タイトル: | 特許公報(B2)_α−アミラーゼ阻害剤の使用法 |
出願番号: | 1997329688 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C12N 9/99,C07K 14/36,C12N 9/26,C12R 1/465 |
小野 慎 平野 富也 山崎 偉三雄 島崎 長一郎 吉村 敏章 森田 弘之 JP 4155531 特許公報(B2) 20080718 1997329688 19971114 α−アミラーゼ阻害剤の使用法 ヤヨイ化学工業株式会社 591012738 花村 太 100101432 佐藤 正年 100092082 佐藤 年哉 100099586 小野 慎 平野 富也 山崎 偉三雄 島崎 長一郎 吉村 敏章 森田 弘之 20080924 C12N 9/99 20060101AFI20080904BHJP C07K 14/36 20060101ALI20080904BHJP C12N 9/26 20060101ALN20080904BHJP C12R 1/465 20060101ALN20080904BHJP JPC12N9/99C07K14/36C12N9/26C07K14/36C12R1:465 C12N 9/99 C07K 14/00-14/825 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) J. Org. Chem.,1997年 1月,62,p.93-102 Eur. J. Biochem.,1984年,141,p.505-512 Peptide Chemistry,1997年 3月,1996,p.273-276 日本農芸化学会西日本支部大会およびシンポジウム講演要旨集,1997年10月,236th,p.66, E-11 ペプチド討論会講演要旨集,1996年,34th,p.113 1 1999147896 19990602 10 20041109 吉田 知美 【0001】【発明の属する技術分野】本発明はα−アミラーゼ阻害剤の使用法に関するものである。【0002】【従来の技術】 ストレプトマイセス・テンダエ(Streptomyces tendae)によって生産されたテンダミスタット(Tendamistat (HOE467))は、ブタ膵臓のα−アミラーゼに対して、阻害定数Ki =0.2 nMもの強い阻害活性を示す細胞外酵素で、74アミノ酸からなるタンパク質である(Vertesy,L.,Oeding,V.,Bender,R.,Zepf,K. and Nesemann,G.(1984) Eur.J.Biochem.141,505-512)。【0003】強いα−アミラーゼ抑制の為にテンダミスタットは糖尿病治療のために適用されることが期待されている。このテンダミスタット自身の構造と、膵臓のα−アミラーゼとの複合体構造上の分析は、幾つかの文献に示されるように、X線結晶学とNMR分光学とによって成し遂げられている(Pflugrath,J.W., Wiegand,G., Huber,R. and Vertesy,L.(1986) J.Mol.Biol.189,383-386.)(Kline,A.D., Braun,W. and Wuthrich,K.(1986) J.Mol.Biol.189,367-382.)(Wiegand,G., Epp,O. and Huber,R.(1995) J.Mol.Biol,247,99-110.)(Occonnell,J.F., Bender,R., Engels,J.W., Koller,K.P., Scharf,M. and Wuthrich,K.(1994) Eur.J.Biochem.220,763-770.)。【0004】これらの文献の結果から、テンダミスタットは、ジスルフィド結合によって架橋された小さいループと大きなループと(各々、Cys11-Cys27とCys45-Cys73)からなり、小さいループは、Trp18-Arg19-Tyr20というアクティブな配列(即ち、阻害活性部位)を含んでいるβ−シート中の2つの繋がりを連結するβ−ターンからなることが知られている。【0005】ところで、最近ではβ−ターンの小さいループが注目されている。線状と環状とのペプチドの小さいβ−ターンのモデルについて、設計と形態と活性に関する幾つかの注目すべき報告がある(Blanco,F.J., Jimenez,M.A., Rico,M., Santoro,J., Herranz,J. and Nieto,J.L.