タイトル: | 特許公報(B2)_二量化アルデヒドの製造方法 |
出願番号: | 1997266025 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C07C 45/74,C07C 47/21,B01J 23/04,C07B 61/00 |
森 知行 藤田 幸一 JP 3870509 特許公報(B2) 20061027 1997266025 19970930 二量化アルデヒドの製造方法 三菱化学株式会社 000005968 長谷川 曉司 100103997 森 知行 藤田 幸一 20070117 C07C 45/74 20060101AFI20061221BHJP C07C 47/21 20060101ALI20061221BHJP B01J 23/04 20060101ALN20061221BHJP C07B 61/00 20060101ALN20061221BHJP JPC07C45/74C07C47/21B01J23/04 XC07B61/00 300 C07C 45/00-47/58 特開昭62−195341(JP,A) 特開昭49−100014(JP,A) 特表平07−505390(JP,A) 特公昭39−024787(JP,B1) 特開昭50−084509(JP,A) 特公昭44−014328(JP,B1) 特開平03−279336(JP,A) 特開平09−136855(JP,A) 6 1999106362 19990420 7 20030827 井上 千弥子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、アルデヒドを塩基性触媒の存在下に縮合反応及び脱水反応させて二量化アルデヒドを製造する方法に関する。詳しくは、アルデヒドの縮合反応及び脱水反応において、アルデヒド三量体等の望ましくない高沸点化合物の生成を抑制し、二量化アルデヒドを高選択率で製造する方法に関するものである。【0002】【従来の技術】アルデヒドをアルカリ水溶液等の塩基性物質を触媒として縮合反応及び脱水反応させることにより、二量化アルデヒドを製造することはよく知られている。例えば、n−ブチルアルデヒド(以下、NBDと表す)を縮合・脱水反応させると、2−エチルヘキセナール(以下、EPAと表す)が得られる。しかしながら、この縮合・脱水反応方法においては、目的生成物である二量化アルデヒド(二量体)が更に反応して、例えば、三量体、四量体等の高沸点化合物が生成し、二量化アルデヒドの収率がかなり低下することが知られている。こうした問題点に対し、従来、次のような種々の改良が提案されている。【0003】例えば、特公昭39−24787号公報には、NBDとアルカリ水溶液とを充填物又は目皿を入れた塔内で向流接触させ、かつこの塔に脈動を与え、NBDを微粒化させてEPAを製造する方法が記載されている。また、特公昭52−43810号公報には、NBDとアルカリ水溶液とを、攪拌混合器及び管型反応器を用い、120〜130℃の温度及び4〜5kg/cm2Gの圧力条件下で反応させる方法が記載されている。【0004】更に、フランス特許第2058532号明細書には、目皿塔を用いて苛性ソーダ希薄水溶液によりアセトアルデヒドをアルドール化反応させる方法が開示されており、反応を所望の選択率で行うために、塔底にアルカリ触媒を中和するための酢酸を加えてアルドール化反応を希望の段階で停止させることが記載されている。この方法では、アセトアルデヒドをアルカリ触媒によりアルドール化反応させる際に脱水反応まで同時に実施しようとすると、二量体であるクロトンアルデヒドのγ位の水素が移動することによりエノレートイオンが生成し、このエノレートイオンが更に縮合を繰り返し、最後に重合物になる可能性があるため、酢酸のような一種の反応停止剤を反応系に導入しているものである。【0005】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特公昭39−24787号公報に記載の方法では、生成したEPAの収率はせいぜい94%であり、また、特公昭52−43810号公報に記載の方法においても、アルドール生成物及び高沸点生成物の生成量が多く、また未反応のNBDも数%と多いことから、従来技術においてはEPA等の二量化アルデヒドの収率は満足できるものではなかった。