タイトル: | 特許公報(B2)_リチウムまたはリチウムイオン2次電池電解液用シアノエチル化合物の製造法 |
出願番号: | 1997245178 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C07C 253/30,C07C 255/13,B01J 23/04,H01M 10/40,C07B 61/00 |
西川 俊 JP 3946825 特許公報(B2) 20070420 1997245178 19970910 リチウムまたはリチウムイオン2次電池電解液用シアノエチル化合物の製造法 サンスター技研株式会社 305032254 青山 葆 100062144 田村 恭生 100068526 齋藤 みの里 100087114 品川 永敏 100126778 西川 俊 20070718 C07C 253/30 20060101AFI20070628BHJP C07C 255/13 20060101ALI20070628BHJP B01J 23/04 20060101ALI20070628BHJP H01M 10/40 20060101ALN20070628BHJP C07B 61/00 20060101ALN20070628BHJP JPC07C253/30C07C255/13B01J23/04 XH01M10/40 AC07B61/00 300 C07C253/30 C07C255/13 C07B 61/00 特公昭44−024586(JP,B1) 特公昭44−026649(JP,B1) 特開昭59−209282(JP,A) 3 1999080112 19990326 10 20010514 穴吹 智子 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明はリチウムまたはリチウムイオン2次電池電解液用シアノエチル化合物の製造法、更に詳しくは、水酸基を有する化合物とアクリロニトリルのシアノエチル化反応において、特定の反応触媒を用い、非水下および無溶媒下でシアノエチル化反応を行なうことにより、ビス(2−シアノエチル)エーテルの生成を抑え、かつアクリロニトリルの重合およびこれに伴なう着色を生じさせないシアノエチル化合物の製造法に関する。【0002】【従来の技術と発明が解決しようとする課題】従来、水酸基を有する化合物とアクリロニトリルによるシアノエチル化反応には通常、苛性アルカリ(NaOH、KOH)、第4級アンモニウム塩基などの触媒が用いられ、そして媒体として水が用いられている。中でも、専ら経済性に優れ、入手の容易な水酸化ナトリウムを用いて製造されたシアノエチル化合物;シアノエチル化ポリビニルアルコール、シアノエチル化プルラン、あるいは部分シアノエチル化多価アルコールの(メタ)アクリレートをラジカル重合した高分子化合物等が、主に有機分散型エレクトロルミネッセンス用のバインダー樹脂として使用されている。また、シアノエチル化合物は良好なイオン導電性を示し、その高分子化した材料は、電池用材料、特にリチウムまたはリチウムイオン2次電池の電極バインダー樹脂、ゲル型固体電解質のマトリックス樹脂などに適用が検討されている。さらに、低分子シアノエチル化合物もイオン導電性を活かし、これら電池の有機電解液、ゲル型固体電解質等に検討されている。【0003】これら低分子シアノエチル化合物は、低分子の水酸基を有する化合物を同様にアクリロニトリルでシアノエチル化して製造されるが、水酸基の残存量を可能な限り少なくする必要があり、水酸基量に対し過剰のアクリロニトリルを用いる等の手段で水酸基を完全にシアノエチル基へ転換することが好ましい。しかし、過剰のアクリロニトリルを使用すれば、媒体としての水がシアノエチル化され、ビス(2−シアノエチル)エーテル[NCCH2CH2OCH2CH2CN]が生成し易いことが判った。ビス(2−シアノエチル)エーテルも、元々シアノエチル化合物であり悪作用化合物ではないので、混合物の形で供するにしても、その生成割合の制御が困難で、製造バッチごとに含有量が変化し、品質にムラを生じ問題が多い。【0004】また、この副生物の生成を極力抑制しようとする場合は、反応で消費されるアクリロニトリル量に合せアクリロニトリルの滴下速度を遅くして反応系中のアクリロニトリル濃度を極力抑えること、および用いるアクリロニトリル量を水酸基に対する当量より多く用いないこと等によって、ある程度の生成抑制は可能であるが、反面、得られるシアノエチル化合物中の水酸基の残存量が増加し、品質が低下するという問題がある。