生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ゲラニル二リン酸合成酵素遺伝子
出願番号:1997346686
年次:2004
IPC分類:7,C12N15/09,C12N1/15,C12N1/19,C12N1/21,C12N5/10,C12N9/10,C12P9/00


特許情報キャッシュ

大音 徳 成田 啓之 西野 徳三 大沼 信一 JP 3562280 特許公報(B2) 20040611 1997346686 19971216 ゲラニル二リン酸合成酵素遺伝子 トヨタ自動車株式会社 000003207 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 大音 徳 成田 啓之 西野 徳三 大沼 信一 20040908 7 C12N15/09 C12N1/15 C12N1/19 C12N1/21 C12N5/10 C12N9/10 C12P9/00 JP C12N15/00 A C12N1/15 C12N1/19 C12N1/21 C12N9/10 C12P9/00 C12N5/00 A 7 C12N15/00-15/90 SwissProt/PIR/GeneSeq GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq BIOSIS/WPI(DIALOG) PubMed JICSTファイル(JOIS) The Journal of Biological Chemistry,1996年,Vol.271, No.48,p.30748-30754 8 1999169178 19990629 31 20000531 田中 耕一郎 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ゲラニル二リン酸合成酵素、該酵素をコードする遺伝子、該遺伝子を含む組換えベクター、並びにゲラニル二リン酸合成酵素及びゲラニル二リン酸の製造方法に関する。【0002】【従来の技術】生体内で重要な機能を持つ物質のうち、イソプレン(isoprene:2−メチル−1,3−ブタジエン)を構成単位として生合成される物質は数多い。これらの化合物はイソプレノイド(isoprenoid)、テルペノイド(terpenoid)又はテルペン(terpene)とも呼ばれ、炭素数によりヘミテルペン(hemiterpene, C5)、モノテルペン(monoterpene, C10)、セスキテルペン(sesquiterpene, C15)、ジテルペン(diterpene, C20)、セスタテルペン(sesterterpene, C25)、トリテルペン(triterpene, C30)、テトラテルペン(tetraterpene, C40)などに分類される。【0003】これらの物質の実際の生合成は、活性型イソプレン単位であるイソペンテニル二リン酸(IPP: isopentenyl diphosphate)が合成されるところから始まる。架空の前駆体物質として提唱されたイソプレン単位の真の姿は、結局、活性型イソプレン単位といわれるIPPである。IPPの異性体であるジメチルアリル二リン酸(DMAPP: dimethylallyl diphosphate)は、IPPとの縮合反応によってゲラニル二リン酸(GPP: geranyl diphosphate)、ネリル二リン酸(neryl diphosphate)、ファルネシル二リン酸(FPP: farnesyl diphosphate)、ゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP: geranyl geranyl diphosphate)、ゲラニルファルネシル二リン酸(GFPP: geranyl farnesyl diphosphate)、ヘキサプレニル二リン酸(HexPP: hexaprenyl diphosphate)、ヘプタプレニル二リン酸(HepPP: heptaprenyl diphosphate)などの鎖状活性型イソプレノイドに合成されることが知られている。【0004】FPPやGGPPなどでは全トランス型(all−E型)が活性型と考えられるが、cis縮合反応することによって天然ゴム、ドリコール・バクトプレノール(ウンデカプレノール)、あるいは植物で見出される各種ポリプレノール等が合成される。これらの化合物は、分子内に持つピロリン酸と炭素骨格とのリン酸エステル結合エネルギーを用いて縮合反応が進行することにより合成されるものと考えられ、反応副産物としてピロリン酸が生成すると考えられている。【0005】ゲラニオール及びその異性体ネロールはいずれも薔薇油主成分の香料であり、楠抽出物の樟脳は、防虫剤としても利用されている。アリル性(allylic)基質であるDMAPP、GPP、FPP、GGPP、GFPPなどにIPPを順次縮合していく活性型イソプレノイド合成酵素は、プレニル二リン酸合成酵素又はプレニルトランスフェラーゼと呼ばれている。プレニル二リン酸合成酵素は、主要反応産物の炭素数の違いにより名称を区別している。例えば、炭素数15個のファルネシル二リン酸の生成を触媒する酵素はファルネシル二リン酸合成酵素(FPP synthase)と呼ばれ、炭素数20個のゲラニルゲラニル二リン酸の生成を触媒する酵素はゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素(GGPP synthase)と呼ばれる。