【0006】このため測定者に依存せず、また特別に用意した光学測定装置を必要とせずに、簡便かつ迅速にコレステリック媒体の螺旋構造の回転方向を判別できる方法の開発が望まれていた。【0007】【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、コレステリック媒体の光学特性を鋭意研究した結果,特別な光学装置を必要とせずに誰にでも簡単にコレステリック媒体の螺旋構造の回転方向を判別することができる方法を見出した。【0008】【課題を解決するための手段】すなわち本発明の第1は、左円偏光を透過する少なくとも1つの領域と右円偏光を透過する少なくとも1つの領域が混在した1枚の円偏光板を用い、左右円偏光領域から透過または反射される光量の差によってコレステリック媒体における螺旋軸の回転方向を判別する方法に関する。【0009】また本発明の第2は、延伸軸が互いに直交した2枚の位相差フィルムを、1枚の直線偏光子の上にならべて積層した円偏光板である本発明の第1に記載のコレステリック媒体における螺旋軸の回転方向を判定する方法に関する。【0010】さらに本発明の第3は、透過軸が互いに直交した2枚の直線偏光子を、1枚の位相差フィルムの上にならべて積層した円偏光板である本発明の第1に記載のコレステリック媒体における螺旋軸の回転方向を判定する方法に関する。【0011】【作用】コレステリック液晶やカイラルスメクチックC液晶(SmC*)のような膜厚方向に螺旋を描くような規則的なねじれを有する光学媒体では、ピッチP(液晶分子が360°回転するのに必要な膜厚)と入射光の波長λがほぼ等しい場合、旋光性と選択反射性という特異な光学的性質を示すことが知られている(例えば,液晶とディスプレイ応用の基礎,コロナ社,ISBN4−339−00620−3)。旋光性とは、入射光が直線偏光の場合にその偏光面の回転として観測される現象である。また、選択反射性とは、入射光のうち特定の波長帯域において,特定の円偏光成分を透過し、これと回転方向が反対の円偏光成分を反射する性質である。さらに特異な点は、入射光のうち光学媒体のねじれ方向と同方向に回転する円偏光成分は反射され、その反射光の回転方向も同一方向となるのに対し、逆方向に回転する円偏光成分は透過する点である。このような選択反射性は選択反射波長帯域と呼ばれる帯域に限定されて発現するが、その中心波長をλs、波長帯域幅をΔλとすれば、これらは光学媒体のピッチP(=λ/n)と平均屈折率n(数1)によって式(1)、(2)のように決まる。【0012】【数1】λs=nP (1)Δλ=ΔnP (2)式(2)において、Δnは光学媒体の面内の異常光線屈折率neと常光線屈折率noの差(Δn=ne−no)である。【0013】コレステリック液晶を、その選択反射性を利用して光学素子として利用する応用例は古くから数々提案されている。(たとえば、T.J.Scheffer;Twisted nematic display with cholesteric reflector, J. Phys. D: Appl. phys., Vol.8, p.p.1441−8,1975)これら光学素子としての応用例においては、用いるコレステリック媒体の螺旋軸の回転方向を知ることは、設計上必須なことである。【0014】【発明の実施の形態】<円偏光板の応用>本発明では、コレステリック媒体の螺旋軸の回転方向の判定のために円偏光板を用いる。コレステリック媒体に自然光を入射した場合、透過・反射される光は,それぞれ逆の回転方向の円偏光となる。透過・反射光を、それぞれ透過する円偏光の回転方向が既知である円偏光板を用いて観察すれば、円偏光板を透過する光量の差からコレステリック媒体の螺旋構造の回転方向を定めることが出来る。この場合、透過光と反射光を1枚の円偏光板で同時に観察することは困難であるので、偏光度が低い場合には、円偏光板からの透過光量を測定器により定量的に測定しておくことが望ましい。【0015】また、透過する円偏光の回転方向が互いに反対で、かつ既知の2枚の円偏光板を用いれば、透過光もしくは反射光のどちらかを観察すれば、2枚の円偏光板の透過光量の差からコレステリック媒体の螺旋構造の回転方向を定めることが出来る。