タイトル: | 特許公報(B2)_潰瘍性大腸炎治療剤 |
出願番号: | 1997316629 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | A61K 36/18,A61K 36/00,A61P 1/04 |
川田 光裕 服部 健一 青野 俊二 JP 5054863 特許公報(B2) 20120803 1997316629 19971104 潰瘍性大腸炎治療剤 帝國製薬株式会社 000215958 草間 攻 100083301 川田 光裕 服部 健一 青野 俊二 20121024 A61K 36/18 20060101AFI20121004BHJP A61K 36/00 20060101ALI20121004BHJP A61P 1/04 20060101ALI20121004BHJP JPA61K35/78 CA61K35/78 WA61P1/04 A61K36/18,36/074 CA,BIOSIS,MEDLINE/STN JSTPLUS,JMEDPLUS/JDREAMII 中国特許出願公開第1121422(CN,A) 三谷和合 他,潰瘍性大腸炎に対する治験,現代東洋医学,1986年,Vol.7,No.1(Suppl),pp.37−38,第38頁左欄 西本隆 他,潰瘍性大腸炎に対する東洋医学アプローチ肝盛脾虚型を示した2例を中心に,日本東洋医学雑誌,1986年,Vol.36,No.4,pp.151−152,第152頁左欄(症例1) 広瀬滋之,潰瘍性大腸炎の1例,現代東洋医学,1986年,Vol.7,No.1 Suppl,pp.35−36 星野恵津夫,消化器疾患と漢方治療 主な消化器疾患と漢方治療 炎症性腸疾患,診断と治療,1996年,Vol.84,No.2,pp.269−272,第270頁左欄 牧田憲太郎,難病・難症の漢方治療 第6集 潰よう性大腸炎に対する漢方併用治療の2症例,現代東洋医学,1994年,Vol.15,No.1,臨増,pp.152−155,症例2 「安心」,マキノ出版/マイヘルス社,1997年,8月号,抜粋,(Eさん) 秋葉哲生,顕著な体重増加をみた潰よう性大腸炎の1例,現代東洋医学,1991年,Vol.12,No.1 臨増,pp.112−114,第113頁右欄 2 1999139980 19990525 13 20041019 2010006647 20100330 横尾 俊一 天野 貴子 渕野 留香 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は芍薬を配合してなる潰瘍性大腸炎治療剤に関し、詳細には、潰瘍性大腸炎の損傷組織を修復する効果が強く、しかもステロイド剤のような副作用を懸念する必要のない、芍薬または芍薬を含有する漢方処方からなる潰瘍性大腸炎治療剤に関する。【0002】【従来の技術】潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis) は、主に大腸、すなわち直腸から盲腸までの間にのみ発生するびまん性非特異的炎症疾患であり、連続性の病変を特徴とする疾患である。炎症の発生部位は粘膜および粘膜下層に限局しており、また緩解と増悪を繰り返し、完全治癒が得られない特徴がある。これらの特徴より、潰瘍性大腸炎の鑑別は比較的容易であるといわれている。【0003】潰瘍性大腸炎の原因については、食事や生活様式等に起因するとの説、あるいは自己免疫説など種々の説があるが未だ確証されておらず、その真の原因はなお不明とされている。その一方で、潰瘍性大腸炎の炎症の増幅過程についてはかなり解明されてきており、その知見は多くの文献、学会等で発表されている。したがって、潰瘍性大腸炎の治療は、原因療法による治療は事実上不可能であり、もっぱら保存療法による治療が行われているのが現状である。