【0006】一方、こうした問題を解決するため、副生する高沸点化合物を原料アルデヒドと不飽和アルデヒドとに分解させて回収する方法(特公昭39−24952号、特公昭39−17907号各公報)や、アルドール縮合生成物を水添反応工程に導入する前に蒸発器において高沸点化合物を分離し、この高沸点化合物を縮合反応工程へ還流させることにより縮合工程の収率を向上させる方法(特開昭51−41309号公報)も提案されている。しかしながら、こうしたプロセスを工業的に採用した場合には工程が複雑となり、高沸点化合物の分解装置や除去装置が更に必要となるため、建設費が増加することとなり経済的に不利であった。【0007】更に、フランス特許第2058532号明細書に記載の方法では、酢酸を添加するので、アルカリ触媒を繰り返し使用することが現実的に不可能であり、商業的に不利であった。本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、アルデヒドを縮合・脱水反応させて、二量化アルデヒドを製造する方法において、二量化アルデヒドを高収率で製造する方法を提供することにある。【0008】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、アルデヒドの縮合脱水反応を特定条件下に行うことにより、望ましくない高沸点化合物の生成を効果的に抑制し、目的生成物である二量化アルデヒドを高収率で製造し得ることを見出して本発明に到達した。【0009】即ち本発明の要旨は、原料アルデヒドを塩基性触媒水溶液の存在下に縮合反応及び脱水反応させて二量化アルデヒドを製造する方法において、原料アルデヒドを塩基性触媒水溶液に、気体の状態で接触させ、かつ反応温度を反応により生成する二量化アルデヒドと水との共沸温度とし、反応により生成した二量化アルデヒドを水と共に共沸させながら反応を行わせることを特徴とする二量化アルデヒドの製造方法、に存する。【0010】【発明の実施の形態】以下、本発明につきさらに詳細に説明する。本発明方法においては、原料アルデヒドを塩基性触媒水溶液の存在下に縮合反応及び脱水反応させることにより、二量化アルデヒドを製造する。本発明方法において用いられる原料アルデヒドは、塩基性触媒により縮合反応及び脱水反応をなし得るものである限り、特に制限はないが、α位に水素原子を1〜2個有するアルデヒドが好ましく、中でもα位に水素原子を2個有する飽和アルデヒドが更に好ましい。原料アルデヒドは単品でも混合物としても用いることができる。具体的には、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、2−メチルブチルアルデヒド等が挙げられ、好ましくはn−ブチルアルデヒド、又はバレルアルデヒド、中でもn−ブチルアルデヒドを用いる。【0011】本発明方法において用いられる塩基性触媒としては、縮合反応及び脱水反応を促進し得るものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属を含有する塩基性化合物、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミンなどの各種アミン化合物、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウムなどの水酸化第四アンモニウム等の水溶性の塩基性化合物が挙げられる。この中でも、水溶性の無機塩基性化合物が好ましく、特にアルカリ金属の無機塩基性化合物、具体的には水酸化物が好ましい。【0012】本発明方法において、塩基性触媒は水溶液として使用するが、この水溶液中における塩基性触媒の濃度は、通常、0.1〜20重量%であり、好ましくは1〜10重量%、更に好ましくは2〜5重量%である。触媒の濃度が低すぎる場合は、反応速度が低下するため反応器の容器が過大となる。また、触媒の濃度が高すぎる場合には、望ましくない副生物の生成量が増加し、目的物である二量化アルデヒドの収率が低下するという問題がある。