【0006】すでに、バクテリア、アーキア(archaea)、真菌、植物、動物から各種プレニル二リン酸合成酵素遺伝子が得られており、ファルネシル二リン酸合成酵素、ゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素、ヘキサプレニル二リン酸合成酵素、ヘプタプレニル二リン酸合成酵素、オクタプレニル二リン酸合成酵素、ノナプレニル二リン酸合成酵素(ソラネシル二リン酸合成酵素)、ウンデカプレニル二リン酸合成酵素などについて、酵素の精製、活性測定及び遺伝子クローニング・塩基配列決定が報告されている。【0007】産業的にも生命科学的にも重要かつ多岐にわたる化合物合成の根本をなすこれらプレニル二リン酸合成酵素は、一般的に不安定であり比活性も低く、工業的に利用することが期待できなかった。ところが、ここ数年、好熱性のバクテリアやアーキアから耐熱性のFPP合成酵素やGGPP合成酵素遺伝子が単離され [ A. Chen and D. Poulter (1993), J Biol Chem, 268(15), 11002−11007; T. Koyama et al. (1993), J. Biochem. (Tokyo), 113(3), 355−363; S.−i. Ohnuma et al. (1994) J. Biol. Chem., 269(20), 14792−14797]、プレニル二リン酸合成酵素を利用するための条件が整ってきた。【0008】炭素数10〜25のプレニル二リン酸を合成する酵素はホモダイマーであり、 in vitro で反応させるのは比較的容易でその報告例も多い。その中でも炭素数10のプレニル二リン酸であるGPPを特異的に合成する活性をもつ酵素は、部分精製の報告はあるが(L.Heide and U.Berger, 1989, Arch Biochem Biophys, 273(2), 331−8)単離されていない。豚の肝臓からGPP合成酵素の精製に成功したとして報告されているが(J.K.Dorsey et al., 1966, J Biol Chem, 241(22), 5353−5360.)、この酵素はFPPの合成も同時に触媒してしまうため、現在のプレニル二リン酸合成酵素の定義からはFPP合成酵素と呼ぶべきものである。【0009】GPPは、知られている多くのモノテルペンのうち、最初の合成中間体であり、モノテルペンの生合成経路で最も重要な化合物である。しかしながら、GPP合成酵素遺伝子はいまだに単離されていない。そこで、好熱性生物由来の安定で非活性の高いホモダイマー型のプレニル二リン酸合成酵素のアミノ酸配列を人工的に改変し、GPPの合成反応を特異的に触媒するホモダイマー型耐熱性プレニル二リン酸合成酵素を人工的に作り出す技術が要求されている。【0010】好熱性生物由来のプレニル二リン酸合成酵素としては、これまでに、バシルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)由来のFPP合成酵素とスルフォロバス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidocaldarius)のGGPP合成酵素で改変された例がある。S.acidocaldariusのGGPP合成酵素の変異型酵素とその遺伝子は、HexPP合成酵素活性欠損の出芽酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces serevisiae)のグリセロール代謝能を相補することを指標にして選択された[ S.−i. Ohnuma et al. (1996) J. Biol. Chem., 271(31), 18831−18837 ]。リコペン(lycopene)合成を指標に、GGPP合成活性をもつB. stearothermophilus FPP合成酵素の変異型酵素とその遺伝子が得られ[ S.−i. Ohnuma et al. (1996) ,J. Biol. Chem., 271(17), 10087−10095]、更に、Asp−richドメイン保存配列I(DDXX(XX)D)の5アミノ酸残基上流のアミノ酸残基をコードする遺伝子を部位特異的変異させることによって、GGPPからHexPPまでのプレニル二リン酸を様々な割合で合成する18種の変異型酵素とその遺伝子が得られた[ S.−i. Ohnuma et al. (1996) J. Biol. Chem., 271(48), 30748−30754 ]。そして、Asp−richドメイン保存配列I(DDXX(XX)D)の5アミノ酸残基上流に位置するアミノ酸残基が反応産物の鎖長制御に関与することがわかった。しかし、GPPを特異的に合成する活性を有する変異型酵素は得られていない。【0011】【発明が解決しようとする課題】本発明は、ゲラニル二リン酸合成酵素及び該酵素をコードする遺伝子を提供することを目的とする。【0012】【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、ファルネシル二リン酸合成酵素のアミノ酸配列の一部を置換することによりゲラニル二リン酸合成酵素及び該酵素をコードする遺伝子を単離することに成功し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の(a)又は(b)の組換えタンパク質である。【0013】(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質(b)配列番号1で表されるアミノ酸配列において第82番目のアミノ酸を除く少なくとも1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつゲラニル二リン酸合成酵素活性を有するタンパク質さらに、本発明は、上記(a)又は(b)の組換えタンパク質をコードする遺伝子である。