【0004】現在では、潰瘍性大腸炎の炎症の増幅機構の解明の知見に基づいた治療薬の開発が積極的に行われており、例えば、白血球やリンパ球除去療法、抗CD4抗体や抗TNF−α抗体等の臨床開発試験が進行中である。しかしながら、実際の臨床の場における潰瘍性大腸炎の治療については、古くから用いられているサルファ剤であるスルファサラジン(商品名:サラゾピリン)やステロイド剤の投与が中心に行われており、これらの薬物投与による治療と栄養管理や精神面の管理等を組み合わせた治療を行い、なお無効な場合には外科的療法を加える治療が主体である。【0005】この薬物療法に用いられるスルファサラジンやステロイド剤については、スルファサラジンは軽症例に対しては比較的有効であるとされ、潰瘍性大腸炎治療における第1選択の薬剤として用いられている。しかし重症例での効果は比較的弱く、また、軽症例においてもステロイド剤との併用が往々にして行われている。さらに炎症の緩解期における治療では、スルファサラジンの単独投与に切り替えられる場合がほとんどであるが、炎症の急性期における効果はスルファサラジンの単体投与では不十分な場合が多い。【0006】一方、ステロイド剤は著効を奏することが多く、内科的治療の主体をなす薬物である。しかし、その副作用については従来より知られるとおり、投与に際しては慎重さを要するほか、投与を中止するいわゆる離脱の際にも、非常に慎重に行わなければならないものである。また、スルファサラジンの有効な活性部分であると考えられている5−ASA(5−アミノサリチル酸)についても、現在臨床的に使用されているが、この薬物に関してもスルファサラジンと同様の問題点が指摘されている。【0007】【発明が解決しようとする課題】したがって本発明は、上記した潰瘍性大腸炎の治療の現状に鑑み、潰瘍性大腸炎の炎症の増幅機構の解明の知見に基づいた治療剤として、炎症部位における組織修復効果が強く、しかもステロイド剤のような副作用のない潰瘍性大腸炎治療剤を提供することを課題とする。【0008】最近に至り、潰瘍性大腸炎の治療に漢方薬を使用する試みが数多くなされており、上記薬物療法と併用して、例えばステロイド剤の抗炎症力を増強する例[和漢医薬学会誌、8,p516(1991);特開平6−40931]、精神的な安定を得る例[現代東洋医学、Vol.13,No.1,p125(1992)]、便秘、下痢等を改善する例[現代東洋医学、Vol.12,No.1,p115(1991)]、さらには人参湯の投与による直接の炎症緩解効果に言及したもの[日本東洋医学雑誌、Vol.42,No.3,p337(1992)]等、その成果が数多く発表されている。【0009】そこで本発明者等は、かかる漢方薬がもたらす潰瘍性大腸炎に対する治療作用に注目し、鋭意研究を行った結果、漢方薬のなかでも芍薬および芍薬を含有する漢方処方である加味逍遥散、当帰芍薬散、芍薬甘草湯または桂枝茯苓丸が、潰瘍性大腸炎の炎症部の組織修復を促進する作用があることを新規に見出し、本発明を完成させるに至った。【0010】【課題を解決するための手段】しかして本発明は、上記の課題を解決するために、芍薬を有効成分とする潰瘍性大腸炎治療剤を提供し、その具体的態様において、芍薬の乾燥粉末を有効成分とする潰瘍性大腸炎治療剤を提供する。さらに本発明は別の態様として、芍薬を含有する漢方処方を有効成分とする潰瘍性大腸炎治療剤、特に芍薬を含有する漢方処方が加味逍遥散、当帰芍薬散、芍薬甘草湯または桂枝茯苓丸である潰瘍性大腸炎治療剤を提供する。【0011】本発明が提供する潰瘍性大腸炎治療剤の有効成分である芍薬としては、上記のごとく芍薬の乾燥粉末あるいは芍薬を含有する漢方処方のみならず、芍薬または芍薬を含有する漢方処方の浸出乾燥エキスの形態であってもよい。したがって、本発明はさらに別の態様として、芍薬の浸出乾燥エキスまたは芍薬を含有する漢方処方の浸出乾燥エキス、特に加味逍遥散、当帰芍薬散、芍薬甘草湯または桂枝茯苓丸の浸出乾燥エキスを有効成分とする潰瘍性大腸炎治療剤を提供する。