この場合は、2枚の円偏光板を同一平面上に形成していおけば、それぞれを透過する光を同時に観察することが出来るので、目視でも容易にコレステリック媒体の螺旋軸の回転方向を判別できる。また、光量測定器を用いて定量的に比較することにより、高精度に判別できるので低偏光度の場合にも応用できる。光量を目視により比較する場合、2枚の円偏光板をそれぞれ単独で観察して輝度の差を判定するよりも、同時に比較して判定する方がより精度を高くできる。特に、目視で輝度差を判定する場合、マッハ効果として広く知られているように比較対象同士を境界を接するように配置した場合に最も精度よく判定することができる。したがって本発明で用いる円偏光板としては、左右の円偏光板が境界が接するように一体化されていることが望ましい。【実施例】〈円偏光板の実現方法〉円偏光板は、直線偏光板とλ/4板(1/4波長板)を積層することで容易に実現できる。すなわち、直線偏光と円偏光間の位相差は90度であるので、進相軸と遅相軸間の位相差が90度となる一軸性媒体であるλ/4板を透過させることで、直線偏光と円偏光は相互に変換可能となる。直線偏光板の中性軸(吸収軸もしくは透過軸)とλ/4板の中性軸(延伸軸)が45度をなすように配置すれば,円偏光に対し偏光選択性を有する偏光板を容易に実現できる(たとえば,鈴木範人著,応用光学2,p.19,朝倉書店)。直線偏光板とλ/4板は、シート(フィルム)状のものが市販されており、容易に入手することができる。これらを上述の配置で積層・貼合すればシート状の円偏光板を作製することが可能である。【0016】直線偏光板としては、ヨウ素や染料を含有するシート・ポラライザー、ニコル・プリズムやグラ−ントムソン・プリズムのような複屈折性結晶、異方性反射多層膜など直線偏光選択性を有するものであれば本用途に用いることができるが、特に望ましくはシートもしくはフィルム上に加工されたものが取り扱い性に優れているため、本発明の実施には好ましい。【0017】位相差板としては、液晶分子を配向させて複屈折性を発現させた光学素子、押し出し・延伸等の機械的な手法により複屈折を発現させた光学素子、複屈折性を有する結晶を利用した光学素子、フレネル・ロムのように反射によるp波、s波間の位相差を利用した光学素子などを用いることが可能であるが、特に望ましくはシートもしくはフィルム状に加工されたものが取り扱い性に優れているため、本発明の実施には好ましい。〈円偏光板使用時の視認性の向上〉本発明は,コレステリック媒体を透過もしくは反射する光を円偏光板を通して観察することで、光源に対する光量から、コレステリック媒体の螺旋構造のねじれ方向を判定するものである。さらに判定を容易にする方法としては、一枚の円偏光板の中に、左円偏光を透過する領域と右円偏光を透過する領域を混在させる方法を提案できる。すなわち当該円偏光板に、左右どちらかの円偏光を入射した場合、左円偏光を透過する領域と右円偏光を透過する領域では透過光量に差が生じ、コントラストが生じる。このコントラストを観察することで、より簡便にねじれ方向を判定できる。特にコレステリック媒体の偏光度が低い場合、左円偏光を透過する領域と右円偏光を透過する領域を混在させた当該円偏光板の使用は、単一方向の円偏光板単体を用いる場合に比して、より簡便かつ高精度にコレステリック媒体の螺旋構造のねじれ方向を判定することができる。〈参考例1〉〈円偏光板の作製▲1▼〉(株)ポラテクノ社製一軸延伸フィルムλ/4板(ポリビニルアルコール製,リターデーション:140nm) をλ/4板として,また,サンリッツ(株)社製直線偏光板HLC2−5618を用いて円偏光板を作製した。この時、直線偏光板の上に図1に示すように2枚のλ/4板を境界が接するように貼合した。軸配置は、2枚のλ/4板の延伸軸方位を互いに直交させ、偏光板の透過軸はλ/4板の延伸軸とそれぞれ45°をなすように配置し、粘着剤を介して積層した。このような配置により、図1上面図の左側が左円偏光板(左円偏光を透過)、右側が右円偏光板(右円偏光を透過)となる。