さらに、本発明は、配列番号2で表される塩基配列を含む、ゲラニル二リン酸合成酵素遺伝子である。さらに、本発明は、前記遺伝子を含む組換えベクターである。さらに、本発明は、前記組換えベクターによって形質転換された形質転換体である。【0014】さらに、本発明は、前記形質転換体を培地に培養し、得られる培養物からゲラニル二リン酸合成酵素を採取することを特徴とするゲラニル二リン酸合成酵素の製造方法である。さらに、本発明は、前記形質転換体を培地に培養し、得られる培養物からゲラニル二リン酸を採取することを特徴とするゲラニル二リン酸の製造方法である。さらに、本発明は、前記形質転換体の培養物をイソペンテニル二リン酸又はその異性体に作用させることを特徴とするゲラニル二リン酸の製造方法である。以下、本発明を詳細に説明する。【0015】【発明の実施の形態】プレニル二リン酸合成酵素(ヘテロダイマーの場合は一方のサブユニット)のアミノ酸配列には5つの保存領域が存在することが知られている [ A. Chen et al. (1994) Protein Sci.,3(4), 600−607 ] 。この5つの保存領域には、反応産物又は反応基質が結合していると考えられているアスパラギン酸残基に富む領域が2箇所存在する。この領域を「アスパラギン酸リッチドメイン」又は「Asp−richドメイン」といい、このうち、プレニル二リン酸合成酵素のアミノ末端側に位置するAsp−richドメイン(保存領域II)をAsp−richドメインI(配列:「DDXX(XX)D」(配列中、かっこ内の「XX」は存在しない場合がある))とし、カルボキシル末端側に位置するAsp−richドメイン(保存領域V)をAsp−richドメインIIとして両者を区別する。【0016】上記のようなアスパラギン酸リッチドメインを有するプレニル二リン酸合成酵素としては、ファルネシル二リン酸合成酵素、ゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素、ヘキサプレニル二リン酸合成酵素、ヘプタプレニル二リン酸合成酵素、オクタプレニル二リン酸合成酵素、ノナプレニル二リン酸合成酵素、ウンデカプレニル二リン酸合成酵素などがあげられる。さらに具体的な例として、バシルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)のファルネシル二リン酸合成酵素、大腸菌(Escherichia coli)のファルネシル二リン酸合成酵素、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のファルネシル二リン酸合成酵素、ラットのファルネシル二リン酸合成酵素、ヒトのファルネシル二リン酸合成酵素、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のヘキサプレニル二リン酸合成酵素などが挙げられる。これらのうち、細菌型のファルネシル二リン酸合成酵素のアミノ酸配列における領域I〜Vのアミノ酸配列を図4に示す。図4において、1.はバシルス・ステアロサーモフィラス由来のファルネシル二リン酸合成酵素のアミノ酸配列を、2.は大腸菌由来のファルネシル二リン酸合成酵素のアミノ酸配列を示す。枠で囲まれた部分(四角内)はアスパラギン酸リッチドメインI、星印(☆)はアスパラギン酸リッチドメインIのN末端から4アミノ酸残基分N末端側のアミノ酸残基を示す。【0017】本発明は、前記Asp−richドメインIよりも4アミノ酸残基上流に位置するアミノ酸残基を、そのアミノ酸よりも大きな分子量を持った他のアミノ酸残基に改変することにより、ゲラニル二リン酸合成酵素を創出し、当該酵素反応によりゲラニル二リン酸を製造することを特徴とする。すなわち、前記アスパラギン酸リッチドメインIを構成するアミノ酸配列「DDXX(XX)D」のうち、N末端のアミノ酸(Asp)から4個N末端側に存在するアミノ酸残基(図4、☆印を付したSer)を、Serよりも分子量の大きい他のアミノ酸残基(Gly及びAlaを除くいずれかのアミノ酸、すなわちVal、Leu、Ile、Thr、Asp、Glu、Asn、Gln、Lys、Arg、Cys、Met、Phe、Tyr、Trp、His及びProからなる群から選ばれるいずれかのアミノ酸)に置換するものである。置換するアミノ酸はGly及びAla以外であれば特に限定されないが、Pheが好ましい。【0018】具体的には、本発明のゲラニル二リン酸合成酵素は、ファルネシル二リン酸合成酵素のアミノ酸配列(配列番号5に記載のアミノ酸配列を参照)のうち第82残基目のSer残基を、例えばPhe残基に置換することにより得ることができる。かかる置換は、例えば、熱安定性も高く比活性も高いと報告されているB. stearothermophilus 由来のFPP合成酵素遺伝子の塩基配列を一部改変することにより行うことができる。【0019】(1) 変異導入の目的遺伝子の調製変異を導入するための目的遺伝子は、バシルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)由来のFPP合成酵素(以下BstFPSと略す)遺伝子である。BstFPS遺伝子の全塩基配列は公知であり(T.Koyama et al. (1993) J. Biochem, 113, 355−363;配列番号4)、またDDBJなどの遺伝情報データベースでアクセッション番号D13293として公開されている。