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タイトル:特許公報(B2)_シュードモナス属に属する微生物の植物根面への定着方法及び該微生物の植物根面定着植物
出願番号:1997224064
年次:2007
IPC分類:A01G 7/00,C12N 1/20


特許情報キャッシュ

橋本 好弘 高橋 照雄 JP 3936032 特許公報(B2) 20070330 1997224064 19970820 シュードモナス属に属する微生物の植物根面への定着方法及び該微生物の植物根面定着植物 三菱レイヨン株式会社 000006035 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 橋本 好弘 高橋 照雄 20070627 A01G 7/00 20060101AFI20070607BHJP C12N 1/20 20060101ALI20070607BHJP JPA01G7/00 605ZC12N1/20 AC12N1/20 E A01G 7/00 C12N 1/20 特開平8−322556(JP,A) 特開昭51−51464(JP,A) 2 1999056102 19990302 7 20040804 坂田 誠 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、シュードモナス属に属する微生物を植物の根面に定着させた根面定着植物及び前記微生物を植物根面に定着させる方法に関する。【0002】【従来の技術】植物の種子については、耐病性、耐寒性、耐旱魃性、食味、大きさ、形状など種々の品質を保証するための技術が開発されている。しかしながら、植物の苗の場合は、ウイルスフリー苗がウイルス防除効果を有するという耐ウイルス性について知られているのみである。【0003】ところで、以前より、畑作地帯において土壌病害の発生の低い抑止型土壌(suppressive soil)の存在が知られており、このような土壌では植物の根圏および根面にシュードモナス属に属する微生物が定着することにより土壌伝染性の病害を抑止することが確認されている(Milton N. Schroth et al. (1982) Science vol. 216, 25 p1376)。この研究により、シュードモナス属に属する微生物(以下、単にシュードモナスともいう)は、病原菌抑制や植物生育促進などの有用機能を持つ根圏細菌(Plant growth-promoting rhizobacteria : PGPR) であることが判明した。シュードモナスは、シデロフォアや抗生物質を産生し、土壌伝染性病原菌の増殖や感染を抑制する機能を有することが明らかにされている(Schippers B. et al. Ann. Rev. Phytopathol. 25. p339-358 (1987), Thomashow, L. S. et al. J. Bacteriol. 170 p3499-3508(1988), O'sullivan, D. J. et al. Microbiol. Rev. 56 p662-676(1992))。シュードモナスが有するこれらの機能は、根から離れた場所では発揮されず、根圏及び根面に定着することによりはじめて発揮されることとなる。【0004】しかしながら、シュードモナスを含む資材を土壌中に施用しても土着の微生物により淘汰され、土壌中でうまく生き残ることができない場合がある。また、生き残ったとしても、一定数以上のシュードモナスを根圏又は根面に定着させることは困難であった。【0005】【発明が解決しようとする課題】本発明は、植物の土壌病害抵抗性を高めるために、シュードモナス属に属する微生物を植物の根面に定着させた根面定着植物及び前記微生物を植物根面に定着させる方法を提供することを目的とする。【0006】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題に基づいて鋭意研究を行った結果、尿素−ホルムアルデヒド縮合物及び/又はその合成中間体と、シュードモナス属に属する微生物を含む担体上で植物を栽培することにより、シュードモナス属に属する微生物を植物の根面に定着させることに成功し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、次式I:【0007】【化2】【0008】(式中、Xは水素原子又は-CH2OHを表し、Yは-NHCONH2又は-OH を表し、nは4以上の整数を表す。)で示される尿素−ホルムアルデヒド縮合物及び/又はその合成中間体を0.001 〜20%含み、かつ、シュードモナス属に属する微生物を少なくとも102 個/g含む担体上で植物を栽培することを特徴とする植物根面への前記微生物の定着方法である。さらに、本発明は、植物の根面にシュードモナス属に属する微生物を少なくとも103 個/g根定着させた根面定着植物である。