この問題は、分留等の分離手段で解決も可能であるが、著しく生産性が低下し、コストアップと歩留りの低下を招く。さらに、水のシアノエチル化を防ぐためには、非水下で反応すれば解決できることが予測されるが、この場合、苛性アルカリや有機塩基の存在によってアクリロニトリルの重合が起り、また該重合に応じて著しい着色(褐色〜黒褐色:アルカリ、塩基によるアクリロニトリルの環化重合と考えられる)を生じるという別の問題が発生し、解決には至らないことが判った。【0005】 そこで、本発明者らは、かかる従来のシアノエチル化合物の製造において、ビス(2−シアノエチル)エーテルを生成せず、アクリロニトリルの重合、着色を生じさせないことについて鋭意検討を進めたところ、反応触媒として水酸化リチウムを用い、かつ非水下でシアノエチル化反応を行なえば、ビス(2−シアノエチル)エーテルを全く生じず、またアクリロニトリルの重合、着色もなく、さらに無溶媒下でも、簡単に高純度のシアノエチル化合物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。【0006】 すなわち、本発明は、式: (R1O)aR2(OCH2CH2CN)b [式中、R1は炭素数1〜3のアルキル基;R2は1〜4個の水酸基を有する化合物(以下、水酸基含有化合物と称す)から全ての水酸基を除いた残基;aは0〜3;およびbは1〜4(但し、a+bは1〜4)である]で示されるシアノエチル化合物の製造法であって、 上記水酸基含有化合物とアクリロニトリルのシアノエチル化反応で当該シアノエチル化合物を製造するに当り、その反応触媒として、 水酸化リチウムを用い、非水下および無溶媒下でシアノエチル化反応を行ない、上記水酸基含有化合物が、下記(a)〜(d)の化合物であることを特徴とするシアノエチル化合物の製造法を提供するものである(但し、水酸基含有化合物としてネオペンチルグリコール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオールまたは2,2−ビス(クロロメチル)−1,3−プロパンジオールを除く)。【0007】 上記水酸基含有化合物としては、 (a)炭素数1〜6の1価アルコール(たとえばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール等); (b)炭素数2〜6の2〜4価アルコール類(たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキシレングリコールなどのグリコール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトールなどの3〜4価アルコール類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリグリコール類);【0008】 (c)グリコール類またはポリグリコール類の部分アルキルエーテル(たとえばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル等);または (d)分子量600以下のポリオキシアルキレンポリオール類(たとえば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等にエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを付加重合して得られるポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシエチレンテトラオール等)が挙げられる。【0009】 なお、上記(d)の水酸基含有化合物にあって、その分子量が600を越えると、得られるシアノエチル化合物のイオン導電性が低下したり、粘度が高くなりすぎる傾向にあり好ましくない。【0010】 本発明は、上記シアノエチル化反応の触媒として水酸化リチウム(水和物も含む)の使用を特徴とする。反応触媒の使用量は通常、水酸基含有化合物とアクリロニトリルの合計量に対してリチウム分計算で0.001〜5%(重量%、以下同様)の範囲で選定すればよい。0.001%未満では、シアノエチル化反応の進行が遅く、また5%を越えると、非水下では触媒の溶解性が悪かったり、触媒の除去(精製)に手数がかかるなどの問題がある。【0011】 上記シアノエチル化反応は通常、上述の反応触媒と水酸基含有化合物を非水下および無溶媒下で常温〜60℃程度の温度で撹拌しつつ、所定量のアクリロニトリルを滴下しながら反応させることにより行なわれる。 