タイトル: | 特許公報(B2)_トリシクロデカンジアルデヒドの製造方法 |
出願番号: | 1997262777 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07C 45/50,C07C 47/347,B01J 31/04,B01J 31/24,C07B 61/00 |
徳安 仁 尾松 俊宏 大西 孝志 JP 4223085 特許公報(B2) 20081128 1997262777 19970910 トリシクロデカンジアルデヒドの製造方法 株式会社クラレ 000001085 徳安 仁 尾松 俊宏 大西 孝志 20090212 C07C 45/50 20060101AFI20090122BHJP C07C 47/347 20060101ALI20090122BHJP B01J 31/04 20060101ALI20090122BHJP B01J 31/24 20060101ALI20090122BHJP C07B 61/00 20060101ALN20090122BHJP JPC07C45/50C07C47/347B01J31/04 XB01J31/24 XC07B61/00 300 C07C 45/50 C07C 47/347 B01J 31/04 B01J 31/24 C07B 61/00 CAplus(STN) REGISTRY(STN) 特表平06−501958(JP,A) 特開昭58−021638(JP,A) 特開昭56−030938(JP,A) 5 1999080068 19990323 10 20040603 小川 由美 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ジシクロペンタジエンをヒドロホルミル化することによる3,8−ジホルミルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、3,9−ジホルミルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、4,8−ジホルミルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、4,9−ジホルミルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンまたはこれらの混合物(以下、「3(または4),8(または9)−ジホルミルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン」または「トリシクロデカンジアルデヒド」と総称することがある)の製造方法に関する。本発明によって得られるトリシクロデカンジアルデヒドは、例えば水素化することによって、ポリエステルなどの高分子化合物の原料として有用な3(または4),8(または9)−ジヒドロキシメチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(以下、これをTCDDMと略称することがある)に変換することができる。【0002】【従来の技術】ジシクロペンタジエンをロジウム化合物および単座配位性第3級有機リン化合物の存在下に、水素および一酸化炭素と反応させてトリシクロデカンジアルデヒドを製造する方法は公知である。例えば、▲1▼特開昭58−21638号公報には、その実施例1において、トルエン中、70〜80kg/cm2(ゲージ圧)の圧力下、100〜120℃、ロジウム濃度1.4ミリモル/リットル、トリフェニルホスフィン濃度16ミリモル/リットルでジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化反応を実施した例が開示されており、85%の収率でトリシクロデカンジアルデヒドが生成したことが記載されている。また、▲2▼特表平6−501958号公報には、参照例4として、ジイソプロピルベンゼン中で19kg/cm2の圧力下、95℃〜125℃、ロジウム濃度約1.6ミリモル/リットル、トリシクロヘキシルホスフィン濃度約5ミリモル/リットルでジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化反応を実施した例が開示されており、50%の収率でトリシクロデカンジアルデヒドが生成したことが記載されている。【0003】上記において、出発原料として使用されるジシクロペンタジエンは、シクロペンタジエンがディールス・アルダー反応によって2量化してなる化合物であり、熱分解によりシクロペンタジエンを与える。ジシクロペンタジエンは融点が33.6℃の化合物であり、加温して溶融した状態とすることにより取扱いが容易なものとなるが、加温の温度が高くなる程、また加温の期間が長くなる程熱分解の割合が多くなる。特に40℃を越える雰囲気下では、ジシクロペンタジエンの熱分解が促進される傾向にある。また、ジシクロペンタジエンの原料となるシクロペンタジエンは、ナフサの熱分解の副産物であるC5留分から得られているが、イソプレンやブタジエン等の共役ジエンを含有していることがある。このため、シクロペンタジエンの2量化物であるジシクロペンタジエンもこのような共役ジエンを含有していることがある。【0004】【発明が解決しようとする課題】シクロペンタジエン、イソプレン、ブタジエン等の共役ジエンはヒドロホルミル化反応条件下でロジウム化合物と安定な錯体を形成するため、ヒドロホルミル化反応を受けにくいことが知られている。