【0020】B. stearothermophilusもATCCなどの各種微生物の寄託機関から入手可能であるため(ATCC 10149)、通常の遺伝子クローニング法(J.Sambrookら編(1989) Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)によってBstFPS遺伝子部分のDNAを得ることができる。次に、得られたDNA断片を適当なプラスミドベクター(例えばpTV118N;宝酒造)につないで変異導入のためのプラスミドDNAとする。このプラスミドDNAをpFPSとする。【0021】(2) 変異導入用オリゴヌクレオチドの合成及び変異の導入変異導入のためのオリゴヌクレオチドは、BstFPSの82位のアミノ酸残基をコードするSerコドンを、Gly及びAlaを除く任意の(Ser以外の) アミノ酸をコードするコドン(例えばPheコドン)に置換する目的に加えて、新たにBspHIの切断部位(5’TCATGA 3’)が導入されるような設計になっており、例えば以下の塩基配列が挙げられる。【0022】5’ CAT ACG TAC TTC TTG ATT CAT GAT GAT TTG 3’(配列番号6)この塩基配列は、BspHI切断部位を導入してもBstFPS遺伝子がコードするアミノ酸配列はコドンの縮重により変化しないよう設計されている。この切断部位の導入により、BspHI消化後のアガロースゲル電気泳動で置換変異導入されたプラスミドを検出することができる。【0023】なお、オリゴヌクレオチドの合成は通常の化学合成装置を用いて行うことができ、さらに合成したオリゴヌクレオチドをリン酸化した後失活処理(例えば70℃で10分間)しておくことが好ましい。次に、前記オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて、前記の通り作製したプラスミドに置換変異を導入する。変異の導入法は特に限定されず、例えばKunkel法(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA(1985)82,488)に基づく市販のキット(Mutan−Kキット;宝酒造社)を用いてもよく、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR法)を用いてもよい。【0024】得られた一本鎖DNAを鋳型にして、相補鎖合成用プライマーDNAをアニーリングさせて二本鎖を合成する。これをプラスミドに組み込んで大腸菌株に形質転換を行う。本発明の遺伝子は、例えば、生来のアミノ酸配列をコードするDNA(配列番号4)に部位特異的変異やPCR法等の常法にしたがって変異を導入することにより容易に得ることが出来る。得られたクローンについて塩基配列の決定を行う。塩基配列の決定はマキサム−ギルバート法、ダイデオキシ法等の公知手法により行うことができるが、通常はダイデオキシ法に基づいた自動塩基配列決定装置を用いて配列決定が行われる。【0025】配列番号2に本発明の遺伝子の塩基配列を、配列番号1及び3に本発明のゲラニル二リン酸合成酵素のアミノ酸配列を例示するが、このアミノ酸配列からなるタンパク質がゲラニル二リン酸合成酵素活性を有する限り、変異が導入されたアミノ酸配列(配列番号1又は3)の第82番目のアミノ酸(例えばPhe)を除く当該アミノ酸配列において少なくとも1個(例えば1若しくは数個)のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じてもよい。例えば、配列番号1又は3で表わされるアミノ酸配列の第1番目のMetが欠失した配列を有するものなども、本発明のゲラニル二リン酸合成酵素に含まれる。また、これらのゲラニル二リン酸合成酵素をコードする遺伝子も、本発明の遺伝子に含まれる。【0026】ここで、ゲラニル二リン酸合成酵素活性とは、IPP又はその異性体(例えばDMAPP)を基質としてGPPを合成する触媒活性を意味する。なお、変異の導入は、前記と同様の手法により行うことができる。一旦本発明のゲラニル二リン酸合成酵素遺伝子の塩基配列が確定されると、その後は化学合成によって、又は該遺伝子を鋳型としたPCRによって、あるいは該遺伝子の塩基配列を有するDNA断片をプローブとしてハイブリダイズさせることにより、本発明の遺伝子を得ることができる。【0027】(3) ベクターの構築本発明の組換えベクターは、適当なベクターに本発明の遺伝子を連結(挿入)することにより得ることができる。本発明の遺伝子を挿入するためのベクターは、宿主中で複製可能なものであれば特に限定されない。本発明の組換えベクターを作製するのに使用できるベクターは、大腸菌等からアルカリ抽出法(Birnboim, H.C. & Doly, J.(1979) Nucleic acid Res 7: 1513)又はその変法等により調製することができる。また、市販のものをそのまま用いてもよく、目的に応じて誘導した各種ベクターを用いてもよい。例えば、pMB1由来の複製開始点を持つpBR322、pBR327、pKK233−2、pKK233−3、pTrc99Aなどが挙げられる。また、コピー数が向上するように改変したpUC18、pUC19、pUC118、pUC119、pTV118N、pTV119N、pBluscript、pHSG298、pHSG396など、さらには、pSC101、ColE1、R1、F因子等に由来するプラスミドも挙げられる。さらに、発現後の精製がより容易な融合タンパク質発現ベクター、例えばpGEX系ベクターやpMal系ベクターも利用できる。