このように反応触媒として水酸化リチウムを用いることにより、アクリロニトリルの重合が生ぜず、更に製造されるシアノエチル化合物に多少の触媒成分(Liイオン)が残存しても、その弊害は少なく、精製を簡略化することも可能でたいへん都合がよい。この理由は明らかではないが、おそらく、水酸化リチウムの塩基度が他の苛性アルカリや有機塩基類よりも小さいためではないかと推察される。【0012】本発明によって製造されるシアノエチル化合物の少なくとも1種に、通常のリチウム塩(たとえばLiClO4、LiSCN、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiPF6など)を溶解することにより、リチウムまたはリチウムイオン2次電池の有機電解液として用いることができる。ここで、電解液溶剤として機能するシアノエチル化合物に加えて、従来より用いられている他の非プロトン系極性溶剤(たとえば炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N,N'−テトラメチル尿素、シアノ酢酸エチル、アセトニトリル、プロピオニトリル、サクシノニトリル、ジオキサン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、トリアセチン、リン酸トリエチル、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパンなど)を併用することもできる。この場合、シアノエチル化合物を他の非プロトン系極性溶剤との合計量に対して10重量%以上の範囲で選定すればよい。10重量%未満では、シアノエチル化合物の使用効果が発現しなくなる傾向にある。【0013】本発明製造法による当該シアノエチル化合物は、高沸点および低粘度の液体でかつ低凝固温度のものとして、高純度で得られることから、上述の手法によって、特にリチウムまたはリチウムイオン2次電池の有機電解液への用途に有用であるが、これ以外に、適当なマトリックス樹脂に包含させてゲル型固体電解質とすることもできる。この場合、マトリックス樹脂を当該シアノエチル化合物で膨潤させることによってゲル型固体電解質とする。上記マトリックス樹脂としては、SBR、NBRなどの炭化水素鎖含有ポリマーおよび該ポリマーのシアノエチル化ポリマー;フッ化ビニリデンなどのフッ化ポリマーおよび該ポリマーのシアノエチル化ポリマー;シアノエチル化ポリウレタン;シアノエチル化アクリル系ポリマーが例示される。【0014】【実施例】 次に実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、実施例2は本発明の対象外である。 実施例1 4つ口フラスコに水酸基含有化合物としてエチレングリコール124.2g(2モル)と水酸化リチウム(LiOH・H2O)0.1gを仕込み、60℃でLiOH・H2Oが溶解するまで加熱撹拌する。次に40〜50℃に保ちながら、アクリロニトリル222.8g(4.2モル:水酸基含有化合物の水酸基1モルに対し1.05モル)を2時間かけて滴下する。滴下終了後、そのままの温度で3時間撹拌を続けた後、塩化メチレン200gとイオン交換水500mlを加え、数分撹拌する。撹拌を止め静置すると、2層に分離するので、上層の水層を分液廃棄し、更に同様にイオン交換水を用い2回の水洗を行い、真空ポンプを用いて乾燥、低揮発成分を除去して目的物を得る。得られた目的物は、無色透明の低粘度液であって、赤外線吸収スペクトルによりエチレングリコールビス(2−シアノエチル)エーテル(記号2CE−EG)であることを確認し、ガスクロマトグラフ純度は99.5%以上であった。【0015】実施例24つ口フラスコに、予めモレキュラーシーブで脱水したエチレングリコール124.2g(2モル)と金属リチウム粉末0.02gを仕込み、乾燥窒素ガスを導入しながら、60℃で1時間反応させる。その後、実施例1と同様40〜50℃に保ちながら、アクリロニトリル222.8g(4.2モル)を2時間かけて滴下反応、同様に順次、塩化メチレンによる抽出、純水洗浄、乾燥を行い、目的物を得る。同様赤外線吸収スペクトルでエチレングリコールビス(2−シアノエチル)エーテルであることを確認、ガスクロマトグラフ純度も99.5%以上であることを確認した。【0016】実施例3〜29上記実施例1,2と同様にして、下記表1〜5に示す水酸基含有化合物を用い、それぞれ対応するシアノエチル化合物を製造した。なお、仕込み量は上記と同様、水酸基含有化合物2モル、アクリロニトリルは水酸基含有化合物の水酸基1モルに対し1.05モル、LiOH・H2Oは0.1gである。