(1991) Eur.J.Biochem.200,345-351.)(Etzkorn,F.A., Guo,T., Lipton,M.A., Goldberg,S.D. and Bartlett,P.A.(1994) J.Am.Chem.Soc.116,10412-10425.)(Matter,H. and Kessler,H.(1995) J.Am.Chem.Soc.117,3347-3359.)(Blanco,F.J., Jimenez,M.A., Herranz,J., Rico,M., Santoro,J. and Nieto,J.(1993) J.Am.Chem.Soc.115,5887-5888.)(Tian,Z.Q. and Bartlett,P.A.(1996) J.Am.Chem.Soc.118,943-949.)。【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、阻害活性とループサイズ及び構造との間の関係を調べるために、アクティブな配列を持っている5つの短い環状化ペプチドを合成し、互いを比較した(Hirano,T., Ono,S., Yamazaki,I., Morita,H., Yoshimura,T., Shimazaki,C., Yasutake,H. and Kato,T.(1997)Peptide Chemistry 1996,273-276.)。【0007】具体的には、次の化6に示されたTen(16-22),化7に示されたTen(15-23),化8に示されたTen(14-24),化9に示されたTen(13-25),化10に示されたTen(12-26)を合成し、5つの環状化ペプチドの円二色性(The circular dichroism;CD)スペクトルと阻害活性とを計測し、互いを比較した。【0008】【化6】【0009】【化7】【0010】【化8】【0011】【化9】【0012】【化10】【0013】しかしながら、合成した環状化ペプチド自体の阻害効果が低く、実用に供することができないと考えられた。【0014】本発明者らでは、鋭意努力の結果、テンダミスタット及びテンダミスタットのα−アミラーゼ阻害活性部位を備えた前述の環状化ペプチドの阻害物質をつきとめ、本発明に至った。【0015】本発明は、α−アミラーゼ阻害剤としてのテンダミスタット及びテンダミスタットのα−アミラーゼ阻害活性部位を備えた合成ペプチドを使用する際に、充分なα−アミラーゼ阻害効果を得ることのできる使用法を得ることを目的とする。【0016】【課題を解決するための手段】 本請求項1に記載された発明に係るα−アミラーゼ阻害剤の使用法は、ストレプトマイセス・テンダエ(Streptomyces tendae)が産生するα−アミラーゼ阻害酵素であるテンダミスタット(Tendamistat (HOE467))のα−アミラーゼ阻害活性部位を備えた合成ペプチドを用い、ジメチルスルフォキシド(DMSO)の非存在下でα−アミラーゼの活性を阻害させるに際して、 前記α−アミラーゼ阻害活性部位を備えた合成ペプチドとして、前述の化6に示されたTen(16-22),化7に示されたTen(15-23)の何れかから選ばれた1つ以上を用いるものである。【0018】【発明の実施の形態】本発明においては、α−アミラーゼ阻害剤としてのテンダミスタット及びテンダミスタットのα−アミラーゼ阻害活性部位を備えた環状化ペプチドの活性を阻害する物質が、ジメチルスルフォキシド(DMSO)であることをつきとめた。【0019】ジメチルスルフォキシド(DMSO)は、水をはじめとして、エタノール、クロロホルム、エーテルなどの有機溶媒と任意の割合で混和し、多くの有機化合物を溶解するため、非プロトン性高極性溶剤として有機反応の溶媒に繁用されている。そのため、生化学の実験等には、必ず添加される物質である。【0020】本発明では、ストレプトマイセス・テンダエが産生するα−アミラーゼ阻害酵素であるテンダミスタット又は該酵素のα−アミラーゼ阻害活性部位を備えた合成ペプチドを用い、ジメチルスルフォキシド(DMSO)の非存在下でα−アミラーゼの活性を阻害させることにより、ジメチルスルフォキシドの存在下で行うのに比べて、約100倍もの阻害効果が得られた。