【0028】また、プラスミド以外にもλファージやM13ファージのようなウィルスベクターやトランスポゾンによっても遺伝子導入が可能である。ファージ DNAとしては、例えば M13mp18、M13mp19 、λgt10、λgt11等が挙げられる。これらのベクターへのゲラニル二リン酸合成酵素をコードする遺伝子断片の組込みは、適当な制限酵素とリガーゼを用いる既知の方法で行うことが出来る。例えば、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクター DNAの制限酵素部位に挿入してベクターに連結する方法などが採用される。【0029】本発明の遺伝子は、その機能が発揮されるようにベクターに組み込まれることが必要である。そこで、本発明のベクターには、宿主に応じた複製開始点、発現制御配列などを含めることができる。さらに、転写プロモーター、転写ターミネーター、リボソーム結合配列等を組み込んでもよい。この場合、プロモーターとしてはPtac、Plac、Ptrcが挙げられ、ターミネーターとしてはrrnBターミネーターが挙げられ、リボソーム結合配列としてはSD配列(5’−AGGAGG−3’で代表される)が挙げられる。こうして作製されるプラスミドベクターの具体的なものとしては実施例中のpFPSmが挙げられる。【0030】(4) 形質転換体の作製本発明の形質転換体は、本発明の発現用組換えベクターを、目的遺伝子が発現し得るように宿主中に導入することにより得ることができる。ここで、宿主としては、本発明の遺伝子を発現できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、大腸菌(Escherichia coli)、バシルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)、バシルス・ブレビス(Bacillus brevis)等のエッシェリヒア属又はバシルス属に属する細菌、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastris)等のサッカロミセス属又はピキア属に属する酵母、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)等のアスペルギルス属に属する糸状菌、カイコの培養細胞、COS細胞又はCHO細胞等の動物細胞、あるいは植物細胞等が挙げられる。【0031】大腸菌等の細菌を宿主とする場合は、本発明の組換えベクターが該細菌中で自律複製可能であると同時に、転写プロモーター、リボゾーム結合配列、本発明のDNA、転写ターミネーターにより構成されていることが好ましい。また、転写プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。DNAからmRNAの転写を開始するするプロモータ配列として、天然に存在する配列(例えばlac、trp、bla、lpp、PL、PR、T3、T7など)を用いることができる。また、これらのプロモーター以外にも、それらの変異体(例えばlacUV5)又は天然にあるプロモーター配列を人工的に融合した配列(例えばtac、trcなど)が知られており、本発明にも使用できる。【0032】ここで、mRNAから蛋白質を合成する能力を調節する配列として、リボソーム結合部位(GAGGおよびその類似配列)から開始コドンであるATGまたはGTGまでの距離が重要であることは既知である。また、3’側に転写終了を指令するターミネーター(例えば、rrnBT1T2)が組換え体での蛋白質合成効率に影響することはよく知られている。従って、本発明では、これらの配列を使用することにより、遺伝子の発現を効率よく行わせることができる。細菌への外来遺伝子の導入方法としては、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されない。例えばカルシウムイオンを用いる方法(Proc. Natl. Acad.Sci., USA, 69, 2110−2114(1972))、エレクトロポレーション法等が挙げられる。【0033】酵母を宿主として用いる場合は、発現ベクターとして例えばYEp13、YEp24、YCp50等が用いられる。この場合のプロモーターとしては、酵母中で発現できるものであれば特に限定されず、例えばgal1プロモーター、gal10プロモーター、熱ショックタンパク質プロモーター、MFα1プロモーター等が挙げられる。酵母への外来遺伝子の導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、例えばエレクトロポレーション法(Methods. Enzymol.,194, 182−187 (1990))、スフェロプラスト法(Proc. Natl. Acad. Sci.,USA, 84,1929−1933 (1978)、酢酸リチウム法(J. Bacteriol.,153,163−168(1983))等が挙げられる。【0034】動物細胞を宿主として用いる場合は、発現ベクターとして例えばpcDNAI/Amp、pcDNAI等が用いられる。この場合、プロモーターとしてヒトサイトメガロウイルスの初期遺伝子プロモーター等を用いてもよい。動物細胞への外来遺伝子の導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が挙げられる。【0035】植物細胞への外来遺伝子の導入方法としては、アグロバクテリウムによる感染法が広く用いられ、直接導入法としては例えばプロトプラスト法、エレクトロポレーション法、ボンバードメント法等が挙げられる。