従って、ジシクロペンタジエンを水素および一酸化炭素と反応させてトリシクロデカンジアルデヒドを製造するに際しては、ジシクロペンタジエンの炭素−炭素二重結合の一つがヒドロホルミル化されてなるモノアルデヒド体を経由してトリシクロデカンジアルデヒドが生成するが、上記のように反応条件下で生成するシクロペンタジエンや、原料中に不純物として混入しているイソプレン、ブタジエンといった共役ジエンによる反応速度の低下、あるいは極端な場合には反応停止といった反応阻害の問題を解決することが、反応を円滑に進行させる上で重要である。【0005】共役ジエンによる反応阻害を解決する方法としては、i)ジシクロペンタジエンを再結晶によって精製し、不純物として混入している共役ジエンの含有量を低減する、ii) 溶媒を用いて希釈し、反応液中の共役ジエンの濃度を低減する、iii)ロジウム化合物や単座配位性第3級有機リン化合物の使用量を増加させる、といった方法があるが、いずれも目的化合物の製造コストが増大するので工業的に実施する上で有利とはいえない。また、これらの方法に従ったとしても、反応条件下で生成するシクロペンタジエンを絶無にすることは困難である。ここで、上記▲1▼または▲2▼に記載されたジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化反応条件を検討してみると、▲1▼に記載された方法では、ロジウム化合物およびトリフェニルホスフィンをそれぞれ反応液中1.4ミリモル/リットル、16ミリモル/リットルという比較的高い濃度で使用し、70〜80kg/cm2(ゲージ圧)の圧力下、85%の収率でトリシクロデカンジアルデヒドを得ているが、▲2▼に記載された方法では、ロジウム化合物を1.6ミリモル/リットルという比較的高い濃度で使用しているにもかかわらず、トリシクロヘキシルホスフィンを5ミリモル/リットルの濃度とし、19kg/cm2の圧力下で反応を実施したところ、トリシクロデカンジアルデヒドの収率は50%に止まっている。このように、上記▲1▼、▲2▼の方法は、いずれも反応条件として高圧であることのみならず、高いロジウム濃度を採用することが必要であり、工業的に実施するのに適しているとはいい難い。しかして本発明は、ジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化反応を比較的低いロジウム濃度の反応条件においてさえも円滑に行うことができ、ひいてはトリシクロデカンジアルデヒドを工業的に有利に製造することのできる方法を提供することを課題とする。【0006】【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ロジウム化合物および単座配位性第3級有機リン化合物の存在下にジシクロペンタジエンを水素および一酸化炭素と反応させてトリシクロデカンジアルデヒドを製造するに際して、反応系にジエノフィルを存在させることによって反応条件下で生成するシクロペンタジエンや、原料中に不純物として混入しているイソプレン、ブタジエンといった共役ジエンによる反応阻害を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。【0007】すなわち、本発明は、ロジウム化合物、単座配位性第3級有機リン化合物およびジエノフィルの存在下に、ジシクロペンタジエンを水素および一酸化炭素と反応させることを特徴とする3(または4),8(または9)−ジホルミルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンの製造方法であって、該ジエノフィルが電子吸引性基によって活性化された炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有する化合物である3(または4),8(または9)−ジホルミルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンの製造方法である。【0008】本発明において、ジシクロペンタジエンとしては、どのような方法で製造したものを使用してもよいが、一般に共役ジエンを100〜2000ppm程度含有するものが工業的に入手容易である。なお、ジシクロペンタジエンは、後述する溶媒を少量添加して溶液状で使用することもできる。【0009】上記でいう共役ジエンとは、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、シクロペンタジエンなど、共役系の炭素−炭素二重結合を有する有機化合物のことを意味する。【0010】また、本発明において用いるロジウム化合物としては、ヒドロホルミル化触媒能を有するかまたはヒドロホルミル化反応条件下にヒドロホルミル化触媒能を有するように変化する任意のロジウム化合物を使用することができ、例えば、Rh4(CO)12、Rh6(CO)16、Rh(acac)(CO)2、酸化ロジウム、塩化ロジウム、ロジウムアセチルアセトナート、酢酸ロジウムなどが挙げられる。ロジウム化合物は、ヒドロホルミル化反応液1リットル当たり、ロジウム原子換算で通常0.001〜1ミリグラム原子、好ましくは0.005〜0.5ミリグラム原子となるような濃度範囲で使用される。【0011】本発明において使用される単座配位性第3級有機リン化合物は、代表的には下記の式(2)P(R1)(R2)(R3) (2)(式中、R1、R2およびR3はそれぞれアリール基、アリールオキシ基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基またはアラルキル基を表す)で示すことのできる化合物である。