〈参考例2〉〈円偏光板の作製▲2▼〉富士写真フィルム(株)社製一軸延伸フィルムλ/4板(ポリカーボネイト製,リターデーション:153nm) をλ/4板として、また住友化学(株)製直線偏光板ST−1822APを用いて円偏光板を作製した。この時、λ/4板の上に図2に示すように2枚の直線偏光板を境界が接するように貼合した。軸配置は、2枚の偏光板の透過軸を互いに直交させ、λ/4板の延伸軸は偏光板の透過軸とれぞれ45°をなすように配置し、紫外線硬化型接着剤を介して積層した。このような配置により、図1上面図の左側が右円偏光板(右円偏光を透過)、右側が左円偏光板(左円偏光を透過)となる。〈参考例3〉〈コレステリック液晶フィルムの作製▲1▼〉ガラス転移温度が80℃のR体光学活性化合物を含有する液晶性ポリエステル組成物をラビングポリイミド層を有するトリアセテートフィルム上にスピンコート法で成膜し、135℃で10分間熱処理したところ、緑色の鏡面反射を呈する面内に配向欠陥のないモノドメインなフィルムが得られた。同フィルムを日本分光(株)製紫外可視近赤外分光光度計V−570にて透過スペクトルを測定したところ、中心波長λsが約560nm、選択反射波長帯域幅Δλが約90nmの選択反射を示すコレステリック液晶層が形成されていることが確認された。また,透過スペクトルに周期的な規則正しいサイドバンドが観測されることから、コレステリック液晶層の螺旋ピッチPが膜厚方向に極めて均一であることが確認された。またR体光学活性化合物を用いたことから、螺旋軸の回転方向が左方向とあらかじめ分かっているコレステリック媒体が得られた。〈参考例4〉〈コレステリック液晶フィルムの作製▲2▼〉ガラス転移温度が77℃のS体光学活性化合物を含有する液晶性ポリエステル組成物を、ラビングポリイミド層を有するトリアセテートフィルム上にスピンコート法で成膜し、140℃で10分間熱処理したところ、青色の鏡面反射を呈する面内に配向欠陥のないモノドメインなフィルムが得られた。同フィルムを日本分光(株)製紫外可視近赤外分光光度計V−570にて透過スペクトルを測定したところ、中心波長λsが約730nm、選択反射波長帯域幅Δλが約120nmの選択反射を示すコレステリック液晶層が形成されていることが確認された。また透過スペクトルに周期的な規則正しいサイドバンドが観測されることから、コレステリック液晶層の螺旋ピッチPが膜厚方向に極めて均一であることが確認された。またS体光学活性化合物を用いたことから、螺旋軸の回転方向が右方向とあらかじめ分かっているコレステリック媒体が得られた。〈参考例5〉〈コレステリック液晶フィルムの作製▲3▼非鏡面コレステリックフィルム〉ガラス転移温度が80℃のS体光学活性化合物を含有する液晶性ポリエステル組成物を、ラビングポリイミド層を有するトリアセテートフィルム上にスピンコート法で成膜し、135℃で5分間熱処理したところ、黄緑色の非鏡面反射を呈するフィルムが得られた。偏光顕微鏡観察およびフィルム断面のTEM観察から、面内にオイリーストリークが形成されていることが確認できた。同フィルムを日本分光(株)製紫外可視近赤外分光光度計V−570にて透過スペクトル測定したところ,中心波長λsが約550nm,選択反射波長帯域幅Δλが約100nmの選択反射を示すコレステリック液晶層が形成されていることが確認された。またS体光学活性化合物を用いたことから,螺旋軸の回転方向が右方向とあらかじめ分かっているコレステリック媒体が得られた。実施例1参考例3に記載のコレステリックフィルムを黒色画用紙の上に置き、通常の室内光で照明した。この状態で、コレステリックフィルムを観察したところ、緑色の金属光沢のある反射光を観察できた。この反射光を参考例1に記載の円偏光板を通して観察したところ、右円偏光板(右円偏光を透過)を形成している領域では黒色が、左円偏光板(左円偏光を透過)を形成している領域では緑色が観察された。これより、左円偏光板(左円偏光を透過)を透過する光量の方が右円偏光板(右円偏光を透過)を透過する光量より多いので、反射光は左円偏光であることが簡単に識別できた。