【0009】シュードモナス属に属する微生物としては、例えば、シュードモナス・セパシア、シュードモナス・フルオレッセンス、シュードモナス・プチダ、シュードモナス・クロロラフィス、シュードモナス・マージナリス、シュードモナス・アルカリゲネス、シュードモナス・スタッツェリ、シュードモナス・シュードアルカリゲネス、シュードモナス・シリンガエ、シュードモナス・ビリジフラバ、シュードモナス・グルメイ、シュードモナス・ソラナセアラム、シュードモナス・グラジオリー、シュードモナス・カリオフィリ、シュードモナス・アンドロポゴニス、シュードモナス・アベナエ、シュードモナス・ジミムタ、シュードモナス・オーレオファシエンス、シュードモナス・リンドベルギ、シュードモナス・メソアシドフィラ、シュードモナス・ピロシニア及びシュードモナス・エスピーからなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。以下、本発明を詳細に説明する。【0010】【発明の実施の形態】(1) 尿素−ホルムアルデヒド縮合物の合成本発明に用いられる尿素−ホルムアルデヒド縮合物は、例えば以下のようにして合成される。尿素とホルムアルデヒドとをアルカリ性条件下に反応させて、尿素をメチロール化した後、これを酸性条件下に脱水縮合させることにより得ることができる。尿素、ホルムアルデヒドのモル比は、尿素1モルに対しホルムアルデヒド0.8 〜1.3が適当である。なお、尿素は最終的に上記モル比となるように分割添加してメチロール化を行うことができる。メチロール化反応は水酸化ナトリウム等のアルカリ性物質を添加して、弱アルカリ性、好ましくはpH7〜8に調製し、20〜95℃の温度で0.5〜30時間反応させる。【0011】反応生成物はジメチロール尿素を主体とする水溶液であり、これに少量のモノメチロール尿素、トリメチロール尿素、その他少量の遊離ホルムアルデヒドが含まれている。本発明においては、これらの合成中間体を単独で、又は上記尿素−ホルムアルデヒド縮合物とともに培地に添加してもよい。【0012】脱水縮合反応は、硬化剤として酸性物質、例えば硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、リン酸水素1ナトリウム、リン酸水素1カリウム、リン酸、硫酸、酢酸、クエン酸及び酒石酸等を添加し、pH3〜5、反応温度60〜80℃で、0.5 〜5時間反応させればよい。最終生成物は、水分含量約40重量%、粒径0.5〜5mmの範囲の白色粉末状であり、その構造は次式I:【0013】【化3】【0014】(式中、Xは水素原子又は-CH2OHを表し、Yは-NHCONH2又は-OH を表し、nは1以上の整数を表す。)で示され、水不溶性かつ微生物分解性の尿素−ホルムアルデヒド縮合物である。なお、上記式Iの化合物においてnは1以上であり、微生物の分解性の性質を有する範囲のものである。【0015】(2) シュードモナス属に属する微生物本発明において、シュードモナス(Pseudomonas )とは、シュードモナス属に属する微生物(Bergey's mannual vol.8)を意味する。本発明において用いられるシュードモナスの代表的なものを以下に列挙するがこれらに限定されるものではない。シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia )(ATCC 39277, 39356, 53267; AGF-158(特開平7-25716 号公報))シュードモナス・フルオレッセンス( Pseudomonas fluorescens)(ATCC 31125; MAFF 106531, 520032; NCIB 40189(特表平6-506345号公報))シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)(ATCC 39167, 39168, 39169,39270)シュードモナス・クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)(ATCC 9446, 9447, 17411)シュードモナス・マージナリス(Pseudomonas marginalis)(ATCC 10844, 10858, 17816)シュードモナス・アルカリゲネス(Pseudomonas alcaligenes )(ATCC 14909, 33153)シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)(ATCC 14405, 17588)シュードモナス・シュードアルカリゲネス(Pseudomonas pseudoalcaligenes) (ATCC 17440, 31200)シュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae)(ATCC 9004, 9654, 10205, 11355, 11365)シュードモナス・ビリジフラバ(Pseudomonas viridiflava) (ATCC 13222, 13223)シュードモナス・グルメイ(Pseudomonas glumae)(ATCC 33617)シュードモナス・ソラナセアラム(Pseudomonas solanacearum)(ATCC 