【0021】 本発明でのα−アミラーゼ阻害活性部位を備えた合成ペプチドとしては、Trp-Arg-Tyr という阻害活性部位を含み、これをほぼ中心にしてβ−シート中の2つの繋がりを連結するβ−ターンからなるペプチドであればよく、具体的には、前述の化6に示されたTen(16-22),化7に示されたTen(15-23)の何れかから選ばれた1つ以上を用いるものである。【0022】【実施例】次に本発明を具体的な実施例を用いて説明するが、本発明ではこれら実施例に限定されるものではない。【0023】実施例1.環状化ペプチド(合成酵素)の合成環状化ペプチドは、樹脂(SAL樹脂;Watanabe Chemical社製)を使ったFmoc法(Fluorenylmethoxycarbonyl法)によって、固相法の定法に沿ってペプチド合成装置で合成された。図1は前述の化10に示すTen(12-26)の合成の手順を示すフロー図である。図1に示す通り、ペプチドの N-末端とC-末端とへのターミナル影響を取り除くために、acetyl基とamide基とによって保護した。【0024】脱保護と、ペプチドとリンカーレジンとの切り離し(クリーベイジ)との後、生産物は、環状化の前に逆相HPLCによって純化された。環状化ペプチドは、空気による酸化によって、3〜7日で得られる。これは分子中のチオール基(システイン残基中のSH基)が酸化され、分子の中の2つのチオール基が互いに結合(S-S結合)することにより環状化するためである。最終的な生産物は、逆相HPLCで不純物を取り除き、FAB及びTOF−質量分析器 によって分析された。【0025】前述の化6〜化9に示す他の環状化ペプチドも同様の手順で行った。尚、ここで合成された環状化ペプチドTen(16-22),Ten(15-23),Ten(14-24),Ten(13-25),Ten(12-26)のアミノ酸配列は、後述する配列表の配列番号1〜5に示す。【0026】実施例2.環状化ペプチドのCDスペクトルの検証互いの環状化ペプチドの構造を比較するために、100mM Tris-HCl バッファ(pH 7.0)でのCDスペクトルが測定された。図2は5つの環状化ペプチドのCDスペクトル図である。図2に示す通り、Ten(14-24)は、202nmで5つの環状化ペプチドの中で最も深くなり、220nm当たりでなだらかとなっている点で、比較的に異なるCDスペクトルを示した。Ten(13-25)と Ten(16-22)が 204 nm で浅くなっているが、Ten(15-23)では、特徴的なCDバンドは観察されなかった。【0027】一方、それぞれ自然のテンダミスタットの小さいループに対応しているTen(12-26)が、 200nmと230nmの当たりの低い正の、そして浅い谷があるようであった。これらの CD パターンからこれらの環状のペプチドには CD スペクトルに貢献するジスルフィド結合があるので、構造は、直接推定することができない。しかしながら、 CD の変化が、5つの環状化ペプチドの構造における相違を示している。【0028】実施例3.環状化ペプチドのDMSO存在下での阻害活性の検証ブタ膵臓由来のα−アミラーゼに対抗する5つの環状化ペプチドの阻害活性を測定した。【0029】具体的には、合成ペプチドをDMSOに溶解させ、それぞれ3mMのストック溶液を調製した。ブタ膵臓由来のα−アミラーゼ(シグマ社製)は緩衝液(100mM Tris-HCl,pH7.0)に溶解させ、2μMのストック溶液を調製した。アミラーゼ活性の測定には、グルコース定量キットであるダイヤカラーリキッドAMY(小野薬品社製)を使用した。このキット中には酵素試液と基質試液が入っている。【0030】先ず、酵素試液480μlを反応用チューブに入れ、ペプチドストック溶液の適量(0〜70μl)と、α−アミラーゼストック溶液20μlを添加し、37℃で10分間インキュベートした。この反応液に基質試液200μlを加え、37℃で5分間インキュベート後、415nmでのUVスペクトルの吸収強度の増加を測定した。この実験でDMSO含量は0〜10%になる。また対照として、それぞれ同量のDMSOを含むα−アミラーゼの活性を測定した。α−アミラーゼの最終濃度は約60nMである。【0031】図3は5つの環状化ペプチドを添加した際のブタ膵臓由来のα−アミラーゼの残存活性を示す線図である。図3に示す通り、Ten(16-22)とTen(15-23)は、75μMで、それぞれ40%と60%の阻害活性を示した。Ten(13-25)もまた、弱い阻害作用を示した。一方、Ten(14-24)は示さなかった。