【0012】上記の式(2)において、R1、R2およびR3が表すアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、t−ブチルフェニル基などが挙げられ、R1、R2およびR3が表すアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、o−t−ブチルフェノキシ基、o−エチルフェノキシ基などが挙げられる。また、R1、R2およびR3が表すアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基などが挙げられ、R1、R2およびR3が表すアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基などが挙げられる。さらに、R1、R2およびR3が表すシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、R1、R2およびR3が表すアラルキル基としては、例えば、ベンジル基などが挙げられる。R1、R2およびR3はヒドロホルミル化反応を阻害しない限りいかなる置換基を有していてもよい。【0013】ここで、本発明において使用される単座配位性第3級有機リン化合物の具体例を示せば、トリフェニルホスファイト、トリス(2−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−エチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−イソプロピルフェニル)ホスファイト、トリス(2−フェニルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、ビス(2−メチルフェニル)(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2−t−ブチルフェニル)(2−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のホスファイト類;トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィン等のホスフィン類などが挙げられる。【0014】これらの単座配位性第3級有機リン化合物は単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。【0015】単座配位性第3級有機リン化合物の使用量は、通常、ヒドロホルミル化反応液1リットル当たり0.1ミリモル以上、好ましくは0.5ミリモル以上となる量である。なお、単座配位性第3級有機リン化合物の使用量の上限については特に制限はないが、一般的にはヒドロホルミル化反応液1リットル当たり20ミリモル程度であり、ヒドロホルミル化反応液1リットル当たり10ミリモル以下とすることが好ましい。また反応液への溶解度によって、単座配位性第3級有機リン化合物の使用量の上限が定まる場合もある。【0016】また、本発明では、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンなどの2座配位性ジホスフィノアルカン類を、ロジウム1グラム原子当たり0.2〜2モルの割合で添加してもよい。【0017】本発明において使用されるジエノフィルとは、いわゆるディールスアルダー反応において、共役ジエンに付加する性質を有する化合物のことをいい、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アシロキシ基、フェニル基、スルホニル基、アルコキシ基、アミノ基、シアノメチル等の電子吸引性基によって活性化された炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有する化合物である。本発明において使用可能なジエノフィルとしては、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、アクリル酸、アクリル酸メチル、ベンザルアセトン、エチリデンマロン酸ジエチル、N−メチルマレイミド、アセチレンジカルボン酸ジメチル、アクロレイン、メチルビニルケトン、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、2,7−オクタジエノール、アクリロニトリル、テトラシアノエチレン、2−ニトロプロペン、スチレン、シクロプロペン、4−フェニル−1,2,4−トリアゾリンジオン、メチルビニルエーテル、酢酸ビニル、フェニルビニルスルフィド、フェニルビニルスルホン、テトラクロロエチレン、1,2−ジブロモエタンなどが挙げられる。ジエノフィルは1種類のものを使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。【0018】ジエノフィルは、共役ジエンに対して少なくとも0.5倍のモル数を使用することが好ましい。ただし1分子中に複数の共役ジエン構造を有する共役ジエンに対してはそれぞれの共役ジエン構造に対して0.5倍以上のモル数のジエノフィルを使用するのがよい。ジエノフィルの使用量の上限については特に制限はないが、通常、ジシクロペンタジエン1モルに対して20ミリモル程度とすれば十分である。【0019】本発明において、ジシクロペンタジエンとジエノフィルは、別個に反応系に添加してもよいが、予めジシクロペンタジエン中にジエノフィルの少なくとも一部を添加しおくことが好ましい。なお、予めジエノフィルを添加しておく場合、ジエノフィルを添加した後のジシクロペンタジエンはヒドロホルミル化反応を施すまでの間、80℃以下の温度で保存しておくことが望ましい。