なお、本発明の組換えベクターは、大腸菌DH5αに導入され(pFPSm(S82F)/DH5α)、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番3号)に、FERM P−16550として寄託されている。【0036】(5)ゲラニル二リン酸合成酵素の製造本発明のゲラニル二リン酸合成酵素は、前記形質転換体を培地に培養し、その培養物から採取することにより得ることができる。本発明の形質転換体を培地に培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。大腸菌や酵母菌等の微生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養が効率的に行える培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。【0037】炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デンプン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸、クエン酸等の有機酸、グリセロール、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類が用いられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩又はその他の含窒素化合物のほか、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー等が用いられる。【0038】無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム、塩化カルシウム等が用いられる。培養は、大腸菌を宿主として用いた場合、通常、振盪培養又は通気攪拌培養などの好気的条件下、37℃で16〜24時間行う。培養期間中、pHは6〜8に保持する。pHの調整は、無機又は有機の酸、アルカリ溶液、バッファー等を用いて行う。培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。【0039】プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸(IAA)等を培地に添加してもよい。動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているRPMI1640培地、DMEM培地又はこれらの培地に牛胎児血清等を添加した培地等が用いられる。【0040】培養は、通常、5〜10%CO2存在下、37℃で2〜20日行う。培養中は必要に応じてカナマイシン、ペニシリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。植物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているMS培地、又はこの培地にカナマイシン、各種植物ホルモン等を添加した培地等が用いられる。培養は、通常、20〜30℃で3〜14日行う。【0041】培養後、本発明のゲラニル二リン酸合成酵素が菌体内又は細胞内に生産される場合には菌体又は細胞を破砕して細胞抽出物を調製する。また、本発明のゲラニル二リン酸合成酵素が菌体外又は細胞外に生産される場合には遠心分離等により菌体又は細胞を除去して培養上清を調製する。次に、これらの培養物(細胞抽出物又は培養上清)を、タンパク質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば塩析、有機溶剤沈殿、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィー、疎水相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、当該培養物中から本発明のゲラニル二リン酸合成酵素を単離精製することができる。但し、本発明のゲラニル二リン酸合成酵素は、上記培養物から酵素を精製しなくてもゲラニル二リン酸合成酵素活性を有する場合もあるため、当該酵素活性を有する限り、その細胞抽出物又は培養液をそのまま粗酵素溶液として用いることもできる。【0042】(6) プレニル二リン酸の製造本発明によれば、実施例に示すように、本発明のDNAにより形質転換した宿主を培養することにより、培養物中にGPPを蓄積することができ、これを採取することによりGPPを製造することができる。本発明はまた、本発明の酵素を基質となるIPP又はDMAPPに作用させることによってもGPPを製造することができる。この方法においては、溶媒、特に水溶液中で、本発明の酵素を反応基質に作用させ、必要に応じて反応溶液中から目的とするプレニル二リン酸を採取すればよい。酵素としては、生成酵素だけではなく、種々の段階まで半精製して得られる粗酵素、または培養菌体もしくは培養物などの酵素含有物でもよい。また、前記の酵素、粗酵素または酵素含有物を常法にしたがって固定した固定化酵素であってもよい。基質としてはIPP及び/又はDMAPPが用いられる。反応用の溶媒としては水または水性緩衝液、例えばTris緩衝液やリン酸緩衝液が用いられる。【0043】【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。なお、本明細書中で、アミノ酸残基は以下の1文字表記または3文字表記の略号で示される。