【0012】従来より漢方処方は、スルファサラジン、ステロイド剤等の投与による治療における補助的な役割、すなわち精神的安静をもたらす作用、下痢を押さえる作用等のみの目的で使用されていたものであるが、その漢方処方のうちでも、芍薬の乾燥粉末、芍薬の浸出乾燥エキスまたは芍薬を含有する漢方処方の浸出乾燥エキスを有効成分として含有する本発明の製剤は、後記する試験結果からも明らかなように潰瘍性大腸炎の損傷組織を修復する効果が強く、しかもステロイド剤のような副作用をもたらす懸念は全くない。したがって本発明は、極めて良好な潰瘍性大腸炎治療剤を提供することができるものである。【0013】【発明の実施の態様】本発明が提供する治療剤における有効成分としての芍薬(Paeoniae Radix)は、中国、朝鮮、日本の各地に栽培されるボタン科の多年草シャクヤク(Paeonia albiflora var. trichocarpa)または近縁植物の根を乾燥したものである。芍薬は、収斂、緩和、鎮痙、鎮痛、冷え症、皮膚疾患薬として、さらには腹満、腹痛、身体疼痛、下痢、化膿性腫瘍等に用いられており、漢方処方である芍薬甘草湯、当帰芍薬散、十全大補湯、小青竜湯、大柴胡湯、柴胡桂枝湯、黄ごん湯、四逆散、当帰建中湯、温経湯、真武湯、桂枝芍薬知母湯等に配合されているものである。【0014】本発明が提供する潰瘍性大腸炎治療剤にあっては、この芍薬の乾燥粉末あるいは芍薬を含有する漢方処方を有効成分として配合してなるものであるが、芍薬の用量としては、1日3〜6gを煎じて服用するのが一般的である。また芍薬の浸出乾燥エキスは、一例を挙げれば、芍薬を細切したもの20gに水10倍量(200ml)を加え、3時間程度加熱還流した後、残留物を濾過して除き、濾液をスプレードライして乾燥エキスとする方法により製造することができ、芍薬の用量として1日3〜6g程度に相当するエキスを服用するのがよい。【0015】一方、芍薬を含有する漢方処方としては、加味逍遥散、当帰芍薬散、芍薬甘草湯または桂枝茯苓丸等をあげることができる。加味逍遥散は、更年期障害、月経不順、自律神経失調症、尿道炎、慢性湿疹、便秘等に用いられる処方であり、一例を挙げると、当帰、芍薬、白朮、茯苓、柴胡各3.0g、甘草、牡丹皮、山梔子各2.0gおよび乾生姜、薄荷各1.0gの薬量比であり、これらの生薬を粉末として合わせて散として服用するか、煎じて服用するのが一般的である。【0016】当帰芍薬散は、不定愁訴症候群、自律神経失調症、更年期障害、メニエール病、低血圧症、高血圧症、内分泌機能障害、鼻炎、湿疹、月経困難症、子宮内膜炎、痔疾、脱肛等に用いられる処方であり、一例を挙げると、当帰、川キュウ各3.0g、芍薬、白朮、茯苓、沢瀉各4.0gの薬量比であり、これらの生薬を粉末にして服用するか、煎じて服用する。また、現在ではエキス顆粒も製造販売されている。【0017】芍薬甘草湯は、腹直筋の異常緊張、横紋平滑筋の異常緊張および疼痛、四肢のひきつれ等のある各種疼痛性疾患に用いられる処方であり、芍薬、甘草各3.0gを600mlの水に入れ、300mlに煮詰めて濾し、1日3回に分けて温服する。【0018】桂枝茯苓丸は、月経不順による諸種の障害、更年期障害、神経症、ノイローゼ、うつ病、湿疹、蕁麻疹、痔核、睾丸炎等に用いられる処方であり、桂枝、茯苓、牡丹皮、桃仁、芍薬を粉末とし、蜜を加えて練り、丸薬として用いるか、あるいは上記生薬を各4.0gずつ取り、600mlの水に入れ、300mlに煮詰めて濾し、1日2〜3回に分けて温服する。【0019】本発明が提供する潰瘍性大腸炎治療剤は、上記の各漢方処方に基づいて生薬を粉末としたもの、丸薬となしたもの、煎じたものを用いることもできるが、服用の容易さ、調剤の容易さ、携帯性等を考慮した場合には漢方の乾燥抽出エキスをそのまま漢方エキス剤として用いることもでき、これをさらに散剤、顆粒剤、細粒剤、錠剤、カプセル剤等に加工したものが好適に用いられる。