【0020】本発明に従うヒドロホルミル化反応は、通常60〜160℃、好ましくは80〜140℃の範囲の温度で実施される。【0021】また、本発明において用いられる水素と一酸化炭素のモル比は、反応系への入りガス組成として通常1/5〜5/1の範囲から選ばれる。なお、反応系中にヒドロホルミル化反応に対して不活性なガス、例えば、窒素、アルゴンなどが少量存在しても差支えない。【0022】本発明に従うヒドロホルミル化反応は、反応温度にもよるが、一般に常圧〜150気圧の圧力下で実施される。また、本発明に従うヒドロホルミル化反応は、攪拌型反応槽または気泡塔型反応槽中で連続方式またはバッチ方式で行うことができる。【0023】本発明に従うヒドロホルミル化反応は、溶媒の不存在下に実施することもできるが、反応系中で不活性な溶媒の存在下に行なってもよい。かかる溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の飽和脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、n−オクタノールなどのアルコール類;ジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、ジオクチルフタレート、アジピン酸ジメチル等のエステル類などが挙げられる。これらの溶媒は単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。なお、溶媒の使用量は、反応液に対して通常50容量%以内となる量である。【0024】本発明において、溶媒として上記のアルコール類を用いた場合、反応生成物がアルデヒドであるためアセタール類が副生することがあるが、反応系に塩基性物質を添加することによりアセタール類の副生を抑制することができる。塩基性物質としては、例えば、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリエタノールアミン等のアミン類;ピリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン等の含窒素芳香族化合物などが挙げられる。これらの塩基性化合物は単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。塩基性化合物の使用量は、反応液1リットル当たり、通常0.1〜30ミリモルの範囲である。【0025】上記の方法によって得られるヒドロホルミル化反応液は、そのまま水素添加反応、酸化反応またはアミノ化反応などの次の反応工程に使用することができる。また、所望により、反応液を減圧下に蒸発させることによって得られたトリシクロデカンジアルデヒドを含む留分を次の反応工程に使用してもよい。【0026】さらに、必要に応じ、上記のトリシクロデカンジアルデヒドを含む留分を蒸留、晶析などの公知の手段を用いて精製することにより、トリシクロデカンジアルデヒドを単離することも可能である。【0027】【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例により何等制限を受けるものではない。【0028】実施例1ガス導入口およびサンプリング口を備えた内容積300mlの電磁攪拌式オートクレーブに、ジカルボニルアセチルアセトナートロジウム0.903mg(0.035ミリモル)、トリス(2−t−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト364mg(0.7ミリモル)およびトルエン20mlを、水素/一酸化炭素=1/1(モル比)の混合ガス雰囲気下、空気に触れないようにして仕込み、次いでオートクレーブ内を水素/一酸化炭素=1/1(モル比)の混合ガスで90気圧(ゲージ圧)とした。オートクレーブ内の温度を120℃に上げ、水素/一酸化炭素=1/1(モル比)の混合ガスを供給して内圧を90気圧(ゲージ圧)に維持しながら、シクロペンタジエン36mg(0.55ミリモル)を含むジシクロペンタジエン72g(72ml、550ミリモル、シクロペンタジエンの含有量:500ppm)、無水マレイン酸70mg(0.71ミリモル)およびトルエン48mlを混合し窒素雰囲気下室温で10時間攪拌してなる混合液を、毎時20ml/hrの速度で6時間かけて連続的にオートクレーブにフィードした。ジシクロペンタジエンを含有する上記の混合液のフィード終了後、120℃で3時間攪拌した。得られた反応液をガスクロマトグラフィー〔カラム:G−100(商品名、化学品検査協会製)〕で分析したところ、ジシクロペンタジエンの転化率は100%であり、トリシクロデカンジアルデヒドの収率は90%であることが分かった。なお、ジシクロペンタジエンの二重結合の1つだけがヒドロホルミル化されたモノアルデヒド体(以下、単にモノアルデヒド体と略称する)の収率は10%であった。【0029】比較例1実施例1において、無水マレイン酸70mgを使用しなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行い、得られた反応液を実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィーで分析したところ、ジシクロペンタジエンの転化率は99%であり、トリシクロデカンジアルデヒドの収率は62%、モノアルデヒド体の収率は38%であることが分かった。なお、120℃における攪拌をさらに6時間継続して行ったところ、ジシクロペンタジエンの転化率は99%、トリシクロデカンジアルデヒドの収率は74%、モノアルデヒド体の収率は26%となった。