【0032】しかし、この実施例では、どのような再現性のある結果も、Ten(12-26)に関しては、得られなかった。これはバッファに対するTen(12-26)の低い溶解性のためであると考えられた。【0033】Ten(16-22)とTen(15-23)との阻害定数(Ki)は、それぞれ127μMと121μMであった。これらの阻害定数(Ki)は、アクティブなシーケンスを持っている線型や環状の類似物に似ている(Matter,H. and Kessler,H.(1995) J.Am.Chem.Soc.117,3347-3359.)。【0034】実施例4.テンダミスタット及び環状化ペプチドのDMSO非存在下での阻害活性の検証実施例3で示した通り、最も阻害活性の高い環状化ペプチドTen(16-22)及びTen(15-23)でも、阻害定数(Ki)は、それぞれ127μMと121μMであった。これは、天然のテンダミスタットの阻害定数Ki=0.2nMと比べても、遙かに低いものであった。そこで、DMSOを合成ペプチドの溶媒として使用しない方法を用いた。【0035】先ず、Ten(15-23)を緩衝液(20mM Tris-HCl,pH7.0)に溶かし、0.5〜10μMのストック溶液を調製した。ブタ膵臓由来のα−アミラーゼも同じ緩衝液に溶解させ、20nMのストック溶液を調製した。アミラーゼ活性の測定には、先の実施例3に示したものと同様のキットを用いた。【0036】即ち、α−アミラーゼストック溶液30μlとペプチドストック溶液83μlを反応用チューブに入れ、37℃で10分間インキュベートした。これに酵素試液480μlを加え、2分間インキュベートした。更に、基質試液240μlを添加して、37℃で4分間インキュベートした後、415nmでのUVスペクトルの吸収強度の増加を測定した。α−アミラーゼの最終濃度は0.7nMである。他のペプチドについても、同様の操作を行った。【0037】図4は5つの環状化ペプチドを添加した際のブタ膵臓由来のα−アミラーゼの残存活性を示す線図である。図4に示す通り、Ten(15-23)は1μMで95%もの阻害活性を示した。Ten(16-22)は1.6μMで、50%の阻害活性を示すものの、4μMでもその阻害活性は増加しなかった。他の合成ペプチドTen(12-26),Ten(13-25),Ten(14-24)は全て、この条件では阻害活性を示さなかった。【0038】以上のように、テンダミスタット又は該酵素のα−アミラーゼ阻害活性部位を備えた合成ペプチドで、α−アミラーゼを阻害させる際に、DMSOの非存在下で行うことにより、DMSOの存在下で行うのに比べて、約100倍もの阻害効果が得られた。【0039】【発明の効果】本発明は以上説明したとおり、α−アミラーゼ阻害剤としてのテンダミスタット及びテンダミスタットのα−アミラーゼ阻害活性部位を備えた合成ペプチドを使用する際に、充分なα−アミラーゼ阻害効果を得ることのできる使用法を得ることができるという効果がある。これはおそらく、DMSOによる環状化ペプチドの構造変化が起こり、α−アミラーゼ阻害効果が抑制されることが原因と考えられる。【0040】【配列表】【0041】【0042】【0043】【0044】【図面の簡単な説明】【図1】図1は環状化ペプチドTen(12-26)の合成の手順を示すフロー図である。【図2】環状化ペプチドTen(16-22),Ten(15-23),Ten(14-24),Ten(13-25),Ten(12-26)のCDスペクトル図である。【図3】DMSO存在下での環状化ペプチドTen(16-22),Ten(15-23),Ten(14-24),Ten(13-25),Ten(12-26)を添加した際のブタ膵臓由来のα−アミラーゼの残存活性を示す線図である。【図4】DMSO非存在下での5つの環状化ペプチドを添加した際のブタ膵臓由来のα−アミラーゼの残存活性を示す線図である。 ストレプトマイセス・テンダエ(Streptomyces tendae)が産生するα−アミラーゼ阻害酵素であるテンダミスタット(Tendamistat (HOE467))のα−アミラーゼ阻害活性部位を備えた合成ペプチドを用い、ジメチルスルフォキシド(DMSO)の非存在下でα−アミラーゼの活性を阻害させるに際して、 前記α−アミラーゼ阻害活性部位を備えた合成ペプチドとして、次の化1に示されたTen(16-22),化2に示されたTen(15-23)の何れかから選ばれた1つ以上を用いることを特徴とするα−アミラーゼ阻害剤の使用法。