11696, 11697, 25237/M4S(特公平6-17291 号公報))シュードモナス・グラジオリー(Pseudomonas gladiol) (ATCC 19302; C3NP1( 特開平6-197754号公報); C3 及びC3NP1(特開平6-9325号公報))シュードモナス・カリオフィリ(Pseudomonas caryophylli) (ATCC 11441, 25418)シュードモナス・アンドロポゴニス(Pseudomonas andropogonis)(ATCC 12637)シュードモナス・アベナエ(Pseudomonas avenae)(ATCC 19860)シュードモナス・ジミムタ(Pseudomonas diminuta)(ATCC 4335)シュードモナス・オーレオファシエンス(Pseudomonas aureofaciens)(ATCC 15926, 43051)シュードモナス・リンドベルギ(Pseudomonas lindbergii)(ATCC 31099)シュードモナス・メソアシドフィラ(Pseudomonas mesoacidophila)(ATCC 31433)シュードモナス・ピロシニア(Pseudomonas pyrrocinia)(ATCC 15958)シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)(ATCC 15925; JCM 6159, 5B(特開平6-211616号公報; Kyu-A891(特公平6-38746 号公報))これらのシュードモナスは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC) 、農林水産省生物資源研究所(MAFF) 等の微生物保存機関より容易に入手可能である。【0016】(3) 担体の調製本発明に用いる担体としては、畑、水田、山土、市販培土等から得られる通常の土壌が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、通常のカルス培養用培地、セラミックス、岩砕物、砂、ロックウール、育苗培養土、有機物資材(例えばふすま、米ヌカ、オガクズ、カニガラ、骨粉、ケイ藻土、キチン、キトサン、汚泥、セルロース、畜糞、堆肥)、無機物資材(例えばゼオライト、パーライト、バーミキュライト、活性炭)、その他の補助剤(例えば糖、アミノ酸、有機酸、ゼラチン等)などを単独で又は適宜組み合わせて使用することができる。【0017】(4) 植物の調製、種類本発明に用いる植物としては、栽培可能な全ての植物であれば良く、特に限定されるものではないが、稲、麦、メロン、トマト、キュウリ、ナス、ピーマン、白菜、ホウレンソウ、キャベツ、ニンジン、大根、ジャガイモ、ミカン、リンゴ、ナシ、松、杉、ケヤキ、カナメモチ、ツツジ、チューリップ、ヒヤシンス、ユリ、キク、バラ、朝顔、パンジー、サルビア、芝などの苗が好ましい。【0018】(5) シュードモナスの接種以上のようにして調製した尿素−ホルムアルデヒド縮合物を、シュードモナスを含む担体に添加する。シュードモナスは、植物の根面に少なくとも103(個/g根)の菌数を定着させる必要がある。そのために必要な接種量は、担体1gあたり少なくとも102 個であるが、通常は102 〜1010個、好ましくは103〜1010個である。但し、用いる担体中に既に十分な量(103 個/g)のシュードモナスが存在していることが確認されている場合には、特にシュードモナスを加えなくてもよい。【0019】ここで、根面とは、鈴木らの水中分画法(鈴木達彦、石沢修一(1965),農技研報 B. 15 p91) により、非根圏土壌、根圏土壌、根の3画分に分画したときの根面であり、具体的には、根の表面をいう。【0020】また、少なくとも103 (個/g根)の菌数とは、根を十分滅菌水で洗浄し、付着している土壌を除いた後の根試料を2mm径のガラスビーズを含む滅菌水中に入れ、20min 振盪する事により微生物を滅菌水中に遊離させ、この懸濁液試料を希釈し、King'B選択培地に塗布した時に出現する蛍光性を有するコロニー数が、少なくとも103 個であることを意味する。【0021】シュードモナスの添加は、菌体を培養した後、菌体自身を直接添加する方法でもよく、シュードモナスを含む微生物資材(例えばオーレスG(松本微生物研究所)、バイオマザー(チッソ旭)、スミリンユーキデルマ(住友林業))を添加する方法でもよい。【0022】(6) 植物の栽培及びシュードモナス数の検定植物の栽培は、尿素−ホルムアルデヒド縮合物及び/又はその合成中間体と、シュードモナス属に属する微生物とを含む担体上で行う以外は常法にしたがい行えばよい。栽培後、植物の根面に1gの根あたり103個以上のシュードモナスが存在しているか否かを検定する。シュードモナスの存在の検定は、シュードモナス用の選択培地(例えばKing B培地、P-1 培地、P-2 培地、P-3 培地等) で出現してくるコロニー数で確認することができる。また、これ以外にも下記の方法で確認することができる。