【0030】実施例2ガス導入口、サンプリング口を備えた内容積300mlの電磁攪拌式オートクレーブに、ジカルボニルアセチルアセトナートロジウム1.754mg(0.0068ミリモル)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト440mg(0.68ミリモル)、トリエチルアミン29μl(0.21ミリモル)、トルエン4mlおよび2−プロパノール16mlを、水素/一酸化炭素=1/1(モル比)の混合ガス雰囲気下、空気に触れないようにして仕込み、次いでオートクレーブ内を水素/一酸化炭素=1/1(モル比)の混合ガスで90気圧(ゲージ圧)とした。オートクレーブ内の温度を120℃に上げ、水素/一酸化炭素=1/1(モル比)の混合ガスを供給して内圧を90気圧(ゲージ圧)に維持しながら、シクロペンタジエン60mgを含むジシクロペンタジエン120g(120ml、0.91モル、シクロペンタジエンの含有量:500ppm)、無水マレイン酸133mg(1.36ミリモル)、トリエチルアミン216μl(1.56ミリモル)および2−プロパノール30mlを混合し窒素雰囲気下室温で10時間攪拌してなる混合液(以下、これを混合液1と略称する)を、毎時10ml/hrの速度で8時間オートクレーブにフィードした。混合液1のフィードが終了した時点で反応液をサンプリングし、実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィーで分析したところ、ジシクロペンタジエンの転化率は100%であり、トリシクロデカンジアルデヒドの収率は93%、モノアルデヒド体の収率は7%であることが分かった。なお、混合液1のフィードが終了した反応液は、そのままの状態で1時間放置した。【0031】シクロペンタジエン200mgを含むジシクロペンタジエン400g(400ml、3.03モル、シクロペンタジエンの含有量:500ppm)、無水マレイン酸445mg(4.54ミリモル)、トリエチルアミン720μl(5.2ミリモル)および2−プロパノール100mlを混合し窒素雰囲気下室温で10時間攪拌した後、ジカルボニルアセチルアセトナートロジウム8.77mg(0.034ミリモル)およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト2.2g(3.4ミリモル)を添加することによって調製した混合液(以下、これを混合液2と略称する)を、上記で得られた反応混合物(混合液1のフィード終了から1時間経過後のもの)に、毎時10ml/hrの速度で連続的にオートクレーブにフィードした。この間、水素/一酸化炭素=1/1(モル比)の混合ガスを反応容器に供給して内圧を90気圧(ゲージ圧)に維持した。また、混合液2のフィード開始に合わせ、オートクレーブ内の液量が一定に保たれるように、反応液を連続的に抜き取った。混合液2のフィードを開始してから20時間経過した時点での反応液(抜き取り液)を実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィーで分析したところ、ジシクロペンタジエンの転化率は100%であり、トリシクロデカンジアルデヒドの収率は88%、モノアルデヒド体の収率は12%であることが分かった。【0032】比較例2実施例2において、無水マレイン酸を使用しなかったこと以外は実施例2と同様の操作を行い、得られた反応液(抜き取り液)を実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィーで分析したところ、ジシクロペンタジエンの転化率は99%であり、トリシクロデカンジアルデヒドの収率は38%、モノアルデヒド体の収率は62%であることが分かった。【0033】実施例3ガス導入口およびサンプリング口を備えた内容積100mlの電磁攪拌式オートクレーブに、ジカルボニルアセチルアセトナートロジウム5.16mg(0.02ミリモル)、トリフェニルホスフィン65.5mg(0.25ミリモル)、トルエン20ml、並びにシクロペンタジエン11mgを含むジシクロペンタジエン30g(30ml、0.23モル、シクロペンタジエンの含有量:370ppm)および無水マレイン酸25mg(0.26ミリモル)を混合し窒素雰囲気下室温で10時間攪拌処理してなる混合液を、水素/一酸化炭素=1/1(モル比)の混合ガス雰囲気下、空気に触れないようにして仕込み、オートクレーブ内を水素/一酸化炭素=1/1(モル比)の混合ガスで90気圧(ゲージ圧)とした後、オートクレーブ内の温度を120℃に上げ、水素/一酸化炭素=1/1(モル比)の混合ガスを供給してオートクレーブ内の圧力を90気圧(ゲージ圧)に維持しながら、同温度で5時間反応させた。得られた反応液を実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィーで分析したところ、ジシクロペンタジエンの転化率は100%であり、トリシクロデカンジアルデヒドの収率は84%、モノアルデヒド体の収率は16%であることが分かった。【0034】比較例3実施例3において、無水マレイン酸25mgを使用しなかったこと以外は実施例3と同様の操作を行い、得られた反応液を実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィーで分析したところ、ジシクロペンタジエンの転化率は99%であり、トリシクロデカンジアルデヒドの収率は49%、モノアルデヒド体の収率は51%であった。