【0044】A;Ala;アラニンC;Cys;システインD;Asp;アスパラギン酸E;Glu;グルタミン酸F;Phe;フェニルアラニンG;Gly;グリシンH;His;ヒスチジンI;Ile;イソロイシンK;Lys;リジンL;Leu;ロイシンM;Met;メチオニンN;Asn;アスパラギンP;Pro;プロリンQ;Gln;グルタミンR;Arg;アルギニンS;Ser;セリンT;Thr;スレオニンV;Val;バリンW;Trp;トリプトファンY;Tyr;チロシン【0045】また、アミノ酸残基の置換は「置換前のアミノ酸残基」「アミノ酸残基番号」「置換後のアミノ酸残基」の順番で1文字表記のアミノ酸残基記号で表す。例えば、第82番目のSerをPheに置換する場合は、「S82F」のように表示する。【0046】〔実施例1〕 FPP合成酵素遺伝子を含むプラスミドの作製宝酒造より市販されているプラスミドベクターpTV118NのNcoI−HindIII部位にバシルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)由来のFPP合成酵素(BstFPS)遺伝子をサブクローニングした。このプラスミドDNAをpFPSとする。なお、BstFPS遺伝子の全塩基配列は、T.Koyama et al. (1993) J. Biochem, 113, 355−363、又はDDBJなどの遺伝情報データベースでアクセッション番号D13293として公開されている。【0047】〔実施例2〕変異導入用オリゴヌクレオチドの合成実施例1で得られた遺伝子に変異を導入するため、次のオリゴヌクレオチドを合成した。5’ CAT ACG TAC TTC TTG ATT CAT GAT GAT TTG 3’(配列番号6)上記オリゴヌクレオチドの配列は、BstFPSの82位のアミノ酸残基をコードするSerコドンをPheコドンに置換する目的に加えて、新たにBspHIの切断部位(5’TCATGA 3’)が導入されるような設計になっている。このBspHI切断部位の導入ではコドンの縮重のためBstFPS遺伝子がコードするアミノ酸配列は変化しない。BspHI切断部位の導入により、BspHI消化後のアガロースゲル電気泳動で置換変異導入されたプラスミドを検出することができる。合成したオリゴヌクレオチドは以下の反応溶液中で37℃で30分間リン酸化をした後70℃で10分間失活処理した。【0048】【0049】〔実施例3〕BstFPS遺伝子の82位のアミノ酸残基に対するコドンへの置換変異の導入実施例2で作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてKunkel法によって実施例1で作製したプラスミドに置換変異を導入した。Kunkel法を行うにあたっては、宝酒造から市販されているMutan−Kキットを用いた。実験手順もMutan−Kキット添付の実験書に従った。大腸菌CJ−236をホスト細胞としてプラスミドpFPS中のチミン塩基がデオキシウラシル塩基に置き換わった一本鎖DNAを調製した。得られた一本鎖DNAを鋳型にして相補鎖合成用プライマーDNAを下記のようにアニーリングさせた。【0050】【0051】さらに、25μlの伸長緩衝液、60ユニットの大腸菌DNA リガーゼ、1ユニットのT4 DNAポリメラーゼを加え、25℃で2時間相補鎖合成反応を行った。ただし、伸長緩衝液は、50 mM Tris−Cl (pH8.0)、60 mM酢酸アンモニウム、5 mM MgCl2、5 mM DTT、1 mM NAD、0.5 mM dNTPである。反応後、3μlの0.2 M EDTA (pH8.0)を加え、65℃で5分間処理することにより反応を停止させた。【0052】〔実施例4〕BstFPS遺伝子の82位のアミノ酸残基に対するコドンへ置換変異が導入された遺伝子を持つ形質転換体の作製実施例3により作製したDNA溶液を用いて、下記のようにして大腸菌DH5α株へCaCl2法により形質転換を行った。すなわち、50mM CaCl2で処理したDH5αコンピテント細胞懸濁液にDNA溶液を加え、氷上で30分保持した。得られた形質転換体を、形質転換選択マーカーであるアンピシリン含有寒天プレートにまき、37℃で一晩培養した。アンピシリン耐性を表現型としてもつ形質転換体よりプラスミドDNAを調製し、BspHI消化後アガロースゲル電気泳動にかけることにより、得られた形質転換体のうち、BspHI切断部位をBstFPSコード領域に持つ置換変異型pFPSプラスミドを選択した。【0053】次に、選択した置換変異型pFPSプラスミドのBstFPS遺伝子の82位アミノ酸残基に対するコドン周辺の塩基配列をダイデオキシ法によって決定した。その結果、82位のSerコドン(TCT)がPhe(TTC)コドンに置き換わった置換変異型BstFPS遺伝子(配列番号2)を含むpFPSプラスミドが得られた。この変異体をS82Fと表示し、プラスミドをpFPSmとする。【0054】〔実施例5〕変異型BstFPSの活性測定実施例4で得られた変異型および野生型BstFPS遺伝子を含む2種の形質転換体、さらに、ベクターpTV118Nのみを保持する形質転換体から下記のようにして粗酵素液を調製した。2x LB培地で一晩培養した形質転換体を遠心により集菌し、菌体破砕用緩衝液(50mM Tris−Cl (pH8.0)、 10 mMβ−メルカプトエタノール、1mM EDTA)に懸濁した。これを超音波破砕処理し、さらに、4℃、10,000r.p.m.、10分遠心処理した上清を55℃で30分熱処理し、大腸菌由来のプレニル二リン酸合成酵素活性を失活させた。