【0017】【表1】【表2】【表3】【表4】【表5】【0018】比較例14つ口フラスコに水酸基含有化合物としてエチレングリコール124.2g(2モル)と水酸化ナトリウムの2.5%水溶液100gを仕込み、40〜50℃に保ちながら、アクリロニトリル222.8g(4.2モル:水酸基含有化合物の水酸基1モルに対し1.05モル)を2時間かけて滴下する。滴下終了後、そのままの温度で3時間撹拌を続けた後、塩化メチレン200gとイオン交換水500mlを加え、数分撹拌する。撹拌を止め静置すると、2層に分離するので、上層の水層を分液廃棄し、更に同様にイオン交換水を用い2回の水洗を行い、真空ポンプを用いて乾燥、低揮発成分を除去して無色透明の低粘度液を得た。赤外線吸収スペクトル、およびガスクロマトグラフにより、目的物のエチレングリコールビス(2−シアノエチル)エーテル68.6%および副生物のビス(2−シアノエチル)エーテル31.4%の含有率を確認した。【0019】比較例24つ口フラスコに水酸基含有化合物としてエチレングリコール124.2g(2モル)と水酸化ナトリウム0.1gを仕込み、60℃で水酸化ナトリウムが溶解するまで加熱撹拌する。次に40〜50℃に保ちながら、アクリロニトリル222.8g(4.2モル)を2時間かけて滴下する。滴下開始後1.5時間を経過した頃から反応液が徐々に褐色を呈しはじめ、滴下終了後も着色は激しく、そのままの温度で撹拌を続けたが、着色は茶褐色から黒褐色を呈し、褐色の沈澱物が生成してきたので、反応の継続を断念した。液体部分をガスクロマトグラフで分析したところ、ビス(2−シアノエチル)エーテルの生成は見られなかったが、高沸点側に数本の同定不可能なピークが観察された。【0020】実施例30(電解液の配合)下記表6〜7に示す量の、シアノエチル化合物および要すれば他の非プロトン系極性化合物にリチウム塩を溶解し、次いでモレキュラーシーブ3オングストロームで脱水後、20℃,1KHzでの電導度をLCZメーターを用いて測定した。結果を表6,7に併記する。【表6】【表7】【0021】【発明の効果】以上の構成から成る本発明製造法によれば、ビス(2−シアノエチル)エーテルを全く生じず、またアクリロニトリルの重合、着色もなく、簡単に高純度のシアノエチル化合物を得ることができる。更に本発明製造法では、過剰のアクリロニトリルが存在しても上記副生物が生じないため、水酸基含有化合物に対し過剰量のアクリロニトリルを使用することができ、残存水酸基量の著しく低い高品質のシアノエチル化合物が得られ、またアクリロニトリルの滴下速度を速めることが可能で、生産性も著しく向上し、更には触媒がリチウム化合物であるため、残存イオンがリチウムイオンであり、リチウムまたはリチウムイオン2次電池の電解液に用いる場合、精製の手数を簡略化でき、残存触媒を過塩素酸やトリフルオロメタンスルホン酸等で中和すれば、電解液に使用される電解質塩そのものとすることができ、場合によっては精製を省略して供することも可能であり、極めて有用な方法である。 式: (R1O)aR2(OCH2CH2CN)b [式中、R1は炭素数1〜3のアルキル基;R2は1〜4個の水酸基を有する化合物(以下、水酸基含有化合物と称す)から全ての水酸基を除いた残基;aは0〜3;およびbは1〜4(但し、a+bは1〜4)である]で示されるシアノエチル化合物の製造法であって、 上記水酸基含有化合物とアクリロニトリルのシアノエチル化反応で当該シアノエチル化合物を製造するに当り、その反応触媒として、 水酸化リチウムを用い、非水下および無溶媒下でシアノエチル化反応を行ない、上記 水酸基含有化合物が、 (a)炭素数1〜6の1価アルコール; (b)炭素数2〜6の2〜4価アルコール類; (c)グリコール類またはポリグリコール類の部分アルキルエーテル;または (d)分子量600以下のポリオキシアルキレンポリオール類であることを特徴とするシアノエチル化合物の製造法(但し、水酸基含有化合物としてネオペンチルグリコール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオールまたは2,2−ビス(クロロメチル)−1,3−プロパンジオールを除く)。 反応触媒を水酸基含有化合物とアクリロニトリルの合計量に対してリチウム分計算で0.001〜5重量%の範囲で用いる請求項1に記載のシアノエチル化合物の製造法。 分子量600以下のポリオキシアルキレンポリオール類(d)にあって、そのポリオキシアルキレン単位がポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレンである請求項1または2に記載のシアノエチル化合物の製造法。