【0020】上記の漢方の浸出乾燥エキスの製造方法としては、例えば桂枝茯苓丸の場合を例にとって説明すれば、上記した生薬とその配合量に基づいて、600mlの水を使用して煮詰め、300mlに煮詰まったところで濾過した液をスプレードライ、凍結乾燥等適宜の方法で乾燥し、桂枝茯苓丸のエキス粉末を得、そのまま漢方エキス剤として用いればよい。【0021】一方、このエキス粉末を用いて他の製剤の形態に加工する場合には、これに通常の製剤に用いる適当な賦形剤、例えば乳糖、トウモロコシデンプン、結晶セルロース等や滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル等、さらには必要に応じて流動性促進剤、例えば軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム等や崩壊剤、例えばデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースカルシウム等、結合剤、例えばデキストリン、アラビアゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等、界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80等を加え、製剤製造の常法に従って、散剤、顆粒剤、細粒剤、錠剤、カプセル剤等の製剤とすることができる。【0022】また、漢方エキス剤において、2種以上の処方を混合する場合には、各々の処方ごとに別途漢方エキス剤を製し、これを混合して用いてもよいし、あるいは各々の処方のエキス粉末を混合し、これに賦形剤、滑沢剤、流動性促進剤、崩壊剤、結合剤、界面活性剤等を加え、常法により製剤を製してもよい。【0023】【実施例】以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。実施例1(芍薬の水浸出乾燥エキス)芍薬(第13改正日本薬局方適合品)10gに常水10倍量を加え、約100℃で3時間浸出した後、濾過して不溶物を除去し、これを噴霧乾燥し、乾燥物を混合篩過して、均一な粉末状である芍薬の水浸出乾燥エキス2.1gを得た。【0024】実施例2(加味逍遥散の水浸出乾燥エキス)当帰、芍薬、白朮、茯苓、柴胡各3.0g、甘草、牡丹皮、山梔子各2.0gおよび乾生姜、薄荷各1.0gを細切し、混和し、常水10倍量を加え、約100℃で2時間浸出した後、濾過して不溶物を除去し、これを噴霧乾燥し、乾燥物を混合篩過して、均一な粉末状である加味逍遥散の水浸出乾燥エキス4.0gを得た。【0025】実施例3(当帰芍薬散の水浸出乾燥エキス)当帰、川キュウ各3.0g、芍薬、白朮、茯苓、沢瀉各4.0gを細切し、混和し、常水10倍量を加え、約100℃で2時間浸出した後、濾過して不溶物を除去し、これを噴霧乾燥し、乾燥物を混合篩過して、均一な粉末状である当帰芍薬散の水浸出乾燥エキス2.9gを得た。【0026】実施例4(芍薬甘草湯の水浸出乾燥エキス)芍薬、甘草各3.0gを細切し、混和し、常水10倍量を加え、約100℃で2時間浸出した後、濾過して不溶物を除去し、これを噴霧乾燥し、乾燥物を混合篩過して、均一な粉末状である芍薬甘草湯の水浸出乾燥エキス0.9gを得た。【0027】実施例5(桂枝茯苓丸の水浸出乾燥エキス)桂枝、茯苓、牡丹皮、桃仁、芍薬各4.0gを細切し、混和し、常水10倍量を加え、約100℃で2時間浸出した後、濾過して不溶物を除去し、これを噴霧乾燥し、乾燥物を混合篩過して、均一な粉末状である桂枝茯苓丸の水浸出乾燥エキス1.8gを得た。【0028】実施例6(芍薬顆粒剤)芍薬10gを細切した後粉砕し、粉末とした。この粉末6gに乳糖6g、結晶セルロース2.8gおよびステアリン酸マグネシウム0.2gを加えて均一に混合した後、圧縮成型機を用いて成形し、破砕機を用いて破砕し、篩過選別して顆粒剤を得た。