【0035】実施例4ガス導入口およびサンプリング口を備えた内容積100mlの電磁攪拌式オートクレーブに、ジカルボニルアセチルアセトナートロジウム1.29mg(0.005ミリモル)、トリス(2−メチル−5−t−ブチルフェニル)ホスファイト130mg(0.25ミリモル)、トルエン30ml、並びにシクロペンタジエン26mgを含むジシクロペンタジエン20g(20ml、0.15モル、シクロペンタジエンの含有量:1300ppm)およびフマル酸ジメチル85mg(0.59ミリモル)を混合し窒素雰囲気下室温で40時間攪拌処理してなる混合液を、水素/一酸化炭素=1/1(モル比)の混合ガス雰囲気下、空気に触れないようにして仕込み、オートクレーブ内を水素/一酸化炭素=1/1(モル比)の混合ガスで50気圧(ゲージ圧)とした後、オートクレーブ内の温度を110℃に上げ、水素/一酸化炭素=1/1(モル比)の混合ガスを供給してオートクレーブ内の圧力を50気圧(ゲージ圧)に維持しながら、同温度で2.5時間反応させた。得られた反応液を実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィーで分析したところ、ジシクロペンタジエンの転化率は100%であり、トリシクロデカンジアルデヒドの収率は88%、モノアルデヒド体の収率は12%であることが分かった。【0036】比較例4実施例4において、フマル酸ジメチル85mgを使用しなかったこと以外は実施例4と同様の操作を行い、得られた反応液を実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィーで分析したところ、ジシクロペンタジエンの転化率は99%であり、トリシクロデカンジアルデヒドの収率は42%、モノアルデヒド体の収率は58%であった。【0037】参考例水素導入口および水素排出口を備えた内容積300mlの電磁攪拌式オートクレーブに、実施例1で得られた反応液50ml〔トリシクロデカンジアルデヒド27g(0.14モル)を含有する〕、イソプロパノール50mlおよびラネーニッケル〔デグッサジャパン社製、B−113W(商品名)、水分含有率:約50重量%〕4.0gを仕込み、オートクレーブ内を水素で置換した。次いで、攪拌下にオートクレーブ内の温度を100℃に上げ、オートクレーブ内の圧力が8気圧(ゲージ圧)に維持されるように水素を連続的に供給しながら3時間反応させ、さらに内温を120℃に上げ、内圧を8気圧(ゲージ圧)に保って5時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却した後、反応混合物を取り出し、ラネーニッケルを濾別した。得られた濾液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、未反応原料(トリシクロデカンジアルデヒド)は検出されなかった。上記で得られた濾液を減圧下に蒸留することにより、TCDDM(b.p.:188℃/2mmHg)を21g得た。【0038】【発明の効果】本発明によれば、ジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化反応を円滑に行うことができ、その結果、トリシクロデカンジアルデヒドを工業的に有利に製造することができる。 ロジウム化合物、単座配位性第3級有機リン化合物およびジエノフィルの存在下に、ジシクロペンタジエンを水素および一酸化炭素と反応させることを特徴とする3(または4),8(または9)−ジホルミルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンの製造方法であって、該ジエノフィルが電子吸引性基によって活性化された炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有する化合物である3(または4),8(または9)−ジホルミルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンの製造方法 ジエノフィルがカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アシロキシ基、フェニル基、スルホニル基、アルコキシ基、アミノ基、シアノメチル基から選ばれる少なくとも1つの電子吸引性基によって活性化された炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有する化合物である、請求項1に記載の3(または4),8(または9)−ジホルミルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンの製造方法 ジエノフィルが無水マレイン酸もしくはフマル酸ジメチルである、請求項1または2に記載の3(または4),8(または9)−ジホルミルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンの製造方法 ジエノフィルの少なくとも一部を予めジシクロペンタジエンと混合した上で、水素および一酸化炭素と反応させる請求項1〜3のいずれかに記載の3(または4),8(または9)−ジホルミルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンの製造方法 反応圧力が150気圧以下、単座配位性第3級有機リン化合物の濃度が反応液1リットルあたり10ミリモル以下であり、ロジウム化合物の濃度が反応液1リットルあたりロジウム原子換算で0.5ミリグラム原子以下である請求項1〜4のいずれかに記載の3(または4),8(または9)−ジホルミルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンの製造方法