これをさらに同条件で遠心処理し、その上清を粗酵素抽出液として下記の反応溶液中、55℃で15分反応を行った。【0055】【0056】反応後、3mlの水飽和ブタノールを加えて反応産物をブタノール層に抽出した。得られたブタノール層1mlに液体シンチレーター3mlを加えて、液体シンチレーションカウンターにより放射活性を測定した。結果を図1に示す。図1はS82F変異型BstFPSと野生型BsrFPSの酵素活性を示すグラフである。サンプル番号1、4、7はベクターpTV118Nのみを保持する宿主から調製したもの、サンプル番号2、5、8はS82F変異型BstFPSをコードする遺伝子を保持する宿主から調製したもの、サンプル番号3、6、9は野生型BstFPSをコードする遺伝子を保持する宿主から調製したものである。また、サンプル番号1、2、3はアリル性基質としてDMAPPを用いたときの結果を、サンプル番号4、5、6はアリル性基質としてFPPを用いたときの結果を、サンプル番号7、8、9はアリル性基質としてFPPを用いたときの結果を示す。【0057】図1より、野生型酵素はDMAPPとGPPをアリル性基質として利用できFPPを基質としないが、S82F変異型酵素はGPPをアリル性基質として利用する能力が極端に低下していることがわかる。次に、別途同様に作製した反応液に、反応後すぐにジャガイモ酸性フォスファターゼ溶液(2mg/mlジャガイモ酸性フォスファターゼ、0.5M酢酸ナトリウム(pH4.7))1mlを加えて37℃で脱リン酸化処理をした後、3mlのペンタンで抽出した。これを薄層クロマトグラフィー(逆相TLCプレート:LKC18(Whatmam社製)、展開溶液:アセトン/水=9/1)により解析した。展開された脱リン酸化された反応産物をバイオイメージアナライザーBAS2000(富士写真フィルム社製)にかけ、放射活性の位置及び相対量を決定した。【0058】結果を図2及び図3に示す。図2は、各アリル性基質を用いたときの変異型BstFPS反応産物の脱リン酸化物におけるTLC展開パターンを示す。比較として、野生型BstFPSとベクターのみを保持する宿主より調製したサンプルを用いたときのものも示す。s.f.は溶媒先端、ori.は展開開始点、GOHはゲラニオール標準試料の展開位置、FOHはファルネソール標準試料の展開位置をそれぞれ表す。wild typeは野生型BstFPSを用いたときの結果、S82Fは変異型BstFPSを用いたときの結果、vectorはベクターのみを保持する宿主を用いたときの結果を示す。n.d.は活性が検出されなかったものを表す。図3は、野生型BstFPSと変異型BstFPSの反応産物特異性を示すグラフであって、IPP及びDMAPPを基質とした際のGGPP、FPP及びGPPの生成割合を示すものである。図2及び図3の結果より、野生型BstFPSはFPPを特異的に合成する反応を触媒していたが、S82F変異型BstFPSではGPPを特異的に合成する反応を触媒するようになった。すなわち、S82F変異型BstFPSは、ゲラニル二リン酸合成酵素と呼びうる酵素に変化したことになる。【0059】【発明の効果】本発明により、ゲラニル二リン酸合成酵素、該酵素をコードする遺伝子、該遺伝子を含む組換えベクター、並びにゲラニル二リン酸合成酵素及びゲラニル二リン酸の製造方法が提供される。本発明の遺伝子は、モノテルペン類合成を目的とした代謝工学や酵素工学に利用できる点で有用である。【0060】【配列表】【配列表】【配列表】【0061】【0062】【0063】【0064】【0065】【図面の簡単な説明】【図1】変異型BstFPSと野生型BsrFPSの酵素活性の結果を示す図である。【図2】薄層クロマトグラフの写真である。【図3】変異型BstFPSと野生型BsrFPSの反応産物特異性を示す図である。【図4】ファルネシル二リン酸合成酵素のアミノ酸配列を比較した図である。 以下の(a)又は(b)の組換えタンパク質。(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質(b)配列番号1で表されるアミノ酸配列において第82番目のアミノ酸を除く1または数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつゲラニル二リン酸合成酵素活性を有するタンパク質 以下の(a)又は(b)の組換えタンパク質をコードする遺伝子。(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質(b)配列番号1で表されるアミノ酸配列において第82番目のアミノ酸を除く1または数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつゲラニル二リン酸合成酵素活性を有するタンパク質 配列番号2で表される塩基配列を含む、ゲラニル二リン酸合成酵素遺伝子。 請求項2又は3記載の遺伝子を含む組換えベクター。 請求項4記載の組換えベクターによって形質転換された形質転換体。 請求項5記載の形質転換体を培地に培養し、得られる培養物からゲラニル二リン酸合成酵素を採取することを特徴とするゲラニル二リン酸合成酵素の製造方法。 請求項5記載の形質転換体を培地に培養し、得られる培養物からゲラニル二リン酸を採取することを特徴とするゲラニル二リン酸の製造方法。 請求項5記載の形質転換体の培養物をイソペンテニル二リン酸又はその異性体に作用させることを特徴とするゲラニル二リン酸の製造方法。


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