【0029】実施例7(芍薬の水浸出乾燥エキス錠剤)実施例1で得た芍薬の水浸出乾燥エキス25.6gに乳糖5g、結晶セルロース5g、カルボキシメチルセルロースカルシウム3g、軽質無水ケイ酸1.2gおよびステアリン酸マグネシウム0.2gを加えて均一に混合した後、打錠機にて圧縮成型し、一錠0.4gの錠剤を得た。【0030】実施例8(芍薬の水浸出乾燥エキスカプセル剤)実施例1で得た芍薬の水浸出乾燥エキス25.6gにトウモロコシデンプン2.4gおよび軽質無水ケイ酸2gを加え、撹拌造粒機を用いて、エタノールを添加しながら撹拌造粒し、得られた造粒物を40℃通風乾燥機中で1日乾燥した後篩過選別して芍薬の水浸出乾燥エキス顆粒を得た。この顆粒0.3gを1号カプセルに充填し、カプセル剤を得た。【0031】実施例9(芍薬散剤)芍薬10gを細切した後粉砕篩過し、粉末とした。この粉末6gに乳糖4g、結晶セルロース6gおよびトウモロコシデンプン2gを加えて均一に混合した後篩過選別し、散剤を得た。【0032】実施例10(加味逍遥散の水浸出乾燥エキス顆粒剤)実施例2で得た加味逍遥散の水浸出乾燥エキス4.5gに乳糖2.5g、結晶セルロース1g、合成ケイ酸アルミニウム0.9gおよびステアリン酸マグネシウム0.1gを加えて均一に混合した後、圧縮成型機を用いて成形し、破砕機を用いて破砕し、篩過選別して顆粒剤を得た。【0033】実施例11(当帰芍薬散の水浸出乾燥エキス顆粒剤)実施例3で得た当帰芍薬散の水浸出乾燥エキス3.2gに乳糖3.5g、結晶セルロース1.2g、軽質無水ケイ酸1g、ショ糖脂肪酸エステル0.02gおよびタルク0.08gを加えて均一に混合した後、圧縮成型機を用いて成形し、破砕機を用いて破砕し、篩過選別して顆粒剤を得た。【0034】実施例12(芍薬甘草湯の水浸出乾燥エキス顆粒剤)実施例4で得た芍薬甘草湯の水浸出乾燥エキス1gに乳糖3g、結晶セルロース1.2g、軽質無水ケイ酸0.73gおよびステアリン酸マグネシウム0.07gを加えて均一に混合した後、圧縮成型機を用いて成形し、破砕機を用いて破砕し、篩過選別して顆粒剤を得た。【0035】実施例13(桂枝茯苓丸の水浸出乾燥エキス顆粒剤)実施例5で得た桂枝茯苓丸の水浸出乾燥エキス2gに乳糖4g、結晶セルロース1.4gおよびステアリン酸マグネシウム0.1gを加えて均一に混合した後、圧縮成型機を用いて成形後、破砕機を用いて破砕し、篩過選別して顆粒剤を得た。【0036】以下に、芍薬あるいは芍薬を含有する漢方処方の、潰瘍性大腸炎に対する治癒効果を試験例に基づいて詳しく説明する。【0037】試験例1Sprague-Dawley系雄性ラット(7週齢)を用い、1群8匹を試験に共した。試験薬剤として、芍薬の水浸出乾燥エキス、桂枝茯苓丸の水浸出乾燥エキス、当帰芍薬散の水浸出乾燥エキス、加味逍遥散の水浸出乾燥エキスならびに芍薬甘草湯の水浸出乾燥エキスを用いた。大腸炎誘発4日前より、各乾燥エキスを水に溶解あるいは分散したものを1日1回経口投与し、剖検前日まで投与を行った。対照群としては同量の水を経口投与した。潰瘍性大腸炎誘発は、薬物投与開始4日後に、ラットを麻酔下、90mgのトリニトロベンゼンスルホン酸(TNB)を20%エタノール1.5mlに溶解した溶液を経肛門的に投与して、大腸炎を誘発した(Gastroenterology 96,795 〜803(1989))。大腸炎誘発後7日目にラットを屠殺して、以下に記す項目について評価を行った。また、有意差検定には Dunnett検定を用いた。【0038】1)結腸湿重量肛門より8cmまでの結腸を摘出し、その湿重量を測定した。【0039】2)癒着の肉眼的評価炎症性細胞の浸潤による漿膜等の結合織化を肉眼的に観察し、以下の分類に従いスコアー化した。【0040】0:癒着を全くしていないもの1:やや癒着しているもの(指で容易に剥離できる)2:癒着の強いもの3:完全に癒着しているもの【0041】3)重症度の肉眼的評価大腸炎の重症度の程度を以下の分類に従って評価し、スコアー化した。