【0023】▲1▼ Tsuchiyaらの開発した Pseudomonas の中の特定の種に対する特異性の高い抗体を用い、土壌サンプルからの直接検出が可能な方法を利用した抗原抗体法による検出方法[(Y.Takahashi et al. Ann. Phytopath. Soc. Jpn. 56 p229-234(1990), K.Tsuchiya et al. Ann. Phytopath. Soc. Jpn. 57 p196-202(1991), K.Tsuchiya et al. Ann. Phytopath. Soc. Jpn. 61 p318-324(1995)]である。【0024】▲2▼ シュードモナスの erRNA グループ1,2,3間のDNA-DNAハイブリダイゼーション(Johnson, J. L. et al.(1989)Int. J. Syst. Bacteriol. 39. p230-235)法とPCR法とを組み合わせることにより高感度で土壌サンプルからの検出を効率よく行う方法である。【0025】▲3▼ 顕微鏡で直接確認する方法だけでは試料中の微生物がシュードモナスであるか否かを識別することはできないが、選択性の高い培地を用いた Direct Viable Count(DVC) 法(染谷 et al.(1997) 日本土壌肥料学会講演要旨集43 p38-39)、あるいは蛍光抗体法(新編土壌微生物実験法(1992)p155-162養賢堂出版)等を用いることにより、シュードモナスを識別して計数することが可能である。【0026】▲4▼ シュードモナス属に属する微生物に特異的なDNAプローブを用いるFISH(Fluorescence in situ Hybridization) 法(加藤 et al.(1996) 日本微生物生態学会講演要旨集12 p21) も開発が進められており、これらの方法で計数する事も可能である。【0027】【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。〔実施例1〕メロン苗におけるシュードモナスの根面定着苗の作成1リットルの育苗培土(ゲンキクン1号、コープケミカル製)に、尿素−ホルムアルデヒド縮合物(商品名:ミクレア,日東化学工業製)を4%添加し、メロン(品種:宇治交配白鳥メロン)の種子をまき、人工気象器内で、25℃及び15,000Lux 照明の明条件で12時間、そして18℃及び暗条件で12時間の繰り返し条件にて、75日間栽培し、苗を作成した。【0028】メロン苗をポットより引き抜き、水中分画法により非根圏土壌、根圏土壌、根に分画した。根の試料をガラスビーズ(2mm径)入りの滅菌水中で20分間振盪する事により根面の微生物を水中に遊離させた。上記根面微生物懸濁液を希釈して、King'B培地(栄研科学製)入りの寒天平板に塗布し、25℃で7日間培養した。培養終了後、紫外線照明下で蛍光を発するコロニー数を計算した。【0029】農林水産省生物資源研究所の土屋らの作成した抗-P.cepacia抗体、抗-P.fluorescens抗体及び抗-P.putida 抗体を用い、ELISAによる土壌試料よりの直接検出法で検出を行った。なお、栽培前の培土に含まれるシュードモナス菌数は5.0 ×104個/g乾土であり、土壌中に十分な量存在していることを確認した。この方法では、103以上の菌数が存在する場合に陽性(+)となる。結果を表1に示す。【0030】【表1】【0031】【発明の効果】本発明により、シュードモナス属に属する微生物を植物の根面に定着させた根面定着植物及び前記微生物を植物根面に定着させる方法が提供される。【0032】シュードモナスが定着した植物は、土壌病害に対する抵抗性を有する点で有用である。 次式I:(式中、Xは水素原子又は-CH2OHを表し、Yは-NHCONH2又は-OHを表し、nは1以上の整数を表す。)で示される尿素−ホルムアルデヒド縮合物及び/又はその合成中間体を0.001〜20%含み、かつ、シュードモナス属に属する微生物を少なくとも102個/g含む担体上で植物を栽培することを特徴とする植物根面への前記微生物の定着方法。 シュードモナス属に属する微生物が、シュードモナス・セパシア、シュードモナス・フルオレッセンス、シュードモナス・プチダ、シュードモナス・クロロラフィス、シュードモナス・マージナリス、シュードモナス・アルカリゲネス、シュードモナス・スタッツェリ、シュードモナス・シュードアルカリゲネス、シュードモナス・シリンガエ、シュードモナス・ビリジフラバ、シュードモナス・グルメイ、シュードモナス・ソラナセアラム、シュードモナス・グラジオリー、シュードモナス・カリオフィリ、シュードモナス・アンドロポゴニス、シュードモナス・アベナエ、シュードモナス・ジミムタ、シュードモナス・オーレオファシエンス、シュードモナス・リンドベルギ、シュードモナス・メソアシドフィラ、シュードモナス・ピロシニア及びシュードモナス・エスピーからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1記載の定着方法。


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