反射光が左円偏光であることから、参考例3のコレステリックフィルムの螺旋構造の回転方向は左であることが容易に判定できた。これは、参考例3のコレステリックフィルムに用いた光学活性化合物がR体であることとも合致する結果であった。実施例2参考例4に記載のコレステリックフィルムを黒色画用紙の上に置き、通常の室内光で照明した。この状態で、コレステリックフィルムを観察したところ、青色の金属光沢のある反射光を観察できた。この反射光を参考例2に記載の円偏光板を通して観察したところ、左円偏光板(左円偏光を透過)を形成している領域では黒色が、右円偏光板(右円偏光を透過)を形成している領域では青色が観察された。これより、右円偏光板(右円偏光を透過)を透過する光量の方が左円偏光板(左円偏光を透過)を透過する光量より多いので、反射光は右円偏光であることが簡単に識別できた。反射光が右円偏光であることから、参考例4のコレステリックフィルムの螺旋構造の回転方向は右であることが容易に判定できた。これは、参考例4のコレステリックフィルムに用いた光学活性化合物がS体であることとも合致する結果であった。実施例3参考例5に記載のコレステリックフィルムを黒色画用紙の上に置き、通常の室内光で照明した。この状態で、コレステリックフィルムを観察したところ、黄緑色のパステルカラーを呈する反射光を観察できた。この反射光を参考例1に記載の円偏光板を通して観察したところ、左円偏光板(左円偏光を透過)を形成している領域では黒色が、右円偏光板(右円偏光を透過)を形成している領域では黄緑色が観察された。これより、右円偏光板(右円偏光を透過)を透過する光量の方が左円偏光板(左円偏光を透過)を透過する光量より多いので、反射光は右円偏光であることが簡単に識別できた。反射光が右円偏光であることから、参考例5のコレステリックフィルムの螺旋構造の回転方向は右であることが容易に判定できた。これは、参考例5のコレステリックフィルムに用いた光学活性化合物がS体であることとも合致する結果であった。比較例1参考例3に記載のコレステリックフィルムを黒色画用紙の上に置き、通常の室内光で照明した。この状態で、コレステリックフィルムを観察したところ、緑色の金属光沢のある反射光を観察できた。この反射光を参考例1に記載の円偏光板を通して観察し、各偏光板の透過光量をトプコン(株)社製色彩輝度計BM−7を用いて1mの距離で測定角2°で輝度を測定したところ、右偏光板側で12cd/平方メートル、左偏光板側で243cd/平方メートルとなった。これより、左円偏光板(左円偏光を透過)を透過する光量の方が右円偏光板(右円偏光を透過)を透過する光量より多いので、反射光は左円偏光であることが識別できた。反射光が左円偏光であることから、参考例3のコレステリックフィルムの螺旋構造の回転方向は左であることが判別できた。これは参考例3のコレステリックフィルムに用いた光学活性化合物がR体であることとも合致する結果であった。実施例1〜3および比較例1による判定結果の一覧を表1にまとめた。【発明の効果】本発明により、コレステリック媒体の螺旋構造の回転方向を、左右円偏光板の透過光量を比較することで簡便かつ迅速に判定することができる。本方法は、目視により判定できるとともに、輝度計などの測定装置を利用したシステムにも適用できる。【図面の簡単な説明】【図1】 参考例1に記述した円偏光板の構成例【図2】 参考例2に記述した円偏光板の構成例【表1】 左円偏光を透過する少なくとも1つの領域と右円偏光を透過する少なくとも1つの領域が混在した1枚の円偏光板を用い、左右円偏光領域から透過または反射される光量の差によってコレステリック媒体における螺旋軸の回転方向を判別する方法。 延伸軸が互いに直交した2枚の位相差フィルムを、1枚の直線偏光子の上にならべて積層した円偏光板である請求項1記載のコレステリック媒体における螺旋軸の回転方向を判定する方法。 透過軸が互いに直交した2枚の直線偏光子を、1枚の位相差フィルムの上にならべて積層した円偏光板である請求項1記載のコレステリック媒体における螺旋軸の回転方向を判定する方法。