【0013】本発明方法においては、原料アルデヒドを気体の状態で上記塩基性触媒水溶液と接触させ、且つ、反応温度を反応により生成する二量化アルデヒドと水との共沸温度となるように設定して反応を行わせ、反応により生成した二量化アルデヒドを水と共に共沸させながら反応を行う。即ち、気体状態の原料アルデヒドを塩基性触媒水溶液に吸収させることによってアルデヒドを触媒水溶液中に導入してそこで反応を進行させ、反応により生成した二量化アルデヒドを水との共沸により塩基性触媒水溶液から蒸発させる。従って反応帯域には蒸発した二量化アルデヒド及び水を含む気相と、主として塩基性触媒水溶液から成る液相とが存在する。この方法を採ることにより、生成した二量化アルデヒドと原料アルデヒドとの逐次反応、及び生成した二量化アルデヒド同士の逐次自己縮合反応等による望ましくない高沸点化合物の生成を抑制し、目的物である二量化アルデヒドを高収率で得ることが出来る。【0014】なお、上記の二量化アルデヒドと水との共沸温度とは、例えば原料のアルデヒドがNBDの場合には、生成する二量化アルデヒドはEPAであるので、反応を大気圧下で行う場合、反応温度はEPAと水との大気圧下における共沸温度である97℃として反応を実施する。反応圧力には特に制限はなく、任意の圧力を選択することが出来るが、一般には、大気圧〜10kg/cm2Gの範囲である。また、反応器内における滞留時間は、通常、5分〜2時間程度である。【0015】本発明方法において原料として用いるアルデヒドは通常、常温で液体であるが、前述したように本発明においては原料アルデヒドを気体の状態で塩基性触媒水溶液と接触させる必要がある。従って、通常、液状の原料アルデヒドを、蒸発器等を用いて気化させた後、反応器内において塩基性触媒水溶液と接触させる。反応器への原料アルデヒドと塩基性触媒水溶液との供給比は、生成する二量化アルデヒドの共沸組成に応じて適宜決定すればよい。通常は、原料アルデヒドが全て二量化アルデヒドとなって水と共沸した場合においても、塩基性触媒水溶液が前記した濃度範囲にあるように両者の供給比を決定する。例えばNBDからEPAを製造する場合には、EPA−水の共沸組成物はEPAに対し約3重量倍の水を含んでいるので、NBDの約3重量倍の水が蒸発するものとして反応器に供給する塩基性触媒水溶液の濃度及び量を決定すればよい。【0016】本発明方法において縮合反応及び脱水反応に用いる反応器としては、公知のものを用いることが出来るが、具体的には、水と生成二量化アルデヒドとの共沸効率を高くする、即ち生成二量化アルデヒドの蒸発効率を向上させるため、不活性充填物を内装した充填塔、及び、塩基性触媒水溶液を薄膜状態で流動させる濡れ壁塔等が好ましい。【0017】前述の如く反応器内には、蒸発した二量化アルデヒドと水とを含む気相と、主として塩基性触媒水溶液から成る液相とが存在しているが、両者は別々に外部に抜き出して処理することもできるし、両者が混合した気液混相流として外部に抜き出して処理することもできる。本発明では生成した二量化アルデヒドはその大部分が気相に存在するので、気相と液相とは別々に取り出すのが好ましい。液相は主としてそのまま反応器に塩基性触媒水溶液として循環し、気相は冷却して凝縮させた後、油水分離して、主として二量化アルデヒドから成る油相を回収し、水相は水バランス上、その一部を系外に排出し、残部は反応器に循環する。所望ならば、液相を反応器に循環する前に油水分離して、共存する有機物を除去することもできる。【0018】気液混相流で抜き出した場合には、冷却液化した後、油水分離して、主として二量化アルデヒドからなる油相を回収し、水相はその一部を系外に排出し、残部は新たな塩基性触媒を追加して反応器に循環する。いずれの方法でも回収された二量化アルデヒドは通常はさらに蒸留して精製する。【0019】【実施例】以下に実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。実施例1図1に示す装置を用いて、プロピレンのヒドロホルミル化反応により得られたNBDの縮合脱水反応を行った。【0020】反応器1として、内径50mm、高さ1000mmのガラス製の二重管式反応器を用いた。この反応器の外側には、外管2を設置して反応温度を維持するためのシリコンオイルを循環させ、また反応器内部には、1/4インチ径のセラミックボールを一杯に充填し、内部温度を測定するための熱電対を取り付けた。