【0042】0:ダメージなし1:僅かな腸壁の肥厚、限局性の充血なし、粘膜エロジオンなし2:充血と腸壁の肥厚もしくは充血なしの強い腸壁の肥厚3:充血を伴う1つのエロジオンと腸壁の肥厚4:2つ以上の充血を伴うエロジオンもしくは腸壁の肥厚5:2つ以上のダメージもしくは結腸に2.5cm以下のダメージがあるもの6〜9:ダメージが2.5cm以上の場合は、0.5cmごとに1追加各々の漢方処方ごとの結果について、表1〜表5に示す。【0043】【表1】【0044】【表2】【0045】【表3】【0046】【表4】【0047】【表5】【0048】表1に示されるように、芍薬乾燥エキス12.8mg〜102.4mg/kg/日の経口投与で、腸管湿重量、癒着および重症度は何れも対照群に比べて低い値を示し、特に腸管湿重量は12.8mg、51.2mgおよび102.4mg/kg/日投与群で有意な抑制を示し、重症度は51.2mgおよび102.4mg/kg/日投与群で有意な抑制を示した。しかし、256mg/kg/日投与群では対照群に比べて抑制を示さず、芍薬乾燥エキスの有効投与量は約10mg〜約110mg/kg/日の範囲であると考えられた。【0049】表2に示される、加味逍遥散乾燥エキスの結果では、235mg〜940mg/kg/日の投与において腸管湿重量および重症度の有意な抑制を示し、癒着に関しても抑制傾向を認めた。なお、加味逍遥散中の芍薬の含有量は、235mg中で25.6mg、940mg中で102.4mgに相当する。【0050】表3に示される、当帰芍薬散乾燥エキスの結果では、128mg〜512mg/kg/日の投与において腸管湿重量および重症度の有意な抑制を示し、癒着に関しては128mg/kg/日の投与において有意な抑制を、他の投与量においても抑制傾向を認めた。なお、当帰芍薬散中の芍薬の含有量は、128mg中で25.6mg、512mg中で102.4mgに相当する。【0051】表4に示される、芍薬甘草湯乾燥エキスの結果では、71mg〜142mg/kg/日の投与において腸管湿重量の有意な抑制を示し、重症度では142mg/kg/日の投与で有意な抑制、71mg/kg/日で抑制傾向を認め、癒着では何れの投与量でも抑制傾向を認めた。なお、芍薬甘草湯中の芍薬の含有量は、71mg中で25.6mg、142mg中で51.2mgに相当する。【0052】表5に示される、桂枝茯苓丸乾燥エキスの結果では、40.6mg〜406mg/kg/日の投与において腸管湿重量の有意な抑制を示し、重症度では406mg/kg/日の投与で有意な抑制を、その他の投与量で抑制傾向を認め、癒着では何れの投与量でも抑制傾向を認めた。なお、桂枝茯苓丸中の芍薬の含有量は、40.6mg中で12.8mg、406mg中で128mgに相当する。【0053】以上の結果から分かるように、芍薬および芍薬を含有する漢方処方において、これらを経口投与することにより、潰瘍性大腸炎を抑制することが可能であることが理解される。しかしながら、芍薬乾燥エキスの投与量が128mg/kg/日を超過した場合には、その抑制効果が失われることより、本発明の潰瘍性大腸炎治療剤としては、芍薬乾燥エキスの投与量として約10mg/kg/日〜約110mg/kg/日の投与量となるような配合で処方されるのが好ましい。【0054】【発明の効果】以上の結果に示されるとおり、本発明が提供する芍薬を配合してなる潰瘍性大腸炎治療剤は、優れた潰瘍性大腸炎治療作用を有するものである。したがって、本発明の潰瘍性大腸炎治療剤は、潰瘍性大腸炎の損傷組織を修復する効果が強いものであり、しかもステロイド剤のような副作用を懸念する必要がないため、潰瘍性大腸炎治療に有用なものである。 加味逍遙散、当帰芍薬散、芍薬甘草湯及び桂枝茯苓丸から選択される少なくとも1種の漢方処方を有効成分とする潰瘍性大腸炎治療剤。 加味逍遙散、当帰芍薬散、芍薬甘草湯及び桂枝茯苓丸の浸出乾燥エキスの1種を有効成分とする潰瘍性大腸炎治療剤。