液状の原料NBDを流路3から、反応器入口前に設置した蒸発器にフィードポンプを用いて導入し完全に気化させた後、40g/hrの流量で、反応器1内に供給した。 また、塩基性触媒として2%のNaOH水溶液を用い、流路6から、フィードポンプ7を用いて反応器入口前に設置した予熱器8に導入して予熱を行った後、1000g/hrの流量で、反応器に供給した。反応は大気圧下で行い、内部温度をEPAと水との共沸温度である97℃に維持するように、反応器外管2内を循環するシリコンオイルの温度を調節した。【0021】反応器最下部の流路9より抜き出した反応生成物と塩基性触媒水溶液からなる気液混相流は、反応器出口に設置した冷却器10により全量液化させ、その後、油水分離器11により目的生成物であるEPAを含有する油相と塩基性触媒水溶液とを分離し、それぞれ流路12及び流路13から抜き出した。油相をガスクロマトグラフィーにより分析した。結果を表−1に示す。【0022】実施例2図2に示す装置を用いて、NBDの縮合脱水反応を行った。反応器1として、内径25mm、高さ500mmのSUS製の反応器を用いた。この反応器の内部には、不活性充填剤として、1/16インチDIXONパッキンを一杯に充填し、反応器の外側には電気炉2’を設置して加温した。【0023】原料NBD及び塩基性触媒は、実施例1と同様の方法で反応器に供給した。反応圧力は、1.0kg/cm2Gの加圧下とし、反応温度は、EPAと水との共沸温度である120℃とした。なお反応圧力は、反応器出口に設置した生成EPA及び塩基性触媒水溶液のサンプリングポット14の気相部に連結する供給管15に窒素ガスを導入し、圧力調節弁16により反応器内部の圧力を調節した。【0024】反応器最下部の流路9より抜き出した反応生成物と塩基性触媒水溶液の気液混相流は、反応器出口に設置した冷却器10により全量液化させ、サンプリングポット14に捕集した。 その後、油水分離器11により目的生成物であるEPAを含有する油相と塩基性触媒水溶液とを分離し、それぞれ流路12及び流路13から抜き出した。油相をガスクロマトグラフィーにより分析した。結果を表−1に示す。【0025】比較例1反応器の内部温度を90℃、反応圧力を大気圧とした以外は、実施例2と同様に実施した。結果を表−1に示す。【0026】【表1】【0027】【発明の効果】本発明方法によってアルデヒドの二量化を行うことにより、目的とする二量化アルデヒドを高収率で製造することが出来る。【図面の簡単な説明】【図1】実施例1で使用した反応装置系の構成図である。【図2】実施例2で使用した反応装置系の構成図である。【符号の説明】1:反応器3:NBD供給流路6:触媒液供給流路10:冷却器11:油水分離器 原料アルデヒドを塩基性触媒水溶液の存在下に縮合反応及び脱水反応させて二量化アルデヒドを製造する方法において、原料アルデヒドを塩基性触媒水溶液に、気体の状態で接触させ、かつ反応温度を反応により生成する二量化アルデヒドと水との共沸温度とし、反応により生成した二量化アルデヒドを水と共に共沸させながら反応を行わせることを特徴とする二量化アルデヒドの製造方法。 原料アルデヒドを塩基性触媒水溶液の存在下に縮合反応及び脱水反応させて二量化アルデヒドを製造する方法において、生成する二量化アルデヒドと水との共沸温度に維持されている反応器に気体状態の原料アルデヒド及び塩基性触媒水溶液を連続的に供給し、反応器内に生成した二量化アルデヒド蒸気及び水蒸気を含む気相と主として塩基性触媒水溶液から成る液相とを維持しつつ反応を行わせることを特徴とする二量化アルデヒドの製造方法。 原料アルデヒドと接触する塩基性触媒水溶液中の塩基性触媒の濃度が0.1〜20重量%である請求項1または2に記載の二量化アルデヒドの製造方法。 縮合反応及び脱水反応を行う反応器が、不活性充填物を内装した充填塔である請求項1〜3のいずれかに記載の二量化アルデヒドの製造方法。 原料アルデヒドが、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、又はこれらの混合物からなる請求項1〜4のいずれかに記載の二量化アルデヒドの製造方法。 塩基性触媒が水溶性の無機塩基性化合物からなる触媒である請求項1〜5のいずれかに記載の二量化アルデヒドの製造方法。